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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1300882
審判番号 不服2013-15144  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-06 
確定日 2015-05-14 
事件の表示 特願2008-196011「送信装置及び受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月12日出願公開、特開2010- 34942〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年7月30日を出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成24年10月22日(起案日)
拒絶査定 :平成25年 4月23日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成25年 8月 6日
拒絶理由(当審・最初) :平成26年 5月19日(起案日)
手続補正 :平成26年 7月22日
拒絶理由(当審・最後) :平成26年 8月11日(起案日)
拒絶理由(当審・最後) :平成26年11月 6日(起案日)
手続補正 :平成27年 1月 8日

第2 補正の適否
1.補正の内容
平成27年1月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、本件補正前、平成26年7月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲についてする補正であり、以下の補正を含むものである。
補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を請求項1とし、その記載を以下のとおりとする。

(補正前請求項2)
【請求項2】
複数のサービスの各データと、該複数のサービスの関連性を示す情報とを受信する受信部と、
該受信部が受信した各サービスのデータと、前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部と、
取得部が取得したサービスのデータをデコードするデコード部と、
該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードすると共に、所定時間になると、該サービスの映像に重畳せずに送信された前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータもデコードするように制御する制御部と、
を備える受信装置。

(補正後請求項1)
【請求項1】
複数のサービスの各データと、該複数のサービスの関連性を示す情報とを受信する受信部と、
該受信部が受信した各サービスのデータと、前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部と、
取得部が取得したサービスのデータをデコードするデコード部と、
該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードすると共に、所定時間になると、該サービスの映像に重畳せずにサービスのデータに多重化されて送信された前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータもデコードするように制御する制御部と、
を備える受信装置。

2.本件補正の適合性
(2-1)補正の範囲
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2-2)補正の目的
上記補正は、補正前の請求項の記載が「該サービスの映像に重畳せずに送信された前記複数のサービスの関連性を示す情報」であって、上記「重畳」が、発明の詳細な説明の「多重化」とどのような関係であるか明確でない点について拒絶の理由を通知したところ(平成26年11月6日付け)、補正後の請求項の記載を「該サービスの映像に重畳せずにサービスのデータに多重化されて送信された前記複数のサービスの関連性を示す情報」とすることで、「重畳」は行っているが「多重化」は行っていないことであると明確となったから、明瞭でない記載の釈明であるといえ、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号の規定に適合する。

したがって、本件補正は適法なものである。

第3 本願発明
以上のとおり、平成27年1月8日付け手続補正は適法なものであるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年1月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
複数のサービスの各データと、該複数のサービスの関連性を示す情報とを受信する受信部と、
該受信部が受信した各サービスのデータと、前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部と、
取得部が取得したサービスのデータをデコードするデコード部と、
該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードすると共に、所定時間になると、該サービスの映像に重畳せずにサービスのデータに多重化されて送信された前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータもデコードするように制御する制御部と、
を備える受信装置。

第4 刊行物等に記載された発明
(1)刊行物1の記載
当審における拒絶の理由の通知(平成26年11月6日)において引用された特開平5-219483号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、送出側で符号化伝送方式の文字放送を用いて現行の文字放送受信装置に影響を与えることがなく、複数のチャンネルに渡って放送が継続されるような番組を自動的に追随するための伝送方式およびそれに適応した文字放送受信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、テレビジョン放送電波を利用して文字,図形およびメロディからなる各種の情報を提供し、家庭のテレビジョン受信機に表示できるようにした符号化伝送方式の文字放送が実用化されている。また、この符号化伝送方式の文字放送を受信するための文字放送受信装置を内蔵したテレビジョン受信機も実用化されている。
【0003】一般に、文字放送に用いられる文字放送信号は、テレビジョン信号の垂直帰線消去期間の14H,15H,16Hおよび21Hに重畳されている。そして、この文字放送信号は、次に示す6つの階層?に分けられる。階層は、物理層であり、伝送路を示している。文字放送信号は1水平走査線期間中364クロック相当(ビット)で構成され、この364クロック相当中で有効なのは294クロックである。

【0007】図4は従来の文字放送受信装置の構成を示すブロック図である。図4において、aはテレビジョンの映像信号、1は映像信号aから垂直帰線消去期間に重畳された文字放送信号1aを抜き取る抜取部、2は抜取部1から抜き取った文字放送信号1aをデコードし提示処理するためのデコーダ部、3は抜取部1から抜き取った文字放送信号1aを蓄積するためのバッファメモリ、4はデコーダ部2で処理された内容を表示展開して表示信号bを出力する表示制御部、5は表示制御部4から出力される表示データ4aを記憶するためのビデオメモリ、6はデコーダ部2から出力された音発生データ2aに基づいて音信号cを出力する音発生部である。
【0008】このように構成された従来の文字放送受信装置の動作を説明する。抜取部1は、入力された映像信号aの垂直帰線消去期間内の14H,15H,16Hおよび21Hに重畳されている文字放送信号1aを抜き取る。デコーダ部2は抜き取られた文字放送信号1aをデータ2bとしてバッファメモリ3に蓄積するとともに、バッファメモリ3に蓄積したデータ2bにより提示が必要な番組番号の番組データを抽出してデコードを行い、表示制御部4を介してビデオメモリ5に文字図形情報からなる表示データ4aを書き込む。表示制御部4は、ビデオメモリ5に書き込まれた表示データ4aを順次読み出して表示信号bを出力する。さらに、デコーダ部2は、提示する番組に付加音データがあれば、この付加音データをデコードし、音発生部6に音発生データ2aを送る。これにより、音発生部6は、音発生データ2aに基づいた音信号cを発生する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の符号化伝送方式の文字放送を受信できる文字放送受信装置では、文字放送のディジタル送信機能を充分に活用しているとは言えない。例えば、番組編成上の制約等から放送番組が、複数のチャンネルに渡って放送される場合がある。具体的には、プロ野球等の中継で放送時間切れになった場合に全国ネット局から地方UHF放送局にリレー中継される場合,高校野球の中継でNHKの総合局から教育局にリレー中継される場合および衛星放送において衛星第1チャンネルから衛星第2チャンネルにリレー中継される場合等がある。
【0010】このような場合、従来のテレビジョン受信機または文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機では、番組の放送時間に合わせて人為的にチャンネル切換えを行わねばならないという問題があった。また、従来、チャンネル選択時に任意時間から任意時間までの番組の記録動作を設定可能な機能(通称、ワンタッチ録画)を有する画像記録装置があるが、このような従来の画像記録装置では、上述のように番組がリレー中継された場合には対応することができず、番組の録画が途切れるという問題があった。
【0011】この発明の目的は、上記問題点に鑑み、複数のチャンネルに渡って継続して放送される番組であっても、人為的に行うことがなく自動的にチャンネルを切替えることができる伝送方式およびそれに適応した文字放送受信装置を提供することである。

【0015】
【作用】この発明の構成によれば、送信側では符号化伝送方式の文字放送を用いて複数のチャンネルに渡って放送が継続される番組に関する番組追随情報を送信し、受信側では、受信手段により文字放送を受信して文字放送信号を抽出する。そして、番組追随情報認識手段により、文字放送信号に基づいて番組追随情報を認識して抽出し、番組追随情報処理手段により、番組追随情報に基づいてチャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報を抽出し、チャンネル切替え手段により、チャンネル情報に基づいてチャンネルを切り換える。これにより、テレビジョン受信機では、番組の放送に追随してチャンネルが切替わり、人為的にチャンネルを切替えることが不要となる。また、画像記録装置では、番組の放送に追随してチャンネルが切替わり、途切れることがなく番組を録画することができる。
【0016】
【実施例】図1は、この発明の一実施例の文字放送受信装置の構成を示すブロック図である。なお、図1において、図4の従来例と同符号の部分は同一の機能を有する部分である。図1に示すように、文字放送受信装置は、受信手段100と、番組追随情報認識手段7と、番組追随情報処理手段8と、チャンネル切替え手段20とを備えたものである。
【0017】受信手段100は、抜取部1,デコーダ部2,バッファメモリ3,表示制御部4,ビデオメモリ5および音発生部6からなり、データユニットデータとして複数のチャンネルに渡って放送が継続される番組に関する番組追随情報を付与した符号化伝送方式の文字放送を受信し、映像信号aから文字放送信号1aを抽出して表示信号bおよび音信号cを出力するものである。
【0018】番組追随情報手段7は、受信手段100から出力された文字放送信号1aに基づいて番組追随情報7aを認識して抽出するものである。番組追随情報処理手段8は、番組追随情報7aに基づいてチャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報8aを抽出するものである。
【0019】チャンネル切替え手段20は、切替えチャンネル判別手段9およびチャンネル切替え要求手段10からなり、切替えチャンネル判別手段9によりチャンネル情報8aに基づいて切替え先となるチャンネルを判別し、チャンネル切替え要求手段10によりチューナ切替部(図示せず)に対しチャンネル切替えを要求するものである。
【0020】また、11はテレビジョン受信機、12は画像記録装置であり、文字放送受信装置のチャンネル切替え手段20に接続してある。このように構成した文字放送受信装置は、送出側により、符号化伝送方式の文字放送を用いて複数のチャンネルに渡って放送が継続される番組に関する番組追随情報を含む特定番組情報を送出する伝送方式に適応したものである。
【0021】このように構成した文字放送受信装置について説明する。文字放送の受信処理は従来と同様であり、抜取部1により、映像信号aから文字放送信号1aを抜き取り、デコーダ部2により文字放送信号1aをデータ2bとしてバッファメモリ3に蓄積するとともに、バッファメモリ3に蓄積したデータ2bにより提示が必要な番組番号の番組データを抽出してデコードを行い、表示制御部4を介してビデオメモリ5に文字図形情報からなる表示データ4aを書き込む。表示制御部4は、ビデオメモリ5に書き込まれた表示データ4aを順次読み出して表示信号bを出力する。また、デコーダ部2は、提示する番組に付加音データがあれば、この付加音データをデコードし、音発生部6に音発生データ2aを送る。これにより、音発生部6は、音発生データ2aに基づいた音信号cを発生する。
【0022】このようにして受信手段100により文字放送信号1aから表示信号bおよび音信号cを抽出する。また、文字放送信号1aにはデータユニットデータとして番組追随情報7aが付与されている。この番組追随情報7aの認識および抽出は番組追随情報認識手段7により行う。番組追随情報7aの認識は、図2に示すようなデータユニットパラメータから既に使用されている16進数の表記データ「20」,「24」,「28」,「2C」,「30」,「31」,「32」,「34」,「35」,「38」,「39」,「3B」,「3C」,「3D」,「3E」および「3F」を除く1バイトデータを任意に選択することにより行う。そして、図3に示すようなデータ構造の番組追随情報7aを抽出する。なお、図3において、aはデータグループヘッダ、bはデータヘッダ、cはデータユニットを示す。
【0023】このように番組追随情報認識手段7により、文字放送信号1aに基づいて番組追随情報7aとなるデータユニットデータを認識し抽出する。そして、番組追随情報処理手段8では、番組追随情報7aであるデータユニットデータの示す番組切り換わり時間情報に基づいてチャンネルを切替える時間を設定し、番組継続が発生した場合に番組追随情報7aであるデータユニットデータの示す番組継続先放送局コード情報に基づいてチャンネル情報8aをチャンネル切替え手段20に出力する。
【0024】そして、チャンネル切替え手段20では、切替えチャンネル判別手段9によりチャンネル情報8aに基づいて切替えるべきチャンネルを判別し、チャンネル切替え要求手段10により、判別された切替えチャンネルの設定値を発生し、テレビジョン受信機11または画像記録装置12のチューナー切替部にチャンネル切替え要求信号10aを出力する。これにより、テレビジョン受信機11では、番組の放送に追随してチャンネルが切替わり、人為的にチャンネルを切替えることが不要となる。また、画像記録装置12では、番組の放送に追随してチャンネルが切替わり、途切れることがなく番組を録画することができる。
【0025】このように、送信側では符号化伝送方式の文字放送を用いて複数のチャンネルに渡って放送が継続される番組に関する番組追随情報を送信し、受信側では、受信手段100により文字放送を受信して文字放送信号1aを抽出する。そして、番組追随情報認識手段7により、文字放送信号1aに基づいて番組追随情報7aを認識して抽出し、番組追随情報処理手段8により、番組追随情報8aに基づいてチャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報8aを抽出し、チャンネル切替え手段20により、チャンネル情報8aに基づいてチャンネル切替え要求信号10aを出力する。これにより、テレビジョン受信機11では、番組の放送に追随してチャンネルが切替わり、人為的にチャンネルを切替えることが不要となる。また、画像記録装置12では、番組の放送に追随してチャンネルが切替わり、途切れることがなく番組を録画することができる。また、番組追随情報の付与は符号化伝送方式の文字放送を用いているため、現行の文字放送受信装置に影響を与えることがない。

(2)刊行物1に記載された発明
以上の記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、刊行物1発明という。)が記載されている。

2a.刊行物1の【0002】、【0010】の記載をみると、刊行物1に記載された発明は、文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機に関する発明であるといえる。

2b.刊行物1に記載された文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機は、テレビジョン受信機であるから、通常放送されているテレビ番組を視聴するために、視聴する番組のチャンネルを受信する受信部を有することは明らかであり、さらに、内蔵する文字放送受信機は、【0007】、【0008】、【0016】の記載をみると、文字放送を受信するための文字放送受信手段とを有している。
以上のことから、刊行物1に記載された文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機は、通常のテレビ放送を受信する受信部と文字放送を受信するための文字放送受信手段とを有しているといえる。

2c.刊行物1に記載された文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機は、視聴する番組のチャンネルを受信した後、上記受信したチャンネルの番組をテレビ画面に表示することは明らかであり、したがって、受信したチャンネルの番組表示するための処理を行う処理部を有していることは明らかである。
また、刊行物1の【0016】-【0018】の記載によれば、文字放送受信機は、受信した文字放送信号から、番組追随情報7aを認識して抽出する番組追随情報手段、番組追随情報7aに基づいてチャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報8aを抽出する番組追随情報処理手段を備えている。
以上まとめると、刊行物1に記載された文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機は、受信したチャンネルの番組表示するための処理を行う処理部と、受信した文字放送信号から、チャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報を抽出する抽出部とを備えているといえる。

2d.刊行物1の【0016】-【0024】の記載によれば、文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機は、番組追随情報認識手段、番組追随情報処理手段、チャンネル切替え手段を備え、「番組追随情報手段7は、受信手段100から出力された文字放送信号1aに基づいて番組追随情報7aを認識して抽出」し、「番組追随情報処理手段8は、番組追随情報7aに基づいてチャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報8aを抽出」し、「チャンネル切替え手段20は、切替えチャンネル判別手段9およびチャンネル切替え要求手段10からなり、切替えチャンネル判別手段9によりチャンネル情報8aに基づいて切替え先となるチャンネルを判別し、チャンネル切替え要求手段10によりチューナ切替部(図示せず)に対しチャンネル切替えを要求するものであ」って、文字放送受信装置のチャンネル切替え手段20から、テレビジョン受信機や画像記録装置のチューナー切替部にチャンネル切替え要求信号10aを出力することで、テレビジョン受信機11では、番組の放送に追随してチャンネルが切替わり、人為的にチャンネルを切替えることが不要となり、画像記録装置12では、番組の放送に追随してチャンネルが切替わり、途切れることがなく番組を録画することができるものであるといえる。
すなわち、刊行物1に記載された文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機は、受信したチャンネルの番組表示を行っている際に、文字放送信号から抽出された番組追随情報に基づいてチャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報を抽出し、このチャンネル情報に基づきテレビジョン受信機のチューナー切替部にチャンネル切替え要求信号することで、テレビジョン受信機は、番組の放送に追随してチャンネルを切り替える制御部を有しているといえる。

2e.まとめ
以上まとめると、刊行物1発明として、以下のとおりのものを認定することができる。

通常のテレビ放送を受信する受信部と文字放送を受信するための文字放送受信手段と、
受信したチャンネルの番組表示するための処理を行う処理部と、受信した文字放送信号から、チャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報を抽出する抽出部と、
受信したチャンネルの番組表示を行っている際に、文字放送信号から抽出された番組追随情報に基づいてチャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報を抽出し、このチャンネル情報に基づきテレビジョン受信機のチューナー切替部にチャンネル切替え要求信号することで、テレビジョン受信機は、番組の放送に追随してチャンネルを切り替える制御部と、
を備える文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機。

(3)刊行物2の記載
当審における拒絶の理由の通知(平成26年11月6日)において引用された「井口 昭彦、第4章 映像/音声/データの同期技術-MPEG-2 TS、ディジタル放送の基礎技術入門、日本、2004.06.15発行、第3版、71-80頁」(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

3a.「ディジタル放送では、転送方式にMPEG-2 TS(Transport Stream)が用いられており、MPEG-2 TSについての理解が必須となっています。本章では、TSについての説明、とくになぜそのようなしくみになっているのかに焦点を当てて解説します。」(71頁右欄17-21行)

3b.「MPEG-2 TSの概要
MPEG-2 TSのTSパケット、PES(Packetized Elementary Stream)パケット、ES(Elementary Stream)パケット、セクションは、図1のような構造になっています。
また、実際に放送されているTSのPID(パケットID:13ビット0x0000から0x1FFFの値を取る)のみを抽出したものを写真1に示します。これは、TS解析装置(写真2)で見たものです。TS伝送のメリットは、固定長のTSパケットを多重伝送することで番組の多重編成(HDTV放送1チャネルやSDTV複数チャネルの放送)や番組内の編成(HDTV1チャネル+データ放送1チャネルやSDTV2チャネル+データ放送3チャネル)を変更したり、衛星や地上波の放送から特定のチャネルを抜き出し新たなチャネルを多重してケーブルTVで再配信したりすることを、劣化なく柔軟に実現できることです。
ESは、エンコードされた映像や音声のデータまたはデータコンテンツなどから構成されます。
PESはパケット化され分割されたESで、PESヘッダが付けられたフォーマットになります。PESは、時間制御が必要なコンテンツや表示制御に関係するデータが送られます。」(72頁左欄下から2行-右欄下から3行)

3c.「MPEG-2 TSは受信機から見るとよくわかる!
テレビの伝送信号を理解するには、従来のアナログ方式もそうですが、受信機にとってさまざまな信号が何の目的で用意されているかを知ることが重要です。
次に、MPEG-2 TSを理解するために、ディジタル放送は現行のアナログ放送と何が違うのかを、2000年12月より開始されたBSディジタル放送向けの受信機をもとに説明します。ディジタル放送が現行の地上波アナログ放送と違うところは、
<丸1>多チャンネル放送または多サービス放送が行われる。
<丸2>映像と音声はディジタル圧縮されたディジタルデータで送られてくる。また、現行の解像度のビデオ信号(SDTV)のみならずハイビジョン(HDTV)も放送される。さらに、データも多重化して伝送できるため、新しいサービスが可能(天気予報、交通情報、番組情報、番組連動情報、独立データ放送、音楽データ配信、双方向データサービスによるショッピングサービス、クイズ番組など)。」(73頁左欄18行-35行)
(以下、特許庁の電子情報処理組織では、○の中に数字が入った文字は表示することができないので、○の中に数字の1が入った文字は、<丸1>、○の中に数字の2が入った文字は、<丸2>のように表記する。)

3d.「(4)DEMUX部
デスクランブルされた(暗号化が解けた状態の)TSをデマルチプレクス(分離)し、映像や音声、データなどのコンテンツを分離し、後段に渡します。ここでの出力は、TS化される前のPES(パケッタイズドエレメンタリストリーム)やES(エレメンタリストリーム)となります。映像PESや音声PESはデコーダ部に渡され、データのPESやESはソフトウェアによる処理をされ、デコーダの表示部で合成されて表示されます。
(5)デコーダ部
DEMUX部からのビデオ/オーディオのPESを受け、元の映像や音声信号のディジタル的な信号にまで戻します。データコンテンツの表示の合成を行うものもあります。
(6)VIDEOエンコーダ、AUDIO DAC部
ここでは、デコーダからの映像/音声信号をアナログの元信号に戻します。また、データコンテンツなどの表示合成をここで行うものもあります。」(74頁左欄10行-右欄5行)

3e.「<丸1>選局(チューニング)
人間が選局するチャネルを決めます(または電源オン時に最初に選局される局が自動的に決まっている)。
受信機は、目的とするチャネルがどのキャリアにあるかを知らなければなりません。ここが、アナログ放送受信機とのいちばんの違いです。アナログ放送では、チャネルとキャリアが1対1の関係にあったので、選択したいチャネルのキャリアにチューニングさえすればよかったわけです。
しかし、デジタル放送では1キャリアに複数のチャネルが含まれており、キャリア周波数を知っただけでは選局できません。そのため、いちばん初めに目的のチャネルがどのキャリアに含まれているかを知ることになります。この目的でNITを取得し、中の記述を見ます。
なお、最初に選択するキャリアは、デフォルトか最後に選択していた周波数などで、何らかの周波数は決まっています。ここは、受信機によって動作が異なります。また、実際の放送では周波数は頻繁に変わらないので、受信機によってはあらかじめ記憶してしまい、チャネル選択時の移動時間を短くしているものもあります。NITはセクション中のバージョン番号が変わったときや受信機の電源オン時に再取得され、変更に追従するように運用されます。
次に、目的とするチャネルのキャリア周波数にチューニングし、目的のTSを取り出します。
<丸2>チャネル選択
選択したいチャネルを含んだキャリアから取り出したTSから、目的とするチャネル情報を選択するフローについて説明します。まず、番組の全体情報を記述してあるセクションデータのPATをサーチして内容を見ます。サーチは、PIDが0x0000のパケットをサーチすることで行います。
PATの中には、そのTS内に含まれるサービスID(チャネル)の構成と、その詳細情報が記述されているPMTのPIDが記述されています。目的とするチャネルのPMTのPIDがわかれば、次にそのPIDをサーチし、PMTの内容を見ます。PMTの中には、そのチャネルで送られてくるビデオ、オーディオ、データのそれぞれのPIDが記述されています。この関係を、図5に示します。
さらに、もし選択したチャネルが有料放送であればスクランブルを解く必要があるので、CATを取得してECM、EMMといったスクランブル(暗号)を解くための情報を取得し、デスクランブラに必要な情報を得ます。デスクランブラにそれらの情報をセットし、スクランブルを解きます。
ビデオ、オーディオ、データのそれぞれのPIDがわかり、さらにスクランブルも解き、それのみを選択してハードウェアデコーダやソフトウェアのデータコンテンツブラウザなどに送って表示できます(図6)。」(75頁左欄14行-76頁左欄17行)

3f.「データ放送を伝送するしくみ
データコンテンツには、次のものがあります。
<丸1>時間に依存する番組連動のデータ(字幕、番組連動型データ放送)
<丸2>時間にあまり依存しないデータ(番組情報、天気、交通、ニュースなど)
<丸3>データが大きいもの(音楽配信など)
<丸4>受信機のファームウェア(バージョンアップ)
これらのデータを正確に伝送するため、MPEG-2 TSではいくつかの方法が用意されています。
(1)独立PESによる伝送
時刻情報を合わせて伝送できるため、番組に連動する字幕や文字スーパー、番組連動コンテンツなどに向いています。データコンテンツ本体をPES化したものです。番組に連動しない放送でも使えます。」(78頁左欄12行-右欄8行)

(4)刊行物2に記載された技術事項
上記記載によれば、デジタル放送はMPEG-2 TSを用いて送信されているから、MPEG-2 TSの理解が必須であるとして、MPEG-2 TSのデータ形式(例えば、1キャリアに複数のチャンネルが含まれていること、字幕や文字スーパーは独立PESにより伝送すること等)や、上記MPEG-2 TSを受信する受信機の具体的な構成や動作(例えば、映像や音声のデータまたはデータコンテンツのデータは多重化して伝送されるが、それぞれのデータは異なるPIDを有しているから、それのみ(必要なPID)を有したビデオ、オーディオ、データを選択することで表示が可能であること等)が記載されている。

(5)周知例1の記載
特開2004-336518号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線もしくは有線で伝送されるデジタル放送信号を受信するデジタル放送受信装置またはデジタル放送受信方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、テレビジョン放送などについてデジタル化が進められている。従来のアナログ放送と比較して、より安定した映像・音声およびデータの提供が可能となる。また、周波数資源を有効に利用できるため、従来のアナログ放送は、衛星放送や地上波放送といった放送形態を問わず、デジタル放送への転換が進められている。
【0003】
しかしながら、従来のアナログ放送と比較して、デジタル放送特有の問題を有する場合がある。このデジタル放送における問題点の1つに、選局時間の問題が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】
社団法人・電波産業会「地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式」、ARIB STD-B31 1.0版、平成13年5月31日策定、第85頁
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
日本の地上デジタル放送では、インターリーブと呼ばれる処理により、選局から受信した信号を復調できるまでに遅延時間が発生する。非特許文献1によれば、遅延時間は約1300ミリ秒となる場合も想定されている。さらに、復調されたデータを映像や音声信号へと復号する必要がある。
【0006】
例えば、MPEG2方式で圧縮された画像データの場合、画像データは、Iピクチャ、PピクチャおよびBピクチャにより構成される。このうち、Iピクチャが復号の基準となるため、画像データの復号には、Iピクチャの受信が必須となる。通常、Iピクチャの送信間隔は最長0.5秒程度となるため、画像の復号には最長で0.5秒程度要する。
【0007】
一般に、テレビジョン放送を視聴する際には、放送されている番組の中から、視聴したい番組を選択することが多い。例えば、放送されているチャンネル番号の順に放送内容を確認し、視聴する番組を決定している。従来のアナログ放送の場合、選局等に要する時間が十分に短く、番組を選択してから映像や音声が出力されるまでの遅延時間を実用上ほとんど無視することができた。しかしながら、デジタル放送の場合、上記のような番組選択処理を行った場合に、番組選択後の遅延時間が大きい。特に、連続してチャンネル切り替えを行い、放送番組内容を確認する場合には、視聴者に不快感を与えることが予想される。

【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態によるデジタル放送受信装置の構成を説明するための図である。以下、図1を用いて上記デジタル放送受信装置の構成を説明する。
【0027】
101は、電波を受信するアンテナ、102a?102nは、受信した信号を受信するためのチューナー部、103a?103nは、チューナー部から出力される信号を復調する復調部、104は複数の復調部103aから103nより得られる信号の中から信号を選択する選択部、105は、選択部で選択された信号を復号する復号部、106は、他の装置と通信するための通信手段、107は通信手段106により接続された他の装置である。
【0028】
次に、本実施の形態によるデジタル放送受信装置の動作について説明する。
【0029】
アンテナ101では、デジタル放送を受信する。次に受信された信号は分配され、チューナー部102a?チューナー部102nに入力される。ここで、図2に示すように、アンテナ101とチューナー部102a?102nの間に、アンテナより得られた信号を増幅するための増幅部108を設けてもよいこのような構成の場合、増幅部108において信号を増幅することで、複数のチューナー部に信号を分配する際の信号レベルの低下を補うことが可能となる。
【0030】
チューナー部102a?102nでは、それぞれ異なるチャンネルの信号を受信し、復調部103a?復調部103nにそれぞれ信号を送る。各チューナー部で選択するチャンネルは、例えば、受信機が設置されている地域で放送されているチャンネルにあらかじめ設定しておくことが考えられる。また、放送チャンネル数と比較して、チューナー部の数が少ない場合には、視聴者が選択することの多いチャンネルを受信する場合や、または現在選択しているチャンネルに隣接するチャンネルを受信することが考えられる。
【0031】
次に、復調部103a?復調部103nでは、それぞれチューナー部より得られた信号を復調し、選択部104に送る。
【0032】
選択部104では、ユーザーが視聴しようとするチャンネルのデータを、複数の復調部103a?復調部103nより入手し選択する。このとき、信号の選択は、例えば、ユーザーのチャンネル変更操作に応じて所望のチャンネルに対応した信号を選択する。また、選択部104では、通信手段106を通じて接続された他の装置107からの要求に応じて、通信手段106を介して、他の装置に対して受信した信号(復調部の出力信号)を送信する。ここで、他の装置としては、例えば、映像・音声等を記録する記録装置や、デジタル放送を視聴するための機能を有する装置を指す。

【0035】
本実施の形態によって、デジタル放送を視聴している視聴者が、現在視聴している放送を変更する場合、あらかじめ復調処理まで行っているため、新たに選局を開始し復調処理を行う必要が無く、チャンネル切り替え後の映像や音声を出力する時間を短縮することが可能となる。

【0038】
101は電波を受信するアンテナ、102a?102nは受信した信号を受信するためのチューナー部、103a?103nはチューナー部から出力される信号を復調する復調部、109a?109nは復調部で復調された信号を復号する復号部、110は複数の復号部109aから109nより得られる信号の中から信号を選択する選択部、111は他の装置と通信するための通信手段、112は通信手段111により接続された他の装置である。
【0039】
次に、本実施の形態によるデジタル放送受信装置の動作について説明する。ここで、アンテナ101、チューナー部102a?チューナー部102nおよび復調部103a?復調部103nについては、(実施の形態1)のデジタル放送受信装置と同様のため、その説明を省略する。
【0040】
復号部109a?復号部109nは、復調部103a?復調部103nのそれぞれから得られた復調信号をそれぞれ入力する。復調信号は、例えばMPEG-2符号化方式等で採用されているトランスポートストリームのフォーマットとすることが考えられる。各復調部では、入力された信号を復号し、映像信号や音声信号へと変換する。
【0041】
選択部110では、ユーザーが視聴しようとするチャンネルのデータを、複数の復調部109a?復調部109nより入手し選択する。信号の選択後は、ディスプレイ等の表示部へ映像信号や音声信号を出力する。
【0042】
信号の選択は、例えば、ユーザーのチャンネル変更操作に応じて所望のチャンネルに対応した信号を選択することで行われる。また、選択部110では、通信手段111を通じて接続された他の装置112からの要求に応じて、通信手段111を介して、他の装置に対して受信した信号(映像信号、音声信号等)を送信する。
【0043】
本実施の形態によって、デジタル放送を視聴している視聴者が、現在視聴している放送を変更する場合、あらかじめ復号処理まで行っているため、新たに選局を開始し復調処理および復号処理を行う必要が無く、チャンネル切り替え後の映像や音声を出力する時間を短縮することが可能となる。

(6)周知例1に記載された技術事項
上記記載によれば、周知例1には、従来のアナログ放送と比較して、デジタル放送では選局から受信した信号を復調できるまでに遅延時間が発生するため、上記遅延時間をなくすように、複数のチューナ、複数の復調部、複数の復号部を設け、予め視聴者が選択することの多いチャンネルや、または現在選択しているチャンネルに隣接するチャンネルを受信しておくことで、チャンネル変更時には、すでに復号処理まで行っているため、新たに選局を開始し復調処理および復号処理を行う必要が無く、チャンネル切り替え後の映像や音声を出力する時間を短縮することが可能となる構成が開示されているといえる。

(7)周知例2の記載
特開2001-94892号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、テレビジョン受信機に関し、特にテレビジョン受信機に用いられるチャンネル切り替え装置に関する。
【0002】
【従来の技術】アナログ放送でチャンネルを切り替えるときには、選局周波数を切り替えるだけで良い。しかし、デジタル放送ではインタリーブ等復号遅延が大きいこともあり、チャンネル切り替え指示後、実際に切り替え後の映像が表示される迄の期間がアナログ放送と比較して長くなる。特に地上デジタル放送であるISDB-T方式は、時間インタリーブ長が0.5秒程度もあり、この間画面がフリーズするなど視聴上の問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように従来のチャンネル切り替え装置においては、チャンネルを切り替え指示後、実際に切り替え後の映像が表示される迄に時間が長くかかるという問題があった。

【0006】図1において入力信号11はユーザにより選択されたチャンネルを復調部12で選択し復調する。ここでいう復調処理とは、誤り訂正などの復号処理を含んでもよい。また、入力信号11は復調部13,14へも同様に供給されている。復調部13および復調部14は、復調部12で復調していないチャンネルの内、上下に隣接するチャンネルを選択し、復調処理を行う。これら復調部12?14は、選択制御手段16からの制御信号により制御され、この制御信号に基づくチャンネルを復調する。セレクタ15は、選択制御手段16からの制御信号により制御され、復調部12?14のいずれかの出力を選択し、表示装置17へ供給する。表示装置17は、供給された復調出力を表示する。
【0007】この例では復調部が3個であるが、本発明の趣旨では個数が制限されるものではなく、いくつであっても良い。次に、この3つの復調部を備えたチャンネル切り替え装置の動作について説明する。この例では実際に放送が行なわれ受信可能なチャンネルが13ch(ch:チャンネル),15ch,17ch,19ch,21chの5つであり、最初ユーザが17chを視聴しているものとして説明する。
【0008】ユーザが17chを視聴している状態では、選択制御手段16は復調部12?14には、17chと、17ch前後の15ch,19ch計3チャンネルを復調させ、セレクタ15には17chの復調出力を表示装置17へ出力させている。
【0009】ユーザがリモートコントローラ等によりチャンネルのアップダウンのダウンを指示すると、選択制御手段16はセレクタ15に下チャンネルである19chを復調している復調出力を選択させ、即座に19chが表示装置17に表示される。19chの復調出力が選択された後は、19chを復調していない他の2つの復調部は、19chの上下に隣接するチャンネルである17chおよび21chを復調しチャンネルのアップダウンに備える。
【0010】このとき、17chについてはチャンネルダウン前後共、復調が行なわれる。選択制御手段16はチャンネルのアップダウンに早く備えるため、17chを復調していた復調部については引き続き17chを復調させ続け、チャンネルダウン前に15chを復調していた復調部についてはチャンネルダウン後新たに21chを復調するよう制御する。
【0011】反対に17chを視聴しているときに、チャンネルのアップダウンのアップを指示すると、選択制御手段16はセレクタ15に上チャンネルである15chを復調している復調出力を選択させ、即座に15hが表示装置17に表示される。15ch復調出力が選択された後は、15chを復調していない他の2つの復調部は、15chの上下に隣接するチャンネルである13chおよび17chを復調しチャンネルのアップダウンに備える。
【0012】このとき、17chについてはチャンネルダウン前後共復調することになっている。選択制御手段16はチャンネルのアップダウンに早く備えるため、17chを復調していた復調部については引き続き17chを復調させ続け、チャンネルダウン前に15chを復調していた復調部についてはチャンネルダウン後新たに13chを復調するよう制御する。
【0013】つまり、ユーザがチャンネルのアップダウンで選択する場合に備え、即座に復調処理を完了した信号を視聴できるよう、常に現在視聴中の上下に隣接するチャンネルを復調しておく。

【0015】図2において入力信号21はユーザにより選択されたチャンネルを復調部22で選択し復調する。ここでいう復調処理とは、誤り訂正などの復号処理を含んでもよい。もう一方の復調部23はユーザが選択していないチャンネルから隣接する上下いずれか一方のチャンネルを選択し、復調処理を行う。
【0016】選択制御手段26は直前にチャンネルのアップとダウンのいずれかが行なわれたのかを示す情報を記憶しており、この情報がアップを示す場合には現在視聴していないチャンネルを選択している復調部を用いて予め15chを選局しておく。これにより次にチャンネルアップが指示された場合には直ぐに15chを表示させることが可能となる。これはチャンネルのアップダウンは続けて同方向の指示が出される場合が多いことを利用している。
【0017】また、チャンネルのアップダウンのいずれかが行なわれたのかを示す情報を記憶するのに代えて、直前にユーザが選択したチャンネルを記憶しておき、現在視聴しているチャンネルに対し、チャンネルの上下でみて同一方向の隣接する次チャンネルを、現在視聴していないチャンネルを復調している復調部で選択し復調しておくようにしても良い。これはユーザ自身で視聴可能なチャンネルをアップ方向またはダウン方向に連続して切り替えることが多いのを利用している。
【0018】選択制御手段26は、上記したように復調部を制御すると共に、セレクタ25の切り替え制御を行なう。次に、このチャンネル切り替え装置の動作について説明する。この例でも実際に放送が行なわれ受信可能なチャンネルが13ch(ch:チャンネル),15ch,17ch,19ch,21chの5つであり、最初ユーザが17chを視聴し、直前にはチャンネルのダウンが行なわれているものとして説明する。
【0019】ユーザがリモートコントローラ等により続けてチャンネルのアップダウンのダウンを指示すると、選択制御手段26はセレクタ25に下チャンネルである19chを復調している復調出力を選択させ、即座に19chが表示装置27に表示される。19chの復調出力が選択された後は、視聴されなくなった側のチャンネルの復調部は、ユーザが更に続けてチャンネルのアップダウンのダウンを指示し、下チャンネルである21chを選択するものと予測し、予め21chを選択し復調する。
【0020】反対に17chを視聴しているときに、ユーザがリモートコントローラ等によりチャンネルのアップダウンのアップを指示すると、17chを復調していた復調部は新たに上チャンネルである15chを復調し直してセレクタ25を介して表示装置27へ出力する。このように15chについては予め復調されていないため、復調部で新たに復調することになるため表示装置27に表示される迄には少々時間を要することとなる。チャンネルのアップダウンのダウンに備えていた復調部は、ユーザが続けて更にチャンネルのアップダウンのアップを指示し、上チャンネルである13chを選択するものと予測し、予め13chを選択し復調する。
【0021】(視聴時間によるチャンネル選択予測)また、選択制御手段26の選択制御については上記したのに代えて、次のようにしても良い。
【0022】選択制御手段26は各チャンネル毎にユーザの選択時間を計測しておく手段を備える。そして、現在視聴していない側のチャンネルを復調している復調器については、現在視聴中のチャンネルを除いた中からユーザーの視聴時間が長いものを復調しておく。
【0023】例えば、過去1週で13chを1時間、15chを3時間、17chを2時間、19chを5時間、21chを0時間視聴し、現在ユーザーが15chを見ている場合、次にユーザがチャンネルを選択する可能性が高いのは、19chが一番高いため、視聴していない側のチャンネルを復調する復調部には19chを復調させておく。
【0024】このとき復調器を複数用意しておき、選択時間の長いものから3つ、4つ等予め復調しておくようにしても良い。
(視聴日時によるチャンネル選択予測)上記した(視聴時間によるチャンネル選択予測)では、曜日や時間毎に関係なく過去一週間の総視聴時間であった。しかし、チャンネルの選択というものは曜日や時間毎に異なるのが一般的である。これに着目し、選択制御手段26は月、曜日、時間毎といった、ある特定の条件における各チャンネル毎のチャンネル選択時間を計測しておく機構を備え、前述したように、現在の月、曜日、時間といったものの中で選択時間の長いものから選択することにより、より正確なチャンネル推定が行われる。

【0027】図3において入力信号31はユーザにより選択されたチャンネルを復調部32で選択し復調する。ここでいう復調処理とは、誤り訂正などの復号処理を含んでもよい。選択制御手段36は登録手段34により登録されており現在視聴していないチャンネルの中から、一つを選択し、視聴しているチャンネルを復調していない復調部33で復調処理を行う。ここで、登録手段34はユーザーが視聴可能なチャンネルの中から、一部のチャンネルを選択・登録しておき、通常、視聴に関しては登録チャンネルの中から行う。
【0028】ここで選択制御手段36の選択するチャンネルの選択方法の一例について説明する。選択制御手段36は直前に選択した情報を記憶しておき、現在のチャンネルに対し、チャンネル登録手段34の中から同一方向の次チャンネルを視聴しているチャンネルを復調していない復調部で選択する。もちろん復調器は2つに制限されるものではなく、実施の形態2の(視聴時間によるチャンネル選択予測)や(視聴日時によるチャンネル選択予測)と組み合わせることも可能である。
【0029】一般的に数100チャンネル全部を選択、視聴するのは通常煩雑な行為であり、主に見る番組といったものはある程度の偏りがあるため、好みの番組のみを登録しておき、この中で選択を行えるようにすることでユーザーの操作を軽減するものである。
【0030】以上説明したように現在視聴中のチャンネルを復調している復調器と、他の復調器に対し、ユーザーが選択するチャンネルを推定し、予め選択し復調しておくことにより、チャンネルの切り替え高速に行うことが可能となる。もちろん、2つ復調器は現在の選択中のものと推定選択中のものは交互に切り替わるものであり、どちらか推定専用となるといった制限が課せられるわけではない。3つ以上においても同様である。

(8)周知例2に記載された技術事項
上記記載によれば、周知例2には、デジタル放送ではチャンネルを切り替え指示後、実際に切り替え後の映像が表示される迄に時間が長くかかるという課題を解決するために、複数の復調部を備え、現在視聴しているチャンネルとその上下に隣接するチャンネルや、ユーザーが選択するチャンネルを推定し、予め選択し復調しておくことにより、チャンネルの切り替え高速に行うことを可能とする技術思想が開示されているといえる。

第5 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

5a.刊行物1発明が対象とするテレビジョン受信機がアナログテレビ放送受信機を前提としていることは、刊行物1のテレビジョン受信機が文字放送信号を映像信号の垂直基線信号に重畳している構成(例えば、【0003】、【0007】、【0008】等の記載)から明らかであるから、刊行物1発明のテレビジョン受信機は、アナログ放送受信機であるとして以下対比する。
刊行物1発明の「通常のテレビ放送を受信する受信部」は、複数の放送局が、それぞれ割り当てられたチャンネル(サービス)を介して提供する放送番組のデータを受信する受信部であって、アナログ放送では、一つの周波数で一つの放送局に対応したチャンネルの番組のデータが送信されていて、受信機は一つの周波数を受信することで対応する放送局(チャンネル)の番組を受信しているから、サービスのデータを受信する受信部といえる。
また、刊行物1発明の「文字放送を受信するための文字放送受信手段」は、以下5b.で検討するように、文字放送の信号に複数のサービスの関連性を示す情報が含まれているから、「該サービスの関連性を示す情報とを受信する受信部」といえる。
そして、刊行物1発明では、文字放送信号は、映像信号の垂直基線信号に重畳されている(例えば、【0003】、【0007】、【0008】等の記載)のであるから、テレビ放送の受信と文字放送の受信は同じ受信部で行われていることは明らかである。
したがって、刊行物1発明は、本願発明の「サービスの各データと、該サービスの関連性を示す情報とを受信する受信部」を備える点で相違がない。
もっとも、本願発明では、「複数のサービスの各データと、該複数のサービスの関連性を示す情報とを受信する受信部」であるのに対し、刊行物1発明では、受信部は一つの周波数を受信することで、一つのチャンネルしか受信していないから、「複数のサービスの各データ」、「該複数のサービスの関連性」ではない点で相違する。

5b.刊行物1発明の「受信したチャンネルの番組表示するための処理を行う処理部」は、受信したチャンネルの信号を復調等して表示装置で表示可能な信号とする処理部であることは技術常識であるといえ、当該構成は、「該受信部が受信した各サービスのデータを取得する取得部」といえる。
また、刊行物1発明の「受信した文字放送信号から、チャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報を抽出する抽出部」の、「チャンネルを切り換える時間」(の情報)、「番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報」は、刊行物1の全体の記載からみて、現在視聴しているチャンネル(サービス)を「チャンネルを切り換える時間」になったら(同じ番組を見続けるために)「番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル」に切り換えるための情報といえる。
すなわち、上記抽出部が抽出する情報は、複数のチャンネル(サービス)の関連性を示す情報といえ、抽出部は、当該情報を文字放送信号から抽出しているのであるから、前記複数のサービスの関連性を示す情報を取得する取得部といえる。
したがって、刊行物1発明は、「前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部」を備えているといえる。
以上のことからみて、刊行物1発明は、「該受信部が受信した各サービスのデータを取得する取得部と前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部とを備え」ている点で、本願発明の「該受信部が受信した各サービスのデータと、前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部を備え」ている構成と相違がない。
もっとも、本願発明では「該受信部が受信した各サービスのデータと、前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部」(すなわち、取得部が一つ)であるのに対し、刊行物1発明では、取得部が一つであることは特定されていない点で相違する。

5c.上記5b.で検討したように、刊行物1発明ではアナログテレビ放送受信機を前提としているから、本願発明の「取得部が取得したサービスのデータをデコードするデコード部」を有しておらず、この点で本願発明と相違する。

5d.刊行物1発明の「受信したチャンネルの番組表示を行っている際」とは選択したチャンネル(サービス)のデータに基づいてテレビジョン受信機で番組を表示している状態のことであり、本願発明の「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコード」している状態も、当該デコードされたデータに基づいてテレビジョン受信機で番組を表示している状態であるといえるから、刊行物1発明の「受信したチャンネルの番組表示を行っている際」と本願発明の「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコード」している状態とは、「選択したサービスのデータに基づいてテレビジョン受信機で番組を表示」している点で対応しているといえる。
もっとも、本願発明では、「選択したサービスのデータに基づいてテレビジョン受信機で番組を表示」している構成が、「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードする」構成であるのに対し、刊行物1発明では、デコード部を有していないから「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードする」の構成ではない点で相違する。
また、刊行物1発明の「文字放送信号から抽出された番組追随情報に基づいてチャンネルを切り換える時間を設定するとともに番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報を抽出し、このチャンネル情報に基づきテレビジョン受信機のチューナー切替部にチャンネル切替え要求信号することで、テレビジョン受信機は、番組の放送に追随してチャンネルを切り替える」構成は、上記設定されたチャンネルを切り換える時間になると、番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報に基づき番組の放送に追随してチャンネルを切り替えて、追随したチャンネルのデータを表示可能としている構成であるといえ、番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報は、前記複数のサービスの関連性を示す情報に対応することは上記5b.で検討したとおりであるから、所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータの表示を可能とする点で、刊行物1発明の「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータもデコードするように制御」している構成と対応している。
もっとも、本願発明では、上記「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータの表示を可能とする」構成が、「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータもデコードするように制御」するのに対し、刊行物1発明では、「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスに切り替えるように制御」している点で相違する。
さらに、本願発明の「前記複数のサービスの関連性を示す情報」に対応する刊行物1発明の「番組の継続先の放送局コードに関するチャンネル情報」は、文字放送信号から抽出されるものであり、上記文字放送信号は、刊行物1の【0003】、【0007】、【0008】等の記載からみて、「該サービスの映像に重畳しサービスのデータに多重化されて送信され」ているといえる。
これに対して、本願発明の「前記複数のサービスの関連性を示す情報」は「該サービスの映像に重畳せずにサービスのデータに多重化されて送信され」ているから、本願発明の「前記複数のサービスの関連性を示す情報」と、刊行物1発明の「前記複数のサービスの関連性を示す情報」とは「サービスのデータに多重化されて送信され」ている点では一致するものの、本願発明では「該サービスの映像に重畳せず」であるのに対し、刊行物1発明では「該サービスの映像に重畳し」ている点で相違する。
以上まとめると、刊行物1発明は、本願発明の「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードすると共に、所定時間になると、該サービスの映像に重畳せずにサービスのデータに多重化されて送信された前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータもデコードするように制御する制御部」と対比すると「選択したサービスのデータに基づいてテレビジョン受信機で番組を表示するとともに、所定時間になると、サービスのデータに多重化されて送信された前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータの表示を可能とする制御部」を備えている点で対応しているといえる。
もっとも、
「選択したサービスのデータに基づいてテレビジョン受信機で番組を表示」している構成が、本願発明では、「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードする」構成であるのに対し、刊行物1発明では、デコード部を有していないから「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードする」の構成ではない点、
上記「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータの表示を可能とする」構成が、本願発明では、「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータもデコードするように制御」するのに対し、刊行物1発明では、「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスに切り替えるように制御」している点、
本願発明では「該サービスの映像に重畳せず」であるのに対し、刊行物1発明では「該サービスの映像に重畳し」ている点、
で相違する。

5e.刊行物1発明の「文字放送受信装置内蔵テレビジョン受信機」は受信装置といえるから、この点で本願発明と相違はない。

5f.まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)
サービスの各データと、該サービスの関連性を示す情報とを受信する受信部と、
該受信部が受信した各サービスのデータを取得する取得部と前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部と、
選択したサービスのデータに基づいてテレビジョン受信機で番組を表示するとともに、所定時間になると、サービスのデータに多重化されて送信された前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータの表示を可能とする制御部と、
を備える受信装置。

(相違点)
相違点1
本願発明では、「複数のサービスの各データと、該複数のサービスの関連性を示す情報とを受信する受信部」であるのに対し、刊行物1発明では、受信部は一つの周波数を受信することで、一つのチャンネルしか受信していないから、「複数のサービスの各データ」、「該複数のサービスの関連性」ではない点。

相違点2
本願発明では「該受信部が受信した各サービスのデータと、前記複数のサービスの関連性を示す情報とを取得する取得部」(すなわち、取得部が一つ)であるのに対し、刊行物1発明では、取得部が一つであることは特定されていない点。

相違点3
刊行物1発明は、本願発明の「取得部が取得したサービスのデータをデコードするデコード部」を有していない点。

相違点4
「選択したサービスのデータに基づいてテレビジョン受信機で番組を表示」している構成が、本願発明では、「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードする」構成であるのに対し、刊行物1発明では、デコード部を有していないから「該デコード部が、選択したサービスのデータをデコードする」の構成ではない点。

相違点5
上記「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータの表示を可能とする」構成が、本願発明では、「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスのデータもデコードするように制御」するのに対し、刊行物1発明では、「所定時間になると、前記複数のサービスの関連性を示す情報に基づいて、該選択したサービスに関連する他のサービスに切り替えるように制御」している点。

相違点6
本願発明では「該サービスの映像に重畳せず」であるのに対し、刊行物1発明では「該サービスの映像に重畳し」ている点。

第6 判断
まず、各相違点全てについて検討するに、上記相違点は、それぞれ、刊行物1発明がアナログ放送受信機を前提としているのに対し、本願発明はデジタル放送受信装置を対象とした発明であることから生じた相違点であると認めることができる。
そして、アナログ放送受信機の構成をデジタル放送受信装置の構成とすることは、本願出願前普通になされていたから、上記各相違点は、刊行物1発明のアナログ放送受信機をデジタル放送受信装置にする際に当業者が容易になしえた事項であることを、各相違点ごとに検討する。

6a.相違点1、相違点2、相違点6について
刊行物2にはディジタル放送で採用されている「MPEG-2 TS」について、具体的な構成が開示されている。
まず、3b.、3e.の記載をみれば、デジタル放送では、一つのキャリアに複数のチャンネルが含まれていることは明らかであるから、刊行物1発明のアナログ放送受信機をデジタル放送受信機とすれば、相違点1の構成が採用されることは当業者であれば普通に想起し得たことである。
また、3d.、3e.、3f.等の記載をみると、放送データとして送信されるデータは、「ビデオ(映像PES)」、「オーディオ(音声PES)」、「データ(データのPES)」とがあり、本願発明の「該受信部が受信した各サービスのデータ」は、通常のテレビ番組のデータといえるから「ビデオ(映像PES)」、「オーディオ(音声PES)」として受信するデータであるといえる。これに対して、刊行物1発明のアナログ放送受信機をデジタル放送受信装置の構成とすると、「前記複数のサービスの関連性を示す情報」は「データ(データのPES)」として受信するデータとなることは明白であり、これらの「ビデオ(映像PES)」、「オーディオ(音声PES)」、「データ(データのPES)」は、ビデオ、オーディオ、データのそれぞれのPIDが記述され、ビデオ、オーディオ、データのそれぞれのPIDがわかることで、それぞれDEMUX部(PIDフィルタ)で分離されるのであるから、取得部はDEMUX部(PIDフィルタ)一つとなることは明らかである。
そして、3c.にあるように、映像と音声に加えて「データ」も多重化して伝送されているから、「データ」はサービスの映像に多重化されているが、「ビデオ(映像PES)」、「オーディオ(音声PES)」、「データ(データのPES)」のように、それぞれ別のPESであるから、サービスの映像に重畳されていないことは明らかである。
したがって、上記相違点1、相違点2、相違点6は、刊行物1発明のアナログ放送受信機をデジタル放送受信装置とする際に、当然採用される構成である。

6b.相違点3、相違点4について
上記3d.にあるように、刊行物1発明のアナログ放送受信機をデジタル放送受信装置とする際に、デコード部を設け、選択したサービスのデータをデコードする構成を採用することは普通の構成である。

6c.相違点5について
上記相違点5は、平成26年11月6日付け拒絶理由通知書にて、当審が『デジタルチューナの場合、選局チャンネル変更した直後は、デコード等が追従することができず、いわゆる黒い画面がわずかに表示されることは周知であり、そのような課題を解決するために、現在の選局チャンネルから変更が予測されるチャンネルがある場合、事前に選局及びデコードを開始しておくことも周知であり』と判断したように、本願出願前周知の技術事項(必要とあれば、上記第4 (5)ないし(8)参照)であったといえる。
刊行物1発明は、アナログ放送受信機における番組追随手段によりチャンネルを自動で切り替える発明であるが、これをデジタル放送受信機に適用することは当業者が容易になしえたことであって、刊行物1発明をデジタル放送受信機に適用すれば、上記デジタル放送のチャンネル切り替えに係る課題が存在することは、当業者であれば当然予測し得たことであり、当該課題を解決するために、上記本願出願前周知の技術事項を適用することは、当業者であれば容易になしえたことである。
したがって、刊行物1発明のアナログ放送受信機をデジタル放送受信機とするとき、相違点5の構成を採用することは当業者が容易になしえたことであるといえる。

第7 効果
以上のように、上記各相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記各相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

第8 まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本願は請求項2に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-09 
結審通知日 2015-03-10 
審決日 2015-03-30 
出願番号 特願2008-196011(P2008-196011)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡辺 努
渡邊 聡
発明の名称 送信装置及び受信装置  
代理人 杉村 憲司  
代理人 大倉 昭人  

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