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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1302802
審判番号 不服2015-192  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-05 
確定日 2015-07-28 
事件の表示 特願2012-526762「ユーザ認証の方法、装置およびサーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日国際公開、WO2011/028327、平成25年 2月 4日国内公表、特表2013-504099、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本件請求に係る出願(以下「本願」という。)は,
2009年9月1日(以下「優先日」という。)の中華人民共和国における出願を基礎とするパリ条約による優先権主張を伴った,
2010年7月20日を国際出願日とする出願であって,
平成24年2月9日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され,
平成25年6月20日付けで審査請求がなされ,
平成26年3月5日付けで拒絶理由通知(平成26年3月11日発送)がなされ,
平成26年6月11日付けで意見書が提出されるとともに,
同日付けで誤訳訂正書が提出され,
平成26年8月27日付けで拒絶査定(平成26年9月2日謄本発送・送達)がなされ,
平成27年1月5日付けで審判請求がされるとともに,
同日付けで手続補正書が提出され,
平成27年3月9日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ,
平成27年5月25日付けで上申書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は平成27年1月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものと認める。

「ユーザ認証の方法であって,
複数の画像をコンピュータ可読記憶媒体内に記憶することと,
複数の回転方向を定義することと,
チェックコードの要求をクライアントから受信することに応答して,定義された回転方向に従って前記コンピュータ可読記憶媒体から取り出された画像を回転させることであって,前記回転させることは,
前記定義された回転方向に従って回転方向のパラメータ値の群をランダムに生成することと,
多数の画像を前記コンピュータ可読記憶媒体から取り出すこととであって,回転方向のパラメータ値の前記群内のパラメータ値の数と等しい数の画像を取り出すことと,
回転方向のパラメータ値の前記群に従って前記画像を回転させることとをさらに含み,
クライアントの識別子と,前記取り出された画像の前記回転方向とを対応付けて記憶することと,
前記回転された画像を前記クライアントに提供することと,
前記画像の回転方向を前記クライアントから受信することと,
前記クライアントの識別子と対応付けて記憶された前記画像の前記回転方向を取り出すことと,
前記クライアントから受信された前記画像の前記回転方向が,当該クライアントの識別子と対応付けられて記憶された前記画像の前記回転方向と整合するかを判定し,整合する場合は,ユーザ認証の成功を示し,整合しない場合は,前記ユーザ認証の失敗を示すことと,を含む方法。」

第3 引用文献

本願優先日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,原審の平成26年3月5日付け拒絶理由通知で引用された,Gossweiler, R., et al.,What's up CAPTCHA?: a CAPTCHA based on image orientation,In Proceedings of the 18th international conference on World wide web (WWW '09),2009年 4月,pp. 841-850,[retrieved on 2014-03-05.] Retrieved from the Internet (以下,「引用文献」という。)には,関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「Using CAPTCHAs, services can distinguish legitimate users from computer bots while requiring minimal effort by the human user.
We present a novel CAPTCHA which requires users to adjust randomly rotated images to their upright orientation.」(841頁右欄2?6行)
(当審訳:CAPTCHAを用いて,サービスは,人間ユーザによる最小限の労力を必要としつつ,コンピュータのボットから正規のユーザを区別することができる。
我々はユーザに,ランダムに回転された画像を直立状態に調整することを要求する新たなCAPTCHAを提示する。)

B 「4.1.1 Image Dataset
The set of images used for our rotational CAPTCHA experiment was collected from the top 1,000 search results for popular image queries. We rejected from the dataset any image which could be machine-recognizable, according to the process described in Section 3. From the remaining candidate images, we selected a set of approximately 500 images to be the final dataset which we used in our study.」(845頁右欄4.1.1の1?7行)
(当審訳:4.1.1 画像データセット
回転CAPTCHA実験に使用される画像集合は,一般向けの画像クエリでのサーチ結果の上位1000から収集される。我々は,第3節に記述されたプロセスに従って,データセットから機械認識可能な画像を全て排斥する。
我々は,残った候補画像から,研究で用いる最終データセットである約500枚の画像集合を選択する。)

C 「“This experiment will present a series of images one at a time. Each image will be rotated to a random angle. Use the provided slider to rotate the image until you believe it is in its natural, upright position, then press submit to go to the next image. This process will continue until you have adjusted ten images.”
Figure 5 shows a screenshot of an example trial in the viability study written using cross-browser JavaScript and DHTML. Each user was asked to rotate 10 images to their natural upright position. The first six images and their offset angles were the same for each user.
We kept these trials constant to ensure that we would have a significant sample size for some of the problem instances. Figure 6 shows the first six images at the orientation that they were shown to the users. The last four images and their offset angles were randomly selected at runtime. We did this to evaluate our technique on a wide variety of images.For each trial, we recorded the image-ID, the image’s offset angle (a number between ±180 which indicated the position the image was presented to the user), and the user’s final rotation angle (a number between ±180 which indicated the angle at which the user submitted the image).」(846頁左欄1?2段落)

(当審訳:“この実験では,一度に1枚づつ一連の画像を提示します。各画像はランダムな角度に回転されます。あなたが,画像が自然な直立位置にあると信じられるまで,設けられたスライダを使用し画像を回転させて下さい。それから,送信ボタンを押して次の画像に進んで下さい。このプロセスは,あなたが10枚の画像を調整するまで続きます。”
図5は,クロスブラウザJavaScriptとDHTMLを使って書かれた実現可能性の研究の試行例のスクリーンショットを示している。各ユーザは,10枚の画像を自然な直立位置に回転するよう依頼された。最初の6枚の画像とそのオフセット角度はユーザ毎に同じだった。我々は,問題インスタンスの一部の重要なサンプルサイズを持つであろうことを確かにするために一定のこれらの試験を続けた。図6は,それらがユーザに示された方向で最初の6枚の画像を示す。最後の4枚の画像とそれらの複数のオフセット角度は,実行時にランダムに選択された。我々は,画像の多種多様な技術を実行して評価した。各試行に対して,我々は,画像ID,画像のオフセット角(画像がユーザに提示された位置を示す±180の間の数),及び,ユーザの最終的な回転角度(ユーザが画像を送信した角度を示す±180の間の数)を記録した。)

D 「In our analysis, the human success rate is determined by the
average probability that a user can rotate an image correctly.」(847頁右欄8?9行)
(当審訳:我々の解析において,人間の成功率は,ユーザが画像を正しく回転できる平均確率により決定される。)

E 「Since our images have 360 degrees of freedom for rotation, computers would have a 1/360 chance at guessing the exact upright orientation (to within 1°).」(848頁左欄の1?4行)
(当審訳:我々の画像は,回転のために360度の自由を持つ。コンピュータは,(1度以内の)正確な直立方向を推測する360分の1のチャンスがある。)

F 「All users participated in the study from a Firefox Browser on a desktop computer located in a usability lab on the Google Campus.
This study asked users to do two tasks: to rotate a set of images into their natural, upright positions (Figure 11A) and to type distorted text into a textbox (Figure 11B). Each task, “rotate image” and “decipher text”, had five trials, and the order of these tasks was counterbalanced across users.
Before the “rotate image” task (Figure 11A), users were told we were measuring their ability to accurately rotate an image to its natural, upright position. Each trial consisted of three images shown to a user on the page. We chose three images because our previous study indicated that at least three images would be needed for an effective system. The 15 images that users rotated were randomly selected from the web and processed as described earlier, and we generated a random angle to offset each image. These 15 images were always presented in the same order to users. Users were instructed to press the submit button after adjusting the images in each trial to their upright orientation.」(848頁左欄4.2.1の7行?右欄6行)
(当審訳:全てのユーザは,グーグルキャンパスのユーザビリティ研究所内に位置するデスクトップコンピュータ上のFirefoxブラウザから,研究に参加した。
本研究では,二つのタスクを実行することをユーザに依頼した:
画像集合を自然な直立位置に回転すること(図11A)と,テキストボックスに歪んだテキストを入力すること(図11B)である。各タスク「画像回転」「テキスト解読」は,5件の試行があったが,これらのタスクの順序は,ユーザ間で釣り合いが取れていた。
「画像回転」タスク(図11A)の前に,ユーザは,自然な直立位置に画像を正確に回転させる能力を測定していると聞かされた。各試行は,ユーザに表示されるページ上の三つの画像から構成された。
我々の以前の研究が,少なくとも3枚の画像が効果的なシステムのために必要とされるであろうことを示したので,我々は三つの画像を選択した。ユーザが回転した15枚の画像は,ウェブからランダムに選択され,前述したように処理されたものである。我々は各画像をオフセットするために,ランダムな角度を生成した。これらの15枚の画像は,ユーザに常に同じ順序で提示された。ユーザは,各試行で複数画像を直立方向に調整した後,送信ボタンを押すように指示された。)


以下に,引用文献に記載された事項について検討する。

(1)上記Aの「CAPTCHAを用いて,サービスは,人間ユーザによる最小限の労力を必要としつつ,コンピュータのボットから正規のユーザを区別することができる。」旨の記載からすると,
引用文献には,“CAPTCHAを用いて正規ユーザを区別する方法”が記載されていると解される。

(2)上記Bの「回転CAPTCHA実験に使用される画像集合は,一般向けの画像クエリでのサーチ結果の上位1000から収集される。」,「我々は,残った候補画像から,研究で用いる最終データセットである約500枚の画像集合を選択する。」旨の記載からすると,
引用文献に記載の「CAPTCHA」は,複数の画像のデータセットを用いるものであるから,
引用文献には,“CAPTCHAに用いる複数の画像のデータセットを記憶すること”が記載されていると解される。

(3)上記Aの「我々はユーザに,ランダムに回転された画像を直立状態に調整することを要求する新たなCAPTCHAを提示する」,上記Cの「この実験では,一度に1枚づつ一連の画像を提示します。各画像はランダムな角度に回転されます。・・・(中略)・・・それから,送信ボタンを押して次の画像に進んで下さい。」,「最後の4枚の画像とそれらの複数のオフセット角度は,実行時にランダムに選択された。」,上記Fの「全てのユーザは,グーグルキャンパスのユーザビリティ研究所内に位置するデスクトップコンピュータ上のFirefoxブラウザから,研究に参加した。」,「各試行は,ユーザに表示されるページ上の三つの画像から構成された。」,「我々は各画像をオフセットするために,ランダムな角度を生成した。」旨の記載からすると,
引用文献には,上記「CAPTCHA」が“送信ボタン等により次の画像に進むと,ランダムな角度を実行時に生成して画像を回転させ,回転された画像をユーザのデスクトップコンピュータに提示すること”が記載されていると解される。

(4)上記Cの「各試行に対して,我々は,画像ID,画像のオフセット角(画像がユーザに提示された位置を示す±180の間の数),及び,ユーザの最終的な回転角度(ユーザが画像を送信した角度を示す±180の間の数)を記録した。」,上記Fの「全てのユーザは,グーグルキャンパスのユーザビリティ研究所内に位置するデスクトップコンピュータ上のFirefoxブラウザから,研究に参加した。」,「ユーザは,各試行で複数画像を直立方向に調整した後,送信ボタンを押すように指示された」との旨の記載からすると,
引用文献には,上記「CAPTCHA」が“ユーザがデスクトップコンピュータで,複数の画像を直立方向に調整した後に送信ボタンを押して,ユーザの最終的な回転角度を送信すること”が記載されていると解される。

(5)上記Aの「我々はユーザに,ランダムに回転された画像を直立状態に調整することを要求する新たなCAPTCHAを提示します」,上記Dの「我々の解析において,人間の成功率は,ユーザが画像を正しく回転できる平均確率により決定される。」旨の記載からすると,
ユーザがランダムに回転された画像を直立状態に正しく回転できた場合,上記CAPTCHAは成功するといえる。
加えて,上記Cの「各試行に対して,我々は,画像ID,画像のオフセット角度(画像がユーザに提示された位置を示す±180の間の数),及び,ユーザの最終的な回転角度(ユーザが画像を送信した角度を示す±180の間の数)を記録した。」旨の記載からすると,
ユーザが送信した角度が,ユーザに提示されたランダムに回転された画像のオフセット角度に対して,直立状態に正しく回転できるか否かを判定するといえる。

したがって,引用文献には,上記「CAPTCHA」が“ユーザが送信した角度が,ユーザに提示されたランダムに回転された画像のオフセット角度に対して,直立状態に正しく回転できる場合,成功すること”が記載されていると解される。

(6)以上,(1)乃至(5)を踏まえると,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「CAPTCHAを用いて正規ユーザを区別する方法であって,
CAPTCHAに用いる複数の画像のデータセットを記憶することと,
送信ボタン等により次の画像に進むと,ランダムな角度を実行時に生成して前記画像を回転させ,回転された前記画像をユーザのデスクトップコンピュータに提示することと,
ユーザが前記デスクトップコンピュータで,複数の前記画像を直立方向に調整した後に送信ボタンを押して,ユーザの最終的な回転角度を送信することと,
ユーザが送信した前記角度が,ユーザに提示されたランダムに回転された前記画像のオフセット角度に対して,直立状態に正しく回転できる場合,成功することを含む方法。」

第4 参考文献

本願優先日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,原審の拒絶査定で引用された,特開2009-163283号公報(以下,「参考文献」という。)には,関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

G 「【0074】
図6は,本発明の一実施例によってイメージ基盤のキャプチャを提供する方法を示したフローチャートである。
【0075】
図示したように,まず,キャプチャが含まれたウェブページ要請が使用者クライアントから受信されると(第100段階),イメージDBから2個以上のイメージをランダムに選択する(第110段階)。その後,選択された2個以上のイメージ及び該当イメージに対するメタ情報をセッションDBに保存するが,このとき,各セッションごとに与えられたセッションIDと一緒に保存する(第120段階)。
・・・(中略)・・・
【0077】
次に,使用者クライアントから受信されたウェブページ要請に相応するウェブページをセッションIDと一緒に使用者クライアントに提供する(第150段階)。
・・・(中略)・・・
【0078】
その後,使用者クライアントに提供されたウェブページが使用者クライアントにロードされると,使用者クライアントからセッションIDに相応するテストイメージ要請を受信する(第160段階)。一実施例において,使用者クライアントから発生するテストイメージ要請は,<img src="....../genimage.php?session= Λ"border="0"/>のようなタグ形態で行われる。
【0079】
受信されたテストイメージ要請に相応して,セッションDB内に該当のセッションIDに対するイメージが存在するかどうかを判断する(第170段階)。セッションDB内に該当のセッションIDに対するイメージが存在する場合,セッションDBに保存された2個以上のイメージを混合及び変形することでテストイメージを生成し,これを使用者クライアントに提供する(第180段階)。
・・・(中略)・・・
【0083】
次に,テストイメージに対して一つ以上の単語が使用者によって入力されると,使用者クライアントからテストイメージに対して使用者によって入力された一つ以上の単語,セッション開始時間情報,ソルト値,メタ情報に含まれた各単語のハッシュ値,及び署名値を受信する(第210段階)。
・・・(中略)・・・
【0085】
上記の判断結果,テストイメージが有効であると判断される場合,テストイメージに対して使用者によって入力された各単語と,メタ情報に含まれた各単語とを比較する(第230段階)。その結果,使用者によって入力された各単語のうち所定個数以上の単語がメタ情報に含まれた各単語と一致すると判断される場合,該当の使用者クライアントのアクセスを許容し(第240段階),そうでない場合,該当の使用者クライアントのアクセスを許容しない(第250段階)。」

第5 対比

(1)引用発明の「CAPTCHAを用いて正規ユーザを区別する方法」は,正規ユーザを区別することは,ユーザを認証することであるといえるから,
本願発明の「ユーザ認証の方法」に対応するといえる。

(2)引用発明では「データセットを記憶する」ところ,コンピュータにおいてデータセットが何らかのコンピュータ可読記憶媒体に記憶されることは技術常識であるから,
引用発明の「CAPTCHAに用いる複数の画像のデータセットを記憶すること」と,本願発明の「複数の画像をコンピュータ可読記憶媒体内に記憶すること」とは,
“複数の画像をコンピュータ可読記憶媒体内に記憶すること”である点で共通しているといえる。

(3)引用発明の「回転された前記画像」,「デスクトップコンピュータ」は,それぞれ本願発明の「チェックコード」,「クライアント」に相当する。

引用発明の「送信ボタン等により次の画像に進む」ことは,次の「回転された画像」を要求するものであるから本願発明の「チェックコードの要求」に相当する。

引用発明の「ランダムな角度を実行時に生成して前記画像を回転させ」ることは,本願発明の「画像を回転させること」に相当する。

また,上記(2)で検討したように,CAPTCHAに用いる複数の画像は,コンピュータ可読記憶媒体内のデータセットに記憶されているから,
回転に用いる画像は,コンピュータ可読記憶媒体から取り出された画像といえる。

してみれば,引用発明の「送信ボタン等により次の画像に進むと,ランダムな角度を実行時に生成して前記画像を回転させ」ることと,本願発明の「チェックコードの要求をクライアントから受信することに応答して,定義された回転方向に従って前記コンピュータ可読記憶媒体から取り出された画像を回転させること」は,
“チェックコードの要求をクライアントから受信することに応答して,前記コンピュータ可読記憶媒体から取り出された画像を回転させること”
を含む点で共通しているといえる。

(4)引用発明の「回転された前記画像をユーザのデスクトップコンピュータに提示すること」は,本願発明の「前記回転された画像を前記クライアントに提供すること」に相当する。

(5)引用発明の「ユーザが前記デスクトップコンピュータで,複数の前記画像を直立方向に調整した後に送信ボタンを押して,ユーザの最終的な回転角度を送信すること」は,
回転された画像を送信した側が,デスクトップコンピュータ,すなわち,クライアントから回転角度を受信するものといえる。
また,本願発明の「回転方向」は,回転後の画像の方向を示すと共に,画像がどの程度回転したかを示すものといえるから,
引用発明の「回転角度」は,本願発明の「回転方向」に相当する。

してみれば,引用発明の「ユーザが前記デスクトップコンピュータで,複数の前記画像を直立方向に調整した後に送信ボタンを押して,ユーザの最終的な回転角度を送信すること」と本願発明の「前記画像の回転方向を前記クライアントから受信すること」は,
“前記画像の回転方向を前記クライアントから受信すること”
を含む点で共通しているといえる。

(6)引用発明の「ユーザが送信した前記角度が,ユーザに提示されたランダムに回転された前記画像のオフセット角度に対して,直立状態に正しく回転できる場合,成功すること」は,
本願発明の「前記クライアントから受信された前記画像の前記回転方向が,当該クライアントの識別子と対応付けられて記憶された前記画像の前記回転方向と整合するかを判定し,整合する場合は,ユーザ認証の成功を示し,整合しない場合は,前記ユーザ認証の失敗を示すこと」に対応する。

ここで,本願発明の「回転方向」は,回転後の画像の方向を示すと共に,画像がどの程度回転したかを示すものといえるから,
引用発明の「ユーザが送信した前記角度」,「回転された前記画像のオフセット角度」は,それぞれ本願発明の「前記クライアントから受信された前記画像の前記回転方向」,「画像の前記回転方向」に相当する。
引用発明の「直立状態に正しく回転できる場合」は,「ユーザが送信した角度」と「回転された画像のオフセット角度」が整合するといえる。

してみれば,引用発明の「ユーザが送信した前記角度が,ユーザに提示されたランダムに回転された前記画像のオフセット角度に対して,直立状態に正しく回転できる場合,成功すること」と本願発明の「前記クライアントから受信された前記画像の前記回転方向が,当該クライアントの識別子と対応付けられて記憶された前記画像の前記回転方向と整合するかを判定し,整合する場合は,ユーザ認証の成功を示」すことは,
“前記クライアントから受信された前記画像の前記回転方向が,前記画像の前記回転方向と整合するかを判定,整合する場合は,ユーザ認証の成功を示すこと”を含む点で共通しているといえる。

以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)
「ユーザ認証の方法であって,
複数の画像をコンピュータ可読記憶媒体内に記憶することと,
チェックコードの要求をクライアントから受信することに応答して,前記コンピュータ可読記憶媒体から取り出された画像を回転させることと,
前記回転された画像を前記クライアントに提供することと,
前記画像の回転方向を前記クライアントから受信することと,
前記クライアントから受信された前記画像の前記回転方向が,前記画像の前記回転方向と整合するかを判定,整合する場合は,ユーザ認証の成功を示すことと,を含む方法。」

(相違点1)
本願発明では,「複数の回転方向を定義すること」について特定されているのに対して,
引用発明では,そのような処理について格別言及されていない点。

(相違点2)
「画像を回転させること」に関して
本願発明では「前記定義された回転方向に従って回転方向のパラメータ値の群をランダムに生成することと,
多数の画像を前記コンピュータ可読記憶媒体から取り出すこととであって,回転方向のパラメータ値の前記群内のパラメータ値の数と等しい数の画像を取り出すことと,
回転方向のパラメータ値の前記群に従って前記画像を回転させることとをさらに含み」について特定されているのに対して,
引用発明では,回転処理の詳細な動作について格別限定されていない点。

(相違点3)
本願発明では「クライアントの識別子と,前記取り出された画像の前記回転方向とを対応付けて記憶すること」,「前記クライアントの識別子と対応付けて記憶された前記画像の前記回転方向を取り出すこと」について特定されているのに対して,
引用発明では,「回転方向」について,「クライアントの識別子」に対応付けて記憶,及び,取り出しする点は,格別限定されていない点。

(相違点4)
画像の回転方向と整合するかを判定した後に,
本願発明では「整合しない場合は,前記ユーザ認証の失敗を示す」のに対して,
引用発明では,整合しない場合の処理は,格別限定されていない点。

第6 判断

1.相違点1について

本願発明の「複数の回転方向を定義すること」は,
通常の「回転方向」としての360度の自由な角度ではなく,離散的な複数の角度体系を,新たに定義する処理であると解される。

一方,引用発明の「ランダムな角度」や「回転角度」は,上記Eの「我々の画像は,回転のために360度の自由を持つ。」との記載から,自由な角度をとるものであり,本願発明のように,複数の回転方向を別途定義する処理を設けることは,引用文献には何ら示唆されていない。
そうすると,このような「回転のために360度の自由を持つ」画像に対して,本願発明のように複数の回転方向を新たに定義する処理を,追加しようとすることの動機付けを見いだすことはできないから,これを当業者が,容易に想到したものとはいえない。

2.相違点2について

本願発明の「画像を回転させること」は,
「回転方向のパラメータ値の群をランダムに生成する」際に,相違点1で検討した定義する処理で,「定義された回転方向」に従って回転方向のパラメータ値を生成しており,相違点1で検討したように,このような処理は引用文献には何ら示唆されていない。

また,本願発明では,「前記定義された回転方向に従って回転方向のパラメータ値の群をランダムに生成することと,
多数の画像を前記コンピュータ可読記憶媒体から取り出すこととであって,回転方向のパラメータ値の前記群内のパラメータ値の数と等しい数の画像を取り出すこと」を行うところ,

「回転方向のパラメータ値の群をランダムに生成」した後に「前記群内のパラメータ値の数と等しい数の画像を取り出す」ような「画像を回転させること」の詳細な処理については,引用文献に記載も示唆もされていない。

また,ユーザ認証のために「画像を回転させること」は,本願発明や引用発明に特有の処理であり,CAPTCHAやユーザ認証一般の周知技術ではなく,上記事項は,当業者が,周知技術により容易に想到できたものとはいえない。

3.相違点3

本願発明の「クライアントの識別子」は,チェックコードの要求をしたクライアントを識別する情報である点のみが特定され,
いずれから取得した情報でるあるかや,クライアント識別子データベースと照合して端末認証を行うような処理は特定されていない情報である。

ここで,引用発明では,「ユーザが送信した前記角度が,ユーザに提示されたランダムに回転された前記画像のオフセット角度に対して,直立状態に正しく回転できる場合」かどうか判定するために,画像のオフセット角度を,記憶していることは明らかである。

そして,セッションID等の,認証を要求してきたクライアントを他のクライアントから識別するための情報を発行し,それとCAPTCHA認証のための情報とを対応づけて格納し,認証に用いるようにすることは,例えば,参考文献(上記G参照)に記載されているように,CAPTCHA認証において適宜に採用されていた常とう手段である。
してみると,引用発明においても,回転された画像を要求してきたデスクトップコンピュータを識別する情報と,回転角度とを対応付けて管理すること,すなわち,上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

4.相違点4について

認証技術分野において,認証が失敗した場合に,ユーザ認証の失敗を示すことは,引用文献等を示すまでもなく,従来から当業者が必要に応じて採用している常とう手段である。
引用発明においても,「整合しない場合」,つまり,認証が失敗した場合に失敗を示すこと,すなわち,上記相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

5.したがって,上記相違点1,2から,本願発明は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえない。

また,平成27年1月5日付けの手続補正書による補正後の請求項2に係る発明は,補正後の請求項1(本願発明)の従属項であり,補正後の請求項2に係る発明と引用発明とは,本願発明と同じ相違点で相違している。
また,補正後の請求項3,4に係る発明は,補正後の請求項1(本願発明)のカテゴリを変更したものである。

第7 むすび

本願の請求項1-4に係る発明は,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって,拒絶するべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-07-13 
出願番号 特願2012-526762(P2012-526762)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金木 陽一  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 戸島 弘詩
須田 勝巳
発明の名称 ユーザ認証の方法、装置およびサーバ  
復代理人 椎野 聡  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
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