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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1302491
審判番号 不服2014-8644  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-09 
確定日 2015-06-25 
事件の表示 特願2010- 39439「太陽電池モジュールの製造方法およびそれを用いて得られた太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 8日出願公開、特開2011-176148〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年2月24日の出願であって、平成25年10月1日付けで拒絶理由が通知され、同年12月3日付けで意見書及び補正書が提出され、平成26年2月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年5月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされ、同年6月19日付け及び同年7月4日付けで上申書が提出されたものである。

第2 平成26年5月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年5月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項1及び2について、下記(a)を、下記(b)と補正するものである。
(a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2
「【請求項1】
複数の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールの製造方法であって、ロールに巻回された幅10?80mmの長尺の帯状電極基板上に、ロール・トゥ・ロールで、連続蒸着法により化合物半導体層を形成して帯状太陽電池セルを得る下記の工程Aと、
上記帯状太陽電池セルをその帯の長さ方向に所定の寸法間隔で切断して、上記帯の長さ方向が長辺でかつ上記切断方向が短辺のストリップ状太陽電池セルを得る工程Bと、
複数のストリップ状太陽電池セルを、互いの長辺側部どうしを上下に重ね合わせながら短辺方向に沿って並べ、当接する一方のセルの表面電極と他方のセルの裏面電極とを電気的に接続して、太陽電池モジュールを得る工程Cと、を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
工程A:蒸着室と、この蒸着室内に配置される蒸着源と、上記帯状電極基板を繰り出す繰出し機と、この帯状電極基板を巻き取る巻取り機とを備え、上記帯状電極基板を、繰出し機から、減圧された蒸着室内の所定位置に繰り出し、蒸発源内の化合物半導体を加熱蒸発させながら、上記帯状電極基板を、この基板と上記蒸着源との距離Lが10?100mmになる位置を通過させ、帯状電極基板の表面に化合物半導体層を連続的に成膜して、長尺の帯状太陽電池セルを作製し、この帯状太陽電池セルを巻取り機に巻き取る工程。
【請求項2】
上記工程Bが、上記帯状太陽電池セルまたは上記ストリップ状太陽電池セルを検査して、見つかったセルの欠陥部位のみを切断により取り除く工程を含む請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。」

(b)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
複数の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールの製造方法であって、
蒸着室と、この蒸着室内に配置される蒸着源と、帯状の電極基板を繰り出す繰出し機と、この帯状電極基板を巻き取る巻取り機とを備え、ロール・トゥ・ロールによる連続蒸着法を用いて、ロールに巻回された幅10?80mmの長尺の帯状電極基板を、繰出し機から、減圧された蒸着室内の所定位置に繰り出し、蒸発源内の化合物半導体を加熱蒸発させながら、上記帯状電極基板を、この基板と上記蒸着源との距離Lが50?100mmになる位置を通過させ、帯状電極基板の表面に化合物半導体層を連続的に成膜して、長尺の帯状太陽電池セルを作製し、この帯状太陽電池セルをロールに巻き取る工程Aと、
ロールに巻回された上記帯状太陽電池セルを送り出しながら検査する検査工程と、検査工程で発見された欠陥部位の基板流れ方向両側を、基板幅方向に切断して欠陥部位のみを取り除く欠陥切除工程とを備え、欠陥のない正常な太陽電池部位を、その帯の長さ方向に所定の寸法間隔で切断し、上記帯の長さ方向が長辺でかつ上記切断方向が短辺のストリップ状太陽電池セルを得る工程Bと、
複数のストリップ状太陽電池セルを、互いの長辺側部どうしを上下に重ね合わせながら短辺方向に沿って並べ、当接する一方のセルの表面電極と他方のセルの裏面電極とを電気的に接続して、太陽電池モジュールを得る工程Cと、
を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。」

2.新規事項の有無及び補正の目的要件
本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する形式で記載されていた特許請求の範囲の請求項2の当該引用部分を具体的に記載することにより、引用形式でない独立の請求項1とし、さらに、本件補正前の請求項2に記載された「帯状電極基板の表面に化合物半導体層を連続的に成膜」する際の「この基板と上記蒸着源との距離L」について、「10?100mm」を「50?100mm」と限定するものを含むものであり、願書に最初に添付した明細書の【0057】等の記載からみて、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、本件補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であって、本件補正前の請求項2の補正という観点から見れば、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)、進歩性(特許法第29条第2項)について検討する。

3.本件補正発明の進歩性について
(1)引用刊行物の記載
ア 引用刊行物1について
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-126757号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「化合物薄膜の製造装置および方法」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。
(引1ア)「【0001】
本発明は、各種デバイスに用いられる化合物薄膜の製造装置および方法に関し、特に太陽電池に利用されるCu、In、Ga、Se化合物薄膜などの化合物薄膜の製造装置および方法に関するものである。」
(引1イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来の問題に鑑み、製膜室全体を大気開放することなくVIb族元素を補充することができ、かつ、基板の製膜面以外へのVIb族元素の付着を低減できる化合物薄膜の製造装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は、真空排気可能な製膜室内に設置した基板の製膜面にVIb族元素を含んだ化合物薄膜を蒸着形成する化合物薄膜の製造装置を、前記製膜室に対して弁手段を介して連通する真空室を設け、この真空室内にVIb族元素の蒸着源の一部を設置した構成としたものである。
【0015】
詳細には、製膜室と真空室とを弁手段を介装した配管で連通させ、この配管の内壁を管内のVIb族元素が蒸気状態に維持される温度に加熱する加熱機構を設ける。
好ましくは、配管に、一端が弁手段に連通し、他端が基板の製膜面の近傍で開口するVIb族元素吹き出し管を設ける。また好ましくは、複数のVIb族元素吹き出し管を設ける。
より好ましくは、VIb族元素吹き出し管の開口部と基板の製膜面との距離を50mm以内とする。さらに好ましくは、VIb族元素吹き出し管の開口部と基板の製膜面との距離を30mm以内とする。
【0016】
VIb族元素は、O、Se、S、およびTeの内の少なくとも1種とすることができる。」
(引1ウ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態における化合物薄膜の製造装置の概略構成を示す断面図、図2は同装置を別方向から示す断面図である。
【0021】
図1および図2において、1は真空容器、2は真空容器1内を排気する排気装置としてのターボ分子ポンプである。3,4はそれぞれ真空容器1外に配置された送り出しローラ,巻き取りローラ、5,6は真空容器1内の上部であって真空容器1に開口するスリット(図示せず)の近傍に配置された中間ローラである。
【0022】
基板7は、ステンレス材などからなるフレキシブル性の金属箔であり、送り出しローラ3に巻回され、巻き取りローラ4に取り付けられていて、送り出しローラ3、巻き取りローラ4の動力によりテンションがかけられることで、中間ローラ5,6間に撓むことなく展張される。
【0023】
8,9,10はそれぞれ、真空容器1内、基板7の展張位置の下方に基板7の走行方向に沿って配列されたCu蒸着源,In蒸着源,Ga蒸着源であり、11は真空容器1内、基板7の展張位置の上方に基板7の走行方向に沿って配置された基板加熱ヒータである。12はSe蒸着源であり、第1配管系13,第2配管系14を通じて真空容器1内に連通した第2の真空容器15内に配置されている。
【0024】
第1配管系13は、開閉バルブ16を介装した主管17と、主管17の開閉バルブ16の下流側から分岐した複数の供給管18(18a,18b,18c・・)とを有している。各供給管18(18a,18b,18c・・)は、開閉バルブ19(19a,19b,19c・・),流量制御装置20(20a,20b,20c・・)を介装し、真空容器1の壁部を上下方向に貫通する1対の吹き出し管21(21a,21b,21c・・)を有している。
・・・(略)・・・
【0028】
上記構成における化合物薄膜の製造方法を説明する。
まず、真空容器1内をターボ分子ポンプ2により5×10^(-4)Pa以下の圧力まで排気する。
【0029】
その後に、基板7を基板加熱ヒータ8により550℃に加熱する。また基板7の下方のCu蒸着源9、In蒸着源10、Ga蒸着源11、真空容器15内のSe蒸着源12をそれぞれ加熱して、1200℃、900℃、220℃、220℃に保持することにより、真空容器1内のCu蒸着源9、In蒸着源10、Ga蒸着源11よりCu、In,Ga蒸気を放出させるとともに、真空容器15内のSe蒸着源12からSe蒸気を放出させ、第1配管系13を通じて真空容器1内へ供給する。
・・・(略)・・・
【0031】
この状態において、基板7を送り出しローラ3から0.1m/分の速度で送り出し、巻き取りローラ10に巻き取る。
このことにより、真空容器1内を中間ローラ5から中間ローラ6へ向かう方向に走行する基板7の製膜面に連続的にCu、In,Ga,Seの蒸気(蒸着粒子)が供給され、それにより製膜面上でCu(In,Ga)Se_(2)が形成され、その結晶成長が基板加熱ヒータ8による加熱で促進される結果、製膜面上にCu(In,Ga)Se_(2)薄膜が形成されていく。
・・・(略)・・・
【0036】
なお、Cu蒸着源9、In蒸着源10、Ga蒸着源11の配列順序は上記した配列順序に限定されない。上記においてはSe蒸着源12は真空容器15内にのみ設置したが、Se蒸着源の一部を真空容器15内に設置し、残りのSe蒸着源を真空容器1内に設置するようにしてもよい。真空容器1と真空容器15とを開閉バルブ16を介装した第1配管系13により連通させたが、開閉機構を備えた壁を介して直接に接続させてもよい。」
(引1エ)図1

(引1オ)図2


イ 引用刊行物2について
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-130193号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「太陽電池モジュール」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。
(引2ア)「【0001】
本発明は、複数の太陽電池が直列接続された太陽電池モジュールに関するものである。」
(引2イ)「【0016】
図2は、セルストリングス4の拡大断面図である。同図において、セルストリングス4は、複数の太陽電池層2と、これらの太陽電池層2の端部2a,2b同士を積層・結合させるオーバーラップ層3とから構成される。太陽電池層2は、金属箔9と、この金属箔9上に形成された太陽電池素子10とからなっている。金属箔9としては、SUS(ステンレス鋼)、銅等が用いられる。また、太陽電池素子10としては、アモルファスシリコン系、多結晶薄膜シリコン系、CIGS系、GaAs系、InP系等が用いられる。
【0017】
オーバーラップ層3は、半田接合部12、及び絶縁保護部13から形成されている。半田接合部12は、太陽電池層2の太陽電池素子10と他の太陽電池層2の金属箔9とを半田ペーストにより接合する。半田ペーストとしては、銀、銅を含む錫系の合金が用いられる。絶縁保護部13は、半田接合部12を挟むように半田接合部12の両側に設けられている。絶縁保護部13は、耐熱性及び弾力性を有するポリイミドで形成された絶縁シールである。
【0018】
続いて、太陽電池層2が複数直列に接続されたセルストリングス4を形成する工程について図3を参照して説明する。同図に示すように、金属箔9上に太陽電池素子10が形成されてなるロール状の太陽電池シート15を繰り出し、セルカッター16によって太陽電池シート15を短冊状に所定の寸法で切断することにより、太陽電池層2を形成する。次に、切断された短冊状の太陽電池層2の側端部に、ディスペンサ17によりペースト状の半田をポッティングし、半田接合部12を形成する。そして、テープ貼付機18によってペースト状の半田の両側に、ポリイミドテープを貼り付け、絶縁保護部14を形成する。
【0019】
半田接合部12及び絶縁保護部13が形成された後、短冊状の太陽電池層2の端部同士を積層し、オーバーラップ層3を形成する。そして、リフロー硬化炉19において、オーバーラップ層3を約230℃の温度で加熱することにより、ペースト状の半田接合部12及び絶縁保護部13が硬化し、太陽電池層2同士がオーバーラップ層3を介して接合されるようになる。
【0020】
このように太陽電池層2同士が接合されると、太陽電池層2が複数直列に接続されたセルストリングス4が得られる。そして、その形成されたセルストリングス4を巻き取ることで、セルストリングスロール20が得られる。」
(引2ウ)図1

(引2エ)図2

(引2オ)図3


(2)引用刊行物記載の発明について
ア 引用刊行物1記載の発明
(引1ア)及び(引1イ)から、引用刊行物1には、太陽電池のCu、In、Ga、Se化合物薄膜などの化合物薄膜を蒸着形成する化合物薄膜の製造方法について記載され、該製造方法に用いられる製造装置では、製膜室に対して弁手段を介して連通する真空室を設け、この真空室内にSe等のVIb族元素の蒸着源の一部を設置し、製膜室と真空室とを弁手段を介装した配管で連通させ、この配管の内壁を管内のVIb族元素が蒸気状態に維持される温度に加熱する加熱機構を設け、該配管に、一端が弁手段に連通し、他端が基板の製膜面の近傍で開口するVIb族元素吹き出し管を設け、VIb族元素吹き出し管の開口部と基板の製膜面との距離を50mm以内としたことが記載されている。

また、(引1ウ)には、該製造方法の具体例である「実施の形態」について、次の事項が記載されている。
該製造装置は、真空容器1、真空容器1内を排気する排気装置としてのターボ分子ポンプ2、真空容器1外に配置された送り出しローラ3、巻き取りローラ4、真空容器1内の上部であって真空容器1に開口するスリットの近傍に配置された中間ローラ5、6を備えている。
そして、該真空容器1内に、Cu蒸着源8,In蒸着源9,Ga蒸着源10が配置され、該真空容器1内と第1配管系13,第2配管系14を通じて連通した第2の真空容器15内には、Se蒸着源12が配置されている。
第1配管系13は、開閉バルブ16を介装した主管17と、主管17の開閉バルブ16の下流側から分岐した複数の供給管18(18a,18b,18c・・)とを有していて、各供給管18(18a,18b,18c・・)は、開閉バルブ19(19a,19b,19c・・),流量制御装置20(20a,20b,20c・・)を介装し、真空容器1の壁部を上下方向に貫通する1対の吹き出し管21(21a,21b,21c・・)を有している。
また、ステンレス材などからなるフレキシブル性の金属箔である基板7は、送り出しローラ3に巻回され、巻き取りローラ4に取り付けられていて、送り出しローラ3、巻き取りローラ4の動力によりテンションがかけられることで、中間ローラ5,6間に撓むことなく展張される。

そして、該製造方法は、
まず、真空容器1内をターボ分子ポンプ2により5×10^(-4)Pa以下の圧力まで排気し、
基板7を基板加熱ヒータ8により550℃に加熱し、
真空容器15内のSe蒸着源12を加熱して、220℃に保持して、真空容器15内のSe蒸着源12からSe蒸気を放出させ、第1配管系13を通じて真空容器1内へ供給し、
基板7を送り出しローラ3から0.1m/分の速度で送り出し、巻き取りローラ10に巻き取り、
真空容器1内を中間ローラ5から中間ローラ6へ向かう方向に走行する基板7の製膜面に連続的にCu、In,Ga,Seの蒸気(蒸着粒子)が供給され、それにより製膜面上でCu(In,Ga)Se_(2)が形成され、その結晶成長が基板加熱ヒータ8による加熱で促進される結果、製膜面上にCu(In,Ga)Se_(2)薄膜が形成されるものである。

そうすると、(引1ア)及び(引1イ)の「Se等のVIb族」は(引1ウ)の「Se」に相当し、(引1ア)及び(引1イ)の「VIb族元素吹き出し管」は(引1ウ)の「吹き出し管21」に相当するから、引用文献1には、
「太陽電池のCu、In、Ga、Se化合物薄膜の製造方法であって、
真空容器1と、
該真空容器1内に配置された、Cu蒸着源8,In蒸着源9,Ga蒸着源10と、
該真空容器1内と、第1配管系13,第2配管系14を通じて連通した第2の真空容器15内に配置されたSe蒸着源12と、
第1配管系13は、開閉バルブ16を介装した主管17と、主管17の開閉バルブ16の下流側から分岐した複数の供給管18とを有していて、各供給管18は、開閉バルブ19,流量制御装置20を介装し、真空容器1の壁部を上下方向に貫通する1対の吹き出し管21を有しており、
送り出しローラ3に巻回された基板7と、
基板7を巻き取りローラ4に送り出す送り出しローラ3と、中間ローラ5、6とを備え、
真空容器1内をターボ分子ポンプ2により5×10^(-4)Pa以下の圧力まで排気し、
基板7を、送り出しローラ3から送り出し、
真空容器1内の中間ローラ5から中間ローラ6の間の基板7の製膜面に、
Seの蒸気吹き出し管21の開口部と基板の成膜面との距離を50mm以内として、
Cu蒸着源9、In蒸着源10、Ga蒸着源11、真空容器15内のSe蒸着源12をそれぞれ加熱して、真空容器1内のCu蒸着源9、In蒸着源10、Ga蒸着源11よりCu、In,Ga蒸気を放出させ、真空容器15内のSe蒸着源12からSe蒸気を放出させ、連続的にCu、In,Ga,Seの蒸気(蒸着粒子)を真空容器1内に供給して、製膜面上でCu(In,Ga)Se_(2)薄膜を蒸着形成し、
Cu(In,Ga)Se_(2)薄膜が形成された基板1を巻き取りローラ10に巻き取る太陽電池のCu、In、Ga、Se化合物薄膜の製造方法。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されているということができる。

(3)対比・判断
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明において、「真空容器1」内と「第2の真空容器15」とは、「第1配管系13,第2配管系14を通じて連通」していることから、該「真空容器1」、「第2の真空容器15」、「第1配管系13」、及び「第2配管系14」を合わせたものは、本件補正発明の「蒸着室」に相当する。
また、引用発明1の「Se蒸着源」に着目すると、該「Se蒸着源」は、「第2の真空容器15」内に配置され、該「第2の真空容器15」に連通する「第1配管系13」は、「開閉バルブ16を介装した主管17と、主管17の開閉バルブ16の下流側から分岐した複数の供給管18とを有していて、各供給管18は、開閉バルブ19,流量制御装置20を介装し、真空容器1の壁部を上下方向に貫通する1対の吹き出し管21を有して」いることから、「Se蒸着源」、「第2の真空容器15」及び「開閉バルブ16を介装した主管17と、主管17の開閉バルブ16の下流側から分岐した複数の供給管18とを有していて、各供給管18は、開閉バルブ19,流量制御装置20を介装し、真空容器1の壁部を上下方向に貫通する1対の吹き出し管21を有して」いる「第1配管系13」を合わせたものは、本件補正発明の「蒸着源」に相当する。
そして、引用発明1の「送り出しローラ3に巻回された基板7」は、太陽電池の基板であって、技術常識に照らして、長尺の帯状電極であることは明らかであるから、本件補正発明の「ロールに巻回された」「長尺の帯状電極基板」に相当する。
また、引用発明1の「送り出しローラ3」及び「巻き取りローラ4」は、本件補正発明の「帯状の電極基板を繰り出す繰出し機」及び「この帯状電極基板を巻き取る巻取り機」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明1の「太陽電池」、「真空容器1内をターボ分子ポンプ2により5×10^(-4)Pa以下の圧力まで排気」すること、「真空容器15内のSe蒸着源12を加熱して、真空容器15内のSe蒸着源12からSe蒸気を放出させ」ること、「真空容器1内の中間ローラ5から中間ローラ6の間の基板7の製膜面」及び「Cu(In,Ga)Se_(2)薄膜が形成された基板1」は、本件補正発明の「太陽電池モジュール」、「減圧」、「加熱蒸発」、「所定位置」及び「帯状太陽電池セル」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1は、「送り出しローラ3」及び「巻き取りローラ4」を用いて、連続的に蒸着して成膜することから、「ロール・トゥ・ロールによる連続蒸着法」を用いているということができる。
そして、引用発明1では、「Seの蒸気吹き出し管21の開口部と基板の成膜面との距離を50mm以内」としていることから、引用発明1の該構成は、本件補正発明の「基板と蒸着源との距離Lが50?100mm」の範囲と重複する。

そうすると、本件補正発明と引用発明1とは、
「太陽電池モジュールの製造方法であって、
蒸着室と、この蒸着室内に配置される蒸着源と、帯状の電極基板を繰り出す繰出し機と、この帯状電極基板を巻き取る巻取り機とを備え、ロール・トゥ・ロールによる連続蒸着法を用いて、ロールに巻回された長尺の帯状電極基板を、繰出し機から、減圧された蒸着室内の所定位置に繰り出し、蒸発源内の化合物半導体を加熱蒸発させながら、上記帯状電極基板を、この基板と上記蒸着源との距離Lが50?100mmになる位置を通過させ、帯状電極基板の表面に化合物半導体層を連続的に成膜して、長尺の帯状太陽電池セルを作製し、この帯状太陽電池セルをロールに巻き取る工程Aを含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。」である点で一致し、次の相違点1及び2で相違する。

(相違点1)
本件補正発明は、「複数の太陽電池セルを備え太陽電池モジュールの製造方法であって、
ロールに巻回された上記帯状太陽電池セルを送り出しながら検査する検査工程と、検査工程で発見された欠陥部位の基板流れ方向両側を、基板幅方向に切断して欠陥部位のみを取り除く欠陥切除工程とを備え、欠陥のない正常な太陽電池部位を、その帯の長さ方向に所定の寸法間隔で切断し、上記帯の長さ方向が長辺でかつ上記切断方向が短辺のストリップ状太陽電池セルを得る工程B(以下、単に「工程B」という。)と、
複数のストリップ状太陽電池セルを、互いの長辺側部どうしを上下に重ね合わせながら短辺方向に沿って並べ、当接する一方のセルの表面電極と他方のセルの裏面電極とを電気的に接続して、太陽電池モジュールを得る工程C(以下、単に「工程C」という。)と含む」のに対し、引用発明1の「太陽電池の製造方法」は、複数の太陽電池セルを備えるかどうかは明らかではなく、上記工程B及び工程Cのような工程は備えていない点。

(相違点2)
本件補正発明の帯状の電極基板は、「幅10?80mm」であるの対し、引用発明1の「基板」の幅は不明な点。

以下、相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明1のような、太陽電池用の基板に薄膜層を蒸着によって形成する場合、薄膜層に欠陥が生じる場合があることは当該技術分野における技術常識であり、基板の欠陥がある部分を検査によって特定し、欠陥がある部分を切除して良好な基板のみを用いるようにして、高い歩留りとすることも、ロール・トゥ・ロールの分野における技術常識である。

そして、引用刊行物2には、「複数の太陽電池層2が複数直列に接続されたセルストリングス4を形成する工程について、金属箔9上に太陽電池素子10が形成されてなるロール状の太陽電池シート15を繰り出し、セルカッター16によって太陽電池シート15を短冊状に所定の寸法で切断することにより、太陽電池層2を形成し、短冊状の太陽電池層2の端部同士を積層し、オーバーラップ層3を形成」し、太陽電池層2同士がオーバーラップ層3を介して接合されて、太陽電池層2が複数直列に接続されたセルストリングス4を形成する工程を備える「複数の太陽電池が直列接続された太陽電池モジュールの製造方法」(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
そうすると、本件補正発明の上記「工程C」は、引用発明2として、本願出願前に開示されていた技術思想であるということができる。

ここで、本件補正発明に関して、「工程A」、「工程B」及び「工程C」による「発明の効果」として、本願の明細書の発明の詳細な説明には、それぞれ次のような記載がある。
「本発明は、…(工程A)を備える。このため、基板の幅方向にも流れ方向にも電気的特性の揃った一定品質の帯状太陽電池セルを、安定して高収率で作製することができる。 また、…(工程B)を備えているため、カットロスが発生せず、モジュールの材料となるストリップ状太陽電池セルを、無駄なく高歩留りで作製することができる。
さらに、…(工程C)を備えている。そのため、太陽電池モジュールを容易に大面積化することができ、これにより、品質が良好な太陽電池モジュールを低コストで製造することができる。」(【0013】?【0015】)
そうすると、「工程A」、「工程B」及び「工程C」は、それらの工程が相互に有機的に結合しているものではなく、それぞれの工程による効果は、公知の個々の技術について当然予測される効果の単なる集合の域を出ないものであって、本件補正発明に特有の顕著な作用効果とみることはできない。

そうすると、引用発明1に、その発明の実施にあたって、必要に応じて適宜採用される技術常識及び引用発明2を寄せ集めて、本件補正発明の上記相違点1に係る発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(相違点2について)
ロール・トゥ・ロールを用いる太陽電池の製造方法において、幅10?80mmの基板を用いることが、格別のことであることを示す根拠はない。
そして、引用発明1における「基板」の幅は、必要とされる太陽電池の大きさ等、必要に応じて、当業者が適宜、決定する事項にすぎない。
また、引用発明1において、「基板」の幅を「幅10?80mm」とすることについての阻害要因は特段見出すことができない。
したがって、引用発明1において、「基板」の幅を「幅10?80mm」とすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明1、技術常識及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成26年5月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年12月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールの製造方法であって、ロールに巻回された幅10?80mmの長尺の帯状電極基板上に、ロール・トゥ・ロールで、連続蒸着法により化合物半導体層を形成して帯状太陽電池セルを得る下記の工程Aと、
上記帯状太陽電池セルをその帯の長さ方向に所定の寸法間隔で切断して、上記帯の長さ方向が長辺でかつ上記切断方向が短辺のストリップ状太陽電池セルを得る工程Bと、
複数のストリップ状太陽電池セルを、互いの長辺側部どうしを上下に重ね合わせながら短辺方向に沿って並べ、当接する一方のセルの表面電極と他方のセルの裏面電極とを電気的に接続して、太陽電池モジュールを得る工程Cと、を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
工程A:蒸着室と、この蒸着室内に配置される蒸着源と、上記帯状電極基板を繰り出す繰出し機と、この帯状電極基板を巻き取る巻取り機とを備え、上記帯状電極基板を、繰出し機から、減圧された蒸着室内の所定位置に繰り出し、蒸発源内の化合物半導体を加熱蒸発させながら、上記帯状電極基板を、この基板と上記蒸着源との距離Lが10?100mmになる位置を通過させ、帯状電極基板の表面に化合物半導体層を連続的に成膜して、長尺の帯状太陽電池セルを作製し、この帯状太陽電池セルを巻取り機に巻き取る工程。」
(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、及びその記載事項は、前記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「第2 1.」で検討した本件補正発明から請求項2に係る発明特定事項である「工程B」を省き、「この基板と上記蒸着源との距離L」について、「50?100mm」を「10?100mm」と拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 3.」に記載したとおり、引用発明1、技術常識及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1、技術常識及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、技術常識及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-14 
結審通知日 2015-04-21 
審決日 2015-05-12 
出願番号 特願2010-39439(P2010-39439)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 川端 修
松川 直樹
発明の名称 太陽電池モジュールの製造方法およびそれを用いて得られた太陽電池モジュール  
代理人 井▲崎▼ 愛佳  
代理人 西藤 征彦  
代理人 西藤 優子  
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