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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61G
管理番号 1302609
審判番号 不服2013-10749  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-10 
確定日 2015-07-22 
事件の表示 特願2011-53632号「抗重力縦伸歩行装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月4日出願公開、特開2012-187284号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年3月10日の出願であって、平成25年3月26日付けで拒絶査定がなされたところ、同年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、同年12月16日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成26年1月16日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年6月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。
「本人自身による自力による推進を行い、つま先立ちの状態で人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱、膝関節を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る身体支持杖であり、
地面とは複数個の車輪で支え、身体支持杖自身が本人が手を放しても地面に自立できることを特徴とする本人駆動自立杖。」

3.当審の拒絶理由
一方、当審において平成25年12月16日付けで通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりのものである。
理由1.本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3020788号公報(以下「引用文献」という)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.本願発明は、引用文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.引用文献に記載された事項
引用文献(登録実用新案第3020788号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
引1ア:「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、足、腰、脊髄に支障のある人が患部に負担が掛からないように歩行をするための歩行の補助、又、訓練をする為の歩行器に関する物である。」

引1イ:「【0005】
【課題を解決する為の手段】
馬蹄形に形成される中空管フレーム下方に、方向自在な台車を複数設け、その中空管フレームの上方には、分割固定出来る馬蹄形の手すりを設け、更に、手すり下部に有るそれぞれのロッドが各々の中空管フレームの中に入りその中で上下にスライドでき、その分割できる馬蹄形手すりが伸縮自在にそれぞれのロッドと各々の固定ネジにより、無段階に任意の位置に固定調整できる。更に、分割できる手すり前部後部の下部にあるロッドが、すべて中空管フレームの中に収納できないように、中空管フレームにピンを入れロッドが、そこ以上下がらない構造とする。手すりの平行な中央部を、松葉杖の脇の下支え部のように使用する為に、その手すりの下部に有るロッドと移動中空管フレームを、回転管フレームを介して馬蹄形に形成される中空管フレームより分離でき、尚且つ回転管フレームにより、その手すりは左右に接離して固定ネジにより任意の位置に固定できる。よって分割できる馬蹄形手すりの平行な中央部が、上下して更に左右に接離して使用する人の体格に合わせ使用することができ、更に、移動中空管フレーム外周を、固定ネジにて上下に無段階に固定調整できるハンドグリップ部を設けるので、歩行器に松葉杖の脇の下を支える機能を併用する事となる。
【0006】
【作用】
従来の歩行器として使用する時は、分割出来る馬蹄形の手すりをそれぞれ使用する人の任意の位置に、手すり下部にあるロッドを用い固定ネジにより固定する。固定ネジが緩み手すりが急に下がってもフレームの中に入れたピンがある為、手すりとフレームの間に指を挟む事がない。更に松葉杖のように脇の下を支える為、手すり中央部を脇の下支え部とし、その手すりの下部に有るロッドと移動中空管フレームを回転管フレームを介して馬蹄形に形成された中空管フレームより分離し尚且つ回転管フレームにより、その手すりは左右に接離して固定ネジにより任意の位置に固定でき、更に手すり下部にあるロッドを使用する事により、手すりを任意の高さに固定ネジにより固定できる。更に、移動中空管フレーム外周を上下固定することのできるハンドグリップ部を、使用することにより脇の下に手すり中央部を宛がいやすくし、又、ハンドグリップ部を持ち使用することもできる。よって歩行器に松葉杖の脇の下を支える部分を備える事により、従来の歩行器としての機能と、松葉杖の脇を支える機能を併用することができる。よって歩行器を使用する時、腕の力で体を支えるだけでなく、脇を支える事により使用する人の腕の力を必要とせずに背筋を延ばす事ができる。更に、腰、脊髄の不自由な人には脇を支える事により腰、脊髄に負担がかからない。又、松葉杖を使用する人で、バランスの悪い人は歩行器の安定性を得る事が出来る。」

引1ウ:「【0010】
図13の実施例図で示す松葉杖のように脇の下で体を支える為に、馬蹄型の手すりの平行な中央部(2)が脇の下を支える所とし、図6,7で示すように馬蹄型の手すりの平行な中央部(2)はロッド(9)を用いて移動中空管フレーム(10)より引き延ばし、使用する人の脇の高さに合わせ固定ネジ(6)により任意の高さに固定する。更に図6,13で示すように手すり中央部(2)を脇の幅に合わせる為、回転管(11)を内側に回転させ固定ネジ(6)により任意の位置に固定する。回転管(11)の軸は中空管フレーム(4)で構成する、更に、手すり中央部(2)の下部から伸びるロッド(9)は図3で示すように、他のロッド(8)より長くして長身の人でも使用できるようにする。又、図3のB点の断面図、図9,10で示すように、ロッド(9)は回転管(11)と中空管フレーム(20)の中をつきぬけて収納できる。」

引1エ:「【0018】
脇の下で体を支えるため腕の力を必要とせず脊髄を延ばす効果も有る。」

引1a:引1ア?引1エの記載及び図13の図示内容からして、引用文献に記載された松葉杖の機能を持つ歩行器は、使用者自身による自力による推進を行い、使用者が歩行して移動し得るものであって、地面とは複数個の台車で支え、松葉杖の機能を持つ歩行器自身が使用者が手を放しても地面に自立できるものといえる。
【図13】

以上によれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「使用者自身による自力による推進を行い、ロッドを用いて移動中空管フレームより引き延ばし固定ネジにより無段階に任意の高さに固定調整できる手すりの平行な中央部を松葉杖の脇の下支え部として使用し、使用者の脇の下を支えることにより、背筋、脊髄を延ばすことができ、腰、脊髄に負担がかからず、使用者が歩行して移動し得る松葉杖の機能を持つ歩行器であり、
地面とは複数個の台車で支え、松葉杖の機能を持つ歩行器自身が使用者が手を放しても地面に自立できる松葉杖の機能を持つ歩行器。」

5.対比・判断
5-1.理由1
(1) 対比・判断
引用発明の「使用者」は本願発明の「本人」に相当する。

引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」において、「手すりの平行な中央部」は「ロッドを用いて移動中空管フレームより引き延ばし固定ネジにより無段階に任意の高さに固定調整できる」ものであるから、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」は、「手すりの平行な中央部」を使用者がつま先立ちの状態となる高さに設定できるものといえる。
そして、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」において、使用者の身体をある程度上方に引き上げて支えれば、使用者の背筋、脊髄を延ばし、腰、脊髄に負担がかからないようになることは明らかであって、引用文献の記載に接した当業者であれば、「手すりの平行な中央部」で「使用者の脇の下を支えることにより、背筋、脊髄を延ばすことができ、腰、脊髄に負担がかからず、使用者が歩行して移動し得る」態様に、使用者の身体をある程度上方に引き上げて支えた、使用者がつま先立ちの状態となる態様もその一態様として当然含まれると理解することができる。
他方、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」は、「手すりの平行な中央部を松葉杖の脇の下支え部として使用し、使用者の脇の下を支えることにより」、使用者の身体の縦方向にかかる重力に抗し、「脊髄を延ばすことができ、腰、脊髄に負担がかから」ないものであることは明らかである。
そうすると、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」の上記態様に含まれる、使用者を脇の下である程度上方に引き上げて支えた、使用者がつま先立ちの状態となる態様において、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」は、本願発明と同様に、「つま先立ちの状態で人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱、膝関節を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る」ものといえるから、引用発明の「使用者自身による自力による推進を行い、ロッドを用いて移動中空管フレームより引き延ばし固定ネジにより無段階に任意の高さに固定調整できる手すりの平行な中央部を松葉杖の脇の下支え部として使用し、使用者の脇の下を支えることにより、背筋、脊髄を延ばすことができ、腰、脊髄に負担がかからず、使用者が歩行して移動し得る松葉杖の機能を持つ歩行器」は、本願発明の「本人自身による自力による推進を行い、つま先立ちの状態で人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱、膝関節を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る身体支持杖」に相当する。

引用発明の「台車」、「松葉杖の機能を持つ歩行器」は、本願発明の「車輪」、「本人駆動自立杖」に、それぞれ相当する。

以上によれば、本願発明と引用発明とは、
「本人自身による自力による推進を行い、つま先立ちの状態で人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱、膝関節を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る身体支持杖であり、
地面とは複数個の車輪で支え、身体支持杖自身が本人が手を放しても地面に自立できることを特徴とする本人駆動自立杖。」
である点で一致し、両者の間に相違点はない。

(2)まとめ
したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

5-2.理由2
(1)対比
引用発明の「使用者」は本願発明の「本人」に相当する。

引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」は、「手すりの平行な中央部を松葉杖の脇の下支え部として使用し、使用者の脇の下を支えることにより」、使用者の身体の縦方向にかかる重力に抗し、「脊髄を延ばすことができ、腰、脊髄に負担がかから」ないものであることは明らかであって、「人体支持杖」といえるから、引用発明の「使用者自身による自力による推進を行い、ロッドを用いて移動中空管フレームより引き延ばし固定ネジにより無段階に任意の高さに固定調整できる手すりの平行な中央部を松葉杖の脇の下支え部として使用し、使用者の脇の下を支えることにより、背筋、脊髄を延ばすことができ、腰、脊髄に負担がかからず、使用者が歩行して移動し得る松葉杖の機能を持つ歩行器」と本願発明の「本人自身による自力による推進を行い、つま先立ちの状態で人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱、膝関節を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る身体支持杖」とは、「本人自身による自力による推進を行い、人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る身体支持杖」である点で一致する。

引用発明の「台車」、「松葉杖の機能を持つ歩行器」は、本願発明の「車輪」、「本人駆動自立杖」に、それぞれ相当する。

以上によれば、本願発明と引用発明とは 次の点で一致する。
(一致点)
「本人自身による自力による推進を行い、人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る身体支持杖であり、
地面とは複数個の車輪で支え、身体支持杖自身が本人が手を放しても地面に自立できることを特徴とする本人駆動自立杖。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
本願発明の「身体支持杖」は、「つま先立ちの状態で人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱、膝関節を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る」ものであるのに対して、
引用発明の松葉杖の機能を持つ歩行器(身体支持杖)は、使用者をつま先立ちの状態とした本願発明の上記構成を有するか否か不明である点。

(2)判断
引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」において、「手すりの平行な中央部」は「ロッドを用いて移動中空管フレームより引き延ばし固定ネジにより無段階に任意の高さに固定調整できる」ものであるから、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」は、「手すりの平行な中央部」を使用者がつま先立ちの状態となる高さに設定できるものといえる。
また、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」において、使用者の身体をある程度上方に引き上げて支えれば、使用者の背筋、脊髄を延ばし、腰、脊髄に負担がかからないようになることは明らかである。
そうすると、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」において、「手すりの平行な中央部」を使用者の身体をある程度上方に引き上げた状態とする高さに設定することに格別の困難性は見出せない。
この場合、引用発明が「使用者が歩行して移動し得る松葉杖の機能を持つ歩行器」であることからして、使用者の身体をある程度上方に引き上げた状態とする高さとして、使用者が歩行できる「つま先立ちの状態」の高さを選択することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。
そして、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」において、「手すりの平行な中央部」を使用者がつま先立ちの状態となる高さとしたとき、引用発明の「松葉杖の機能を持つ歩行器」は、本願発明と同様に、「つま先立ちの状態で人体の縦方向にかかる重力に抗し、脊柱、膝関節を伸ばし重力による脊椎、腰、膝等にかかる荷重を軽減し得、本人が歩行して移動し得る」ものとなることは明らかである。
以上によれば、相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に基いて当業者が容易に想到し得る程度のものである。

本願発明の効果は、引用発明から当業者が予測し得た範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
したがって、本願は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-14 
結審通知日 2014-03-25 
審決日 2014-04-08 
出願番号 特願2011-53632(P2011-53632)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A61G)
P 1 8・ 121- WZ (A61G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 松下 聡
横林 秀治郎
発明の名称 抗重力縦伸歩行装置  

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