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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1300883
審判番号 不服2013-20076  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-16 
確定日 2015-05-14 
事件の表示 特願2010- 26074「セグメント」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月25日出願公開、特開2011-162987〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年2月9日の出願であって,平成25年1月11日付けで拒絶の理由が通知され,同年3月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成25年8月28日付けで拒絶査定がなされ,同査定の謄本は,同年9月3日に請求人に送達された。
これに対し,平成25年10月16日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。

第2 審判請求時の補正について

平成25年10月16日付け手続補正書によりなされた補正(以下,「本件補正」という。)は,請求項1に係る補正を含むものであって,請求項1に記載されている発明特定事項のうち,
「前記リング間継手部に,隣接して設置される他のセグメントと接合した際に,継手方向に略直交する面同士の面接触が生成される凹凸嵌合構造」及び「前記トンネルの外周面より内周面側に段差を介して形成される凸外面とその凸外面に略直交する凸面と前記トンネルの内周面より外周面側に段差を介して形成される凸内面を有する断面視略コ字形の鋼材によって形成される凸部と,前記凸外面と接触させる外フランジ面と前記凸面と接触させるウエブ面と前記凸内面と接触させる内フランジ面を有する断面視略H字形の鋼材によって形成される凹部とによって構成されること」を,

「前記リング間継手部に,隣接して設置される他のセグメントと接合した際に,継手方向に略直交する面同士および継手方向に略平行な面同士の三面で面接触する凸部と凹部からなる凹凸嵌合構造」及び
「前記凸部が,断面視略コ字形の鋼材によって形成され,前記トンネルの外周面より内周面側に段差を介して形成される凸外面と,前記凸外面に略直交する凸面と,前記トンネルの内周面より外周面側に段差を介して形成される凸内面とを有し,
前記凹部が、断面視略H字形の鋼材によって構成され、前記トンネルの軸方向に略直交し、前記凸部の前記凸面と面接触すべきウエブ面と、前記ウエブ面に対して略直交し、前記凸部の前記凸外面に面接触すべき外フランジ面と、前記ウエブ面に対して略直交し、前記凸部の前記凸内面と面接触すべき内フランジ面とを有していること」に変更するものである。(下線部は補正箇所を示す。)

上記補正は、審判請求書の請求人の主張に鑑みるに、原審の拒絶の査定の理由において審査官が、「H字形の鋼材も様々な種類があり、それによりフランジの幅が異なることから、どの程度互いが重なり合う嵌合構造となっているのか、補正後の請求項1に係る発明では限定されているとは言えない。」と指摘したことに対応して、明確化をすることを目的とするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする補正に該当する。
そして、当該補正は新規事項を追加するものでもない。


第3 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される次のとおりのものである。
「複数を組み合わせることによってトンネルの外殻を形成するセグメントであって、
トンネルの外周面を形成するスキンプレートと、
前記トンネルの軸方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両側縁に対となって立設されるリング間継手部と、
前記トンネルの周方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両端縁に対となって立設されるセグメント間継手部とを備え、
前記リング間継手部に、隣接して設置される他のセグメントと接合した際に、継手方向に略直交する面同士および継手方向に略平行な面同士の三面で面接触する凸部と凹部からなる凹凸嵌合構造が形成されており、
前記凸部が、断面視略コ字形の鋼材によって形成され、前記トンネルの外周面より内周面側に段差を介して形成される凸外面と、前記凸外面に略直交する凸面と、前記トンネルの内周面より外周面側に段差を介して形成される凸内面とを有し、
前記凹部が、断面視略H字形の鋼材によって構成され、前記トンネルの軸方向に略直交し、前記凸部の前記凸面と面接触すべきウエブ面と、前記ウエブ面に対して略直交し、前記凸部の前記凸外面に面接触すべき外フランジ面と、前記ウエブ面に対して略直交し、前記凸部の前記凸内面と面接触すべき内フランジ面とを有していることを特徴とするセグメント。」


第4 刊行物の記載事項
1.刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平10-115189号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、次の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 セグメントピースの桁ウエブを多角形の枠状に成型したウエブ枠の少なくも外側をスキンプレートで覆って円筒多分割型の円弧状の鋼殻を構成し、該鋼殻の厚さ方向のウエブをシールドトンネルのリング間とピース間の連結面にして連結するシールドセグメントにおいて、
前記ウエブ枠の円周方向の両側に沿って配置されて輪郭形状がほぼ同一の2個のフランジ枠を設け、該両フランジ枠に対して前記ウエブ枠を断層的にズラせて一体に結合して前記連結面に相補的な陥没部と隆起部とからなる接合機構を形成し、該接合機構を接合して前記リング間とピース間を連結することを特徴とするシールドセグメント。
・・・(中略)・・・
【0001】
【発明の属する技術分野】シールド工法で施工して地中に構築するシールドトンネルの一次覆工用には、鉄筋にコンクリートを打設したコンクリートセグメントと、鋼板のみで作られた鋼製セグメント、および鋼殻内にコンクリートを注入して合成した合成セグメント等が用いられる。本発明は上記した合成セグメント等のようなシールドセグメントに係り、さらに詳しくは継手用のボルトを用いることなくセグメント間を強固に連結することのできる無ボルト型のシールドセグメントに関するものである。」

(2)「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、セグメントピースの桁ウエブを多角形の枠状に成型したウエブ枠の少なくも外側をスキンプレートで覆って円筒多分割型の円弧状の鋼殻を構成し、鋼殻の厚さ方向のウエブをシールドトンネルのリング間とピース間の連結面にして連結するシールドセグメントにおいて、ウエブ枠の円周方向の両側に沿って配置されて輪郭形状がほぼ同一の2個のフランジ枠を設け、両フランジ枠に対してウエブ枠を断層的にズラせて一体に結合して連結面に相補的な陥没部と隆起部とからなる接合機構を形成し、この接合機構を接合してリング間とピース間を連結するシールドセグメントを構成したものである。
【0012】また、セグメントリング間に圧入型の継手機構を設けたシールドセグメントを構成したものである。また、セグメントピース間に摺動型の継手機構を設けたシールドセグメントを構成したものである。また、セグメントピースをほぼ長方形状に成型したシールドセグメントを構成したものである。また、セグメントピースをほぼ亀甲状に成型したシールドセグメントを構成したものである。さらに、セグメントリング内の隣接したセグメントピースのフランジ枠の間にシール溝を設けたシールドセグメントを構成したものである。
【0013】本発明のシールドセグメントの各ピースの周辺部には、雄形の隆起部と雌形の陥没部からなる接合機構が構成されている。接合機構の隆起部と陥没部は、円弧面の内側と外側のフランジ枠に対して相対的にズラせて結合されたウエブ枠により形成されている。そして、各セグメントの周辺部に形成された接合機構の隆起部と陥没部は、セグメントがセグメントリングに組付けられたときに、相補的に接合されて接合機構が完結するようになっている。
【0014】このような基本的な構造を備えた本発明のシールドセグメントは、シールドトンネルの一次覆工の組付け状態で前段リングの陥没部に各セグメントピースの径方向の隆起部が接合される。また、同一リング内の各セグメントピースの隆起部は、いずれもトンネルの軸方向の左右に隣接したセグメントピースの陥没部に接合してセグメントリングが形成される。この結果、全てのセグメントピースの全周辺部が接合機構によって緊密に重合されて、鉛直方向と水平方向土水圧は勿論のこと内圧にも対抗できる高剛性のシールドトンネル用のセグメントリングを実現することができる。」

(3)「【0015】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態1のシールドセグメントの斜視図、図2は図1のX-X断面図、図3は図1のY-Y断面図、図4は本発明の実施形態1のセグメントをシールドトンネルから分離したときの斜視図、図5は本発明の実施形態1の鋼殻の分解斜視図である。実施形態を説明する前に、先ず本発明のシールドセグメントの基本的な構造を長方形状のシールドセグメントを例示して説明する。図6は本発明の基本的な構造を示す原理的説明図で、(a) は平面図、(b) は要部の断面図である。図6の(a) 、(b) において、Sはシールドセグメント(以下、単にセグメント)、Mは隣接したセグメントSの各ピースSp の相互間の連結面を接合する接合機構である。セグメントSは図16で説明した合成セグメント110やコンクリートセグメント等からなる。なお、コンクリートセグメントの場合、接合機構Mをコンクリートで形成するか、又は陥没部Mf 、隆起部Mn をコンクリート以外の材料(合成樹脂、樹脂モルタル等)で形成し、コンクリート部と一体化させても良い。
【0016】接合機構Mは(a) 、(b) 両図に示されたように、セグメントピースSp のフランジ枠にズレδで断層的に結合されたウエブ枠による雄形の隆起部Mm と雌形の陥没部Mf で構成されている。隆起部Mm と陥没部Mf は隣接したセグメントピースSp のリング間及びピース間に形成されて、相補的に接合されて重合が完結するようになっている。Ii は接合機構Mを形成させるための内側のフランジ枠、Io は外側のフランジ枠、Im はウエブ枠で、例えば鋼材により溶接で結合される。Po とPi は外側と内側のスキンプレート、Cは充填されたされたコンクリートである。なお、前述のごとく内側スキンプレートは、設計条件によっては無くても良い。
【0017】このような基本的な構造を備えたセグメントピースSp は、シールドトンネルの一次覆工の組付け状態でズレδによる前段リングの陥没部Mf に各セグメントピースSp の径方向の隆起部Mm が接合される。また、同一リング内の各セグメントピースSp の軸方向の隆起部Mm は、いずれも右側に隣接したセグメントピースSp の陥没部Mf に接合してセグメントリングが形成される。この結果、全てのセグメントピースSp の全周辺部が接合機構Mによって緊密に重合して、前記土水圧Pv、Phは勿論のこと内圧による剪断力にも対抗できるシールドトンネル用の高剛性のセグメントリングを実現することができる。

(4)「【0019】セグメント4の構造が図1?3の各図にやや拡大して示され、鋼殻10が図5の分解図に示されている。図3と図4において、5と6はセグメント4の外周面(図の下側)と内周面(図の上側)に固着される上、下のスキンプレート、7と8はフランジ枠、9はウエブ枠である。フランジ枠7と8およびウエブ枠9には、いずれも長短各2枚で一対の板状の鋼材が用いられている。71、72と81、82は互いに対向するフランジ枠7と8のフランジ、91、92はウエブ枠9を構成する一対の主桁ウエブと副桁ウエブである。
【0020】フランジ枠7と8は板面をセグメント4の円弧面に平行方向に連結して共に薄い角枠を形成し、ウエブ枠9は板面を円弧面に直角方向に連結して外郭形状が同一でやや深い角枠形に成型されている。11は図の前方と手前の主桁ウエブ91に設けられ雌継手12と雄継手13からなる圧入型の継手機構、14は左右の副桁ウエブ92に設けられ雌継手15と雄継手16からなるた摺動型の継手機構である。
【0021】圧入型の継手機構11と摺動型の継手機構14の拡大断面図が、図7、8と図9、10に示されている。主桁ウエブ91と副桁ウエブ92には従来のようなボルト孔がなく、圧入型の継手機構11と摺動型の継手機構14により合成セグメント4がピース間とリング間に結合されるようになっている。そして、ウエブ枠9を間に挟んで外側と内側に、フランジ枠7と8およびスキンプレート5と6が溶接により順次重ね合わせて結合されて6面が鋼板で囲まれた方舟状の鋼殻10が構成される。
【0022】この場合、前述の図6で説明したようにウエブ枠9がフランジ枠7、8から平行移動して断層的に結合され、トンネル軸方向(X方向)とトンネル径方向(Y方向)に前記のズレδが形成されている。ほぼ同一幅のズレδにより手前側の主桁ウエブ91が前記図6の陥没部Mf を形成し、向う側の主桁ウエブ91が隆起部Mm をなしている。同様に、左側の副桁ウエブ92が陥没部Mf をなし、右側の副桁ウエブ92が隆起部Mm を形成して全周に相補的な接合機構Mが構成されるようになっている。」

(5)「【0026】シールド掘進機により、敷設地盤に図4で示したシールドトンネル1よりやや大きい円筒形のトンネルが穿設される。穿設されたトンネルにはシールド掘進機の矢印A方向の掘進の進行に連れて、後方に予め内壁面に沿ってセグメント4の複数個のセグメントピース41?46が順次リング状に結合される。そして、同図に示されたような複数のセグメントリング31、32…よりなるシールドトンネル1が、トンネル内に施工される。」

(6)「【0033】因みに、本発明の構造を採用して内圧を受ける地下河川用のセグメントの試作例の諸元を、次に示す。
曲率半径=5、000mm
幅=1250mm
厚さ=400mm
分割数=8ピース
【0034】また、フランジ枠7とウエブ枠9に用いた鋼板の寸法を表示したリング間付近の断面図を、図14に示した。表示寸法から明らかのように、フランジ71、72と桁ウエブ91、92には、それぞれ36×200(125…ピース間)mmと22×328mmの鋼板が使われている。また、シール溝18の溝幅は3mmに設定され、このシール溝18にはセグメントリング31、32…の組込み時にウレタン樹脂やクロロプレンゴム等の水膨脹性のシール材が介装される。水膨脹性のシール材が介装されるシール溝18が、セグメント4の外周面に設けられている。このため、地山側の地層からの流水の浸透がシールドトンネル1の表層部で阻止されるので、トンネル内部の漏水を効果的に防止することができる。なお、黒塗りの部分は溶接箇所である。
【0035】また、ピース間継手に図9、10に示したT字状の摺動型の継手機構14を構成したときの継手強度を、従来のボルトを用いた継手箱の継手強度とを算出して比較する。
(1) M42(公称径42mmで破断強度が1cm^(2) 当り約10tf)のボルトを6本使用した従来継手箱形式の継手の場合の継手部引張強度
10×6×π/4(4.2)^(2 )=349.1(tf) …(a)
【0036】(2) ウエブ厚twが22mmで長さ125mmのSM490の鋼材(破断強度が1cm2 当り約5.0tf)を使用した摺動型の継手機構の継手の場合の引張強度
5.0×2.2×125=1375(tf) …(b)
上記の(a) 、(b) 2式の比較から明らかのように、実施形態1の摺動型の継手機構では、従来のボルトを用いた継手箱の4倍弱の強度が算出され、充分大きな引張り耐力が得られることが確かめられた。」

(7)「【0043】上述のように本発明は内、外のフランジ枠に挟まれて相対的にズラされて固定されたウエブ枠を利用して、シールドセグメントの周辺部に相補的に接合される陥没部と隆起部からなり接合機構を設けたシールドセグメントを構成した。したがって、シールドトンネル内に組み込まれた全てのシールドセグメントの連結面が、接合機構によりピース間とリング間で接合される。この結果、陥没部と隆起部とからなる接合機構により、セグメントリング間の剪断力を十分に伝えることができるので、シールドセグメントの連結面の結合が著しく強化され、シールドトンネルの鉛直方向と水平方向に加わる土水圧Pv 、Ph に対抗するシールドセグメント構造にすることができる。」

(8)上記(2)には「シールドトンネルの一次覆工の組付け状態で前段リングの陥没部に各セグメントピースの径方向の隆起部が接合される。また、同一リング内の各セグメントピースの隆起部は、いずれもトンネルの軸方向の左右に隣接したセグメントピースの陥没部に接合してセグメントリングが形成される。」(【0014】)の記載があり、図4の記載から、シールドトンネルの軸方向にリング間が接合し、シールドトンネルの周方向にピース間が接合することが見て取れるので、併せみると、シールドトンネルの軸方向にリング間の隆起部及び陥没部を備え、シールドトンネルの周方向にピース間の隆起部及び陥没部を備えることと解される。

(9)図3を参照すると、リング間には隆起部と陥没部を構成する主桁ウエブ91、フランジ71、フランジ81が間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって設けられることが見て取れる。

(10)図1及び図2を参照すると、ピース間には隆起部と陥没部を構成する副桁ウエブ92、フランジ72、フランジ82が間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって設けられることが見て取れる。

(11)上記(3)には「・・・Mは隣接したセグメントSの各ピースSp の相互間の連結面を接合する接合機構である。」(【0015】)、「セグメントピースSp のフランジ枠にズレδで断層的に結合されたウエブ枠による雄形の隆起部Mm と雌形の陥没部Mf で構成されている。隆起部Mm と陥没部Mf は隣接したセグメントピースSp のリング間及びピース間に形成されて、相補的に接合されて重合が完結するようになっている。」(【0016】)と記載され、上記(6)には、シールドセグメントの試作例として、フランジ71、72と桁ウエブ91、92には、それぞれ36×200(125…ピース間)mmと22×328mmの鋼板であり(【0033】【0034】)、当該鋼板の断面図である図14には、主桁ウエブ91とフランジ71、81のリング間において、隆起部と陥没部の接合する方向に、隆起部の主桁ウエブ91の外周面及び内周面と陥没部のフランジ71及びフランジ81が9mm幅で接触することが記載されている。
これらの事項を併せみると、接合方向に直交する方向の主桁ウエブ91の板面同士と、接合方向に平行な面同士の三面で面接触する隆起部と陥没部からなる相補的な接合機構であり、リング間の接合方向において、隆起部の主桁ウエブ91の外周面及び内周面と陥没部のフランジ71及びフランジ81が面接触すると解される。

(12)上記(4)の「フランジ枠7と8は板面をセグメント4の円弧面に平行方向に連結して共に薄い角枠を形成し、ウエブ枠9は板面を円弧面に直角方向に連結して外郭形状が同一でやや深い角枠形に成型されている。」(【0020】)の記載から、ウエブ枠9の板面は主桁ウエブ91の板面であるといえるところ、図7及び図8を併せみると、リング間の隆起部は、スキンプレート5より内側に段差を介して形成される主桁ウエブ91の外周面と、主桁ウエブ91の板面、スキンプレート6より外側に段差を介して形成される主桁ウエブ91の内周面を備え、主桁ウエブ91の外周面と内周面は隆起部と陥没部の接合する方向と略平行であることが明らかである。
また同様に、リング間の陥没部は、主桁ウエブ91の板面と、主桁ウエブ91の外周面に対向するフランジ71の面、主桁ウエブ91の内周面に対向するフランジ81の面を備えることは明らかである。

(13)図7及び図8の記載から、隆起部は、断面視略コ字形であることが見て取れる。同様に、陥没部は、断面視略H字形であることが見て取れる。


上記(1)から(13)の記載事項から、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「シールドトンネルの一次覆工用シールドセグメントであり、
ウエブ枠の円周方向の両側に沿って配置されて輪郭形状がほぼ同一の2個のフランジ枠を設け、該両フランジ枠に対して前記ウエブ枠を断層的にズラせて一体に結合して前記連結面に相補的な陥没部と隆起部とからなる接合機構を形成したシールドセグメントにおいて、互いに対向するフランジ枠のフランジ71,72と81,82と、ウエブ枠を構成する一対の主桁ウエブ91と副桁ウエブ92を備え、
シールドセグメントの外周面に固着されるスキンプレートと、
シールドトンネルの軸方向にリング間の隆起部及び陥没部を備え、シールドトンネルの周方向にピース間の隆起部及び陥没部を備え、
リング間には隆起部と陥没部を構成する主桁ウエブ91、フランジ71、フランジ81が間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって設けられ、
ピース間には隆起部と陥没部を構成する副桁ウエブ92、フランジ72、フランジ82が間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって設けられ、
シールドトンネルの一次覆工の組付け状態で前段リングの陥没部に各セグメントピースの軸方向の隆起部が接合され、
接合方向に直交する方向の主桁ウエブ91の板面同士と、接合方向に平行な面同士の三面で面接触する隆起部と陥没部からなる相補的な接合機構を備え、
リング間の隆起部は、スキンプレート5より内側に段差を介して形成される主桁ウエブ91の外周面と、主桁ウエブ91の板面、スキンプレート6より外側に段差を介して形成される主桁ウエブ91の内周面を備え、主桁ウエブ91の外周面と内周面は隆起部と陥没部の接合する方向と略平行で、断面視略コ字形であり、
リング間の陥没部は、主桁ウエブ91の板面と、主桁ウエブ91の外周面に対向するフランジ71の面、主桁ウエブ91の内周面に対向するフランジ81の面を備え、断面視略H字形であり、
リング間の接合方向において、隆起部の主桁ウエブ91の外周面及び内周面と陥没部のフランジ71及びフランジ81が面接触し、フランジ枠およびウエブ枠には、いずれも長短各2枚で一対の板状の鋼材が用いられる
シールドセグメント」(以下、「引用発明」という。)

2.刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2007-277893号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に、次の記載がある。(下線は当審にて付与した。)
(1)「【0033】
主桁1は、図1、図6に示すような断面形状になるように、平板形鋼を溶接等により結合させて組立形成しても良いが、合成セグメントAの品質、製造コストを考慮すると、形鋼を用いることが好ましい。
・・・中略・・・
【0036】
主桁1の断面形状としては、図2?図4または図7?図9あるいは図13?図15に示すように、L形、逆T形、C形等の溝形の断面形状を有する主桁1を備えた合成セグメントA1、A2、A3でもよく、これ以外にも、図1等に示すI形あるいはH形のいずれかの断面形状を有する主桁1であればよい。地山側フランジ5bを備えていない形態の主桁1では、ウェブ16の上端部と継手板2にスキンプレート3は固定される形態となる。
図2?図4または図7?図9あるいは図13?図15に示す形態の合成セグメントA1、A2、A3においても、主桁ウェブ16に対して垂直方向にセグメント内部方向へ突出するフランジ5aを少なくとも備えている構成およびフランジの設け方は、前記の実施形態と同様である。
・・・中略・・・
【0041】
また、トンネル軸方向に延長するように配置される前記の長尺鋼材13の断面形状は、図30?図31に示すように、平板形、I形、L形、逆T形、T形、H形、C形等の溝形のいずれかの断面形状を有するようにすると、市販の安価な形鋼を使用することができる。」


第5 対比
1.本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「シールドトンネル」、「シールドセグメント」、「スキンプレート」は、それぞれ本願発明の「トンネル」、「セグメント」、「スキンプレート」に相当する。

(2)引用発明の「シールドトンネルの一次覆工用シールドセグメント」は、複数のシールドセグメントを連結してシールドトンネルを形成するためのシールドセグメントであるので、本願発明の「複数を組み合わせることによってトンネルの外殻を形成するセグメント」に相当する。

(3)引用発明の「シールドセグメントの外周面に固着されるスキンプレート」は、スキンプレートがシールドトンネルの外周面を構成するといえるので、本願発明の「トンネルの外周面を形成するスキンプレート」に相当する。

(4)引用発明の「リング間には隆起部と陥没部を構成する主桁ウエブ91、フランジ71、フランジ81が間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって設けられ」た構成は、陥没部と隆起部とからなる接合機構を形成し、該接合機構を接合して前記リング間とピース間を連結するものであるから、シールドトンネルの軸方向のリング間をつなぎ合わせるものであるといえる。
そうすると、引用発明の「リング間には隆起部と陥没部を構成する主桁ウエブ91、フランジ71、フランジ81が間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって設けられ」た構成は、本願発明の「前記トンネルの軸方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両側縁に対となって立設されるリング間継手部」に相当する。
同様に、引用発明の「ピース間には隆起部と陥没部を構成する副桁ウエブ92、フランジ72、フランジ82が間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって設けられ」た構成は、シールドトンネルの周方向にピース間の隆起部及び陥没部を備え、ピース間をつなぎ合わせるものといえる。
そうすると、引用発明の「ピース間には隆起部と陥没部を構成する副桁ウエブ92、フランジ72、フランジ82が間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって設けられ」た構成は、本願発明の「前記トンネルの周方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両端縁に対となって立設されるセグメント間継手部」に相当する。

(5)引用発明の「シールドトンネルの一次覆工の組付け状態」は、前段リングの陥没部に各セグメントピースの径方向の隆起部が接合された状態であるから、本願発明の「前記リング間継手部に、隣接して設置される他のセグメントと接合した際」の状態に相当する。

(6)引用発明の「隆起部」、「陥没部」、「接合する方向」は、それぞれ本願発明の「凸部」、「凹部」、「継手方向」に相当する。

(7)引用発明の「隆起部」と「陥没部」からなる「接合機構」は、本願発明の「凸部と凹部からなる凹凸嵌合構造」に相当する。

(8)引用発明の「接合方向に直交する方向の主桁ウエブ91の板面同士と、接合方向に平行な面同士の三面で面接触する隆起部と陥没部」は、本願発明の「継手方向に略直交する面同士および継手方向に略平行な面同士の三面で面接触する凸部と凹部」に相当する。

(9)引用発明の「隆起部は」「断面視略コ字形」は、本願発明の「前記凸部が、断面視略コ字形」に相当する。同様に、引用発明の「陥没部は」「断面視略H字形」は、本願発明の「前記凹部が、断面視略H字形」に相当する。
また、引用発明の「フランジ枠およびウエブ枠には、いずれも長短各2枚で一対の板状の鋼材が用いられ」た構成は、本願発明の「鋼材」に相当する。
そうすると、引用発明の「隆起部は」「断面視略コ字形」であり「フランジ枠およびウエブ枠には、いずれも長短各2枚で一対の板状の鋼材が用いられ」た構成は、本願発明の「前記凸部が、断面視略コ字形の鋼材によって形成され」と、「前記凸部が、断面視略コ字形であり、鋼材が用いられ」た点で共通する。
引用発明の「陥没部は、断面視略H字形」であり「フランジ枠およびウエブ枠には、いずれも長短各2枚で一対の板状の鋼材が用いられ」た構成は、本願発明の「前記凹部が、断面視略H字形の鋼材によって構成され」と、「前記凹部が、断面視略H字形であり、鋼材が用いられ」た点で共通する。

(10)引用発明の「スキンプレート5より内側」、「スキンプレート6より外側」は、本願発明の「トンネルの外周面より内周面側」、「トンネルの内周面より外周面側」に相当する。
引用発明の「スキンプレート5より内側に段差を介して形成される主桁ウエブ91の外周面と、主桁ウエブ91の板面、スキンプレート6より外側に段差を介して形成される主桁ウエブ91の内周面を備え」は、本願発明の「前記トンネルの外周面より内周面側に段差を介して形成される凸外面と、前記凸外面に略直交する凸面と、前記トンネルの内周面より外周面側に段差を介して形成される凸内面とを有し」に相当する。

(11)引用発明の「陥没部」の「主桁ウエブ91の板面」、「陥没部」の「主桁ウエブ91の外周面に対向するフランジ71の面」、「陥没部」の「主桁ウエブ91の内周面に対向するフランジ81の面」は、本願発明の「ウエブ面」、「外フランジ面」、「内フランジ面」に相当する。

(12)引用発明の「陥没部」の「主桁ウエブ91の板面」は、接合方向に直交する方向にあり、隆起部の主桁ウエブ91の板面と面接触する構成であるから、シールドトンネルの軸方向に直交し、隆起部の主桁ウエブ91の板面と面接触するといえる。また、引用発明の「陥没部」の「主桁ウエブ91の外周面に対向するフランジ71の面」は、接合方向と略平行に構成されたものであるから、隆起部の「主桁ウエブ91の板面」と直交するといえる。同様に、引用発明の「陥没部」の「主桁ウエブ91の内周面に対向するフランジ81の面」は、隆起部の「主桁ウエブ91の板面」と直交するといえる。
そうすると、引用発明の「陥没部」において「主桁ウエブ91の板面」、「主桁ウエブ91の外周面に対向するフランジ71の面」、「主桁ウエブ91の内周面に対向するフランジ81の面」は、本願発明の「前記トンネルの軸方向に略直交し、前記凸部の前記凸面と面接触すべきウエブ面と、前記ウエブ面に対して略直交し、前記凸部の前記凸外面に面接触すべき外フランジ面と、前記ウエブ面に対して略直交し、前記凸部の前記凸内面と面接触すべき内フランジ面」に相当する。

上記(1)から(12)より、本願発明と引用発明は、
「複数を組み合わせることによってトンネルの外殻を形成するセグメントであって、
トンネルの外周面を形成するスキンプレートと、
前記トンネルの軸方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両側縁に対となって立設されるリング間継手部と、
前記トンネルの周方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両端縁に対となって立設されるセグメント間継手部とを備え、
前記リング間継手部に、隣接して設置される他のセグメントと接合した際に、継手方向に略直交する面同士および継手方向に略平行な面同士の三面で面接触する凸部と凹部からなる凹凸嵌合構造が形成されており、
前記凸部が、断面視略コ字形に形成され、鋼材が用いられており、前記トンネルの外周面より内周面側に段差を介して形成される凸外面と、前記凸外面に略直交する凸面と、前記トンネルの内周面より外周面側に段差を介して形成される凸内面とを有し、
前記凹部が、断面視略H字形に構成され、鋼材が用いられており、前記トンネルの軸方向に略直交し、前記凸部の前記凸面と面接触すべきウエブ面と、前記ウエブ面に対して略直交し、前記凸部の前記凸外面に面接触すべき外フランジ面と、前記ウエブ面に対して略直交し、前記凸部の前記凸内面と面接触すべき内フランジ面とを有していることを特徴とするセグメント」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:凸部及び凹部について、本願発明が「断面視略コ字形の鋼材によって形成」され、「断面視略H字形の鋼材によって構成され」るのに対し、引用発明は、隆起部及び陥没部は、主桁ウエブ91とフランジ71、81のいずれもが板状の鋼材によって構成される点で相違する。


第6 当審の判断
1.相違点について
刊行物2には、主桁1の断面形状はC形(本願発明に倣えば「断面視略コ字形」に相当)、I形(本願発明に倣えば「断面視略H字形」に相当)である合成セグメントであり、主桁は形鋼を用いることが記載(【0033】【0036】)されており、また、形鋼は安価であることが記載(【0041】)されている。
引用発明のウエブ91とフランジ71、81からなる隆起部及び陥没部において、コストの削減のために、刊行物2に記載のような形状の鋼材を採用し、相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得るものである。

2.効果
本願発明の効果は、引用発明及び刊行物2に記載の事項の効果からみて、当業者が予測し得る程度のものであって格別なものということができない。
なお、請求人は審判請求書において、「引用文献1の接合機構は、隣り合ったセグメントのウェブ枠Imとウェブ枠Imが略全面で接触するように構成されているものの、隣り合ったセグメントの内側フランジ枠Iiと内側フランジ枠Iiは端部で接合され、隣り合ったセグメントの外側フランジ枠Ioと外側フランジ枠Ioとは端部で接合されているに過ぎず、セグメントの内側フランジ枠Iiの内表面と隣り合ったセグメントの内側フランジ枠Iiの外表面とは面接触されておらず、また、セグメントの外側フランジ枠Ioの内表面と隣り合ったセグメントの外側フランジ枠Ioの外表面も面接触されていない」ので、「新請求項1に記載されたセグメントの接合機構の構成と、引用文献1に開示されたセグメントの接合機構の構成とは、本質的に異なったものである。 」と主張する。
しかしながら、「セグメントの内側フランジ枠Iiの内表面と隣り合ったセグメントの内側フランジ枠Iiの外表面とは面接触」することや、「セグメントの外側フランジ枠Ioの内表面と隣り合ったセグメントの外側フランジ枠Ioの外表面も面接触」することは、本願の請求項1に記載の事項に基づくものではなく、また、上記第5 1.に記載のように、本願発明の凹凸嵌合構造は引用発明の接合機構の構成と差異を有するものとは認められない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

3.結論
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-26 
結審通知日 2015-03-11 
審決日 2015-03-30 
出願番号 特願2010-26074(P2010-26074)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 草野 顕子  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 竹村 真一郎
本郷 徹
発明の名称 セグメント  
代理人 大石 皓一  

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