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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01K
管理番号 1300530
審判番号 不服2013-9644  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-24 
確定日 2015-05-12 
事件の表示 特願2009- 58705「温度センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月12日出願公開、特開2010- 32493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年3月11日(優先権主張 平成20年6月25日)の出願であって、平成25年2月15日付けで拒絶査定がなされ(同年2月26日発送)、これに対し、同年5月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、本件補正前、すなわち出願当初の特許請求の範囲の請求項1を次のとおり補正するとともに、該補正に合わせて明細書の記載を補正するものである。
(本件補正前)
「【請求項1】
温度によって電気的特性が変化する感温部と、一端側が該感温部に接続されて他端側が該感温部から外側に向かって伸びる電極線と、を有する感温素子と、
前記電極線の他端側と重ね合わされて溶接されると共に、前記感温素子から電気信号を取り出す信号線と、
を備えた温度センサであって、
前記電極線は、白金に、又は、白金と少なくとも1種以上の白金族元素(白金を除く)とからなる白金合金に、ストロンチウムが含有された材料からなる
ことを特徴とする温度センサ。」

(本件補正後)
「【請求項1】温度によって電気的特性が変化する感温部と、一端側が該感温部に接続されて他端側が該感温部から外側に向かって伸びる電極線と、を有する感温素子と、
前記電極線の他端側と重ね合わされてレーザ溶接されると共に、前記感温素子から電気信号を取り出す、ステンレス合金からなる信号線と、
を備えた温度センサであって、
前記電極線は、白金に、又は、白金と少なくとも1種以上の白金族元素(白金を除く)とからなる白金合金に、ストロンチウムが含有された材料からなる
ことを特徴とする温度センサ。」(下線は補正箇所を明示するために当審で付した。)

特許請求の範囲についての上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「溶接」について、溶接の種類を「レーザ溶接」に限定し、さらに、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「信号線」について、「ステンレス合金からなる」と限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例記載の事項・引用発明
(引用例1)
(2-1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2008-26012号公報(出願人:株式会社デンソー、公開日:平成20年2月7日、以下「引用例1」という。)には、温度センサおよびその製造方法(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。
(a)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極線に接続された温度検出素子を有底円筒状の金属製カバー内に収納した温度センサに関するものであり、特にディーゼルエンジン自動車排ガス等の被測定流体が流通する流路内に設けられ、車両の振動に晒される環境下で、被測定流体の温度を検出する温度センサに好適なものである。」(第3頁第31?37行)

(b)「【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1(a)は本発明の実施される温度センサ1の全体構成を示し、温度センサ1は感温部10と保護管部12とハウジング部13とによって構成されている。
ハウジング部13は、SUS等の金属からなり、上記保護管部12を拘持するリブ131と取付け位置固定のためのネジ部132とネジ締めの為の六角部133とが設けられている。
【0049】
図1(b)は本発明の実施形態の要部である上記感温部10の断面詳細図を示し、以下に、上記感温部10の構成について図1(b)を参照して説明する。
【0050】
温度検出素子101は例えば特許文献2にあるようなY(Cr、Mn)O_(3)を主成分とする遷移金属酸化物系NTCサーミスタからなり上記温度検出素子101には一対の白金製の電極線102が一体的に接続されている。
上記移金属酸化物系NTCサーミスタは複数の遷移金属酸化物を含むセラミック原料粉末を用いて、電極線を挿入する一対の挿入孔を有した円柱状の成形体を形成し、上記挿入孔に一対の白金線を挿通し、例えば1600℃の高温で酸化焼成することによって該成形体と該白金線とが一体となった焼結体が得られる。
【0051】
上記電極線102には上記温度検出素子101によって測定された被測定流体の温度に応じた電気信号を外部に取り出す一対の信号線121が、例えばレーザ溶接等によって抵抗接続されている。上記信号線121には例えばSUS、白金-Rh等の耐熱性、良電導性の金属が使用される。
上記信号線121は絶縁部材122を介して例えばSUS等からなる円筒状の金属製保護管123内に絶縁支持されている。
【0052】
金属製カバー104は例えばSUS等の金属からなり、先端閉塞他端開放の有底円筒状をしており、閉塞端側の底部には上記金属製カバー内に上記充填剤を注入する際に上記充填剤中に巻き込まれた気泡を排出する例えば直径100μmの気泡排出用貫通孔111が穿設されている。
また、上記金属製カバー104の開放端側は上記金属製保護管123が挿嵌されるので大径部1041となっており、閉塞端側は内径1.88mm外径2.48の小径部1043となっており、上記大径部1041と上記小径部1043との間は内径2.37mm外径2.97mmの中径部1042として段階的に絞り加工されている。
【0053】
上記気泡排出用貫通孔111は例えばレーザ溶接等の封止手段により溶接封止されており、溶接部には溶接ビード112が形成されている。
【0054】
上記金属製カバー104と上記温度検出素子101、上記電極線102および上記信号線121との間隙は例えばシリカゾル、アルミナゾル等の無機バインダーを含むアルミナを主成分としたアルミナセメント等の充填剤103によって埋められている。
【0055】
上記金属製カバー104と上記金属製保護管123とは例えばレーザ溶接等により、溶接部105で全周に渡り溶接固定されている。
【0056】
上記金属製保護管123の上記温度検出素子101側先端部123bの外径は上記金属製カバー104の上記径中部1042の内径とほぼ同一に設けられており、上記保護管先端部123bと上記金属製カバー104の内壁との間には間隙106が形成され、上記感温部10と上記保護管部12との断熱性を確保している。
上記金属製カバー104の小径部1043の内径は直径1.5mmから直径3.0mmまでの範囲で適宜設定することができる。」(第7頁第28行?第8頁第29行)

(c)「【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る温度センサの全体構成を示す一部断面図で、(b)は、本発明の要部である図1(a)中の感温部10の詳細断面図である。」(第11頁第5?8行)

(d)「【符号の説明】
【0076】
1 温度センサ
10 感温部
101 サーミスタ素子
102 電極線(白金)
・・・(中略)・・・
121 信号線(SUS)」(第11頁第24?37行)

・前記記載(b)より、
(ア) 「遷移金属酸化物系NTCサーミスタからなる温度検出素子101」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(b)より、
(イ) 「上記温度検出素子101に一体的に接続された一対の白金製の電極線102」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(b)より、
(ウ)「上記電極線102に、上記温度検出素子101によって測定された被測定流体の温度に応じた電気信号を外部に取り出す一対の信号線121が、レーザ溶接によって接続され、上記信号線121には耐熱性、良電導性の金属であるSUSが使用される」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(b)、(c)、(d)及び図1より、
(エ)「サーミスタからなる温度検出素子101と、白金製の電極線102と、信号線121とを備えている温度センサ1」との技術事項が読み取れる。

(2-2)引用発明1
以上の技術事項(ア)ないし(エ)を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「遷移金属酸化物系NTCサーミスタからなる温度検出素子101と、
上記温度検出素子101に一体的に接続された一対の白金製の電極線102と、
信号線121と、
を備えている温度センサ1であって、
上記電極線102に、上記温度検出素子101によって測定された被測定流体の温度に応じた電気信号を外部に取り出す一対の信号線121が、レーザ溶接によって接続され、上記信号線121には耐熱性、良電導性の金属であるSUSが使用される、
温度センサ1。」(以下、「引用発明1」という。)

(引用例2)
(2-3)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2001-335862号公報(出願人:石福金属興業株式会社、公開日:平成13年12月4日、以下「引用例2」という。)には、耐熱特性に優れた白金材料(発明の名称)に関し、次の事項(e)ないし(g)が図面とともに記載されている。
(e)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱特性に優れた白金材料、特に、高温で使用されるルツボや器具および装置、熱電対、センサ材料等の構成材料として有用な高温での特性に優れた白金材料に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】高温で使用されるルツボや器具および装置、熱電対、センサ材料等を構成する材料として、白金が広い産業分野で用いられている。白金が広い分野で用いられている理由としては、優れた耐食性及び耐酸化性を有すること、高い融点を有すること、非反応性で高温下においても酸化物等の溶融物や固形物との反応が少ないこと、高温下においても電気的特性の変化が少なく電気特性の安定性に優れていること、各種形状への機械加工や溶接加工が容易であること等が挙げられる。」(第2頁第1欄第5?21行)

(f)「【0006】しかしながら、最近の産業技術の高度化に伴い、白金材料に要求される特性もますます厳しくなってきており、高温特性に優れた材料を安価に提供できる手段の開発が強く求められている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の如き要望に応えるべく鋭意検討を行った結果、今回、白金に微量のストロンチウムおよび/またはバリウムを含有させるだけで、白金の高温における機械的特性、特にクリープ特性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】かくして、本発明によれば、ストロンチウムおよび/またはバリウムを10?10000ppmの範囲内の量で含有することを特徴とする白金材料が提供される。
【0009】本発明においてストロンチウムおよび/またはバリウムが添加される白金としては、高純度のものが使用されるが、Au,Cu,Pd,Rh,Ir,Ru,Os等の不可避元素を不純物として含有していてもよく、その際の白金の純度は一般に99.95重量%以上であることが好ましい。
【0010】本発明の白金材料におけるストロンチウムおよび/またはバリウムの含有量は、10?10000ppm、好ましくは10?5000ppm、さらに好ましくは50?1000ppmの範囲内とすることができる。ストロンチウムの含有量が10ppm未満ではその添加効果が得られず、逆に10000ppmを越えると白金材料の加工性が低下する傾向が見られる。
【0011】ストロンチウムおよびバリウムはそれぞれ単独で白金に添加することができ、あるいはストロンチウムとバリウムの両者を併用して白金に添加することもできる。併用する場合、両者の合計含有量が上記の範囲内になるようにすることが望ましい。また、両者の併用割合には特に制限はなく、任意の割合で併用することができる。
【0012】ストロンチウムおよび/またはバリウムを上記濃度で含有する白金材料は、例えば、原材料としての白金に所定量のストロンチウムおよび/またはバリウムを添加し、例えば高周波溶解炉等の加熱溶解炉の中で不活性ガス雰囲気下に溶融することにより製造することができる。
【0013】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0014】
【実施例】実施例1?7および比較例1?3
純度99.97%の白金100gに純度99.9%のストロンチウムおよび/または純度99.9%のバリウムを下記表1に示す量加え、アーク溶解炉でアルゴン雰囲気下に溶解して試験用インゴットを製造した。
【0015】得られたインゴットについてICP分析によりストロンチウムおよびバリウムの定量分析を行った。その結果を下記表1に示す。
【0016】また、得られたインゴットを線引き加工し、線径φ1.5mmの線材としたが、実施例1?7及び比較例1?3のいずれのインゴットも断線等は起こらず良好な加工性を示した。
【0017】この線材を高温クリープ試験機にかけ、大気中、応力1.96MPa、試験温度1650℃での破断時間を測定した。その結果も下記表1に示す。
【0018】

」(第2頁第1欄第42行?第2頁第2欄第50行、第3頁【表1】)

(g)「【0021】
【発明の効果】以上の結果から明らかなように、本発明の白金材料は、一般的な製造方法で容易に製造することができ、良好な加工性を有しながら、優れた耐熱特性を有するものである。かくして、本発明の白金材料は、ルツボや器具および装置、熱電対、センサ材料等の構成材料として優れた効果を有するものである。」(第3頁第4欄第16?22行、なお行数は第3頁第3欄と第4欄との間の空白に記載された行数による。)

・前記記載(e)、(g)より、
(オ)「高温で使用されるセンサ材料等の構成材料として有用な、高温での特性に優れた白金材料」との技術事項が読み取れる。

・前記記載(f)より、
(カ)「白金に微量のストロンチウムを含有させるだけで、線材の高温における機械的特性、特にクリープ特性を著しく向上させた」との技術事項が読み取れる。

(2-4)引用発明2
以上の技術事項(オ)及び(カ)を総合勘案すると、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。
「白金に微量のストロンチウムを含有させるだけで、線材の高温における機械的特性、特にクリープ特性を著しく向上させた、高温で使用されるセンサ材料等の構成材料として有用な、白金材料。」(以下、「引用発明2」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア まず、引用発明1における「遷移金属酸化物系NTCサーミスタからなる温度検出素子101」は、電気抵抗が温度上昇とともに減少するNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ(Thermally sensitive resistor)からなる温度検出素子であるから、本願補正発明における「温度によって電気的特性が変化する感温部」に相当する。

イ 引用発明1における「温度検出素子101に一体的に接続された一対の白金製の電極線102」は、電極線10の一端(引用例1図1(b)では、紙面の下方側)が温度検出素子101と接続され、他端(引用例1図1(b)では、紙面の上方側)が、外側に向かって伸びていることは明らかである。
よって、引用発明1における「温度検出素子101に一体的に接続された一対の白金製の電極線102」が、本願補正発明における「一端側が該感温部に接続されて他端側が該感温部から外側に向かって伸びる電極線」に相当するといえる。

ウ 上記ア、イより、引用発明1における「温度検出素子101」と「温度検出素子101に一体的に接続された一対の白金製の電極線102」とが、本願補正発明における「感温素子」に相当するといえる。

エ 本願明細書段落【0029】に「耐腐食性金属(例えば、耐熱性金属でもあるSUS310Sなどのステンレス合金)」と記載されているとおり、「SUS」は、ステンレス鋼(合金鋼)の略号である。
よって、引用発明1における「耐熱性、良電導性の金属であるSUS」が、本願補正発明の「ステンレス合金」に相当する。
すると、引用発明1における「温度検出素子101によって測定された被測定流体の温度に応じた電気信号を外部に取り出す一対の信号線121」は、「上記電極線102」の他端(引用例1図1(b)では、紙面の上方側)に、「レーザ溶接によって接続され、上記信号線121には耐熱性、良電導性の金属であるSUSが使用され」ているから、本願補正発明における「前記電極線の他端側と重ね合わされてレーザ溶接されると共に、前記感温素子から電気信号を取り出す、ステンレス合金からなる信号線」に相当する。

オ 引用発明1における「電極線102」は「白金製」であるから、本願補正発明における「電極線は、白金に、又は、白金と少なくとも1種以上の白金族元素(白金を除く)とからなる白金合金に、ストロンチウムが含有された材料からなる」こととは、「電極線は、白金材料からなる」点で共通する。

カ 引用発明1における「温度センサ1」は、 「サーミスタからなるからなる温度検出素子101」と、「白金製の電極線102」と、「信号線121」とを備えているから、次の相違点は除いて、本願補正発明における「温度センサ」に相当する。

キ 以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「温度によって電気的特性が変化する感温部と、一端側が該感温部に接続されて他端側が該感温部から外側に向かって伸びる電極線と、を有する感温素子と、
前記電極線の他端側と重ね合わされてレーザ溶接されると共に、前記感温素子から電気信号を取り出す、ステンレス合金からなる信号線と、
を備えた温度センサであって、
前記電極線は、白金材料からなる
ことを特徴とする温度センサ。

(相違点)
・相違点1:電極線に用いられる白金材料について
本願補正発明では、電極線に用いられる白金材料が「白金に、又は、白金と少なくとも1種以上の白金族元素(白金を除く)とからなる白金合金に、ストロンチウムが含有された材料」からなるのに対し、引用発明1では「白金製」であることが示されているに過ぎない点。

(4)判断
前記相違点1について検討する。
引用発明2を再掲すれば、次のとおりである。
「白金に微量のストロンチウムを含有させるだけで、線材の高温における機械的特性、特にクリープ特性を著しく向上させた、高温で使用されるセンサ材料等の構成材料として有用な、白金材料。」
引用発明1の「温度センサ1」は、「特にディーゼルエンジン自動車排ガス等の被測定流体が流通する流路内に設けられ、車両の振動に晒される環境下で、被測定流体の温度を検出する」(前記「(2)(引用例1)(2-1)記載事項」の摘記事項(a)参照。)のに用いられるものであるから、その「温度センサ1」を構成する「白金製の電極線102」についても、自動車排ガスの流路内のような、高温で振動に晒される環境下での機械的特性の向上が望まれることはいうまでもないことである。
そして、引用発明2には、「高温で使用されるセンサ材料等の構成材料として有用な、白金材料」として、「白金に微量のストロンチウムを含有させるだけで、線材の高温における機械的特性、特にクリープ特性を著しく向上させ」ることが示されているのであるから、引用発明1の「温度センサ1」の「白金製の電極線102」の白金材料として、引用発明2に示された「白金に微量のストロンチウムを含有させ」た白金材料を用い、自動車排ガスの流路内のような、高温で振動に晒される環境下での機械的特性を向上させ、前記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれは容易になし得たことである。

また、酸化物分散型の強化白金の溶接性の問題(機械的特性の低下)は、溶接の際、白金は溶融してもジルコニア等の金属酸化物は固体状態を維持することに起因するのである(例えば、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-57147号公報(出願人:田中貴金属工業株式会社、公開日:平成18年3月2日)の「白金マトリックスに、ジルコニア等の金属酸化物が分散した酸化物分散強化型白金合金(以下、強化白金と称する。)は、光学ガラス等のガラス製造装置のような高温環境下で使用される装置の構成材料として用いられている。」(【背景技術】段落【0002】)、「また、強化白金は溶接性にも問題がある。溶接加工は、対象材の接合部を局所的に溶解・凝固させる加工方法であるところ、強化白金の溶接では、白金は溶融しても酸化物は固体状態を維持するため、溶接後(凝固後)の材料組織が不均一となる。そして、不均一な溶接部は、上記のような侵食の問題を増大させ、或いは機械的特性の低下の要因となる。」(段落【0005】)との記載を参照。)から、引用発明1において、「白金製の電極線102」として、ジルコニア等の金属酸化物を分散しない(酸化物分散強化型でない)引用発明2の白金材料を用いれば、ジルコニア等の金属酸化物を分散した(酸化物分散強化型の)白金を用いた場合と比較して、溶接部の強度が低下しないであろうことは、当業者であれは予測可能であったものといえる。
よって、本願補正発明の作用効果は、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
温度によって電気的特性が変化する感温部と、一端側が該感温部に接続されて他端側が該感温部から外側に向かって伸びる電極線と、を有する感温素子と、
前記電極線の他端側と重ね合わされて溶接されると共に、前記感温素子から電気信号を取り出す信号線と、
を備えた温度センサであって、
前記電極線は、白金に、又は、白金と少なくとも1種以上の白金族元素(白金を除く)とからなる白金合金に、ストロンチウムが含有された材料からなる
ことを特徴とする温度センサ。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された発明・事項は、前記「2.(2)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)補正の内容」で検討した本願補正発明から、「レーザ溶接」という、溶接の種類についての発明特定事項を省いて「溶接」とし、さらに、「信号線」についての「ステンレス合金からなる」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比」、「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-25 
結審通知日 2014-07-01 
審決日 2014-07-18 
出願番号 特願2009-58705(P2009-58705)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01K)
P 1 8・ 575- Z (G01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平野 真樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 清水 稔
新川 圭二
発明の名称 温度センサ  
代理人 青木 昇  

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