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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1300391
審判番号 不服2014-9153  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-16 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 特願2009-538063「携帯端末装置及びそのイベント通知方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月30日国際公開,WO2009/054269〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張(優先権主張:平成19年10月24日,優先権主張の基礎となる出願:特願2007-275936号)を伴い,2008年(平成20年)10月8日を国際出願日とする出願であって,平成23年9月27日に審査請求がされ,平成25年4月17日付けの拒絶理由通知に対し,同年6月19日に手続補正がされ,同年10月16日付けの拒絶理由通知に対し,同年12月10日に手続補正がされた後,平成26年3月6日付けで拒絶査定された。そして,これに対して同年5月16日に審判請求がされるとともに,同日に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年5月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであって,特許請求の範囲の請求項1については,本件補正の前後で以下のとおりである。
・補正前
「【請求項1】
ユーザが作業中に通知するべきイベントが発生した際に,表示部の表示画面にイベント通知を表示して前記ユーザに通知する携帯端末装置において,
前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された前記携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知する形状検知手段と,
前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知を表示するとともに,前記イベント通知の表示中に前記形状検出手段によって前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更するイベント表示手段と,
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」
・補正後
「【請求項1】
ユーザが作業中に通知するべきイベントが発生した際に,表示部の表示画面にイベント通知を表示して前記ユーザに通知する携帯端末装置において,
前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された前記携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知する形状検知手段と,
前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知をその表示時間を変更可能にスクロール表示するとともに,前記イベント通知の表示中に前記形状検出手段によって前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更するイベント表示手段と,
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

2 補正事項の整理
本件補正による,補正前の特許請求の範囲の請求項1についての補正を整理すると次のとおりとなる。(当審注.下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)
・補正事項
補正前の請求項1に記載の「前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知を表示するとともに,」を,「前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知をその表示時間を変更可能にスクロール表示するとともに,」と補正すること。

3 補正の適否について
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0025】及び【0027】の記載から,上記補正事項は本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,上記補正事項は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,上記補正事項は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知を表示するとともに,」を限定的に減縮するから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,上記補正事項が,同法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。

4 独立特許要件についての検討
(1)検討の前提
上記3で検討したとおり,本件補正による補正前の請求項1についての上記補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから,本件補正による補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,更に検討する。

(2)本願補正発明
本件補正後の請求項1の記載は,上記1のとおりであるが,当該請求項の「前記イベント通知の表示中に前記形状検出手段によって前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更する」との記載における「前記形状検出手段」は,「前記形状検知手段」の誤記と認められるから,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ユーザが作業中に通知するべきイベントが発生した際に,表示部の表示画面にイベント通知を表示して前記ユーザに通知する携帯端末装置において,
前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された前記携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知する形状検知手段と,
前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知をその表示時間を変更可能にスクロール表示するとともに,前記イベント通知の表示中に前記形状検知手段によって前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更するイベント表示手段と,
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

(3)引用文献の記載と引用発明
ア 引用文献1の記載と引用発明1
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張日(以下「本願の優先日」という。)前に日本国内において頒布された刊行物である,国際公開第2007/060829号(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある。
a「技術分野
[0001] 本発明は,携帯電話機に係り,さらに詳しくは,テレビ放送を視聴することができる携帯電話機の改良に関する。
・・・
[0012]・・・また,本発明は,テレビ放送を視聴しながら受信した電子メールの文字情報を閲覧することができる携帯電話機を提供することを目的とする。
・・・
[0053] また,本発明によれば,表示画面にテレビ画像を表示している状態で電子メールを受信した場合に,テレビ画像を表示した状態のまま,受信した電子メールの文字情報を表示画面にスクロール表示させることができるので,テレビ放送を視聴しながら受信した電子メールの文字情報を閲覧することができる。」
b「[0056]実施の形態1.
図1は,本発明の実施の形態1による携帯電話機1の一例を示した斜視図であり,筐体を閉じた状態を示している。図2は,図1の携帯電話機1の筐体を展開した状態を示した斜視図である。この携帯電話機1は,いわゆる折り畳み式の携帯電話機であり,それぞれ長方形形状に形成された表示筐体2及び操作筐体5がヒンジ部3を介して連結され,表示筐体2及び操作筐体5の筐体面を対向させた状態で折り畳むことができるようになっている。
[0057] 表示筐体2には,折り畳んだ状態で操作筐体5に対向する内面にメイン表示部2a及び受話用レシーバ8が配置されている。メイン表示部2aは,長方形形状に形成されており,その長手方向が表示筐体2の長手方向と一致するように配置されている。・・・
[0058] 操作筐体5には,折り畳んだ状態で表示筐体2に対向する内面に多数の操作キー4及び送話用マイクロホン7が配置されている。・・・
・・・
[0061] ヒンジ部3は,操作筐体5に対して回動可能に連結される連結部3aと,表示筐体2の外面に対向して表示筐体2を保持する保持部3bとが一体的に形成された構成を有している。・・・
[0062] ・・・保持部3bは,表示筐体2をメイン表示部2aに水平な面内で回転可能に保持しており,表示筐体2は,操作筐体5に対する傾斜角度を保った状態で回転できるようになっている。・・・
[0063] ・・・ユーザは,操作筐体5を把持した状態で,表示筐体2をメイン表示部2aに水平な面内において90°の角度範囲内で回転させることにより,図2に示した縦長状態と図4に示した横長状態との間で表示筐体2を回転させることができる。
・・・
[0077] 図11は,この携帯電話機1の電気的構成の一例を示したブロック図である。この携帯電話機1は,上述したメイン表示部2a,サブ表示部11,受話用レシーバ8,送話用マイクロホン7及び操作キー4に加えて,スピーカ9,外部入出力端子10,通信部23,テレビ放送受信部24及び回転位置検知部25を備えており,それらの動作が,プロセッサからなる制御部30により制御されるようになっている。
・・・
[0083] テレビ放送受信部24は,テレビ放送受信用アンテナ24aを介して,テレビ局から発信されているテレビ放送波を受信するためのものである。・・・
・・・
[0085] 回転位置検知部25は,例えば機械的又は電気的なスイッチにより構成され,表示筐体2の回転位置を検知する。この回転位置検知部25は,ユーザによる表示筐体2の回転操作を検出する回転操作検出手段である。」
c「[0127]実施の形態3.
図19は,本発明の実施の形態3による携帯電話機1の電気的構成の一例を示したブロック図である。この携帯電話機1は,実施の形態1と同様に,メイン表示部2a,サブ表示部11,受話用レシーバ8,送話用マイクロホン7,操作キー4,スピーカ9,外部入出力端子10,通信部23,テレビ放送受信部24及び回転位置検知部25を備えるとともに,メモリ27を備えており,それらの動作が,プロセッサからなる制御部30により制御されるようになっている。また,この携帯電話機1は,図1?図10に示した実施の形態1と同様の構成を有している。実施の形態1と同様の構成については,図に同一符号を付して説明を省略することとする。
[0128] 通信部23は,通信用アンテナ23aを介して基地局との間で電波の送受信を行うことにより,通話音だけでなく電子メールの送受信も行っている。・・・
・・・
[0129] 図20は,通信部23及びテレビ放送受信部24で信号を受信したときの動作について説明するためのブロック図である。本実施の形態において,制御部30は,プログラム処理を実行することにより,文字情報抽出部51,スクロール表示部52,アプリケーション起動部53及びテレビ出力部54として機能する。
[0130] ・・・テレビ出力部54には,テレビ画像表示部55とテレビ音声出力部56とが含まれている。
[0131] テレビ画像表示部55は,テレビ放送波に基づくテレビ画像や文字情報をメイン表示部2aに表示させるものであり,メイン表示部2aに表示させる画像を回転させるための画像回転部57が含まれる。・・・
[0132] 画像回転部57は,テレビ放送受信部24においてテレビ放送波を受信しているときに,回転位置検知部25からの入力信号に基づいてメイン表示部2aに表示させる画像を回転させる。すなわち,テレビ放送波の受信中,表示筐体2が縦長状態から横長状態に切り替えられた場合には,横長状態とされたメイン表示部2aの短手方向を上下方向としてテレビ画像が表示され,表示筐体2が横長状態から縦長状態に切り替えられた場合には,縦長状態とされたメイン表示部2aの長手方向を上下方向としてテレビ画像が表示されることにより,テレビ画像の方向が回転位置に合わせられるようになっている。
[0133] 相手方通信端末からの電子メールを通信部23で受信した場合には,その電子メールの本文や件名,相手方通信端末のメールアドレスなどのメール情報がメモリ27に格納される。このとき,メイン表示部2aが横長状態とされており,かつ,テレビ出力部54においてテレビ画像及びテレビ音声が出力されていれば,文字情報抽出部51が,メール情報から電子メールの本文の文字情報を抽出する。
[0134] 抽出された文字情報は,スクロール表示部52によりメイン表示部2aにスクロール表示される。ここで,スクロール表示とは,メイン表示部2aの一定領域内において,時間経過とともに移動するように文字情報が表示される表示態様であり,いわゆるマーキー表示を意味する。すなわち,電子メールの本文の文字情報が,その文頭から順次にメイン表示部2aに表示され,メイン表示部2a上において一定方向に移動した後,文頭から順次にメイン表示部2aから消去される。
[0135] アプリケーション起動部53は,横長状態のメイン表示部2aでテレビ放送を視聴しているときに電子メールを受信し,その電子メールの本文の文字情報がメイン表示部2aにスクロール表示された場合に,そのスクロール表示の開始後,ユーザ操作のタイミングに応じたアプリケーションを起動させる。本実施の形態では,上記ユーザ操作は,表示筐体3を横長状態から縦長状態まで回転させる操作であり,その検知信号が回転位置検知部25からアプリケーション起動部53に入力されるようになっている。
[0136] アプリケーション起動部53は,メール閲覧アプリケーションを起動させるためのメール閲覧アプリケーション起動部53aと,メール作成アプリケーションを起動させるためのメール作成アプリケーション起動部53bとからなる。メール閲覧アプリケーションは,受信した電子メールの本文の文字情報を閲覧するためのアプリケーションである。・・・
[0137] 図21は,図20のスクロール表示部52が受信した電子メールの本文の文字情報をメイン表示部2aにスクロール表示する態様の一例を示した図である。メイン表示部2aが横長状態でテレビ画像を表示しているときに電子メールを受信すると,メイン表示部2aがテレビ画像表示領域2b及びスクロール表示領域2cに分割される。そして,テレビ画像表示領域2bには,それまでメイン表示部2aに表示されていたテレビ画像が継続して表示され,スクロール表示領域2cには,受信した電子メールの本文の文字情報がスクロール表示される。
[0138] スクロール表示領域2cは,メイン表示部2aの長辺に沿って,すなわち横長状態とされたメイン表示部2aの上辺又は下辺に沿って配置される。図21の例では,スクロール表示領域2cは,横長状態とされたメイン表示部2aの下辺に沿って配置されており,左右方向に直線状に延びる1行分の表示領域として構成されている。
[0139] スクロール表示領域2cには,受信した電子メールの本文の文字情報が,スクロール表示領域2cの右端から左端へとユーザが読むことができる程度の速度でスクロール表示される。より具体的には,まず,文頭の文字情報がスクロール表示領域2cの右端に表示された後,その文頭の文字情報が時間経過とともに左方へ移動し,当該文頭の文字情報に後続する文字情報が順次にスクロール表示領域2cの右端に表示される(図21(a)参照)。
[0140] その後,文頭の文字情報がスクロール表示領域2cの左端まで移動すると(図21(b)参照),その文頭の文字情報がスクロール表示領域2cに対して非表示とされ,後続する文字情報がスクロール表示領域2cの左端に表示される。このようにして,文頭の文字情報に後続する文字情報が順次にスクロール表示領域2cの左端に表示され,そして順次に非表示とされることにより,受信した電子メールの本文の文字数がスクロール表示領域2cに表示可能な文字数よりも多い場合であっても,文末の文字情報までスクロール表示領域2cに表示することができるようになっている(図21(c)参照)。
・・・
[0142] このように,メイン表示部2aにテレビ画像を表示している状態で電子メールを受信した場合に,テレビ画像を表示した状態のまま,受信した電子メールの本文の文字情報をメイン表示部2aにスクロール表示させることができるので,テレビ放送を視聴しながら受信した電子メールの本文の文字情報を閲覧することができる。・・・
[0143] したがって,テレビ放送を視聴しながら受信した電子メールの本文の文字情報をスクロール表示で確認し,直ちに全文を閲覧したい場合や返信用の電子メールを作成したい場合には,ユーザ操作によりアプリケーションを起動させることができる。・・・
[0144] 図22は,スクロール表示の開始後にユーザ操作に応じてアプリケーション起動部53がアプリケーションを起動させる態様の一例を示した図である。スクロール表示の開始後に,ユーザが所定のタイミングで表示筐体3を横長状態から縦長状態まで回転させると,メイン表示部2aがテレビ画像表示領域2d及びメール表示領域2eに分割される。
[0145] 本実施の形態では,縦長状態とされたメイン表示部2aの上側にテレビ画像表示領域2dが配置され,下側にメール表示領域2eが配置される。・・・
[0146] テレビ画像表示領域2dには,それまで横長状態のメイン表示部2aにおけるテレビ画像表示領域2bに表示されていたテレビ画像が継続して表示される。メール表示領域2eには,受信した電子メールの本文の文字情報を閲覧するための画面(図22(a)参照),又は受信した電子メールに対する返信用の電子メールを作成するための画面(図22(b)参照)が表示される。
[0147] 図21(a)や図21(b)に示すように,受信した電子メールの本文の文字情報がメイン表示部2aにすべてスクロール表示される前に,ユーザが表示筐体3を横長状態から縦長状態まで回転させた場合には,メール閲覧アプリケーションが起動され,図22(a)に示すようなメール閲覧画面がメイン表示部2aに表示される。このメール閲覧画面におけるメール表示領域2eには,受信した電子メールの送信元である相手方通信端末の所有者名又はメールアドレスとともに,相手方通信端末において作成された電子メールの件名及び本文の文字情報が表示される。」
d「[0155] 図23は,表示筐体2が横長状態のときに電子メールを受信した場合に行われるメール受信処理の一例を示したフローチャートである。・・・
[0156] 一方,表示筐体2が横長状態のときに相手方通信端末から電子メールを受信した場合に,テレビ放送受信部24においてテレビ放送波を受信していれば(ステップS501でYes),受信した電子メールの本文や件名,相手方通信端末のメールアドレスなどのメール情報がメモリ27に格納されるとともに(ステップS502),文字情報抽出部51によりメール情報から本文の文字情報が抽出される(ステップS503)。そして,メイン表示部2aがテレビ画像表示領域2b及びスクロール表示領域2cに分割され,スクロール表示部52により,抽出された電子メールの本文の文字情報がスクロール表示領域2cにスクロール表示される(ステップS504)。
[0157] スクロール表示開始後に,表示筐体3を横長状態から縦長状態まで回転させるユーザ操作が行われた場合(ステップS505でYes),そのユーザ操作が,スクロール表示領域2cに本文の文字情報がすべてスクロール表示される前であれば(ステップS506でYes),メール閲覧アプリケーション起動部53aによりメール閲覧アプリケーションが起動され(ステップS507),図22(a)に示したようなメール閲覧画面がメイン表示部2aに表示される(ステップS508)。」
(イ)引用発明1
a 上記(ア)a及びcより,引用文献1記載の発明は,携帯電話機の表示画面であるメイン表示部2aにテレビ画像を表示し,テレビ放送を視聴している状態で電子メールを受信した場合に,受信した電子メールの文字情報を上記メイン表示部2aにスクロール表示して,受信した電子メールの文字情報を閲覧することができるようにした携帯電話機に関するものと認められる。
b 上記(ア)bより,引用文献1記載の発明は,メイン表示部2aが配置された表示筐体2,及び多数の操作キー4が配置された操作筐体5がヒンジ部3を介して連結された上記携帯電話機が,上記操作筐体5に対する傾斜角度を保った状態で,上記表示筐体2を上記メイン表示部2aに水平な面内において90°の角度範囲内で回転させる,ユーザによる上記表示筐体2の回転操作によって,上記表示筐体2が横長状態から縦長状態に切り替えられたことを検知する回転位置検知部25を備えるものと認められる。
c 上記(ア)c及びdより,引用文献1記載の発明は,上記表示筐体2の上記メイン表示部2aがテレビ画像表示領域2b及びスクロール表示領域2cに分割され,上記スクロール表示領域2cに受信した電子メールの本文の文字情報がスクロール表示されるとともに,受信した電子メールの本文の文字情報が上記メイン表示部2aにすべてスクロール表示される前に,回転位置検知部25によって,ユーザが上記表示筐体2を横長状態から縦長状態まで回転させる操作を検出した場合には,上記メイン表示部2aに,受信した電子メールの送信元である相手方通信端末の所有者名又はメールアドレスとともに,相手方通信端末において作成された電子メールの件名及び本文の文字情報が表示されるようにする,メール閲覧アプリケーション起動部53aを備えるものと認められる。
d 上記aないしcより,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「携帯電話機のメイン表示部2aにテレビ画像を表示し,テレビ放送を視聴している状態で電子メールを受信した場合に,受信した電子メールの文字情報を上記メイン表示部2aにスクロール表示して,受信した電子メールの文字情報を閲覧することができるようにした携帯電話機において,
上記メイン表示部2aが配置された表示筐体2,及び多数の操作キー4が配置された操作筐体5がヒンジ部3を介して連結された上記携帯電話機が,上記操作筐体5に対する傾斜角度を保った状態で,上記表示筐体2を上記メイン表示部2aに水平な面内において90°の角度範囲内で回転させる,ユーザによる上記表示筐体2の回転操作によって,上記表示筐体2が横長状態から縦長状態に切り替えられたことを検知する回転位置検知部25と,
上記表示筐体2の上記メイン表示部2aがテレビ画像表示領域2b及びスクロール表示領域2cに分割され,上記スクロール表示領域2cに受信した電子メールの本文の文字情報がスクロール表示されるとともに,受信した電子メールの本文の文字情報が上記メイン表示部2aにすべてスクロール表示される前に,回転位置検知部25によって,ユーザが上記表示筐体2を横長状態から縦長状態まで回転させる操作を検出した場合には,上記メイン表示部2aに,受信した電子メールの送信元である相手方通信端末の所有者名又はメールアドレスとともに,相手方通信端末において作成された電子メールの件名及び本文の文字情報が表示されるようにする,メール閲覧アプリケーション起動部53aと,
を備える携帯電話機。」
イ 引用文献2の記載と引用発明2
(ア)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2005-151338号公報(以下「引用文献2」という。)には,図面とともに次の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は映像情報の受信およびメールの送受信を行うことのできる携帯通信端末及び携帯通信端末の制御方法,携帯通信端末の制御プログラム並びにこれを記録した記録媒体に関する。
・・・
【0007】
本発明は,上記の問題点に鑑みてなされたものであり,その目的は,携帯通信端末の有する比較的小さな表示画面において,映像データを表示中でも,メールの内容をユーザが確実に確認できるように表示することが可能な,携帯通信端末及び携帯通信端末の制御方法,携帯通信端末の制御プログラム並びにこれを記録した記録媒体を提供することにある。」
・「【0048】
本発明の一実施形態について図1から図6に基づいて説明すると以下の通りである。なお,本発明は,映像と文字とを表示できる任意の携帯通信端末に適用できるが,以下では,好適な実施形態として,テレビ放送信号の受信および表示が可能な携帯電話端末(以下,携帯電話端末と呼ぶ)について説明する。
【0049】
図1は,本実施形態の携帯電話端末1の内部構成を表すブロック図である。図1に示すように,携帯電話端末1は,チューナー2,無線部3,操作部4,表示部5,制御部6,スピーカ7を有している。また,本実施形態の携帯電話端末1の外観は,図2のようになっている。
・・・
【0053】
表示部5は,図2に示すような表示画面50を有し,チューナー2が受信したテレビ映像を表示し,また,無線部3が受信したメールデータの文字コンテンツを表示する。テレビ信号受信時,携帯電話端末1の小さな画面を有効に利用するため,映像の表示は図3に示すように表示画面50のほぼ全体を利用して行われるものとする。表示部5における表示画面50には,図3に示すように,映像表示領域5Aと情報表示領域5Bとがあるものとする。この映像表示領域5Aには,動画,静止画が表示される。また,下記で説明するメール作成画面が表示される。情報表示領域5Bには,電波状況,電池残量,現在の選択モード,日付,時刻等が表示されるものとする。また,メールを受信したこと示す表示も情報表示領域5Bに表示されるものとする。なお,このような表示画面50における表示は単なる例示であって,上記に限定されることはない。以下で,表示画面50においてメールデータの文字コンテンツを表示する領域をメール表示領域と呼ぶことにする。
・・・
【0057】
次に上述した制御部6における,各機能ブロックについて説明する。制御部4(当審注.「制御部6」の誤記と認める。)は,機能ブロックとして,図1に示すように,チューナー制御部61,画像データ処理部62,音声データ処理部63,文字データ処理部64,通信制御部65,メールデータ処理部66,メールデータ作成部67,記憶部68,表示データ作成部69を備えている。
・・・
【0067】
表示データ作成部(表示データ作成手段)69が,映像データとメールデータとを組み合わせて表示画面50に表示させる場合について説明する。
【0068】
初めに,表示画面50の情報表示領域5Bに受信したメールを表示できるように設定されている場合,表示データ作成部69は,図4(a)に示すように,映像表示領域5Aでのテレビ映像の表示を続行するとともに,受信したメールを情報表示領域5Bに表示させる。このように,受信したメールを情報表示領域5Bに表示させることで,表示画面50を有効に使用することができる。」
(イ)引用発明2
上記(ア)より,引用文献2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「映像情報の受信およびメールの送受信を行うことのできる携帯電話端末1において,表示画面50のほぼ全体を利用して映像表示領域5Aでのテレビ映像の表示を続行するとともに,受信したメールを情報表示領域5Bに表示させることで,表示画面50を有効に使用し,映像データを表示中でも,メールの内容をユーザが確実に確認できるように表示すること。」
ウ 引用文献3の記載と引用発明3
(ア)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,国際公開第2006/038586号(以下「引用文献3」という。)には,図面とともに次の記載がある。
・「[0001]本発明はテレビ受信部を備える電話装置に関する。」
・「[0046]図1(a)は実施例1の電話装置における内部の構成図である。電話装置本体1に有線,無線を問わずまたアナログ信号,デジタル信号を問わないテレビ放送を受信するテレビ受信部2と,有線,無線を問わずまたアナログ,デジタルを問わず,また回線接続,回線共有(パケット通信,IP(Internet Protocol)通信網)を問わない公衆回線3に接続され,電話の通話や電子メールの送受等を行う電話通信部4と,電話や電子メールの着信を検出して電話通信部を介して着信時に得られる発信者を特定するための発信者情報,たとえば,電話番号や電子メールアドレス,IPアドレス,発信者の名前や名称を示す文字コードや文字コード列等を検出する着信検出部5と,着信検出部5によって着信が検出された時に・・・着信を報知する着信報知部6と,発信者情報をあらかじめ電話帳情報として記憶する電話帳部7と,液晶やEL(Electro Luminescence)などで構成された表示部9にテレビ放送の内容を表示し,その表示中に着信検出部5により着信を検出した場合,着信検出部5から得られた発信者情報と電話帳情報とを対比して,発信者情報と電話帳情報とが一致した時には表示部9にテレビ放送の内容と発信者情報または電話帳情報とを同時に表示し,一致しない時には発信者情報または電話帳情報を表示しないよう制御する着信表示制御部8とを備えている。
・・・
[0048]図2には本発明の実施例1における電話装置の動作フローを表したフローチャートを示している。着信検出部5で着信が検出されると(S1),着信表示制御部8によってテレビの視聴中であるかどうかが判断され,視聴中でないと判断された場合(S2のいいえ),着信報知部6によって光の点灯や点滅,スピーカー,有線・無線を問わず外部に接続されたイヤホンやヘッドホン等による音声や音響,モーター等の振動素子による振動によって着信が報知される(S3)。視聴中であると判断された場合(S2のはい),発信者情報が送られてこない着信,・・・(S4のいいえ)もS3と同様の動作をする。発信者情報が送られてくる着信の場合(S4のはい)には,発信者情報に基づいて電話帳部7に登録されている電話番号や電子メールアドレスやIPアドレス等の発信者情報の有無を検索して(S5),無ければ(S6のいいえ)上記,S3と同じ動作を行う。・・・
[0049]・・・次に,電話帳部7に登録されている発信者情報であれば(S6のはい),視聴中のテレビ画面と同時に発信者情報またはこの発信者情報に対応する電話帳情報に基づく着信の表示を表示部9に対して行う(S7)。
[0050]図3はその表示の形態の一例で,図3(a)は表示部9に表示されているテレビ画面10であり,S7の着信動作を行った表示状態を図3(b)に示している。この例では電話の着信を着信表示窓11に発信者の電話番号と電話帳情報として記憶されていた発信者名とを表示している。
・・・
[0053]さらに,表示する文字数が多い場合には表示すべき発信者名や電子メールアドレス,電子メールの題名などの文字を動かす表示,つまりスクロール表示を行うことも可能である。この着信が電子メールの着信である場合には,電子メールのアドレスや電話帳情報として登録されている名前・名称や題名(サブジェクト)のいずれかを組み合わせて表示することも可能である。また,電子メールの本文の冒頭からあらかじめ定めた(使用者による設定も含む)文字数分を表示することも可能である。
[0054]また,このように表示された着信表示窓11について,これを消すタイミングとしてはあらかじめ定めた時間(使用者による設定を含む)表示されたら(S8のはい),これを消去して(S9)元のテレビ画面の表示(図3(a)のような)に戻す。・・・」
(イ)引用発明3
上記(ア)より,引用文献3には,次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「テレビ受信部2と電話の通話や電子メールの送受等を行う電話通信部4と表示部9とを少なくとも備える電話装置において,テレビの視聴中に電話又は電子メールの着信が検出されると,上記表示部9に視聴中のテレビ画面と同時に,上記表示部9の着信表示窓11に発信者の電話番号及び発信者名,又は電子メールアドレス,題名及び本文をスクロール表示し,使用者により設定されたあらかじめ定めた時間表示されたら,上記着信表示窓11を消去して元のテレビ画面の表示に戻すこと。」

(4)周知例の記載と周知技術
ア 周知例1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2005-136457号公報(以下「周知例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0017】
携帯電話機1は,スライド開閉式の構造を有し,図1(a)に示す第1筐体10と第2筐体11とが全体的に重なった状態である閉状態と,図1(b)に示す第1筐体10が第2筐体11上を平行移動した開状態との2状態を取る。
・・・
【0025】
図2(a)は,前記閉状態の携帯電話機1がテレビ放送を受信し,表示部12にテレビ映像を映す様子を示している。
【0026】
図2(b)は,前記開状態の携帯電話機1がテレビ放送を受信し,表示部12にテレビ映像を映す様子を示している。
【0027】
表示部12は,前記開状態においては,表示すべき情報を,縦長画面として表示し,前記閉状態においては,表示すべき情報を,横長画面として表示する。」
イ 周知例2
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2006-128982号公報(以下「周知例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0016】
・・・
この装置本体は,2つの筐体1,2から構成されており,キー操作部3を備えた本体筐体(下部筐体)1と,表示部4を備えた表示筐体(上部筐体)2とは,筐体付きのヒンジ機構部(連結部)5を介して取り付けられている。
・・・
【0018】
・・・
なお,上述した図1(A)に示すように表示筐体2が本体筐体1に重なり合っている状態を「クローズスタイル」と呼称し,また,図1(B)に示すように本体筐体1と表示筐体2とを開いた状態を「正転オープンスタイル」,図2(A)に示すように表示筐体2を180°回転させてその表示部4を逆向きに反転させた状態を「反転オープンスタイル」,図2(B)に示すように表示部4を逆向きに反転させた状態から表示筐体2を本体筐体1に重ね合わせた状態を「ビュースタイル」と呼称する。ここで,図2(A)に示した「反転オープンスタイル」は,「正転オープンスタイル」から「ビュースタイル」に変更する過程での過渡的なスタイルである。
・・・
【0020】
表示部4は,たとえば,カラー液晶画面であり,縦横比の異なる高精細ディスプレイであり,待受画面,メニュー画面,メール作成画面,電話帳出力画面,カメラ撮影時のファインダ画面,カメラ画像の再生画面等として機能する。この表示部4は,図1(B)に示す「正転オープンスタイル」では,縦長画面として使用され,図2(B)に示す「ビュースタイル」では横長画面として使用されるが,その際,縦長画面,横長画面に応じてデータの表示向きが変更される。すなわち,図3(A)に示すように縦長画面ではその短辺方向に沿ってデータが配列表示され,また,図3(B)に示すように横長画面ではその長手方向に沿ってデータが配列表示されるため,同一のデータを同じ文字サイズおよび文字ピッチで表示するものとすると,横長画面はその列方向(横方向)に多くのデータを表示することが可能となり,また,縦長画面はその行方向(縦方向)に多くのデータを表示することが可能となる。」
ウ 周知技術
上記ア及びイより,表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことによって,上記表示部を含む部分が横長状態から縦長状態に切り替えられたことを検知することは,周知例1及び2にみられるように,本願の優先日前,当該技術分野では周知の技術と認められる。

(5)本願補正発明と引用発明1との対比
ア 引用発明1における「メイン表示部2a」及び「携帯電話機」は,それぞれ,本願補正発明の「表示部の表示画面」及び「携帯端末装置」に相当するといえる。
そして,引用発明1における「携帯電話機のメイン表示部2aにテレビ画像を表示し,テレビ放送を視聴している状態」は,本願補正発明の「ユーザが作業中」に相当するといえる。
また,引用発明1における「電子メールを受信した場合」,「受信した電子メールの文字情報」,及び「上記メイン表示部2aにスクロール表示して,」「閲覧することができるようにした」ことは,それぞれ,本願補正発明の「通知するべきイベントが発生した際」,「イベント通知」,及び「表示部の表示画面に」「表示して前記ユーザに通知する」ことに相当するといえる。
そうすると,引用発明1における「携帯電話機のメイン表示部2aにテレビ画像を表示し,テレビ放送を視聴している状態で電子メールを受信した場合に,受信した電子メールの文字情報を上記メイン表示部2aにスクロール表示して,受信した電子メールの文字情報を閲覧することができるようにした携帯電話機」は,本願補正発明の「ユーザが作業中に通知するべきイベントが発生した際に,表示部の表示画面にイベント通知を表示して前記ユーザに通知する携帯端末装置」に相当するといえる。
イ 引用発明1における「上記メイン表示部2aが配置された表示筐体2」及び「多数の操作キー4が配置された操作筐体5」は,それぞれ,本願補正発明の「前記表示部を含む部分」及び「キーボード部を含む部分」に相当するといえる。
そして,本願補正発明の「前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された前記携帯端末装置」と,引用発明1における「上記メイン表示部2aが配置された表示筐体2,及び多数の操作キー4が配置された操作筐体5がヒンジ部3を介して連結された上記携帯電話機」とは,後述する相違点に係る構成を除き,表示部を含む部分及びキーボード部を含む部分で形成された前記携帯端末装置との点で共通するといえる。
さらに,本願補正発明の「前記携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知する形状検知手段」と,引用発明1における「上記携帯電話機が,上記操作筐体5に対する傾斜角度を保った状態で,上記表示筐体2を上記メイン表示部2aに水平な面内において90°の角度範囲内で回転させる,ユーザによる上記表示筐体2の回転操作によって,上記表示筐体2が横長状態から縦長状態に切り替えられたことを検知する回転位置検知部25」とは,後述する相違点に係る構成を除き,携帯端末装置の形状が変化したことを検知する検知手段との点で共通するといえる。
そうすると,本願補正発明と引用発明1とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分で形成された前記携帯端末装置の形状が,」「変化したことを検知する」検知手段を備える点で共通するということができる。
ウ(ア)本願補正発明の「前記作業を妨げない選択された余白エリア」と,引用発明1における「スクロール表示領域2c」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「余白エリア」である点で共通するといえる。
そして,上記アより,引用発明1における「受信した電子メールの本文の文字情報」は,本願補正発明の「イベント通知」に相当するといえる。
そうすると,本願補正発明の「イベント表示手段」と引用発明1における「メール閲覧アプリケーション起動部53a」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記表示部の表示画面の」「余白エリアに前記イベント通知を」「スクロール表示する」表示手段である点で共通するということができる。
(イ)引用発明1における「受信した電子メールの本文の文字情報が上記メイン表示部2aにすべてスクロール表示される前」,及び「受信した電子メールの送信元である相手方通信端末の所有者名又はメールアドレスとともに,相手方通信端末において作成された電子メールの件名及び本文の文字情報が表示されるようにする」ことは,それぞれ,本願補正発明の「前記イベント通知の表示中」,及び「前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更する」ことに相当するといえる。
そして,上記イより,本願補正発明の「前記形状検知手段によって前記形状の変化が検出された時」と,引用発明1における「回転位置検知部25によってユーザが上記表示筐体2を横長状態から縦長状態まで回転させる操作を検出した場合」とは,後述する相違点に係る構成を除き,検知手段によって携帯端末装置の形状の変化が検出された時である点で共通するといえる。
そうすると,本願補正発明の「イベント表示手段」と引用発明における「メール閲覧アプリケーション起動部53a」とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記イベント通知の表示中に」前記検出手段によって「前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更する」表示手段である点でも共通するということができる。
(ウ)以上から,本願補正発明と引用発明1とは,後述する相違点に係る構成を除き,「前記表示部の表示画面の」「余白エリアに前記イベント通知を」「スクロール表示するとともに,前記イベント通知の表示中に」前記検出手段によって「前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更する」表示手段を備える点で共通するということができる。
エ 上記アないしウより,本願補正発明と引用発明1との一致点と相違点は,次のとおりであると認められる。
(ア)一致点
「ユーザが作業中に通知するべきイベントが発生した際に,表示部の表示画面にイベント通知を表示して前記ユーザに通知する携帯端末装置において,
前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分で形成された前記携帯端末装置の形状が,変化したことを検知する検知手段と,
前記表示部の表示画面の余白エリアに前記イベント通知をスクロール表示するとともに,前記イベント通知の表示中に前記検出手段によって前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更する表示手段と,
を備える携帯端末装置。」
(イ)相違点
・相違点1
一致点に係る構成の「前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分で形成された前記携帯端末装置の形状が,変化したことを検知する検知手段」について,本願補正発明の「形状検知手段」は,「前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された前記携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知する」のに対し,引用発明1の「回転位置検知部25」は,「上記メイン表示部2aが配置された表示筐体2,及び多数の操作キー4が配置された操作筐体5がヒンジ部3を介して連結された上記携帯電話機が,上記操作筐体5に対する傾斜角度を保った状態で,上記表示筐体2を上記メイン表示部2aに水平な面内において90°の角度範囲内で回転させる,ユーザによる上記表示筐体2の回転操作によって,上記表示筐体2が横長状態から縦長状態に切り替えられたことを検知する」ものであって,携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知するものではない点。
・相違点2
一致点に係る構成の「表示手段」における「前記表示部の表示画面の余白エリアに前記イベント通知をスクロール表示する」点について,本願補正発明の「余白エリア」は,「前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された」ものであるのに対し,引用発明1の「スクロール表示領域2c」は,「上記表示筐体2の上記メイン表示部2aがテレビ画像表示領域2b及びスクロール表示領域2cに分割され」たものであるとの特定にとどまり,本願補正発明の「余白エリア」のような特定はされていない点。
・相違点3
一致点に係る構成の「表示手段」における「前記表示部の表示画面の余白エリアに前記イベント通知をスクロール表示する」点について,本願補正発明は,「表示時間を変更可能」にするのに対し,引用発明1ではそのような処理はされない点。

(6)相違点についての検討
ア 相違点1について
上記(3)ア(イ)のとおり,引用発明1は,多数の操作キー4が配置された操作筐体5(本願補正発明の「キーボード部を含む部分」に相当。)に対する傾斜角度を保った状態で,メイン表示部2aが配置された表示筐体2(本願補正発明の「表示部を含む部分」に相当。)を上記メイン表示部2aに水平な面内において90°の角度範囲内で回転させる,ユーザによる上記表示筐体2の回転操作によって,上記表示筐体2が横長状態から縦長状態に切り替えられたことを検知するものである。
そして,上記(4)ウのとおり,表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことによって,上記表示部を含む部分が横長状態から縦長状態に切り替えられたことを検知することは,周知例1及び2にみられるように,本願の優先日前,当該技術分野では周知の技術と認められる。
そうすると,引用発明1において,上記表示筐体2の切り替えの検知を,上記のユーザによる上記表示筐体2の回転操作を検知して行うか,上記表示筐体2と上記操作筐体5とを開閉自在に形成し,携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知して行うかは,当業者が適宜選択し得るものといえる。
以上から,引用発明1において,「回転位置検知部25」に代えて,「前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された前記携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知する形状検知手段」を備える構成とすること(相違点1に係る構成とすること)は,上記周知技術に接した当業者が適宜なし得たものである。
イ 相違点2について
引用文献1の記載(上記(3)ア(ア)a)によれば,引用発明1は,テレビ放送を視聴しながら受信した電子メールの文字情報を閲覧することができる携帯電話機を提供することを目的とするものである。
そして,上記(3)イ(イ)のとおり,引用文献2には,映像情報の受信およびメールの送受信を行うことのできる携帯電話端末1において,表示画面50のほぼ全体を利用して映像表示領域5Aでのテレビ映像の表示を続行するとともに,受信したメールを情報表示領域5Bに表示させることで,表示画面50を有効に使用し,映像データを表示中でも,メールの内容をユーザが確実に確認できるように表示すること(引用発明2)が記載されていると認められる。
そうすると,引用発明1において,上記の目的を達成するために,メイン表示部2a(本願補正発明の「表示部」に相当。)のほぼ全体を利用してテレビ画像を表示し,上記メイン表示部2aの余白エリアに受信した電子メールの本文の文字情報をスクロール表示して,上記メイン表示部2aを有効に使用することは,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものということができる。
そして,引用発明1に引用発明2を適用して得られた上記メイン表示部2aの余白エリアは,上記メイン表示部2aにテレビ画像を表示し,テレビ放送を視聴すること(本願補正発明における「(ユーザの)作業」に相当。)を妨げない選択された余白エリア(相違点2に係る構成)と認められる。
以上から,相違点2に係る構成は,引用発明1において,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 相違点3について
(ア)上記(3)ウ(イ)のとおり,引用文献3には,テレビ受信部2と電話の通話や電子メールの送受等を行う電話通信部4と表示部9とを少なくとも備える電話装置において,テレビの視聴中に電話又は電子メールの着信が検出されると,上記表示部9に視聴中のテレビ画面と同時に,上記表示部9の着信表示窓11に発信者の電話番号及び発信者名,又は電子メールアドレス,題名及び本文をスクロール表示し,使用者により設定されたあらかじめ定めた時間表示されたら,上記着信表示窓11を消去して元のテレビ画面の表示に戻すこと(引用発明3)が記載されていると認められる。
そして,テレビ放送を視聴しながら受信した電子メールの文字情報を閲覧することができる携帯電話機を提供することを目的とする引用発明1において,メイン表示部2aのスクロール表示領域2cに受信した電子メールの本文の文字情報(本願補正発明の「イベント通知」に相当。)をスクロール表示する際,次に受信する電子メールの表示のために,上記文字情報の表示時間を制限しなければならないことは,当業者が当然に考慮する事項といえる。
そうすると,引用発明1において,メイン表示部2aのスクロール表示領域2cに受信した電子メールの本文の文字情報をスクロール表示する際,ユーザにより設定されたあらかじめ定めた時間,上記文字情報を表示するようにすることは,引用発明3に基づいて,当業者が容易に想到し得たものということができる。
そして,引用発明1に引用発明3を適用することで,上記文字情報を,その表示時間を変更可能にスクロール表示する(相違点3に係る構成)ようになると認められる。
(イ)なお,本願補正発明の「表示時間を変更可能にスクロール表示する」点について,審判請求人は,「また,ユーザは,そのような余白エリアでのイベントのスクロール表示中に,詳細表示モードへの移行が不要と判断した場合には,その表示時間を短くすることにより,イベント通知のスクロール表示を終了させ,ユーザの作業をより快適に継続することができます。 」(審判請求書「3(4)本願発明と引用発明との対比」,6頁13ないし16行)と主張する。
しかし,審判請求人の上記の主張は採用できない。その理由は以下のとおりである。
上記(2)のとおり,本件補正後の請求項1には,「前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知をその表示時間を変更可能にスクロール表示する」と記載されているだけで,イベント通知のスクロール表示中に表示時間の変更をすることは,本願補正発明を特定する事項として記載されているとは認められない。
そして,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願補正発明の「表示時間を変更可能にスクロール表示する」との文言について,「更に,ステップA4において一定の時間経過としたが,別途設定画面を設けて,ユーザが任意の値(経過時間)を設定することも可能である。」(段落【0025】)との記載,及び「次に,本発明の携帯端末装置及びそのイベント表示方法の他の実施例について説明する。上述した簡略イベント表示モードにおいて,ユーザがイベントの通知(又は表示)時間を変化又は自由に設定する手段を備える。この手段によれば,表示時間を延ばすと例えばメール内容を読むことが可能になる。他方,短くすれば,直ぐに通知又は表示が消えるので,ユーザの目障りを少なくすることが可能である。」(段落【0027】)との記載があるだけで,イベント通知のスクロール表示中に表示時間の変更をすることは記載されておらず,また,本願の優先日前における技術常識に照らしても,上記の記載より,イベント通知のスクロール表示中に表示時間の変更をすることが自明とはいえないから,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても,上記の文言が,イベント通知のスクロール表示中に表示時間の変更をすることと解することはできない。
そうすると,審判請求人の上記の主張は,本願補正発明の構成に基づかないものといわざるを得ない。
(ウ)以上から,相違点3に係る構成は,引用発明1において,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

(7)本願補正発明の作用効果について
本願明細書に記載された,「第1に,ユーザの作業を妨げることなく簡単にイベント通知が可能である。第2に,簡略イベント通知は,アイコンエリア等に文字やアイコンで一目瞭然に行うことが可能である。第3に,簡略イベント通知では,イベントをスクロールで表示するので限られた表示エリア(スペース)に比較的長文のメッセージが表示可能である。第4に,簡略イベント通知では,表示時間を決めているので表示時間の経過後には次のイベント通知が可能であり,またこの表示時間は必要に応じてユーザが任意に設定可能である。第5に,ユーザが筐体の形状を変更することにより,簡略イベント表示モードと詳細イベント表示を容易に選択可能である。」(段落【0011】)との本願補正発明の作用効果は,いずれも,引用発明1において,引用発明2,引用発明3,並びに周知例1及び2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に予測し得るものと認められる。
そうすると,本願補正発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

(8)まとめ
本件補正後の請求項1に係る発明(本願補正発明)は,引用文献1記載の発明(引用発明1),引用文献2及び3にそれぞれ記載の発明(引用発明2及び引用発明3),並びに周知例1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の容易想到性について
1 本願発明について
平成26年5月16日に提出された手続補正書による手続補正は前記のとおり却下された。
そして,平成25年12月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,前記第2の1のとおりであるが,当該請求項の「前記イベント通知の表示中に前記形状検出手段によって前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更する」との記載における「前記形状検出手段」は,「前記形状検知手段」の誤記と認められるから,上記手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ユーザが作業中に通知するべきイベントが発生した際に,表示部の表示画面にイベント通知を表示して前記ユーザに通知する携帯端末装置において,
前記表示部を含む部分およびキーボード部を含む部分が開閉自在に形成された前記携帯端末装置の形状が,閉じた状態から開いた状態へ変化したことを検知する形状検知手段と,
前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知を表示するとともに,前記イベント通知の表示中に前記形状検知手段によって前記形状の変化が検出された時には,前記イベントの詳細を表示するイベント詳細表示モードに変更するイベント表示手段と,
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

2 引用文献の記載と引用発明
引用文献1の記載,及び引用発明1は,前記第2の4(3)アのとおりである。
そして,引用文献2の記載,及び引用発明2は,前記第2の4(3)イのとおりであり,また,引用文献3の記載,及び引用発明3は,前記第2の4(3)ウのとおりである。

3 周知例の記載と周知技術
周知例1及び2の記載,並びに周知技術は,前記第2の4(4)のとおりである。

4 本願発明と引用発明1との対比及び判断
前記第2の1及び2より,本願発明は,本願補正発明において,補正事項による発明特定事項(「前記表示部の表示画面の前記作業を妨げない選択された余白エリアに前記イベント通知を表示するとともに,」)に対する限定(限定的減縮)を取り除いたものである。
そして,前記第2の4(6)で検討したとおり,本願補正発明は,引用文献1記載の発明(引用発明1),引用文献2及び3にそれぞれ記載の発明(引用発明2及び引用発明3),並びに周知例1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると,本願補正発明を包含する本願発明も,前記第2の4(6)で検討した理由により,原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献1記載の発明(引用発明1),引用文献2記載の発明(引用発明2),並びに周知例1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,前記第2の4(7)の理由により,本願発明が奏する作用効果は,格別のものとはいえない。

5 まとめ
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明(本願発明)は,原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献1記載の発明(引用発明1),引用文献2記載の発明(引用発明2),並びに周知例1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第4 結言

したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-04 
結審通知日 2015-03-10 
審決日 2015-03-23 
出願番号 特願2009-538063(P2009-538063)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 河口 雅英
山澤 宏
発明の名称 携帯端末装置及びそのイベント通知方法  
代理人 下坂 直樹  
代理人 机 昌彦  

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