• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06N
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06N
管理番号 1300255
審判番号 不服2012-16757  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-28 
確定日 2015-05-25 
事件の表示 特願2011-263928「知識ベースシステム、論理演算方法、プログラム、及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日出願公開、特開2012- 79331〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成22年5月18日(国内優先権基礎出願に基づく国内優先権の主張2009年5月18日)を出願日とする出願を原出願とする,特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願として,平成23年12月1日に出願されたものであって,
平成24年1月25日付けで拒絶理由が通知され,同年2月28日に意見書の提出及び手続補正がなされ,同年4月4日付けで拒絶理由が通知され,同年5月15日に意見書の提出及び手続補正がなされたが,同年6月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年8月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ,同年10月19日付けで前置報告がなされ,当審において,平成25年4月15日付けで審尋がなされ,同年5月7日に回答書が提出されたものである。


第2.平成24年8月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年8月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成24年8月28日付けの手続補正(以下,「本件補正」)は,
平成24年5月15日付けの手続補正における特許請求の範囲である,
「 【請求項1】
知識ベースシステムであって,
知識ベースを記憶している記憶部を備え,
前記知識ベースは,物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,
前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,
前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,
前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,
前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,
前記特徴データは,対応する属性の実体であり,
前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである
知識ベースシステム。
【請求項2】
前記知識ベースでは,
第一の物を識別する第一の物識別子と,当該第一の物の属性である第一の属性を識別する第一の属性識別子とが対応づけられ,
第二の物を識別する第二の物識別子と,当該第二の物の属性である第二の属性を識別する第二の属性識別子とが対応づけられ,
前記第一の属性と前記第二の属性とは同じ種類の属性であり,前記第一の属性識別子と前記第二の属性識別子とは異なる識別子である
請求項1記載の知識ベースシステム。
【請求項3】
前記特徴データは,当該特徴データに対応づけられた属性識別子が識別する属性の形,音,香,味,色,圧力,温度,長さ,座標値,及び面積の少なくとも一つを表すデータである
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項4】
前記知識ベースシステムはさらに,
前記属性に関する情報を取得する入力部と,
前記入力部で取得された情報から,前記特徴データ及び前記識別データの少なくとも一つを抽出する特徴抽出部と,
前記特徴抽出部で抽出された前記特徴データ及び前記識別データの少なくとも一つを,前記属性を識別する属性識別子と対応づけて前記知識ベースに格納するデータ格納部とを備える
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項5】
前記属性識別子は,主識別子と副識別子とを含み,
前記属性識別子は,前記主識別子と前記副識別子との組み合わせによって,前記属性を識別する
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項6】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理積を算出する処理として,
個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられている場合,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持ち,かつ,対応づけられた真偽値が共に真であるか又は共に偽である属性だけを集め,
個々の属性に前記真偽値が対応付けられていない場合,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持つ属性だけを集めることで,新たな属性の集合を生成するAND演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項7】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性を集めることで,新たな属性の集合を生成するOR演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項8】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が1つ指定された場合において,指定された1つの集合に対する否定を算出する処理として,当該属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した新たな属性の集合を生成するNOT演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項9】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する否定論理積を算出する処理として,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持ち,かつ,対応づけられた真偽値が共に真であるか又は共に偽である属性だけを集めることで,新たな属性の集合を生成し,生成した新たな属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した更に新たな属性の集合を生成するNAND演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項10】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する否定論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性を集めることで,新たな属性の集合を生成し,生成した新たな属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した更に新たな属性の集合を生成するNOR演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項11】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合が似ている程度を算出する処理として,
個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応づけられている場合,いずれの属性の集合にも含まれ,かつ,対応づけられた真偽値が同じである属性の数を共通度として計数し,
個々の前記属性に前記真偽値が対応づけられていない場合,いずれの属性の集合にも含まれる属性の数を共通度として計数する
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項12】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合が似ていない程度を算出する処理として,
個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応づけられている場合,いずれの属性の集合にも含まれ,かつ,対応づけられた真偽値が異なる属性の数を非共通度として計数し,
個々の属性に前記真偽値が対応づけられていない場合,いずれかの属性の集合にだけ含まれる属性の数を非共通度として計数する
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項13】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性から,いずれの集合にも含まれ,かつ,対応づけられた真偽値が異なる属性を除くことで,新たな属性の集合を生成するOR演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項14】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する排他的論理和を算出する処理として,指定された2つの集合のいずれにも属する属性を除くことで,新たな属性の集合を生成するXOR演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項15】
さらに,少なくとも一つの属性が指定されると,指定された属性に対応づけられた物識別子を集めることで,当該属性をもつ知識の集まりを生成する演算部を備える
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項16】
前記演算部はさらに,物が指定されると,当該物の物識別子が前記知識の集まりに属するか否かを判断する
請求項15記載の知識ベースシステム。
【請求項17】
前記演算部はさらに,
生成した前記知識の集まりを識別する物識別子と,
前記指定された少なくとも一つの属性を識別する属性識別子,及び抽象的な物であることを示す属性の属性識別子とを対応付けた情報を前記記憶部に格納することで,抽象的な物を新たに生成する
請求項15に記載の知識ベースシステム。
【請求項18】
前記知識ベースはさらに,物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークを含み,
前記ノードは,当該ノードに対応する物識別子と,当該ノードが属する知識ネットワークに関する情報である知識ネットワーク情報とを含み,
前記知識ネットワーク情報は,前記知識ネットワークを識別する知識ネットワーク識別子と,前記知識ネットワークにおける当該ノードとつながる他のノードへのポインタとを含む
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項19】
さらに,指定された知識ネットワーク識別子で識別された知識ネットワークにおいて,当該知識ネットワークを構成するノードに含まれる物識別子と知識ネットワーク情報とを参照することで,指定された物とつながっている他の物を特定する演算部を備える
請求項18記載の知識ベースシステム。
【請求項20】
さらに,属性識別子が指定されると,当該属性識別子に対応づけられた知識ネットワークを検索し,検索された知識ネットワークの知識ネットワーク識別子を取得する演算部を備える
請求項18記載の知識ベースシステム。
【請求項21】
前記演算部はさらに,
前記知識ネットワークを識別する物識別子と,
前記知識ネットワークに対応付けられた少なくとも1つの属性識別子,及び抽象的な物であることを示す属性の属性識別子とを対応付けた情報を前記記憶部に格納することで,抽象的な物を新たに生成する
請求項20に記載の知識ベースシステム。
【請求項22】
前記知識ベースはさらに,物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークを含み,
前記知識ネットワークを構成するノードは,当該知識ネットワークを指定する属性に対応づけられる
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項23】
前記知識ベースはさらに,
物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークと,
前記知識ネットワークを表わすノードとを含み,
前記知識ネットワークを表わすノードは,前記知識ネットワークを構成するノードに対応づけられる
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項24】
知識ベースシステムにおける論理演算方法であって,
請求項1又は2記載の知識ベースシステムが備える知識ベースに対して,少なくとも請求項6?17,19?21のいずれか1項に記載の演算部による処理を行うステップを含む
論理演算方法。
【請求項25】
知識ベースシステムのためのプログラムであって,
請求項24記載の論理演算方法に含まれるステップをコンピュータに実行させる
プログラム。
【請求項26】
知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースまたは請求項25記載のプログラム が記録された記録媒体。
【請求項27】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備えるコンピュータシステム。
【請求項28】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える教育支援システム。
【請求項29】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える診断支援システム。
【請求項30】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える判断支援システム。
【請求項31】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える監視システム。
【請求項32】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える映像認識システム。
【請求項33】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える音声認識システム。
【請求項34】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える図形認識システム。
【請求項35】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える推論システム。
【請求項36】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える検索システム。」

から,

「 【請求項1】
知識ベースシステムであって,
コンピュータによる論理演算の対象となる知識ベースを記憶している記憶部を備え,
前記知識ベースは,物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,
前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,
前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,
前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,
前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,
前記特徴データは,対応する属性の実体であり,
前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである
知識ベースシステム。
【請求項2】
前記知識ベースでは,
第一の物を識別する第一の物識別子と,当該第一の物の属性である第一の属性を識別する第一の属性識別子とが対応づけられ,
第二の物を識別する第二の物識別子と,当該第二の物の属性である第二の属性を識別する第二の属性識別子とが対応づけられ,
前記第一の属性と前記第二の属性とは同じ種類の属性であり,前記第一の属性識別子と前記第二の属性識別子とは異なる識別子である
請求項1記載の知識ベースシステム。
【請求項3】
前記特徴データは,当該特徴データに対応づけられた属性識別子が識別する属性の形,音,香,味,色,圧力,温度,長さ,座標値,及び面積の少なくとも一つを表すデータである
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項4】
前記知識ベースシステムはさらに,
前記属性に関する情報を取得する入力部と,
前記入力部で取得された情報から,前記特徴データ及び前記識別データの少なくとも一つを抽出する特徴抽出部と,
前記特徴抽出部で抽出された前記特徴データ及び前記識別データの少なくとも一つを,前記属性を識別する属性識別子と対応づけて前記知識ベースに格納するデータ格納部とを備える
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項5】
前記属性識別子は,主識別子と副識別子とを含み,
前記属性識別子は,前記主識別子と前記副識別子との組み合わせによって,前記属性を識別する
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項6】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理積を算出する処理として,
個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられている場合,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持ち,かつ,対応づけられた真偽値が共に真であるか又は共に偽である属性だけを集め,
個々の属性に前記真偽値が対応付けられていない場合,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持つ属性だけを集めることで,新たな属性の集合を生成するAND演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項7】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性を集めることで,新たな属性の集合を生成するOR演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項8】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が1つ指定された場合において,指定された1つの集合に対する否定を算出する処理として,当該属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した新たな属性の集合を生成するNOT演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項9】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する否定論理積を算出する処理として,指定された前記2つの属性の集合において同じ属性識別子を持ち,かつ,対応づけられた真偽値が共に真であるか又は共に偽である属性だけを集めることで,新たな属性の集合を生成し,生成した新たな属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した更に新たな属性の集合を生成するNAND演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項10】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する否定論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性を集めることで,新たな属性の集合を生成し,生成した新たな属性の集合に含まれる各属性について,対応づけられた真偽値が真の場合は偽に変えた属性を生成し,真偽値が偽の場合は真に変えた属性を生成することで,真偽値を変更した更に新たな属性の集合を生成するNOR演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項11】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合が似ている程度を算出する処理として,
個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応づけられている場合,いずれの属性の集合にも含まれ,かつ,対応づけられた真偽値が同じである属性の数を共通度として計数し,
個々の前記属性に前記真偽値が対応づけられていない場合,いずれの属性の集合にも含まれる属性の数を共通度として計数する
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項12】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合が似ていない程度を算出する処理として,
個々の前記属性に,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応づけられている場合,いずれの属性の集合にも含まれ,かつ,対応づけられた真偽値が異なる属性の数を非共通度として計数し,
個々の属性に前記真偽値が対応づけられていない場合,いずれかの属性の集合にだけ含まれる属性の数を非共通度として計数する
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項13】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
個々の前記属性には,当該属性が真であるか偽であるかを示す真偽値が対応付けられており,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する論理和を算出する処理として,指定された2つの集合の少なくともいずれかに属する属性から,いずれの集合にも含まれ,かつ,対応づけられた真偽値が異なる属性を除くことで,新たな属性の集合を生成するOR演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項14】
さらに,前記知識ベースを対象として論理演算を行う演算部を備え,
前記演算部は,少なくとも一つの属性からなる属性の集合が2つ指定された場合において,指定された2つの集合に対する排他的論理和を算出する処理として,指定された2つの集合のいずれにも属する属性を除くことで,新たな属性の集合を生成するXOR演算を行う
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項15】
さらに,少なくとも一つの属性が指定されると,指定された属性に対応づけられた物識別子を集めることで,当該属性をもつ知識の集まりを生成する演算部を備える
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項16】
前記演算部はさらに,物が指定されると,当該物の物識別子が前記知識の集まりに属するか否かを判断する
請求項15記載の知識ベースシステム。
【請求項17】
前記演算部はさらに,
生成した前記知識の集まりを識別する物識別子と,
前記指定された少なくとも一つの属性を識別する属性識別子,及び抽象的な物であることを示す属性の属性識別子とを対応付けた情報を前記記憶部に格納することで,抽象的な物を新たに生成する
請求項15に記載の知識ベースシステム。
【請求項18】
前記知識ベースはさらに,物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークを含み,
前記ノードは,当該ノードに対応する物識別子と,当該ノードが属する知識ネットワークに関する情報である知識ネットワーク情報とを含み,
前記知識ネットワーク情報は,前記知識ネットワークを識別する知識ネットワーク識別子と,前記知識ネットワークにおける当該ノードとつながる他のノードへのポインタとを含む
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項19】
さらに,指定された知識ネットワーク識別子で識別された知識ネットワークにおいて,当該知識ネットワークを構成するノードに含まれる物識別子と知識ネットワーク情報とを参照することで,指定された物とつながっている他の物を特定する演算部を備える
請求項18記載の知識ベースシステム。
【請求項20】
さらに,属性識別子が指定されると,当該属性識別子に対応づけられた知識ネットワークを検索し,検索された知識ネットワークの知識ネットワーク識別子を取得する演算部を備える
請求項18記載の知識ベースシステム。
【請求項21】
前記演算部はさらに,
前記知識ネットワークを識別する物識別子と,
前記知識ネットワークに対応付けられた少なくとも1つの属性識別子,及び抽象的な物であることを示す属性の属性識別子とを対応付けた情報を前記記憶部に格納することで,抽象的な物を新たに生成する
請求項20に記載の知識ベースシステム。
【請求項22】
前記知識ベースはさらに,物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークを含み,
前記知識ネットワークを構成するノードは,当該知識ネットワークを指定する属性に対応づけられる
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項23】
前記知識ベースはさらに,
物に対応づけられたノードのつながりである知識ネットワークと,
前記知識ネットワークを表わすノードとを含み,
前記知識ネットワークを表わすノードは,前記知識ネットワークを構成するノードに対応づけられる
請求項1又は2記載の知識ベースシステム。
【請求項24】
知識ベースシステムにおける論理演算方法であって,
請求項1又は2記載の知識ベースシステムが備える知識ベースに対して,少なくとも請求項6?17,19?21のいずれか1項に記載の演算部による処理を行うステップを含む
論理演算方法。
【請求項25】
知識ベースシステムのためのプログラムであって,
請求項24記載の論理演算方法に含まれるステップをコンピュータに実行させる
プログラム。
【請求項26】
知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースまたは請求項25記載のプログラム が記録された記録媒体。
【請求項27】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備えるコンピュータシステム。
【請求項28】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える教育支援システム。
【請求項29】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える診断支援システム。
【請求項30】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える判断支援システム。
【請求項31】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える監視システム。
【請求項32】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える映像認識システム。
【請求項33】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える音声認識システム。
【請求項34】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える図形認識システム。
【請求項35】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える推論システム。
【請求項36】
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースシステムを備える検索システム。」

と補正するものである。

2.本件補正の目的要件
本件補正は,上記第1.に記したとおり上記審判請求と同時にする補正であり,また上記1.で示したとおり特許請求の範囲についてする補正をするものであるから,本件補正における特許請求の範囲についてする補正の目的について検討するに,本件補正は,出願人が審判請求書において主張するように,限定的減縮を目的としたものである。

3.独立特許要件
上記2.のとおり,本件補正は限定的減縮を目的とするものであるので,本件の補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下に検討する。

3-1.本件補正発明
本願の請求項26に係る発明は,平成24年8月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項26に記載された,次のとおりのものである。

「 【請求項1】
知識ベースシステムであって,
コンピュータによる論理演算の対象となる知識ベースを記憶している記憶部を備え,
前記知識ベースは,物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,
前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,
前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,
前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,
前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,
前記特徴データは,対応する属性の実体であり,
前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである
知識ベースシステム。
・・・(中略)・・・
【請求項26】
知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースまたは請求項25記載のプログラムが記録された記録媒体。」

ここで,上記請求項の記載によれば,本願の請求項26に係る発明である「記録媒体」は,「請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベース」または「請求項25記載のプログラム」,すなわち両者のいずれかが記録されたものであることから,
本願の請求項26に係る発明は,
(a)「知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって」,「請求項1」「に記載の知識ベースが記録された記録媒体」を含むものであり,
上記請求項1に記載の「知識ベース」は,
(b)「物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,
前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,
前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,
前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,
前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,
前記特徴データは,対応する属性の実体であり,
前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである」ものであって,
(c)「コンピュータによる論理演算の対象となる」ものである,「記録媒体」と認められ,
上記のように認められる本願の請求項26に係る発明(以下,「本件補正発明」という)について,以下の検討を行う(当審注:分節(a)ないし(c)は当審で付したものである。)。

3-2.発明該当性(特許法29条1項柱書に規定する要件)について
(1)特許法2条1項には,「この法律で「発明」とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定され,同法29条1項柱書には,「産業上利用することができる発明をしたものは,次に掲げる発明を除き,その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。
したがって,請求項に係る発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは,その発明は特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができない。
また,審査基準の「第II部」「第1章」「1.1 「発明」に該当しないものの類型」「(4) 自然法則を利用していないもの」には,
「請求項に係る発明が,自然法則以外の法則(例えば,経済法則),人為的な取決め(例えば,ゲームのルールそれ自体),数学上の公式,人間の精神活動に当たるとき,あるいはこれらのみを利用しているとき(例えば,ビジネスを行う方法それ自体)は,その発明は,自然法則を利用したものとはいえず,「発明」に該当しない。・・・(中略)・・・
逆に,発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても,請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは,その発明は,自然法則を利用したものとなる。
以上のように,どのような場合に,全体として自然法則を利用したものとなるかは,技術の特性を考慮して判断する。
(留意事項)
ビジネスを行う方法やゲームを行う方法に関連する発明は,物品,器具,装置,システムなどを利用している部分があっても,全体として自然法則を利用しない場合があるので,慎重に検討する必要がある。(事例5?7参照)
なお,ビジネスを行う方法やゲームを行う方法という観点ではなく,ビジネス用コンピュータ・ソフトウエアやゲーム用コンピュータ・ソフトウエアという観点から発明すれば,「発明」に該当する可能性がある。(コンピュータ・ソフトウエア関連発明における判断については,「第VII部 第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明」2.2参照)」 と記載され,
同じく「(5) 技術的思想でないもの」には,
「(a) 技能(個人の熟練によって到達しうるものであって,知識として第三者に伝達できる客観性が欠如しているもの)
・・・
(b) 情報の単なる提示(提示される情報の内容にのみ特徴を有するものであって,情報の提示を主たる目的とするもの)
例:・・・,録音された音楽にのみ特徴を有するCD,・・・
なお,情報の提示(提示それ自体,提示手段,提示方法など)に技術的特徴があるものは,情報の単なる提示にあたらない。
・・・
(c) 単なる美的創造物・・・」と記載されている。

(2)
(2-1)上記を踏まえ,本件補正発明が,特許法2条1項で規定する「発明」に該当するものであるのか,すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるのかについて検討する。

(2-2)まず,本件補正発明のうち,(a)「知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって」,「請求項1」「に記載の知識ベースが記録された記録媒体」という点について見てみると,「知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体」「知識ベースが記録された記録媒体」との記載は,一応「記録媒体」との記載はあるものの,「物」としての物理的構造を特定する記載はなく,記録される情報のみ,すなわち「知識ベース」のみに特徴を有するものであるから,この点のみをもって,本件補正発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であると判断することはできない。(上記審査基準の「(5) 技術的思想でないもの」「(b) 情報の単なる提示・・」の例では,「CD」すなわち記録媒体が記載されていても,それのみで「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるとはしていない。)
次に,記録媒体に記録された情報について検討すると,本件補正発明のうち,(b)「物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,
前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,
前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,
前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,
前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,
前記特徴データは,対応する属性の実体であり,
前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである」との記載がそれに該当するが,これは「知識ベース」のデータ構造である,「物」「物識別子」「属性」「属性識別子」「特徴データ」「識別データ」等の情報の内容及び対応付けを規定したものであり,人為的な取決めのみに基づくものであるから,記録された情報である「知識ベース」自体に自然法則が利用されているとはいえない。
また,本件補正発明のうち,(c)「コンピュータによる論理演算の対象となる」ものである,という点について見てみると,これは単にコンピュータによる論理演算の対象となることを明示したにすぎず,そもそも,コンピュータに読み取られたデータが処理の対象となるのは当然のことであり,当該記載は「コンピュータ読み取り可能な」と同程度のものでしかない。

(2-3)以上で述べたとおり,本件補正発明に係る事項(a)ないし(c)について見ても,「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるといえる要素は見当たらないし,また,本件補正発明に係る請求項26の記載全体を見ても,知識ベースを物や属性の意味内容を言語に依存せずに表現するための,単なる情報の内容及び対応付けを規定したに止まるものであり,「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するといえる理由はない。

(3)
(3-1)次に,本件補正発明は,「知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体」,「コンピュータによる論理演算の対象となる知識ベース」等と記載しているように,コンピュータ・ソフトウエア関連発明に該当するものである。
また,コンピュータ・ソフトウエア関連発明について,審査基準の「第VII部」「第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明」「2.2 「発明」であること」には,以下のように記載されている。
「請求項に係る発明が特許法上の「発明」であるためには,その発明は自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものであることが必要である。(第II部第1 章1.参照)
2.2.1 基本的な考え方
ソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」となる基本的考え方は以下のとおり。
(1) 「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合,当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。(「3. 事例」の事例2-1?2-5 参照)
(説明)
「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは,ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより,使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されることをいう。
そして,上記使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法は「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということができるから,「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合には,当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。
・・・
2.2.4「構造を有するデータ」及び「データ構造」の取扱い
「構造を有するデータ」(「構造を有するデータを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」を含む)及び「データ構造」が「発明」に該当するか否かについては,「2.2.1 基本的な考え方」により判断する。」

(3-2)そこで,本件補正発明が,上記ソフトウエア関連発明として「自然法則を利用した技術的思想の創作」となるか,すなわち「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」ものであるかを検討する。

まず,本件補正発明のうち,(a)「知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって」「知識ベースが記録された記録媒体」との記載,及び(c)「コンピュータによる論理演算の対象となる」との記載は,構造を有するデータであり,論理演算の対象となる「知識ベース」を記録した「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」を明示するものであり,その場合,構造を有するデータである「知識ベース」が発明に該当するか否かを判断することとなる。
そこで,本件補正発明のうち,(b)「物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,
前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,
前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,
前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,
前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,
前記特徴データは,対応する属性の実体であり,
前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである」との記載について見ると,「知識ベース」のデータ構造である,「物」「物識別子」「属性」「属性識別子」「特徴データ」「識別データ」等の情報の内容及びそれらの間の対応付けを規定したものであり,この「知識ベース」自体は特定の構造を有するデータの単なる集まりでしかなく,そもそもコンピュータに対する命令を規定するものでないのであるから,この「知識ベース」をコンピュータに読み取らせたとしても,これ自体でコンピュータが動作するものでないことは技術常識からして明らかである。
したがって,本件補正発明は,「知識ベース」がコンピュータに読み込まれることにより,「知識ベース」とハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又はその動作方法が構築されるものとはいえないものである。

(3-3)以上で述べたとおり,本件補正発明は,「ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより,使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築され」ているとはいえず,「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とはいえない。
したがって,本件補正発明は,特許法2条1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しない。

3-3.まとめ
以上のとおり,本件補正発明は,特許法2条でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当せず,特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないことから,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.まとめ
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明

平成24年8月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項26に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年5月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項26に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
知識ベースシステムであって,
知識ベースを記憶している記憶部を備え,
前記知識ベースは,物を識別する物識別子と,前記物がもつ少なくとも一つの属性であって,当該物の物識別子と対応づけられた属性とを含み,
前記属性には,当該属性を識別する属性識別子が1対1に対応づけられ,
前記属性識別子には,属性を表す少なくとも一つのデータである特徴データ,及び属性を表す言葉に対応付けられたデータである識別データのうちの少なくとも一方が対応づけられ,
前記物識別子は,物を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で物の意味を持たない記号で構成され,
前記属性識別子は,属性を表す言葉ではなく,かつ,それ自体で属性の意味を持たない記号で構成され,
前記特徴データは,対応する属性の実体であり,
前記識別データは,対応する属性を識別するためのデータである
知識ベースシステム。
・・・(中略)・・・
【請求項26】
知識ベースシステムのためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって,
請求項1?23のいずれか1項に記載の知識ベースまたは請求項25記載のプログラム が記録された記録媒体。」

2.発明該当性(特許法29条1項柱書に規定する要件)について

本願発明は,前記第2.で検討した本件補正発明から,「知識ベース」の限定事項である「コンピュータによる論理演算の対象となる」ことを省いたものである。

そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が,明細書全体を参酌しても,前記「3.独立特許要件」に記載したとおり,特許法2条1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものとは認められないことから,本願発明も同様の理由により,特許法2条1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものとは認められない。
よって,本願発明は,特許法2条1項に規定する発明に該当せず,特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないので,特許を受けることができない。

3.むすび
したがって,本願発明は,自然法則を利用した技術的思想の創作ではないので,特許法2条1項に規定する発明に該当せず,特許法29条1項柱書の規定する要件を満たしていないので,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-18 
結審通知日 2013-11-19 
審決日 2013-12-03 
出願番号 特願2011-263928(P2011-263928)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06N)
P 1 8・ 575- Z (G06N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 州一郎長谷川 篤男  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 仲間 晃
田中 秀人
発明の名称 知識ベースシステム、論理演算方法、プログラム、及び記録媒体  
代理人 新居 広守  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ