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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1303509
審判番号 不服2014-6893  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-14 
確定日 2015-07-23 
事件の表示 特願2012- 85769「パンク修理液の収容容器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-216329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成24年4月4日の出願であって、平成26年1月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年4月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成26年12月26日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成27年2月24日に意見書の提出及び手続補正がなされた。


第2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成27年2月24日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「パンク修理液を収容する液体収容部と、該液体収容部に連結された開口部と、該開口部を密閉する封止膜とを備えたパンク修理液の収容容器において、前記開口部の内径よりも大きな寸法を有すると共に前記封止膜に当接するように積層された状態で保持される板状の保護部材を備え、該保護部材の厚さが1mm?2mmであり、前記保護部材が該保護部材及び前記開口部を一体的に覆うシュリンクフィルムにより前記封止膜に対して固定され、前記保護部材が前記封止膜から分離されて折り曲げられた状態で前記封止膜に穿孔するための穿孔用具として機能することを特徴とし、
かつ圧縮空気を取り入れるための取入口とパンク修理液を吐出するための吐出口を設けた注入用キャップを具備し、前記保護部材を用いて前記封止膜に孔を開けた後で、前記開口部に前記注入用キャップが装着されることを特徴とするパンク修理液の収容容器。」

第3.引用刊行物
1.当審の拒絶の理由に引用した特開昭57-114459号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「容器」の発明に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。
(1)「開口部をアルミ箔等からなる中蓋で密封した容器本体と、容器本体の上部外周縁部で且つ中蓋の上面に着脱自在に被嵌可能な合成樹脂材料等からなる極薄の上蓋とからなり、上記上蓋を所定形状に折りたたんで当該折りたたみ片で容器本体を開封する様なした事を特徴とする容器。」(第1頁左下欄第5行?第11行)
(2)「この発明は特に果汁、酒、正油その他飲料、食料等を密封した容器の改良に関するものである。」(第1頁左下欄第13行?第15行)
(3)「第5図乃至第7図において、(11)は紙又は合成樹脂材料等からなるコツプ状の容器本体、(12)は容器本体(11)の開口上縁部に密着したアルミ箔等からなる中蓋、(13)は容器本体(11)の開口周辺部で且つ中蓋(12)の上面に着脱自在に被嵌する合成樹脂材料等からなる極薄状の上蓋である。」(第2頁右上欄第19行?同頁左下欄第4行)
(4)「上記上蓋(13)はその表面にV溝状の折り目(14)を略十字状に形成すると共に、適当配置した説明文字(15)等を設けており、これら折り目(14)及び説明文字(15)等はプレス機械により1工程で同時に加工する。」(第2頁左下欄第5行?第9行)
(5)「次に上記構成からなる。(審決注:「。」は、正しくは「、」であると認める。)容器の開封要領を第8図(a)乃至(c)において説明する。先ず、上蓋(13)を容器本体(11)から取外し、その内面が表になる様に1/2の半円形状に折曲げると共に、更に1/2から1/4の大きさの扇形状に折曲げてカツター部(13a)を構成する。即ち、本発明に係る容器は、容器本体(11)の中蓋(12)の上面を被嵌する上蓋(13)を所定形状に折曲げることにより、開封用のカツター部(13a)として兼用させたもので、これにより、開封用の専用カツター等が不要となり、製作が簡単且つ安価となる。そして上記扇形状に折曲げた上蓋(13)即ちカツター部(13a)の焦点部を第8図(c)に示す如く、容器本体(11)に密着した中蓋(12)を切込むことにより簡単に開封することができると共に、使用後は上記上蓋(13)を元の状態に折り返し、且つ容器本体(11)の開口周縁部に被嵌することができるため頗る安全であり、後使用にも便利である。」(第2頁左下欄第10行?同頁右下第7行)
(6)「第9図に示す図面は上記上蓋(13)の第2の実施例を示すものである。即ち、本実施例は上蓋(13)の表面に正四角形状のミシン状破断線(16)を設け、当該上蓋(13)の外周縁部を切離し可能に構成したものである。これにより、上記上蓋(13)を折曲げる際、上蓋(13)の外周縁部を切離してから折曲げることができる為、折曲げ作業がスムーズに行なえる。」(第2頁右下欄第8行?第15行)
(7)「第10図及び第11図に示す図面は、上蓋(13)の第3の実施例を示すものである。即ち、本実施は合成樹脂材料等からなる肉厚状の上蓋(13)の表面で、且つ外周縁の1部に、略く字状のミシン状破断線(17)を設けたものであり、当該ミシン状破断線(17)に沿つて、これを上蓋(13)の内方に向つて押下げることにより、開封用のカツター部(17a)を構成したものである。即ち、その開封要領は、上記上蓋(13)を容器本体(11)から取外した後、ミシン状破断線(17)を上述した要領にて押下げ、カツター部(17a)を垂直方向に垂設すると共に、上蓋(13)を再度容器本体(11)に被嵌した後、当該上蓋(13)を回わして下部の中蓋(12)を切込むものである。これにより、開封に要する手間が減少し、頗る便利であると共に、構造が簡単な為、安価に製作できる。而かも本実施例に係る上蓋(13)は、その開封後に上記カツター部(17a)を押上げることにより、元の状態にして捨てることができるため、非常に安全である。尚、上記各実施例に示したミシン状破断線は、折り目及び説明文字等の加工と一緒に形成することは勿論である。」(第2頁右下欄第16行?第3頁左上欄第17行)
(8)「以上説明した様にこの発明は開口部をアルミ箔等からなる中蓋で密封した容器本体と、容器本体の上部外周縁部で且つ中蓋の上面に着脱自在に被嵌可能な合成樹脂材料等からなる極薄の上蓋とからなり、上記上蓋を所定形状に折りたたんで、当該折りたたみ片で容器本体を開封する様なしたから、中蓋等の開封時、上記上蓋を内面が表になる如く所定形状に折曲げることにより、開封用のカツターとして兼用することができるため、開封専用のカツター等の付属品が不要となり、簡単且つ安価に製作することができる。又上記上蓋の折曲げ方向は内面が表になる様に構成しているため、衛生的である。」(第3頁左上欄第18行?同頁右上欄第10行)

以上を踏まえ、上記事項を、本願発明に照らして整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「容器本体11と、該容器本体11の開口部と、該開口部の開口上縁部に密着したアルミ箔等からなる中蓋12とを備え、果汁、酒、正油その他飲料、食料等を密封する容器において、前記容器本体11の開口周辺部で且つ前記中蓋12の上面に着脱自在に被嵌する合成樹脂材料等からなる極薄状の上蓋13を備え、前記上蓋13が前記容器本体11から取外されて所定形状に折曲げられることにより前記中蓋12を切込むためのカッター部13a、17aとして兼用される容器。」


2.同じく当審の拒絶の理由に引用した特開2010-202273号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「パンク修理キット用容器」の発明に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。
(1)「[請求項1]
内部にパンク修理液を収容した容器本体の開口部をフィルムシール材で密封し、該開口部に前記フィルムシール材を覆うようにキャップを着脱自在に装着したパンク修理キット用容器において、
前記キャップの前記フィルムシール材に対面する内面側とは反対側の外表面に、前記キャップの中心から外れた位置に前記フィルムシール材の切断刃を設けると共に、切断後のフィルムシール材を捕捉する保持手段を設けたパンク修理キット用容器。」
(2)「[0001]
本発明は、パンク修理キット用容器に関し、更に詳しくは、開口端を密封したフィルムシール材を簡単に取り除くことができるようにしたパンク修理キット用容器。」
(3)「[0003]
このようなパンク修理キットは、一般的には、パンク修理液を収容する容器とパンク修理液をタイヤ側へ送り出すエアコンプレッサ等の供給機器等とからなる。このうちパンク修理キット用容器は、開口部がアルミ箔等のフィルムシール材で密封され、保管中のパンク修理液が外気に触れて劣化することを防いでいる。そのため、パンク修理キット用容器からパンク修理液を取り出すときは、このフィルムシール材を取り除かねばならないようになっている。
[0004]
引用文献1は、エアコンプレッサを利用してパンク修理液をパンクタイヤに注入するためのシーリング・ポンプアップ装置内に穿孔部材を内設し、この穿孔部材をコンプレッサから供給される圧縮空気の圧力で発射させて、パンク修理キット用容器の開口部のフィルムシール材を突き破り、この穿孔部材の先端に設けられた孔を通じて圧縮空気を容器内に送り込むようにすることを提案している。
[0005]
しかし、この装置は、シーリング・ポンプアップ装置の内部機構を複雑にするため、コスト負担が過大になり、スペアタイヤを無いようにしたメリットが半減してしまう。」
(4)「[0007]
本発明の目的は、上述する問題点を解決するもので、パンク修理キットを構成する機器を複雑化することなく、開口部を密封したフィルムシール材を簡便な方法で取り除くことができるようにしたパンク修理キット用容器を提供することにある。」
(5)「[0012]
図1において、パンク修理キット用容器1は、その容器本体2の内部にパンク修理液Lを収容している。この容器本体2の上部には開口部3が設けられ、開口部3はフィルムシール材4によって密封されている。この開口部3には、外周を筒状ガイド壁8aで囲まれた円筒状のキャップ5が、フィルムシール材4を外側から覆うように着脱自在に装着されている。
[0013]
図2に示すように、キャップ5は、フィルムシール材4に対面する内面A側とは反対側の外表面Bに、キャップ5の中心から外れた位置で、好ましくは外周に近い位置にフィルムシール材4の切断刃6が設けられている。・・・
[0014]
このように外表面Bに切断刃6と保持手段7とを設けたので、このキャップ5を図1の装着位置を内外反転させて、筒状ガイド壁8b側を開口部3に被せて押し込むと、先ず保持手段7の先端がフィルムシート材4の中心部に貫通し、次いで回動操作すると、簡単にフィルムシール材4を円形のシート片に切断することができる。」
(6)上記(5)の[0012]において、「開口部3には、外周を筒状ガイド壁8aで囲まれた円筒状のキャップ5が、フィルムシール材4を外側から覆うように着脱自在に装着されている。」と記載されていることと、図1の記載から、キャップ5は、開口部3の内径よりも大きな寸法を有していることが把握される。
また、上記(5)の[0014]における「キャップ5を図1の装着位置を内外反転させて、筒状ガイド壁8b側を開口部3に被せて押し込むと、先ず保持手段7の先端がフィルムシート材4の中心部に貫通し、次いで回動操作すると、簡単にフィルムシール材4を円形のシート片に切断する」なる記載から、キャップ5はフィルムシール材4から分離され内外反転された状態で前記フィルムシール材4の切断に供されることが明らかである。

以上を踏まえ、上記事項を、本願発明に照らして整理すると、刊行物2には、以下の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されている。

「パンク修理液Lを収容する容器本体2と、該容器本体2の上部に設けられた開口部3と、該開口部3を密封するフィルムシール材4とを備えたパンク修理キット用容器1において、前記開口部3の内径よりも大きな寸法を有すると共に前記フィルムシール材4を外側から覆うように着脱自在に装着されているキャップ5を備え、該キャップ5が前記フィルムシール材4から分離され内外反転された状態で前記フィルムシール材4を切断するための切断刃6を有するパンク修理キット用容器1。」


3.同じく当審の拒絶の理由に引用した特開平6-80185号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「広口の開口部を有するチューブ容器」の発明に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。
(1)「[0011]・・・このチューブ本体2の一方の開口部には、高密度ポリエチレン(HDPE)の成型品からなるリング体3が挿入され、該リング体3の外周壁とチューブ本体2の内周壁とが超音波シールもしくはヒートシールによって接着される。ここで、リング体3は、チューブ本体2の開口部の保型性および後述の蓋体4のシール性を確保するために設けられたものであって、筒状の周壁部3aと該周壁部3aの上縁から内方へ向けて連設された円環状の天部3bとで構成されている。
[0012]また、チューブ本体2とリング体3とが接着された状態で、リング体3の天部3bには、ポリエステル(PET)/アルミニウム(Al)/ピール性樹脂(PR)の積層構成からなる蓋体4がピール性樹脂面を内側にしてヒートシールされる。
[0013]・・・開口部を蓋体4で覆った当該チューブ容器1の口部には、無収縮性の塩化ビニルシートで構成された円形の天蓋5を備えた熱収縮性塩化ビニルからなる円筒状のキャップ6が被せられ、シュリンク包装によって上記口部が密封される。・・・この天蓋5は、流通時等において蓋体4が衝撃力により突き破られるのを防ぐ役目をする。」
(2)「[0015]こうして果汁の充填されたチューブ容器1は、中身の果汁をシャーベット状にして利用に供される。消費者がこの冷凍菓子を食べるときには、まず、キャップ6のタブ6cを指でつまんでミシン目線6e,6eに沿って引き千切って、容器の口部から天蓋5付きのキャップ6を取り去る。次に、蓋体4をリング体3の上面から剥がして該リング体3の広口の開口部を露出させる。その場合、蓋体4はピール性樹脂面でシールされているので、該蓋体4は容易に剥がすことができる。このように蓋体4を剥がした後は、チューブ本体2を絞りながら上記開口部から内容物を押し出して食べるようにする。」
(3)図2より、蓋体4は、リング体3の開口部の内径よりも大きな寸法を有していることが看取される。
また、図2と上記(1)とを併せみると、天蓋5は、板状であって、蓋体4(封止部材)に当接するように積層された状態で保持され、該天蓋5及び前記開口部を一体的に覆うシュリンク包装により前記蓋体4に対して固定されることが把握される。

以上を踏まえ、上記事項を、本願発明に照らして整理すると、刊行物3には、以下の技術(以下、「刊行物3技術」という。)が記載されている。

「チューブ本体2と該チューブ本体2の開口部に挿入されるリング体3の開口部の内径よりも大きな寸法を有すると共に前記リング体3の開口部を密封する蓋体4に当接するように積層された状態で保持される板状の天蓋5を備え、該天蓋5を、該天蓋5及び前記開口部を一体的に覆うシュリンク包装により前記蓋体4に対して固定する技術。」


第4.対比
引用発明において、「容器」に「密封」される「果汁、酒、正油その他飲料等」は、容器本体11に収容されることが明らかである。
引用発明における「容器本体11の開口部」、「開口部の開口上縁部に密着したアルミ箔等からなる中蓋12」は、各々、本願発明における「液体収容部に連結された開口部」、「該開口部を密閉する封止膜」に相当する。
引用発明における「果汁、酒、正油その他飲料等」と本願発明における「パンク修理液」とは共に「被収容液」といえる。
ゆえに、引用発明における「容器本体11と、該容器本体11の開口部と、該開口部の開口上縁部に密着したアルミ箔等からなる中蓋12とを備え、果汁、酒、正油その他飲料、食料等を密封する容器」は、「被収容液を収容する液体収容部と、該液体収容部に連結された開口部と、該開口部を密閉する封止膜とを備えた被収容液の収容容器」という限りにおいて、本願発明における「パンク修理液を収容する液体収容部と、該液体収容部に連結された開口部と、該開口部を密閉する封止膜とを備えたパンク修理液の収容容器」に相当する。

引用発明における「上蓋13」は「前記容器本体11の開口周辺部で且つ前記中蓋12の上面に着脱自在に被嵌する」ものであることから、前記容器本体11の開口部の内径よりも大きな寸法を有し、前記中蓋12に対して固定されるものであることが明らかである。
また、前記「上蓋13」は、前記「中蓋12」の上面に被嵌された状態では、前記「中蓋12」に対する保護部材として機能することも明らかである。
ゆえに、引用発明における「前記容器本体11の開口周辺部で且つ前記中蓋12の上面に着脱自在に被嵌する合成樹脂材料等からなる極薄状の上蓋13を備え」は、「前記開口部の内径よりも大きな寸法を有すると共に前記封止膜の上面に保持される保護部材を備え、前記保護部材が前記封止膜に対して固定され」という限りにおいて、本願発明における「前記開口部の内径よりも大きな寸法を有すると共に前記封止膜に当接するように積層された状態で保持される板状の保護部材を備え、該保護部材の厚さが1mm?2mmであり、前記保護部材が該保護部材及び前記開口部を一体的に覆うシュリンクフィルムにより前記封止膜に対して固定され」に相当する。

引用発明において「前記上蓋13が前記容器本体11から取外され」ることは、「上蓋13」が、「中蓋12」から「分離され」ることを意味することが明らかである。
また、引用発明において「中蓋12を切込む」ことは、「中蓋12」を破いて開封することを意味することが明らかである。
一方、本願発明における「封止膜に穿孔する」ことについて、本願の明細書の段落[0021]、[0022]には「封止膜4を容易に破く」との記載がある。
してみると、引用発明における「中蓋12を切込む」ことと本願発明における「封止膜に穿孔する」こととは同義であるといえる。
ゆえに、引用発明における「前記上蓋13が前記容器本体11から取外されて所定形状に折曲げられることにより前記中蓋12を切込むためのカッター部13a、17aとして兼用される」は、本願発明における「前記保護部材が前記封止膜から分離されて折り曲げられた状態で前記封止膜に穿孔するための穿孔用具として機能する」に相当する。

引用発明における「容器」は、「被収容液」である「果汁、酒、正油その他飲料等」を収容するものである。
ゆえに、引用発明における「容器」は、「被収容液の収容容器」という限りにおいて、本願発明における「パンク修理液の収容容器」に相当する。

してみれば、両者の一致点および相違点は以下のとおりである。

《一致点》
「被収容液を収容する液体収容部と、該液体収容部に連結された開口部と、該開口部を密閉する封止膜とを備えた被収容液の収容容器において、前記開口部の内径よりも大きな寸法を有すると共に前記封止膜の上面に保持される保護部材を備え、前記保護部材が前記封止膜に対して固定され、前記保護部材が前記封止膜から分離されて折り曲げられた状態で前記封止膜に穿孔するための穿孔用具として機能する、被収容液の収容容器。」

《相違点1》
「被収容液」と「被収容液の収容容器」について、本願発明の「被収容液」は「パンク修理液」であり、「被収容液の収容容器」が「圧縮空気を取り入れるための取入口とパンク修理液を吐出するための吐出口を設けた注入用キャップを具備し、前記保護部材を用いて前記封止膜に孔を開けた後で、前記開口部に前記注入用キャップが装着される」ものであるのに対し、引用発明の「被収容液」は「果汁、酒、正油その他飲料等」であり、「被収容液の収容容器」は、圧縮空気を取り入れるための取入口とパンク修理液を吐出するための吐出口を設けた注入用キャップを具備していない点

《相違点2》
「保護部材」について、本願発明の「保護部材」は、「前記封止膜に当接するように積層された状態で保持される板状の保護部材であって、厚さが1mm?2mmであり、保護部材及び前記開口部を一体的に覆うシュリンクフィルムにより固定される」ものであるのに対し、引用発明の「上蓋13」は、中蓋12(封止膜)に当接するように積層された状態で保持される板状のものではなく、厚さは極薄状であるが具体的数値で特定されておらず、「上蓋13」及び「容器本体11の開口部」を一体的に覆うシュリンクフィルムにより固定されるものではない点


第5.判断
相違点について検討する。
《相違点1》について
上記第3.の2.で述べたように、刊行物2には、刊行物2発明、すなわち、「パンク修理液Lを収容する容器本体2と、該容器本体2の上部に設けられた開口部3と、該開口部を密封するフィルムシール材4とを備えたパンク修理キット用容器1において、前記開口部の内径よりも大きな寸法を有すると共に前記フィルムシール材4を外側から覆うように着脱自在に装着されているキャップ5を備え、該キャップ5が前記フィルムシール材4から分離され内外反転された状態で前記フィルムシール材4を切断するための切断刃6を有するパンク修理キット用容器1。」の発明が記載されている。
ここで、刊行物2発明における「容器本体2」、「容器本体2の上部に設けられた開口部3」、「密封」、「フィルムシール材4」、「パンク修理キット用容器1」、「キャップ5」、「該キャップ5が前記フィルムシール材4から分離され内外反転された状態で前記フィルムシール材4を切断するための切断刃6を有する」は、各々、本願発明における「液体収容部」、「液体収容部に連結された開口部」、「密閉」、「封止膜」、「パンク修理液の収容容器」、「保護部材」、「保護部材が前記封止膜から分離されて折り曲げられた状態で前記封止膜に穿孔するための穿孔用具として機能する」に対応する。
引用発明と刊行物2発明とは、共に「容器」の技術分野に属する発明であり、被収容液の利用に先立ち、保護部材(上蓋13、キャップ5)が、封止膜(中蓋12、フィルムシール材4)に穿孔するための穿孔用具として機能する点で、容器の構造に技術的な共通点を有するものである。
ゆえに、刊行物2発明に接した当業者であれば、容器の構造が共通することから、引用発明の被収容液(果汁、酒、正油その他飲料等)を「パンク修理液」とすることは、適宜なし得たことというべきである。
また、パンク修理液の収容容器に、圧縮空気を取り入れるための取入口とパンク修理液を吐出するための吐出口を設けた注入用キャップを具備し、前記収容容器の開口部に前記注入用キャップを装着する」ことは、例えば、特開2000-108215号公報(特に、継手部22に関する記載を参照)や特開2010-115830号公報(特に、システムキャップ10に関する記載を参照)にも記載されているように、本願の出願前の周知技術であり、パンク修理液の収容容器を用いるに際し、通常採用される技術である。
してみると、引用発明において、被収容液(果汁、酒、正油その他飲料等)を「パンク修理液」とし、「圧縮空気を取り入れるための取入口とパンク修理液を吐出するための吐出口を設けた注入用キャップを具備し、保護部材を用いて封止膜に孔を開けた後で、収容容器の開口部に前記注入用キャップが装着」されるように、その構成を変更することは、当業者が容易に想到し得たことである。

《相違点2》について
上記第3.の3.で述べたように、刊行物3には、刊行物3技術、すなわち、「チューブ本体2と該チューブ本体2の開口部に挿入されるリング体3の開口部の内径よりも大きな寸法を有すると共に前記リング体3の開口部を密封する蓋体4に当接するように積層された状態で保持される板状の天蓋5を備え、該天蓋5を、該天蓋5及び前記開口部を一体的に覆うシュリンク包装により前記蓋体4に対して固定する技術。」が記載されている。
ここで、刊行物3技術における「チューブ本体2と該チューブ本体2の開口部に挿入されるリング体3」からなるものは、本願発明における「収容容器」に対応し、また、刊行物3技術における「密封」、「蓋体4」、「天蓋5」は、各々、本願発明における「密閉」、「封止膜」、「板状の保護部材」に対応する。
引用発明と刊行物3技術とは、共に「容器」の技術分野に属する発明であり、保護部材(上蓋13、天蓋5)が、封止膜(中蓋12、蓋体4)を保護する機能を有する点で、容器の構造に技術的な共通点を有するものである。
また、保護部材の厚さは、当業者が、その製造コスト等を勘案しつつ、保護部材の材質、封止膜の材質等に応じて、穿孔用具として機能することが可能なように適宜決定し得る設計的な事項である。
そして、1mm?2mmという厚さは、容器の蓋の天板部分の厚みとして、ごく一般的に採用され得る厚さであって、格別なものでもない。
してみると、刊行物3技術に接した当業者であれば、容器の構造が共通することから、引用発明において、保護部材を、その厚さが1mm?2mmの板状とし、封止膜に当接するように積層された状態で、前記保護部材及び液体収容部に連結された開口部を一体的に覆うシュリンクフィルムにより固定することに、容易に想到し得たというべきである。

ところで、請求人は、平成27年2月24日に提出された意見書の(4)において、以下の<主張1>、<主張2>を主張しているが、<判断1>、<判断2>欄に記載するように、いずれも上記相違点の判断を左右するものではない。

<主張1>
刊行物1は果汁、酒、正油その他飲料、食料等を収容するための容器に関するものであるので、たとえ刊行物2が同じく容器の技術分野に属するものであったとしても、当業者であれば、刊行物1の容器に「パンク修理液」を収容するという発想には至らない。
特に、本願発明のような「パンク修理液」のための容器にはパンク修理時に圧縮空気に基づく大きな内圧が掛かるので、果汁、酒、正油その他飲料、食料等を収容するための容器に「パンク修理液」を収容することは到底不可能である。
また、刊行物1の容器は圧縮空気によりパンク修理液を吐出するための構成を備えていないから、刊行物1に記載された発明の内容物を「パンク修理液」とする理由は存在しない。
<判断1>
まず、引用発明は、「果汁、酒、正油その他飲料、食料等を密封した容器の改良に関するものである」(上記第3.の1.(2)を参照)が、果汁、酒、正油その他飲料、食料等を被収容物とすることを前提として成立する発明ではないこと(例えば、果汁、酒、正油その他飲料、食料等を被収容物とする容器であるがゆえに、上蓋13が前記容器本体11から取外されて所定形状に折曲げられることにより前記中蓋12に切込みを入れるためのカッター部13a、17aとして兼用されるようにしたものではないこと)は、上記第3.の1.(1)及び(3)?(8)からみて明らかである。
ゆえに、引用発明における被収容物が、「果汁、酒、正油その他飲料、食料等」であることは、引用発明の本質的事項とはいえないから、引用発明の被収容物を、他の物とすることの妨げとはならない。
また、刊行物2発明、及び、特開2000-108215号公報や特開2010-115830号公報に例示される周知技術のようなパンク修理液のための容器はパンク修理時に圧縮空気に基づく大きな内圧に耐え得るものとすべきことは当然である。
そして、上記したように、パンク修理液の収容容器に、圧縮空気を取り入れるための取入口とパンク修理液を吐出するための吐出口を設けた注入用キャップを具備し、前記収容容器の開口部に前記注入用キャップを装着することは、本願の出願前の周知技術であり、パンク修理液の収容容器を用いるに際し、通常採用される技術である。
したがって、上記<主張1>は、「引用発明の被収容液(果汁、酒、正油その他飲料等)を「パンク修理液」とすることは、適宜なし得たこと」との判断を覆す根拠にはならない。

<主張2>
本願発明は、封止膜に穿孔するための穿孔部材が突設された保護キャップを排除してパンク修理液の収容容器を必要以上に嵩張らない構造にすると共に、シュリンクフィルムで固定された板状の保護部材に基づいて保管時における封止膜の保護効果を確保し、しかもパンク修理時には折り曲げた状態の保護部材を穿孔用具として封止膜の穿孔作業を行うことができるという優れた作用効果を奏する。
このようにパンク修理液の収容容器という特定の物品において、コンパクト化を実現しながら封止膜の保護効果と穿孔機能とを両立するという作用効果は、刊行物1?3から導かれるものではない。
<判断2>
収容容器を必要以上に嵩張らない構造にしつつ、開封時に折り曲げた状態の保護部材を穿孔用具として封止膜の穿孔作業を行うことができることは、引用発明において奏される作用効果である。
また、シュリンクフィルムで固定された板状の保護部材に基づいて保管時における封止膜の保護効果を確保することは、刊行物3技術において奏される作用効果である。
したがって、パンク修理液の収容容器という特定の物品において、コンパクト化を実現しながら封止膜の保護効果と穿孔機能とを両立するという作用効果は、引用発明、刊行物2発明、刊行物3技術、及び、特開2000-108215号公報や特開2010-115830号公報に例示される周知技術の各々において奏される作用効果から、当業者が十分予測し得たものというべきであるから、主張2は失当である。

以上を踏まえると、本願発明は、引用発明、刊行物2発明、刊行物3技術、及び、特開2000-108215号公報や特開2010-115830号公報に例示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-19 
結審通知日 2015-05-26 
審決日 2015-06-08 
出願番号 特願2012-85769(P2012-85769)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾形 元  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 熊倉 強
渡邊 豊英
発明の名称 パンク修理液の収容容器  
代理人 境澤 正夫  
代理人 昼間 孝良  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 佐藤 謙二  
代理人 平井 功  
代理人 野口 賢照  
代理人 小川 信一  

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