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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1302903
審判番号 不服2014-13905  
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-17 
確定日 2015-07-09 
事件の表示 特願2009-279202「光学式位置検出装置および位置検出機能付き表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年6月23日出願公開,特開2011-122867〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,平成21年12月9日の特許出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成22年12月17日:手続補正書
平成25年 7月11日:拒絶理由通知(同年同月16日発送)
平成25年 9月10日:手続補正書
平成25年 9月10日:意見書
平成26年 4月14日:拒絶査定(同年同月22日送達)
平成26年 7月17日:手続補正書(以下「本件補正」という。)
平成26年 7月17日:審判請求
平成26年 9月24日:前置報告

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1,3及び4の記載は,以下のとおりである。
「【請求項1】
検出領域内の対象物体の位置を光学的に検出するための光学式位置検出装置であって,
互いに交差する方向をX軸方向,Y軸方向およびZ軸方向としたとき,
前記検出領域のXY平面に沿う方向に検出光を出射する複数の位置検出用光源と,
該位置検出用光源を駆動して前記検出領域にX軸方向で前記検出光の強度が変化するX座標検出用光強度分布およびY軸方向で前記検出光の強度が変化するY座標検出用光強度分布を形成する光源駆動部と,
前記検出領域内の前記対象物体で反射した前記検出光を受光する光検出器と,
該光検出器での受光結果に基づいて前記対象物体の位置を検出する位置検出部と,
を有し,
前記位置検出用光源は,前記検出領域に,前記X軸方向及び前記Y軸方向の少なくとも一つの方向における一方側から他方側に向けて強度が変化する第1光強度分布と,前記他方側から前記一方側に向けての強度変化が前記第1光強度分布と相違する第2光強度分布と,を形成し,
前記位置検出部は,前記第1光強度分布を形成したときの前記光検出器での検出結果と,前記第2光強度分布を形成したときの前記光検出器での検出結果との比較結果に基づいて前記対象物体の位置を検出する,
ことを特徴とする光学式位置検出装置。」

「【請求項3】
前記光検出器は,前記複数の位置検出用光源のうちの少なくとも1つと光学ユニットとを構成していることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式位置検出装置。」

「【請求項4】
前記光学ユニットは,前記検出領域を経由せずに前記光検出器に入射する参照光を出射する参照用光源を備え,
前記光源駆動部は,前記参照用光源を前記位置検出用光源と異なるタイミングで点灯させることを特徴とする請求項3に記載の光学式位置検出装置。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。
「【請求項1】
検出領域内の対象物体の位置を光学的に検出するための光学式位置検出装置であって,
互いに交差する方向をX軸方向,Y軸方向およびZ軸方向としたとき,
前記検出領域のXY平面に沿う方向に検出光を出射する複数の位置検出用光源と,
前記複数の位置検出用光源を駆動して前記検出領域に前記X軸方向で前記検出光の強度が変化するX座標検出用光強度分布および前記Y軸方向で前記検出光の強度が変化するY座標検出用光強度分布を形成する光源駆動部と,
前記検出領域内の前記対象物体で反射した前記検出光を受光する光検出器と,
該光検出器での受光結果に基づいて前記対象物体の位置を検出する位置検出部と,
を有し,
前記複数の位置検出用光源は,前記検出領域に,前記X軸方向及び前記Y軸方向の少なくとも一つの方向における一方側から他方側に向けて強度が変化する第1光強度分布と,前記他方側から前記一方側に向けての強度変化が前記第1光強度分布と相違する第2光強度分布と,を形成し,
前記位置検出部は,前記第1光強度分布を形成したときの前記光検出器での検出結果と,前記第2光強度分布を形成したときの前記光検出器での検出結果との比較結果に基づいて前記対象物体の位置を検出し,
前記光検出器と,前記複数の位置検出用光源のうちの少なくとも1つとを含む光学ユニットを有し,
前記光学ユニットは,前記検出領域を経由せずに前記光検出器に入射するZ座標検出用の参照光を出射する参照用光源を備え,
前記光源駆動部は,前記参照用光源を前記複数の位置検出用光源と異なるタイミングで点灯させることを特徴とする光学式位置検出装置。」

2 補正の目的
本件補正は,本件補正前の請求項4(請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4)に係る発明(以下「本願発明」という。)の「参照光を出射する参照用光源」の構成を,「Z座標検出用の」参照光を出射する参照用光源に限定して,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)とするものである。
本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる事項を目的とする補正である。
そこで,本件補正後発明が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下,検討する。

3 独立特許要件違反
(1) 引用例1に記載の事項
本件出願の出願前に頒布された刊行物である特表2004-535740号公報(公表日:平成16年11月25日,発明の名称:位置及び運動を検出するための光電装置及びその方法,出願番号:特願2003-514702号,出願日:平成14年7月9日)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審判体が付したものである(以下同じ)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】検出対象の位置及び/又は運動を検出するための光電装置であって,
・ とりわけ光ビーム等の放射ビームを放射するための複数の送信器(A,B,C,D)と,
・ 前記送信器(複数)(A?D)から放射されかつ検出対象(O)によって反射された放射ビーム,又は検出対象(O)に配された送信器によって放射された放射ビームを受信する少なくとも1つの受信器(E,E1,E2,E3,E4)と,
・ 少なくとも一部の前記送信器(A?D)-前記検出対象-前記受信器(複数)(E,E1?E4)間,又は前記検出対象に配された前記送信器-前記受信器間に形成される,互いに異なる複数の放射ビーム経路と,
・ 前記異なる複数の放射ビーム経路の前記送信器(複数)(A?D)をクロック的に切換えるためのタイミング回路と,
・ 1つの線に沿って又は1つの面(12)内で前記検出対象の位置及び/又は運動を検出するために,前記異なる複数の放射ビーム経路のための前記受信器(複数)(E,E1?E4)によって受信される信号(複数)を(複数の)値(x,y)に変換する評価ユニット(11)と
を有するものにおいて,
前記検出対象の位置及び/又は運動を三次元的に検出するために,前記タイミング回路は,複数の,しかしながら少なくとも一部の前記送信器(複数)(A?D)及び/又は受信器(複数)(E,E1?E4)を,少なくとも1つの更なるサイクルにおいて切換を行い,該送信器(複数)(A?D)によって放射ビームが送り込まれる空間が,ほぼ完全に一様に隈なく放射(照射)され,かつ前記評価ユニット(11)が,該更なるサイクル中に前記検出対象によって反射又は(該検出対象に配された送信器から)放射された放射ビームに基づいて,前記線又は前記面(12)から該検出対象までの距離(d)を求めるための(1つの)値を求めること
を特徴とする光電装置。
【請求項2】前記複数の送信器(A?D)及び前記受信器(複数)(E,E1?E4)は,1つの平面に配されること
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】前記複数の送信器(A?D)及び前記受信器(複数)(E,E1?E4)は,前記面(12)を構成する操作面の下方に配されること,及び
送信器及び/又は受信器は,1つの更なるサイクルにおいて,前記操作面を挟んで反対側の前記空間に向かって放射ビームを送り込むこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】少なくとも4つの送信器(A?D)が十字状に配置され,二次元的な検出を行うために,十字状配置に関して交互にクロック制御されて作動されること
を特徴とする請求項1?3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】前記更なるサイクルにおいて,すべての送信器(A?D)が一緒にクロック制御されること
を特徴とする請求項1?4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】1つの更なる光源(20)が,少なくとも1つの受信器(E,E1?E4)の近くに,該更なる光源(20)の光が該受信器(E,E1?E4)に実質的に入射するよう,送信器として配設されること
を特徴とする請求項1?5の何れか一項に記載の装置。」

イ 「【技術分野】
【0002】本発明は,検出対象の位置及び/又は運動を検出するための光電(光電子型)装置及び方法に関し,とりわけ請求項1又は34の上位概念(前置部)に係る光電装置及び方法,即ちとりわけ光ビーム等の放射ビームを放射するための複数の送信器と,前記送信器(複数)から放射されかつ前記検出対象によって反射された放射ビーム,又は前記検出対象に配された前記送信器(複数)によって放射された放射ビームを受信する少なくとも1つの受信器と,少なくとも一部の前記送信器-前記検出対象-前記受信器(複数)間,又は前記検出対象に配された前記送信器-前記受信器間に形成される互いに異なる複数の放射ビーム経路と,前記異なる複数の放射ビーム経路の前記送信器(複数)をクロック的に切換えるためのタイミング回路(ないしクロック回路:Taktschaltung)と,1つの線に沿って又は1つの面内で前記検出対象の位置及び/又は運動を検出するために,前記異なる複数の放射ビーム経路のための前記受信器(複数)によって受信される信号(複数)を(複数の)値に変換する評価ユニットとを有する形式の,検出対象の位置及び/又は運動を検出するための光電装置及び方法に関する。」

ウ 「【背景技術】
【0003】物体における反射の変化を検出するための光学システムであって,外部の光が測定値に影響を与えないとされるものが欧州特許出願EP 706 648 A1(特許文献1)に記載されている。このシステムは,主に,フロントガラスに衝突する雨滴を検出するためのワイパ用センサとして使用されるが,近接センサとしても使用可能である。この場合,光電的測定範囲が平面状に形成されていると,検出対象の位置及び/又は運動を求めるために二次元的な値を得ることができる。
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願EP 706 648 A1
【特許文献2】ドイツ特許出願100 01 955.2」

エ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】そのような装置が運動感知性操作面として構成されたものも知られている。この種の固定的な装置は,例えば,ラップトップ型コンピュータの面積節約的な1ボタン操作手段(ポインティングスティック)や比較的大面積の部材(トラックパッド)のような多くの分野で使用されている。1ボタンタイプのものは,横方向(半径方向)の押圧力を感知して応答を引き起こす。面状タイプのものは,カーソルを制御するために,指又は特殊なペン状部材(スタイラス)によってその表面をなぞり,当該二次元の面上における指又はスタイラスのような操作部材の運動によって,当該指等の運動に従って,例えばカーソル等の可視的要素がスクリーン上で運動する。これら操作部材は,操作面を直接なぞる場合にのみカーソルを制御し,例えば,指を操作面から引き離すと,カーソルは,消失するか,或いはその場で不動状態に維持されてしまう。
【0006】例えば指等の運動要素の接近並びに操作面に触接する際の運動パターンが認識(検出)されるように,2つの光源-一方は外部へ向かって照射し,他方は専ら検出器に向かって照射する-が配置されている装置が,比較的古いドイツ特許出願100 01 955.2(特許文献2)に記載されている。操作面に触接する際,指が操作面に接触する直前に生じていた測定値に対応する参照値を生成し,運動要素が僅かに運動しただけで指の接触が最早認識されなくなることを回避するとされている。そして,指が,再び,直前に求められた測定値を下回るほど遠くに離れるまで運動感知性の操作面から持ち上げられた時ようやく,当該指は,引き離されたものとして認識(検出)される。その際,運動パターンは,意図的な運動と偶発的な運動との間で区別が可能なように認識(検出)されるという。
【0007】更に,とりわけ不案内な土地においてその目的地を見つけ出す場合に運転手を支援するナビゲーションシステムも幾つか知られている。これらのナビゲーションシステムは,これまでのところは,回転及び押しボタンスイッチのような手動操作部材,又はハンドルに組み込まれた操作部材によって作動される。しかしながら,利用者は,それらシステムの設定に応じて,走行コース(走行距離)を入力しなければならないので,主として操作技術に起因するズレが容易に生じてしまう。
【0008】それゆえ,本発明の課題は,上記従来技術を出発点とし,第3の次元においても位置認識(検出)を可能とする光電(光電子型)装置ないし方法を提供することである。」

オ 「【課題を解決するための手段】
【0009】上記の課題は,請求項1の特徴部に記載の特徴を有する光電装置,及び請求項34の特徴部に記載の特徴を有する方法によって解決される。即ち,上記光電装置において,検出対象の位置及び/又は運動を三次元的に検出するために,タイミング回路は,複数の,しかしながら少なくとも一部の送信器(複数)及び/又は受信器(複数)を,少なくとも1つの更なるサイクルにおいて切換を行い,該送信器(複数)によって放射ビームが送り込まれる空間が,ほぼ完全に一様に隈なく放射(照射)され,かつ前記評価ユニットが,該更なるサイクル中に前記検出対象によって反射又は(該検出対象に配された送信器から)放射された放射ビームに基づいて,線又は面から該検出対象までの距離を求めるための(1つの)値を求めることを特徴とする(形態1・基本構成1)。また,上記方法は,検出対象の位置及び/又は運動を三次元的に検出するために,送信器(複数)によって放射ビームが送り込まれる空間が,ほぼ完全に一様に隈なく放射(照射)されること,及び評価ユニットが,更なるサイクル中に前記検出対象によって反射又は(該検出対象に配された送信器から)放射された放射ビームに基づいて,線又は面から該検出対象までの距離を求めるための(1つの)値を求めるように,タイミング回路が,少なくとも1つの更なるサイクルにおいて,複数の,しかしながら少なくとも一部の前記送信器(複数)及び/又は受信器(複数)を切換えることを特徴とする(形態34・基本構成2)。」

カ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】基本的に,第3の次元を認識(検出)するために,更なるサイクルを設け,そのサイクルの間に,送信器(複数)が,及び場合によっては受信器(複数)もまた,空間を一様に隈なく照射し,検出対象の面からの距離を求めることができるようにする。かくして,既知の装置が通常伴うような,作用(操作)領域が平面状のものに限定されるという不利益は回避される。例えば光ビームのような放射ビームを使用することにより,操作面を,放射されたビームを透過すると共に当該操作面を保護する面の下方(内側),例えばハウジングの半透明の窓の下方(内側)に,或いは例えば自動車の変速レバーの入れられたギアの表示器のような,放射されたビームの波長に対し半透明(透過性)の表示器(インジケータ)ないし表示器カバーの後方(内側)に設けることも可能である。
【0011】このため,操作の観点から,従来使用されてきた容量性,抵抗性又は誘導性手段に実質的に相応する光電(光電子型)装置が得られる。操作面の「触接ないしタッチ(Antippen)」によって,カーソル制御に適用される場合は,カーソルが(モニタの)スクリーン上に現れ,指を滑らせたり指の先端を小さく旋回(くるくる回転)させたりすることにより,そのような運動に類似した態様でスクリーン上に表示されるカーソルも運動(摺動)する。しかしながら,更に,操作面の上方,即ち例えば操作面から数ミリメートルないし数センチメートル離れたところでの運動の検出を行うことも可能である。従って,操作面の表面から測定される距離もまた同時に求めることができる。そのような距離のその時々の値により,更なる機能を制御することも可能である。そのため,例えば,操作面から指をほんの数ミリメートルだけ少々遠ざけることにより,更なる(別の)機能面に切換えることも可能となる。この更なる機能面においても,指を運動させることにより,従って例えば操作面から数ミリメートルないし数センチメートル離れた距離のところにおいて指を運動させることによっても,カーソルを制御することが可能となる。
【0012】実用的な一実施態様としては,例えば自動車のナビゲーションシステムにおいて,例えば指等の操作要素を操作面から軽く持ち上げることによって行われるカーソル領域の細部(選択領域)の拡大操作の制御が考えられる。同時に,(操作面の)表面からのその(指を軽く持ち上げた位置の)距離のところにおいて相応に指を運動させることよって,そのズーム拡大された選択領域もまた運動させることができると有利である。とりわけ自動車の分野では,例えば変速レバーないしギアシフトレバー上において,ギア表示を行うことが可能である。しかしながら,この表示面は,同時に,例えばナビゲーションシステムと連携して作動する運動感知性の表面として構成されることも可能である。例えば運転手の視野中にナビゲーションシステムのインジケータ(表示画面)が形成されている場合,運転手は,目的経路を探るために,例えばこの操作面の上方において指を運動させるか或いは指の先端部を転動ないし小旋回(abrollen)するだけでよい。ナビゲーションシステムの地図の選択領域を拡大するために,運転手は,変速レバーから手を離したり更なる被操作要素を作動したりせずに,単に,指を持ち上げるだけでよい。このため,注意力散漫(脇見運転)による危険は著しく減少される。従来のものでは必要であった接触(キーないしボタン入力)機能(操作)は,非機械的な,純光学的機能ないし操作によって置き換えることができる。
【0013】このような機能を逆に実行し,例えば指が(操作面から)数センチメートル離れた位置にあるとき,例えば地図の全体像を観察できるようにすることも勿論可能である。この場合,カーソルが相応に位置付けられているとすると,操作面に向かって(指を)運動することにより,カーソルの範囲に含まれるその部分を,指が操作面に置かれたとき良好な読取りに必要な倍率が達成されるよう相応に拡大することができる。この拡大された状態では,指の摺動や指の先端の小旋回によって,強調される選択領域の位置を相応に変化することができる。再び全体を概観するためには,単に再び指を操作面から数ミリメートルほど遠ざけるだけでよい。」

キ 「【実施例】
【0016】添付の各図に,光ビームを放射するための複数の送信器A,B,C,Dを有し検出対象Oの位置及び/又は運動を検出するための光電(光電子型)装置の各種の例をそれぞれ示した。これら送信器には,当該送信器A?Dによって放射され検出対象Oによって反射されて戻される放射ビームを受信するための少なくとも1つの受信器EないしE1?E4が配属される。なお,検出対象自体が送信器を有する場合は,上記のような反射は不要であり,放射ビームは,検出対象から直接放射される。送信器と検出対象と受信器との間には,装置ないし回路の構成に応じて,送信器A?Dの内の少なくとも1つ及び少なくとも1つの受信器E,E1?E4が関与する互いに異なる複数の放射ビーム経路(光の場合は光ビーム経路)が形成される。送信器(複数)の制御は,タイミング回路としての反転器21を伴う発信器10を介して行われる。
【0017】受信器によって検出された信号は,評価装置11へ伝送され,評価装置11は,ある面12内又は該面12に沿った例えば指等の検出対象Oの位置及び/又は運動を検出するために,種々異なる光ビーム経路から受信器E,E1?E4によって受信された信号を,まず,二次元の値x,yに変換する。そして,検出対象の位置及び/又は運動を三次元的に検出するために,タイミング回路(ないしクロック回路:Taktschaltung)は,図7の実施例では,送信器A?D及び/又は受信器E,E1?E4を更なるサイクルにおいて有効(作動可能)となるよう切換え(切換えて有効(作動可能)とし),送信器A?Dが放射ビームを送り込む空間が,当該(同じ)サイクルの作動の際にほぼ完全に一様に(均一に)照射されるようにする。そして,評価装置は,この更なるサイクル中に検出対象Oによって反射され戻された放射ビームに基づき,上記面12からの検出対象Oの距離dを求めるための(1つの)値を求めることができる。上記の値x又はyは,一次元的にのみある線に沿って求めることができるものである。また,ある一点に触接(タッチ)する場合は,いわば「ゼロ次元」の一点(原点)からの検出対象の距離のみが行われる。
【0018】例えば指又はスタイラス(操作ペン)のような操作要素のような検出対象の検出を操作面の上方においても実行可能にするために,例えば所定の1つの波長を有する光のような1つの放射ビームであって操作面ないし面12を透過可能なものを(当該面の内側から外側に向かって)放射しなければならない。ごく簡単な例では,このような放射ビームは,可視光又は赤外光である。このような放射ビームは,検出対象において反射されて戻され,再び操作面の下方(内側)で受信(受光)されうる。原理的には,この「戻りビーム」は,検出対象自体が光源を有する場合にも形成することができる。検出対象自体が光源を有するものとしては,例えばクレーンを操作するために使用されるようなジョイスティックを使用する場合が一例として考えられる。このようなジョイスティックは,その下端部が,外光に対し遮光された空間内に存するため,当該ジョイスティックの下端部の位置の変化は,反射ビームを測定することによって求めることができ,或いはジョイスティック自体相応の光源を有することができる。その他の点では,検出は,以下のようにして行われる。
【0019】操作要素が遮蔽(遮光)された空間内に存しない場合,例えばランプ又は太陽光のような外光との区別をするために,送信器光源からの光は,タイミング回路によってパルス化された,(白熱)電球,ネオンランプ等による通常の雑音(擾乱)の影響を乗り越える周波数,例えば100kHzの周波数によって作動される。このため本質的な雑音は除去(の影響は回避)されるが,所謂「迷光効果」は依然として残る。これは,クロック制御された光信号の完全な暗闇中における受光と完全な太陽光中における受光との間の領域における受光された信号強度(振幅)の数パーセントの変化において生じるフォトダイオードで観察される物理的過程である。実際上,このことは,運動感知性の光学的操作面を使用する場合,スクリーン上のカーソルの位置は,周囲光の変化によって変化されるということを意味するであろう。例えば運動感知性の操作面の近くでランプを点灯させた場合に起こりうるカーソルのこのような望ましくない運動は,当然のことながら,システム全体に問題を引き起こすであろう。
【0020】外光の補償手段が,上記特許文献1で提案されている。その測定原理は,本質的構成において,本出願においても使用しているため,特許文献1の開示内容は,引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとみなす。」

ク 「【0021】所与の表面上における例えば指等の位置は,例えば図3に示したように十字状に(十字を形成するように)配設される互いに離隔された2つのセンサ要素によって極めて簡単に求めることができる。
【図3】

送信器A,Bを有する一方のセンサ要素は,(上記表面に対する)水平位置を求め,送信器C,Dを有する他方のセンサ要素は,(上記表面に対する)垂直位置を求める。これらセンサ要素は,面12の下方(内側)に配され,例えば指等の検出対象O等の操作要素の方向に向かって(該面12を介して)放射ビームを放射すると有利である。そして,反射された光から求められた測定値は,操作面の外部の検出対象の水平位置又は垂直位置をそれぞれ生成する。図1に,一次元的位置検出のための原理を示した。
【図1】

送信器A,Bは,例えばLEDであり,受信器Eは,例えばフォトダイオード又は相応に再構成された発光ダイオードである。送信器A,Bは,反転器21によって(互いに)反転されて(逆相にされて)制御される。送信器A,Bは,クロックに同期した変動成分を有しない一定(直流)成分が受信器Eに形成されるように,その(発信ないし発光)強度が,それぞれ制御抵抗R1,R2を介して制御される。しかしながら,送信要素間の強度の関係(ないし強度比)は,上記特許文献1とは異なり,意図的には時間的に遅延されず,できるだけ迅速に再調整される。このため,例えば検出対象O等の操作要素の位置が変化する際の,各送信要素の送信強度のための制御電圧補償器(Regelspannungskorrektur)の即時的応答が達成される。
【0022】上記特許文献1では,制御電圧の動的変化のみの評価が行われる。これに対し,位置検出の場合は,静的制御値が必要となる。この値をできるだけ熱的影響又は劣化の影響から独立して得るために,制御抵抗R1及びR2にそれぞれ供給される制御電圧UR1,UR2が,出力を調節するために測定され,比較器VIIIによって比較が行われる。比較器VIIIによって求められた値は,x方向における例えば指等の操作要素の機械的(幾何学的)位置の電気的値である。受信器Eによって求められた信号は,ハイパス(フィルタ)23へ供給され,同期復調器22によって(復調され),次いで,比較器VIIにおいてクロック的に比較が行われる。このため,検出対象Oが存在する場合,制御抵抗R1,R2に供給される制御電圧のための(1つの)値が比較器VIに生成する。
【0023】検出対象Oが存在しない場合,相応の構造による寄生反射PRが,送信器A及びBの送信出力のほぼ同じ(大きさの)部分が交替的に受信器Eに向かって照射される。この場合,制御電圧は,殆ど影響を受けない,即ちゼロに維持される。中心に対し非対称的に指が接近する場合,制御回路は,変動光成分を有しない一定(直流)光信号が再び受信器Eに生成するように,光強度を調節しようとする。このため,制御抵抗R1,R2に関する制御電圧の対称性は変化(移動)し,機械的(幾何学的)配置の中心点から右方又は左方へのずれた指の位置に応じて,比較器VIIIに1つの出力信号が生じる。この出力信号は,その大きさは種々異なるがプラス又はマイナスの値を取って推移する。その様子を,図1の右下の部分に,指が運動する場合について明示した。
【0024】光学要素を相応に構成・選択することにより,光学的に有意な経路(領域)上における例えば指等の操作要素の位置に対する出力信号の直線性を十分良好なものとすることができる。」

ケ 「【0025】図2に示した測定経路は,これは図1で使用したものと同じであるが,例えば光学的スライドコントローラ又はスライドスイッチとして一次元的な機能のみ達成可能であることは明らかあり,このため例えば指の水平方向の位置変化のみが検出される。
【図2】

位置を二次元的に検出するためには,図3のように,可及的に90°互いにずらされて形成される2つの異なる測定経路が必要となる。受信器Eは,2つの測定経路,即ちA,B及びC,Dのために共通に利用される。図3の場合では,交互にx方向の光ビーム経路とy方向の光ビーム経路が交替的にクロック制御される。これは,複数のクロック周期毎に切換えることにより,例えば30×A/Bの後30×C/Dのように切換えることにより,又は基本(クロック)サイクル(Taktzyklus)毎に切換えることにより実行することができる。重要なことは,測定値の出力が各基本サイクルに相応に配属されるということだけである。
【0026】位置決定のための光学要素の配置の最も単純なものは,十字状構造を有する。尤も,操作面の大きさを相応に構成することにより,(4つの)角範囲における非直線性を調節することができる。これは,相応の計算処理によって簡単に較正することができるが,送信要素(複数)を相応に構成(配置)することにより,例えば各送信器を図4のように配置すると,計算処理を実行しなくても良好な直線性を得ることができる。
【図4】

個々の基本サイクルの間に,2以上の送信器が放射を行う。例えば,第1のサイクルでは,水平位置(x位置)を求めるために,送信器A,Cが,送信器B,Dと交互に放射を行い,次の(第2の)サイクルでは,y位置を求めるために,送信器A,Bが,送信器C,Dと交互に放射を行う。発光ダイオードの数は,図4の場合でも,例えばこのような機能を大きな面に適用するために,相応に増やすことができることは勿論である。この限りにおいて,図3及び図4の構造・配置は,x方向及びy方向の位置を求めるためにしか使用することができない。」

コ 「【0027】第3の次元を検出(把握)するために,面12が平面状に構成されている場合,面12に対する検出対象の位置が求められるべきである。この位置(の検出)は,指ないし検出対象Oの色に依存すべきではない。複数の光学要素のほぼ平面状の配置,即ち送信器も受信器も面12から上方に突出しない構成を基礎とすると,検出対象Oの位置は,実質的に反射Rだけ使用して求めることができる。しかしながら検出対象Oの反射特性は少なくとも測定値に影響を与えるので,それぞれ異なるように反射を行う物体が,面12からそれぞれ異なる距離dに位置するとき,同じ反射値を示すことがあり,そのため第3の次元における正確な位置検出は一義的(明確)ではなくなるであろう。原理的に,第3の次元の機能の決定は,機械的接触面,即ち面12の表面を出発点とするのが合理的であり,この場合この機能は,検出対象の大きさ,色又は種類からほぼ独立している(影響を受けない)べきであろう。尤も,その代わりに,本発明によれば,物理的(機械的)接触面の存在は必須ではないということに注意すべきである。「面」12は,空気中に仮想的に存在しえるため,操作要素は,当該(仮想)面に突入したり,当該(仮想)面を貫いたり,その上部分的に受信器に影を射すことさえある。」

サ 「【0028】第3の次元における位置検出を規定するために,面12上の操作要素の位置のx値及びy値を規定するための2つの基本サイクルに加えて,更に少なくとも1つの更なる基本サイクルが付加・使用される。この更なる基本サイクルでは,送信器A?Dは,そのすべて又は少なくとも一部(1つ)が同じクロック信号を受信し,従って同時に放射を行うように制御される。このため,x方向及びy方向において位置を求めるために必要とされるようなこれら送信器の個別的制御は必須ではなくなる。更に,少なくとも1つの更なる光源20を補償手段として1又は複数の受信器E,E1?E4の近くに配し,この更なる光源から放射される光がほぼ受信器のみに入射するようにすることも可能である。尤も,外光が重要な役割を有しない場合は,この補償手段は設けなくてもよい。
【0029】上記特許文献2には,検出対象の接近及び操作面に触接する際の運動パターンが明確に認識(検出)されるよう構成・配置された2つの光源について記載されている。このような構成・配置は,原理的には,触接信号を検出するために,本発明においても使用されるが,外部に向かって放射する1つの光源の代わりに,本発明では,複数の,好ましくはすべての送信器が,必要に応じて受信器もまた,外部に向かって放射を行うために使用される。これは,面12の上方の空間ができるだけ一様に(均一に)照射(放射)されるようにするためである。
【0030】検出対象Oが面12に接近すると,検出対象Oは検出手段14によって検出され,例えばx方向及びy方向における位置決定が活性化可能となる。面12に触接する際,速度変化が(複数の)検出手段によって検出され,図7の触接信号AS1として転送可能となる。
【図7】

この触接信号は,例えばスクリーン上のカーソル等のような被操作要素30を活性化可能にする。触接信号AS1の発生と同時に,図7によれば,3D信号3-D-Sの値から導出された値が,例えばデジタル式メモリのような記憶ユニット13に記憶される。この記憶された値は,検出対象Oの最(大)接近のための参照値Ref_(3D)として利用される。この参照値は,操作要素ないし指のごく僅かではない運動が,浮き上がった(持ち上げられた)ものと評価されることを保証するようなものとされるべきである。例えば指のような検出対象Oによって面12に触接する場合,検出対象Oは場合によっては少々変形されるので,反射Rの最大値は,その瞬間に検出される場合,(変形が起こらない程度に)弱く(ゆっくり)載せられた場合の値より十分より大きい。そのため,面12に触接する直前の値が記憶される。かくして,第3の次元の(1つの)機能は,指が例えば表面から1ミリメートルより遠く離れたときにようやく作動される。このため,操作の確実性(信頼性)は,とりわけ指が面の上方を運動中に種々異なる押圧力で運動ないし少々回転(ないし転動:rollen)される場合,高められる。また,面に触接する際の運動パターンも検出されるが,その際,好ましくは,操作面に接触しているときないし接触する直前の操作要素,即ち検出対象のその都度の値に相応する参照値が求められる。そして,この参照値に依存して,第3の次元における操作が実行可能となる。その際,所定の閾値を下回っていれば,操作要素は,操作面から既に遠く引き離されており,この状態は,遮断信号,従って参照値のための抹消信号とみなされる。
【0031】測定値(参照値)Ref_(3D)の検出は,回路24による遅延回路を介して検出することができるが,特定の所与の値をRef_(3D)から減ずることも可能である。この値(勿論これは最も接近(最接近)したときの実際の最大値でありうる)を求めるために,まず,検出された値を1未満の一定の乗数によって乗算することができる。しかしながら,図7に示した実施例では,紙面右下に示した回路が用いられる。記憶ユニット38及び39には,x値及びy値が記憶されているのに対し,記憶ユニット40には,z値が記憶されている。このz値は,チップパルス(Tip-Puls)検出ユニット41に伝送され,フリップフロップ42をセットする。予期しない運動によってz値が誤ってセットされると,これは閾値検出回路43によって検出され,フリップフロップ42をリセットする。そして,時間遅延回路44を介して導かれた値はフリップフロップ26をセットし,次いで,フリップフロップ26は,そのとき(現在)生じている電圧値が参照値Ref3Dとして使用されていることを記憶ユニット13に伝達する。この実施例は,参照値が人間に関する要因に適合可能であるという利点を有する。つまり,例えば,従前の運動が迅速に行われると-より分かりやすくいえば利用者が慌ただしい性格の場合-最大値と参照値との間の差異は,慎重に(ゆっくりと)装置に近づく利用者の場合に比べるとより大きくなるのである。
【0032】面12から離れるような運動が行われる度に,制御電圧U_(R3D)は変化する。そのため,記憶されている値Ref_(3D)と実際の制御電圧U_(R3D)との差は,アナログの出力信号S2 3Dを生成する。出力信号S2 3Dは,面12からの検出対象Oの距離に比例する。検出手段14は,(1つの)比較器を介して,補償を行うために設けられた更なる光源20の受信器に直接入射する放射ビーム並びに反射された放射ビームを検出し,以ってサイクルの配分に応じて制御が行われる。上記特許文献2に記載されているように,第1の信号は,まず,回路24によって予設定された時間だけ遅延され,そして例えばデジタル式の記憶ユニット13に記憶される。そして,比較手段15において,更なる(複数の)値とこの参照値との比較が行われる。
【0033】多くの場合,面12の触接を検出するだけではなく,指が例えば面から30mmを越えて離れたときにも検出を行うと,目的に適うであろう。このため,比較器16の枠内において,更なる閾値検出が行われる。閾値SW2を下回ると,フリップフロップ26はリセットされ,参照値Ref_(3D)は消去され,制御信号AS1もリセットされる。閾値SW2もまた参照値Ref_(3D)から導出される値であり得る。」

シ 「【0034】図12に,この種の装置の一例を示した。
【図12】

自動車33の部分,とりわけ変速レバー32ないしギアシフトレバーが図示されており,変速レバー32ないしギアシフトレバーには-この実施例ではレバーの上部に-入れられたギアを表示するための光学的インジケータ34が配されている。自動車は,更に,変速レバー32によって制御可能に構成されるナビゲーションシステム31を有する。このため,インジケータ34は,同時に,例えばナビゲーションシステムと連携して作動する運動感知性の操作面たる面12として構成される。そのため,例えばナビゲーションシステム31の被操作要素30ないしカーソルの範囲にある細部の拡大(ズーム機能)は,例えば指ないし検出対象O等の操作要素を操作面から軽く持ち上げる(引き離す)ことによって制御することができる。同時に,ズーム拡大された選択領域が,指の運動によって相応に運動するよう構成すると有利である。例えば,運転手の視野中にナビゲーションシステム31の表示画面が存在する場合,運転手は,目的経路を探すために,例えば面12の上方で指を動かすか,指の先端を転動ないし小旋回(abrollen)するだけでよい。ナビゲーションシステム31の地図の選択領域を拡大するために,運転手は,指を持ち上げるだけでよく,変速レバー32から手を離す必要はなく,更なる被操作要素を作動する必要もない。面12の大きさは,指を殆ど運動ないし摺動しないで,単に指先を転動ないし小旋回して被操作要素30を操作する程度に小さくすることもできる。この場合,操作面は,例えば指先の面積よりも余り大きくない程度の大きさとすることもできる。検出対象Oの接触面とほぼ同じ大きさの面12は,丸く湾曲する(膨らむ)よう構成することもできる。尤も,この面12は,勿論,その他の任意の形状,例えば平面状,ほぼ球面状とすることができる。必要に応じ,面12は,面12の中心点を(手探りないし指先で)確認できるような形状ないし構造とすることも可能である。」

ス 「【0046】図10,図11の実施例のように,送信器A,B及び受信器Eが面12の下方(内側)に配されることは必ずしも必須ではない。例えばインジケータ34’又は同時には透過照明されることができないその他の構造要素がそこに存在すれば,送信器及び/又は受信器は,面12の上方(外側)に配することも可能である。この場合,(送信器・受信器と検出対象を)分離を行う媒体は,面12ではなく,空気又はその他の媒体である。送信器及び受信器は,カバー[41]によって保護され,面12とカバー[41]との間の隙間を介してのみ放射ビームを放射・受信し,必要に応じ屈曲された相応の光波案内(導光)装置を介して操作面に導入されるよう構成することができる。」
【図10】


(2) 引用発明
引用例1には,図4とともに,請求項6(請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6)に係る発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。なお,引用箇所を明らかにするため,請求項の番号及び段落番号を併記する。
「【請求項1】検出対象の位置及び/又は運動を検出するための光電装置であって,
とりわけ光ビーム等の放射ビームを放射するための複数の送信器(A,B,C,D)と,
前記送信器(A,B,C,D)から放射されかつ検出対象(O)によって反射された放射ビームを受信する1つの受信器(E)と,
前記送信器(A,B,C,D)-前記検出対象(O)-前記受信器(E)間に形成される,互いに異なる複数の放射ビーム経路と,
前記異なる複数の放射ビーム経路の前記送信器(A,B,C,D)をクロック的に切換えるためのタイミング回路と,
1つの面(12)内で前記検出対象の位置及び/又は運動を検出するために,前記異なる複数の放射ビーム経路のための前記受信器(E)によって受信される複数の信号を値(x,y)に変換する評価ユニット(11)と,
を有し,
【0026】第1のサイクルでは,x位置を求めるために,送信器A,Cが,送信器B,Dと交互に放射を行い,第2のサイクルでは,y位置を求めるために,送信器A,Bが,送信器C,Dと交互に放射を行い,
【請求項1】前記検出対象の位置及び/又は運動を三次元的に検出するために,【請求項5】更なるサイクルにおいて,すべての送信器(A,B,C,D)が一緒にクロック制御され,【請求項1】該送信器(A,B,C,D)によって放射ビームが送り込まれる空間が,ほぼ完全に一様に隈なく照射され,かつ前記評価ユニット(11)が,該更なるサイクル中に前記検出対象によって反射された放射ビームに基づいて,前記面(12)から該検出対象までの距離(d)を求めるための値を求め,
【請求項6】1つの更なる光源(20)が,1つの受信器(E)の近くに,該更なる光源(20)の光が該受信器(E)に実質的に入射するよう,送信器として配設され,
【0011】操作面の表面から測定される距離もまた同時に求めることができ,距離のその時々の値により,更なる機能,例えば,操作面から指をほんの数ミリメートルだけ少々遠ざけることにより,別の機能面に切換えることも可能となる,
光電装置。」

(3) 引用例2
本件出願の出願前に頒布された刊行物である特表2003-526236号公報(公表日:平成15年9月2日,発明の名称:運動の変化を評価するオプトエレクトロニックスイッチ,出願番号:特願2001-553659号,出願日:平成13年1月16日)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
ア 「 【請求項1】
・光を放射する少なくとも1つの発信要素と,
・その値が受光される光量に依存する第一信号を生成する少なくとも1つの受信要素と,
・前記第一信号の値又は該第一信号から導出される更なる信号の値が第一の閾値を上回るか又は下回るとき,少なくとも1つの切換要素がその切換状態を変化させる評価ユニットとを有し,
・前記発信要素から発せられる光が,所定領域内に存する物体(複数)によって又は受信要素及び発信要素に対し所定の空間関係を有する可動要素によって,散乱又は反射され,この散乱光又は反射光の少なくとも一部が該受信要素に到達するよう,1つの前記発信要素と1つの前記受信要素とが配置され,及び
・前記受信要素によって受光される散乱光又は反射光の,前記物体又は前記可動要素の運動によって引き起こされる光量の変化が,該運動が所定領域のタッチ(接触ないし接近運動:Antippen)に対応する所定の運動パターンの範囲内に存するとき,前記切換要素の(切換)状態の変化を引き起こすよう構成される形式のオプトエレクトロニックスイッチにおいて,
前記評価ユニットは,時間変動的な運動変化を認識(検出)し,かつ,前記物体又は前記物体によって作動される可動要素の運動変化をタッチ(接触ないし接近運動)として認識(検出)する
ことを特徴とするオプトエレクトロニックスイッチ。

【請求項2】
前記時間変動的運動変化は,前記物体又は前記可動要素が急速に停止するときの速度変化に対応する
ことを特徴とする請求項1に記載のオプトエレクトロニックスイッチ。

【請求項3】
前記運動パターンは,前記物体によるオプトエレクトロニックスイッチ又は可動要素の操作面へのタッチ(接触ないし接近運動),所定の待ち時間に亘る該物体の停留(停止),並びに所定距離を越える操作面からの該物体の引き離しを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のオプトエレクトロニックスイッチ。

【請求項4】
1つの前記発信要素と1つの前記受信要素は,少なくとも1つのセンサユニットを構成すること,及び
1つの前記センサユニットから供給される信号は,前記運動パターン全体を検出(認識)すること
を特徴とする請求項1?3の一に記載のオプトエレクトロニックスイッチ。」

イ 「 【0019】
第一実施例
【0020】
オプトエレクトロニックスイッチの第一実施例を図1に示した。
【図1】

【0021】
ガラスプレート31の下方に,少なくとも2つの発光ダイオード1,3が発信要素として配される。その(放射)光は,ガラスプレート31を透過するものもあるが,少なくとも部分的に透過要素としてのガラスプレート31で反射されることも可能であり,反射ないし散乱後,部分的にフォトダイオード2に入射する。この実施例では,第一発光ダイオード1からの光は,指で反射される。発光ダイオードを相応に構成することによりフォトダイオードとして使用することも可能である。ガラスプレート又はその他の表面は,少なくとも一定の波長範囲の光に対し透過性であるべきであろう。発光ダイオード3から放射される光は,検出光線としては使用されず,外部光補償(Fremdlichtkompensation)のためにのみ必要とされる。それゆえ,この発光ダイオードの光路を,その光が外部空間に射出され得ないようにブロックすることも考えられ,また多くの場合目的に適うものである。2つの光線の内の一方をブロックするための構成を図14に示した。
【図14】

更に,第一発光ダイオードを例えば遠方放射レーザダイオードのような前方へ収束光を放射する発光ダイオードとして構成し,第二ダイオードを近接領域でのみ放射を行なう発光ダイオードとして構成することも考えられる(図13)。
【0022】
発光ダイオード1からの光は,ガラスプレート31で部分的にのみ反射され,従って残りの部分は外部空間へ射出し,そこで再び物体(この場合は指)によって反射され,そして部分的にフォトダイオード2へと辿り着くことができる。尤も,外部光補償が必要となる場合には,物体の代わりに,例えば第三実施例のスナップ動作ディスク(Schnappscheibe)のような可動要素を使用することもできるであろう。なぜなら,可動要素は,一定の範囲の波長の光に対し透過性だからである。2つの発光ダイオードは,クロック発生回路13によって電圧が印加され,2つの発光ダイオードの内の一方の信号が反転される。発光ダイオードの発光出力が一定の場合及び反射が正確に対称的である場合,ないし2つの発光ダイオードの内の少なくとも一方の発光強度の調節が適正である場合(下記参照),フォトダイオード2の出力端には直流電圧信号が生成するが,直流電圧信号は,直流電圧成分及び低周波の交流成分を除去するために,ハイパスフィルタ(高(帯)域通過フィルタ)132にかけられる。ハイパスフィルタ132(その遮断周波数はクロック発生回路13の周波数より小さい)は,交流成分のみを通過させ,発光ダイオード1,3の出力が適正な場合,当該フィルタに伝送された信号は“0”にされ,この構成では,外部光源の影響は排除される。
【0023】
上記のようにフィルタ処理された信号は,増幅回路4,そして同期変調回路5に伝送される。同期変調回路5は,クロック発生回路13からクロック信号を受け取り,このクロック信号は,ハイパスフィルタ132及び増幅回路4における信号処理時間に適合させるために遅延回路15によって遅延させられる。同期変調回路5は,受光器2,ハイパスフィルタ132及び増幅回路4の信号伝送路では共通の,光源1及び3からの信号を再び分割し2つに別れた伝送路へそれぞれ分配する。同期変調回路5によって分割された信号部分は,ローパスフィルタ(低(帯)域通過フィルタ)6及び7において干渉(妨害)スペクトル領域について処理され,比較回路9へ伝送される。図1のケースでは,比較回路9は,単純な演算増幅回路(オペアンプ)から構成される。ローパスフィルタ6及び7の各出力端では,各光発信器に相応する差異ないし微分値(Differenzwerte)が生成する。相応に調節された状態では,2つともその値はゼロである。この2つの信号は,比較回路9に伝送される。この比較回路の出力端には,電圧値U(t),即ち基信号が生成する。この信号は,さらにローパスフィルタ10を介して信号中央処理段(ユニット)ないし信号レベル調整段(Signalzentrierstufe)11へ伝送される。
【0024】
信号中央処理段11の出力端は,少なくとも発光ダイオード3のための信号電圧を制御する制御回路12と接続する。この構成によって,基信号は,発光ダイオード1から発信される光の反射(状態)が変化するとき変化するが,常に再びゼロ値に復帰することが実現される。この復帰のための時定数は,この実施例では,ローパスフィルタ10によって決定される。
【0025】
上記の構成は,国際出願国際公開WO 95/01561からも既知であるが,この国際出願の開示内容は,本出願の対象としてここに繰り込み記載されたものとする。この国際出願は,とりわけガラスディスク上の水滴検出用として提案されている。このケースでは,ガラスプレート上に存在する少なくとも1つのセンサ活性化領域S1がスイッチ面として使用できるように,即ち,このセンサ活性化領域のタッチ(接触ないし接近運動)によりスイッチ切換プロセスが作動するように,基信号U(t)が使用される。この課題は,下記のスイッチングによって解決され得る。
【0026】
図4(a),図4(b),図5には,種々の状況下において上記センサ装置によって与えられた基信号(Nutzsignal)U(t)が示されている。図5(a)には,センサ活性化領域S1をタッチしたときの基信号U(t)が示されている。そのような信号によって,スイッチ切換プロセスが作動されるものとする。図4(a)又は図4(b)には,第一センサ活性化領域S上を一回だけスイープ(スライド移動)するか又は往復してスイープした場合に生じるような基信号推移が示されている。そのような信号推移は,スイッチ切換プロセスを作動しないものとする。この課題は,この実施例では,以下のように達成される(図1)。
【0027】
基信号U(t)は,この場合微分回路として機能するハイパスフィルタ16に伝送され,その出力端に微分によって得られた運動信号の値U_(1)(t)が生成する。例えば指等の物体がガラスプレート31のセンサ活性化面上に向って運動すると,基信号の値U(t)は,その運動に応じて(アナログ的に)ゆっくりと増加し,そして指がガラスプレート31上に達し止められると急速に(増加が)停止する(図5(a)参照)。そして指を動かさずに留めておくと,基信号の値U(t)は,再びU_(0)に向ってゆっくりと減少する。基信号の急速な値の変化により,ハイパスフィルタ16の出力端では,運動信号値U_(1)(t)の跳躍(急激な変化)が起こる(図5(b)参照)。これ(U_(1)(t)の跳躍)は,所定の値(この実施例では負の値U_(G1))を超過するとき閾値回路17によって検出され,第一フリップフロップ回路32のセット入力端(S)と接続する第一閾値回路17の出力端が活性化され,従って第一フリップフロップ回路32が活性化される。ハイパスフィルタ16の遮断周波数は,大きな速度でタッチ(接触ないし接近運動)を行なってもなお検出されるべき信号が良好に生じるように選択される。限界周波数は,例えば,10ヘルツの範囲にあり得るであろう。
【0028】
従って,このケースでは,基信号から生成される信号,即ち微分によって得られる運動信号も使用され,この運動信号は,その値U_(1)(t)が所定の閾値U_(G1)を超過するとき,第一プロセスを作動させる。しかしながら,基信号が直接使用され,基信号の値U(t)が所定の値を上回るか又は下回るとき,1つのプロセス-フリップフロップ回路の状態変化-を作動させるような回路構成例・応用例も考えることができる。
【0029】
十分に迅速でかつ第一センサ活性化領域をスイープする運動は全て,このようなプロセスを作動させる。即ち,第一フリップフロップ回路32の出力端が活性化されるのである。このような運動には,引擦り運動その他の類似の運動でも十分に当てはまるが,これらは意図的なスイッチ切換プロセスとして認識(検出)されるべきものではない(図4(a)及び図4(b)参照)。それゆえ,基信号は,基信号の値U(t)が所定の第二閾値U_(G2)を下回るとき活性化される第二閾値回路34に伝送される。この場合,物体の除去(指の引き離し)により,(物体からの)距離に応じて反対方向へ(この実施例では負の領域へ)U(t)は減少する(図4(a))。第二閾値回路34の第二閾値U_(G2)を超過すると,第二閾値回路34の出力U_(34)(t)は,活性化される(図7参照)。
【0030】
第二閾値回路34の出力端は,フリップフロップ回路32のリセット入力端(R)と接続しているため,フリップフロップ回路32を活性化させてしまった擦り運動その他の類似の運動が行われると,フリップフロップ回路32は,短時間経過した後再びゼロにリセットされる。フリップフロップ回路32の出力信号は,時間検出回路33へ伝送される。この時間検出回路33は,フリップフロップ回路32が所定の時間Δt_(1)(例えば100ms)より長く活性化されていた場合にのみ,その出力端が活性化されるように調節される。この所定の第一時間間隔Δt_(1)は,指,手又はその他の身体の一部が,電気的切換要素として構成されるスイッチをタッチする際に通常停留(停止)する最小の時間にほぼ相当する。
【0031】
時間検出回路33の出力端は,第二フリップフロップ回路18のセット入力端と接続する。そのため,センサ活性化面を意図的にタッチすると,第二フリップフロップ回路18の出力端が活性化される。というのは,この場合,第一フリップフロップ回路32のセットと第一フリップフロップ回路32のリセットとの間の時間がΔt_(1)より長い,換言すれば,指がセンサ活性化面26上にΔt_(1)より長く留まって(停留(停止)して)いるからである。しかしながら,スイッチ切換プロセスを作動させるべきではない運動-例えば布きんによる擦り運動-が行なわれる場合,第一フリップフロップ回路32のセット・リセット間の時間はΔt_(1)より短いため,このような運動は,第二フリップフロップ回路18をセットするには至らない。つまり,センサ活性化面をタッチすることによって,第二フリップフロップ回路18の状態も制御可能に変化される。フリップフロップ回路18の出力端を更にスイッチ23(例えばリレー)と接続することも可能である。
【0032】
従って,評価ユニットが認識(検出)するのは,以下のような運動パターンである。即ち,物体の接近-物体の急停止-所定の時間間隔を超過する時間間隔に亘る物体の停留(停止)である。この運動パターンが認識(検出)されると,スイッチ要素(この場合第二フリップフロップ回路18)の切換状態は,変化される。
【0033】
指の引き離しは,閾値回路17によって検出されない。というのは,基信号の値U(t)の変化は,それ以外の方向では起こなわれずかつ微分後には余りにも小さく(図5(c)),そのため微分によって得られる運動信号の値U_(1)(t)は第一閾値U_(G1)を超過しないからである。
【0034】
多くの応用例では,センサ活性化面26のタッチ(接触ないし接近運動)によってセットされる第二フリップフロップ回路18が,目的の指の引き離しによって再びリセットされることが好ましい。このとき,これによってタッチパネル(入力装置)の機能が得られる。尤も,些細な運動によってフリップフロップ回路が誤って消去(リセット)されないように,指がガラスプレートから数ミリメートル離れてからようやくフリップフロップ回路18の消去(リセット)が行われるようにすることも有利である。この(第一)実施例では,この問題は以下のように解決される。
【0035】
信号中央処理段11の出力端に生成される制御信号U_(R)(t)の瞬時値が,接近する物体が操作面の極く近く(直前)に位置する時点において検出(abtasten)及び記憶される。このことをこの実施例で実現するために,この制御信号は遅延回路20に伝送される。遅延回路20の出力端に生成される電圧値U_(20)は,時点t_(0)に記憶回路21に記憶されるが,この時点t_(0)は,第一閾値回路17の出力端に信号が生成する時点,即ち,第一閾値回路17がタッチ(接触ないし接近運動)の行なわれた時点を検出(認識)した時点である。或いは,信号中央処理段11の出力端に生成する信号を1より小さい値によって乗算を行ない,この値を記憶するすることもできる。そのため,この2つのケースでは,U_(R)(t)への依存が生じるため,そのように記憶された値U_(R)(t_(0))は,例えばガラスプレートの経時変化(老朽化)依存状態にも,温度又はその他の周囲条件にも依存しない。このように記憶された値U_(R)(t_(0))は,比較回路22の第一入力端へ伝送される。比較回路22の第二入力端には,値U_(R)(t)を有する制御信号が入力される。この制御信号の値が,記憶回路21の出力値を超過している間は,比較回路22は出力信号を生成しない。しかしながら,該制御信号の値が,時点t_(1)に,記憶された値を下回ると,比較回路の出力端は活性化される。信号U_(20),U_(R)(t)及びU_(R)(t_(0))の経過を図8に示した。この信号によって第二フリップフロップ回路18はリセットされる。
【図8】

【0036】
使用される構成要素の閾値,時定数等の全てを不変に定めるのではなく,その値を制御入力によって外部から変化させることができるような構成要素を少なくとも部分的に使用することも考えられる。それによって,検出されるべき運動パターンを必要に応じ,(本発明の)スイッチが組み込まれたシステム全体を制御するソフトウェアによって予め与えることもできるであろう。」

(4) 引用例2記載発明
引用例2には,以下の技術が記載されている(以下「引用例2記載発明」という。)。なお,用語を統一してある。
「【0021】ガラスプレート31の下方に,少なくとも2つの発光ダイオード1,3が発信要素として配され,その放射光は,反射ないし散乱後,部分的にフォトダイオード2に入射し,第一発光ダイオード1からの光は,指で反射され,発光ダイオード3から放射される光は,検出光線としては使用されず,外部光補償のためにのみ必要とされ,その光が外部空間に射出され得ないようにブロックし,
【0022】2つの発光ダイオードは,クロック発生回路13によって電圧が印加され,2つの発光ダイオードの内の一方の信号が反転され,フォトダイオード2の出力端には直流電圧信号が生成するが,ハイパスフィルタ132にかけられ,
【0023】フィルタ処理された信号は,増幅回路4,そして同期変調回路5に伝送され,同期変調回路5は,光源1及び3からの信号を再び分割し,分割された信号部分は比較回路9へ伝送され,比較回路の出力端には,電圧値U(t),すなわち基信号が生成され,
【0023】基信号U(t)は,ローパスフィルタ10を介して信号中央処理段11へ伝送され,【0024】信号中央処理段11の出力端は,発光ダイオード3のための信号電圧を制御する制御回路12と接続され,基信号U(t)は,発光ダイオード1から発信される光の反射が変化するとき変化するが,常に再びゼロ値に復帰することが実現され,
【0025】ガラスプレート上に存在する少なくとも1つのセンサ活性化面Sのタッチによりスイッチ切換プロセスが作動するように,基信号U(t)が使用され,
【0027】指がガラスプレート31のセンサ活性化面S上に向って運動すると,基信号U(t)は,その運動に応じてゆっくりと増加し,指がガラスプレート31上に達し止められると急速に停止し,基信号U(t)の急速な値の変化により,第一閾値回路17の出力端が活性化され,第一フリップフロップ回路32が活性化され,【0030】フリップフロップ回路32の出力信号は,時間検出回路33へ伝送され,【0031】時間検出回路33の出力端は,第二フリップフロップ回路18のセット入力端と接続され,センサ活性化面Sを意図的にタッチすると,第二フリップフロップ回路18の出力端が活性化され,
【0034】センサ活性化面Sのタッチによってセットされる第二フリップフロップ回路18は,指の引き離しによって再びリセットされ,
尤も,些細な運動によってフリップフロップ回路が誤って消去(リセット)されないように,指がガラスプレート31から数ミリメートル離れてからようやくフリップフロップ回路18のリセットが行われるように,
【0035】信号中央処理段11の出力端に生成される制御信号U_(R)(t)の瞬時値は遅延回路20に伝送され,遅延回路20の出力端に生成される電圧値U_(20)は,時点t_(0)に記憶回路21に記憶されるが,この時点t_(0)は,第一閾値回路17がタッチの行なわれた時点を検出した時点であり,記憶された値U_(R)(t_(0))は,比較回路22の第一入力端へ伝送され,比較回路22の第二入力端には,値U_(R)(t)を有する制御信号が入力され,制御信号の値が,記憶回路21の出力値を超過している間は,比較回路22は出力信号を生成しないが,該制御信号の値が,時点t_(1)に,記憶された値を下回ると,比較回路の出力端は活性化され,第二フリップフロップ回路18はリセットされる,
【0020】オプトエレクトロニックスイッチ。」

(5) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 光学式位置検出装置
引用発明は,「検出対象の位置及び/又は運動を検出するための光電装置」である。また,引用発明は,「1つの面(12)内で前記検出対象の位置及び/又は運動を検出するために,前記異なる複数の放射ビーム経路のための前記受信器(E)によって受信される複数の信号を値(x,y)に変換する評価ユニット(11)」の構成を具備するとともに,「前記検出対象の位置及び/又は運動を三次元的に検出する」ものでもあるから,引用発明の「光電装置」は,所定の空間内(検出領域内)において,対象物体の位置を光学的に検出するものといえる。
したがって,引用発明の「光電装置」は,本件補正後発明の「検出領域内の対象物体の位置を光学的に検出するための光学式位置検出装置」に相当する。

イ X,Y,Z軸方向
引用発明において,「第1のサイクルでは,x位置を求めるために,送信器A,Cが,送信器B,Dと交互に放射を行い,第2のサイクルでは,y位置を求めるために,送信器A,Bが,送信器C,Dと交互に放射を行」っている。また,引用発明は,「1つの面(12)内で前記検出対象の位置及び/又は運動を検出するために,前記異なる複数の放射ビーム経路のための前記受信器(E)によって受信される複数の信号を値(x,y)に変換する評価ユニット(11)」の構成を具備する。さらに,引用発明は,「前記検出対象の位置及び/又は運動を三次元的に検出するために,更なるサイクルにおいて,すべての送信器(A,B,C,D)が一緒にクロック制御され,該送信器(A,B,C,D)によって放射ビームが送り込まれる空間が,ほぼ完全に一様に隈なく照射され,かつ前記評価ユニット(11)が,該更なるサイクル中に前記検出対象によって反射された放射ビームに基づいて,前記面(12)から該検出対象までの距離(d)を求めるための値を求め」ている。
したがって,引用発明の,「x」で表される方向,「y」で表される方向,及び,「d」で表される方向は,それぞれ,本件補正後発明の「X軸方向」,「Y軸方向」及び「Z軸方向」に相当する。また,引用発明のx,y,d方向は,本件補正後発明の「互いに交差する方向」の要件を満たす。

ウ 位置検出用光源
引用発明は,「とりわけ光ビーム等の放射ビームを放射するための複数の送信器(A,B,C,D)」の構成を具備する。
したがって,引用発明の「とりわけ光ビーム等の放射ビームを放射するための複数の送信機(A,B,C,D)」と本件補正後発明の「検出光を出射する複数の位置検出用光源」は,「検出光を出射する複数の位置検出用光源」の点で共通する。

エ 光源駆動部
引用発明は,「前記送信器(A,B,C,D)-前記検出対象(O)-前記受信器(E)間に形成される,互いに異なる複数の放射ビーム経路と,前記異なる複数の放射ビーム経路の前記送信器(A,B,C,D)をクロック的に切換えるためのタイミング回路」の構成を備え,かつ,「第1のサイクルでは,x位置を求めるために,送信器A,Cが,送信器B,Dと交互に放射を行い,第2のサイクルでは,y位置を求めるために,送信器A,Bが,送信器C,Dと交互に放射を行」っている。また,引用発明において,送信機A,Cの側を「x軸方向における一方側」とすると,送信機B,Dの側は「x軸方向における他方側」となり,また,送信機A,Bの側を「y軸方向における一方側」とすると,送信機C,Dの側は「y軸方向における他方側」となる(図4及び段落【0026】からも理解できる事項である。)。
したがって,引用発明の「タイミング回路」は,本件補正後発明の「前記複数の位置検出用光源を駆動して前記検出領域に前記X軸方向で前記検出光の強度が変化するX座標検出用光強度分布および前記Y軸方向で前記検出光の強度が変化するY座標検出用光強度分布を形成する光源駆動部」に相当する。また,引用発明の「送信機(A,B,C,D)」は,本件補正後発明の,「前記複数の位置検出用光源は,前記検出領域に,前記X軸方向及び前記Y軸方向の少なくとも一つの方向における一方側から他方側に向けて強度が変化する第1光強度分布と,前記他方側から前記一方側に向けての強度変化が前記第1光強度分布と相違する第2光強度分布と,を形成し」の要件を満たす。

オ 光検出器
引用発明は,「前記送信器(A,B,C,D)から放射されかつ検出対象(O)によって反射された放射ビームを受信する1つの受信器(E)」の構成を具備する。
したがって,引用発明の「受信機(E)」は,本件補正後発明の「前記検出領域内の前記対象物体で反射した前記検出光を受光する光検出器」に相当する。

カ 位置検出部
引用発明は,「前記送信器(A,B,C,D)-前記検出対象(O)-前記受信器(E)間に形成される,互いに異なる複数の放射ビーム経路」を形成するために,「第1のサイクルでは,x位置を求めるために,送信器A,Cが,送信器B,Dと交互に放射を行い,第2のサイクルでは,y位置を求めるために,送信器A,Bが,送信器C,Dと交互に放射を行」う構成を具備するとともに,「1つの面(12)内で前記検出対象の位置及び/又は運動を検出するために,前記異なる複数の放射ビーム経路のための前記受信器(E)によって受信される複数の信号を値(x,y)に変換する評価ユニット(11)」の構成を具備するから,値(x,y)への変換は,放射ビーム経路どうしの比較結果に基づくものといえる(図1及び段落【0021】?【0024】の記載からも理解できる事項である。)。
したがって,引用発明の「評価ユニット(11)」は,本件補正後発明の「該光検出器での受光結果に基づいて前記対象物体の位置を検出する位置検出部」に相当する。また,引用発明の「評価ユニット(11)」は,本件補正後発明の「前記位置検出部は,前記第1光強度分布を形成したときの前記光検出器での検出結果と,前記第2光強度分布を形成したときの前記光検出器での検出結果との比較結果に基づいて前記対象物体の位置を検出し」の要件を満たす。

(6) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「 検出領域内の対象物体の位置を光学的に検出するための光学式位置検出装置であって,
互いに交差する方向をX軸方向,Y軸方向およびZ軸方向としたとき,
検出光を出射する複数の位置検出用光源と,
前記複数の位置検出用光源を駆動して前記検出領域に前記X軸方向で前記検出光の強度が変化するX座標検出用光強度分布および前記Y軸方向で前記検出光の強度が変化するY座標検出用光強度分布を形成する光源駆動部と,
前記検出領域内の前記対象物体で反射した前記検出光を受光する光検出器と,
該光検出器での受光結果に基づいて前記対象物体の位置を検出する位置検出部と,
を有し,
前記複数の位置検出用光源は,前記検出領域に,前記X軸方向及び前記Y軸方向の少なくとも一つの方向における一方側から他方側に向けて強度が変化する第1光強度分布と,前記他方側から前記一方側に向けての強度変化が前記第1光強度分布と相違する第2光強度分布と,を形成し,
前記位置検出部は,前記第1光強度分布を形成したときの前記光検出器での検出結果と,前記第2光強度分布を形成したときの前記光検出器での検出結果との比較結果に基づいて前記対象物体の位置を検出する
光学式位置検出装置。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明の相違点は,以下のとおりである。

(相違点1)
本件補正後発明の位置検出用光源は,「前記検出領域のXY平面に沿う方向に」検出光を出射する複数の位置検出用光源であるのに対し,引用発明は,これが明らかではない点。

(相違点2)
本件補正後発明は,「前記光検出器と,前記複数の位置検出用光源のうちの少なくとも1つとを含む光学ユニットを有し,前記光学ユニットは,前記検出領域を経由せずに前記光検出器に入射するZ座標検出用の参照光を出射する参照用光源を備え,前記光源駆動部は,前記参照用光源を前記複数の位置検出用光源と異なるタイミングで点灯させる」のに対し,引用発明は,これが明らかではない点。

(7) 判断
相違点に対する判断は,以下のとおりである。
ア 相違点1について
引用発明の光電装置は,「1つの面(12)内で前記検出対象の位置及び/又は運動を検出する」ためのものであるから,面(12)にある検出対象に検出光をあてるために,引用発明の送信器が「前記検出領域のXY平面に沿う方向に」検出光を出射していることは明らかである。
相違点1は,実質的な相違点ではない。

あるいは,引用例1には,送信器を1つの面の下方に配置する態様(図1)に加えて,送信器を1つの面の側方に配置する周知の態様(図10)も開示されている。また,段落【0046】には,「図10,図11の実施例のように,送信器A,B及び受信器Eが面12の下方(内側)に配されることは必ずしも必須ではない。例えばインジケータ34’又は同時には透過照明されることができないその他の構造要素がそこに存在すれば,送信器及び/又は受信器は,面12の上方(外側)に配することも可能である。」と記載されている。
そうしてみると,送信器の配置は,引用発明を具体化するに際して当業者が適宜レイアウトすべき事項にすぎない。
したがって,引用発明の送信器を,「前記検出領域のXY平面に沿う方向に」検出光を出射するように構成することは,当業者が容易にできることである。

イ 相違点2について
引用発明は,「前記検出対象の位置及び/又は運動を三次元的に検出するために,更なるサイクルにおいて,すべての送信器(A,B,C,D)が一緒にクロック制御され,該送信器(A,B,C,D)によって放射ビームが送り込まれる空間が,ほぼ完全に一様に隈なく照射され,かつ前記評価ユニット(11)が,該更なるサイクル中に前記検出対象によって反射された放射ビームに基づいて,前記面(12)から該検出対象までの距離(d)を求めるための値を求め」る構成,及び,「1つの更なる光源(20)が,1つの受信器(E)の近くに,該更なる光源(20)の光が該受信器(E)に実質的に入射するよう,送信器として配設され」る構成を具備する(以下「三次元検出部」という。)。
また,さらなる検出部の構成に関して,引用例1には,「第3の次元における位置検出を規定するために,面12上の操作要素の位置のx値及びy値を規定するための2つの基本サイクルに加えて,更に少なくとも1つの更なる基本サイクルが付加・使用される。この更なる基本サイクルでは,送信器A?Dは,そのすべて又は少なくとも一部(1つ)が同じクロック信号を受信し,従って同時に放射を行うように制御される。このため,x方向及びy方向において位置を求めるために必要とされるようなこれら送信器の個別的制御は必須ではなくなる。更に,少なくとも1つの更なる光源20を補償手段として1又は複数の受信器E,E1?E4の近くに配し,この更なる光源から放射される光がほぼ受信器のみに入射するようにすることも可能である。」(段落【0028】),「上記特許文献2には,検出対象の接近及び操作面に触接する際の運動パターンが明確に認識(検出)されるよう構成・配置された2つの光源について記載されている。このような構成・配置は,原理的には,触接信号を検出するために,本発明においても使用されるが,外部に向かって放射する1つの光源の代わりに,本発明では,複数の,好ましくはすべての送信器が,必要に応じて受信器もまた,外部に向かって放射を行うために使用される。これは,面12の上方の空間ができるだけ一様に(均一に)照射(放射)されるようにするためである。」(段落【0029】),「面12から離れるような運動が行われる度に,制御電圧UR_(3D)は変化する。そのため,記憶されている値Ref_(3D)と実際の制御電圧UR_(3D)との差は,アナログの出力信号S2 3Dを生成する。出力信号S2 3Dは,面12からの検出対象Oの距離に比例する。検出手段14は,(1つの)比較器を介して,補償を行うために設けられた更なる光源20の受信器に直接入射する放射ビーム並びに反射された放射ビームを検出し,以ってサイクルの配分に応じて制御が行われる。上記特許文献2に記載されているように,第1の信号は,まず,回路24によって予設定された時間だけ遅延され,そして例えばデジタル式の記憶ユニット13に記憶される。そして,比較手段15において,更なる(複数の)値とこの参照値との比較が行われる。」(段落【0032】)と記載され,結局,引用例1には,引用発明のさらなる検出部として,特許文献2に記載されているような構成が使用されることが説明されている。
そこで,特許文献2に対応する文献である,引用例2を参照すると,引用例2には,前記引用例2記載発明,すなわち,基信号U(t)に基づいてガラスプレート31への指の接触を検知するとともに,接触時のU_(R)(t0)の記憶値とU_(R)(t)の瞬時値に基づいて指がガラスプレート31から数ミリメートル離れたことを検知し,指の接触をリセットする構成が記載されている。
そうしてみると,引用発明及び引用例2記載発明に接した当業者が,引用発明のさらなる検出部として,例えば,引用例2記載発明の回路と同様の回路を採用することによって,送信機(A,B,C,D)と光源(20)を交互に放射させ,送信器(A,B,C,D)の放射ビームの指による反射光の受信器(E)出力と,引用発明の光源(20)の補償光の受信器(E)出力に基づいて接触信号を得るとともに,接触時の制御信号値(記憶値)と離れる指の制御信号値との差に基づいて,面12からの検出対象Oの距離(d)を得るようにすることは,当業者が容易にできたことである。
また,引用例2には,「1つの前記発信要素と1つの前記受信要素は,少なくとも1つのセンサユニットを構成する」(【請求項4】)と記載され,さらに,図14の構成が開示されているところ,図14からは,発光ダイオード1及び反射板160付きの発光ダイオード3,並びに,フォトダイオード2がセンサユニットとされた様子が見て取れる。そして,引用例1には,引用発明の適用例として,図12に示されるような,比較的小型の光電装置への適用が例示されているから,このような記載に接した当業者が,引用発明の送信器(A,B,C,D)及び受信器(E)を1つのユニットとすることは,容易にできたことである。
以上のとおりであるから,引用発明において「前記光検出器と,前記複数の位置検出用光源のうちの少なくとも1つとを含む光学ユニットを有し,前記光学ユニットは,前記検出領域を経由せずに前記光検出器に入射するZ座標検出用の参照光を出射する参照用光源を備え,前記光源駆動部は,前記参照用光源を前記複数の位置検出用光源と異なるタイミングで点灯させる」構成を採用することは,当業者が容易にできたことである。

また,本件補正後発明が奏する効果は,引用発明及び引用例2記載発明から当業者が予測できる範囲内のものであり,少なくとも,顕著なものであるとはいえない。

(8) 請求人の主張について
請求人は,審判請求書において,概略,本件補正後発明は,「光学ユニットは,検出領域を経由せずに光検出器に入射するZ座標検出用の参照光を出射する参照用光源を備える」ことを特徴としております,この特徴は,引用例1?6には一切開示も示唆もされておりません,特に,引用例2には,外部光補償用の発光ダイオードを備えたオプトエレクトロニックスイッチが開示されておりますが,この外部光補償用の発光ダイオードは,引用例2の【0021】,【0056】に記載されている如く,外部光補償のためにのみ使用されるものであり,本件補正後発明の,検出領域を経由せずに光検出器に入射するZ座標検出用の参照光を出射する参照用光源に相当するものではありません,と主張する。

しかしながら,前記(7)イで述べたとおり,引用例1の段落【0032】には,面12からの検出対象Oの距離を求める構成に関して引用例2を参照しており,また,引用例2記載発明におけるU_(R)(t)とU_(R)(t_(0))の差が,センサ活性化面Sからの距離に対応していることは,引用例2の図8から直ちに理解できることである。また,引用例2記載発明は「信号中央処理段11の出力端は,発光ダイオード3のための信号電圧を制御する制御回路12と接続され,基信号U(t)は,発光ダイオード1から発信される光の反射が変化するとき変化するが,常に再びゼロ値に復帰することが実現され」という構成を具備するから,本件補正後発明でいう「参照用光源」としての機能を果たしている。
そうしてみると,引用例1の段落【0028】,【0029】及び【0032】の示唆にしたがって,引用例2記載発明の発光ダイオード3を,接触検知及び距離(d)検出に伴う参照用の発光ダイオード3とすることは,引用発明及び引用例2記載発明に接した当業者が容易に着想できることにすぎない。

(9) 小括
本件補正後発明は,引用例1及び2に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのまとめ
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲の請求項4(請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4)に係る発明(本願発明)は,前記「第2」1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,この出願の請求項4に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された引用例1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例1等に記載の事項及び引用発明等
引用例1に記載の事項及び引用発明は前記「第2」3(1)及び(2)に記載したとおりであり,また,引用例2に記載の事項及び引用例2記載発明は,前記「第2」3(3)及び(4)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,本件補正後発明の「Z座標検出用の参照光を出射する参照用光源」において,「Z座標検出用の」との要件を除いたものである。
そうすると,本願発明の構成を含み,さらに他の限定を付したものに相当する本件補正後発明が,前記「第2」3(5)?(9)で述べたとおり,引用例1及び2に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-07 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2009-279202(P2009-279202)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
P 1 8・ 575- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神谷 健一  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 中塚 直樹
樋口 信宏
発明の名称 光学式位置検出装置および位置検出機能付き表示装置  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 上柳 雅誉  

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