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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B24B 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 B24B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B24B |
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管理番号 | 1302706 |
審判番号 | 不服2014-24078 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-11-26 |
確定日 | 2015-07-23 |
事件の表示 | 特願2010-151566「研磨保持用パッド」拒絶査定不服審判事件〔平成24年1月19日出願公開、特開2012-11516、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成22年7月2日に出願したものであって,平成26年3月20日付けで拒絶理由が通知され,同年5月26日付けで手続補正がなされたが,同年8月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定は,平成26年3月20日付け拒絶理由通知書における理由2及び理由3についてなされたものであり、その概要は以下のとおりである。 理由2 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1には「前記連続気泡型発泡ウレタンシートは厚みが110μm以下であり、密度が990kg/m^(3)以下であって、」と記載されている。 しかし,発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題として「本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産コストを低減でき、低密度でありながら研磨砥粒を含むスラリーが気孔内に浸透することがなく、復元性に優れるため長期使用可能で、被研磨物との間にエアーの貯留の発生もなく、溶剤使用量が削減できるので環境汚染を改善できる研磨保持用パッドを提供することにある。」(段落0010)と記載されており,密度については「このため、皮膜の密度を上げるために整泡剤を用いない組成でパッド体を製造しているが、弾性体としてのウレタン発泡体の密度が600?800kg/m^(3)と極めて高い製品となってしまい、重量大でしかも原料費が高くなるという課題があった。」(段落0008)と記載されているから,発明として予定されている低密度とは,少なくとも600?800kg/m^(3)よりも低い密度であるはずである。 したがって,請求項1?3には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されておらず,請求項1?3に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。 理由3 この出願の請求項1?3に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物(1)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (1)特開2006-272522号公報 (以下「刊行物1」という) さらに,請求項2,3に係る発明については,以下の刊行物(2)?(4)を周知例として示す。 (2)特開2008-133403号公報 (3)特開2006-222349号公報 (4)特開2005-224888号公報 (以下「刊行物2」?「刊行物4」という) 第3 本件補正について 本件補正は,補正前の特許請求の範囲を 「 【請求項1】 長径が10μm以下の微細な開孔を有する連続気泡型発泡ウレタンシートの一面側に熱硬化性ウレタン発泡体が形成されており、研磨対象物を保持するための定盤に前記熱硬化性ウレタン発泡体の他面側を固着させて前記連続気泡型発泡ウレタンシートの他面側が前記研磨対象物に当接する研磨保持用パッドにおいて、前記連続気泡型発泡ウレタンシートは厚みが110μm以下であり、密度が990kg/m^(3)以下であって、前記熱硬化性ウレタン発泡体は圧縮永久歪が5%以下であり、厚みが連続気泡型発泡ウレタンシートより大きく、密度が200?400kg/m^(3)であることを特徴とする研磨保持用パッド。 【請求項2】 前記連続気泡型発泡ウレタンシートが、ポリウレタン樹脂、2-ブタノン、トルエンおよび水を必須成分とする混合液を工程紙に塗布し、加温することにより得られることを特徴とする請求項1記載の研磨保持用パッド。 【請求項3】 前記熱硬化性ウレタン発泡体の定盤への固着面が厚み調整平滑処理され、その平滑面に粘着材が塗工されているか、又は粘着テープが貼り合わせられていることを特徴とする請求項1又は2記載の研磨保持用パッド。」 と補正するものである。(下線は補正箇所を示す) そして,本件補正は,補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「熱硬化性ウレタン発泡体」を「圧縮永久歪が5%以下」及び「厚みが連続気泡型発泡ウレタンシートより大きく」と限定するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1?3に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明3」という)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 第4 独立特許要件について 1 記載要件(第36条第6項第1号)について 本願発明1は,「前記連続気泡型発泡ウレタンシートは厚みが110μm以下であり、密度が990kg/m^(3)以下であって、前記熱硬化性ウレタン発泡体は・・・厚みが連続気泡型発泡ウレタンシートより大きく、密度が200?400kg/m^(3)である」と特定されている。 本願発明1の研磨保持用パッドは,厚み110μm以下の薄い「連続気泡型発泡ウレタンシート」と「熱硬化性ウレタン発泡体」を一体に形成したものであり,2層に形成した研磨保持用パッドの表面層だけを密度の高い「連続気泡型発泡ウレタンシート」にした構成となっている。 そうすると,表面層を形成する「連続気泡型発泡ウレタンシート」と,表面層以外の残りの部分を形成する「密度が200?400kg/m^(3)である熱硬化性ウレタン発泡体」とからなる「研磨保持用パッド」は,「連続気泡型発泡ウレタンシート」の密度が上限の「990kg/m^(3)」であるとしても,全体として,少なくとも600?800kg/m^(3)よりも低い密度となることは,明らかである。 してみると,本願発明1は,本願明細書の段落【0008】及び【0010】に記載された課題を解決するものであり,第36条第6項第1号の要件を満たすといえる。 2 進歩性(第29条第2項)について (1) 各刊行物の記載内容 ア 刊行物1には,「研磨用バックアップ材およびその製造方法」について,表1,2とともに次の事項が記載されている。 (ア-1) 「【請求項1】 (A)ポリマー含有相と水相からなるポリマーエマルション、該エマルション中のポリマーが100重量部になる量; (B)起泡剤 1.0?6.0重量部;および (C)気泡安定剤 0.5?6.0重量部 を含むエマルション組成物を乾燥、発泡させて得られたポリマー発泡体層と、平均細孔径0.2?15μm、厚さ1?200μmの連続気泡の多孔性フィルムを含む研磨用バックアップ材。 【請求項2】 (A)ポリマー含有相と水相からなるポリマーエマルション、該エマルション中のポリマーが100重量部になる量; (B)起泡剤 1.0?6.0重量部;および (C)気泡安定剤 0.5?6.0重量部 を含むエマルション組成物を、平均細孔径0.2?15μm、厚さ1?200μmの連続気泡の多孔性フィルムの一方の面に流延し、乾燥、発泡させてポリマー発泡体とする工程を含む、請求項1記載の研磨用バックアップ材の製造方法。」 (ア-2) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、研磨用バックアップ材およびその製造方法に関し、さらに詳細には、エマルションから得られたポリマー発泡体層と、連続気泡の多孔性フィルムを含む研磨用バックアップ材に関する。 【背景技術】 【0002】 半導体ウェーハ、ガラス、金属などの小片の表面を研磨するためには、それらの小片(以下、研磨対象という)をバックアップ材に固着させて、研磨性物質を含み、回転または摺動する研磨材によって研磨する。バックアップ材としては、表面に研磨対象を固着させるに充分で、かつ研磨後に研磨対象を容易に脱離させる程度の軽い粘着性および/または吸着性を有するものが用いられる。」 (ア-3) 「【0010】樹脂系ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリブテン、オレフィン系共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン系共重合体、(メタ)アクリルエステル系(共)重合体;ならびにこれら相互の共重合体およびポリマーブレンドのような熱可塑性樹脂;さらに、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂のような熱硬化性樹脂が例示される。これらのうち、製造が容易なことから、熱硬化性樹脂が好ましい。」 (ア-4) 「【0024】 本発明に用いられる多孔性フィルムは、本発明のバックアップ材においてスキン層として寄与するものである。フィルムの両面の間を貫通する連続気泡を有する高分子フィルムであれば、その材質は、ゴムでも樹脂でもよい。ゴムとしては、NR、IR、NBR、SBR、CR、EPDMなど;樹脂としては、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどが例示され、柔軟性に優れ、かつ弾性率が高いことからウレタン樹脂が好ましい。 【0025】 多孔性フィルムの平均細孔径は、耐水性に優れ、かつ少量の水を吸収できることから、0.2?15μmであり、0.3?10μmが好ましく、0.5?8.0μmがさらに好ましい。平均細孔径が0.2μm未満では、吸水性が少なく、研磨対象との間に水膜を生じて研磨効果が得られない。また15μmを越えると吸水性が多すぎて、充分な研磨ができない。 【0026】 多孔性フィルムの厚さは、磨耗に耐えて繰り返し使用できることから1?200μmであり、50?150μmが好ましい。厚さが1μm未満では、吸水性が多すぎて研磨に適さず、また機械的にも弱くて、使用中に磨耗や破損を生じる。また厚さが200μmを越えても、それなりの効果が得られない。」 (ア-5) 「【0028】 本発明においては、上述の多孔性フィルムの一方の表面に、上述のエマルション組成物を流延し、水分を揮発させるとともに発泡させて、ポリマー発泡体層を形成させる。ポリマーがゴムの場合は、ゴムと架橋剤の種類に応じて、たとえば50?200℃の硬化温度に加熱して、必要に応じてエマルション組成物に配合した架橋剤や触媒を機能させることにより、硬化した発泡ゴムからなるポリマー発泡体層を得る。ポリマーが熱硬化性樹脂の場合は、同様に硬化温度に加熱して、必要に応じてエマルション組成物に配合した硬化触媒を機能させるなどの方法により、硬化した発泡樹脂からなるポリマー発泡体層を得る。ポリマーが熱可塑性樹脂の場合には、水分の揮発と発泡に必要な条件に加熱して、ポリマー発泡体層を得る。このようにして得られたポリマー発泡体層は、本発明のバックアップ材においてスキン層(当審注:「コア層」の誤記)として寄与するものである。 【0029】 ポリマー発泡体層の厚さは、磨耗に耐えて繰り返し使用できることから通常0.2?2.0mmであり、0.5?1.0mmが好ましい。ポリマー発泡体層は、独立気泡でも連続気泡でもよく、その平均セル径または細孔径は、水分を保持できることから、通常10?100μmであり、20?80μmが好ましい。そのセル径または細孔径は、たとえば平均セル径または細孔径の50?150%の範囲に、形成されたセルの90%以上が含まれる分布を示すように、均質であることが好ましい。」 (ア-6) 「【0031】 本発明のバックアップ材の多孔性フィルム側の表面に、半導体ウェーハのような研磨対象を固着させて、研磨材によって研磨することができる。すなわち、バックアップ材の多孔性フィルムをスキン層、ポリマー発泡体をコア層として用いる。この際、表面を水で湿らせることにより、少量の水がスキン層を通ってコア層に保持され、表面に浸出しないことにより、研磨対象を保持することができる。研磨終了後、手ではがすことにより、研磨対象をバックアップ材より容易に脱離させることができる。 【0032】 各種寸法の物品、たとえば各種寸法のガラス板の研磨に、反覆してバックアップ材として用いる場合、研磨の際に加えられる圧縮力によってバックアップ材がひずむと、バックアップ材表面の平滑性が失われ、寸法のより大きい物品の研磨に用いることができない。したがって、バックアップ材の圧縮残留ひずみは、小さい方が好ましく、30%以下であることが特に好ましい。」 (ア-7) 「【0035】 実施例および比較例に、次のような原料および多孔性ウレタン樹脂フィルムを用いた。 A-1:合成IRラテックス、固形分63%、ポリマー分60% B-1:オレイン酸カリウム C-1:塩化エチル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物 F-1:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径0.3μm、厚さ100μm F-2:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径1.0μm、厚さ100μm F-3:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径25μm、厚さ100μm F-4:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径1.0μm、厚さ0.5μm ただし、フィルムF-3およびF-4は、比較のためのフィルムである。 【0036】 実施例および比較例によって得られたポリマー発泡体層の表面状態、見掛け密度、機械的強さ、粘着性および圧縮残留ひずみを、次のようにして測定した。 見掛け密度:JIS K6400に準じて、室温で測定した。 引張り強さ・伸び:JIS K6400に準じ、1号形ダンベルにより、室温で測定した。 表面状態:電子顕微鏡により、シートから無作為に選択した3箇所の部分の、発泡体の1cm×1cmの視野について、フォーム表面のピンホールの数を観察し、その数の平均値から表2の脚注に示すような3段階のレイティングによる評価を行った。 粘着性:ステンレス台に幅30mmの両面粘着テープを貼り、それに同じ幅のフォーム試料を重ねて貼り付け、オートグラフ(島津製作所(株)商品名)により、引きはがし速度200mm/minで、引きはがしに必要な力を求めた。測定を、ドライ(成形したフォームそのもの)とウェット(フォームに水を50%含浸した状態)の2つの状態についてそれぞれ行った。 圧縮残留ひずみ:厚さ0.8mmのシートを重ね合わせて、50mm×50mm、厚さ24.8mmの試料を作製し、これをJIS K6400の方法に準じて、温度25±1℃、厚さ方向の圧縮率50%で、22時間の圧縮を行ったときの残留ひずみ率を測定した。 残留ひずみ率(%)=〔(t_(0)-t_(1))/t_(0)〕×100 t_(0):初めの試験片の厚さ(mm) t_(1):試験後の試験片の厚さ(mm) 吸水量:ステンレス板に、100mm×100mmの試料の、フィルム側とは反対の面を両面テープで貼り付けた。ついでポリビニルアルコール製スポンジに水を含ませて、試料の上に荷重500gでこすり付けることを1,000回繰り返した。試料をはずして、その吸水量を測定し、試料1個あたりの重量で示した。」 (ア-8) 「【0037】 実施例1、2、比較例1、2 表1に示す配合比により、撹拌混合槽に、ポリマーラテックスA-1を仕込み、ゆっくり撹拌しながら、これにB-1およびC-1を添加した。ただし、表1において、A-1の配合量は、ラテックスに含まれるポリマーの量で示す。ついで、せん断速度が4,000m^(-1)になるように室温で30分撹拌して、均質なラテックス混合物を調製した。これをポリウレタン樹脂製多孔性シートF-1?F-4の、剥離剤層側の表面に流延し、160℃で10分加熱することにより、架橋、接着と発泡を行わせて、1m×1m、厚さ0.8mmの連続気泡ポリマー発泡体層と多孔性フィルムからなるシートを作製した。これを所定の寸法に切断して、前述の測定方法による評価に供した。 【0038】 比較例3 ポリマーラテックスA-1より、実施例1などと同様に調製したラテックス混合物を、剥離処理したPETフィルム表面に流延して、厚さ0.8mmのシートを作製した。このシートから得た試料を、実施例1、2および比較例1、2と同様の評価に供した。 【0039】 【表1】 【0040】 実施例1、2および比較例1?3のフォームシートの評価結果は、表2のとおりである。表2から明らかなように、本発明による合成ゴムフォームシートは、優れた機械性質を示し、表面の平滑性に優れていてピンホールがなく、バックアップ材に好適な吸水量を示し、圧縮残留ひずみが小さいなど、半導体ウェーハなどの研磨の際のバックアップ材として好適な、表面状態および粘着性を示した。 【0041】 【表2】 」 イ 刊行物2には,「発泡体の製造方法」について,図1?4とともに次の事項が記載されている。 (イ-1) 「【0025】 本発明において使用される発泡剤としては、特に限定されるものではないが、均一な発泡体が得られることから、非反応性ガス、揮発性液体、熱分解型発泡剤および水からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。 【0026】 上記の非反応性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。ここで非反応性ガスとは高分子材料や高分子材料を製造するための成分と実質的に反応しない気体を意味する。 【0027】 上記の揮発性液体とは揮発性を有する液体を意味する。揮発性液体としては、常圧(1atm)における沸点が20?200℃の範囲にあるものが好ましく、50?150℃の範囲にあるものがより好ましく、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;アセトン、2-ブタノン、メチルイソプロピルケトン、メチル-イソブチルケトン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ペンタン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化合物などが挙げられる。」 ウ 刊行物3には,「研磨パッド用クッション材」について,図1とともに次の事項が記載されている。 (ウ-1) 「【技術分野】 【0001】 この発明は、半導体ウェーハや回路形成過程でウェーハの平坦化に用いる研磨パッド用クッション材に関し、特に、ウェーハ全体にわたって均一で高精度に平坦化な研磨を発現する研磨パッド用クッション材に関する。 【背景技術】 【0002】 半導体ウェーハは、化学機械研磨法(以下、CPM法と略称する)と称される方法において、化学機械的に研磨して平坦化されている。このCPM法における研磨装置では、研磨パッドが用いられる。この研磨パッドは、表層(上層)と下層で構成されており、表層は硬質材料(以下、表層材と称す)で形成され、下層はクッション材(軟質材料)で形成される。 従来、この研磨パッドのクッション材はポリウレタンフォームが多く使用されているが、ポリウレタンフォームのクッション材は、通気性があるため研磨過程で研磨に用いられるスラリー水分を吸収・膨潤し、部分的もしくは全体的に「へたり」が生じたり、弾性が変化したりする。研磨パッドは、表層材とクッション材とが一体に形成されているために、クッション材の膨潤変形が進むと表層材にも影響し、均一で精度ある研磨が行えず、研磨パッドの交換頻度が多くなる課題がある。」 (ウ-2) 「【0017】 次に、この発明を実施例および比較例により具体的に説明する。ここで部および%は重量基準とする。この実施例および比較例におけるポリウレタン発泡体の硬化性組成物で得られる発泡体の作成は、疎水性ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、その他添加剤等からなる配合物を混合撹拌して得られた反応原料を塗布バーを用いて剥離処理を施したPETフイルム等の工程紙の剥離面に均一塗布後、上面にも剥離処理面がくるように工程紙を被せた後に加熱オープン(70℃×3分+120℃×4分)で発泡硬化し自己スキンを形成させたシート状のポリウレタン発泡体を得る方法で作製した。PETフィルムと一体のポリウレタン発泡体の作成は、前記において上面に被せる工程紙としてのPETフィルムが剥離処理を施さないものを使用する。後述する性能評価は常温で3日間エージングしたものを試験片として測定を行った。」 (ウ-3) 「【0027】 25%圧縮残留歪: (1)容易に変形しない平滑な2枚の圧縮用金属板を用い、試験片の厚さの75%に平行に圧縮固定して、温度23±2℃の環境に24時間保持する。24時間後、試験片を圧縮板から取り出し、30分放置した後、厚さを測定する。 圧縮残留歪=(試験前の厚み-試験後の厚み)/試験前の厚み×100 (2)圧縮残留歪の値が大きくヘタリが生ずると、長期のクッション性が劣り、好ましくない。」 エ 刊行物4には,「被研磨加工物の保持材」について,図1?8とともに次の事項が記載されている。 (エ-1) 「【0017】 前記保持材4は、図1に示す如く、PETフィルムまたはポリエステル織布等からなる基材10と、この基材10上に積層された弾性を有する多孔体(発泡層)11と、この多孔体11上に積層された粘着材層13と、基材10の裏面(キャリアプレート2側の面)に積層された感圧粘着材層3とを有する。なお、この感圧粘着材層3の裏面には、離型シート15が剥離可能に貼着されている。基材10と多孔体11とにより湿式凝固多孔質シート材12が構成されている。」 (エ-2) 「【0042】 実施例1と同様の方法で該当の保持シート材料の評価を行った。 研磨に供することが出来た回数は約400回であった。しかし、保持シート材料の厚さが薄く、研磨中の歪みを解消できなかった為、被研磨加工物の精度はやや低下した。研磨に供することが出来た回数は約500回であった。 実施例4 実施例4にかかる保持材4を、図7に示す。厚さ188μのPETフィルム上にウレタン樹脂組成物を塗工し、湿式成形後、洗浄、乾燥工程を経て、基材フィルムを含む厚さ1000μのシート材を得た。シート材の厚さ精度を高めるために裏面のPETフィルムを一旦剥がし、この面にバフがけを行い、800μmの湿式凝固多孔質シート材12とした、さらに裏面のバフ面両面テープを貼り付け多孔体シート材料とした。このシート材料の表面(銀面側)に30μmの厚さにアクリル系粘着材13を塗布した。塗布はグラビアロールで粘着材を塗工ロールから転写してウレタン樹脂多孔体11aの銀面に塗工した。このとき、粘着材層13の貫通孔17が、ウレタン樹脂多孔体11aの銀面にまで貫通するように塗布面をパターン化させた。このとき貫通孔17の開口形状は、短径側が300μ、長径側が600μであった。」 2 当審の判断 (1)引用発明 ア 上記記載事項(ア-1)の「【請求項1】・・・エマルション組成物を乾燥、発泡させて得られたポリマー発泡体層と、平均細孔径0.2?15μm、厚さ1?200μmの連続気泡の多孔性フィルムを含む研磨用バックアップ材。・・・【請求項2】・・・エマルション組成物を、平均細孔径0.2?15μm、厚さ1?200μmの連続気泡の多孔性フィルムの一方の面に流延し、乾燥、発泡させてポリマー発泡体とする」,同(ア-6)の「【0031】本発明のバックアップ材の多孔性フィルム側の表面に、半導体ウェーハのような研磨対象を固着させて、研磨材によって研磨することができる」及び同(ア-7)の「【0035】実施例および比較例に、次のような原料および多孔性ウレタン樹脂フィルムを用いた。・・・F-1:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径0.3μm、厚さ100μm F-2:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径1.0μm、厚さ100μm」からみて,刊行物1には,「平均細孔径0.3又は1.0μmの微細な開孔を有する連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルムの一面側にポリマー発泡体が形成されており,前記連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルムの他面側が研磨対象に当接する研磨用バックアップ材」が記載されている。 イ 上記記載事項(ア-7)の「【0035】実施例および比較例に、次のような原料および多孔性ウレタン樹脂フィルムを用いた。・・・F-1:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径0.3μm、厚さ100μm F-2:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径1.0μm、厚さ100μm・・・」からみて,刊行物1には,「連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルムは厚みが100μmである」ことが記載されている。 ウ 上記記載事項(ア-5)の「【0029】ポリマー発泡体層の厚さは、磨耗に耐えて繰り返し使用できることから通常0.2?2.0mmであり、0.5?1.0mmが好ましい。」,同(ア-6)の「【0032】・・・バックアップ材の圧縮残留ひずみは、小さい方が好ましく、30%以下であることが特に好ましい。」,同(ア-7)の「【0035】・・・F-1:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径0.3μm、厚さ100μm F-2:連続気泡微細孔ウレタン樹脂、平均細孔径1.0μm、厚さ100μm・・・【0036】実施例および比較例によって得られたポリマー発泡体層の表面状態、見掛け密度、機械的強さ、粘着性および圧縮残留ひずみを、次のようにして測定した。・・・」及び同(ア-8)「【0037】実施例1、2、・・・均質なラテックス混合物を調製した。これをポリウレタン樹脂製多孔性シートF-1?F-4の、剥離剤層側の表面に流延し、160℃で10分加熱することにより、架橋、接着と発泡を行わせて、1m×1m、厚さ0.8mmの連続気泡ポリマー発泡体層と多孔性フィルムからなるシートを作製した。」並びに表1及び表2からみて,刊行物1には,「前記ポリマー発泡体は,合成IRラテックスのポリマー発泡体であって,圧縮残留歪が10%であり,厚みが0.7mm,見掛け密度が0.41g/cm^(3)である」ことが記載されている。 そして,上記ア?ウを総合すると,刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる。 「平均細孔径0.3又は1.0μmの微細な開孔を有する連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルムの一面側にポリマー発泡体が形成されており,前記連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルムの他面側が研磨対象に当接する研磨用バックアップ材において,前記連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルムは厚みが100μmであって,前記ポリマー発泡体は,合成IRラテックスのポリマー発泡体であって,圧縮残留歪が10%,厚みが0.7mm,見掛け密度が0.41g/cm^(3)である研磨用バックアップ材。」 (以下「引用発明」という) (2)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明を比較する。 (ア)引用発明の「連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルム」が本願発明1の「連続気泡型発泡ウレタンシート」に相当するといえるから,引用発明の「平均細孔径0.3又は1.0μmの微細な開孔を有する連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルム」と本願発明1の「長径が10μm以下の微細な開孔を有する連続気泡型発泡ウレタンシート」とは,「微細な開孔を有する連続気泡型発泡ウレタンシート」の点で共通する。 (イ)引用発明の「合成IRラテックスのポリマー発泡体」と本願発明1の「熱硬化性ウレタン発泡体」とは,「ポリマー発泡体」の点で共通する。 (ウ)「100μm」は,「110μm以下」に含まれるから,引用発明の「前記連続気泡の多孔性ウレタン樹脂フィルムは厚みが100μmであって」は,本願発明1の「前記連続気泡型発泡ウレタンシートは厚みが110μm以下であり」に相当するといえる。 (エ)「0.7mm」は「100μm」より大きいから,引用発明の「前記ポリマー発泡体は,合成IRラテックスのポリマー発泡体であって,圧縮残留歪が10%,厚みが0.7mm,見掛け密度が0.41g/cm^(3)である」と本願発明1の「熱硬化性ウレタン発泡体は圧縮永久歪が5%以下であり、厚みが連続気泡型発泡ウレタンシートより大きく、密度が200?400kg/m^(3)である」とは,「ウレタン発泡体は,厚みが連続気泡型発泡ウレタンシートより大きく」の点で共通する。 (オ)引用発明の「研磨用バックアップ材」は,本願発明1の「研磨保持用パッド」に相当する。 そうすると,両者は,以下の点で一致する。 <一致点> 「微細な開孔を有する連続気泡型発泡ウレタンシートの一面側にポリマー発泡体が形成されており,前記連続気泡型発泡ウレタンシートの他面側が研磨対象物に当接する研磨保持用パッドにおいて,前記連続気泡型発泡ウレタンシートは厚みが110μm以下であって,前記ポリマー発泡体は,厚みが連続気泡型発泡ウレタンシートより大きい研磨保持用パッド。」 また,両者は,以下の点で相違する。 <相違点1> 「ポリマー発泡体」について,本願発明1では「熱硬化性ウレタン」であり,「圧縮永久歪が5%以下であり、密度が200?400kg/m^(3)である」のに対し,引用発明では「合成IRラテックス」であり,「圧縮永久歪が10%,見掛け密度が0.41g/cm^(3)である」点。 <相違点2> 本願発明1では「研磨対象物を保持するための定盤に前記熱硬化性ウレタン発泡体の他面側を固着させ」るのに対して,引用発明では不明である点。 <相違点3> 「連続気泡型発泡ウレタンシート」について,本願発明1では「長径が10μm以下の微細な開孔を有する」,「密度が990kg/m^(3)以下であ」るのに対して,引用発明では「平均細孔径0.3?1.0μmの微細な開孔」であり,その密度が不明である点。 イ 相違点1について 上記記載事項(ア-3)の「【0010】樹脂系ポリマーとしては、・・・さらに、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂のような熱硬化性樹脂が例示される。これらのうち、製造が容易なことから、熱硬化性樹脂が好ましい。」及び(ア-5)の「【0028】本発明においては、上述の多孔性フィルムの一方の表面に、上述のエマルション組成物を流延し、水分を揮発させるとともに発泡させて、ポリマー発泡体層を形成させる。・・・ポリマーが熱硬化性樹脂の場合は、同様に硬化温度に加熱して、必要に応じてエマルション組成物に配合した硬化触媒を機能させるなどの方法により、硬化した発泡樹脂からなるポリマー発泡体層を得る。・・・」からみて,刊行物1には「ポリマー発泡体を熱硬化性ウレタンポリマー発泡体とする」ことも記載されている。 また,本願発明1の「密度」が「見掛け密度」かどうかは,本願明細書には明示されていないが,JIS K6400等を考慮すると,「見掛け密度」を意味するといえる。そして,引用発明の「0.41g/cm^(3)」は,換算すると「410kg/m^(3)」であるから,本願発明1の「密度が200?400kg/m^(3)」とは,上限値の「400kg/m^(3)」と近い値ではある。しかし,引用発明のポリマー発泡体は「合成IRラテックス」であり,本願発明1の「熱硬化性ウレタン」とは材質が異なるものであるから,上記「見掛け密度」の数値範囲が必ずしも重なるものではない。 そして,引用発明の「圧縮残留ひずみ」が「圧縮永久歪」と同義であり,上記記載事項(ア-6)の「【0032】・・・バックアップ材の圧縮残留ひずみは、小さい方が好ましく、30%以下であることが特に好ましい。」からみて,刊行物1には,「ポリマー発泡体」の圧縮永久歪を小さくすることが記載されているとしても,「圧縮永久歪が5%以下の熱硬化性ウレタン発泡体」が記載されているあるいは示唆されているとまではいえない。 さらに,上記記載事項(ウ-3)の「・・・圧縮残留歪の値が大きくヘタリが生ずると、長期のクッション性が劣り、好ましくない。」及び特開2009-209203号公報の段落【0020】の「・・・ヘタリが少なく(すなわち、低歪で)耐久性に優れたフォームの製造・・・」という記載からみて,「圧縮永久歪の値を小さくする」という課題が本件出願前周知であるとしても,該「圧縮永久歪が5%以下の熱硬化性ウレタン発泡体」は,刊行物2ないし4には記載されておらず,自明なものとはいえない。 そうすると,引用発明の「合成IRラテックスのポリマー発泡体」を「熱硬化性ウレタン発泡体」に変更することの動機付けが存在するとしても,「圧縮永久歪が5%以下であり、・・・密度が200?400kg/m^(3)である」を達成し,相違点1に係る本願発明1の構成とすることが,当業者ならば容易に想到し得る事項であるとは,到底いえない。 ウ 効果について そして,相違点1により,本願発明1は,引用発明,刊行物2ないし4の記載及び上記従来周知の事項から,当業者といえども予測し得ない,本願明細書の段落【0016】に記載された格別顕著な効果を奏するものである。 エ まとめ したがって,本願発明1は,相違点2,3を検討するまでもなく,相違点1において,引用発明,刊行物2ないし4記載の発明及び従来周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本願発明2,3について 本願発明2,3は,本願発明1の特定事項である「前記連続気泡型発泡ウレタンシート」及び「熱硬化性ウレタン発泡体」について,それぞれ,「ポリウレタン樹脂、2-ブタノン、トルエンおよび水を必須成分とする混合液を工程紙に塗布し、加温することにより得られる」及び「定盤への固着面が厚み調整平滑処理され、その平滑面に粘着材が塗工されているか、又は粘着テープが貼り合わせられている」と限定したものである。 そして,「上記(2)本願発明1について」において判断したとおり,該限定を含まない本願発明1が,引用発明,刊行物2ないし4記載の発明及び従来周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから,本願発明2,3も,引用発明,刊行物2ないし4記載の発明及び従来周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合し,本願については,原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2015-07-09 |
出願番号 | 特願2010-151566(P2010-151566) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B24B)
P 1 8・ 575- WY (B24B) P 1 8・ 537- WY (B24B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石井 孝明、大山 健 |
特許庁審判長 |
西村 泰英 |
特許庁審判官 |
栗田 雅弘 刈間 宏信 |
発明の名称 | 研磨保持用パッド |
代理人 | 清水 定信 |