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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1300478 |
審判番号 | 不服2013-25282 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-24 |
確定日 | 2015-05-07 |
事件の表示 | 特願2010-535091「メディア嗜好」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 5月28日国際公開、WO2009/067670、平成23年 2月10日国内公表、特表2011-504710〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2008年11月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年11月21日、米国 2008年7月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年1月17日付けの拒絶理由通知に対し、平成25年4月22日付けで、意見書・手続補正書が提出されたが、平成25年8月21日付けで拒絶査定がなされたものである。 本件は、上記拒絶査定を不服として、平成25年12月24日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.平成25年12月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年12月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成25年4月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項28に記載された、 「顔が所定のサイズの閾値を下回ることに基づき顔が検出から除外されるように、画像の顔をフィルタリングする手段と、 電子メディアデバイスに近接した領域の前記画像の内部で検出されたユーザの識別を決定する手段と、 決定された前記識別に基づいて前記ユーザに関連する個人化されたメディア設定にアクセスする手段と、 アクセスした個人化されたメディア設定に基づいて、前記電子メディアデバイスを制御する手段と、を含む、システム。」 という発明を、平成25年12月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項28に記載された、 「顔が所定のサイズの閾値を下回ることに基づき顔が検出から除外されるように、画像の顔をフィルタリングする手段と、 電子メディアデバイスに近接した領域の前記画像の内部で検出されたユーザの識別を決定する手段と、 決定された前記識別に基づいて前記ユーザに関連する個人化されたメディア設定にアクセスする手段と、 アクセスした個人化されたメディア設定に基づいて、前記電子メディアデバイスを制御する手段と、を含み、 前記電子メディアデバイスに近接した前記領域の前記画像の内部で検出された前記ユーザの前記識別を決定する手段は、 前記画像における複数のユーザを検出する手段と、 前記画像におけるリモコンの位置を検出する手段と、 検出された前記複数のユーザと検出された前記リモコンの位置とに基づいて、前記リモコンを操作している前記ユーザを識別する手段と、 前記リモコンを操作している前記ユーザの識別を決定する手段と、を含む、システム。」 という発明に補正することを含むものである。 なお、下線は当審で付したものである。 2.補正の適法性について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、平成25年4月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項28に記載された 「電子メディアデバイスに近接した領域の前記画像の内部で検出されたユーザの識別を決定する手段」に関して、 「前記画像における複数のユーザを検出する手段と、 前記画像におけるリモコンの位置を検出する手段と、 検出された前記複数のユーザと検出された前記リモコンの位置とに基づいて、前記リモコンを操作している前記ユーザを識別する手段と、 前記リモコンを操作している前記ユーザの識別を決定する手段と、を含む、」ものであることに限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3.独立特許要件について 上記補正後の発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後発明 本願の請求項28に係る発明(以下、「補正後発明」という。)は、上記の本件補正後の特許請求の範囲の請求項28に記載されたとおりのものと認める。 (2)刊行物1発明 原審の拒絶理由に引用された、特開2007-96890号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「テレビジョン受信装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【0001】 本発明はテレビジョン受信装置の制御に関し、より特定的には、視聴者を認識して、認識された視聴者に応じた動作の制御に関する。」 イ.「【0009】 本発明は、上述の問題点を解決するために成されたものであって、その第1の目的は、視聴者に応じた動作を実現できるテレビジョン受信装置を提供することである。 【0010】 第2の目的は、複数の視聴者が視聴している場合にも、視聴制御の対象となる視聴者に応じた制御が可能なテレビジョン受信装置を提供することである。」 ウ.「【0012】 この発明の他の局面に従うテレビジョン受信装置は、視聴者を予め撮影することにより生成された画像データから算出された特徴量と、視聴者に応じてテレビジョン受信装置の動作を制御するための制御データとを格納する記憶部と、視聴者の撮影により生成された画像データを取得する取得手段と、テレビジョン受信装置に対する指令の入力を受け付ける入力手段と、指令の入力に応答して、記憶部に格納されている特徴量と取得手段により取得された画像データとに基づいて、視聴者がテレビジョン受信装置に登録されている視聴者であるか否かを確認する認証手段と、認証手段による確認の結果に応じて、制御データに基づいてテレビジョン受信装置の動作を制御する制御手段とを備える。 (中略) 【0021】 好ましくは、取得手段は、被写体を撮影して画像データを生成する生成部を含む。入力手段は、テレビジョン受信装置を制御するリモコン端末から発信された制御信号を受信する受信手段を含む。認証手段は、制御信号の発信源の位置を特定する特定手段と、生成部により生成された画像データから、複数の顔の画像データを抽出する抽出手段と、特定手段により特定された位置と、抽出手段により抽出された各顔の画像データとに基づいて、リモコン端末の操作者を特定する操作者特定手段と、特定された操作者がテレビジョン受信装置に登録されている視聴者であるか否かを確認する確認手段とを含む。」 エ.「【0031】 カメラ150は、撮影可能な範囲に存在する被写体を撮影する。被写体には、テレビ100の視聴者、視聴者が操作するリモコン端末等が含まれる。カメラ150は、リモコン端末を撮影する場合、近赤外線光を受光できることが望ましい。したがって、カメラ150は、赤外カットフィルタを有さないものが好ましい。」 オ.「【0046】 発光位置検出部520は、カメラ150からの画像データに基づいて、リモコン端末300における発光位置を検出する。顔画像領域抽出部530は、メモリ152から読み出された画像データに基づいて、被写体の顔に相当する画像領域を抽出する。この抽出処理については後述する。 【0047】 特徴量算出部540は、顔画像領域抽出部530によって抽出された顔の画像領域に対応するデータに基づいて、その画像の特徴量を算出する。特徴量とは、抽出された領域を特定するためのデータから算出される当該領域の画像上の特徴を表わすデータをいう。本実施の形態においては、特徴量には、目の間隔、目と口の間隔、目元と目尻の間隔等が含まれる。これらの特徴量に加えて、目の大きさ、目の領域における瞳の領域の割合等が特徴量として用いられてもよい。あるいは、眉毛、まつげ、肌のほくろのように、白黒の濃淡が表われ易い領域の長さ、面積、形状などが特徴量として用いられてもよい。 【0048】 データ書込指令部550は、特徴量算出部540によって算出された特徴量をメモリ152に格納させる。格納のための指令は、出力部580を介して出力される。個人認証部560は、特徴量算出部540によって算出された特徴量と、メモリ152に予め格納されている視聴者の特徴量とに基づいて被写体の認証処理を行なう。認証処理は、たとえば算出された特徴量と予め記憶されている特徴量との差異を算出することにより行なわれる。この場合、差異が予め定められた範囲よりも小さい場合には、撮影された被写体は、予め登録されている被写体と同一であると判断される。そうでない場合には、登録されていない被写体が撮影されたと判断されることになる。」 カ.「【0052】 図7は、CPU110の内部のメモリ112におけるデータの格納の一態様を表わす図である。メモリ112は、テーブル710,720,730,740を含む。テーブル710は、データを格納する領域712,714を含む。テレビ100の視聴者を特定するためのデータ(視聴者ID)は、領域712に格納されている。視聴者に応じたテレビ100の制御内容は、領域712に格納されている。領域712,714に格納されているデータは、それぞれ関連付けられている。たとえば、視聴者ID「01」の視聴者は、「0:00から6:00」までテレビ100の視聴者が禁止されている。視聴者ID「02」の視聴者は、チャンネル100のみ視聴が可能とされている。一方視聴者ID「04」は、視聴が禁止されていない。なお、領域714に格納される制御内容は、図7に示されるものに限られない。具体的には、テレビ100が実行可能な動作を規定するものであってもよい。 キ.「【0071】 ステップS1214にて、CPU110は、リモコン端末300の発光位置を検出する。ステップS1216にて、CPU110は、撮影により取得された画像データから、被写体の顔に相当する画像データを抽出する。ステップS1218にて、CPU110は、画像データにより推定される顔と発光位置とを対比する。 【0072】 ステップS1220にて、CPU110は、抽出された画像データが顔の画像データであるか否かを判断する。抽出された画像データが顔の画像データである場合には(ステップS1220にてYES)、処理はステップS1230に移される。そうでない場合には(ステップS1220にてNO)、処理はステップS1280に移される。 【0073】 ステップS1230にて、CPU110は、取得された画像データとメモリ152に格納されている画像データとを比較することにより認証処理を行なう。ステップS1240にて、CPU110は、認証処理が成功したか否かを判断する。認証処理が成功した場合には(ステップS1240にてYES)、処理はステップS1250に移される。そうでない場合には(ステップS1240にてNO)、処理はステップS1260に移される。 【0074】 ステップS1250にて、CPU110は、認証された視聴者のデータに基づいてテレビ100における視聴制御を実行する。この制御が実行されると、その視聴者は、予め登録されているデータに基づく視聴のみが可能となる。たとえば、視聴可能なチャンネル、視聴可能な時間が制限される。」 ク.「【0082】 <変形例> 以下、本実施の形態の変形例について説明する。本変形例に係るテレビ100は、複数の視聴者が存在している場合に、リモコン端末を操作している視聴者を識別できる機能を有する点で、前述の実施の形態に係るテレビと異なる。なお、本変形例に係るテレビは、図3に示されるハードウェア構成と同一のハードウェア構成により実現される。上記の識別機能は、当該処理を実現するためのソフトウェアを実行させることにより、実現される。したがって、ここでは、ハードウェア構成についての説明は、繰り返さない。 【0083】 図14を参照して、本変形例に係るテレビ100の制御構造について説明する。図14は、CPU110が実行する処理の手順を表わすフローチャートである。 【0084】 ステップS1410にて、CPU110は、カメラ150に対してリモコン端末300からの光信号を撮影する指示を送出する。カメラ150は、その指示に基づいて予め設定された撮影モードに応じた撮影動作を実行する。ステップS1420にて、CPU110は、撮影により取得された画像データに基づいて光源の位置を特定する。たとえば画像データに対してフィルタ処理を実行し、周囲の領域よりも濃淡の変化度が高い位置を光源として特定する。 【0085】 ステップS1430にて、CPU110は、複数の顔画像が抽出されたか否かを判断する。この判断は、特定された光源の位置の近傍に複数の顔画像データが存在するか否かに基づいて行なわれる。複数の顔画像が抽出された場合には(ステップS1430にてYES)、処理は、ステップS1440に移される。そうでない場合には(ステップS1430にてNO)、処理は、ステップS1450に移される。 【0086】 ステップS1440にて、CPU110は、各顔画像と光源の位置とに基づいてリモコン端末300の操作者の顔画像を特定する。たとえば、光源の位置に対して水平方向および上下方向に存在する顔画像の位置が予め設定された範囲内に存在するか否かを判断し、光源に最も近い顔画像を特定することにより、リモコン端末300の操作者の顔画像を特定する。 【0087】 ステップS1450にて、CPU110は、特定された顔画像の解析処理を実行する。ステップS1460にて、CPU110は、解析結果に基づいて視聴者の認証処理を実行する。ステップS1470にて、CPU110は、認証結果を生成する。このような認証結果が生成されると、CPU110は、メモリ152に予め格納されているデータを参照しつつテレビ100による視聴制限を実行する。」 このような事項を踏まえ、上記ア.?ク.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、 (a)刊行物1には、上記ア.?ウ.に記載があるように、複数の視聴者が視聴している場合に、視聴制御の対象となる視聴者を認識して、視聴制御の対象となる視聴者に応じた制御を行うために、視聴者を撮影した画像からリモコン端末の操作者を特定し、その結果に応じてテレビジョン受信装置の動作を制御するテレビジョン受信装置についての記載がある。 (b)上記エ.、オ.、キ.の記載から、刊行物1のテレビジョン受信装置は、撮影可能な範囲に存在するテレビの視聴者、視聴者が操作するリモコン端末等を含む被写体を撮影し、撮影により取得された画像データから、視聴者の顔を抽出し、抽出された顔に基づいて算出された特徴量と、メモリに予め格納されている特徴量とに基づいて視聴者の認証処理を行うことについて記載がある。 (c)上記カ.、キ.の記載から、刊行物1のテレビジョン受信装置は、視聴者に応じたテレビの制御内容が格納され、認証された視聴者のデータに基づいて、テレビにおける視聴制御を実行することについて記載がある。 (d)上記ク.の記載から、刊行物1のテレビジョン受信装置は、カメラが撮影動作を実行すると、撮影により取得された画像データに基づいて、光源の位置を特定し、複数の顔画像が抽出されたか否かを判断し、各顔画像と光源の位置とに基づいてリモコン端末の操作者の顔画像を特定し、特定された顔画像の解析処理を実行し、視聴者の認証処理を実行することについて記載がある。 そうすると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されている。 [刊行物1発明] 「撮影可能な範囲に存在するテレビの視聴者、視聴者が操作するリモコン端末等を含む被写体を撮影し、撮影により取得された画像データから、視聴者の顔画像を抽出し、抽出された顔画像に基づいて算出された特徴量と、メモリに予め格納されている特徴量とに基づいて視聴者の認証処理を行い、 視聴者に応じたテレビの制御内容が格納され、認証された視聴者のデータに基づいて、テレビにおける視聴制御を実行するもので、 前記認証処理は、カメラが撮影動作を実行すると、撮影により取得された画像データに基づいて、光源の位置を特定し、複数の顔画像が抽出されたか否かを判断し、各顔画像と光源の位置とに基づいてリモコン端末の操作者の顔画像を特定し、特定された顔画像の解析処理を実行し、視聴者の認証処理を実行するものであるテレビジョン受信装置。」 (3)補正後発明と刊行物1発明との対比と一致点・相違点の認定 ア.対比 (ア-1)刊行物1発明は、テレビジョン受信装置に関する発明であるが、テレビジョン受信装置というシステムの発明と捉えられるので、刊行物1発明の「テレビジョン受信装置」は、補正後発明の「システム」に相当する。 (ア-2)刊行物1発明の「テレビ」、「視聴者」は、補正後発明の「電子メディアデバイス」、「ユーザ」に対応する。 (ア-3)刊行物1発明は、「画像の顔をフィルタリングする手段」を有しておらず、補正後発明の、「顔が所定のサイズの閾値を下回ることに基づき顔が検出から除外されるように、画像の顔をフィルタリングする手段」を有するものではない点で、補正後発明と相違する。 (ア-4)刊行物1発明の「撮影可能な範囲」とは、テレビの視聴者やリモコン端末等を撮影する範囲のことであり、視聴者が、テレビを見ることができる範囲を指すものであるから、補正後発明の「電子メディアデバイスに近接した領域」に対応する。 刊行物1発明の「撮影により取得された画像データから、視聴者の顔に相当する画像データを抽出」することは、撮影された画像の内部のユーザを検出することであり、「抽出された顔の画像領域に対応するデータに基づいて算出された特徴量と、メモリに予め格納されている視聴者の特徴量とに基づいて視聴者の認証処理を行」うことは、検出されたユーザを識別するために行われることである。 したがって、刊行物1発明と、補正後発明は、「電子メディアデバイスに近接した領域の画像の内部で検出されたユーザの識別を決定する手段」を備える点で一致する。 (ア-5)刊行物1発明の「視聴者に応じたテレビの制御内容」は、視聴者ごとに、どのようなテレビの制御を行うかを定義したものであるから、補正後発明の「ユーザに関連する個人化されたメディア設定」に対応する。 そして、「視聴者に応じたテレビの制御内容が格納され、認証された視聴者のデータに基づいて、テレビにおける視聴制御を実行」するということは、視聴者の認証に基づいて、予め格納されている視聴者に応じたテレビの制御内容にアクセスし、アクセスしたテレビの制御内容に応じてテレビの制御を行うことである。 したがって、刊行物1発明と、補正後発明は、「決定された前記識別に基づいて前記ユーザに関連する個人化されたメディア設定にアクセスする手段と、アクセスした個人化されたメディア設定に基づいて、前記電子メディアデバイスを制御する手段」を備える点で一致する。 (ア-6)刊行物1発明の認証処理において、「光源の位置を特定」することは、リモコンの光源の位置を特定することにより、リモコンの位置を検出するものであるから、補正後発明の「前記画像におけるリモコンの位置を検出する」ことに対応する。 刊行物1発明の「複数の顔画像が抽出された」ことは、補正後発明の「前記画像における複数のユーザを検出する」ことに対応する。 刊行物1発明の「各顔画像と光源の位置とに基づいてリモコン端末の操作者の顔画像を特定」することは、顔画像とリモコンの位置に基づいて、複数の顔画像の中で、リモコンを操作している視聴者がどれかを特定することであるから、補正後発明の「検出された前記複数のユーザと検出された前記リモコンの位置とに基づいて、前記リモコンを操作している前記ユーザを識別する」ことに対応する。 そして、刊行物1発明の「特定された顔画像の解析処理を実行し、視聴者の認証処理を実行する」ことは、複数の顔画像の中で、リモコンを操作しているユーザを決定した後に、リモコンを操作しているユーザの認識をすることであるから、補正後発明の「前記リモコンを操作している前記ユーザの識別を決定する」ことに対応する。 したがって、刊行物1発明と、補正後発明は、 「前記電子メディアデバイスに近接した前記領域の前記画像の内部で検出された前記ユーザの前記識別を決定する手段は、 前記画像における複数のユーザを検出する手段と、 前記画像におけるリモコンの位置を検出する手段と、 検出された前記複数のユーザと検出された前記リモコンの位置とに基づいて、前記リモコンを操作している前記ユーザを識別する手段と、 前記リモコンを操作している前記ユーザの識別を決定する手段と、を含む、」という点で一致する。 イ.一致点・相違点 したがって、刊行物1発明と補正後発明は、以下の点で一致ないし相違する。 [一致点] 「電子メディアデバイスに近接した領域の画像の内部で検出されたユーザの識別を決定する手段と、 決定された前記識別に基づいて前記ユーザに関連する個人化されたメディア設定にアクセスする手段と、 アクセスした個人化されたメディア設定に基づいて、前記電子メディアデバイスを制御する手段と、を含み、 前記電子メディアデバイスに近接した前記領域の前記画像の内部で検出された前記ユーザの前記識別を決定する手段は、 前記画像における複数のユーザを検出する手段と、 前記画像におけるリモコンの位置を検出する手段と、 検出された前記複数のユーザと検出された前記リモコンの位置とに基づいて、前記リモコンを操作している前記ユーザを識別する手段と、 前記リモコンを操作している前記ユーザの識別を決定する手段と、を含む、システム。」 [相違点] 補正後発明は、「顔が所定のサイズの閾値を下回ることに基づき顔が検出から除外されるように、画像の顔をフィルタリングする手段」を有しているのに対し、刊行物1発明は、画像の顔をフィルタリングする手段を有していない点。 ウ.当審の判断 上記相違点について検討する。 原審の拒絶査定にて周知例として引用された特開2006-146775号公報(以下、「刊行物2」という。)には、顔検出処理において、検出すべき最小の顔画像の大きさよりも小さいサイズの顔画像は、検出対象から除外される画像処理装置(段落【0033】)が開示されている。 また、特開2007-287014号公報(以下、「刊行物3」という。)には、顔認識に際して、画像ファイルの顔の大きさが閾値よりも小さいものは除外する画像処理装置(【請求項10】、段落【0043】、【0044】、【0051】、【0052】)が開示されている。 また、画像から不要なものを除去する場合に、フィルタリングをすることは、例示するまでもなく、周知慣用になされているものである。 そうすると、画像処理における顔画像の認識に際して、顔が所定のサイズの閾値を下回ることに基づき顔が検出から除外されるように画像の顔をフィルタリングすることは、周知の構成であるといえる。 刊行物1発明において、実際に視聴している視聴者を正確に識別することは、当然考慮すべき事項であり、そのため、小さい顔は、顔検出処理の対象外としたいと考え、上記周知の構成を適用し、顔が所定のサイズの閾値を下回ることに基づき顔が検出から除外されるようにすることは、当業者であれば、容易に想到できるといえる。 したがって、刊行物1発明において、刊行物2や刊行物3に記載されたような周知慣用の技術を考慮することにより、「顔が所定のサイズの閾値を下回ることに基づき顔が検出から除外されるように、画像の顔をフィルタリングする手段」を採用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 よって、相違点については、格別のものではなく、補正後発明に関する作用・効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、補正後発明は、刊行物1発明と、刊行物2及び刊行物3に記載されたような周知慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成25年12月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし28に係る発明は、平成25年4月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし28に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項28に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「顔が所定のサイズの閾値を下回ることに基づき顔が検出から除外されるように、画像の顔をフィルタリングする手段と、 電子メディアデバイスに近接した領域の前記画像の内部で検出されたユーザの識別を決定する手段と、 決定された前記識別に基づいて前記ユーザに関連する個人化されたメディア設定にアクセスする手段と、 アクセスした個人化されたメディア設定に基づいて、前記電子メディアデバイスを制御する手段と、 を含む、システム。」 2.刊行物1発明 原審の拒絶理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.3.(2)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.3.で検討した補正後発明における 「前記電子メディアデバイスに近接した前記領域の前記画像の内部で検出された前記ユーザの前記識別を決定する手段は、 前記画像における複数のユーザを検出する手段と、 前記画像におけるリモコンの位置を検出する手段と、 検出された前記複数のユーザと検出された前記リモコンの位置とに基づいて、前記リモコンを操作している前記ユーザを識別する手段と、 前記リモコンを操作している前記ユーザの識別を決定する手段と、」 という限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正後発明が前記第2.3.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明と、刊行物2及び刊行物3に記載されたような周知慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明と、刊行物2及び刊行物3に記載されたような周知慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 第4.まとめ 以上のとおり、本願の請求項28に係る発明は、刊行物1に記載された発明と、刊行物2及び刊行物3に記載されたような周知慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2014-11-28 |
結審通知日 | 2014-12-01 |
審決日 | 2014-12-15 |
出願番号 | 特願2010-535091(P2010-535091) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N) P 1 8・ 572- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 矢野 光治 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
渡辺 努 清水 正一 |
発明の名称 | メディア嗜好 |
代理人 | 黒田 晋平 |
代理人 | 村山 靖彦 |