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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1301049
審判番号 無効2013-800112  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-06-21 
確定日 2015-05-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第5148552号発明「繊維ベール及び弾性繊維の包装方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件における主な手続の経緯を整理して示す。

平成16年 2月11日 原出願(特願2006-503492、
優先権主張2003年2月14日、米国、
優先権主張2003年9月26日、米国)
平成21年 4月27日 本件出願(特願2009-108335)
平成24年12月 7日 設定登録(特許第5148552号)
平成25年 6月21日付け 審判請求書
平成25年11月12日付け 審判事件答弁書
平成25年11月22日付け 審理事項通知書
平成25年12月27日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成26年 1月 7日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成26年 1月10日付け 審理事項通知書
平成26年 1月21日差出 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
平成26年 1月21日差出 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
平成26年 1月21日付け 上申書(請求人)
平成26年 1月21日 口頭審理


第2 請求人の主張の概要
1 請求人は、「特許第5148552号の請求項1?14に係る発明の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1?15号証を提出している。

甲第1号証 :特開2001-206322号公報
甲第2号証 :特開2001-173818号公報
甲第3号証 :特開昭53-87890号公報
甲第4号証 :英国特許第1156860号明細書
甲第4号証の2 :英国特許第1156860号明細書全文和訳
甲第5号証 :特願2003-586035
(特表2005-528096号)
甲第6号証 :特開平5-124656号公報
甲第7号証 :登録実用新案第3003479号公報
甲第8号証 :特開平6-92331号公報
甲第9号証 :英国特許第398144号明細書
甲第10号証 :独国実用新案第29615598号明細書
甲第11号証 :特開平3-124518号公報
甲第12号証 :特開2001-287714号公報
甲第13号証 :小学館ランダムハウス英和大辞典「bale」の項目
甲第14号証 :WEBSTER'S NEW INTERNATIONAL DICTIONARY
「panel」の項目
甲第15号証 :Wikipedia「直方体」の項目を
2013年12月25日に請求人が印刷したもの

甲第1?15号証の成立につき、当事者間に争いはない。
請求人は、以下の無効理由1?3を主張している。

無効理由1:本件特許は、甲第1号証に記載されている発明と、甲第2号証及び甲第3号証に例示される周知、慣用技術に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

無効理由2:本件特許は、甲第4号証に基づき甲第2号証、甲第3号証に例示される周知または慣用技術に基づき、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、無効とすべきものである。

無効理由3:本件特許は、甲第5号証に記載された発明に甲第2号証、甲第6号証、甲第7号証に例示される慣用技術を付加転用したものに過ぎず、かつ新たな効果を奏するものでもないので、先願である甲第5号証と実質的に同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、無効とすべきものである。

なお、審判請求時には「無効理由4」も主張していたが、取下げられた。(請求人の口頭審理陳述要領書34頁)
請求人が主張する無効理由は、請求項1について、次のとおり整理することができる。(請求人の平成26年1月21日差出口頭審理陳述要領書(2)3頁)

無効理由1:甲第1号証に甲第2号証を適用して容易
無効理由2:甲第4号証に甲第2号証を適用して容易
無効理由3:甲第5号証に甲第2,6,7号証の慣用技術を用いて実質同一


第3 被請求人の主張の概要
1 被請求人は、本審決の結論と同旨の審決を求め、証拠方法として以下の乙第1?5号証を提出している。
乙第1号証:JIS工業技術用語大辞典第5版 財団法人日本規格協会
1212頁、1576頁、1105頁、1940頁、
2085頁 2001年3月30日
乙第2号証:三訂版繊維 東京電機大学出版局
1995年11月20日
乙第3号証:JIS工業技術用語大辞典第5版 財団法人日本規格協会
1810頁、1795頁、478頁、1799頁、
1339頁、1396頁、485頁 2001年3月30日
乙第4号証:新英和大辞典第六版 研究社 2002年3月
乙第5号証:英辞郎 on the Web:アルクhttp://eow.alc.co.jp/
search?q=bulk+fiber を
2014年1月17日に被請求人が印刷したもの

乙第1?5号証の成立につき、当事者間に争いはない。


第4 本件特許発明
本件特許の請求項1?14に係る発明(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明14」という。)は、以下のとおりである。

【請求項1】
繊維を圧縮する工程と、
圧縮された前記繊維のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成する工程であって、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含み、当該パッケージの少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む、パッケージを形成する工程と、
前記パッケージをシールする工程と、
前記真空チェック弁を通して前記パッケージを排気して周囲環境圧力よりも低い内圧を達成させる工程と、
そしてその後、圧縮を解放する工程と、
を含む方法によって製造された、繊維ベール。
【請求項2】
前記繊維がセルロースアセテート繊維である請求項1に記載の繊維ベール。
【請求項3】
前記頂壁、前記底壁及び前記側壁がポリマーフィルムから構成される請求項1又は2に記載の繊維ベール。
【請求項4】
前記頂壁、前記底壁及び前記側壁が金属箔を含む請求項1に記載の繊維ベール。
【請求項5】
前記エバキュエータがバルブ、ポート、チューブ又はホースから選ばれる請求項1?4のいずれか1項に記載の繊維ベール。
【請求項6】
内圧が40,000Pa?92,000Paである請求項1?5のいずれか1項に記載の繊維ベール。
【請求項7】
生成ベールが幅80cm?120cm、長さ100cm?150cm及び高さ105cm?155cmである請求項1?6のいずれか1項に記載の繊維ベール。
【請求項8】
生成ベールの内容積が0.9m^(3)?2.3m^(3)である請求項1?7のいずれか1項に記載の繊維ベール。
【請求項9】
前記頂壁の縁と当該頂壁の中心点との高さの差が3cmより小さい請求項1?8のいずれか1項に記載の繊維ベール。
【請求項10】
生成ベールの密度が0.48?0.82g/cm^(3)である請求項1?9のいずれか1項に記載の繊維ベール。
【請求項11】
前記頂壁、前記底壁及び前記側壁がシール層を含む積層体包装材料から構成されている請求項1?10のいずれか1項に記載の繊維ベール。
【請求項12】
前記シール層が熱シール性ポリマーを含む請求項11に記載の繊維ベール。
【請求項13】
実質的に直方体形状の前記パッケージが底部片及び頂部片をそれらの縁部で接合させて前記頂壁、前記底壁及び前記複数の側壁を形成する請求項1?12のいずれか1項に記載の繊維ベール。
【請求項14】
前記エバキュエータが前記パッケージの内部から外部への一方向流を流すチェック弁を含む請求項1?13のいずれか1項に記載の繊維ベール。


第5 甲各号証の記載事項
1 甲第1号証
(1)甲第1号証には、発泡体製品の圧縮包装方法に関して、図面とともに、以下の記載がある。
「【請求項1】台座上に置かれ、その上下がフィルム状物により挟まれてなる発泡体製品を押圧部材により押圧圧縮させ、発泡体製品が所定状態まで押圧圧縮された状態で、前記上下のフィルム状物を固着して、圧縮された発泡体製品を前記フィルム状物により密封することを特徴とする発泡体製品の圧縮包装方法。」
「【請求項3】請求項1または2記載の発泡体製品の圧縮包装方法において、上下のフィルム状物が各々気密性に優れたフィルムからなり、該上下のフィルムの固着が圧縮された発泡体製品の周囲の一部を残して行われ、この固着されない部分から包装体内部の空気を吸引除去した後未固着部を固着して密封することを特徴とする発泡体製品の圧縮包装方法。」
「【0002】
【従来の技術】従来、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ゴムスポンジ、発泡セルロースなど連通状の気泡を有する発泡体は、種々の製品に利用されている。たとえば、このような発泡体からなる製品としては、小さいものではスポンジクリーナ、比較的大きな、あるいは大きな製品としては、椅子や床に座る際に座布団代わりに敷くマット、背当て用のマット、寝具、カーペットなどの床に敷くマット、体操用マット、飛び箱、レジャーマット、壁などに用いられる防音材、マネキン、ぬいぐる、人、動物、怪獣などを模した発泡体(人形)、キャラクターの付された発泡体製品、大型のさいころ、サッカーボールをはじめとする種々の遊具、遊戯具および玩具、水耕栽培用のベッド、止水材、建材、パッキン材、包装材料、包装用詰め物など数限りのない製品があげられる。」
上記甲第1号証の段落【0002】には「大型のさいころ」が挙げられ、【図1】(b)には圧縮包装体の縦断面図が、【図3】には圧縮包装体の一例の平面図が示されていることから、「圧縮包装された発泡体製品」として直方体形のパッケージが形成され、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含むことが見て取れる。
(2)以上を踏まえると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲第1号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「台座上に置かれ、その上下がフィルム状物により挟まれてなる発泡体製品を押圧部材により押圧圧縮させ、発泡体製品のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成し、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含み、圧縮された発泡体製品の周囲の一部を残して前記上下のフィルム状物を固着し、この固着されない部分からパッケージ内部の空気を吸引除去した後密封し、製造された圧縮包装された発泡体製品。」

2 甲第2号証
(1)甲第2号証には、クッション、布団、毛布等の圧縮収納用包装袋に関して、以下の記載がある。
「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、例えば、クッション、布団、毛布等、出し入れの要求される圧縮収納物の収納保管、移動(引越し、屋外レジャー等)に利用する圧縮収納用包装袋或いは内部に緩衝部材を密封した緩衝用具に主として使用する逆止弁とこれを使用した圧縮収納用包装袋及び緩衝用具に関する。」
「【0021】即ち、第二発明に係る圧縮収納用包装袋(P)は、クッション、布団、毛布等、出し入れが要求される圧縮収納対象物の収納保管、移動(引越し、屋外レジャー等)に利用するものであって、前記圧縮収納対象物を、包装用袋体(6)の出し入れ口(60)から収納して、ある程度内部空気を出した後(圧縮した後)、出し入れ口(60)を完全密閉する。
【0022】次に逆止弁(V)の押圧操作体(32)に押圧操作力を付与しつつ、包装用袋体(6)全体に圧縮力を懸けると、押圧操作体(32)による操作で通気状態にある逆止弁(V)から内部空気が外部に排出されるようになる。収納物が所定の体積に圧縮された状態において、押圧操作体(32)に加えていた操作力を解除すると、押圧操作体(32)に具備させた真空圧と外気圧との同方向作用に勝るバネ特性によって、外気圧による力と真空圧による吸引力とが弁体(3)に作用しても、外気が内部に進入することを完全に防止されて、圧縮収納用包装袋(P)内の真空度に変化を与えず、したがって長期にわたって収容対象物を圧縮状態で嵩張ることなく収納保管することができるのである。」

3 甲第3号証
(1)甲第3号証には、圧縮された繊維、糸又は繊維ケーブルのための包装に関する発明が、記載されている。

4 甲第4号証
(1)甲第4号証には、弾性繊維又は発泡材料、例えばガラス繊維のパネルをパッケージングする方法に関して、図面とともに、以下の記載がある。
(『』内は、和訳である甲第4号証の2の対応部分である。)
「This invention relates to porous panels of elastic fibrous or cellular material, particularly to panels of mineral fibre, for example a glass fibre, held together by a binder.
Such panels are particularly used as thermal and/or acoustical insulation and have a loose structure, the fibres occupying a small part of their volume. Thus the volume of the fibres may be of the order of 3% of the total volume of the panel. As a result, such panels are of low density, and are cumbersome. This constitutes a serious drawback for their transport, which greatly increases their price at the place of use, and also for their storage, which requires considerable covered areas. 」[1頁9?25行]
(『本発明は、弾性繊維又は発泡材料の多孔質パネルに関し、特に、バインダによって結合される鉱物繊維、例えばガラス繊維のパネルに関する。
このようなパネルは、特に断熱材及び/又は防音材として用いられ、その体積のうち繊維が占める部分が小さい緩い構造を有する。したがって、繊維の体積は、パネルの総体積の約3%であり得る。その結果、このようなパネルは、低密度であり且つ扱い難い。これは、パネルの輸送に関しては使用場所でその価格を大幅に上昇させる重大な欠点となり、その保管に関してもかなりの被覆領域を必要とする重大な欠点となる。』[1頁7?14行])
「The process according to the invention comprises; - placing a porous panel or a stack of porous panels in a flexible envelope or constituent parts of an envelope, while leaving communication between the interior of the latter and atmosphere free; exerting compression perpendicular to the main faces of the panel or stack, so as to reduce the thickness thereof, which pressure is less than the elastic deformation limit of the product; and hermetically sealing the envelope while under compression.」[1頁52?63行]
(『本発明による方法は、可撓性エンベロプ又はエンべロプの構成部品に、その内部と大気とを自由に連通させたまま、多孔質パネル又は多孔質パネルのスタックを入れること、パネル又はスタックの厚さを減らすように、製品の弾性変形限界未満の圧力でパネル又はスタックの主面に対して垂直に圧縮を加えること、及び圧縮したままエンベロプを気密シールすること、を含む。』[1頁27行?2頁3行])
「Under these conditions, it is possible to reduce considerably the volume of a panel or stack of panels while making it possible for it or them to return sensibly to the original state when removed from the envelope.
It has been found that after the pressure exerted on the large faces of the panel or stack is released, the product swells again, because of its elasticity, inside the sealed envelope, so that the pressure inside the envelope becomes lower than atmospheric pressure. This swelling continues until there is equilibrium between, on the one hand, the sum of the elastic pressures directed towards the swelling of the product and the air pressure or gas pressure contained in the envelope which is below atmospheric pressure, and, on the other hand, the external pressure on the envelope, i.e. atmospheric pressure. Once this equilibrium has been reached, what may be termed the stable state of the panel or stack is obtained.
According to an optional feature of the invention, the volume of the envelope is greater than the volume which is capable of taking the panel or stack in its stable state, so that, under atmospheric pressure, the faces of the panel or stack remain flat.」[1頁64行?2頁13行]
(『これらの条件下では、パネル又はパネルのスタックがエンベロプから取り出されたときに元の状態まで相当戻ることを可能にしつつ、上記パネル又はパネルのスタックの体積を大幅に減らすことが可能である。
パネル又はスタックの広い面に加わっている圧力が解放された後に、製品がその弾性に起因してシールされたエンベロプ内で再び膨張するため、エンベロプ内の圧力が大気圧よりも低くなることが分かっている。この膨張は、一方では製品の膨張へと向けられる弾性圧力及びエンベロプ内に含まれている大気圧未満の空気圧又はガス圧の和と、他方ではエンベロプに対する外圧すなわち大気圧とが平衡になるまで続く。この平衡に達すれば、パネル又はスタックの安定状態と呼ばれ得るものが得られる。
本発明の任意の特徴によれば、エンベロプの体積は、パネル又はスタックをその安定状態で収容することができる体積よりも大きいため、大気圧下でパネル又はスタックの各面が平坦なままとなる。』[2頁4?16行])
また、FIG.1?5によれば、圧縮された多孔質パネルのまわりに実質的に直方体形のパッケージが形成され、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含む、パッケージが形成されることが見て取れる。
(2)以上を踏まえると、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲第4号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「可撓性エンベロプ又はエンべロプの構成部品にパネル又はスタックを入れること、
圧縮された前記パネル又はスタックのまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成し、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含む、パッケージを形成すること、
パネル又はスタックの主面に対して垂直に圧縮を加えること、
圧縮したままエンベロプを気密シールすること、
パネル又はスタックの広い面に加わっている圧力が解放された後に、エンベロプ内の圧力が大気圧よりも低くなること、を含む方法により製造された、
ガラス繊維等のパネルを圧縮したまま気密シールしたパッケージ」

5 甲第5号証
(1)甲第5号証には、高圧縮フィルタートウベールに関して、図面とともに、以下の記載がある。
「【0006】
本発明の課題は、ベールの移動を妨害するような膨張部分、ならびにトウベールの頂部と底部におけるフィルタートウの繰り出しを妨害するくびれ部分の無い、理想的なブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールを提供することであり、この場合、梱包したフィルタートウにかかる負荷が低減されることで、特に、内圧の影響下におけるパッケージの破裂開封をほぼ完全に回避することができる。本発明のさらなる課題は、これに関連した梱包プロセスを提供することである。」
「【0011】
予備的かつ表面的な分析をすれば、本発明にかかるベールは真空パックされたベール、したがって、全ての消費者が毎日経験から知っている真空パッケージであると思われるかもしれない。しかし、これはそうではない。本発明にかかるブロック形態のベールで達成する目標は、明確な形態を作成することである。気密梱包の課題は、製造工程中にベールの頂部と底部に生じる圧力勾配を吸収および等化することである。」
「【0016】
本発明にかかるフィルタートウベールを梱包するプロセスは、
(a)フィルタートウを圧縮形態にするステップと;
(b)圧縮されたフィルタートウをパッケージ包装材で包装するステップと;
(c)パッケージ包装材を気密にシールするステップと;
(d)包装されたベールにかかる負荷を解放するステップとを備えている。
気密シールされたベールに対する負荷が解放されると、パッケージ包装材内に負圧が発生する。この負圧は少なくとも0.01barであることが好ましく、特に有利な方法では0.15?0.7barの範囲内である。」
「【0021】
主に本発明にかかる工程で必要な負圧は、様々な方法で発生させることができる。特に単純な実施形態によれば、負圧は、圧縮したフィルタートウ材料を膨張させることで発生される。圧縮状態にあるフィルタートウをパッケージ包装材で包装し、これを気密シールした後に、梱包した材料に付加されている外圧を解放する。その結果、パッケージ内部で、材料が、自己の弾性復元力の作用下で膨張する。パッケージの容量が増加することで、包装材で包囲された範囲内において負圧が発生する。・・・
【0022】
前述した応用形の代替または追加として用いることができる別の実施形態によれば、包装材で取り囲まれた内部領域からの排気によって負圧が発生される。・・・
【0023】
排気は、例えば1つまたはそれ以上の真空ポンプの手段によって行うことができる。これらの真空ポンプは、まず、その吸気側にて、真空ポンプとの接続時を除いて気密である気密パッケージの内部と接続され、その後動作される。所望の負圧に到達した後、ポンプがパッケージから接続解除され、梱包材料に設けた排気接続部位が再び気密シールされる。」
「【0044】
圧縮可能で、可撓性を有し、繊維性の材料1から成るベール、この場合はフィルタートウが、図1aに示すように、フィルム2で包装され、プレス装置3内に導入されている。例えば約300?400トンの圧力をかけることができるプレス装置3内において、ベールが所望の梱包高さに圧縮される。その後、フィルム2が、滑動羽根回転ポンプ等の真空ポンプ4の吸引穴との接続ポイントとして機能する小さい範囲を残して気密シールされる。次に、フィルム2で包装されたこの範囲の内部が、真空ポンプ4によって所望の負圧になるまで真空状態にされる。この所望の負圧に達すると、真空ポンプのホースがフィルムから外され、接続ポイントが気密シールされる。」
(2)上記記載によれば、甲第5号証には、以下の発明(以下、「甲第5号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「フィルタートウを圧縮形態にするステップと;
圧縮されたフィルタートウをパッケージ包装材でブロック形態に包装するステップと;
パッケージ包装材を接続ポイントとして機能する小さい範囲を残して気密シールするステップと;
前記接続ポイントと接続された真空ポンプによって気密パッケージの内部の排気が行われ、所望の負圧に到達した後、前記接続ポイントが気密シールされるステップと;
包装されたフィルタートウのベールにかかる負荷を解放するステップと;
を含むプロセスによって提供された、フィルタートウのベール」
なお、請求人が甲第5号証の写しとして提出した特表2005-528096号公報の14?17頁には【手続補正書】の内容が記載されているが、【手続補正書】は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面のいずれでもないから、特許法第29条の2についての無効理由の証拠としては、取り調べの対象とはならない。

6 甲第6号証
(1)甲第6号証には、脱気又は給気包装袋とその弁構造体及び復元防止体に関して、図面とともに、以下の記載がある。
「【0010】前記構造の弁を採用することにより、脱気包装の場合、脱気口に掃除機等の吸引装置を当てて外部より吸引を開始すると、弁体は吸引力によって吸い上げられ、弁孔を開放するとともに、その上面は壁フイルム側に接触するが、弁体の上面と脱気口は通気可能に保たれるので、吸引が可能である。即ち、それにより、本発明の弁構造体は一方向のみの通気が可能な逆止弁としての機能を有している。」

7 甲第7号証
(1)甲第7号証には、被服、その他の可圧縮物の圧縮密封袋に関して、図面とともに、以下の記載がある。
「【請求項1】 開口部に密閉用ファスナーを一体的に形設したプラスチックフィルム製の密封袋本体と、この袋本体の開口部以外の辺縁において、袋本体内に基端側を挿入すると共に、先端側を外部に突出させて接着装設した袋本体内の空気放出用のプラスチックフィルム製の扁平管から成る少なくとも一つの逆止弁とから構成されており、該逆止弁の少なくとも挿入端部の両外面を袋本体の両内面に夫々接着して構成した被服、その他の可圧縮物の圧縮密封袋において、上記密閉用ファスナーを複数条並設すると共に、上記逆止弁の装設辺縁に該逆止弁の先端突出部を包被するプラスチックフィルム製の包被用袋体を連設し、該包被用袋体に空気の放出口を設けたことを特徴とする被服、その他の可圧縮物の圧縮密封袋。」


第6 当審の判断
1 無効理由1について
(1)本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比する。
甲第1号証発明の「発泡体製品を押圧部材により押圧圧縮させ」は、本件特許発明1の「繊維を圧縮する」と被包装物を圧縮する限りにおいて一致する。甲第1号証発明の「発泡体製品のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成し、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含み」と、本件特許発明1の「圧縮された前記繊維のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成する」及び「当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含み」とは、圧縮された前記被包装物のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成し、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含むパッケージを形成する限りにおいて一致する。
また、甲第1号証発明の「圧縮された発泡体製品の周囲の一部を残して前記上下のフィルム状物を固着し」は本件特許発明1の「前記パッケージをシールする工程」を備えているということができ、「この固着されない部分からパッケージ内部の空気を吸引除去した後密封し」は「前記パッケージを排気して周囲環境圧力よりも低い内圧を達成させる」に相当する。さらに、甲第1号証発明においては、包装後に圧縮が解放されることが技術常識に鑑みて明らかであるから、甲第1号証発明は、本件特許発明1の「その後、圧縮を解放する工程」を備えているということができ、甲第1号証発明の「圧縮包装された発泡体製品」は、本件特許発明1の「繊維ベール」と、圧縮包装体である限りにおいて一致する。したがって、両発明は、以下の点で一致していると認められる。
「被包装物を圧縮する工程と、
圧縮された前記被包装物のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成する工程であって、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含む、パッケージを形成する工程と、
前記パッケージをシールする工程と、
前記パッケージを排気して周囲環境圧力よりも低い内圧を達成させる工程と、
そしてその後、圧縮を解放する工程と、
を含む方法によって製造された、圧縮包装体。」
そして、以下の点で、相違しているものと認められる。
[相違点1]
本件特許発明1では、「繊維」を圧縮しパッケージを形成した「繊維ベール」であるのに対し、甲第1号証発明では、「発泡体製品」を圧縮包装して製造した「圧縮包装された発泡体製品」である点。
[相違点2]
本件特許発明1では、「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」パッケージを、「前記真空チェック弁を通して」排気するのに対し、甲第1号証発明では、そのようなものではない点。
(2)[相違点1]について検討する。
被包装物について、本件特許請求の範囲の請求項1には、「繊維を圧縮する工程と、・・・・を含む方法によって製造された、繊維ベール。」と規定されており、被包装物が「繊維」であることは、「繊維ベール」に係る本件特許発明1が前提とする基本的な構成要件である。
一方、甲第1号証に「連通状の気泡を有する発泡体」(甲第1号証段落【0002】)と記載されるように、「発泡体」の有する「気泡」は体積を備えた空間の存在を前提とする概念であるから、甲第1号証発明の「発泡体」は一定の形状と体積を有し、圧縮の程度をある程度以上は大きくできないのに対し、本件特許発明1の「繊維」にはそもそも形状の概念がなく、梱包を開封する際には任意の方向に任意に膨張し、その後、開繊、カーディング等を施すものであるから、圧縮の程度を相当大きくするものである。
このように、被包装物の形状や物性が異なることによって、圧縮の程度や状態が相違するから、被包装物を、甲第1号証発明の「発泡体製品」から甲第1号証に開示のない「繊維」に置換えることが、当業者にとって適宜選択できる事項であったとはいえない。
したがって、上記[相違点1]に係る構成が、当業者にとって容易に想到し得たものとはいえない。
(請求人の主張について)
ア 請求人は、甲第1号証の「発泡体」には、「繊維状材料」「繊維から製造された材料」を含むのに対し、「本発明」は、本件特許明細書の記載(段落【0015】)からみて「繊維状材料」「繊維から製造された材料」「バルク商品」を含むと解され、本件特許発明1?14は、「繊維から製造された材料」を被包装物とする梱包体(ベール)を包含しているから、両者に実質的に相違はない旨、及び、仮に、相違点であるとしても容易想到である旨を主張している。(請求人の口頭審理陳述要領書の3頁8行?4頁22行、請求人の口頭審理陳述要領書(2)3頁6行?4頁29行)
イ そこで、本件特許明細書の記載が意味するところを検討するため、本件出願の手続経緯を参酌する。
本件特許明細書の段落【0001】の記載は、本件特許の原出願である特願2006-503492の出願当初の明細書の段落【0001】の記載において、「・・・・包装方法及び装置を提供する。」となっていた箇所が、「包装方法を提供する。」になっている以外は、同一である。また、本件特許明細書の段落【0002】?【0040】【0042】?【0197】の記載は、原出願明細書の段落【0002】?【0196】の記載と同一である。
一方、原出願の出願当初の特許請求の範囲には、請求項1?51が記載されており、その請求項1?10は「その内部容積がバルク材料を含むベール」、請求項11?32は「その内部容積が繊維を含むパッケージ」、請求項33は「その内部容積が繊維状材料を含むパッケージ」、請求項34は「繊維状材料がバルク商品を含む請求項33に記載のパッケージ」、請求項35?39は「包装すべきバルク材料・・・を有する、シール可能なチャンバーを含んで構成される包装システム」、請求項40?43は「繊維の包装方法」、請求項44?47は「弾性繊維の包装方法」。請求項48?51は「繊維の包装装置」であった。すなわち、原出願の出願当初の特許請求の範囲には、被包装物が「繊維」である発明のほかに、被包装物が「バルク材料」や「バルク商品」である発明が記載されていた。
原出願の出願当初の特許請求の範囲と明細書の記載とを対比すると、原出願の明細書の段落【0015】の「本発明は、バルク商品を含む」、段落【0016】の「本発明の態様は」「バルク材料」「のための利点を提供する」、段落【0017】の「本発明の一つの面は、バルク材料のベールを含む」、段落【0018】の「本発明は、バルク材料を含む内部容積を有するパッケージ」という記載は、出願当初の請求項1?10、34?39に記載された発明に対する説明と解するべきである。これら「本発明は、バルク商品を含む」や「本発明の一つの面は、バルク材料のベールを含む」という記載を、「バルク材料」の下位概念である「繊維」又は「弾性繊維」を被包装物とする請求項11?32、40?51に記載された発明について、「繊維」又は「弾性繊維」以外の「繊維状材料」等を意味する記載と解することは合理的でない。
原出願は、その後、平成17年10月17日付けで17項に補正され、平成19年2月7日付けで特許請求の範囲全体が補正されて請求項1?54になり、その請求項1?4は「繊維の包装方法」、請求項5?8は「弾性繊維の包装方法」、請求項9?45は「繊維を圧縮し・・・・によって製造された繊維ベール」、請求項46?54は「バルク材料を含む・・・・繊維ベール」となった。そして、単一性違反を含む拒絶理由通知を受けて、これら請求項のうち、請求項9?11、16、18?20、22、24、26、31、34及び42?45並びに6及び7が、平成21年4月27日付けで分割出願されて本件出願となったものである(本件出願に係る平成21年4月27日付け上申書参照。)したがって、本件出願(分割出願)をしたときの特許請求の範囲に記載された発明は、「繊維」又は「弾性繊維」を被包装物とする発明のみであり、原出願の出願当初の特許請求の範囲に記載されていた被包装物が「バルク材料」や「バルク商品」である発明は含まれていないと解するべきである。
本件出願は、その後、審査過程において特許請求の範囲全体が2回補正された後、特許査定がされたが、その間、特許請求の範囲に被包装物が「バルク材料」や「バルク商品」である発明が記載されることはなかった。
ウ 上記本件出願の手続経緯を参酌すれば、本件特許明細書段落【0015】の「本発明は、バルク商品を含む」等の記載は、原出願の出願当初の請求項1?10等について述べたものであって、本件特許発明1?14の定義でないことが明らかであり、本件特許明細書の段落【0016】に「バルク材料、特に繊維及び繊維状製品」と記載されているうちの、特に「繊維」に適合させたものが本件特許発明1?14である、と解するべきである。
本件特許発明1?14は、「繊維から製造された材料」を被包装物とする梱包体(ベール)を包含しているから、相違点1は実質的な相違点ではないとする旨の請求人の主張は採用できない。
エ 請求人は、本件特許と甲第1号証発明は、弾性を有するバルク材料について、圧縮して真空梱包することにより、その嵩を小さくして輸送や貯蔵の利便に資する、という点で共通であり、甲第1号証発明を、弾性を有するバルク材料という点で同じ種類に属するある特定の材料に適用することは、当業者が適宜選択できることにすぎず、その点に進歩性はない旨(請求人の口頭審理陳述要領書20頁7?15行、請求人の口頭審理陳述要領書(2)4頁14?17行)も主張している。
しかしながら、甲第1号証には、被包装物を「繊維」に置き換える可能性について、何ら示唆されていないし、上記のように、繊維と発泡体では形状や物性が異なることによって、圧縮の程度や状態が相違するから、請求人による上記主張は採用することができない。
(3)[相違点2]について検討する。
JIS技術用語辞典によれば、「チェック弁」は「逆止め弁」と同義であり(乙第3号証「チェック弁」の欄)、「逆止め弁」とは「主に流体の背圧によって弁体が逆流を防止するように作動するバルブの総称」「一方向だけに流体の流れを許し、反対方向には流れを阻止するバルブ」を意味する(乙第3号証「逆止め弁」の欄)から、本件特許発明1の「真空チェック弁」は「一方向だけに流体の流れを許し、反対方向には流れを阻止するバルブ」として機能する「真空逆止弁」(本件特許明細書段落【0082】)であると認められる。また、本件特許明細書の段落【0146】【0147】【0167】及び技術常識に鑑みれば、本件特許発明1の「真空チェック弁」は、「パッケージを排気して周囲環境圧力よりも低い内圧を達成させる工程」を実施して「繊維ベール」を製造した後でも、引き続きパッケージを排気するための通路として機能し得る「一方向だけに流体の流れを許し、反対方向には流れを阻止するバルブ」としての「真空チェック弁」を意味すると解するべきである。
一方、甲第1号証発明におけるパッケージを排気するための通路は上下のフィルム状物を固着した際の「固着されない部分」であり、「パッケージ内部の空気を吸引除去した後密封」されるものである。「繊維ベール」を製造した後でも、引き続き「パッケージを排気するための通路」として機能し得るようにすることは、甲第1号証には記載も示唆もされていない。また、甲第1号証に開示された「パッケージを排気するための通路」は、パッケージの底壁と側壁との合わせ目の部分に設けられる上下のフィルム状物を固着した際の「固着されない部分」であり、「パッケージを排気するための通路」を「壁」に設けるものでもない。
そうすると、甲第2号証に、予め形成された逆止め弁付きの包装袋が開示されているとしても、甲第1号証発明の上下のフィルム状物を固着した際の「固着されない部分」を甲第2号証に示された「逆止め弁」に置換するとか、甲第1号証発明の上下のフィルム状物の「壁」部分に、「固着されない部分」に加えて、甲第2号証に示された「逆止め弁」を付加することの動機付けがあるとは認められない。
しかも、本件特許明細書、並びに技術常識に鑑みれば、本件特許発明1は[相違点2]に係る構成により、搬送時及び保管時においても、繊維ベール内部からの排気を行うことができるものである。
したがって、上記[相違点2]に係る本件特許発明1の構成が、当業者にとって容易に想到し得たものとはいえない。
(請求人の主張について)
請求人は、[相違点2]に関して次の主張をしている。
ア 本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された「逆止弁」という用語をあえて使わずに、発明の詳細な説明に記載されていない「真空チェック弁」という用語を用いているから、本件特許発明1の「真空チェック弁」が「逆止弁」であるとする根拠はない。そして、発明の詳細な説明には「エバキュエータ」としてバルブ、チューブ、ホース、真空逆止弁、真空すり合わせ、シール可能ポート、フィンシールなどを含むことが記載されているから、本件特許発明1の「真空チェック弁」は、「フィンシールやキャップ等も含む広い概念であると理解せざるを得ない」。(請求人の口頭審理陳述要領書10頁7行?12頁14行、請求人の口頭審理陳述要領書(2)5頁14行?8頁末行等)
イ 発明の詳細な説明の記載によれば、「エバキュエータ」は、真空逆止弁、シール可能ポート、ホース、チューブなど、種々の物を意味するから、本件特許発明1の「真空チェック弁を含む複数のエバキュエータ」は、「真空チェック弁」が「複数」であることを意味しない。(請求人の口頭審理陳述要領書12頁15行?14頁20行、25頁28行?26頁11行、請求人の口頭審理陳述要領書(2)7頁18?23行)
ウ 甲第1号証の図1の左右に示されたフィルム5とフィルム4との合わせ目は、フィンシールでシールされるポートであり、この合わせ目は大気圧によって閉じられるから真空をチェックする機能がある。したがって、甲第1号証には、「真空チェック弁を含む複数のエバキュエータ」が開示されている。(請求人の口頭審理陳述要領書16頁17?23行、26頁30行?27頁6行)
エ 甲第1号証段落【0017】に記載の「一部熱シールを行わず、このシールされていない部分から包装体内部の空気を吸引する」場合に、吸引のための真空ポンプや、ホース、「追加のフィルム」に相当するシール材などの複数のエバキュエータが必要であることは自明である。(請求人の口頭審理陳述要領書16頁末行?17頁2行、27頁7?9行等)
オ 真空吸引口を複数にすることは、最適材料の選択・設計変更、単なる寄せ集めに過ぎない。(請求人の口頭審理陳述要領書27頁15行?28頁27行)
(主張アについて)
まず、発明の詳細な説明に記載された用語と、本件特許発明1(請求項1)で使う用語が異なるからといって、必ずしも両者が異なる物を意味することにはならない。また、「エバキュエータ」が種々の物を意味しているから、「真空チェック弁」も「フィンシールやキャップ等も含む広い概念であると理解せざるを得ない」というのは、論理が飛躍しており失当である。そして、上記のとおり、JIS技術用語辞典によれば「チェック弁」は「逆止め弁」と同義であることが技術常識である。請求人の主張アは採用できない。
(主張イについて)
本件特許請求の範囲の請求項1に「真空チェック弁を含む複数のエバキュエータ」という文言が記載されたのは、本件の出願手続における平成24年7月27日付けの手続補正によるものであり、この手続補正により、現在の請求項1の記載に補正され、特許査定された。また、この手続補正と同時に提出された拒絶査定不服審判事件の審判請求書には、補正の根拠として
「独立請求項1において、『その少なくとも一つの壁がエバキュエータを含む』を『当該パッケージの少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む』に補正しました。当該補正の根拠は、補正前の請求項6及び7の記載です。」
と記載されている。
この手続経緯からみて、補正前の請求項1の「エバキュエータ」を、補正前の請求項6の「エバキュエータが真空チェック弁を含む」との事項と、補正前の請求項7の「エバキュエータが複数」との事項の双方によって限定して本件特許発明1にしたものであることが明らかである。したがって、本件特許発明1の「真空チェック弁を含む複数のエバキュエータ」は、被請求人が主張しているように(第1回口頭審理調書の「陳述の要領」被請求人5)、各エバキュエータそれぞれが「真空チェック弁を含む」ものと解されるものである。請求人の主張イは採用できない。
(主張ウについて)
甲第1号証の図1には、上部包装用フィルム5と下部包装用フィルム4との合わせ目が図の左右に示されているが、上下のフィルム状物を固着した際の「固着されない部分」を複数箇所に設けることは、甲第1号証に記載も示唆もされていない。
また、フィンシールに設けた「固着されない部分」を双方向に通気させる構造として用いることは、例えば特開平8-11943号公報にも記載されており、周知の技術的事項であるので、フィンシールであるからといって、必ずしも「真空をチェックする機能がある」とはいえないし、甲第1号証には、上下のフィルム状物を固着した際の「固着されない部分」を「真空をチェックする機能がある」箇所として利用することは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲第1号証に「真空チェック弁を通して前記パッケージを排気」(本件特許発明1)するための「複数のエバキュエータ」が開示されているとはいえない。
さらに、第6 1(3)で上記したとおり本件特許発明1の「真空チェック弁」は、「繊維ベール」を製造した後でも、引き続き、パッケージを排気するための通路として機能し得る「一方向だけに流体の流れを許し、反対方向には流れを阻止するバルブ」としての「真空チェック弁」を意味すると解するべきであり、フィンシールの一部に設けた「固着されない部分」であって「パッケージ内部の空気を吸引除去した後密封」する構成は、これに該当しないと解するべきである。
したがって、甲第1号証に「真空チェック弁を含む」「エバキュエータ」が開示されているということはできない。請求人の主張ウは失当であり、採用できない。
(主張エについて)
請求人の主張エは、1つの排気通路を構成するために用いられる、真空ポンプやホース等の個々の部品が、それぞれ別個の「エバキュエータ」であるとの解釈に基づく主張と認められる。しかし、本件明細書段落【0146】の「或る応用に於いて、例えば排気時間を短縮するために、複数のエバキュエータを使用することができる。」等の記載からみて、本件特許発明1の「エバキュエータ」は、「排気通路」ないしは「一つの排気通路を構成する構造物全体」を意味していると解するべきである。本件明細書の「エバキュエータ」が真空ポンプやホース等である旨の記載は、その「排気通路」を構成する部分として、それらを採用できるという意味であると解することが妥当である。
請求人の主張エは失当であり、採用できない。
(主張オについて)
主張イ、ウの検討で述べたとおり、甲第1号証には、真空吸引口(上下のフィルム状物を固着した際の「固着されない部分」)を複数にすることは記載されていないし、「真空チェック弁」も記載されていない。さらに、上記したとおり、甲第2号証に記載された包装袋の「逆止弁」を甲第1号証発明に適用する動機付けも存在しない。
したがって、仮に、真空吸引口を複数にすること自体が容易想到であったとしても、本件特許発明1の「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」という構成が得られることはない。すなわち、甲第1号証発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、本件特許発明1を容易に発明できることにはならない。
(4)本件特許発明2?14は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するから、少なくとも、前記(1)に示した[相違点1]及び[相違点2]で甲第1号証発明と相違する。
よって、前記(2)(3)に示したのと同様の理由により、本件特許発明2?14は、甲第1号証発明に甲第2、3号証に記載された技術を適用して当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(5)したがって、請求人の主張する無効理由1によっては、本件特許発明1?14についての特許を無効とすることはできない。

2 無効理由2について
(1)本件特許発明1と甲第4号証発明とを対比する。
甲第4号証発明の「パネル又はスタックの主面に対して垂直に圧縮を加える」は、本件特許発明1の「繊維を圧縮する」と、被包装物を圧縮する限りにおいて一致する。甲第4号証発明の「可撓性エンベロプ又はエンべロプの構成部品にパネル又はスタックを入れ」、「圧縮された前記パネル又はスタックのまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成し、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含む、パッケージを形成する」は、本件特許発明1の「圧縮された前記繊維のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成する」及び「当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含み」と、圧縮された前記被包装物のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成し、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含むパッケージを形成する限りにおいて一致する。
また、甲第4号証発明の「圧縮したままエンベロプを気密シールする」は本件特許発明1の「前記パッケージをシールする工程」を備えているということができ、甲第4号証発明の「エンベロプ内の圧力が大気圧よりも低くなる」は、本件特許発明1の「周囲環境圧力よりも低い内圧を達成させる」に相当し、甲第4号証発明の「パネル又はスタックの広い面に加わっている圧力が解放され」は、本件特許発明1の「その後、圧縮を解放する」と圧縮を解放する限りにおいて一致し、甲第4号証発明の「ガラス繊維等のパネルを圧縮したまま気密シールしたパッケージ」は、本件特許発明1の「繊維ベール」と、圧縮包装体である限りにおいて一致する。したがって、両発明は、以下の点で一致していると認められる。
「被包装物を圧縮する工程と、
圧縮された前記被包装物のまわりに実質的に直方体形のパッケージを形成する工程であって、当該パッケージが頂壁、底壁及び複数の側壁を含む、パッケージを形成する工程と、
前記パッケージをシールする工程と、
周囲環境圧力よりも低い内圧を達成させる工程と、
圧縮を解放する工程と、
を含む方法によって製造された、圧縮包装体。」
また、以下の点で、相違しているものと認められる。
[相違点3]
本件特許発明1では、「繊維」を圧縮し圧縮された前記繊維のまわりにパッケージを形成した「繊維ベール」であるのに対し、甲第4号証発明では、「多孔質パネル」を圧縮包装して製造した、「パネルを圧縮したまま気密シールしたパッケージ」である点。
[相違点4]
本件特許発明1では、「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」パッケージを、「前記真空チェック弁を通して前記パッケージを排気」し、「その後」圧縮を開放するのに対し、甲第4号証発明では、そのようなものではない点。
(2)[相違点3]について検討する。
前記第6 1(2)で述べたとおり、本件特許発明1?14は、「繊維状材料」等を含まない「繊維」のみを被包装物とすると解するべきである。
そして、甲第4号証には「パネル又はパネルのスタックがエンベロプから取り出されたときに元の状態まで相当戻ることを可能にしつつ」(甲第4号証の2、2頁4?5行)と記載されているように、多孔質パネルは梱包を開封すると元の状態まで相当復元することが求められ、甲第4号証のFig.6から明らかなように、圧縮率が高くなるほど圧縮を止めたときの即時弾性回復が低下する(甲第4号証の2、5頁9?11行)のに対し、「繊維」にはそもそも形状の概念がなく、梱包を開封する際には任意の方向に任意に膨張し、その後、開繊、カーディング等を施すものであるから、圧縮の程度を相当大きくするものである。(被請求人の口頭審理陳述要領書(2)6頁22?31行)
このように、被包装物の形状や物性が異なることによって、圧縮の程度や状態が相違するから、被包装物を、甲第4号証発明の「多孔質パネル」から甲第4号証に開示のない「繊維」に置換えることが、当業者にとって適宜選択できる事項であったとはいえない。
したがって、上記[相違点3]に係る本件特許発明1の構成が、当業者にとって容易に想到し得たものとはいえない。
(請求人の主張について)
請求人は、[相違点3]に関して、「本発明」は、本件特許明細書の記載からみて「繊維状材料」「繊維から製造された材料」「バルク商品」を含む(上記第6 1(2)(請求人の主張について)の1?8行)、よって、甲第4号証に開示された「ガラス繊維のパネル」は、本件特許発明1でいう「繊維」に該当する(請求人の口頭審理陳述要領書4頁23行?5頁16行、17頁10?33行、口頭審理陳述要領書(2)4頁31行?5頁13行)旨主張している。
しかし、甲第4号証発明が包装する「多孔質パネル」は、製品の弾性変形限界未満の圧力で垂直に圧縮を加えられる主面を有する(甲第4号証の2、2頁1?3行)成形体、すなわち「主面」という一定の形状を有するものであって、原材料として用いた「繊維」の形態ではなく、「加工繊維」にも「バルク繊維材料」にも該当せず、上記第6 1(2)(請求人の主張について)イ、ウで述べたとおり、本件特許発明1でいう「繊維」は、「繊維状材料」「繊維から製造された材料」「バルク商品」を含むとは解されない。請求人の主張は、採用できない。
また、請求人は、本件特許と甲第4号証は、弾性を有するバルク材料について、圧縮して真空梱包することにより、その嵩を小さくして輸送や貯蔵の利便に資する、という点で共通であり、甲第4号証発明を、弾性を有するバルク材料という点で同じ種類に属するある特定の材料に適用することは、当業者が適宜選択できることにすぎず、その点に進歩性はない旨(請求人の口頭審理陳述要領書20頁7?14行、23頁6?10行)の主張を行っている。しかし、上記第6 1(2)(請求人の主張について)エで述べたのと同様の理由で、請求人の主張は採用できない。
(3)[相違点4]は第6 1(1)の[相違点2]を含んでいるから、第6 1(3)に示したのと同様の理由により、当業者にとって容易に想到し得たものとはいえない。
(4)本件特許発明2?14は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するから、少なくとも、前記(1)に示した[相違点3]及び[相違点4]で甲第4号証発明と相違する。
よって、前記(2)(3)に示したのと同様の理由により、本件特許発明2?14は、甲第4号証発明に甲第2、3号証に記載された技術を適用して当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(5)したがって、請求人の主張する無効理由2によっては、本件特許発明1?14についての特許を無効とすることはできない。

3 無効理由3について
(1)本件特許発明1と甲第5号証発明とを対比する。
甲第5号証発明の「ステップ」という用語は、表現が異なるが「工程」と同義であるから、本件特許発明1の「工程」に相当する。甲第5号証発明の「フィルタートウ」は本件特許発明1の「繊維」に相当し、甲第5号証発明の「フィルタートウを圧縮形態にする」は本件特許発明1の「繊維を圧縮する」に相当する。また、甲第5号証発明の「圧縮されたフィルタートウをパッケージ包装材でブロック形態に包装する」は本件特許発明1の「圧縮された前記繊維のまわりにパッケージを形成する」及び「当該パッケージが頂壁、底壁及び」「側壁を含む」に相当し、同様に、甲第5号証発明の「パッケージ包装材を接続ポイントとして機能する小さい範囲を残して気密シールする」は本件特許発明1の「前記パッケージをシールする」に、「前記接続ポイントと接続された真空ポンプによって気密パッケージの内部の排気が行われ、所望の負圧に到達した後、前記接続ポイントが気密シールされる」は「前記パッケージを排気して周囲環境圧力よりも低い内圧を達成させる」に、「包装されたフィルタートウのベールにかかる負荷を解放する」は「その後、圧縮を解放する」にそれぞれ相当するから、両発明は、以下の点で一致していると認められる。
「繊維を圧縮する工程と、
圧縮された前記繊維のまわりにパッケージを形成する工程であって、当該パッケージが頂壁、底壁及び側壁を含む、パッケージを形成する工程と、
前記パッケージをシールする工程と、
前記パッケージを排気して周囲環境圧力よりも低い内圧を達成させる工程と、
そしてその後、圧縮を解放する工程と、
を含む方法によって製造された、繊維ベール。」
また、以下の点で、相違しているものと認められる。
[相違点5]
本件特許発明1は、「実質的に直方体形」であって「複数の」側壁を含み、当該パッケージの「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」パッケージを、「前記真空チェック弁を通して」排気するのに対し、甲第5号証発明は、そのようなものではない点。
(2)[相違点5]について検討する。
請求人が無効理由3の周知又は慣用技術の根拠として挙げた甲第2、6、7号証には、圧縮収納に用いるための袋であって、真空逆止弁を備えている袋が記載されている。
しかし、甲第2号証には、圧縮収納用包装袋Pの可撓性シート面に「逆止弁V」を取り付けたものが記載されている(段落【0010】)が、取り付ける「逆止弁V」は1個のみであり、複数のエバキュエータ(排気通路)を設け、それぞれに「逆止弁V」を取り付けることは、記載も示唆もされていない。したがって、甲第2号証には、「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」ことは記載も示唆もされていない。
さらに指摘すれば、甲第2号証が被包装物として想定しているものは、「例えば、クッション、布団、毛布等」(段落【0001】)であり、「繊維」を被包装物として「繊維ベール」にすることは、記載も示唆もされていない。
甲第6号証には、「綿、羊毛、羽毛等の繊維原料」をも被包装物とする脱気包装袋であり(段落【0002】【0018】)、袋本体の表壁又は裏壁のいずれかに逆止弁としての機能を有する弁構造体74を取り付けたものが記載されている(段落【0006】【0010】【0012】【0018】)。しかし、取り付ける「弁構造体74」は1個のみであり、複数のエバキュエータ(排気通路)を設け、それぞれに「弁構造体74」を取り付けることは、記載も示唆もされていない。したがって、甲第6号証には、「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」ことは記載も示唆もされていない。
甲第7号証には、圧縮密封袋1であって、密封袋本体1の辺縁bにプラスチックフィルム製の扁平管から成る2つの逆止弁3、3を接着装設し、上記逆止弁3、3を接着装設した辺縁bに該逆止弁3、3の先端突出部を包被するプラスチックフィルム製の包被用袋体4を連設した圧縮密封袋1が記載されている(請求項1、段落【0012】【0016】)。しかし、「逆止弁3、3」を接着装設する位置は、密封袋本体1のシート面ではなく「辺縁b」である上、「逆止弁3、3の先端突出部」は、プラスチックフィルム製の包被用袋体4によって包被されている。したがって、この「逆止弁3、3」が、パッケージの「壁」に設けられるものであるとはいえない。さらに、「逆止弁」は2つ設けられているものの、排気通路となる「空気の放出口11」は、包被用袋体4に1つしか設けられていない。甲第7号証に、「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」ことが記載又は示唆されているということはできない。
さらに指摘すれば、甲第7号証が被包装物として想定しているものは、「被服、その他の可圧縮物」(請求項1、段落【0001】等)であり、「繊維」を被包装物として「繊維ベール」にすることは、記載も示唆もされていない。
以上のとおり、甲第2、6、7号証のいずれにも、「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」ことは、記載も示唆もされていないから、「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」ことが周知又は慣用技術であるということはできない。よって、甲第2、6、7号証の記載事項を考慮しても、[相違点5]の一部である「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」ことが、甲第5号証に実質的に記載されているとも、示唆されているともいえない。
[相違点5]は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1と甲第5号証発明とが、実質的に同一であるということはできない。無効理由3によって、本件特許発明1を無効にすることはできない。
(請求人の主張について)
請求人は、[相違点5]に関して次の主張をしている。
ア 本件特許発明1の複数のエバキュエータが、ポンプやホース、接続ポイントなどを含むのであれば、甲第5号証には、「複数のエバキュエータ」が開示されている。(請求人の口頭審理陳述要領書19頁11?12行)
イ 本件特許発明1の「真空チェック弁」は、排気後シールする部分をも意味するから、甲第5号証の「気密シールされる接続ポイント」も「真空チェック弁」であり、甲第5号証には「真空チェック弁」が開示されている。(請求人の口頭審理陳述要領書19頁21?22行)
ウ 甲第5号証の段落【0023】に記載されているように真空ポンプが複数ある場合、排気接続部位も複数あることは自明である。また、段落【0044】に記載されている、接続ポイントからホースを外すことができ、かつ「気密シール」できる構造は、公知の逆止弁等を用いることを明確に示唆している。よって、甲第5号証には、「真空チェック弁を含む複数のエバキュエータ」が開示されている。(請求人の口頭審理陳述要領書19頁13?23行、30頁10行?31頁18行)
エ 仮に「真空チェック弁」の点が相違点であるとしても、甲第2号証等に記載の逆止弁を採用することは、周知技術、慣用技術の付加であり、本件特許発明1は、甲第5号証発明と実質的に同一である。(請求人の口頭審理陳述要領書19頁24行?20頁1行、34頁10?25行)
(主張ア、イについて)
請求人の上記主張アは、上記第6 1(3)(主張エについて)で述べたのと同様の理由により、採用することはできない。
請求人の上記主張イは、上記第6 1(3)(主張アについて)、及び、同(主張ウについて)で述べたのと同様の理由により、採用することはできない。
(主張ウ、エについて)
複数の真空ポンプを用いて排気する場合、同じ排気口に複数の真空ポンプを接続する構成も、別々の排気口にそれぞれ1台の真空ポンプを接続する構成もあり得る。したがって、段落【0023】に、複数の真空ポンプを用いて排気することが記載されているからといって、直ちに甲第5号証に、排気接続部位も複数あることが自明であるとか、示唆されているとはいえない。甲第5号証には「複数のエバキュエータ(排気通路)」は記載されていないし、記載されているも同然であるともいえない。
段落【0044】の「真空ポンプ4によって・・・・所望の負圧に達すると、真空ポンプのホースがフィルムから外され、接続ポイントが気密シールされる。」という記載が、「接続ポイントからホースを外すことができ、かつ『気密シール』できる構造」を記載又は示唆しているとはいえない。「ホースがフィルムから外され」という記載が、「ホースがフィルムから『完全に』外され」ることを意味しているとは限らず、接続ポイントとホースとの流体的連通を維持したまま、「気密シール」にする作業が可能な程度にホースを移動させることを意味している可能性も十分ある。また、仮に「ホースがフィルムから『完全に』外され」ることを意味しているとしても、ホースを外した後でも気密を維持する機能を「構造」的に実現しているとは限らず、「ホースがフィルムから『完全に』外され」ると同時に、接続ポイントが気密を維持するように、接続ポイント又はその近傍を挟圧しながら、「気密シール」する作業を意味している可能性も十分ある。
また、仮に、段落【0044】の記載が、「接続ポイントからホースを外すことができ、かつ『気密シール』できる構造」を意味しているとしても、「公知の逆止弁等を用いることを明確に示唆している」とは到底いえない。甲第5号証に記載された「接続ポイント」は、段落【0044】に記載しているとおり、包装用のフィルム2を「気密シール」する際に、「真空ポンプ4の吸引穴との接続ポイントとして機能する小さい範囲を残し」た部分であり「公知の逆止弁等を用いることを明確に示唆している」とは、到底考えられない。そして、仮に、脱気包装する際に、予め形成された逆止弁付き包装袋を用いることが周知であるとしても、フィルムを気密シールする際にシールせずに残した部分を「公知の逆止弁」にすることが、甲第5号証に記載されているも同然であるとはいえない。
さらに指摘すれば、本件特許発明1の「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」は、「少なくとも一つの壁」が複数のエバキュエータを含み、しかも上記第6 1(3)(主張イについて)で指摘したとおり、各エバキュエータそれぞれが「真空チェック弁を含む」と解されるものである。請求人が指摘する甲第5号証段落【0023】【0044】や、周知技術又は慣用技術を総合的に考慮しても、本件特許発明1の「少なくとも一つの壁が真空チェック弁を含む複数のエバキュエータを含む」構成は、甲第5号証に記載されていないし、記載されているも同然であるともいえない。
請求人の主張ウ、エは、採用できない。
(3)本件特許発明2?14は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当するから、少なくとも、前記(1)に示した[相違点5]で甲第5号証発明と相違する。
よって、上記(2)で述べたのと同様の理由により、本件特許発明2?14は、甲第5号証発明と実質的に同一であるとはいえない。
(4)したがって、請求人の主張する無効理由3によっては、本件特許発明1?14についての特許を無効とすることはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び提出した証拠によっては、本件特許発明1?14に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-24 
結審通知日 2014-01-29 
審決日 2014-03-25 
出願番号 特願2009-108335(P2009-108335)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子島 貴裕田村 耕作  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 栗林 敏彦
渡邊 真
登録日 2012-12-07 
登録番号 特許第5148552号(P5148552)
発明の名称 繊維ベール及び弾性繊維の包装方法  
代理人 松山 美奈子  
代理人 新井 規之  
代理人 小笠原 有紀  
代理人 新井 全  
代理人 吉澤 敬夫  
代理人 小野 新次郎  
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