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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1303434
審判番号 不服2014-13015  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-04 
確定日 2015-07-24 
事件の表示 特願2013- 10587「HEVCにおける係数符号化の調和」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 1日出願公開、特開2013-150326〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成25年1月4日(パリ条約による優先権主張2012年1月20日、米国、2012年9月28日、米国)の出願であって、平成25年12月16日付けの拒絶理由通知に応答して平成26年2月24日付けで手続補正がなされたが、平成26年4月7日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成26年7月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2.平成26年7月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年7月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、請求項1、請求項5及び請求項9について同意の補正をするものであるところ、請求項5に係る補正事項は次のものである(アンダーラインは補正箇所)。

(補正前の請求項5)
「画像符号化装置が実行する方法であって、
モード依存係数走査に基づいて2次元の変換単位を1次元の変換単位に変換するステップと、
前記モード依存係数走査において、4×4及び8×8の水平又は垂直の変換単位に対しては、それぞれ水平又は垂直走査を行うステップと
4×4及び8×8を含む全ての右斜め上方向の変換単位に対しては、4×4のサブブロックの右斜め上方向走査を行うステップと、
を含む方法。」
とあるのを、
(補正後の請求項5)
「画像符号化装置が実行する方法であって、
モード依存係数走査に基づいて2次元の変換単位を1次元の変換単位に変換するステップと、
前記モード依存係数走査において、4×4及び8×8の水平又は垂直の変換単位に対しては、それぞれ水平又は垂直走査を行うステップと
前記4×4及び8×8の水平又は垂直以外の変換単位に対しては、4×4のサブブロックの右斜め上方向走査を行うステップと、
を含む方法。」
と補正する。

2.補正の適合性
2-1.補正の範囲
上記補正事項の「前記4×4及び8×8の水平又は垂直以外の変換単位に対しては、4×4のサブブロックの右斜め上方向走査を行う」という事項は、願書に最初に添付した明細書の記載(段落【0026】,【0027】,【0060】,図6,図7A,図7B,図7D)に基づくものであり、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項に規定される願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

2-2.補正の目的
上記補正事項は、4×4のサブブロックの右斜め上方向走査を行う変換単位を、補正前の「4×4及び8×8を含む全ての右斜め上方向の変換単位」から、補正後の「前記4×4及び8×8の水平又は垂直以外の変換単位」に変更するものである。
この補正事項は、HEVCの変換単位の4×4、8×8、16×16及び32×32などの変換単位のうち、例えば16×16及び32×32の水平又は垂直の変換単位に関して、補正前の請求項1では、どのような走査を行うのか特定していなかったものを、補正後の請求項1では、4×4のサブブロックの右斜め上方向走査を行うことに特定する補正であり、HEVCの変換単位の処理を限定するものといえるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

2-3.独立特許要件
上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項であるので、補正後の請求項5に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.の(補正後の請求項5)に記載した事項により特定される次のとおりのものである。

(本願補正発明)
画像符号化装置が実行する方法であって、
モード依存係数走査に基づいて2次元の変換単位を1次元の変換単位に変換するステップと、
前記モード依存係数走査において、4×4及び8×8の水平又は垂直の変換単位に対しては、それぞれ水平又は垂直走査を行うステップと
前記4×4及び8×8の水平又は垂直以外の変換単位に対しては、4×4のサブブロックの右斜め上方向走査を行うステップと、
を含む方法。

(2)刊行物の記載事項
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である「Yunfei Zheng, Muhammed Coban, Xianglin Wang, Joel Sole, Rajan Joshi, Marta Karczewicz, "CE11: Mode Dependent Coefficient Scanning", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 4th Meeting: Daegu, KR, 20-28 January, 2011, [JCTVC-D393]」には、次に掲げる事項が記載されている。
なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する。

「Abstract
In this contribution, a mode dependent coefficient scanning order selection scheme is proposed in order to improve the HEVC coding performance. In the proposed scheme, the best scanning order for the significance map is selected among zigzag, horizontal, and vertical scans based on the transform unit size and intra prediction mode. The proposed scheme achieves 1.2% BD-rate reduction on average for high efficiency intra configuration. There is no significant encoder/decoder complexity introduced by the method.」
(要約
この寄稿において、HEVC符号化性能を改善するために、モード依存係数走査順序選択方式が提案されます。提案方式では、有意性マップのために最も良い走査順序が、変換ユニットのサイズとイントラ予測モードに基づいて、ジグザグ、水平および垂直走査の中から選択されます。提案方式は、高効率イントラ構成に対して、平均で1.2%BDレートの低減を実現しています。この方法の導入によるエンコーダ/デコーダの顕著な複雑さはありません。)

「2 Proposed Scheme
Mode Dependent Coefficient Scanning (MDCS) scheme of JCTVC-D393 has been modified to accommodate the changes related to replacement of the HHI transform coding scan with zigzag scan, and the simplification of the significance map coding context JCTVC-D260[5]. The detailed study of this algorithm can be found in JCTVC-D453[7]. The proposed MDCS algorithm is applied to intra TU coding. Three scan patterns are used: zigzag (0), horizontal (1) and vertical (2) as shown in Figure 1.

Figure 1: MDCS coefficient scan patterns, zigzag (0),
horizontal (1), vertical (2).

The scanning order of a TU is determined by the intra prediction mode and the TU size using a fixed look-up table (LUT). Luma blocks use Table 1 and the chroma blocks use Table 2.

Table 1: LUT for intra luma coefficient scan index selection.」
(2 提案方式
JCTVC-D393のモード依存係数走査(MDCS)方式は、ジグザグ走査を有するHHI変換符号化走査の置き換えと、JCTVC-D260[5]のコンテキストの有意性マップの符号化の簡略化に関連した変化に対応するために修正されました。このアルゴリズムの詳細な研究は、JCTVC-D453[7]に記載されています。提案されたMDCSアルゴリズムは、イントラTU符号化に適用されます。図1に示すように、ジグザグ(0)、水平(1)、垂直(2)の三つの走査パターンが使用されます。
図1:MDCS係数走査パターン、ジグザグ(0)、水平(1)、垂直(2)
TUの走査順序は、定められたルックアップテーブル(LUT)を使用して、イントラ予測モードとTUのサイズによって決定されます。輝度ブロックは表1を使用し、クロマブロックは表2を使用します。
表1:イントラ輝度係数走査インデックス選択のためのLUT)

(2-2)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2である「Joel Sole, Rajan Joshi, Marta Karczewicz, "Non-CE11: Diagonal sub-block scan for HE residual coding", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 7th Meeting: Geneva, CH, 21-30 November, 2011, [JCTVC-G323]」には、次に掲げる事項が記載されている。
なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する。

「Abstract
A scanning pattern for residual coding in HE is proposed. TU are divided in square sub-blocks. The scan consists in a diagonal scan within sub-blocks and a diagonal scan of the sub-blocks. This scanning pattern is allegedly beneficial for hardware and SIMD implementations. Results for three sub-blocks sizes (4×4, 8×8 and 16×16) are provided in HM4.0. A parallel friendly modification for the neighborhood-based context derivation for the significance map is further incorporated. BD-rate results for all six cases are provided, which remain within 0.1% of the anchor in common test conditions.

1 Introduction
During the last meeting, in the context of CE11 on scans, a discussion arose regarding the drawbacks of the zigzag/diagonal scans for large blocks (16×16 and 32×32). Contribution [1] estimated that the hardware complexity of these scans approximately doubles that of the scans based on small sub-blocks. Also, SIMD implementations become more difficult with the large diagonal scans.

2 Technical description
This contribution proposes to tackle these issues by using diagonal scans in sub-blocks. Each sub-block is scanned in the diagonal scan of HEVC and the scan between sub-blocks is also the diagonal pattern. This is applied to blocks of sizes 16×16 and 32×32. Figure 1 depicts an example of this scan (for clarity, on an 8×8 block).

Figure 1. Diagonal sub-block scan (sub-block size 4×4)」
(要約
HEにおける残差符号化のための走査パターンが提案されます。TUは正方形のサブブロックに分割されます。走査は、サブブロック内の斜め走査及びサブブロックの斜め走査からなります。この走査パターンは、ハードウェアおよびSIMDの実装に有益であると報告されています。三つのサブブロックサイズ(4×4,8×8,16×16)の結果はHM4.0に提供されています。有意性マップの近隣ベースのコンテキスト誘導のための並列の使いやすい修正がさらに組み込まれています。全ての6例のBDレート速度の結果が提供されており、その結果は、一般的な試験条件において、アンカーの0.1%以内に収まっています。
1 序論
前回の会議のときに、走査についてのCE11のコンテキストにおいて、大きなブロック(16×16と32×32)のジグザグ/斜め走査の欠点に関しての議論が起こりました。寄稿[1]は、これらの走査のハードウェアの複雑さは、小さなサブブロックに基づく走査のそれを約2倍にすると推定しました。また、SIMDの実装は、大規模な斜め走査によって、より困難になります。
2 技術説明
この寄稿は、サブブロックで斜め走査を使用することにより、これらの問題に取り組むことを提案しています。各サブブロックは、HEVCの斜め走査で走査され、サブブロック間の走査も斜めのパターンです。これは、サイズ16×16および32×32のブロックに適用されます。図1はこの走査の例を(明確にするために8×8ブロックで)示しています。
図1.斜めサブブロック走査(サブブロックサイズ4×4))

(3)引用発明
(3-1)刊行物1記載の発明
a.刊行物1の「Abstract」の記載によれば、刊行物1には、HEVC符号化における変換ユニット(TU)のモード依存係数走査順序選択方式についての発明が記載されており、走査順序は、変換ユニットのサイズとイントラ予測モードに基づいて、ジグザグ、水平および垂直走査の中から選択されることが記載されている。

b.刊行物1の「2 Proposed Scheme」及び図1の記載によれば、刊行物1のモード依存係数走査方式は、TUに対し、定められたルックアップテーブル(LUT)を使用して、ジグザグ(0)、水平(1)、垂直(2)の三つの走査パターンを適用するものである。
そして、その走査パターンを決定するLTUが表1に示されており、イントラ予測モードとTUサイズに基づいて走査パターンが決定される。
ここで、表1のイントラ予測モードの番号は、刊行物1が提出されたISO/IEC JTC1/SC29/WG11に同じく提出されている「WD3: Working Draft 3 of High-Efficiency Video Coding」に示される、以下のイントラ予測モードの番号であることは明白である。

(「Thomas Wiegand, Woo-Jin Han, Benjamin Bross, Jens-Rainer Ohm, Gary J. Sullivan, "WD3: Working Draft 3 of High-Efficiency Video Coding", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 5th Meeting: Geneva, CH, 16-23 March, 2011, [JCTVC-E603]」の「Figure 8-1 - Intra prediction mode directions (informative)」を参照のこと)

そうすると、刊行物1の表1のLUTには、4×4及び8×8の水平方向又は垂直方向(イントラ予測モードが4,20,11,21,0,22,12,23,5,7,28,15,29,1,30,16,31,8)のTUについては、水平(1)又は垂直(2)の走査パターンを適用し、4×4及び8×8の水平方向又は垂直方向以外(4×4及び8×8のイントラ予測モードが3,18,10,19,24,13,25,6,26,14,27,32,17,33,9,2と、16×16及び32×32の全モード)のTUについては、ジグザグ(0)の走査パターンを適用することが示されている。

c.まとめ
以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という)が記載されていると認められる。

(引用発明1)
HEVC符号化における変換ユニット(TU)のモード依存係数走査順序選択方式であって、
モード依存係数走査選択方式は、TUに対し、イントラ予測モードとTUサイズに基づいて、ジグザグ、水平、又は垂直の三つの走査パターンが選択され、
4×4及び8×8の水平方向又は垂直方向のTUについては、水平又は垂直の走査パターンを適用し、4×4及び8×8の水平方向又は垂直方向以外のTUについては、ジグザグの走査パターンを適用する
モード依存係数走査順序選択方式。

(3-2)刊行物2記載の発明
刊行物2の上記(2-2)の記載によれば、刊行物2には、TUの大きなブロック(16×16と32×32)のジグザグ/斜め走査はハードウェアの複雑さが増大するという欠点を解消するために、サブブロックを用いた走査を導入し、8×8(図1に例示)、16×16及び32×32のサイズのTUのジグザグ/斜め走査に対し、4×4、8×8または16×16のサブブロックを用いた斜め走査を適用すること、及び各サブブロックは斜め走査を行うことが記載されている。
そして、図1によれば、この斜め走査とは右斜め上方向走査である。
よって、刊行物2には、「ハードウェアの複雑さの増大を抑制するために、8×8、16×16及び32×32のサイズのTUのジグザグ/斜め走査に対し4×4、8×8または16×16のサブブロックを用いた右斜め上方向走査を適用し、各サブブロックは右斜め上方向走査を行う技術」(以下「引用発明2」という)が記載されているといえる。

(4)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

a.引用発明1の「HEVC符号化における変換ユニット(TU)のモード依存係数走査順序選択方式」は、HEVC符号化を行う画像符号化装置が実行する符号化方法であるといえるので、本願補正発明の「画像符号化装置が実行する方法」と一致する。

b.引用発明1は「モード依存係数走査選択方式は、TUに対し、イントラ予測モードとTUサイズに基づいて、ジグザグ、水平、又は垂直の三つの走査パターンが選択」するものであり、モード依存係数走査は、2次元の変換ユニットを走査により1次元の情報に変換するものである。
そして、変換ユニット(TU)は、上記変換を行う際の変換単位である。
そうすると、引用発明1の上記構成は、本願補正発明の「モード依存係数走査に基づいて2次元の変換単位を1次元の変換単位に変換するステップ」に対応するものといえる。

c.引用発明1は「4×4及び8×8の水平方向又は垂直方向のTUについては、水平又は垂直の走査パターンを適用」するものであり、TUは変換単位であり、水平方向又は垂直方向のTUは、本願補正発明の水平又は垂直の変換単位に相当するから、引用発明1は本願補正発明の「前記モード依存係数走査において、4×4及び8×8の水平又は垂直の変換単位に対しては、それぞれ水平又は垂直走査を行うステップ」を有している。

d.引用発明1は「4×4及び8×8の水平方向又は垂直方向以外のTUについては、ジグザグの走査パターンを適用する」ものである。
一方、本願補正発明は「前記4×4及び8×8の水平又は垂直以外の変換単位に対しては、4×4のサブブロックの右斜め上方向走査を行うステップ」を有している。
引用発明1の「ジグザグの走査パターン」と、本願補正発明の「右斜め上方向走査」は、共に『斜め方向の走査』である点では共通する。また、TUは変換単位であり、水平方向又は垂直方向以外のTUは、本願補正発明の水平又は垂直以外の変換単位に相当するから、本願補正発明と引用発明1は「前記4×4及び8×8の水平又は垂直以外の変換単位に対しては、斜め方向の走査を行うステップ」を有している点において共通する。
ただし、『斜め方向の走査』は、本願補正発明においては「4×4のサブブロックの右斜め上方向走査」であるのに対し、引用発明1においては「ジグザグの走査パターン」である点で、両者は相違する。

(5)一致点・相違点
上記(4)のaないしdの対比結果をまとめると、本願補正発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
画像符号化装置が実行する方法であって、
モード依存係数走査に基づいて2次元の変換単位を1次元の変換単位に変換するステップと、
前記モード依存係数走査において、4×4及び8×8の水平又は垂直の変換単位に対しては、それぞれ水平又は垂直走査を行うステップと
前記4×4及び8×8の水平又は垂直以外の変換単位に対しては、斜め方向の走査行うステップと、
を含む方法。

[相違点]
『斜め方向の走査』は、本願補正発明においては「4×4のサブブロックの右斜め上方向走査」であるのに対し、引用発明1においては「ジグザグの走査パターン」である点。

(6)相違点の判断
刊行物2には、前記第2.2.2-3.(3)(3-2)に示したように、引用発明2として「ハードウェアの複雑さの増大を抑制するために、8×8、16×16及び32×32のサイズのTUのジグザグ/斜め走査に対し4×4、8×8または16×16のサブブロックを用いた右斜め上方向走査を適用し、各サブブロックは右斜め上方向走査を行う技術」が記載されている。
引用発明1の変換ユニット(TU)の走査について、同じく変換ユニット(TU)の走査に関する引用発明2を適用し、引用発明1の4×4及び8×8の水平又は垂直以外の変換単位に対しての斜め方向の走査を、サブブロックを用いた右斜め上方向走査とすることは、当業者が容易になし得ることであり、その際にサブブロックサイズとして4×4のサブブロックを採用することも、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、上記相違点に係る、『斜め方向の走査』を「4×4のサブブロックの右斜め上方向走査」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(7)効果等について
本願補正発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。

(8)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成26年7月4日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年2月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項5に係る発明(以下「本願発明」という)は、前記第2.1.の(補正前の請求項5)に記載した事項により特定されるとおりのものである。

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び刊行物2、並びに、その記載事項は、前記第2.2.2-3.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.2.2-2.で摘示した本願補正発明に追加された限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2.2.に記載したとおり、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび

以上のとおり、本願の請求項5に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-27 
結審通知日 2015-06-01 
審決日 2015-06-12 
出願番号 特願2013-10587(P2013-10587)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 渡辺 努
清水 正一
発明の名称 HEVCにおける係数符号化の調和  
代理人 須田 洋之  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 上杉 浩  
代理人 辻居 幸一  
代理人 山崎 貴明  
代理人 近藤 直樹  

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