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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61L
審判 全部無効 2項進歩性  A61L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61L
審判 全部無効 特174条1項  A61L
管理番号 1300808
審判番号 無効2012-800008  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-01-31 
確定日 2015-03-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4877410号「帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置」の特許無効審判事件についてされた平成25年 5月 8日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10163号、平成26年 1月30日)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4877410号(以下、「本件特許」という。)は、平成22年8月10日に、特許法第44条第1項の規定に基づき特願2003-425862号(出願 平成15年12月22日、優先権主張 平成15年8月5日(以下、「本件優先日」という。))の一部を新たに特許出願したもの(以下、「本件出願」という。)であって、平成23年12月9日に特許権の設定登録(設定登録時の請求項の数は6である。)がなされたものである。
そして、その後の手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成24年 1月31日 無効審判請求(請求項1ないし6に係る発明
についての特許に対して)
平成24年 4月17日 答弁書提出
平成24年 6月20日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成24年 7月 4日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成24年 7月18日 第1回口頭審理、審理終結の通知
平成24年 8月 2日 一次審決
(請求項1ないし6に係る発明についての特許
を無効とする。)
平成24年 9月10日 審決取消訴訟提起
(平成24年(行ケ)第10319号)
平成24年12月 7日 訂正審判請求(訂正2012-390158号
請求項の数は4である。)
平成25年 1月29日 審決取消決定
平成25年 2月18日 訂正請求書提出
(訂正審判の請求書に添付した特許請求の範囲
を援用)
平成25年 5月 8日 二次審決
(訂正を認める。請求項1ないし4に係る発明
についての特許を無効とする。)
平成25年 6月14日 審決取消訴訟提起(平成25年(行ケ)第10
163号)
平成26年 1月30日 審決取消判決
平成26年 2月28日 上申書提出(請求人)
平成26年 4月 4日 上申書提出(被請求人)

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成25年2月18日付け訂正請求書において、被請求人は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり訂正することを求めており、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を請求項1に繰り上げ、
「【請求項2】
前記帯電微粒子水は、当該大気中に放出されることを特徴とする請求項1記載の帯電微粒子水による不活性化方法。」を
「【請求項1】
大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法であって、前記帯電微粒子水は、室内に放出されることを特徴とし、さらに、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。」と訂正する。

(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3を請求項2に繰り上げ、
「【請求項3】
前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の帯電微粒子水による不活性化方法。」を
「【請求項2】
大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法であって、前記帯電微粒子水は、大気中に放出されることを特徴とし、さらに、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり、前記帯電微粒子水は、粒子径3nm未満の帯電微粒子水よりも長寿命であることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。」と訂正する。

(4)訂正事項d
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項e
特許請求の範囲の請求項5を請求項3に繰り上げ、
「【請求項5】
前記帯電微粒子水は、当該大気中に放出されることを特徴とする請求項4記載の不活性化装置。」を
「【請求項3】
霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmであり、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し、前記帯電微粒子水は、室内に放出されることを特徴とする不活性化装置であって、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする不活性化装置。」と訂正する。

(6)訂正事項f
特許請求の範囲の請求項6を請求項4に繰り上げ、
「【請求項6】
前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の不活性化装置。」を
「【請求項4】
霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmであり、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し、前記帯電微粒子水は、大気中に放出されることを特徴とする不活性化装置であって、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり、前記帯電微粒子水は、3nm未満の帯電微粒子水と比較して長寿命であることを特徴とする不活性化装置。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものか否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったのを、訂正前の請求項1の削除にともない、訂正前の請求項1の記載を引用しない独立形式の記載とした上で請求項1にし、さらに、「大気中に放出」を「室内に放出」とし、「前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいる」という事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、「大気中に放出」を「室内に放出」とする訂正は、本件特許明細書の段落【0025】の記載に基づくものであり、「前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいる」という事項の追加は、訂正前の請求項3及び本件特許明細書の段落【0010】の記載に基づくものであるから、訂正事項bは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cは、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1及び2を引用する記載であったのを、訂正前の請求項1の削除にともない、訂正前の請求項1及び2の記載を引用しない独立形式の記載とした上で請求項2とし、さらに、「前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり」及び「前記帯電微粒子水は、粒子径3nm未満の帯電微粒子水よりも長寿命である」という事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、「前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり」という事項の追加は、訂正前の請求項3及び本件特許明細書の段落【0010】の記載に基づくものであり、「前記帯電微粒子水は、粒子径3nm未満の帯電微粒子水よりも長寿命である」という事項の追加は、本件特許明細書の段落【0024】及び図1の記載に基づくものであるから、訂正事項cは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項cは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項dについて
訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項eについて
訂正事項eは、訂正前の請求項5が訂正前の請求項4を引用する記載であったのを、訂正前の請求項1及び4の削除にともない、訂正前の請求項4の記載を引用しない独立形式の記載とした上で請求項3とし、さらに、「大気中に放出」を「室内に放出」とし、「帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいる」という事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、「大気中に放出」を「室内に放出」とする訂正は、本件特許明細書の段落【0025】の記載に基づくものであり、「帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいる」という事項の追加は、訂正前の請求項6及び本件特許明細書の段落【0010】の記載に基づくものであるから、訂正事項eは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項eは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項fについて
訂正事項fは、訂正前の請求項6が訂正前の請求項4及び5を引用する記載であったのを、訂正前の請求項1及び4の削除にともない、訂正前の請求項4及び5の記載を引用しない独立形式の記載とした上で請求項4とし、さらに、「前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり」及び「前記帯電微粒子水は、3nm未満の帯電微粒子水と比較して長寿命である」という事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、「前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり」という事項の追加は、訂正前の請求項6及び本件特許明細書の段落【0010】の記載に基づくものであり、「前記帯電微粒子水は、3nm未満の帯電微粒子水と比較して長寿命である」という事項の追加は、「3nm未満」が粒子径であることは明らかであり、本件特許明細書の段落【0024】及び図1の記載に基づくものであるから、訂正事項fは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項fは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 まとめ
したがって、上記訂正事項aないしfは、平成23年改正前特許法第134条の2ただし書第1項第1号及び第3号の規定に適合し、また、同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 請求人の主張の概要及び証拠方法
請求人は、審判請求書とともに下記甲第1ないし11号証を証拠方法として提出した。
また、平成24年6月20日付け口頭審理陳述要領書とともに下記甲第12及び13号証を証拠方法として提出した。
ただし、以下の無効理由2,3に関する甲第13号証に基づく主張は、請求理由の要旨の変更に当たるため、許可されなかった(第1回口頭審理調書参照)。
さらに、平成26年2月28日付け上申書とともに下記甲第14号証を提出した。
なお、上記第2のとおり、本件訂正は認められ、訂正前の請求項2、3、5及び6は、それぞれ、訂正後の請求項1、2、3及び4に対応するから、以下、訂正後の請求項1、2、3及び4に係る発明を、それぞれ、本件訂正特許発明1、2、3及び4といい、訂正後の請求項1、2、3及び4を単に請求項1、2、3及び4という。
そうすると、請求人の主張の概要は以下のとおりとなる。

1 無効理由1
本件訂正特許発明1ないし4は、本件優先日前に日本国内で頒布された甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条第1項の規定に違反して特許されたものであるので、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2 無効理由2
本件訂正特許発明1ないし4は、本件優先日前に日本国内で頒布された甲第1号証に記載された発明、及び甲第2,3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるので、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

3 無効理由3
本件訂正特許発明1ないし4は、本件優先日前に日本国内で頒布された甲第1号証に記載された発明、及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるので、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

4 無効理由4
本件訂正特許発明1ないし4は、本件優先日前に日本国内で頒布された甲第1号証に記載された発明、及び5ないし9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるので、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

5 無効理由5
本件訂正特許発明1ないし4は、本件優先日前に日本国内で頒布された甲第1号証に記載された発明、及び、甲第9,7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるので、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

6 無効理由6
本件訂正特許発明1及び3は、本件優先日前に日本国内で頒布された甲第10号証に記載された発明、及び甲第5ないし7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるので、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

7 無効理由7
本件訂正特許発明1及び3は、本件優先日前に日本国内で頒布された甲第11号証に記載された発明、及び甲第5ないし7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるので、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

8 無効理由8
本件特許の請求項1ないし4に「粒子径が3?50nm」と記載されているが、単に「粒子径」と記載するのみでは、ピーク値での粒子径のことなのか、平均粒子径のことなのか、粒子径の分布のことなのか不明確である。
したがって、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

9 無効理由9
本件特許の請求項1ないし4に「粒子径が3?50nm」と記載されているが、実際に明細書中において実施例により不活性化の効果が示されているのは、20nm付近をピークとして、10?30nmに分布を持つ帯電微粒子水のみである(段落【0042】、【0045】?【0048】)。該記載における粒子径の意義が、ピーク値での粒子径、平均粒子径、及び、粒子径の分布のいずれであるかにもよるが、仮にピーク値での粒子径であれば、3?50nmのうち、20nmの粒子径についてしか、不活性化効果は示されていない。
よって、本件特許の請求項1ないし4に記載の「粒子径が3?50nm」の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないので、本件訂正特許発明1ないし4は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
したがって、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

10 無効理由10
本件特許の請求項1ないし4に「水を静電霧化」と記載されているが、この静電霧化させる対象である「水」が、単なる水のみを意味するのか、それとも、他の物質を添加した水溶液をも包含するのか不明確である。
したがって、本件訂正特許発明1ないし4は明確でない。
よって、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

11 無効理由11
本件特許の請求項1ないし4に「水を静電霧化」と記載されているが、「静電霧化」については、一般に辞書に記載されておらず、如何なるものが静電霧化に含まれるか、その境界が必ずしも明確ではない。
一方、本件特許明細書には、静電霧化の具体例としては、対向電極を持つものしか記載されておらず、すなわち、対向電極を持たないものについては何ら記載されていない。また、本件特許明細書の記載、とりわけ段落【0037】及び【0038】の記載に鑑みると、帯電微粒子水の粒子径は電界強度で制御されるものであるところ、該電界強度は対向電極との関係で定められるので、本件特許明細書の記載からすると、粒子径を制御するためには対向電極が不可欠となる。
しかしながら、本件特許の請求項1ないし4では、「対向電極」について何ら記載されていない。
そのため、本件訂正特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえず、また、対向電極がないものについて、発明の詳細な説明にはその実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
したがって、本件訂正特許発明1ないし4は明確でないし、本件訂正特許発明1ないし4は発明の詳細な説明に記載された発明とはいえず、また、発明の詳細な説明に当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているともいえない。
よって、本件出願は、特許法第36条第6項第1及び2号並びに第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

12 無効理由12
本件特許の請求項3及び4の記載は、「帯電微粒子水」を「花粉抗原、徽、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、徽、菌、ウイルスのいずれかを不活性化するための」という用途によって特定するものといえる。また、同じく「不活性化装置」という記載も、静電霧化装置を「不活性化」という用途によって特定するものといえる。
しかしながら、技術常識を参酌しても、これらの用途によって、帯電微粒子水にどのような物としての特徴が加わるのか不明であり、このような用途で特定される「帯電微粒子水」を生成する「不活性化装置」とは、甲第1号証に記載された静電霧化装置とどのように異なるのか不明である。
したがって、本件訂正特許発明3及び4は明確でない。
よって、本件出願は、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

13 無効理由13
本件特許の請求項1ないし4に「不活性化」と記載されているが、不活性化とは、花粉抗原や徽、菌、ウイルスが分解等されることで活性がなくなる場合だけを意味するのか、それとも、これらが空気中から除去され空気中で活性状態ではなくなることも含まれるのかが不明確であるので、本件訂正特許発明1ないし4は明確でない。
したがって、本件出願は、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

14 無効理由14
本件特許の請求項3及び4に「霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部」及び「大気中で水を静電霧化して」と記載されている。
しかしながら、「大気中で水を静電霧化して」における「水」には「前記」との語が記載されていないため、当該「水」が、「霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部」における霧化部に位置する水のことを意味するのか、他の水のことを意味するのか明確でないので、本件訂正特許発明3及び4は明確でない。
したがって、本件出願は、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていないので、本件特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

15 無効理由15
本件特許の請求項1ないし4に「大気中で水を静電霧化して」と記載されている。このうち「大気中で」との記載は、平成23年1月17日付けの手続補正により追加されたものであるが、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「大気中で水を静電霧化する」という事項については記載されていない。
したがって、上記手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
よって、本件特許は、同法123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

<証拠方法>
甲第1号証:岩本成正ら,静電霧化を用いた消臭技術の研究,
第20回エアロゾル科学・技術研究討論会論文集,日本,
日本エアロゾル学会,2003年7月29日,
pp.59-60,発表番号D08
甲第2号証:特開2001-96190号公報
甲第3号証:特開2002-11281号公報
甲第4号証:特開2003-17297号公報
甲第5号証:特開平11-155540号公報
甲第6号証:特開平7-135945号公報
甲第7号証:ラジカル反応・活性種・プラズマによる脱臭・空気清浄技術
とマイナス空気イオンの生体への影響と応用,
(株)エヌ・ティー・エス発行,2002年10月15日,
pp218-231,pp363-367,
pp389-392
甲第8号証:特開2000-14265号公報
甲第9号証:空気清浄機[総合カタログ]、松下電工株式会社、
平成13年(2001年)8月発行
甲第10号証:I.Wuled LENGGOROら,静電噴霧法による
液滴およびイオンの発生,
粉体工学会誌,Vol.37,No.10,
pp.753-760,日本,2000年
甲第11号証:特開2002-203657号公報
甲第12号証:平成24年6月18日作成の陳述書「対向電極の必要性を
検証するための試験結果」
(作成者:東芝ホームアプライアンス株式会社
家電機器開発部 企画担当 グループ長小嶋健司氏)
甲第13号証:空気清浄機[総合カタログ]、松下電工株式会社
甲第14号証:平成25年12月9日作成の意見書(作成者:広島大学
特任教授奥山喜久夫氏)
(以下、各甲号証を「甲1」等という。)

第4 被請求人の主張の概要及び証拠方法
これに対して、被請求人は、本件特許は、請求人の主張する無効理由1ないし15により無効とするべきものでない、と主張し、答弁書とともに下記乙第1ないし4号証を証拠方法として提出した。
また、平成24年7月4日付け口頭審理陳述要領書とともに下記乙第5、6-1、及び6-2号証を、平成25年2月18日付けで、訂正請求書とともに下記乙第7ないし17号証を、さらに、平成26年4月23日付け上申書とともに乙第18及び19号証を証拠方法として提出した。

<証拠方法>
乙第1号証:2010年12月17日作成の「ミスト径による除菌効果の
違い」を検証するための実験結果を示す資料
乙第2号証:JIS工業用語大辞典【第5版】、(財)日本規格協会、
2001年3月30日、2361頁
乙第3号証:特開2003-79714号公報
乙第4号証:特開2001-286546号公報
乙第5号証:空気清浄機の発表資料
乙第6-1号証:「03空気清浄機総合カタログ」の入庫日を示す証明書
乙第6-2号証:「03空気清浄機総合カタログ」の入庫日を示すデータ
シート
乙第7号証:特開昭53-141167号公報
乙第8号証:特開平6-327450号公報
乙第9号証:特開2001-332398号公報
乙第10号証:特開平8-173517号公報
乙第11号証:特開平4-180764号公報
乙第12号証:特開平8-266854号公報
乙第13号証:活性酸素種の化学(季刊化学総説No.7,1990)、
社団法人 日本化学会編、1990年4月20日初版、
発行所 学会出版センター
乙第14号証:オゾンの基礎と応用、杉光英俊、
平成8年2月10日初版、平成16年1月31日再版、
発行所 株式会社 光琳
乙第15号証:活性酸素測定マニュアル、
浅田浩二・中野稔・柿沼カツ子編、
1992年5月10日第1刷発行、
2000年8月1日第5刷発行、
発行所 株式会社 講談社
乙第16号証:食品保存へのオゾンの利用に関する研究、
日本食品工業学会誌第38巻第4号第360ないし367
頁、1991年4月
乙第17号証:広辞苑第六版、新村出編、第1256頁、第1674頁、
2008年1月11日第1刷発行、
発行所 株式会社 岩波書店
乙第18号証:平成25年(行ケ)第10163号 判決
乙第19号証:ラジカル反応・活性種・プラズマによる脱臭・空気清浄技
術とマイナス空気イオンの生体への影響と応用,
(株)エヌ・ティー・エス発行,2002年10月15日,
pp115-125,156-159,218-231,
pp282-289,362-367,
pp389-393
(以下、各乙号証を「乙1」等という。)

第5 本件訂正特許発明
本件訂正特許発明1ないし4は、平成25年2月18日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法であって、前記帯電微粒子水は、室内に放出されることを特徴とし、さらに、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。
【請求項2】
大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法であって、前記帯電微粒子水は、大気中に放出されることを特徴とし、さらに、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり、前記帯電微粒子水は、粒子径3nm未満の帯電微粒子水よりも長寿命であることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。
【請求項3】
霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmであり、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し、前記帯電微粒子水は、室内に放出されることを特徴とする不活性化装置であって、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする不活性化装置。
【請求項4】
霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmであり、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し、前記帯電微粒子水は、大気中に放出されることを特徴とする不活性化装置であって、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり、前記帯電微粒子水は、3nm未満の帯電微粒子水と比較して長寿命であることを特徴とする不活性化装置。」

第6 当審の判断
無効理由は、「第3」に示すとおり、概略、新規性違反及び進歩性違反(無効理由1ないし7)、記載要件違反(無効理由8ないし14)、及び補正要件違反(無効理由15)からなる。
そして、新規性進歩性の判断に当たっては、特許請求の範囲に記載された発明の明確性、サポート要件、及び新規事項の追加についての無効理由の有無を判断する必要があるから、まず、無効理由8ないし15について検討する。

I 無効理由8ないし15(記載要件違反及び補正要件違反)について
(1)無効理由8について
ア 「粒子径」という用語自体は、乙2に「凝集していない個々の粒子の大きさ」と記載されているように、粒子の大きさを表す技術用語として広く使用されている。しかし、「粒子径が3?50nm」のように幅をもって表現された場合に、その上限、下限の値が、それぞれ平均粒子径、D50、ピーク値等の幅を示しているのか、または、その範囲にほぼ全ての粒子が入ることを示しているのか等、様々な解釈があり得る。
そこで、本件特許明細書の記載をみると、以下の記載がされている。

「【0024】
帯電微粒子の粒子径が3nm以上である場合、3nm未満である時よりもその寿命は明らかに長寿命化される。アルミ容器内に帯電微粒子を取り込んで粒子数の変化を微分型電気移動度計測器(DMA)を用いて測定することで、20nm付近の粒子径をもつ帯電微粒子水イと1nmの粒子径の帯電微粒子水ロの粒子数とその寿命を求めた結果を図1に示す。なお、20nmの粒子径の微粒子水イは、後述の実施例で示した静電霧化装置を用いて生成し、1nmの粒子径の微粒子水ロはコロナ放電電極を用いて生成した。」

「【0038】
ところで、700?1200V/mmの電界強度を与えた時、粒子径が3?20nmのミストと粒子径が30?50nmのミストが多く発生するが、電界強度を高くすると、粒子径が小さくなる方向にシフトすることが観察でき、また電界強度900V/mmで16?20nmの粒子径を持つミストを多く発生させた場合に、上記の各効果が特に有効に現れた。」

「【0042】
すなわち、水印加電極4が負電極となるようにした状態で上記の静電霧化装置によって得られた帯電微粒子水が、微分型電気移動度計測器による測定で図5に示す粒径分布で示されるもの、つまり20nm付近をピークとして、10?30nmに分布を持つものであり…」

イ ここで、本件優先日前の当業者の技術常識について参酌すると、甲10には、「静電噴霧法による液滴およびイオンの発生」について、以下の記載がある。

(ア)「液体が供給される導電体の細管と対向電極との間に数kVの電圧を与えると,細管の先端に出ている液体には,表面張力,静電気力,さらに重力が作用する。これらの力の合力が推進力となり,液体が円錐メニスカスとなるコーン状に歪められる(図1)。つまり,静電気力が増加し,表面張力を越えると液体表面が不安定になり,液体の液柱化現象が生じる。この液柱の不安定性により液柱が分裂し,そこからイオンおよび液滴が発生する。これが静電噴霧(エレクトロスプレー)の原理である。
発生できる液滴径は数nmからmmオーダーと広い範囲で,かつ単分散性が高いので…」(第753(35)頁左欄第5?16行)

(イ)「発生した粒子のサイズ分布は幾何標準偏差が1.1程度であり,静電噴霧を用いることによって,非常に単分散に近い液滴が発生することがわかる。」(第754(36)頁右欄下から第3?1行)

ウ 甲10に記載の「静電噴霧」は、その装置が、本件特許明細書【0008】、【0021】に記載の「静電霧化」の装置と同じであるから、「静電噴霧」は「静電霧化」と同義と認められる。そして、甲10の記載から、静電霧化により生成する液滴の粒径分布は、非常に狭く、単分散性が高いことが、本件優先日前に当業者において広く知られていたといえる。

エ そうすると、本件訂正特許発明1ないし4においては、本件特許明細書【0024】の記載から、まず、粒子径の測定が、凝集していない個々の粒子径の大きさに応じてその大きさを有する粒子の数を測定することにより行われていると理解することができる。次に、【0042】の「20nm付近をピークとし、10?30nmに分布を持つ」との記載は、上記の測定を前提とし、技術常識を参酌すると、20nm付近の大きさを有する粒子の数が最も多く、かつ、粒径分布が非常に狭く単分散性が高いので、粒子径が10nmより小さい粒子や30nmより大きい粒子は殆ど存在しない、すなわち、粒子のほぼ全てが粒子径10?30nmの範囲に分布していることを示していると理解することができる。そして、【0038】に記載の「3?20nm」、「30?50nm」、「16?20nm」等も、それぞれ同様の意味と解することができる。

ウ 以上によると、本件特許明細書の記載、及び技術常識からみて、「粒子径が3?50nm」とは、「凝集していない個々の粒子」のほぼ全てが「粒子径3?50nmの範囲に分布している」ことを意味することが明確である。
したがって、本件特許の請求項1ないし4に記載の「粒子径が3?50nm」の意味は明確であり、本件訂正特許発明1ないし4は明確である。
よって、無効理由8は理由がない。

(2)無効理由9について
ア 帯電微粒子水の粒子径を特定することに関して、本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【0013】
ナノメータサイズの粒子径とするのは、これより大きいミクロンオーダーのサイズになると、移動度が小さく、空間内への拡散が困難となるためであるが、上述のように、粒子径が3?100nm(電気移動度が0.1?0.001cm^(2)/vsec)が望ましい。粒子径が3nm未満になると、帯電微粒子水の寿命が極端に短くなってしまって室内の隅々まで帯電微粒子水がいきわたることが困難となるからであり、特に障害物などがある場合は尚更困難となる。なお、粒子径が100nmを超えると後述の人の肌の保湿性能の確保が困難となる。100nm程度といわれている肌の角質層の隙間からの帯電微粒子水の浸透が困難となる。」

「【0024】
帯電微粒子の粒子径が3nm以上である場合、3nm未満である時よりもその寿命は明らかに長寿命化される。アルミ容器内に帯電微粒子を取り込んで粒子数の変化を微分型電気移動度計測器(DMA)を用いて測定することで、20nm付近の粒子径をもつ帯電微粒子水イと1nmの粒子径の帯電微粒子水ロの粒子数とその寿命を求めた結果を図1に示す。…」

「【0052】なお、粒子径が3nmより小さい場合及び粒子径が50nmを超える場合、上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかった。また粒子径が3?50nmというきわめて小さい帯電微粒子水は、空気中の湿度調整という点に貸して殆ど影響を与えることはない。」

本件図面の図1には、20nm付近の粒子径をもつ帯電微粒子水は、1nmの粒子径の帯電微粒子水よりも長寿命であることが示されている。

イ これらの明細書及び図面の記載事項から、帯電微粒子水の粒子径の上限は、粒子の空間内への拡散性や人の肌への浸透性の観点から100nmが好ましく、抗原の不活性化の作用や空気中の湿度に影響を与えないという観点から、50nmが好ましいこと、また、粒子径の下限は、粒子の寿命と抗原の不活性化の作用の観点から3nmが好ましいことが把握される。
そうすると、実施例として示されたものが、20nm付近をピークとして、10?30nmに分布を持つ帯電微粒子水のみであったとしても、粒子のほぼ全てが粒子径10?30nmの範囲に分布している帯電微粒子水であれば、室内への拡散性が良いことや、長寿命であること、抗原の不活性化の作用を奏しつつ、空気中の湿度調整に影響を与えない等の作用効果を奏することは、当業者が明細書及び図面の記載に基いて理解できる事項である。

ウ したがって、本件訂正特許発明1ないし4が発明の詳細な説明に記載されていないとすることはできない。
よって、無効理由9は理由がない。

(3)無効理由10について
ア 静電霧化させる対象である「水」について、本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0035】このような材質を選択しているのは次の理由による。すなわち、霧化させる水が例えば水道水、地下水、電解水、pH調整水、ミネラルウォーター、ビタミンCやアミノ酸等の有用成分が入った水、アロマオイルや芳香剤や消臭剤等が添加されている水等に、Ca,Mg等のミネラル成分が入った水である時、…」
そして、霧化させる水として、上記【0035】に記載の水の使用を阻害するような記載は、本件特許明細書に存在しない。

イ そうすると、本件訂正特許発明1ないし4において、静電霧化させる対象である「水」は、単なる水であってもよいし、pH調整水や消臭剤等が添加された水であってもよいことは明らかである。
したがって、本件訂正特許発明1ないし4における「大気中で水を静電霧化」における「水」の意味は明確であり、本件訂正特許発明1ないし4は明確である。

ウ なお、請求人は、審査過程における意見書等での被請求人の主張からすると、本件訂正特許発明1ないし4における「水」は単なる水に限られるべきであるから、明細書における記載と整合しない旨主張する。
しかし、被請求人の上記の主張は、乙3(特開2003-79714号公報)や乙4(特開2001-286546号公報)記載のものは、殺菌作用を有する液体や抗ウイルス作用を有する液体を静電霧化することにより菌、ウイルスを除去するものであって、静電霧化により生じた帯電微粒子水自体が殺菌作用や抗ウイルス作用を有すものではないとの趣旨にとどまるから、この主張が本件訂正特許発明1ないし4における「水」を単なる水に限定する趣旨とは解されない。
よって、無効理由10は理由がない。

(4)無効理由11について
(4-1)明確性について
ア 本件訂正明細書には、水の「静電霧化」について以下の記載がある。

「【0008】また、不活性化装置は、霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して…帯電微粒子水を生成する…」

イ そうすると、水の「静電霧化」とは、高電圧を印加して生じる静電力作用により水が霧化することと理解することができる。
また、このような理解は、例えば、以下の甲1の記載、及び上記「(1)無効理由8について」について摘記した甲10(ア)の記載と何ら矛盾するところがない。

「毛細上部に高電圧を印加することで帯電微粒子水を空間中に噴出させる静電霧化現象がナノ材料の研究開発に応用されつつある。」(甲1 第59頁左欄第7?9行)

ウ したがって、本件訂正特許発明1ないし4における水の「静電霧化」の意味は明確であり、本件訂正特許発明1ないし4が明確でないとすることはできない。

(4-2)サポート要件、実施可能要件について
ア 本件訂正特許発明1ないし4は、静電霧化手段における「対向電極」を特定事項としていない。
しかし、対向電極を有さない静電霧化手段であっても、高電圧を印加することによって霧化部に電荷を集中させれば水を静電霧化の現象が実現できることは、乙3(段落【0040】ないし【0043】、図9及び10)及び乙4(段落【0024】ないし【0028】、図1ないし3)に記載される、本件優先日前公知の事項であるから、静電霧化手段における「対向電極」を特定事項としないことによって、本件訂正特許発明1ないし4の実施をすることができないとはいえない。

イ また、発明の詳細な説明には、確かに、実施例として「対向電極」を有する静電霧化手段を用いた場合についてしか記載されていない。
しかし、本件訂正特許発明1ないし4は、本件特許明細書の【0006】に記載の「花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化できる帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置を提供する」ことを解決しようとする課題とするものであって、その課題は、「ラジカルを含んでいる粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する」旨の本件訂正特許発明1ないし4の特定事項を含む技術的手段により、解決されることが明らかである。
したがって、本件訂正特許発明1ないし4が発明の詳細な説明に記載した具体的な実施例のみに限られるということはできない。

ウ なお、請求人は、乙3及び乙4を挙げて、対向電極を配置しない場合にも水を静電霧化できることは技術常識であると主張することは、被請求人が、平成23年1月17日付け意見書において、乙3及び乙4は、水を静電霧化するものではないと主張したことに反し、許されないものである旨主張する(平成24年6月20日付け口頭審理陳述要領書第19頁第3ないし9行)。
しかし、該意見書における主張は、乙3及び乙4記載のものは、殺菌作用を有する液体や抗ウイルス作用を有する液体を静電霧化することにより菌、ウイルスを除去するものであって、静電霧化により、殺菌作用や抗ウイルス作用を有するものではない旨の主張にとどまり、乙3及び乙4記載のものは静電霧化ではないという趣旨のものとは解されない。

エ また、請求人は、甲12の記載(対向電極を有しない場合に、大気中で水を静電霧化して、粒子径3?50nmの帯電微粒子水を生成することはできるが、その場合には、不活性化の効果がなく、ラジカルも発生していないことを示す試験結果)によって、本件訂正特許発明1ないし4において、対向電極が必要であることは明らかである旨主張する。
しかし、本件訂正特許発明1ないし4は、帯電微粒子水がラジカルを含み、花粉抗原等を不活性化できるものに係るのであるから、請求人が提出した甲12におけるデバイスB(対向電極なし)のような上記効果を奏さないものは、当然、本件訂正特許発明1ないし4に含まれないというべきであって、この主張は上記の判断に何らの影響も及ぼさない。

オ 以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1ないし4が静電霧化手段における「対向電極」を特定事項として含まないことによって、発明の詳細な説明に記載されていないとすることはできないし、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正特許発明1ないし4の実施ができる程度に明確かつ十分な記載がされていないとすることもできない。

(4-3)小括
よって、無効理由11は理由がない。

(5)無効理由12について
本件訂正特許発明3,4は「花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する」ための「用途」が特定された「不活性化装置」に係る発明であるのに対して、甲第1号証に記載されているのは「消臭」に用いる「静電霧化装置」であるから、両者の差異は、用途の違いとして明確に把握することができる。
したがって、本件訂正特許発明3及び4が明確でないとすることはできない。
よって、無効理由12は理由がない。

(6)無効理由13について
ア 「不活性化」に関して、本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【0045】
…上記帯電微粒子水に黴菌を曝したところ、黴残存率は60分後には0%となる結果を得ることができた。OHラジカルが黴の菌糸を分解するために抗黴効果を得られるものと考えられる。」

「【0048】
また、大腸菌O-157を上記帯電微粒子水に曝露させたところ、30分後には不活性化率が100%となる結果を得ることができた。これは帯電微粒子水中の活性種が菌体表面のタンパクを変成し、菌体の増殖を抑制するためと考えられる。」

イ 以上の記載によると、本件訂正特許発明1ないし4における「不活性化」とは、少なくとも花粉抗原、徽、菌、ウイルスを構成するタンパク質を分解又は変成することによって「活性」を無くすことであると把握できる。
したがって、本件特許の請求項1ないし4の「不活性化」という記載の意味は明確であり、本件訂正特許発明1ないし4が明確でないとすることはできない。
よって、無効理由13は理由がない。

(7)無効理由14について
本件特許の請求項3及び4に「霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、」と記載されており、霧化部に位置する「水」が「静電霧化」の対象とされているから、大気中で静電霧化される「水」が「前記水」と特定されていなくても、霧化部に位置する「水」であることは明らかである。
したがって、本件訂正特許発明3及び4が明確でないとすることはできない。
よって、無効理由14は理由がない。

(8)無効理由15について
ア 平成23年1月17日付け手続補正により、本件特許の請求項1ないし4、及び発明の詳細な説明の段落【0007】及び【0009】の「水を静電霧化して」が、「大気中で水を静電霧化して」と補正された。
そこで、検討するに、当初明細書等には、以下の記載がある。

「【0014】
含有するラジカルは、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルであると、反応性も高く、また大気中の酸素や水蒸気から生成されるためラジカル原材料を用いる必要もなくて、ラジカル含有状態の確保が容易となる。」

「【0017】
加えるに、上記酸性化学種が、窒素酸化物や有機酸であると、大気中の窒素や二酸化炭素から生成することができるために、原材料を添加することなく、酸性化学種含有状態の確保が容易となる。」

「【0042】
「…なお、図6から明らかなように、この帯電微粒子水はラジカルを含有する上に、図7から明らかなように、大気中の窒素や二酸化炭素から生成されたと考えられる窒素酸化物や有機酸といった酸性種を多く含有したものとなっている。」

イ これらの記載によれば、「水を静電霧化して」生成された耐電微粒子水は、「大気中の」原材料から生成されたラジカルを含有するのであるから、水を静電霧化している場が「大気中」であることは、当業者にとって自明な事項であるといえる。
したがって、本件特許の請求項1ないし4の記載を「大気中で水を静電霧化して」とする補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであるから、本件特許は、同法第123条第1項第1号には該当しない。
よって、無効理由15は理由がない。

(9)無効理由8ないし15についての小括
以上のとおりであるから、無効理由8ないし15は理由がない。

II 無効理由1ないし5(甲1を主引用例とする新規性違反及び進歩性違反)について
1 甲1に記載された事項
甲1は、「静電霧化を用いた消臭技術の研究」を標題とする論文の写しであり、以下の事項が記載されている。

(ア)「毛細上部に高電圧を印加することで帯電微小水を空間中に噴出させる静電霧化現象がナノ材料の研究開発に応用されつつある。筆者らは静電霧化による水微粒子が室内の空間臭、付着臭を消臭することを見出したので以下に報告する。」(第59ページ左欄第7ないし11行)

(イ)「静電霧化装置 実験に用いた装置の概略をFig.1に示す。放電部にポリエステルフェルトを用い、対極に対し-6kVDCの印加電圧を加えた。霧化量は0.5g/hrである。
1-1 消臭官能試験 22m3チャンバー内に静電霧化装置を空気清浄機(松下電工製 EH3553)の吐き出し部に設け4.3m3/分で運転した。」(第59ページ左欄第13行ないし右欄第2行)

(ウ)第59ページ頁左欄に「Fig.1」として、静電霧化装置の概略図が記載され、該図には、HVにより-6KVDCの印加電圧が加えられることが示されている。

(エ)「1-2 ガスクロ消臭試験 静電霧化を作動させないブランクに対し静電霧化を作動させた場合には1時間後に約60%のアセトアルデヒド除去が確認された。(Fig.5)」(第60ページ左欄下から第3行ないし末行)

(オ)第60ページ右欄に「Fig.5」として、静電霧化の作動時のアセトアルデヒドの濃度変化を示すグラフが記載されている。

(カ)「1-3 粒径計測 DMAでは30nmまでの粒径計測が可能であるが、静電霧化水微粒子の粒径計測では20nm付近にピークが観測された。(Fig.6)」(第60ページ右欄第1ないし3行)

(キ)第60ページ右欄に「Fig.6」として、静電霧化水の粒径分布のグラフが記載され、該グラフには、静電霧化水が、20nm付近をピークとして、10?30nmに分布することが示されている。

(ク)「4.考察
この静電霧化の微粒子水による消臭についてDMA計測結果から消臭メカニズムを以下に考察する。…これらのことから静電霧化で発生したナノオーダーの水微粒子がアンモニア等のガス成分と接触しやすく、ガス成分が水微粒子に溶解し空間中から除去されると推察される。静電霧化の水微粒子に溶解後のガス成分の挙動については現在検討中である。」(第60ページ右欄第4ないし16行)

2 甲1に記載された発明
甲1の記載事項を整理すると、甲1には、次の発明が記載されていると認めることができる。
「静電霧化装置をチャンバー内で運転して水を静電霧化して、粒径計測で20nm付近をピークとして、10?30nmに分布を持つ帯電微粒子水を生成し、チャンバー内の空間臭、付着臭を消臭する帯電微粒子水による消臭方法。」(以下、「甲1発明1」という。)

「放電部に位置する水が静電霧化を起こす-6kVDCの印加電圧を印加するHVを備え、当該HVの-6kVDCの印加電圧の印加によって、静電霧化装置をチャンバー内で運転して水を静電霧化して、粒径計測で20nm付近をピークとして、10?30nmに分布を持つ、チャンバー内の空間臭、付着臭を消臭する帯電微粒子水を生成する静電霧化装置。」(以下、「甲1発明2」という。)

3 検討
(1)本件訂正特許発明1について
(1-1)本件訂正特許発明1と甲1発明1との対比
甲1発明におけるチャンバー内には、空気、すなわち大気が存在することは明らかであって、「チャンバー内の空間臭、付着臭を消臭する」のは「帯電微粒子水」によるのであるから、「帯電微粒子水」がチャンバー内に放出されることも明らかである。
また、甲1発明1における「粒径計測で20nm付近をピークとして、10?30nmに分布を持つ」は、本件訂正特許発明1の「粒子径が3?50nm」に相当し、甲1発明1の「チャンバー内の空間臭、付着臭を消臭する…消臭方法」は、室内の空気を清浄化する清浄化方法である点で、本件訂正特許発明1の「花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する…不活性化方法」に対応する。

したがって、本件訂正特許発明1と甲1発明1とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、室内の空気を清浄化する前記帯電微粒子による清浄化方法であって、前記帯電微粒子水は室内に放出される方法。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点1a>
本件訂正特許発明1は、帯電微粒子水を花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する帯電微粒子水による不活性化方法であるのに対し、甲1発明1は、帯電微粒子水による室内の空間臭、付着臭を消臭する消臭方法である点

<相違点1b>
本件訂正特許発明1では、帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対し、甲1発明1では、帯電微粒子水が、そのようなものであるか明らかでない点

(1-2)相違点についての判断
ア 甲1発明1における消臭のメカニズムは、甲1の(ク)の記載によると、ガス成分の水微粒子への溶解と推察されており、帯電微粒子水中にラジカルが存在することを示す記載も示唆もないし、ラジカルとの反応によって臭気を除去したものともされていない。

イ 甲2
イ-1 甲2には以下の記載がある。
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プレフィルタで大まかなホコリを除去した後、高電圧が印加される集塵部で静電的に集塵し、その後、脱臭フィルタにて脱臭する空気清浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】空気清浄機の機能は、大きくは集塵と脱臭に分けられる。集塵に関する問題の一つには、人体に有害なオゾンの発生が挙げられる。一方、脱臭に関する問題としては、臭気ガス成分の除去には、従来は活性炭等にて臭気を吸着させるものしかなく、活性炭等が直ぐに飽和して寿命が短いという問題があった。また、吸着できるガス成分も主に水に溶けにくい疎水性のガス成分で、水に溶けやすい親水性のガス成分にはあまり効果がなかった。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明は上記のような観点から、水蒸気によりオゾンの発生量を抑制できるとともに、水蒸気をイオン化してOHラジカルを生成することにより、ガス成分を分解し、親水性のガス成分を疎水性のガス成分に変性したり、悪臭成分を無臭成分に変えて脱臭効果を飛躍的に向上させることができるばかりでなく、殺菌効果も非常に高い空気清浄装置の提供を第1の目的とする。
【0005】第2の目的は、そのような空気清浄装置において、水蒸気の発生およびそのイオン化を簡単に行えるようにすることにある。」

(イ) 「【0011】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記第1の目的を達成するため、プレフィルタで大まかなホコリを除去した後、高電圧が印加される集塵部で静電的に集塵し、その後、脱臭フィルタにて脱臭する空気清浄装置において、水蒸気を発生させてイオン化しプレフィルタと集塵部との間に放出するイオン化水蒸気発生部を備えたことを特徴とする。
【0012】また、第2の目的を達成するため、イオン化水蒸気発生部を、水槽からの水を加熱して水蒸気を発生する水蒸気発生部と、コロナ放電により水蒸気をイオン化する放電部とで構成しこと(判決注・原文ママ)を特徴とする。
【0013】第3の目的を達成するため、放電部は、水蒸気発生部の孔から水蒸気が放出されるときに放電ニードルからのコロナ放電にてイオン化することを特徴とする。」

(ウ) 「【0025】…酸素濃度の少ない水蒸気雰囲気中でコロナ放電してイオン化することから、オゾンの発生は無くて、OHラジカルが生成される。すなわち、一般的にオゾンは、酸素の存在下でコロナ放電が起きると発生するが、酸素濃度が少しでも減少すると、その発生量は格段に減少し、しかも水蒸気雰囲気中でコロナ放電させるので、オゾンは発生しない。また、水蒸気雰囲気中でコロナ放電させると、水蒸気(水)が分解されてOHラジカルが生成される。
【0026】OHラジカルは不対電子を持ち、対となっている電子を求めて活発に反応するため、オゾンよりも酸化力がはるかに大きく、殺菌力も優れ、またガス成分を分解し、親水性のガス成分を疎水性のガス成分に変性したり、悪臭成分を無臭成分に変えるので、脱臭効果が飛躍的に向上する。」

(エ) 「【0035】
【発明の効果】この発明による効果を、請求項毎に挙げると、次のとおりである。<請求項1>水蒸気をイオン化してイオン化水蒸気、つまりOHラジカルを有する水蒸気としてプレフィルタと集塵部との間に放出するので、水蒸気によりオゾンの発生量を抑制できるとともに、水蒸気をイオン化してOHラジカルを生成することにより、ガス成分を分解し、親水性のガス成分を疎水性のガス成分に変性したり、悪臭成分を無臭成分に変えて脱臭効果を飛躍的に向上させることができるばかりでなく、殺菌効果の向上も図れる。…」

イ-2 以上によれば、甲2には、プレフィルタで大まかなホコリを除去した後、高電圧が印加される集塵部で静電的に集塵し、その後、脱臭フィルタにて脱臭する空気清浄装置において、水蒸気を発生させてイオン化しプレフィルタと集塵部との間に放出するイオン化水蒸気発生部を備え、イオン化水蒸気発生部は、コロナ放電によりこの水蒸気をイオン化してOHラジカルを生成してガス成分を分解し、プレフィルタと集塵部との間に放出すること、これにより脱臭効果及び殺菌効果の向上を図ることができることが記載されているものと認められる。
もっとも、甲2におけるOHラジカルの生成は、甲1発明1のように、液体である水を静電霧化したものではなく、気体である水蒸気をコロナ放電して水蒸気をイオン化したものであり、OHラジカルはイオンの状態でプレフィルタと集塵部との間に放出されるものであって、甲1発明1とはその生成方法が異なっている。また、甲第2号証には、放電部分からのOHラジカル単体での生成に関する開示はあるものの、水微粒子とOHラジカルとの関係については開示がない。

ウ 甲3
ウ-1 甲3には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、洗濯槽内に入れた衣類を洗濯する電気洗濯機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、洗濯機の大容量化に伴って、洗濯物(汚れた衣類)を洗濯機の槽内に一時ためておき、まとめ洗いする人が増えてきている。汚れた衣類が槽内に一時保管される期間は、休日に洗濯する人で数日間、毎日洗濯する人で半日程度である。この保管期間が長かったり、また気温が高かったりすると、汗や汚れを養分として微生物が増殖し、衣類から臭気を発生する。
【0003】また、以前より洗濯機を長期間使用していると、槽に付着した洗剤成分や汚れなどを養分として黴などの微生物が増殖してコロニーを形成し、洗濯中に剥離して衣類繊維に絡み付くことが知られている。特に、衣類繊維に微生物が絡み付いた場合は、洗濯終了後であっても、槽内に放置したままにすると、衣類から臭気を発生し、さらには、これを乾燥機にかけた後も臭気が残るという課題があった。

【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように従来の洗濯機では、洗濯槽に一時保管していた洗濯前の衣類に微生物が増殖して臭気を発生する課題や、洗濯槽で増殖した微生物が剥離して衣類繊維に絡み付くといった課題が生じていた。

【0009】本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、
簡単な処理によって洗濯前・後の衣類、及び洗濯槽における微生物の増殖を防ぎ、衣類の衛生性を向上させるとともに、臭気の低減を図ることを目的としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電気洗濯機は、洗濯槽もしくは洗濯用ドラムを備えた電気洗濯機において、洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を噴射するように配設された散水手段と、散水手段へ水の供給をON/OFFする散水用バルブと、洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内へコロナ放電によって発生したオゾン、ラジカル種を導入するように配されたコロナ放電部とを備えるように構成したものである。
【0011】また、給水前の洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内に保管された衣類に対し、コロナ放電部から発生したオゾン、ラジカル種を洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内に所定量注入するとともに、洗濯槽に配された攪拌手段もしくは洗濯用ドラムによって衣類を所定時間攪拌し、その後、散水用バルブをONして散水手段によって洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を所定時間噴射するように構成したものである。
【0012】さらにまた、洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内に衣類が保管されていない状況のもとで、コロナ放電部から発生したオゾン、ラジカル種を洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内に所定量注入して所定時間保持し、その後、散水用バルブをONして散水手段により洗濯槽もしくは洗濯用ドラム内へ霧状もしくはシャワー状の水を所定時間噴射するように構成したものである。」

(イ) 「【0014】ここで図2をもとにコロナ放電部10の構成と働きについて説明する。図において17は電源部、18は針状突起が形成されている金属からなる放電電極、19は接地された対向電極であり、放電電極18と対向電極19は対を成し、コロナ放電部10を形成している。
【0015】動作について説明する。電源部17により放電電極18に負の高電圧を印加すると、接地されている対向電極19との間にコロナ放電が起こり、放電電極18の針状突起から放電電子が放出される。この放電電子は放電電極18と対向電極19の間を流れる空気中の酸素分子や水分子と衝突して、これら分子の分子結合を切断する。これによって化学的に活性の高い酸素ラジカルや水酸基ラジカルなどが生成する(以下、これらラジカルをラジカル種と総称する)。同時に分子結合を切断された時に出来た酸素原子は、近傍にある酸素分子と結合して新たにオゾンを形成する。
【0016】このようにして副次的に生成したラジカル種やオゾンは、強い酸化力を有しており、臭気を有する有機分子は、水や二酸化炭素などの簡単な分子に酸化分解される。また微生物は、細胞膜などが破壊されて不活性化される。

【0019】オゾン・ラジカル処理では、まずコロナ放電部10が通電され、発生したラジカル種やオゾンは、ファン11からの送風に乗ってダクト12を介し、洗濯槽1内に注入される。注入後、少し間を置いて回転翼3が駆動される。回転翼3は右回転と左回転を交互に複数回繰り返した後、停止する。これにより衣類8は攪拌され、注入されたラジカル種とオゾンは槽内にある衣類8とまんべんなく接触するようになる。

【0021】次にコロナ放電部10への通電が切られ、散水用バルブ15がONされ、散水手段14から霧状もしくはシャワー状の水(水粒)が洗濯槽1内に噴射される。水粒がまんべんなく槽内に行き渡るように散水手段14は槽内の上部、蓋13の近傍に配設されている。これにより雰囲気中のオゾンやラジカル種は水粒に溶け込んで洗い流される。このようにして水粒が噴射されてオゾンやラジカル種が洗い流された後、散水用バルブ15はOFFされる。この後、給水用バルブ16がONされ、通常の洗濯工程へと移行する。」

(ウ)「【0029】
【発明の効果】本発明の電気洗濯機は以上のように構成されているので以下の効果を奏する。
【0030】衣類に付着した微生物や臭気分子を不活性化したり、酸化分解したりすることが可能となり、洗濯終了後の衣類に対する衛生性が向上し、臭気が低減される。
【0031】また槽内に付着した微生物を不活性化することが可能となり、槽内の衛生性が向上するとともに、洗濯終了後の衣類に対しても衛生性が向上し、臭気が低減される。
【0032】またコロナ放電部により空気中の水分子や酸素分子からラジカル種やオゾンをつくり、これを用いて洗濯兼脱水槽における微生物の増殖を防ぐようにしたので、特殊な薬液が不要になり経済的になるとともに、薬液を定期的に供給する作業が不要となり利便性が向上する。」

ウ-2 以上によれば、甲3には、洗濯槽又は洗濯用ドラムを備えた電気洗濯機において、洗濯槽又は洗濯用ドラム内へ霧状又はシャワー状の水を噴射するように配設された散水手段と、散水手段へ水の供給をON/OFFする散水用バルブと、洗濯槽又は洗濯用ドラム内へコロナ放電によって発生したオゾン、ラジカル種を導入するように配されたコロナ放電部とを備えるように構成し、コロナ放電により放電電子を放出し、この放電電子が放電電極と対向電極の間を流れる空気中の酸素分子や水分子と衝突して、これら分子の分子結合を切断し、化学的に活性の高いラジカル種を生成し、給水前の洗濯槽若しくは洗濯用ドラム内に保管された衣類に対し、又は洗濯槽若しくは洗濯用ドラム内に衣類が保管されていない状況のもとで、ラジカル種を洗濯槽又は洗濯用ドラム内に所定量注入して、衣類に付着した微生物や臭気分子または槽内に付着した微生物を不活性化した点が記載されているものと認められる。
もっとも、甲3におけるラジカル種の生成は、甲1発明1のように、液体である水を静電霧化したものではなく、空気中でコロナ放電を行い、これにより発生した放電電子が放電電極と対向電極の間を流れる空気中の酸素分子や水分子と衝突してこれら分子の分子結合を切断することにより行うものであって、その生成方法が異なっている。また、甲3には、ラジカル種の生成は開示されているが、水微粒子とラジカル種との関係については開示がなく、また、甲3に記載の発明は、甲1発明1のように室内に放出されるものでもない。

エ 甲4
エ-1 甲4には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、互いに対向する第1電極と第2電極の間で放電を発生させる放電装置、及びこの放電装置で放電により低温プラズマを生成してガス処理などを行うプラズマ反応器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、低温プラズマを利用したプラズマ反応器は、例えば空気や排ガスなどに含まれる有害成分や臭気成分を、放電により発生する活性種の作用で分解して無害化または無臭化する空気浄化装置やガス処理装置に利用されている。例えば、特開平8-155249号公報及び特開平9-869号公報には、放電電極としての複数の針電極と対向電極としての面電極の間の空間で放電(ストリーマ放電)を起こして低温プラズマを生成し、その放電場に被処理ガスを導入してガス処理を行う装置が開示されている。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、針電極のように放電起点部が点状になった突起状の放電電極を用いると、その先端部の周囲において、放電によって生じる高エネルギー粒子(高速電子など)や反応性の高い物質(各種ラジカルなど)の密度が特に大きくなる。このため、放電電極が高速電子によるスパッタリング作用で消耗したり、高反応性物質と化学反応したりすることにより、表面が早期に劣化しやすくなる。

【0006】本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的とするところは、突起状の放電部が早期劣化するのを防止することにより、放電性能やプラズマ反応器の処理性能が早期に低下するのを防止することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】まず、本発明が講じた第1の解決手段は、放電部(B)の表面に被膜(f)を形成し、該被膜(f)が損耗しても復元できるようにしたものである。
【0008】具体的に、第1の解決手段は、互いに対向する第1電極(21)及び第2電極(22)と、両電極(21、22)に放電電圧を印加するように接続された電源手段(24)とを備え、両電極(24)の少なくとも一方が点状の放電部(B)を有する放電装置を前提としている。そして、この放電装置は、上記放電部(B)に、導電性の液体を固化させることにより被膜(f)が形成されていることを特徴としている。

【0047】また、上記第2の解決手段によれば、例えば第1電極(21)に放電部(B)を設ける場合、この放電部(B)の少なくとも表面に供給される導電性の液体(25)と、その対向極となる第2電極(22)との間で放電が発生する。このため、該放電部(B)を構成する針電極などから直接放電が発生しないようにできるので、電極(21)の早期損耗などを防止でき、放電性能の低下も防止できる。また、導電性の液体(25)が供給され続ける限り電極を使用できるので、電極寿命が飛躍的に長くなる。」

(イ)「【0062】
【発明の実施の形態1】以下、本発明の実施形態1を図面に基づいて詳細に説明する。
【0063】この実施形態1は、被処理空気中の臭気成分や有害成分を酸化分解などにより処理して空気を浄化する空気浄化装置(1)に、本発明に係る放電装置(A)及びプラズマ反応器(20)を適用したものである。図1は、この空気浄化装置(1)の概略構成を示している。
【0064】図示するように、この空気浄化装置(1)はケーシング(10)内に各機能部品が収納された構成であり、機能部品として、集塵フィルタ(11)と遠心ファン(12)とプラズマ反応器(20)とがケーシング(10)内に収納されている。…
【0065】ケーシング(10)の一つの側面(図の右側の側面)には、ケーシング(10)内に空気を吸い込むための空気吸込口(15)が形成され、上面には浄化空気を吹き出すための空気吹出口(16)が形成されている。空気吸込口(15)には吸込グリル(15a)が設けられ、空気吹出口(16)には吹出グリル(16a)が設けられている。また、空気吸込口(15)には、吸込グリル(15a)の内側に上記集塵フィルタ(11)を配置して、吸込空気中に含まれる塵埃を捕集するようにしている。
【0066】空気吹出口(16)は、ケーシング(10)の上面において、空気吸込口(15)とは反対側の縁部(図1の左側の縁部)に形成されている。そして、この空気吹出口(16)に対応して、上記遠心ファン(12)がケーシング(10)内に設けられている。この遠心ファン(12)には、ファン用電源(12a)が接続されている。以上の構成において、ケーシング(10)の内部は、空気吸込口(15)と空気吹出口(16)の間が被処理空気の流通空間となっている。そして、遠心ファン(12)を起動すると、被処理空気が空気吸込口(15)の吸込グリル(15a)及び集塵フィルタ(11)を通してケーシング(10)内に吸い込まれる。被処理空気は、下記に詳述する反応器(20)での処理後に、空気吹出口(16)の吹出グリル(16a) からケーシング(10)の外に吹き出される。…
【0067】図2はプラズマ反応器(20)の概略構成を示す断面図…である。

【0071】両電極(21、22)には、高電圧パルス電源(電源手段)(24)が接続されており、放電電極(21)と対向電極(22)の間でストリーマ放電が生じるようになっている。このストリーマ放電により、放電場(D)には低温プラズマが発生する。低温プラズマにより、活性種(被処理空気中に含まれる臭気物質や有害物質などの被処理成分に作用する因子)として、高速電子、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカルなどのラジカルや、その他励起分子(励起酸素分子、励起窒素分子、励起水分子など)などが生成され、これら活性種により被処理空気が処理される。」

(ウ)「【0088】
【発明の実施の形態2】本発明の実施形態2は、導電性の液体として水(25)を放電部(B)に供給しながら、水(25)と対向電極(22)の間で放電を起こすようにしたものである。ここで用いる水(25)は、導電性の面から、純水でなく不純物を含んだものにするのが好ましい。
【0089】この実施形態2では、図5を参照して放電装置(A)の構成について説明する。放電装置(A)は、放電電極(21)と対向電極(22)とからなり、両電極(21、22)に高電圧パルス電源(24)が接続されている。放電電極(21)側は接地されてほぼ±0Vに設定されており、対向電極(22)側が所定のマイナス電位に設定されている。

【0091】-運転動作-
この放電装置(A)においては、貯水槽(26)の水は、毛細管現象によって微細管(21d)の内部を上昇し、微細管(21d)の上端部にまで達する。ここで、微細管(21d)から対向電極(22)に向かって放電が生じると、その放電方向にはイオン風が発生する。イオン風は、放電により発生した空気イオンが対向電極(22)に引き寄せられて移動する間に、次々に中性の空気分子に衝突して運動エネルギーを空気に与える結果、生じるものである。
【0092】イオン風が発生することにより、微細管(21d)の先端部は負圧になり、水(25)が微細管(21d)の先端から僅か上方へ表面張力によって突出し、所定の曲率の突起状になる。このように水(25)が微細管(21d)の先端から突出すると、この水(25)自体が放電電極(21)の一部として作用し、放電が水(25)と対向電極(22)との間で発生するようになる。水(25)は、放電により霧化すると微細管(21d)から突出した部分が消失するが、上述の毛細管現象とイオン風の負圧により貯水槽(26)からほぼ連続的に吸い上げられ、ほとんど連続して水(25)が電極として作用する。このため、微細管である微細管(21d)自体からは、ほとんど放電しないか、断続的に放電することになる。…【0095】また、この例では水(25)を放電電極(21)に利用しているため、従来の放電装置と比べて、活性種の発生量、具体的にはOHラジカルやOラジカルなどの発生量が増加する。このため、この放電装置(A)を被処理ガスの有害成分や臭気成分を分解するのに用いると、従来の放電装置と比べてこれら成分の分解能力が高くなるので、処理性能を高めることができる。」

エ-2 以上によれば、甲4には、「放電部の表面に導電性の液体(水)が供給されるようにして放電することにより、放電部に用いられる針電極などから直接放電が発生しないようにして放電部の摩耗を防止するとともに、水を供給することにより、従来の放電装置と比べて、OHラジカルやOラジカルなどの発生量を増加させた放電装置。」の発明が記載されていることが認められる。
しかし、甲4には、放電によりOHラジカルやOラジカルが発生し、かつ、液体を用いた場合には、その発生量が増加することの記載はあるものの、放電部に供給された水と発生したラジカルとがどのような状態にあるのか、すなわち、水がラジカルを含むものであるかについては明らかではない。しかも、上記エ-1認定の甲4の記載に照らすと、甲4記載の発明は、空気清浄装置に吸い込んだ空気をラジカル等を用いて浄化するものであり、このような構成に照らしてもラジカルの発生は局所的なものであると認められ、帯電微粒子水を生成して放出することを意図したものとは認められない。そもそも、上記エ-1認定の甲4の記載に照らすと、甲4記載の発明において放電部に水を供給する目的は、放電部の表面に導電性の液体を供給することによる放電部の摩耗防止であるということができる。そうすると、甲4には水がラジカルを含むものであることの開示があると認めることはできず、しかも、甲4記載の発明は、甲1発明1とはその目的や構成が相違するものと
認められる。

オ 甲5
オ-1 甲5には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品の品質劣化を防止する一般家庭用或いは業務用の食品保存庫に関するものである。

【0007】この発明によれば、負イオン発生手段を駆動するとともに、各電極に直流電圧を印加する。これにより、負イオン発生手段から保存庫本体内に負イオン(O_(2)^(-),CO_(4)^(-))が供給され、この負イオンが電極のうち陽極側、即ち食品収納側に吸引される。これにより、食品周囲に浮遊している細菌類等や食品に付着している細菌類等が負イオンにより殺菌され、また、食品の酸化変質が抑制される。
【0008】この殺菌作用を説明するに、負イオン化した例えば酸素(O_(2)^(-))は、徹生物のエネルギー代謝系(電子伝達系)に作用し、微生物体内で生理障害を引き起こし、増殖を阻害する作用を有するもので、これにより、微生物等の殺菌が行われる。

【0011】請求項7の発明では水等の液体の微粒子或いは蒸気を供給する加湿手段を設置している。これにより、負イオン(O_(2)^(-),CO_(4)^(-))と水とが結合し、O_(2)^(-)・(H_(2)O)nやCO_(4)^(-)・(H_(2)O)nが生成され、食品の乾燥を防止するとともに、これらの負イオン粒子が食品収納側に引き寄せられ、食品の殺菌等を効率良く行うことができる。」

オ-2 以上によれば、甲5には、微粒子水と負イオンが存在する環境において、負イオンが微生物に対する殺菌作用を及ぼすことが記載されているが、静電霧化された帯電微粒子水にラジカルが含まれることについて、何ら示唆するところがない。

カ 甲6
カ-1 甲6には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷蔵庫,冷蔵ショールーム,調理室などに適用する食品鮮度維持装置に関する。

【0011】
【発明が解決しようとする課題】この方法は、要するに水滴が金属板に衝突する場合に生ずる空気イオンの発生と、水滴の粒径選別との組合せによりレナード効果を忠実に実現しようというものであり、メカニズムとして極めて簡単であるが、分裂の技術的意味や分離の技術的意味に関しては明らかにされておらず、水滴の分裂と、水滴の粒径選別との組合せの構想によるときには、負イオン発生量は、水の噴出圧力や、分離器であるサイクロンセパレータの性能に左右され、負イオン発生量を増大させるには、高圧ポンプを用い、サイクロンセパレータを大型化し、強力なポンプとファンを用いて水の噴射圧力を高め、また、選別能力を増大させざるを得ない。しかも、より根本的な課題として水から微細水滴を発生させるだけでは、まさしく、滝の飛沫の発生が、滝の高さや岩の形状に左右されることと同じように、必ずしも水滴が有効に電離されるという保証はない。

【0013】本発明の目的は、負イオン発生のメカニズムを可能な限り機能的に解明し、各機能を効率よく実行して生鮮食品の鮮度保持に必要な負イオン含有雰囲気を維持させる食品鮮度維持装置を提供することにある。」

(イ)「【0024】負イオン発生のメカニズムは、機能的にイオン解離機構によって行うイオン解離処理と、液滴の活性化及び気体分子のイオン化機構によって行う液滴の活性化処理及び気体分子のイオン化処理と、気液分離機構によって行う気液分離処理とを順に実行するものであるが、各々の処理は、必ずしも明確に区別しうるものではない。…
【0025】まる1 イオン解離処理
イオン解離処理は、要するに水を解離する処理である。液体(水)に高エネルギーを与えると、水(H_(2)O)は、
H_(2)O→H^(+) +(OH)^(- )
のようにイオン解離して図2のように液体内には、電荷の二重層が形成され、空気に接する液体表面には、配向双極子が負イオンを外側に向けて配列するようになり、液面近くに負イオンがより多く引き付けられる。ここに何らかの方法で液体が機械的に小さな水滴に分裂させられると、その水滴の正味の電荷は負となり、正イオンの方は、大きな粒子となって液中に残され、あるいは接地を通して中和されることになる(静電気ハンドブック,P104.静電気学会編,オーム社参照)。
【0026】イオン解離処理としての高エネルギーは、機械的,電気的,電磁気的,光学的あるいは、放射線照射によって付与できる。…

【0030】限りなく微粒子化した液滴中のH^(+) :OH^(-)は、ファン・デル・ワールス力で互いに引き合っているが、強力な遠心力(mrω^(2))とコリオリ力(2mvω)を受け、H^(+) とOH^(-)とは、その質量差(H^(+) =1,OH^(-)=17)により、OH^(-)が外側に向けて配向しやすくなり、双極子が配向する際に負電荷を放出する。
【0031】まる2 気体分子のイオン化処理
気体分子のイオン化処理は、液滴の活性化処理後、必然的に行われる処理である。
【0032】液滴が高エネルギーを得て運動をする間に限りなく微小化され、水滴表面で双極子が配向をする際に、気体(空気)側の界面に存在する酸素(O_(2))分子をイオン化し、O^(-)_(2)・(H_(2)O)_(n)で表示されるマイナス(負)イオン分子群となる(静電気ハンドブック 前出 P317参照)。このマイナス(負)イオン分子群は、水分子付加負イオンと呼ばれるものである。水滴は、結果的に分裂の際に発生したイオンと等量の正電荷を得ることになる(気象電気学 前出 P27参照)。
【0033】まる3 気液分離処理
気液分離処理は、水分子付加負イオンを含む空気を液滴から分離する処理である。気液分離は、正,負イオンの再結合が生ずる前に迅速に行う必要があ
る。もっとも、液滴の粒子は、強力な遠心力作用を受けながら旋回する間に実質的に遠心力分離されるが、さらにサイクロンセパレータを通して液滴を分離し、水分子付加負イオンを含む空気を保存室8内中へ送風する。」
(審決注:丸付文字を「まる1」等と表記した。)

(ウ)「【0035】保存室8内に浮遊する塵埃,臭気,バクテリアなどは、ファン3に吸引されて遠心力・コリオリ力発生装置2内で液中に捕捉されるほか、遠心力・コリオリ力発生装置2にて多量に発生する負イオン及び微細水滴は、気液分離装置4で抽出されて保存室8内を満たし、該室内に低温で且つ100%に近い高湿度空気の雰囲気を形成し、この負イオン含有空気が保存室8内の食品に直接作用して乾燥を防止し、その表面に付着しているバクテリア,ウィルスを除菌してその繁殖を抑え、実質的に室内を無菌状態に維持して食品の品質劣化を抑制する。…」

カ-2 以上によれば、甲6には、電気的な高エネルギーを与えた水のイオン解離処理により、外側に向けてOH^(-)が配向した微粒子化した液滴が得られ、かつ、液滴の空気側の界面に存在する酸素分子がイオン化して、O^(-)_(2)・(H_(2)O)_(n)で表示されるマイナス(負)イオン分子群が生成し、液滴から分離されたこの水分子付加負イオンが食品の表面に付着しているバクテリアやウィルスを除菌することが記載されている。
しかし、甲6には、微粒子化した液滴がラジカルを含むものであるかについて、何ら示唆するものでない。

キ 甲7
甲7は、題名を「ラジカル反応・活性種・プラズマによる脱臭・空気清浄技術とマイナス空気イオンの生体への影響と応用」とする書籍の写しであって、第218頁ないし231頁(以下、「甲7-1」という。)には、「第8講 プラズマクラスターイオンによる空気浄化技術」について、第365ないし367頁(以下、「甲7-2」という。)には、「第13講 水噴霧型マイナスイオンの空気調和への応用」について、第389ないし393頁(以下、「甲7-3」という。)には、「第14講 気化+放電式マイナス空気イオン発生法と創空気システムの開発事例」について、以下の事項が記載されている。

キ-1 甲7-1
(ア)第222頁
「図16に、クラスターイオンの概念を示します。プラスイオンとマイナスイオンはどちらも大気中の水分子が配位して、水のクラスターを形成しています。」
図16には、「クラスターイオンとは」として、
「水の分子で取り囲まれた+と-のイオン」として、H^(+)に水分子が配位したプラスイオンと、O_(2)^(-)に水分子が配位したマイナスイオンが示されている。

(イ)第223頁
「3.2 空気の浄化
図17に、空気浄化の新しい考え方を示します。…
図18に示すように、イオンの元は空中の水分子です。プラズマ放電で空気中の水分子を電離させて、プラスとマイナスのイオンが発生するのではないかと考えています。」

(ウ)第224ないし225頁
「図19に、空気浄化のしくみ(その1)を示します。プラズマクラスターイオンが空気中に放出されると、浮遊している悪臭物質を取り囲み、脱臭分解して不活化します。」
「図19」には、「空気浄化のしくみとは(その1)」として、
「クラスターイオンは、空気中に浮遊している菌・ウイルスや臭い分子に衝突すると、非常に活性力のある水酸基OHに変化。」→「有害物質の中から水素原子を抜き取って水となり、不活化・無臭化させます。」と記載されている。

(エ)第225頁
「図21に、空気浄化のしくみ(その2)を示します。浮遊している菌にイオンが付着して取り囲み、イオンが凝集・衝突することでプラスとマイナスのイオンが反応します。そうすると、菌の表面で活性の高い水酸基ラジカルが生成されて、菌を死滅させます。」
「図21」には、「空気浄化のしくみとは(その2)」として、
菌・ウイルス、臭い分子等にプラスイオンとマイナスイオンが付着し、生成したOHにより菌等が分解されることが示されている。

キ-2 甲7-2
(オ)第363ないし365頁
「2.1空気イオンとは
図5に、『静電気ハンドブック』(静電気学会編)から引用した、空気イオンについてまとめを示します。」
「図5」には、「空気イオンとは」として、
「プラスの小イオンH_(3)O^(+)(H_(2)O)_(7)の構造」が示されるとともに、
「空気イオン 大気中に浮遊している荷電微粒子の総称で、左上図のように分子数個からなる分子集合体(クラスター)から帯電した浮遊塵埃まで、幅広い粒子分布がある。」と記載されている。

(カ)第364ないし365頁
「2.2 空気イオンの空調への関わり
…そして、マイナスイオンが人間にもよい効果を与えるということで、一般空調でも快適性を向上させるために空気イオンが使われるようになりました。」
「図6」には、「空気イオンの空調への関わり」として、
「塵埃 花粉 VOC タバコ煙除去による室内空気質の向上」と記載されている。

(キ)第365頁
「2.3.2 水噴霧法(レナード効果)
図8に示すように、水噴霧法(レナード効果)は水の極性を利用したマイナスイオン発生法です。空気と水の界面には、水の極性により電気二重層が形成されます。水の表面にはマイナスに偏った極性を持つ水の分子が集まりこれを噴霧などにより機械的に分裂させると、マイナスの電荷が多い小さな水滴とプラスの電荷が多い大きな水滴に分かれます。大きな水滴は水面に落下しますが、小さい水滴は気流に乗って運ばれるので、マイナスイオンに富んだ空気が形成されます。」

(ク)第366頁
「2.4.1 マイナスイオンの形態
図9は、コロナ放電とレナード効果の違いをマイナスイオンの粒子径分布からみたものです。コロナ放電では直径1nm、滝などのレナード効果によるものでは直径3nmに粒子分布の中心が存在しています。」

(ケ)第367頁
「2.4.2 イオンの寿命比較実験
図10に、イオンの寿命比較実験を示します。…初期濃度で無次元化して比較を行ない、コロナ放電ではすぐに減少するのに対し、レナード効果は気流に運ばれて遠くまで行くことがわかります。この理由は、分子の粒子径が大きく、イオンの移動度が小さいので消滅しにくいためと考えられます。」

キ-3 甲7-3
(コ)第389頁
「2.1 空気マイナスイオンとは
…空気イオンとは、大気中に浮遊している帯電微粒子水の総称です(一般例:O_(2)^(-)(H_(2)O)_(n)。」

(サ)第390頁
「写真1」には、「マイナスイオン応用商品群」として、
「空気関連商品」の欄に「アクアリフレイオンミスト(EH4010)」が記載され、
「図1」には、「空気イオンの計測方法」における「各種イオン発生別の粒径分布」のグラフとして、
「気化+放電式(アクアリフレ)」のマイナスイオン粒子径が3nm付近と10nm付近にピークがあることが示されている。

キ-4 以上によると、甲7-1にはプラズマ放電で空気中の水分子を電離させると、水分子にプラスイオンとマイナスイオンが配位したクラスターイオンが発生し、これが空気中の菌に付着すると、菌の表面で活性の高い水酸基ラジカルが生成されることが記載されている。
しかし、静電霧化して発生した帯電微粒子水がラジカルを含んでいることを推測させる記載はない。
甲7-2には、水噴霧法(レナード効果)により生成されるマイナスイオンを含む小さな水滴(空気イオン)が、3nmを中心とする粒子分布を有し、花粉やタバコ煙等の除去による空気質の向上に効果があることが記載されている。
しかし、水噴霧法によって生成した水滴とラジカルの関係については、何ら示唆するところがない。
甲7-3には、帯電微粒子水の粒子径が3nm付近と10nm付近にピークがあることが示されているが、これも帯電微粒子水とラジカルの関係について、示唆するものでない。

ク 甲8
ク-1 甲8には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0014】本発明の負イオンに帯電した約0.2?0.001μmの超微細な微粒水の霧を効率的に得るための水の超微細化装置について説明する。この水の超微細化装置2は、図2に示すように、加速機を介してモ-タ-で、超高速に回転される金属回転子(ジャイロ)に対して、付設された貯水タンク3から配水路4を介して導かれた水を当てることによって、水5を微細化しそれらの水滴からサイクロンの方法により約0.2μm?0.001μmの目に見えない超微細な水粒子のみを取り出してその微粒水を霧6にして放出口7から放出させることができる。
【0015】水を超微細化すると微水滴の内部は正イオン群に表面は負イオン群になるとする学説がある。前記水の超微細化装置2により得られる微粒水の霧6の負イオン粒子の粒径を測定すると下記表1となり、これをみると、水を約0.5μm以下に超微細化すると前記学説のように水粒子の表面に負イオンを帯びることがわかる。本発明では、約0.5μm程度の非沈降性微粒水の負イオンを帯びた霧でも効果は得られるが、さらに微細な約0.2μm以下にすることによってより確実に沈降しない浮遊性微粒水となり、また高い負イオン化効果を得られる。」

(イ)「【0031】本発明は上記のようで、舎屋1内の負イオンを帯びた微粒水が浮遊塵埃(正イオンを帯電したものは特に)をその表面に吸着させて0.5?1μm以上の塊になり、質量が増大した塵埃は浮遊できなくなりやがて床に落下して空気中から除去される。また浮遊状態の塵埃は徐々に舎屋1内の正イオンを有する表面の天井や壁面に吸着されていく。このように浮遊していた塵埃が微粒水との結合によって空気中から周囲の床、天井、壁面などや舎屋1内に置いてある物体に移動付着することにより空気清浄化が実現する。上記表2に示される、一般的な浮遊性(永久)大気塵埃、沈降性大気塵埃はもとより、空気感染性のバクテリア、細菌、ビ-ルスなど健康に害を及ぼす微生物を空気中から除去されるので、動物が感染病に犯される危険性が少なくなる。」

ク-2 以上によると、甲8には、負イオンに帯電した超微微粒水の霧が、細菌を吸着して空気を清浄化することが記載されているといえるが、帯電微粒子水とラジカルの関係については、何も示唆するところがない。

ケ 甲9
ケ-1 甲9である空気清浄機のカタログには、第8頁に「アクアリフレ イオンミスト(商品名)」について、以下の記載がある。

「空気中の浮遊菌を低減。
マイナスイオンには菌の繁殖を低減させる効果があるといわれています。」

ケ-2 上記記載と甲7-3の記載とを合わせると、「アクアリフレ イオンミスト(商品名)」は、静電霧化により生成した帯電微粒子水に含まれるマイナスイオンにより、菌の繁殖を低減させる効果があるといえる。
しかし、甲9は、静電霧化により生成した帯電微粒子水とラジカルとの関係について何も示唆していない。

(1-3)本件訂正特許発明1に対する無効理由1ないし5についての小括
以上の検討によると、甲1発明1に甲2ないし甲9に記載の事項を組み合わせたとしても、相違点1bに係る本件訂正特許発明の特定事項である「帯電微粒子水は…ラジカルを含んでいる」ことを導くことはできない。
したがって、相違点1bが実質的な相違点でない、ということはできないし、本件訂正特許発明1が、甲1発明1に甲2ないし甲9の記載事項を組み合わせて当業者が容易に想到し得たということもできない。

(2)本件訂正特許発明2について
ア 本件訂正特許発明2と、甲1発明1とを対比すると、
両者は、相違点1a、相違点1bにおける「本件訂正特許発明1」を「本件訂正特許発明2」と読み替えた点(以下、それぞれ「相違点1a’」、「相違点1b’」という。)で相違し、さらに以下の点で相違する。

<相違点1c>
本件訂正特許発明2では、帯電微粒子水が、粒子径3nm未満の帯電微粒子水よりも長寿命であるのに対して、甲1発明1では、帯電微粒子水の寿命について不明である点

イ そして、上記「(1)(1-2)」において、相違点1bについて判断した理由と同様の理由により、相違点1b’が実質的な相違点でない、ということはできないし、甲1発明1に甲2ないし甲9の記載事項を組み合わせて、相違点1b’に係る本件訂正特許発明2の特定事項を導くことを、当業者が容易になし得たということもできない。

(3)本件訂正特許発明3,4について
ア 本件訂正特許発明3,4(前者)と甲1発明2(後者)とを対比すると、後者の「放電部」は前者の「霧化部」に相当し、以下、同様に、「-6kVDCの印加電圧」は「高電圧」に、「HV」は「電圧印加部」に相当する。
また、甲1発明2におけるチャンバー内には、空気、すなわち大気があることは明らかであって、「チャンバー内の空間臭、付着臭を消臭する帯電微粒子水を生成する」装置であるから、帯電微粒子水が、室内であって大気中に放出されることも明らかである。
また、甲1発明2における「粒径計測で20nm付近をピークとして、10?30nmに分布を持つ」は、本件訂正特許発明3,4の「粒子径が3?50nmであり」に相当し、甲1発明2における「チャンバー内の空間臭、付着臭を消臭する帯電微粒子水を生成する静電霧化装置」は、室内の空気を清浄化するための帯電微粒子水を生成する装置である点で、本件訂正特許発明3,4の「花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し、…不活性化装置」に対応する。

したがって、本件訂正特許発明3,4と甲1発明2とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmであり、空気を清浄化するための帯電微粒子水を生成し、前記帯電微粒子水は、室内であって大気中に放出される装置。」

そして、本件訂正特許発明3,4は以下の相違点1d、相違点1eの点で、また、本件訂正特許発明4は、さらに、以下の相違点1fの点で、甲1発明2と相違する。

<相違点1d>
本件訂正特許発明3,4は、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成する装置であるのに対し、甲1発明2は、室内の空間臭、付着臭を消臭する帯電微粒子水を生成する装置である点

<相違点1e>
本件訂正特許発明3,4では、帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対し、甲1発明2では、帯電微粒子水が、そのようなものであるか明らかでない点

<相違点1f>
本件訂正特許発明4では、帯電微粒子水は、粒子径3nm未満の帯電微粒子水と比較して長寿命であるのに対し、甲1発明2では、帯電微粒子水が、そのようなものであるか明らかでない点

イ 相違点1eについて、上記「(1)(1-2)」において、相違点1bについて判断した理由と同様の理由により、相違点1eが実質的な相違点でない、ということはできないし、甲1発明2に甲2ないし甲9の記載事項を組み合わせて、相違点1eに係る本件訂正特許発明3,4の特定事項を導くことを、当業者が容易になし得たということもできない。

4 無効理由1ないし5についての小括
よって、無効理由1ないし5は理由がない。

III 無効理由6(甲10を主引用例とする進歩性違反)について
1 甲10に記載された事項
甲10には、上記「I(1)無効理由8について」の項の「イ(ア)、(イ)」に示す記載とともに、以下の記載がある。

(ウ)「3.静電噴霧によるイオンの発生
Doleらが1968年に行った研究をはじめ,静電噴霧によるイオンの発生に関する研究が多く報告されている。図6は,静電噴霧によるイオンの発生の概念を示す。試料溶液を供給する細管と対向電極の間に高電圧を印加し,細管先端に形成されたコーン内の高電圧のために正・負イオンの分極が起こり,コーン先端より高度に帯電した液滴が生成する。この液滴の蒸発によって溶媒を気化させると体積の収縮が生じ,液滴の電荷密度がRayleigh限界を越え,液滴が分裂することになる。図6の上の図(モデル1)に示すように,分裂した帯電液滴のサイズが溶媒の気化でさらに小さくなり,ついに帯電液滴サイズが数nmとなり,液滴中には1個の溶質の分子しか残らなくなる。さらに溶媒が完全に蒸発すると,この分子がイオン(クラスター)化すると考えられている。」(第757(39)頁左欄第1-16行)

2 甲10に記載された発明
上記の記載から、以下の発明を認定することができる。

「液体を静電噴霧して、粒子径が数nmで幾何標準偏差が1.1程度のイオンを含む液滴を生成する方法。」(以下、「甲10発明1」という。)

「導電性の細管の先端に位置する液体が静電噴霧を起こす高電圧を印加する高圧電源を備え、当該高圧電源の高電圧の印加によって、液体を静電噴霧して、液滴径が数nmで幾何標準偏差が1.1程度のイオンを含む液滴を生成する静電噴霧装置。」(以下、「甲10発明2」という。)

3 検討
(1)本件訂正特許発明1について
(1-1)本件訂正特許発明1と甲10発明1との対比
本件訂正特許発明1(前者)と甲10発明1(後者)とを対比すると、後者の「静電噴霧」は、前者の「静電霧化」に相当し、後者の「粒子径が数nmで幾何標準偏差が1.1程度のイオンを含む液滴」は、前者の「粒子径が3?50nmの帯電微粒子水」に対応するから、両者は、
「液体を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子の液滴を生成する工程を含む方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点10a>
本件訂正特許発明1は、水を静電霧化して帯電微粒子水を生成し、帯電微粒子水を花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する不活性化方法であるのに対して、甲10発明1は、帯電微粒子の液滴が、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応し、それらの何れかを不活性化するか不明である点

<相違点10b>
本件訂正特許発明1では、大気中で水を静電霧化し、帯電微粒子水は、室内に放出されるのに対し、甲10発明1では、大気中で液体を静電霧化するのか、また、液滴が室内に放出されるのか明らかでない点

<相違点10c>
本件訂正特許発明1では、帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対して、甲10発明1では、帯電微粒子の液滴が、そのようなラジカルを含んでいるか不明である点

(1-2)判断
ア 相違点10aについて
甲10には、静電噴霧の具体的な対象物として、エタノール(第753(35)頁右欄最終行)、ショ糖水溶液(第754(36)頁 図3)、各種水溶液やヘプタン等(第756(38)頁 表1)が記載されているが、水については記載されていない。また、静電噴霧技術の応用例として、「溶液のイオン化法」、「機能整備粒子材料の製造」(第757(39)頁右欄第6行ないし第759(41)頁右欄第13行)が記載されており、これらの応用例は、いずれも静電噴霧される液体が溶質(例えば、タンパク質、DNA、硝酸亜鉛、チオ尿素等)を含み、それらの溶質をイオン化したり、溶質を原料として新たな粒子を作成しようというものであるから、溶質を含むことを前提とするものであって、静電噴霧された液滴の花粉抗原等の不活性化への応用について、何ら示唆するものでない。
これに対して、甲5ないし甲7に記載の技術は、上記「II 3(1)(1-2)相違点についての判断」の項の「オ」?「キ」において示すとおり、水を静電霧化して得られた微粒子水が水分子とO_(2)^(-)、CO_(4)^(-)、OH^(-)等のマイナスイオンとを含むことを利用して、このマイナスイオンにより、除菌、殺菌、消臭を行うというものであるから、甲10発明1と甲5ないし甲7に記載の技術とは、静電霧化する対象の前提が異なり、かつ、帯電微粒子の液滴の応用分野も異なっている。
そうすると、甲10発明1に甲5ないし甲7に記載の技術を組み合わせ、花粉抗原等の不活性化方法に適用しようとする動機付けを見出すことは、当業者にとって、困難というべきである。

イ 相違点10cについて
また、仮に、甲10発明1の静電噴霧の対象を水とし、花粉抗原等の不活性方法に応用することが想到容易であるとしても、甲5ないし甲7には、帯電微粒子水がラジカルを含むことを何ら示唆しないから、甲10発明1に甲5ないし甲7に記載の技術を組み合わせても、相違点10cに係る本件訂正特許発明1の特定事項である「帯電微粒子水は…ラジカルを含んでいる」ことを導くことはできない。

(1-3)小括
したがって、相違点10bについて検討するまでもなく、本件訂正特許発明1は、甲10発明1に甲5ないし甲7に記載の技術を組み合わせても、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(2)本件訂正特許発明3について
ア 本件訂正特許発明3(前者)と甲10発明2(後者)とを対比すると、後者の「細管の先端」、「高圧電源」は、それぞれ前者の「霧化部」、「電圧印加部」に相当し、後者の「液滴径が数nmで幾何標準偏差が1.1程度のイオンを含む液滴」は、前者の「粒子径が3?50nm」である「帯電微粒子水」に対応する。

したがって、本件訂正特許発明3と甲10発明2とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「霧化部に位置する液体が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、水を静電霧化して、粒子径が3?50nmである帯電微粒子の液滴を生成する装置。」

そして、本件訂正特許発明3は以下の相違点10dないし10fの点で、甲10発明2と相違する。

<相違点10d>
本件訂正特許発明3は、水を静電霧化して帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する帯電微粒子水による不活性化装置であるのに対し、甲10発明2は、帯電微粒子の液滴が、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応し、それらの何れかを不活性化するか不明である点

<相違点10e>
本件訂正特許発明3では、大気中で水を静電噴霧し、帯電微粒子水は、室内に放出されるのに対し、甲10発明2では、大気中で液体を静電霧化するのか、また、液滴が室内に放出されるのか明らかでない点

<相違点10f>
本件訂正特許発明3では、帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対し、甲10発明2では、帯電微粒子の液滴が、そのようなものであるか明らかでない点

イ 相違点10d、及び相違点10fについて、上記「(1)(1-2)」に示す判断と同様の理由により、甲10発明2に甲5ないし甲7の記載事項を組み合わせて、相違点10d、10gに係る本件訂正特許発明3の特定事項を導くことは、当業者にとって想到容易でない。

4 無効理由6についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1、3は、甲10に記載された発明に甲5ないし甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、無効理由6は理由がない。

IV 無効理由7(甲11を主引用例とする進歩性違反)について
1 甲11に記載された事項
甲11には次の記載がある。
(ア)「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、空気中で放電しながら微細な水滴を供給することによって、該水滴を帯電させてイオン化するようにしたものである。」

(イ)「【0037】図1は、本実施形態1に係るイオン発生器(1)の概略構造並びに作用を示す断面図である。このイオン発生器(1)は、図示するように、放電電極(2)と、この放電電極(2)に対して下方に所定間隔を離して配設された対向電極(3)と、両電極(2、3)に接続された高圧電源(4)とを備えている。放電電極(2)及び対向電極(3)は、上方から下方へ空気が流通する空気通路(5)の内部に配設されている。」

(ウ)「【0044】このイオン発生器(1)では、放電電極(2)を兼ねている水管(12)の先端から水滴を滴下させながら放電電極(2)と対向電極(3)に高電圧を印加するようにしているため、水管(12)から滴下する水滴が電極となり、高電圧によるコロナ放電の作用によって微細な水滴となって霧散する。つまり、水滴が静電霧化の作用を受けることになる。そして、この微細な水滴が放電の作用を受けて帯電し、イオン化する。図示の例では、微細な水滴がプラスの電荷を帯びて、無数のプラスイオンが生成される。」

(エ)「【0047】…放電電極(2)と対向電極(3)との間での放電によって、N_(2)^(+)やO_(2)^(+)などのプラス電荷を持った極小イオンが発生する。
この極小イオンは、ある荷電粒子の速度をv、電解をEとしたときに、v=k・Eで表される関係において、kの値(移動度)が相対的に大きく、非常に動きやすいイオンである。これに対して、移動度kの値が小さくなると、イオンは順に小イオンから中イオン、大イオンと呼ばれ、大イオンになるほど動きにくいものとなる。
【0048】極小イオンは、それ自体では寿命がナノ秒オーダーで非常に短く、すぐに消滅するが、本実施形態においては水の分子に極小イオンが結合して、水分子のクラスターを核とする0.001μm程度の大きさの動きやすい小イオンが生成される。
【0049】この小イオンには、アンモニアなどの成分とも反応してH_(3)O
^(+)やNH_(4)^(+)などのように1秒以上の寿命を持つ安定したイオンに変化したものや、さらに、図示しているような空気中の様々な成分が付着して変化したものなど(図2の高質量イオン以外のイオン)も含まれている。
【0050】この小イオンは、一部がさらに安定した高質量イオン(大イオン)に変わっていく。ただし、この大イオンは拡散速度が遅いため、集塵などには殆ど寄与しない。本実施形態では、大イオンへの変化過程の小イオンを空気中に大量に含ませることで、集塵などへの利用に対応できるようにしている。」

(オ)「【0052】-実施形態1の効果-

【0055】さらに、イオン発生量が多くなることから、イオン発生器(1) の適用範囲を広げることも可能となる。例えば、帯電中和や室内への供給などの他、空気中の塵を帯電させながら捕集する集塵器などに応用する場合に実用化が容易になる。」

(カ)「【0057】…図1の例では、放電電極(2) に高圧電源(4)のプラス極を、対向電極(3)にマイナス極を接続して、プラスイオンを生成するようにしているが、逆に放電電極(2)にマイナス極を、対向電極(3)にプラス極を接続して、マイナスイオンを生成するようにしてもよい。
【0058】マイナスイオンの生成過程を図3に示している。この場合には、コロナ放電によって発生した電子が水の分子に付着し、さらに空気中に含まれる様々な物質などと反応しながら、一部大イオンに成長するものを除き、安定したマイナスイオン(小イオン)が大量に生成される。」

2 甲11に記載された発明
以上によると、甲11には、以下の発明が記載されていると認められる。
「空気中で水を静電霧化して、0.001μm(1nm)程度の大きさである、小イオンを生成し、集塵する方法であって、前記小イオンは、室内に供給され、さらに、前記小イオンは、水の分子に極小イオンが結合して水分子のクラスターを核としている、小イオンによる集塵方法。」(以下、「甲11発明1」という。)

「放電電極を兼ねる水管の先端から滴下する水滴がコロナ放電により微細な水滴となって霧散する高電圧を印加する高圧電源とを備え、該高電圧の印加によって、空気中で水を静電霧化して、0.001μm(1nm)程度の大きさである、集塵するための小イオンを生成し、前記小イオンは室内に供給される装置。」(以下、「甲11発明2」という。)

3 検討
(1)本件訂正特許発明1について
(1-1)本件訂正特許発明1と甲11発明1との対比
本件訂正特許発明1(前者)と、甲11発明1(後者)とを対比すると、後者の「小イオン」は、水を静電霧化して生成される点で、前者の「帯電微粒子水」に対応し、後者の「小イオンによる集塵方法」は、空気を清浄化する点で、前者の「花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する…帯電微粒子による不
活性化方法」に対応し、後者の小イオンが「室内に供給され」ることは、前者の帯電微粒子水が「室内に放出される」ことに対応する。
したがって、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「大気中で水を静電霧化して、帯電微粒子水を生成し、室内の空気を清浄化する帯電微粒子水による方法であって、前記帯電微粒子水は、室内に放出される方法。」

<相違点11a>
本件訂正特許発明1は、帯電微粒子水の粒子径が3?50nmであるのに対して、甲11発明1は、小イオンの大きさが1nm程度である点

<相違点11b>
本件訂正特許発明1は、帯電微粒子水を花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する不活性化方法であるのに対して、甲11発明1は、小イオンによって集塵する方法である点

<相違点11c>
本件訂正特許発明1では、帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対して、甲11発明1では、小イオンがそのようなラジカルを含んでいるか不明である点

(1-2)判断
ア 相違点11aについて
甲11発明1における小イオンは、甲11の【0044】の記載によると、コロナ放電の作用によって生じているため、その大きさが1nm程度であって、【0049】の記載によると、寿命が1秒以上のものと認められる。
これに対して、本件訂正特許発明1は、本件明細書の【0024】及び図1の記載によると、帯電微粒子水の粒子径を3nm以上とすることによって、コロナ放電を用いて生成した粒子径が1nmの帯電微粒子水と比較して、より長寿命化することができ、10分経過後も約半数の帯電微粒子水が存在するという作用を奏し、その作用により、花粉抗原等の不活性化という課題解決に資するものである。
そうすると、相違点11aに係る本件訂正特許発明の特定事項は、課題解決手段としての技術的意義を有するから、相違点11aが単なる設計的事項であるということはできない。

イ 相違点11bについて
甲11には、小イオンによる集塵が、帯電微粒子水と塵と反応して生じることについて記載されていない。
甲5ないし甲7には、静電噴霧による帯電微粒子水にはマイナスイオンが含まれ、除菌、殺菌、消臭効果を奏することは記載されているが、上記の効果について、帯電微粒子水が菌や臭い物質と反応することにより生じるとは、記載されていないし示唆もない。
したがって、甲11発明1に甲5ないし甲7記載の記載事項を組み合わせても、相違点11bに係る本件訂正特許発明の特定事項を導くことはできない。

ウ 相違点11cについて
甲11にも、甲5ないし甲7にも、静電噴霧による帯電微粒子水がラジカルを含むことに関して、示唆するところがない。
甲7-1には、クラスターイオンが空気中を浮遊する菌と衝突してラジカルが発生する旨の記載はされているが、このクラスターイオンは、プラズマ放電で空気中の水分子を電離させたものであって、静電噴霧によるものではない。
したがって、甲11発明1に甲5ないし甲7記載の記載事項を組み合わせても、相違点11cに係る本件訂正特許発明1の特定事項を導くことはできない。

(2)本件訂正特許発明3について
ア 本件訂正特許発明3(前者)と甲11発明2(後者)とを対比すると、後者の「放電電極を兼ねる水管の先端から滴下する水滴」、「高圧電源」「小イオン」は、それぞれ、前者の「霧部に位置する水」、「電圧印加部」、「帯電微粒子水」に相当する。
そして、後者の「集塵」は、室内の空気の清浄化を行う点で、前者の「花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化する」ことと共通するから、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
「霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して空気を清浄化するための帯電微粒子水を生成し、前記帯電微粒子水は、室内に放出される装置」

<相違点11d>
本件訂正特許発明3では、帯電微粒子水の粒子径が、3?50nmであるのに対して、甲11発明2では、小イオンの大きさが1nm程度である点

<相違点11e>
本件訂正特許発明3では、帯電微粒子水が、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するためのものであるのに対して、甲11発明2は、小イオンが集塵するためのものである点

<相違点11f>
本件訂正特許発明3では、帯電微粒子水が、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対して、甲11発明2では、小イオンがそのようなラジカルを含んでいるか不明である点

イ 相違点11d及び相違点11fについて、上記「(1)(1-2)」に示す判断と同様の理由により、甲11発明2に甲5ないし甲7の記載事項を組み合わせても、相違点11dないし11fに係る本件訂正特許発明3の特定事項を導くことは、当業者にとって想到容易でない。

4 無効理由7についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正特許発明1,3は、甲11に記載された発明及び甲5ないし甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、無効理由7は理由がない。

第7 むすび
以上のとおり、無効理由1ないし15は理由がない。
したがって、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、無効とすべきものでない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電微粒子水、つまりは帯電しているとともに微粒子とされている帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水に電荷を付与することによって生成される帯電微粒子水は、吸着性が高く、レイリー分裂によって微細化されやすい。このような帯電微粒子水の特徴を生かし、特開平13-170514号公報には、ナノメータサイズの粒子径の帯電微粒子水を効率のよい集塵剤として利用した例が示されている。
【0003】
一方、活性化学種であるラジカルは、化学的に反応性が高くて悪臭成分の分解無臭化などに効果的であることが知られている。しかし、活性であるが故に、非常に不安定な物質で空気中では短寿命であり、臭気成分と反応する前に消滅してしまうために十分な効果を得ることが困難であった。
【0004】
また、より効果を高める目的で、ラジカルを含んだ微粒子水を用いることによって空気浄化などを試みたものが特開昭53-141167号公報、特開平13-96190号公報などに示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平13-170514号公報
【特許文献2】特開昭53-141167号公報
【特許文献3】特開平13-96190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化できる帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る帯電微粒子水による不活性化方法は、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする。
【0008】
また、不活性化装置は、霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmであり、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成することを特徴とする。
【0009】
また、前記帯電微粒子水は、大気中に放出されることが好ましい。
【0010】
また、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることが好ましい。
【0011】
水を静電霧化して生成した活性種を含む帯電微粒子水を、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させることで、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することができる。
【0012】
なお、化学的に不安定なラジカルをナノメータサイズに微細化された帯電微粒子水に含有させることによって、長寿命化でき、空間内への拡散を大量に行うことができる。
【0013】
ナノメータサイズの粒子径とするのは、これより大きいミクロンオーダーのサイズになると、移動度が小さく、空間内への拡散が困難となるためであるが、上述のように、粒子径が3?100nm(電気移動度が0.1?0.001cm^(2)/vsec)が望ましい。粒子径が3nm未満になると、帯電微粒子水の寿命が極端に短くなってしまって室内の隅々まで帯電微粒子水がいきわたることが困難となるからであり、特に障害物などがある場合は尚更困難となる。なお、粒子径が100nmを超えると後述の人の肌の保湿性能の確保が困難となる。100nm程度といわれている肌の角質層の隙間からの帯電微粒子水の浸透が困難となる。
【0014】
含有するラジカルは、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルであると、反応性も高く、また大気中の酸素や水蒸気から生成されるためにラジカル原材料を用いる必要もなくて、ラジカル含有状態の確保が容易となる。
【0015】
ちなみに、粒子径がμmオーダーのものであると、含まれる活性種が殆どなく、また帯電微粒子水が有する電荷量もきわめて低く、また、対向電極を接地し、水に負電圧を加えた場合には、マイナスイオン効果も期待することができるものの、その効果は低く、実際上、湿度調整に有効なだけである。
【0016】
しかも上記ラジカルに加えて酸性化学種を含有していると、代表的な悪臭成分であるアミン化合物などのアルカリ性臭気成分に対しより効果的に作用させることができる。
【0017】
加えるに、上記酸性化学種が、窒素酸化物や有機酸であると、大気中の窒素や二酸化炭素から生成することができるために、原材料を添加することなく、酸性化学種含有状態の確保が容易となる。
【0018】
硝酸、硝酸水和物、亜硝酸、亜硝酸水和物であってもよい。これらである場合、帯電微粒子水を弱酸性に保つことが可能で、アルカリ性臭気成分への作用だけでなく、人の肌への浸透、保湿への効果を併せ持つことになる。
【0019】
帯電微粒子水の帯電極性は、特に限定はされないが、マイナスに帯電させることによって、脱臭作用だけでなく、いわゆるマイナスイオン効果として知られるストレス低減効果をも併せ持つことができる上に、ナノメータサイズのものであるために、通常のマイナスイオンよりも高い効果を得ることができる。
【0020】
なお、ラジカルを含有する上に粒子径がナノメータサイズであると、空気中に放出された時の寿命が長くて拡散性が大である。
【0021】
ナノメータサイズの粒子径に霧化された帯電微粒子水は、どのような装置で生成してもよいが、静電霧化装置、殊に水を搬送する多孔質体で構成された搬送体と、搬送体で搬送される水に電圧を印加する水印加電極と、上記搬送体と対向する位置に配された対抗電極と、上記水印加電極と対向電極との間に高電圧を印加する電圧印加部とからなり、搬送体で保持される水と対向電極との間に印加される高電圧によって水を帯電微粒子水とするものを好適に用いることができる。
【0022】
このような静電霧化装置において、多孔質体の材質、形状、対向電極極との距離、印加する電圧値、電流値などを制御することで、目的とするナノメータサイズの粒子径の粒子を容易に得ることができる。
【0023】
なお、得られた帯電微粒子の粒子径は、微分型電気移動度計測器(DMA/ワイコフ興業製)を用いて電気移動度として計測し、ストークスの法則に基づいて粒子径に換算している。このようにすることで粒子径の正確な測定が可能となるとともに、上記の静電霧化装置の構造や運転条件に粒子径の制御についてのフィードバックが可能となり、目的とするナノメータサイズの粒径を得ることがはじめて可能となった。
【0024】
帯電微粒子の粒子径が3nm以上である場合、3nm未満である時よりもその寿命は明らかに長寿命化される。アルミ容器内に帯電微粒子を取り込んで粒子数の変化を微分型電気移動度計測器(DMA)を用いて測定することで、20nm付近の粒子径をもつ帯電微粒子水イと1nmの粒子径の帯電微粒子水ロの粒子数とその寿命を求めた結果を図1に示す。なお、20nmの粒子径の微粒子水イは、後述の実施例で示した静電霧化装置を用いて生成し、1nmの粒子径の微粒子水ロはコロナ放電電極を用いて生成した。
【0025】
帯電微粒子水は、室内に放出する場合、特に限定するものではないが、0.1g/hr以上の量を噴霧することが望ましい。なお、この量は静電霧化装置内のタンク水の減少量で測定した。
【0026】
帯電微粒子水に含まれるラジカルの分析は、帯電微粒子をスピントラップ剤が含まれた溶液に導入することによってラジカルを安定化した後、電子スピン共鳴スペクトル法(ESR)によって測定することができる。
【0027】
また帯電微粒子水に含まれる酸性化学種に関しては、帯電微粒子を純水中に導入した後、イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0028】
また、帯電微粒子水内の酸性化学種に関しては、その他に、ドリフトチューブ型イオン移動度/質量分析装置によっても計測することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、水を静電霧化して、活性種を含む帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させるので、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)(b)は本発明の方法及び装置における帯電微粒子水の特性を示す説明図である。
【図2】同上の帯電微粒子水の生成に供する静電霧化装置の一例の分解斜視図である。
【図3】同上の動作の説明図である
【図4】同上の他例の動作説明図である。
【図5】同上の静電霧化装置で生成した帯電微粒子水の粒子径分布計測結果を示す特性図である。
【図6】同上の静電霧化装置で生成した帯電微粒子水中のラジカルの電子スペクトル(ESR)チャートである。
【図7】(a)は同上の静電霧化装置で生成した帯電微粒子水中の質量スペクトルチャート、(b)は分子量と化学式とイオン数との説明図である。
【図8】同上の耐電微粒子水によるチャンバー内のアセトアルデヒド分解性能測定結果を示す特性図である。
【図9】同上の帯電微粒子水による杉花粉抗原のELISA試験による不活性評価結果の特性図である。
【図10】同上の帯電微粒子水による冷水負荷後の肌角質層の導電率の特性図である。
【図11】同上の帯電微粒子水による冷水負荷後の手指温度の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明すると、図2は帯電微粒子水を生成するための静電霧化装置の一例を示すもので、水溜め部1と、下端を水溜め部1内の水に浸している複数本の多孔質体からなる棒状の搬送体2と、これら搬送体2の保持及び水に対する電圧の印加のための水印加電極4と、絶縁体からなる保持部6によって保持されているとともに上記複数本の搬送体2の先端部と対向する対向部を備えている対向電極3と、上記水印加電極4と対向電極3との間に高電圧を印加する電圧印加部5とからなるもので、対向電極3と水印加電極4は共にカーボンのような導電材を混入した合成樹脂やSUSのような金属で形成されている。
【0032】
また、上記搬送体2は多孔質体で形成されてその上端が針状に尖った針状霧化部となっているもので、複数本、図示例では6本の搬送体2が水印加電極4に取り付けられている。これら搬送体2は水印加電極4の中央5を中心とする同心円上に等間隔で配置されて、上部が水印加電極4よりも上方に突出し、下部は下方に突出して上記水溜め部1内に入れられた水と接触する。
【0033】
対向電極3は、中央に開口部を有するとともに、この開口部の縁が上方から見た時、前記複数本の搬送体2の上端の針状霧化部を中心とする複数の同一径の円弧Rを他の円弧で滑らかにつないだものとなっている。対向電極3を接地し、水印加電極4に電圧印加部5を接続して高電圧を印加するとともに、多孔質体で形成されている搬送体2が毛細管現象で水を吸い上げている時、搬送体2の上端の針状霧化部が印加電極4側の実質的な電極として機能すると同時に、対向電極3の上記円弧Rが実質的な電極として機能するものである。電圧印加部5としては、700?1200V/mmの電界強度を与えることができるものが好ましい。
【0034】
そして、上記搬送体2は上述のように毛細管現象で水を先端にまで運ぶことができる多孔質体で形成されているのであるが、ここでは気孔率が10?60%、粒子径が1?100μm、先端針状部の断面形状がφ0.5mm以下の多孔質セラミックを用いているとともに、対向電極3が接地され且つ水印加電極4にマイナスの電圧が印加される場合、使用する水のpH値でマイナスに帯電する等電位点を有する材料からなるものを使用している。なお、水のpH値が7であるならば、シリカを主成分とするものを好適に用いることができる。
【0035】
このような材質を選択しているのは次の理由による。すなわち、霧化させる水が例えば水道水、地下水、電解水、pH調整水、ミネラルウォーター、ビタミンCやアミノ酸等の有用成分が入った水、アロマオイルや芳香剤や消臭剤等が添加されている水等に、Ca,Mg等のミネラル成分が入った水である時、毛細管現象で搬送体の先端部まで引き上げられた時、空気中のCO_(2)と反応し、搬送体の先端部にCaCO^(3),MgO等として析出付着して静電霧化が起こり難くなってしまうが、使用する水のpH値でマイナスに帯電する等電位点を有する材料からなるものを使用した場合、水印加電極4にマイナスの電圧を印加した状態で水と多孔質セラミックである搬送体2とが接触した時、シラノール基の乖離によって搬送体2が図3に示すようにマイナスに帯電し、対向電極方向が図中の上方向である時、多孔質セラミックである搬送体2中の毛細管内の水は静電ポテンシャルの分布(ゼータ電位を図中Zで示す)を持つものとなって電気二重層が形成され、図中イで示す方向のいわゆる電気浸透流が発生するものであり、Ca,Mg等の陽イオンは電位の低い水印加電極4の方に向かう。つまり、水は搬送体2内を毛細管現象で対向電極3方向に引き上げられるが、水が含んでいるCa,Mg等の陽イオンは対向電極3側に向かわないために、搬送体2の先端で空気中のCO_(2)と反応し、搬送体の先端部にCaCO_(3),MgO等として析出付着するという事態を招くことがないものである。図中Sは電気浸透流の流速がゼロになる面(滑り面)を示している。
【0036】
対向電極3が接地され且つ水印加電極4にプラスの電圧が印加される場合には、使用する水のpH値でプラスに帯電する等電位点を有する材料からなる多孔質セラミックを搬送体2に使用する。なお、水のpH値が7であるならば、アルミナを主成分とするものを好適に用いることができる。この場合、図4に示すように、電位の高い水印加電極4方向に流れる電気浸透流の陰イオンの流れに伴ってCa,Mg等の陽イオンも水印加電極4の方に向かう。従って、この場合においても、Ca,Mg等の陽イオンは対向電極3側に向かわないために、搬送体2の先端で空気中のCO2と反応し、搬送体の先端部にCaCO_(3),MgO等として析出付着するという事態を招くことがないものである。
【0037】
いずれにせよ、水溜め部1内の水に搬送体2を接触させて毛細管現象で水を吸い上げさせ、さらに対向電極3を接地するとともに水印加電極4に電圧印加部5を接続して、水印加電極4に電圧を印加した時、この電圧が搬送体2の針状霧化部に位置する水にレイリー分裂を起こさせることができる高電圧であれば、搬送体2の上端の針状霧化部において水はレイリー分裂を起こして霧化する。静電霧化がなされるわけであり、この時、静電霧化で生じるミストは、電界強度が700?1200V/mmである時、3?100nmの粒子径を有するナノメータサイズのものとなるとともに、ラジカル(ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド等)を持ち、且つ強い電荷量を持ったものとなる。
【0038】
ところで、700?1200V/mmの電界強度を与えた時、粒子径が3?20nmのミストと粒子径が30?50nmのミストが多く発生するが、電界強度を高くすると、粒子径が小さくなる方向にシフトすることが観察でき、また電界強度900V/mmで16?20nmの粒子径を持つミストを多く発生させた場合に、上記の各効果が特に有効に現れた。
【0039】
ちなみに搬送体2としては、前述のように、気孔率が10?60%、粒子径が1?100μm、先端針状部の先端断面形状がφ0.5mm以下の多孔質セラミックを用いると、粒子径が揃ったミストを発生させることができ、特に気孔率が40%、粒子径が1?3μm、針状霧化部の先端断面形状がφ0.25mmの時に900V/mmの電界強度を与えた時、16?20nmの粒子径を持つミストを多く発生させることができた。
【0040】
なお、搬送体2は多孔質セラミックからなるものに限定されるものではなく、たとえばフェルトなどを用いてもよい。ただし、粒子径が揃ったミストを発生させるという点では多孔質セラミックが有利である。
【0041】
そして、このようなナノメータサイズの帯電微粒子水は、脱臭、花粉が持つ花粉症を引き起こす物質の不活性化、空気中のウイルスや菌の不活性化、空気中の黴の除去及び抗黴効果といった作用を有することが確認できた。
【0042】
すなわち、水印加電極4が負電極となるようにした状態で上記の静電霧化装置によって得られた帯電微粒子水が、微分型電気移動度計測器による測定で図5に示す粒径分布で示されるもの、つまり20nm付近をピークとして、10?30nmに分布を持つものであり、また、生成される帯電微粒子水の量が水溜め部1内の水の減少量による測定で0.5g/hrであり、帯電微粒子水中のラジカルの電子スピンスペクトル法による測定チャートが図6に示されるもの(図中Aはラジカルの検出ピーク、Bは標準物質である酸化マンガンのピーク)であり、さらに帯電微粒子水中のドリフトチューブ型イオン移動度/質量分析装置で測定された各種イオンの分析結果が図7に示すものである時、この帯電微粒子水を用いて確認することができた効果について、以下に記す。なお、図6から明らかなように、この帯電微粒子水はラジカルを含有する上に、図7から明らかなように、大気中の窒素や二酸化炭素から生成されたと考えられる窒素酸化物や有機酸といった酸性種を多く含有したものとなっている。
【0043】
まず、3Lチャンバー内における10ppmのアセトアルデヒドを上記帯電微粒子水で1時間処理すると、60%の減少が確認された。その測定結果を図8に示す。図中αが上記帯電微粒子水で処理した場合、βが粒子径1nmの帯電微粒子水で処理した場合を、γが何も処理しなかった場合である。
【0044】
このような、脱臭効果は、臭気ガスが帯電微粒子中のラジカルとの化学反応で無臭化されることでなされるものであると考えられる。下記はラジカルとアセトアルデヒドをはじめとする各種臭気との脱臭反応式である。・OHはヒドロキシラジカルを示す。
【0045】
アセトアルデヒド CH_(3)CHO+6・OH+O_(2)→2CO_(2)+5H_(2)O
アンモニア 2NH_(3)+6・OH→N_(2)+6H_(2)O
酢酸 CH_(3)COOH+4・OH+O_(2)→2CO_(2)+4H_(2)O
メタンガス CH_(4)+4・OH+O_(2)→CO_(2)+4H_(2)O
一酸化炭素 CO+2・OH→CO_(2)+H_(2)O
一酸化窒素 2NO+4・OH→N_(2)+2O_(2)+2H_(2)O
ホルムアルデヒド HCHO+4・OH→CO_(2)+3H_(2)O
また、上記帯電微粒子水に黴菌を曝したところ、黴残存率は60分後には0%となる結果を得ることができた。OHラジカルが黴の菌糸を分解するために抗黴効果を得られるものと考えられる。
【0046】
また、上記の帯電微粒子水に杉花粉から抽出した抗原Cry j1,Cry j2を曝露させてELISA試験を行ったところ、図9に示すように、抗原量が初期状態(blank)から半減するという結果を得ることができた。
【0047】
また、上記静電霧化装置から上記帯電微粒子水が内部に供給される円筒容器(φ55×200mm)内に一端開口から噴霧器にてウイルス溶液を噴霧し、他端開口からウイルスをインピンジャーで回収してプラーク法により抗ウイルス効果を確認したところ、回収溶液中のプラーク数はウイルスを単にマイナスイオンに曝した場合よりも少なくなる結果を得ることができた。
【0048】
また、大腸菌O-157を上記帯電微粒子水に曝露させたところ、30分後には不活性化率が100%となる結果を得ることができた。これは帯電微粒子水中の活性種が菌体表面のタンパクを変成し、菌体の増殖を抑制するためと考えられる。
【0049】
なお、肌への保湿性に関して、肌に直接微粒子水を暴露した後の肌の含水量を評価したところ、図10にホで示すように、ブランクの場合(図中ヘ)よりも保湿時間が長くなったことが確認された。
【0050】
また、マイナスの電荷を持つ帯電微粒子水において、冷水後の体温上昇試験を行ったところ、図11にトで示すように、通常の粒子径1nmのマイナスイオンの場合(チ)よりも体温上昇速度の向上が確認された。図中ヌは帯電微粒子水を含まない場合である。
【0051】
酸性種として、硝酸、硝酸水和物、亜硝酸、亜硝酸水和物の少なくとも1つ以上を含有させるようにしてもよい。これらを含有させた場合、帯電微粒子水は弱酸性を保つことになり、アルカリ性臭気成分への作用だけでなく、人の肌への浸透や保湿の点で有意な効果を有するものとなる。
【0052】
なお、粒子径が3nmより小さい場合及び粒子径が50nmを超える場合、上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかった。また粒子径が3?50nmというきわめて小さい帯電微粒子水は、空気中の湿度調整という点に関して殆ど影響を与えることはない。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法であって、前記帯電微粒子水は、室内に放出されることを特徴とし、さらに、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。
【請求項2】
大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmの帯電微粒子水を生成し、花粉抗原、黴、菌、ウイルスのいずれかと反応させ、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法であって、前記帯電微粒子水は、大気中に放出されることを特徴とし、さらに、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり、前記帯電微粒子水は、粒子径3nm未満の帯電微粒子水よりも長寿命であることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。
【請求項3】
霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmであり、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し、前記帯電微粒子水は、室内に放出されることを特徴とする不活性化装置であって、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする不活性化装置。
【請求項4】
霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え、当該電圧印加部の高電圧の印加によって、大気中で水を静電霧化して、粒子径が3?50nmであり、花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかと反応させて、当該花粉抗原、黴、菌、ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し、前記帯電微粒子水は、大気中に放出されることを特徴とする不活性化装置であって、前記帯電微粒子水は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり、前記帯電微粒子水は、3nm未満の帯電微粒子水と比較して長寿命であることを特徴とする不活性化装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2014-06-03 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-24 
出願番号 特願2010-179294(P2010-179294)
審決分類 P 1 113・ 55- YA (A61L)
P 1 113・ 113- YA (A61L)
P 1 113・ 537- YA (A61L)
P 1 113・ 121- YA (A61L)
P 1 113・ 536- YA (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤樫 祐樹山本 吾一  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 真々田 忠博
川端 修
登録日 2011-12-09 
登録番号 特許第4877410号(P4877410)
発明の名称 帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置  
代理人 夫 世進  
代理人 岩坪 哲  
代理人 中村 哲士  
代理人 蔦田 正人  
代理人 速見 禎祥  
代理人 富田 克幸  
代理人 有近 康臣  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 速見 禎祥  
代理人 岩坪 哲  
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