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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
管理番号 1300859
審判番号 不服2014-1488  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-28 
確定日 2015-05-15 
事件の表示 特願2011-139751「向上した引裂き強さを有するタイヤ構成要素」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月10日出願公開,特開2011-225889〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,平成12年1月6日を出願日とする特願2000-592353号の一部を新たな特許出願とした出願(パリ条約による優先権主張 1999年1月8日(2件)いずれもアメリカ合衆国(US))である。

本願は,平成25年4月8日付けで拒絶の理由が通知され,同年6月14日に意見書及び手続補正書の提出がなされ,同年7月31日付けで拒絶の理由(最後)が通知され,同年9月19日に意見書及び手続補正書の提出がなされたが,同年10月30日付けで拒絶の査定がなされたところ,これに対して,平成26年1月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ,同請求と同時に手続補正書が提出され,同年11月25日付けで平成26年1月28日付けの手続補正が決定により却下され,同日付で拒絶の理由(最後)が通知され,平成27年1月26日に意見書及び手続補正書の提出がなされたものである。

第2 平成27年1月26日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定

[結論]

平成27年1月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容について

上記第1の主な手続の経緯において摘示したように,請求人による平成26年1月28日付け手続補正は決定により却下されているから,平成27年1月26日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の前後の特許請求の範囲の記載を掲記すると,それぞれ以下のとおりである。
・本件補正前(平成25年9月19日付け手続補正書)
「【請求項1】
向上した引裂き強さを示すタイヤであって,
加硫を受けた弾性重合体と弾性重合体100重量部当たり35重量部以下の量のポリオレフィンコポリマーを含む構成要素を少なくとも1つ含んでなり,
ここで,コポリマーはいくらかのポリエチレン結晶を含み,重量平均分子量(Mw)が80,000?500,000であり,分子量分布(Mw/Mn)が4.5未満である,
タイヤ。
【請求項2】
加硫性組成物であって,
弾性重合体と弾性重合体100重量部当たり35重量部以下の量のポリオレフィンコポリマーを含み,
ここで,コポリマーはいくらかのポリエチレン結晶を含み,重量平均分子量(Mw)が80,000?500,000であり,分子量分布(Mw/Mn)が4.5未満である,
加硫性組成物。
【請求項3】
請求項2記載の加硫性組成物を調製しそして前記組成物に少なくとも1種の加硫剤を用いた加硫を受けさせる段階を含んで成る方法を用いて作られた加硫ゴム。
【請求項4】
請求項3記載の加硫ゴムから作られたタイヤ。
【請求項5】
前記ポリオレフィンコポリマーがエチレンモノマー単位を1から30重量パーセント含有する請求項1記載のタイヤ。
【請求項6】
前記弾性重合体が天然ゴム,合成ゴムおよびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1,4,5,6のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項7】
前記合成ゴムがスチレン-ブタジエンゴム,ブチルゴム,ジエンゴムおよびポリイソプレンゴムを包含する群から選択される請求項6記載のタイヤ。
【請求項8】
更に補強用充填材も弾性重合体100重量部当たり100重量部以下の量で含んで成る請求項1,4,5のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項9】
前記補強用充填材がカーボンブラック,シリカおよびそれらの混合物を包含する群から選択される請求項8記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ポリオレフィンコポリマーがエチレンモノマー単位を1から30重量パーセント含有する請求項2記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリオレフィンコポリマーがエチレンモノマー単位を1から30重量パーセント含有する請求項3記載の加硫ゴム。
【請求項12】
前記弾性重合体が天然ゴム,合成ゴムおよびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項2記載の組成物。
【請求項13】
前記弾性重合体が天然ゴム,合成ゴムおよびそれらの組み合わせから成る群から選択される請求項3記載の加硫ゴム。
【請求項14】
前記合成ゴムがスチレン-ブタジエンゴム,ブチルゴム,ジエンゴムおよびポリイソプレンゴムを包含する群から選択れる請求項12記載の組成物。
【請求項15】
前記合成ゴムがスチレン-ブタジエンゴム,ブチルゴム,ジエンゴムおよびポリイソプレンゴムを包含する群から選択される請求項13記載の加硫ゴム。」

・本件補正後
「【請求項1】
向上した引裂き強さを示すタイヤであって,
加硫ゴムとゴム100重量部当たり35重量部以下の量のプロピレンとエチレンのコポリマーを含む構成要素を少なくとも1つ含んでなり,
ここで,上記コポリマーはエチレンモノマー単位を1?30重量パーセント含み,いくらかのポリエチレン結晶を含み,重量平均分子量(Mw)が80,000?500,000である,
タイヤ。
【請求項2】
タイヤであって,
加硫ゴムとゴム100重量部当たり35重量部以下の量のポリプロピレンホモポリマーを含む構成要素を少なくとも1つ含んでなり,
ここで,ポリプロピレンホモポリマーはイソタクティック微細構造を有し,その純度はポリマー合成で用いられた触媒に関係し,重量平均分子量(Mw)が80,000?500,000であり,分子量分布(Mw/Mn)が4.5未満である,
タイヤ。
【請求項3】
前記ゴムがスチレン-ブタジエンゴム,ブチルゴム,ポリブタジエンゴム,ポリイソプレンゴム及びこれらの混合物を包含する群から選択される請求項1,2のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項4】
構成要素がタイヤトレッドまたはタイヤサイドウォールである,請求項1,2のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
補強用充填材がシリカを含む,請求項1,2のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
構成要素がタイヤトレッドである,請求項1,2のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
加硫ゴムが硫黄含有硬化剤を用いて硬化される,請求項1,2のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
加硫性組成物であって,
加硫ゴムとゴム100重量部当たり35重量部以下の量のプロピレンとエチレンのコポリマーを含み,
ここで,上記コポリマーはエチレンモノマー単位を1?30重量パーセント含み,いくらかのポリエチレン結晶を含み,重量平均分子量(Mw)が80,000?500,000である,
加硫性組成物。
【請求項9】
加硫性組成物でであって,
加硫ゴムとゴム100重量部当たり35重量部以下の量のポリプロピレンホモポリマーを含み,
ここで,ポリプロピレンホモポリマーはイソタクティック微細構造を有し,その純度はポリマー合成で用いられた触媒に関係し,重量平均分子量(Mw)が80,000?500,000であり,分子量分布(Mw/Mn)が4.5未満である,タイヤ。」

2 本件補正の適否

(1) 本件補正の目的について
ア 本件補正は,上記第1の主な手続の経緯において摘示したように,当審からの平成26年11月25日付けの拒絶の理由(以下,「本件拒絶理由」という。)の通知に係る指定期間内になされたものである。そして,本件拒絶理由は,原審からの平成25年4月8日付けで通知した拒絶の理由に対応してなされた補正により通知しなければならなくなった拒絶の理由のみを通知するものである(いわゆる,最後の拒絶理由通知)。そうすると,本件補正は,特許法第17条の2第1項第3号に規定する手続補正であるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的としたものに限られる。
イ まず,本件補正後の請求項1についてみるに,本件補正は,少なくとも本件補正前の請求項1における「分子量分布(Mw/Mn)が4.5未満である」との発明を特定するための事項(以下,「発明特定事項」という。)を削除する補正事項を含むものである。してみると,本件補正後の請求項1に係る発明は,本件補正前の請求項1に係る発明との関係において,特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。本件補正後の請求項8についても同様である。
ウ 次に,本件補正後の請求項2は,本件補正前の請求項2における「ポリオレフィンコポリマー」との特定を「プロピレンホモポリマー」との特定に変更するものである。
技術常識として,1種類の単量体の重合によってできた高分子をホモポリマー(単独重合体)といい,2種類以上の異なった単量体の重合(共重合)によってできた高分子をコポリマー(共重合体)というものであることから,本件補正後の請求項2において,「ポリオレフィンコポリマー」を「プロピレンホモポリマー」に変更する事項を含む補正は,実質的に特許請求の範囲を変更するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものとはいえない。本件補正後の請求項9についても同様である。
エ そうすると,上記イ及びウの補正を含む本件補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものとは認められず,また,請求項の削除,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的としているものとも認められないから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項にも該当するものではない。

3.むすび

以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,本件補正は,同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって,結論のとおり決定する。

第3 特許を受けようとする発明(特許請求の範囲の記載)について

平成27年1月26日提出の手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?15に係る発明は,平成25年9月19日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載のとおりであって,そのうち請求項1に係る発明はつぎのとおりである。

「【請求項1】
向上した引裂き強さを示すタイヤであって,
加硫を受けた弾性重合体と弾性重合体100重量部当たり35重量部以下の量のポリオレフィンコポリマーを含む構成要素を少なくとも1つ含んでなり,
ここで,コポリマーはいくらかのポリエチレン結晶を含み,重量平均分子量(Mw)が80,000?500,000であり,分子量分布(Mw/Mn)が4.5未満である,
タイヤ。」(以下,「本願発明」という。)

第4 本件拒絶理由

本件拒絶理由(平成26年11月25日付け拒絶の理由)は,要するに,本願の請求項1?15に係る発明は,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-256636号公報(以下,「引用文献」という。)に記載された発明(以下,「引用発明」という。)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由である。

第5 本願が拒絶されるべき理由

1 引用発明

(1) 上記引用文献には,次の記載がある。なお,下線については当審において付与した。

ア 「1,天然ゴムまたはジエン系合成ゴムの単独あるいはこれ等の併用よりなるゴム成分100重量部に対して,プロピレン含有量80?95重量%のプロピレン-エチレンブロック共重合体を主成分とする樹脂を1?15重量部と,ヨウ素吸着量40mg/g以上でDBP吸油量90ml/100g以上のカーボンブラックを該樹脂の重量の2.5倍以上の量で配合してなることを特徴とするゴム組成物。」(特許請求の範囲)

イ 「(産業上の利用分野)
本発明は,比較的大きな歪が繰り返しかかった場合の耐亀裂成長性および耐カット性が優れたゴム組成物に関するものであり,更に特にゴム製品一般,例えばタイヤ,ゴムホース,工業用ベルト,防振ゴム,防舷材,靴底等に利用できるゴム組成物に関するものである。」(1頁左欄14行?20行)

ウ 「また本発明におけるプロピレン-エチレンブロック共重合体は,例えばエチレン分子がランダムに分布しているケース,エチレン分子がブロック的あるいはグラフト的に局在化して分布するケース,局在化しているエチレン分子がランダムに分布しているケース,その場合,局在化の程度が異なるケース,例えば,ポリプロピレンのブロックからポリエチレンのブロックに変化する場合に急激に変化するケースと序々にエチレン分子が増えていくケース,およびその程度,ポリエチレンの結晶の大きさ等,組み合わせを考慮すると数えきれない程のケースが有り得る。
本発明者らはこれらについて精力的に研究を続けた結果,エチレンの入り方としてはポリプロピレンとのブロック共重合体であるのが好ましく,その量はポリプロピレンに対し5%以上,好ましくは7%以上であることを見い出した。また,ポリプロピレンブロックからポリエチレンブロックへの変化は緩やかな方がよく,その結果生成するゴム状の成分(プロピレン分子とエチレン分子がランダムに分布してゴム弾性を発現する部分)が樹脂全体の5%以上であるのが好ましい。この理由は,ゴム組成物の中に配合される少量の樹脂の周囲に「ゴムの弾性率」と「樹脂の弾性率」の中間の弾性率を有する中間層が生じ,この存在によってゴム組成物の異方性が低下し疲労寿命の改善が図れるからである。前記中間層の弾性率としては,ゴムの弾性率の2倍以上で樹脂の弾性率のA以下である場合に,逆に元のゴム組成物よりも疲労寿命が向上することを見い出した。また,主成分をiso-ポリプロピレンとし,ポリエチレンブロックを有する樹脂の中にプロピレンとエチレンがランダムに並んだゴム状成分を5%以上含有するものが最も高い性能を示すことを確かめた。
本発明で使用する樹脂中の主成分であるポリプロピレンの結晶は,ゴム組成物の通常使用温度において融解するのは好ましくなく,かといって未加硫ゴムの混練り時においても融解しないとゴム組成物中での樹脂の分散およびゴムとの一次結合生成が困難となるためやはり好ましくない。従って,工業的に好ましいポリプロピレンブロック部分のポリプロピレン結晶の融点は155?170℃である。一方,ポリエチレンブロック部分のポリエチレン結晶の融点は,ポリプロピレン結晶の融点よりも低く,その温度差は5℃以上であるのが好ましい。尚,これら融点の測定法は,DSC法(昇温速度:10℃/分)による。」(2頁右下欄16行?3頁左下欄2行)

エ 「また,本発明に使用するポリプロピレンを主成分とする樹脂の性質を大きく決定ずける因子として分子量があり,一般にはメルトフローインデックス(MFI)をもって評価し得るが,本発明者らはこの点についても鋭意検討を重ねた結果,メルトフローインデックスが高い程,すなわち分子量が低い程ゴム混練り物のロール作業性が良く,しかも異方性が低いことを確かめた。しかし,メルトフローインデックスが高過ぎると,本発明で達成せんとする耐亀裂成長性および耐カット性の著しい改良結果が薄れてしまうことになる。従って,メルトフローインデックスはJIS K 7210準拠,230℃で30g/10分以下であるのが好ましく,この範囲においてゴムの加工性と物性改良の両立を図るべきである。」(3頁右下欄1行?15行)

オ 「(実施例)
次に本発明を実施例および比較例により説明する。
下記の第1表に示す物性を有する,プロピレンを主成分とする各種樹脂を以下の実施例および比較例において使用した。

・・・
前記試験樹脂1および2を下記の第2表に示す配合割合(重量部)で配合して各種ゴム組成物を作成した。
これらゴム組成物について耐亀裂成長性,耐カット性およびタフネスを評価した。得られた結果を第2表に併記する。
尚,これらの評価法は次の通りである。
・・・
ロ)耐カット性
角度45度の刃を120ジュールのエネルギーで0.894m/秒で厚さ8cmの加硫したゴム組成物に衝突させ・・

」(3頁右下欄下から5行?4頁右下欄)

カ 「本発明は実施例1で示したように天然ゴムに対しても効果があるので,ブレンドゴムに対しても効果があるのはいうまでもないことである。更に,使用する合成ゴムとしてはSBRの他にブタジエンゴム(BR),エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),ブチルゴム(IIR)およびクロロプレンゴム(CR)等でもよい。」(5頁左下欄5行?14行)

(2) 引用発明の認定
特に,上記(1)ア,イの記載からみて,引用文献には,
「天然ゴムまたはジエン系合成ゴムの単独あるいはこれ等の併用よりなるゴム成分100重量部に対して,プロピレン含有量80?95重量%のプロピレン-エチレンブロック共重合体を主成分とする樹脂を1?15重量部と,ヨウ素吸着量40mg/g以上でDBP吸油量90ml/100g以上のカーボンブラックを該樹脂の重量の2.5倍以上の量で配合してなるゴム組成物を用いたタイヤ。」に係る発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 本願発明との対比・判断

(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「ゴム成分」,「プロピレン-エチレンブロック共重合体」は,それぞれ,本願発明の「弾性重合体」,「ポリオレフィンコポリマー」に相当する。
引用発明におけるゴム組成物を用いたタイヤは,技術常識からみて,当該ゴム組成物を加硫させて製造されたものといえるから,引用発明のタイヤの構成要素である「ゴム成分」(本願発明の「弾性重合体」)は,本願発明と同様に「加硫を受けた」といえる。
そして,上記(1)イ及びオの記載からみて,引用発明の「タイヤ」も,向上した引き裂き強さを示すタイヤといえる。

そうすると,両者は,
「向上した引裂き強さを示すタイヤであって,
加硫を受けた弾性重合体と弾性重合体100重量部当たり35重量部以下の量のポリオレフィンコポリマーを含む構成要素を少なくとも1つ含んでなる,
タイヤ。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

<相違点1>
ポリオレフィンコポリマーについて,本願発明は,「いくらかのポリエチレン結晶を含み」と特定するのに対して,引用発明は,この点についての特定がない点。

<相違点2>
ポリオレフィンコポリマーについて,本願発明は,「重量平均分子量(Mw)が80,000?500,000であり」と特定するのに対して,引用発明においては,この点について特定がない点。

<相違点3>
ポリオレフィンコポリマーについて,本願発明は,「分子量分布(Mw/Mn)が4.5未満である」と特定するのに対して,引用発明においては,この点について特定がない点。

(2) 判断
以下,相違点について検討する。
相違点1について
引用発明のプロピレン-エチレンブロック共重合体は,エチレンブロックを有することは明らかであり,また,引用文献には,プロピレン-エチレンブロック共重合体の「ポリエチレンブロック部分のポリエチレン結晶の融点」(上記(1)ウ)についての言及もある。すなわち,引用発明のプロピレン-エチレンブロック共重合体においても,ポリエチレン結晶を含むといえるから,相違点1は,実質上の相違点ではない。

相違点2について
引用発明におけるプロピレンーエチレンブロック共重合体の分子量について,引用文献には,具体的な数値範囲の記載はない。しかしながら,上記(1)エにおける「本発明に使用するポリプロピレンを主成分とする樹脂の性質を大きく決定ずける因子として分子量があり,・・・分子量が低い程ゴム混練り物のロール作業性が良く,しがも異方性が低い・・・しかし,メルトフローインデックスが高過ぎると,本発明で達成せんとする耐亀裂成長性および耐カット性の著しい改良結果が薄れてしまう・・・この範囲でゴムの加工性と物性改良の両立を図る」との記載を踏まえると,当業者は,ゴムの加工性と物性改良の両立を図るべく,引用発明におけるプロピレンーエチレンブロック共重合体の分子量を適宜調整しうるものといえる。そして,当該数値範囲を特定したことによる格別の効果は認められない。

相違点3について
引用文献には,エチレン-プロピレンブロック共重合体の分子量分布についての記載はないが,任意の分子量分布であったものから,相違点3に係る数値を特定する程度のことは,当業者が適宜なしうることである。

本願発明が上記相違点3の構成を有することの意義について,本願明細書には「好適なポリプロピレン類には,・・・本明細書の目的で,重量平均分子量はGPC分析方法でポリスチレンを標準として用いて測定した分子量を指す。また,分子量分布(Mw/Mn)が約4.5未満,好適には約4.0未満,更により好適には約3.8未満のポリプロピレンホモポリマー類を用いるのも非常に好適である。」(段落【0026】)との記載がある。しかしながら,当該記載は,「ポリプロピレンおよび無水物相溶化剤」とのタイトルに続く説明部分である段落【0024】?段落【0029】中の記載であることから,本願明細書の段落【0012】における「(b)」である加硫を受けた弾性重合体に配合される構成要素として「ポリプロピレン及び無水相溶化剤」を特定したタイヤにおける「ポリプロピレン」についての記載といえる。また、仮に、上記段落【0026】の記載が,加硫を受けた弾性重合体に配合される構成要素として「ポリオレフィンコポリマー」を特定したタイヤにおけるポリオレフィンコポリマーの分子量分布に関する記載であったとしても,本願明細書には,分子量分布を特定することにより本願発明がどのような効果を奏するかの記載もなく,実施例においての分子量分布の数値も明らかにされていないことから,分子量分布の「4.5以下」との数値に臨界的な意義は認められない。
そうすると、相違点3に係る分子量分布を特定することによる効果に格別なものは認められない。

したがって,本願発明は,引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第5 むすび

以上のとおり,請求項1についての本件拒絶理由は妥当なものである。そして,平成27年1月26日付け意見書の内容を検討しても,これを覆すに足りる根拠が見いだせないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-17 
結審通知日 2015-03-18 
審決日 2015-04-02 
出願番号 特願2011-139751(P2011-139751)
審決分類 P 1 8・ 56- WZ (C08L)
P 1 8・ 121- WZ (C08L)
P 1 8・ 57- WZ (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤澤 高之  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 大島 祥吾
田口 昌浩
発明の名称 向上した引裂き強さを有するタイヤ構成要素  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  
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