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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01N
審判 全部無効 発明者・出願人  A01N
審判 全部無効 特38条共同出願  A01N
管理番号 1302324
審判番号 無効2013-800078  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-05-01 
確定日 2015-07-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第5172002号発明「袋入り抗菌剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5172002号の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
(1)本件特許第5172002号は、平成23年9月8日に発明者、出願人とも「和気 清弘(出願当初は「清熙」)」単独名義で出願され、平成25年1月11日に特許権の設定登録がなされたものである。
(2)平成25年5月1日に新光株式会社から無効審判の請求がなされたところ、同年5月22日に本件特許権の移転登録申請が受付られ、特許権者であった和気 清弘(以下「和気氏」という)から、株式会社WAKに特許権が移転されたため被請求人が変更となった。そして、平成25年6月18日付けで新たな被請求人に手続続行通知とともに請求書副本の送達通知(答弁指令)が送付され、同年8月19日に被請求人から答弁書が提出され、同年10月30日付けで審理事項通知書が通知され、同年11月18日に被請求人から証人尋問申出書及び尋問事項書が提出され、同年11月20日に被請求人から尋問事項を追加する上申書が提出され、同年11月22日に請求人から口頭審理陳述要領書、証人尋問申出書及び尋問事項書が提出され、同年11月25日に被請求人から口頭審理陳述要領書が提出され、同年12月9日に被請求人から上申書が提出され、同日に口頭審理並びに証人尋問及び当事者尋問が行われ、同年12月13日に被請求人から上申書が提出され、同年12月24日に請求人及び被請求人から上申書が提出されたものである。
そして、平成26年3月24日付けで審決の予告がなされたが、被請求人からは訂正の請求はなされなかった。

第2 本件特許発明
本件特許第5172002号発明は、特許請求の範囲の請求項1?8によって特定されるものであり、次のとおりのものである。
「【請求項1】
多孔性の無機質固形担体に二酸化塩素を担持させた粒子状の抗菌剤と、該抗菌剤を収容する第1の袋体と、第1の袋体を収容する第2の袋体と、を備えた携帯用の袋入り抗菌剤であって、
第1の袋体は、全面に無機質固形担体の粒径より小さな径の微細孔を有し、
第2の袋体は、前記二酸化塩素を大気中に放出するための放出孔を有し、
前記第1の袋体及び第2の袋体はそれぞれ扁平に形成され、
前記第2の袋体には、第1の袋体が第2の袋体の内側に接触する部分と、第1の袋体と第2の袋体との間に隙間が形成される部分とがあり、前記放出孔は、前記第2の袋体の前記隙間が形成される部分に設けられていることを特徴とする、携帯用の袋入り抗菌剤。
【請求項2】
前記第2の袋体には、第2の袋体の吊り下げに用いる穴が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用の袋入り抗菌剤。
【請求項3】
前記放出孔は、前記第2の袋体の縁部に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の携帯用の袋入り抗菌剤。
【請求項4】
前記第2の袋体は扁平な多角形状であることを特徴とする、請求項1?3の何れかに記載の携帯用の袋入り抗菌剤。
【請求項5】
前記第1の袋体と第2の袋体との体積比が、1:2?1:1.2であることを特徴とする、請求項1?4の何れかに記載の携帯用の袋入り抗菌剤。
【請求項6】
前記無機質固形担体が粒径0.01?1mmの粒子であり、前記第1の袋体における該無機質固形担体の充填率が30?80%であることを特徴とする、請求項1?5の何れかに記載の携帯用の袋入り抗菌剤。
【請求項7】
前記放出孔は、剥離可能なシールでふさがれていることを特徴とする、請求項1?6の何れかに記載の携帯用の袋入り抗菌剤。
【請求項8】
前記無機質固形担体はセピオライト、ゼオライト、シリカ、アルミナ、及びシリカアルミナから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1?7の何れかに記載の携帯用の袋入り抗菌剤。」

第3 請求の趣旨並びに主張及び証拠方法
本件審判における請求の趣旨は、「特許第5172002号の請求項1?8に係る発明についての特許は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」である。

1 主張の要旨
審判請求人の主張の要旨は、次の(1)、(2)である。
(1)無効理由1
本件特許における請求項1-8に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」-「本件発明8」という。)は、出願前に頒布された刊行物である甲第2号証、出願前に電気通信回路を通じて公衆に利用可能だった甲第3号証または出願前に頒布された刊行物である甲第4号証に記載された発明及び従来周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1-8は特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、これは無効とされるべきものである。
(2)無効理由2
本件発明1-8の、全部または一部は、「菊池 徳美」(以下「菊池氏」という。)により発明されたものであるところ、和気氏は、菊池氏から特許を受ける権利を承継しないまま本件発明につき特許出願したものであるから、(全部の場合)冒認出願であって特許法第123条第1項第6号の規定に該当するか、(一部の場合)特許法第38条に規定された共同出願の規定に違反するものであって特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、これは無効とされるべきものである。

2 請求人提示の証拠
請求人が提示した証拠は、以下のとおりである。
(1)書証
以下、エンブロイ株式会社(旧社名のエンブロイプロテック株式会社を含め)エンブロイ社と標記する。
甲第1号証:特許第5172002号公報
甲第2号証:実用新案登録第3154094号公報
甲第3号証:クレベリンGパウチタイプ携帯型のプレスリリース1頁
(平成20年11月26日公表)及び
クレベリンGパウチタイプ携帯型についての
オンラインショップYUDAでの説明書
甲第4号証:実用新案登録第3112293号公報
甲第5号証:特公平4-16180号公報
甲第6号証:国際公開第2009/051018号
甲第7号証:特開平6-233985号公報
甲第8号証:特開昭60-161307号公報
甲第9号証の1:菊池氏が平成23年5月5日に送信した
携帯用袋図1が添付された電子メール
甲第9号証の2:上記携帯用袋図1
甲第9号証の3:菊池氏が平成23年5月11日に送信した
携帯用袋図2が添付された電子メール
甲第9号証の4:上記携帯用袋図2
甲第10号証:エンブロイ社から菊池氏に送信されたファクシミリ
(平成23年5月20日付け)
甲第11号証の1:平成23年6月9日から10日にかけて菊池氏と
和気氏との間でやりとりされた電子メール
甲第11号証の2:新光株式会社がエンブロイ社に発行した
平成23年6月1日付け見積書
甲第12号証の1:平成23年6月20日に和気氏と菊池氏の間で
やりとりされた電子メール
甲第12号証の2:上記電子メールに添付されたビニール袋の構造図
甲第13号証の1:平成23年10月20日のエンブロイ社からの質問
が記載された電子メール
甲第13号証の2:平成23年10月21日の上記質問への回答
が記載された電子メール
甲第14号証の1:平成23年6月23日にエンブロイ社から請求人に
送付された電子メール
甲第14号証の2:上記電子メールに添付されたビニール袋の注文書
甲第15号証の1:平成23年6月18日付けビニール袋の請求書
甲第15号証の2:請求人が過去に納品したビニール袋のカラーコピー
甲第15号証の3:平成23年8月25日付け出荷伝票
甲第15号証の4:平成23年8月30日付け出荷伝票
甲第16号証:平成23年5月31日?6月2日にかけて和気氏と
菊池氏との間でやりとりされた電子メール
<以上は、平成25年5月1日付け審判請求書にて提出>

なお、上記書証の内、甲第10号証、甲第11号証の2、甲第14号証の2、甲第15号証の2、甲第15号証の3、甲第15号証の4の原本は、口頭審理において確認した。

(2)人証
当事者尋問:請求人代表者 菊池 徳美(以下「当事者尋問」という。)

第4 答弁の趣旨並びに主張及び証拠方法
答弁の趣旨は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」である。

1 主張の要旨
被請求人の主張の要旨は、次のようなものである。
(1)無効理由1
本件発明1-8は、甲第2ないし4号証に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)無効理由2
本件発明1-8は、いずれも和気氏が単独の発明者であり、なんら冒認に係るものでも、共同出願要件に違反するものでもない。

2 被請求人提示の証拠
被請求人の提示した証拠は次のとおりである。
(1)書証
乙第1号証:クレベリンGパウチタイプ携帯型のプレスリリース1?2頁
(平成20年11月26日公表)
乙第2号証:特許第3110724号公報
乙第3号証:実開昭62-119938号公報
乙第4号証:特開昭59-48402号公報
乙第5号証:特開平10-167323号公報
乙第6号証:特開平10-278970号公報
乙第7号証:広辞苑第6版「穴」の項
乙第8号証:IPDLでの検索結果
乙第9号証:請求人とエンブロイ社が平成23年4月28日に締結した
売買基本契約書
<以上は、平成25年8月19日付け答弁書で提示>
乙第10号証:「CL-2000N」顧客向け出展報告書
乙第11号証:「CL-100」の製品写真
乙第12号証:「CL-1000」の製品写真
乙第13号証:広告代理店から和気氏への電子メール
(平成21年8月25日付け)
乙第14号証の1:広告代理店から和気氏への電子メール
(平成22年6月17日付け)
乙第14号証の2?3:上記メールに添付された「CL-90」のチラシ
乙第15号証の1?2:「CL-30」のチラシ
乙第16号証の1:アルミ袋の写真
乙第16号証の2:上記写真ファイルのプロパティ1
(平成22年7月28日撮影)
乙第16号証の3:上記写真ファイルのプロパティ2
(カシオ計算機社 EX-Z40にて撮影)
乙第17号証:二酸化塩素ケースに関する電子メールの写真上に
書き込みがなされた書面
乙第18号証の1:除菌ストラップ上の二酸化塩素ガス濃度
という題の報告書
乙第18号証の2:上記報告書のファイルプロパティ
乙第19号証:固形二酸化塩素の納品書
乙第20号証:不織布の切断加工の納品書
乙第21号証:不織布製の袋に包装された薬剤分包の納品書
乙第22号証:アルミ蒸着袋の納品書が記載された電子メール
乙第23号証:エンブロイ社から新光株式会社への請求書
乙第24号証の1及び2:CL-30のパッケージラベル
乙第24号証の3:上記ラベルのファイルプロパティ
乙第25号証の1:請求人納品物を用いた試験結果写真
乙第25号証の2:上記写真のファイルプロパティ1
(平成23年10月14日撮影)
乙第25号証の2:上記写真のファイルプロパティ2
(カシオ計算機社 EX-Z40にて撮影)
乙第26号証:請求人パンフレット
乙第27号証:「安定化二酸化塩素錠剤を用いた果物(ミカン)の
経時変化試験」と題されたプレゼン資料及び
そのファイルプロパティ(平成22年3月17日更新)
乙第28号証:「食パンによる防カビ試験結果」と題する資料
乙第29号証:「高知県四万十川市東富山地区 イチゴ農家ハウス
うどん粉病・たんそ病対策」と題する資料
乙第30号証:株式会社メイプルバイオラボラトリーズからエンブロイ社
に送付された資料
<以上は、平成25年11月25日付け口頭審理陳述要領書にて提出>

なお、上記書証のうち、乙第9号証、乙第19号証、乙第20号証、乙第21号証については、口頭審理において原本確認を行った。
乙第17号証、乙第23号証については、原本確認ができなかった。そして、提出された写しを証拠とする旨、被請求人は平成25年12月24日付け上申書において述べた。

(2)人証
証人尋問:齋藤 譲(以下「齋藤証人」という)

第5 無効理由2に関する当審の判断
無効理由2について、判断する。
1 請求人適格について
当事者間には争いはないが、審判請求人である新光株式会社に請求人となる資格があるかについて、職権により検討する。
(1)適用法規について
特許法第123条第1項第6号,第74条等の規定は、平成23年法律第63号により改正されているが、附則第2条第9項の規定により、施行日である平成24年4月1日より前に出願された本件特許に関しては従前のままとされる。したがって、本件手続には、平成23年法律63号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という)が適用される。
(2)請求人に関する規定
旧特許法第123条第2項ただし書の規定により、特許が旧特許法第38条の規定に違反してなされたことにより、同第123条第1項第2号の規定に該当する場合及び特許が同第123条第1項第6号に該当する場合の2つの場合について、これらの無効理由を含む無効審判は、「利害関係人に限り請求することができる」とされている。
本件無効理由2は、上記2つの場合のいずれかについての無効理由の主張であるから、このような主張を含む無効審判は、請求人が利害関係人でなければ審判請求できないと解されるため、請求人が利害関係人であるかについて検討する。
(3)利害関係について
請求人が主張するように、菊池氏が本件発明の全部または一部を発明したとすると、その発明は請求人新光株式会社の事業のために職務として行われたものであるから、菊池氏の持つべきであった特許を受ける権利は、新光株式会社に譲渡され、新光株式会社が特許権を得ることになるか、あるいは、譲渡されなくとも、新光株式会社は職務発明による通常実施権を得ることになる。上記無効理由2の主張は、新光株式会社が本来得られる権利を失ったということに帰すから、新光株式会社は、本件審判請求について利害関係を有するものと認められる。
また、本件特許第5172002号に基づいて、請求人が特許権を侵害している旨の警告を受けていることは、平成25年5月1日付け審判請求書第25頁及び平成25年12月9日に行った当事者尋問における証言から明らかである。この点でも、請求人は、本件特許を無効とすることについての利害関係を有している。
したがって、請求人は、旧特許法第123条第2項にいう「利害関係人」に該当し、請求人適格を有する。

2 本件発明について
本件発明1-8は、特許請求の範囲の請求項1-8に記載されたとおりの発明と認められる。
このうち、本件発明1を分説すると下記のとおりである。
「【請求項1】
a 多孔性の無機質固体担体に二酸化塩素を担持させた粒子状の抗菌剤と、
b 該抗菌剤を収容する第1の袋体と、
c 第1の袋体を収容する第2の袋体と、
d を備えた携帯用の袋入り抗菌剤であって、
e 第1の袋体は、全面に無機質固形担体の粒径より小さな径の微細孔を有し、
f 第2の袋体は、前記二酸化塩素を大気中に放出するための放出孔を有し、
g 前記第1の袋体及び第2の袋体はそれぞれ扁平に形成され、
h 前記第2の袋体には、第1の袋体が第2の袋体の内側に接触する部分と、第1の袋体と第2の袋体との間に隙間が形成される部分とがあり、前記放出孔は、前記第2の袋体の前記隙間が形成される部分に設けられている
d' 携帯用の袋入り抗菌剤。」

3 従来技術からの改良点
後記4で認定するように、本件発明の出願日以前に存在した従来技術であるエンブロイ社が発売していた「CL-30」は、上記本件発明1の特定事項a?gをすべて有しているが、「前記第2の袋体には、第1の袋体が第2の袋体の内側に接触する部分と、第1の袋体と第2の袋体との間に隙間が形成される部分とがあり、前記放出孔は、前記第2の袋体の前記隙間が形成される部分に設けられている」という発明特定事項hを含んでいない。そうすると、「CL-30」の発明者のほかにも、発明特定事項hを着想した者及び具体化した者も本件発明1の発明者になると認められる。

4 本件発明の開発及び出願の経緯について
本件発明の開発及び特許出願の経緯は、請求人及び被請求人の主張及び両者が提示した証拠から認定できる事実を総合すると、次のとおりと認められる。各認定の根拠事実を示す証拠は、文末に示した。(「第」と「号証」は省略した。)
和気氏は、遅くとも平成20年以降、二酸化塩素が徐々に発生する液体を利用した抗菌製品を開発し、販売してきた。(乙10-13等)
そして、平成22年始頃から、首からかけるIDカードホルダーの形状の外袋に薬剤袋を入れて使用するタイプの携帯用抗菌剤(CL-30)の開発をし、遅くとも平成23年3月までには量産体制に入り販売を本格化させた。(乙15の1,乙15の2,乙23,齋藤証人)
しかし、CL-30は、ネームホルダー形状の外袋上部が開放されていることから、薬剤に手が触れる可能性がある等の各種の不都合があり、子供が口に入れてしまう心配もあり、改善の必要があった。(乙15の1、齋藤証人)
そして、平成22年7月頃から和気氏は外袋全体を閉鎖して、使用時に二酸化塩素の放出孔をあけるという構想を持つようになったが、外袋をどのように構成するかの具体化には至らなかった。(乙16,当事者尋問)
平成23年4月頃、和気氏からこの問題点を聞いた菊池氏は、シールを剥離することで取り出し孔が生じる携帯用ウェットティッシュの外袋のように、シールを剥離することで放出孔が形成される外袋とするというアイデアを和気氏に提案したが、和気氏はうまく製造できるかを疑い、その場では採用しなかった。(当事者尋問)
そこで、菊池氏は設計図を独自に作成し、和気氏に採用してもらおうと行動した。すなわち、平成23年4月11日前後に、菊池氏がエンブロイ社を訪問し、外袋の設計に必要なデータを収集し、設計図の作成を開始した。(乙24の1,当事者尋問)
菊池氏が設計図を作成中の、同年4月28日エンブロイ社は新光株式会社に中国での独占販売権を与える契約をした。この契約書には、特許を受ける権利の帰属に関する条項は認められない。(乙9)
そして、遅くとも同年5月5日までに、菊池氏は放出孔の位置、形状、個数を検討し、決定し、収集したCL-30用の印刷イメージ(乙24)を用いて設計図を作成した。詳細にいうと、菊池氏は、まずCL-30と同じ長方形イメージを外袋に配置し、外袋の領域中のイメージのない部分(以下「余白部分」という。)に放出孔を配置されることとした。この場合、(a)長方形のイメージを外袋の下部に配置し、上部に設けられた余白部分に放出孔を設けるか、または、(b)イメージ外袋の上部に配置し、下部に設けられた余白部分に放出孔を設けるという選択肢があるが、上部に放出孔を設けた方が、衣服に直接かかる二酸化塩素が少なくなり、衣服が漂白されるおそれが少なくなることから、(a)を選択した。作成された設計図は、同年5月5日に菊池氏から和気氏に送信された。(甲9の1,甲9の2,当事者尋問)
和気氏は、放出孔の位置に関しては、この設計を採用することとし、表面の印刷イメージの幾度かの手直しをした後、同年6月11日頃に最終的な設計図が完成され、金型が発注され、外袋の生産工程が開始した。また、この際に新たな製品をCL-40と呼ぶこととなった。(甲11の1、当事者尋問)
中国で製造された外袋10500枚が同年8月25日頃エンブロイ社に納品された。(甲15の3)
和気氏は、納品された外袋に社内の内袋を封入して、製品を完成した。(乙25)
完成されたCL-40における放出孔は外袋と内袋の間に隙間がある位置にあることから、この技術的特徴を、発明特定事項とした特許請求の範囲を持つ特許出願を行うこととし、菊池氏に連絡することなく平成23年9月8日に単独で特許出願を行った。(甲1、当事者尋問)

5 本件発明への菊池氏の関与
上記の認定のとおり、本件発明1における「放出孔」の位置は、和気氏の指示によることなく、菊池氏が独自に外袋の上方に定めたものである。そして、外袋(本件発明1の「第2の袋体」)のその位置に放出孔が存在することにより、これに内袋(本件発明1の「第1の袋体」)を挿入した際に、CL-30からの改良点の一つである上記発明特定事項hである「第1の袋体と第2の袋体との間に隙間が形成される部分とがあり、前記放出孔は前記第2の袋体の前記隙間が形成される部分に設けられている」という構成が生じたと認められる。したがって、この改良点については、菊池氏が発明したことは明らかであるから、本件発明1は菊池氏も発明者であると言える。
これに反する主張、証拠は採用できないが、念のため、主な被請求人の主張について検討する。

6 被請求人の主張について
(1)放出孔に関する和気氏の指示について
被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「直径5mm程度の丸穴を上縁に略等間隔に横一列にあけることを、和気氏は手書きの図で示し、口頭で指示した」と主張する。
被請求人からは、この主張にかかる手書きの図面が存在するという直接の証拠は提示されておらず、和気氏が上記改良点を認識していたことを、乙第17号証及び齋藤証人により証明しようとしている。
ア 乙第17号証について
乙第17号証は、電子メールで送付された写真をプリントアウトしたものに手書きで書き込んだものの写しであって、実際に作成された文書の存在が確認できない。(原本確認をしようとしたが、被請求人から提示がなかったことは、「第4 2(1)」に記載したとおり。)
その書き込みには、「裏面及びケース上部より「ガス出口」」という一節が認められる。しかしながら、写真上の書き込みにより写真に何が写っているか不鮮明になっており、二酸化塩素ケースと書き込まれたものが、写真ではどういう形状か不明である。さらに、乙第17号証には「2010/10/03」との日付の印が認められるものの、写しであるので、その信用性に疑問がある上、写真上に手書きされた部分については、そのときに記載されていたことを裏付ける証拠もない。よって、乙第17号証に基づく主張は採用できない。
イ 齋藤証人について
齋藤証人は、その証言によると、平成22年6月まではエンブロイ社に通勤していたが、通勤が遠距離であったことから、それ以降はのれん分けのような形で自宅周辺に別途勤務して、不定期にエンブロイ社を訪問していたという状況であって、さらに、齋藤証人が袋入り抗菌剤の外袋及び内袋の材質には詳しくないことに考慮すると、和気氏が逐次アドバイスを求めることは通常考えられないため、齋藤証人は、上記CL-40の開発経緯について断片的にしか知りうる立場になかったと認められる。
そして、齋藤証人は、外袋の上部に円形の孔をあけることについては、平成22年末から平成23年初には原案が出来上がってたと思うと証言するが、CL-40の開発経緯、特に試作品の完成時期に関しての証言は明確でなく、さらに事実と反する証言もあることからして、上記4,5における認定を覆すものではない。

(2)共同発明への反論について
被請求人は、平成25年12月24日付け上申書において、菊池氏が放出孔の位置や大きさを発想して具体化したとしても、和気氏も別途同様の発想をしていたから、各々別個の発明行為であり、共同発明に該当しない旨主張する。
しかしながら、菊池氏が設計図を提示した平成23年5月5日以前に和気氏が上記改良点、すなわち発明特定事項hを認識していたとする証拠はなく、むしろ、菊池氏から平成23年5月5日に受け取った設計図(甲9の1,甲9の2)の放出孔の配置を採用することで、発明特定事項hを取り込んだと認められることは、上記4,5における認定において述べたとおりである。
したがって、この主張も採用できない。

7 無効理由2についての小括
本件発明1?8は、いずれも「放出孔は、前記第2の袋体の前記隙間が形成される部分に設けられている」という発明特定事項hを有するものであるから、上記「第4 5」での認定からみて、本件発明1?8は、いずれも菊池氏が発明の完成に貢献したものである。すなわち、本件発明1?8は和気氏と菊池氏の共同発明に該当するものと認められる。
そして、和気氏が菊池氏から特許受ける権利をその出願前に譲り受けたとの事情も認められない。
したがって、本件発明1?8は特許を受ける権利が共有に係るものであるにもかかわらず、共同によりその特許出願をしたものでないから、特許法第38条の規定に違反してなされたものである。

第6 まとめ
以上のとおりであるから、無効理由1について検討するまでもなく、本件発明1?8についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
よって、本件審判費用の負担については特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-15 
結審通知日 2014-07-17 
審決日 2014-07-31 
出願番号 特願2011-195716(P2011-195716)
審決分類 P 1 113・ 15- Z (A01N)
P 1 113・ 151- Z (A01N)
P 1 113・ 121- Z (A01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉江 渉  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 木村 敏康
井上 雅博
登録日 2013-01-11 
登録番号 特許第5172002号(P5172002)
発明の名称 袋入り抗菌剤  
代理人 伊藤 真  
代理人 柿澤 紀世雄  
代理人 平井 佑希  
代理人 辻田 朋子  
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