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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1300984
審判番号 不服2014-6297  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-04 
確定日 2015-05-13 
事件の表示 特願2012-83345号「エアバッグ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年7月5日出願公開、特開2012-126400号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2006年11月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年12月9日、英国)を国際出願日とする特願2008-544294号の一部を平成24年3月31日に新たな特許出願としたものであって、平成25年7月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年10月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

2 平成26年4月4日の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年4月4日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
2-1 本件補正
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「ボンネット(5)を有する自動車(1)に搭載されるエアバッグ装置(7)において、
当該エアバッグ装置(7)は、歩行者(9)との衝突予測及び/又は実際の衝突を検出し、クラッシュ信号を出力するセンサ(8)と;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、膨張ガスを供給するガス源(11)と;
前記ガス源(11)から供給されるガスによって膨張・展開するエアバッグと;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させるリフター(22)と;を備え、
前記エアバッグ(21)は、前記ボンネット(5)の後方部分の裏面に固定され、
前記クラッシュ信号が出力されたと時に、前記リフターが前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させ、更に、前記エアバッグ(21)が膨張・展開することによって自動車(1)のウィンドスクリーン(2)の少なくとも一部をカバーするように構成され、
前記リフター(22)によって前記ボンネット(5)の後方部分が上昇し始めた後の所定の時間が経過した時にのみ、前記エアバッグ(21)が膨張するように構成されたタイマー(23)を備えた制御ユニット(10)を更に含むことを特徴とするエアバッグ装置(7)。」

とあるのを、

「ボンネット(5)を有する自動車(1)に搭載されるエアバッグ装置(7)において、
当該エアバッグ装置(7)は、歩行者(9)との衝突予測及び実際の衝突を検出し、クラッシュ信号を出力するセンサ(8)と;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、膨張ガスを供給するガス源(11)と;
前記ガス源(11)から供給されるガスによって膨張・展開するエアバッグと;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させるリフター(22)と;を備え、
前記エアバッグ(21)は、前記ボンネット(5)の後方部分の裏面に固定され、
前記クラッシュ信号が出力されたと時に、前記リフターが前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させ、これによって、前記エアバッグ(21)を前記ボンネット(5)と共に上昇させ、前記エアバッグ(21)が膨張・展開することによって自動車(1)のウィンドスクリーン(2)の少なくとも一部をカバーするように構成され、
前記リフター(22)によって前記ボンネット(5)の後方部分が上昇し始めた後の所定の時間が経過した時にのみ、前記エアバッグ(21)が膨張するように構成されたタイマー(23)を備えた制御ユニット(10)を更に含むことを特徴とするエアバッグ装置(7)。」

と補正するものである。

本件補正は、補正前の請求項1に記載した、「歩行者(9)との衝突予測及び/又は実際の衝突を検出し」との事項を、「歩行者(9)との衝突予測及び実際の衝突を検出し」と限定するとともに、「前記クラッシュ信号が出力された時に、前記リフターが前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させ」との事項について、「これによって、前記エアバッグ(21)を前記ボンネット(5)と共に上昇させ」との限定を付加するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の段落【0027】?【0029】、第4図の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2 本願補正発明
本件補正後の請求項1には、「前記クラッシュ信号が出力されたと時に」との記載があるが、これは「前記クラッシュ信号が出力された時に」の誤記であることが明らかであるから、本願補正発明は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。

「ボンネット(5)を有する自動車(1)に搭載されるエアバッグ装置(7)において、
当該エアバッグ装置(7)は、歩行者(9)との衝突予測及び実際の衝突を検出し、クラッシュ信号を出力するセンサ(8)と;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、膨張ガスを供給するガス源(11)と;
前記ガス源(11)から供給されるガスによって膨張・展開するエアバッグと;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させるリフター(22)と;を備え、
前記エアバッグ(21)は、前記ボンネット(5)の後方部分の裏面に固定され、
前記クラッシュ信号が出力された時に、前記リフターが前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させ、これによって、前記エアバッグ(21)を前記ボンネット(5)と共に上昇させ、前記エアバッグ(21)が膨張・展開することによって自動車(1)のウィンドスクリーン(2)の少なくとも一部をカバーするように構成され、
前記リフター(22)によって前記ボンネット(5)の後方部分が上昇し始めた後の所定の時間が経過した時にのみ、前記エアバッグ(21)が膨張するように構成されたタイマー(23)を備えた制御ユニット(10)を更に含むことを特徴とするエアバッグ装置(7)。」

2-3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2004-168111号公報(以下、「刊行物1」という。)及び特開2002-36986号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の各事項が記載されている。

(1)刊行物1について
刊行物1には、「歩行者保護装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(刊1-1)「【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、上方に移動したフードパネルの後端面付近との干渉を抑えて、的確に歩行者を保護することが可能な歩行者保護装置を提供することを目的とする。」

(刊1-2)「【0014】
実施形態の歩行者保護装置PM1は、図1?4に示すように、車両Vのフードパネル3と、フードパネル3の後端3aの下方に配設されるエアバッグ装置AS1と、を備える構成である。そして、エアバッグ装置AS1は、エアバッグ64、エアバッグ64に膨張用ガスを供給するインフレーター57、折り畳まれたエアバッグ64とインフレーター57とを収納するケース42、及び、折り畳まれたエアバッグ64を覆うエアバッグカバー48、を備える構成である。
【0015】
実施形態の場合、エアバッグ装置AS1は、フードパネル3の後端3aの下方となるカウル22の車両前方側となる位置に、配設されている。(後略)
【0016】
車両Vには、フロントバンパ16に、歩行者との衝突を検知又は予知可能なセンサ17が配設されている。そして、実施形態の歩行者保護装置PM1では、図示しないエアバッグ作動回路が、歩行者との衝突を検知又は予知した信号をセンサ17から入力させた際に、フードパネル3の後端3aを持ち上げるように上方へ移動させ、また、インフレーター57を作動させて、エアバッグ64を展開膨張させるように、構成されている。」

(刊1-3)「【0018】
(前略)フードパネル3は、図2に示すように、後端3a側における左右両縁付近付近に配設されるヒンジ4・4により、車両Vのボディ1側に、後端3a側を固定されている。各ヒンジ4は、図5・6に示すように、フードパネル後端3aにおける下面側の部位3dに配設される軸支部5と、ボディ1側に配設される跳ね上げ部材7と、軸支部5と跳ね上げ部材7とを回動可能に連結する棒状のピン6と、から構成されている。(後略)
【0019】
跳ね上げ部材7は、フードパネル後端3aを持ち上げるように上方へ移動可能とされるもので、図示しないエアバッグ作動回路に作動信号が入力された際に、図示しない電磁ソレノイドや油圧シリンダ等のアクチュエータを利用して、フードパネル後端3aを持ち上げるように、上方へ移動させることとなる。(後略)」

(刊1-4)「【0031】
そして、エアバッグ64の膨張部65は、図1・2・7・10に示すように、車両搭載状態での展開膨張完了時の形状を、正面から見て、左右方向に幅広とした略U字形状に形成されている。左右両側に配置される縦膨張部66・66は、エアバッグ64の展開膨張完了時に、左右のフロントピラー部14L・14Rの前面を覆うこととなる。縦膨張部66・66の下端側を連結するように配置される横膨張部67は、エアバッグ64の展開膨張完了時、車両Vの左右方向に略沿って、フロントガラス12の下端前面付近からフードパネル3の後端3aの上面3cまでを、フードパネル3における左右方向の全長にわたって、覆うこととなる。」

(刊1-5)「【0044】
また、実施形態の歩行者保護装置PM1では、エアバッグ装置AS1のケース42が、フードパネル3側にフードパネル3の後端3a付近における下面側に、固定されている構成である。そのため、フードパネル後端3aの移動時に、ケース42に収納されたエアバッグ64も移動することとなる。すなわち、フードパネル3に対して、エアバッグ64の配置位置が、相対的に変化しないことから、膨張を完了させたエアバッグ64により、上昇したフードパネル3の後端面3dを、確実に、覆うことができる。(後略)」

以上の記載によると、刊行物1には、
「車両Vのフードパネル3と、フードパネル3の後端3aの下方に配設されるエアバッグ装置AS1とを備え、
車両Vには、フロントバンパ16に、歩行者との衝突を検知又は予知可能なセンサ17が配設され、
エアバッグ作動回路が、歩行者との衝突を検知又は予知した信号をセンサ17から入力された際に、インフレーター57を作動させてエアバッグ64を展開膨張し、また、跳ね上げ部材7によりフードパネル3の後端3aを持ち上げるように上方へ移動させるように構成され、
エアバッグ装置AS1のケース42が、フードパネル3側にフードパネル3の後端3a付近における下面側に固定され、そのため、フードパネル後端3aの移動時に、ケース42に収納されたエアバッグ64も移動し、
エアバッグ64の膨張部65は、車両搭載状態での展開膨張完了時の形状を、正面から見て、左右方向に幅広とした略U字形状に形成し、左右両側に配置される縦膨張部66・66は、エアバッグ64の展開膨張完了時に、左右のフロントピラー部14L・14Rの前面を覆い、縦膨張部66・66の下端側を連結するように配置される横膨張部67は、エアバッグ64の展開膨張完了時、車両Vの左右方向に略沿って、フロントガラス12の下端前面付近からフードパネル3の後端3aの上面3cまでを、フードパネル3における左右方向の全長にわたって覆う、
歩行者保護装置」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)刊行物2について
刊行物2には、「車両用エアバッグ装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(刊2-1)「【0005】
そこで、本発明はエアバッグモジュールの搭載性を損なうことなくエアバッグをフロントピラーの前面側で基部から上端部に亘る全領域を覆うように膨張展開させることができて、歩行者保護をより良好に行うことができる車両用エアバッグ装置を提供するものである。」

(刊2-2)「【0071】
ステップS3で歩行者との衝突危険性が有り(YES)との判断がなされると、ステップS4でフード跳ね上げ手段11の電磁アクチュエータに作動電流を送り、ステイ部12を瞬時にリフト作動させてエンジンフード1の後端部を所定リフト量跳ね上げる。
【0072】
コントローラー19では、このフード跳ね上げ手段11に作動電流を供給してから、エンジンフード1の後端部が所定リフト量跳ね上げるまでの経過時間を予め設定してあり、所定時間経過後ステップS5でエアバッグモジュール15に作動電流を送り、インフレータ17を発火作動させてガスを発生させ、このガス圧によりエアバッグ18を跳ね上げられたエンジンフード1の後端部とフロントウインドシールド2との間の間隙からフロントウインドシールド2側に向けて膨出させ、該エアバッグ18をフロントピラー3の前面側でその基部から上端部に亘る領域を全体的に覆う形で膨張展開させる。
【0073】
このようにして、エンジンフード1の後端部をフード跳ね上げ手段11によって跳ね上げ、該エンジンフード1の後端部とフロントウインドシールド2との間の間隙を拡大して、この間隙が拡大されるのとほぼ同時にエアバッグモジュール15が作動してエアバッグ18が膨出するため、前記間隙よりエアバッグ18がフロントウインドシールド2側に向けてスムーズに膨出して前述のようにフロントピラー3の前面側を全体的に覆うように膨張展開させることができる。」

以上の記載によると、刊行物2には、
「フード跳ね上げ手段11を備えた車両用エアバッグ装置において、コントローラー19では、フード跳ね上げ手段11に作動電流を供給してからエンジンフード1の後端部が所定リフト量跳ね上げるまでの経過時間を予め設定してあり、所定時間経過後にエアバッグ18を跳ね上げられたエンジンフード1の後端部とフロントウインドシールド2との間隙から膨出させる」技術的事項が記載されている。

2-4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「車両」、「フードパネル」、「インフレーター57」及び「車両保護装置」は、それぞれ本願補正発明の「自動車」、「ボンネット」、「ガス源」及び「エアバッグ装置」に相当し、
引用発明の「歩行者との衝突を検知又は予知」することは、本願補正発明の「歩行者との衝突予測及び実際の衝突を検出」に相当し、その「信号」は、本願補正発明の「クラッシュ信号」に相当し、また、引用発明の「センサ17」は、「歩行者との衝突を検知又は予知した信号」を、エアバッグ作動回路に出力するものであるから、本願補正発明の「センサ(8)」に相当し、
引用発明の「跳ね上げ部材7」は、フードパネル3の後端3aを持ち上げるように上方へ移動させるものであるから、本願補正発明の「リフター(22)」に相当し、また、「エアバッグ作動回路が、歩行者との衝突を検知又は予知した信号をセンサ17から入力された際に、跳ね上げ部材7によりフードパネル3の後端3aを持ち上げるように上方へ移動させるように構成され」ていることから、本願補正発明でいう「クラッシュ信号の発生に基づいて、前記ボンネットの後方部分を上昇させる」ものといえ、
引用発明において、エアバッグ装置AS1のケース42が固定される「フードパネル3側にフードパネル3の後端3a付近における下面側」は、本願補正発明の「ボンネット(5)の後方部分の裏面」に相当し、
引用発明で「エアバッグ64の膨張部65」の「横膨張部67」が覆う、「フロントガラス12の下端前面付近」は、本願補正発明の「ウィンドスクリーン(2)の少なくとも一部」に相当するものである。

したがって、両者は、
「ボンネットを有する自動車に搭載されるエアバッグ装置において、
当該エアバッグ装置は、歩行者との衝突予測及び実際の衝突を検出し、クラッシュ信号を出力するセンサと;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、膨張ガスを供給するガス源と;
前記ガス源から供給されるガスによって膨張・展開するエアバッグと;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、前記ボンネットの後方部分を上昇させるリフターと;を備え、
前記エアバッグは、前記ボンネットの後方部分の裏面に固定され、
前記クラッシュ信号が出力された時に、前記リフターが前記ボンネットの後方部分を上昇させ、これによって、前記エアバッグを前記ボンネットと共に上昇させ、前記エアバッグが膨張・展開することによって自動車のウィンドスクリーンの少なくとも一部をカバーするように構成されたエアバッグ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願補正発明が、「リフターによってボンネットの後方部分が上昇し始めた後の所定の時間が経過した時にのみ、エアバッグが膨張するように構成されたタイマーを備えた制御ユニットを更に含む」との事項を備えるのに対し、引用発明では、そのような事項を備えるとはされていない点。

2-5 判断
上記相違点について検討すると、
刊行物2に記載された上記事項の「コントローラー19」は、本願補正発明の「制御ユニット」に対応し、所定時間が経過したことを判断するために本願補正発明でいう「タイマー」を備えることが明らかであり、また、「所定時間経過後にエアバッグ18を跳ね上げられたエンジンフード1の後端部とフロントウインドシールド2との間隙から膨出させる」ことから、本願補正発明と同様に「リフターによってボンネットの後方部分が上昇し始めた後の所定の時間が経過した時にのみ、エアバッグが膨張するように構成」されているものといえる。
そして、刊行物2では、上記事項により、エンジンフード1の後端部とフロントウインドシールド2との間の間隙よりエアバッグがフロントウインドシールド側に向けてスムーズに膨出すること(段落【0073】)を実現しているものであるが、引用発明においても、スムーズに膨出し得る隙間を形成してからエアバッグを展開すべきことは、当業者にとって自明の技術課題といえるから、引用発明に上記刊行物2に記載された事項を適用して、上記相違点の本願補正発明のようになすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-6 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明
平成26年4月4日の手続補正は、上記のとおり却下された。また、平成25年10月28日の手続補正による補正後の請求項1には、「前記クラッシュ信号が出力されたと時に」との記載があるが、これは「前記クラッシュ信号が出力された時に」の誤記であることが明らかであるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年10月28日の手続補正による補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。

「ボンネット(5)を有する自動車(1)に搭載されるエアバッグ装置(7)において、
当該エアバッグ装置(7)は、歩行者(9)との衝突予測及び/又は実際の衝突を検出し、クラッシュ信号を出力するセンサ(8)と;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、膨張ガスを供給するガス源(11)と;
前記ガス源(11)から供給されるガスによって膨張・展開するエアバッ
グと;
前記クラッシュ信号の発生に基づいて、前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させるリフター(22)と;を備え、
前記エアバッグ(21)は、前記ボンネット(5)の後方部分の裏面に固定され、
前記クラッシュ信号が出力された時に、前記リフターが前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させ、更に、前記エアバッグ(21)が膨張・展開することによって自動車(1)のウィンドスクリーン(2)の少なくとも一部をカバーするように構成され、
前記リフター(22)によって前記ボンネット(5)の後方部分が上昇し始めた後の所定の時間が経過した時にのみ、前記エアバッグ(21)が膨張するように構成されたタイマー(23)を備えた制御ユニット(10)を更に含むことを特徴とするエアバッグ装置(7)。」

4 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び刊行物2、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3 引用刊行物」に記載したとおりである。

5 対比・判断
本願発明は、前記「2-2 本願補正発明」で検討した本願補正発明での「歩行者(9)との衝突予測及び実際の衝突を検出し」との事項を、「歩行者(9)との衝突予測及び/又は実際の衝突を検出し」とするとともに、「前記クラッシュ信号が出力されたと時に、前記リフターが前記ボンネット(5)の後方部分を上昇させ」との事項から、「これによって、前記エアバッグ(21)を前記ボンネット(5)と共に上昇させ」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、さらに限定されたものに相当する本願補正発明が、前記「2-4 対比」及び「2-5 判断」に記載したとおり、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-02 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-22 
出願番号 特願2012-83345(P2012-83345)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
P 1 8・ 575- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 治彦  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 平田 信勝
上尾 敬彦
発明の名称 エアバッグ装置  
代理人 飯塚 雄二  
代理人 飯塚 雄二  

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