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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1303514
審判番号 不服2014-9730  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-26 
確定日 2015-07-23 
事件の表示 特願2012-182954「薬液注入装置、透視撮像システム、コンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-248216〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年6月27日を出願日とする特願2007-168466号の分割出願であって、平成24年8月22日付けで出願され、平成25年8月28日付けで拒絶理由通知がなされ,同年10月9日に手続補正がなされたが,平成26年3月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年5月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、これに対して同年8月5日付で前置報告がなされたものである。

第2 平成26年5月26日の手続補正の補正却下の決定について

[補正却下の決定の結論]

平成26年5月26日の手続補正を却下する。

[理由]

1.手続補正の内容

平成26年5月26日の手続補正(以下,「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は次のとおりに補正された(下線は,審判請求人が付与したものである。)。

<本件補正後の請求項1>

「薬液条件データが記録されている薬液シリンジと、前記薬液シリンジを駆動して透視画像データが撮像される被験者に薬液を注入する薬液注入装置と、各種の会計関連データに基づいて撮像作業の会計処理を実行する会計処理装置と、を有する透視撮像システムの前記薬液注入装置であって、
装填された前記薬液シリンジを駆動して前記薬液の注入を実行する注入実行機構と、
前記注入実行機構に所定の状態で前記薬液シリンジが装填されると、前記注入実行機構に装填された前記薬液シリンジから前記薬液条件データを取得するデータ入力部と、
前記データ入力部により取得された前記薬液条件データの少なくとも一部を前記会計関連データの一部として出力するデータ出力部と、
を有し、
前記データ出力部は、前記薬液の注入が完了すると前記薬液条件データの少なくとも一部を前記会計関連データの一部として前記会計処理装置に送信する薬液注入装置。」


本件補正前の請求項1は次のとおりである。

<本件補正前の請求項1>

「薬液条件データが記録されている薬液シリンジと、前記薬液シリンジを駆動して透視画像データが撮像される被験者に薬液を注入する薬液注入装置と、各種の会計関連データに基づいて撮像作業の会計処理を実行する会計処理装置と、を有する透視撮像システムの前記薬液注入装置であって、
装填された前記薬液シリンジを駆動して前記薬液の注入を実行する注入実行機構と、
前記注入実行機構に所定の状態で前記薬液シリンジが装填されると、前記注入実行機構に装填された前記薬液シリンジから前記薬液条件データを取得するデータ入力部と、
取得された前記薬液条件データの少なくとも一部を前記会計関連データの一部として出力するデータ出力部と、
を有し、
前記データ出力部は、前記薬液の注入が完了すると前記薬液条件データの少なくとも一部を前記会計関連データの一部として前記会計処理装置に送信する薬液注入装置。」

2.本件補正の目的

本件補正は,請求項1において,「前記薬品条件データの少なくとも一部」を取得するための手段を「前記データ入力部」に限定するものであり、請求項1に係る補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるか,すなわち,請求項1に係る補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか否かについて検討する。

3.引用文献及び引用発明の認定

(1)原査定の拒絶の理由において引用された特開2004-258833号公報(以下,「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている。 (下線は当審において付与した)

(1-1)「【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る医用システムの概略構成を示すブロック図である。本医用システムは、病院情報システム(以下、HIS:Hospital Information Systemsと称す)10、X線診断装置11、X線CT装置12、MRI装置13、画像サーバ14、ワークステーション▲1▼乃至▲3▼15,16,17、レポートシステム18、および上記各装置を接続するネットワーク19から構成される。前記HIS10は少なくとも会計システム101と在庫管理システム102を含む構成となっている。
X線診断装置11、X線CT装置12、MRI装置13はいずれも医用画像装置に相当するものであり、本医用システムの構成として例示的に示すものである。本発明に係る医用画像装置は上記の他にも核医学装置、超音波診断装置、内視鏡装置、等、医用画像を発生するものであれば特に限定するものではない。」(【0018】-【0020】)

(1-2)「HIS10は会計システム101や在庫管理システム102の他にも病院業務の効率化や経営的な面まで広く種々の病院関連情報を扱い得るものである。
会計システム101は当該システムが設置されている病院内などにおける患者が受けた検査や診察の費用について取り扱うシステムである。費用算出にあたってはX線診断装置11、X線CT装置12、MRI装置13等による検査情報や、診察室における医師からの入力情報(図示しない診察室に設けられたワークステーションからの入力情報)等に基づいて保険点数の計算が行われる。」(【0023】-【0024】)

(1-3)「(第1の実施の形態)
図2は本発明の第1の実施の形態に係るX線診断装置等の構成を示すブロック図である。本実施の形態では本発明のX線診断装置が会計システムに対して情報転送する場合について説明する。
同図に示すように、X線診断装置11はX線を発生するX線管201、検査を受ける患者等(以下、被検体と称す)が寝るための寝台202、被検体を透過したX線を可視光線に変換するイメージインテンシファイア(以下、I.I.と称す)203、可視光線を電気信号に変換するTVカメラ204、X線管201とI.I.203(及びTVカメラ204)とを寝台202を挟んで対向する位置に保持するアーム205、アーム205を駆動するアーム駆動装置206、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換器と称す)207、変換されたデジタル信号を記憶する画像メモリ208、造影画像等を用いてサブトラクション処理を行う減算処理装置209、デジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器(以下、D/A変換器と称す)210、収集画像の観察/確認等のために画像等を表示するモニタ211、X線診断装置11の各部を制御する中央処理装置(以下、CPUと称す)212、各種の入力や出力の指示のための入出力装置213、検査用設定データを格納するデータベース214、インジェクタ用インターフェース(以下、インジェクタ用I/Fと称す)215、造影剤注入のためのインジェクタ216、及びX線診断装置11の外部に設けられた装置とX線診断装置11との接続ための外部インターフェース(以下、外部I/Fと称す)217を有している。X線診断装置11は外部I/F217によりネットワーク19を介して会計システム101と接続されている。」(【0027】-【0029】)

(1-4)「次に上記構成によるX線診断装置11の動作について説明する。まず、画像収集にあたりデータベース214に格納された検査用設定データに基づいて造影剤の使用量、注入時間、及び注入速度、等についての情報がインジェクタ用I/F215を介してインジェクタ216に送られる。インジェクタ216では当該受信情報を下に設定された条件で被検体に対して造影剤の注入が行われる。」(【0030】)

(1-5)「被検体について当該検査における所定枚数の画像が収集されると、当該画像収集においてインジェクタ216により使用された造影剤の名称等(造影剤識別情報)、造影剤の注入総量、造影剤の注入時間、及び造影剤の注入速度(単位時間当りの注入スピード)のうちの1つ以上について、被検体の識別情報(例えば患者ID)及び当該画像収集に係る検査識別情報(例えば検査ID)、さらに必要に応じて各画像の収集時刻を表す情報と共に、外部I/F217を介して外部に送信される。」(【0032】)

(1-6)「ここで上記各情報はデータベース214から取り出された検査用設定データに基づいてもよいし、インジェクタ216が前記送信のための情報を有する場合は当該インジェクタ216の情報を利用してもよい。データベース214の検査用設定データを用いる場合は、実際の造影剤の使用にあたっては当該データに基づいて行われたとの前提の下に情報送信することになる(インジェクタ216から直接に情報を得られない場合もこの手段を用いることになる)。一方、インジェクタ216が前記送信情報を有する場合、特に、前記検査用設定データに基づいて実際に行われた(使用された)造影剤について各情報を有する場合、これらの情報は(インジェクタ216が出力する機能を有する限りにおいて)インジェクタ用I/F215を介してCPU212に送られる。CPU212に送られた情報はCPU212の内部やデータベース214に一時的又はある程度長期に渡って保持(保存)される。また、CPU212の内部やデータベース214に保持されない場合も、外部I/F217に含まれる送信バッファにおいて一時的に保持された後、外部装置への送信が行われることになる。なお、インジェクタ用I/F215を介して得られる情報は必ずしもCPU212を介する必要はなく、インジェクタ用I/F215を介して直接、データベース214での保持や外部I/F217への送信が行われるようにしてもよい。このようにして、実際に行われた(使用された)造影剤についての各情報を外部装置に送信することが可能になる。」(【0033】)

(1-7)「いずれの場合も、前記画像収集の際にインジェクタ216で使用された(或いは使用されたはずである)造影剤についての情報は、被検体の識別情報及び当該画像収集に係る検査識別情報、さらに各画像の収集時刻を表す情報等と共に、外部I/F217を介してネットワーク19上に送信され、この送信情報は会計システム101にて受信される。」(【0034】)

(1-8)「会計システム101では当該情報をX線診断装置11から受け取るとその受信情報が会計システム101のデータベースに自動的に仮登録される。当該画像収集に係る検査の終了後、会計システムの入力装置を用いて操作者(医療従事者等)が仮登録の内容を確認することにより問題なければ確定の入力がなされる。これにより、当該検査においてインジェクタ216により使用された造影剤に係る情報(造影剤の名称等(造影剤識別情報)、造影剤の注入総量、造影剤の注入時間、及び造影剤の注入速度(単位時間当りの注入スピード)のうちの1つ以上)が会計システム101にて登録される。
会計システム101における保険点数の計算においては、造影剤の名称等(造影剤識別情報)、造影剤の注入総量、造影剤の注入時間、及び造影剤の注入速度(単位時間当りの注入スピード)等の情報、すなわち、通常では電子的情報転送の対象とならず会計システムにおける操作者の入力に頼っていたような医用画像収集における補助的な情報(主要情報として電子情報の授受の対象とならない情報)、も自動的にX線診断装置11から得られるので、従来のような手入力に頼ったことによる計算ミスや計算漏れなどを起こすことを防ぎ、会計精度の向上と操作者の負担を軽減することが可能となる。」(【0035】-【0036】)

(1-1)から(1-8)を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、引用発明1という)が記載されているものと認める。

「X線を発生し被検体を通過したX線を電気信号に変換後A/D変換してデジタル信号を発生する医用画像装置であって、該医用画像装置は、被検体に対する造影剤注入のためのインジェクタ216と、インジェクタ用インターフェース215と、医用画像装置と医用画像装置の外部装置とを接続する外部インターフェース217と、を備え、
該医用画像装置と、医用画像装置からの検査情報や診察室における医師からの入力情報等に基づいて保険点数の計算を行う会計システム101、を含む病院情報システムが、ネットワーク19を介して接続されている医用システムにおいて、
造影剤の使用量、注入時間、及び注入速度等についての情報をインジェクタ用インターフェース215を介して受信して、当該受信情報を下に設定された条件で被検体に対して造影剤の注入を行うインジェクタ216と、
被検体において当該検査における所定枚数の画像が収集されると、インジェクタ216から出力される、インジェクタ216により実際に使用された造影剤に係る情報(造影剤の名称等(造影剤識別情報)、造影剤の注入総量、造影剤の注入時間、及び造影剤の注入速度(単位時間当りの注入スピード)のうちの1つ以上)を、インジェクタ用インターフェース215を介して会計システム101に送信することで、手入力に頼ったことによる計算ミスや計算漏れを防ぎ会計精度の向上と操作者の負担を軽減することが可能となる、外部インターフェース217、
を備える医用システム」

(2)原査定の拒絶の理由において引用された国際公開2006/109778号(以下,「引用文献2」という。)には,次の事項が記載されている。

(2-1)「本実施の形態の薬液注入システム1000は、図1ないし図4に示すように、薬液注入装置100、薬液シリンジ200、透視撮像装置であるCTスキャナ300、を有しており、詳細には後述するが、被験者(図示せず)に薬液として造影剤などを注入する。」([0026])

(2-2)「本形態の薬液注入システム1000では、使用される薬液シリンジ200が基本的にプレフィルドタイプからなり、プレフィルドタイプの薬液シリンジ200では、シリンダ部材210に薬液が充填された状態で出荷される。このシリンダ部材210は、データ記憶手段としてRFIDチップからなる薬液チップ214が装着されており、その薬液チップ214には薬液データが登録されている。この薬液データは、例えば、その薬液シリンジ200に関する、容量、シリンダ部材210の耐圧、シリンダ部材210の内径、ピストン部材220のストローク、個体ごとの識別データ、などの各種データと、充填されている薬液に関する、製品ID、化学分類、含有成分、粘度、消費期限、などの各種データからなる。」([0030]-[0031])

(2-3)「本形態の薬液注入装置100は、図4に示すように、注入制御ユニット101と注入実行ヘッド110とが別体に形成されており、その注入制御ユニット101と注入実行ヘッド110とは通信ケーブル102で有線接続されている。注入実行ヘッド110は、装着される薬液シリンジ200を駆動して被験者に薬液を注入し、注入制御ユニット101は、注入実行ヘッド110を動作制御する。」([0035])

(2-4)「薬液シリンジ200は、上述のように保持されたときに上方および下方となる位置に一対の薬液チップ214が個々に装着されている。
そして、注入実行ヘッド110の凹部114の所定位置には、薬液データ取得手段としてRFIDリーダからなる薬液リーダ122が配置されており、この薬液リーダ122が凹部114に装着されてシリンダ保持機構116で保持された薬液シリンジ200の薬液チップ214から薬液データを取得する。」([0040]-[0041])

(2-5)「薬液注入装置100の注入実行ヘッド110に薬液シリンジ200が適切に装着されると、その薬液リーダ122に薬液チップ214が自動的に所定距離で対向されるので、図6に示すように、その薬液チップ214から薬液リーダ122に薬液データが取得される。」([0057])

4.対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

(イ)引用発明1の「造影剤」は本願発明の「薬液」に相当し、引用発明1の「被検体に対する造影剤注入のためのインジェクタ216」は「撮像される者に造影剤を注入する機能を有する」点で、本件補正発明の「透視画像データが撮像される被験者に薬液を注入する薬液注入装置」に対応する。

(ロ)引用発明1の「医用画像装置からの検査情報や診察室における医師からの入力情報等に基づいて保険点数の計算を行う会計システム101」は、本件補正発明の「各種の関連データに基づいて撮像作業の会計処理を実行する会計処理装置」に相当する。

(ハ)引用発明1の「インジェクタ216により実際に使用された造影剤に係る情報(造影剤の名称等(造影剤識別情報)、造影剤の注入総量、造影剤の注入時間、及び造影剤の注入速度(単位時間当りの注入スピード)のうちの1つ以上)」は、「被検者に注入される薬液に関する情報の少なくとも一部」である点で、本件補正発明の「薬液条件データの少なくとも一部」に対応する。
そして、インジェクタ216は、上記情報をインジェクタ用インターフェース215を介して出力することから、データ出力部を有するといえる。さらに、インジェクタ216から出力された上記情報は会計システムに送信されることから、「会計関連データの一部」である。
したがって、インジェクタ216が有している上記データ出力部は、「被験者に注入される薬液に関する情報を会計に関する情報として出力する」点で、本件補正発明の「薬液条件データの少なくとも一部を前記会計関連データの一部として出力するデータ出力部」に対応する。

(ニ)引用発明1の「X線を発生し被検体を通過したX線を電気信号に変換後A/D変換してデジタル信号を発生する医用画像装置であって、インジェクタ216を備える医用画像装置と、会計システム101を含む病院情報システムがネットワーク19を介して接続されている医用システム」は、「薬液注入を行う構成と、薬液についての会計データを受信し計算する会計システムが接続されている」点で、本件補正発明の「薬液注入装置と、会計処理装置とを有する透視撮像システム」に対応する。


してみると,本件補正発明と引用発明1は,次の点で一致する。

(一致点)
「透視画像データが撮像される被験者に薬液を注入する薬液注入装置と、各種の会計関連データに基づいて撮像作業の会計処理を実行する会計処理装置と、を有する透視撮像システムの前記薬液注入装置であって、
薬液条件データの少なくとも一部を前記会計関連データの一部として出力するデータ出力部と、
を有し、
前記データ出力部は、薬液条件データの少なくとも一部を前記会計関連データの一部として前記会計処理装置に送信する薬液注入装置。」

一方、本件補正発明と引用発明は,次の点で相違する。

(相違点1)
薬液を充填しておくために、本件補正発明は「薬液条件データが記録されている薬液シリンジ」を有するのに対して、引用発明1では薬液を充填しておくための具体的構成について明らかではない点。

(相違点2)
本件補正発明は、薬液注入装置が「装填された薬液シリンジを駆動して薬液の注入を実行する注入実行機構」を有するのに対して、引用発明1では薬液の注入を実行するための薬液注入装置の具体的構成について明らかではない点。

(相違点3)
薬液条件データを取得し、データ出力部から出力することについて、本件補正発明は、薬液注入装置が「注入実行機構に所定の状態で薬液シリンジが装填されると、前記注入実行機構に装填された前記薬液シリンジから薬液条件データを取得するデータ入力部」を有するのに対して、引用発明1では薬液条件データを取得するための具体的構成について明らかではない点。

(相違点4)
データ出力部が薬液条件データの少なくとも一部を会計関連データの一部として会計処理装置に送信するタイミングについて、本件補正発明では「薬液の注入が完了する」と送信を行うのに対して、引用発明1では「被検体において当該検査における所定枚数の画像が収集される」と送信を行う点。

5.判断

(相違点1)から(相違点3)について

これらは薬液シリンジ、薬液シリンジを駆動して薬液の注入を実行する注入実行機構、及び薬液シリンジから薬液条件データを取得するための構成であり、まとめて判断する。

(イ)引用文献2の上記(2-3)の記載にあるように、薬液注入装置において、注入実行ヘッドを備え、注入実行ヘッドに装填された薬液シリンジを駆動して被験者に薬液を注入することは既に知られている。

(ロ)また、本願明細書の「この薬液条件データは、例えば、充填されている薬液に関連する、製品名称、薬液ID、化学分類、含有成分、粘度、消費期限、などの各種データと、その薬液シリンジ800に関連する、シリンジ容量、シリンダ耐圧、シリンダ内径、ピストンストローク、ロット番号、販売価格、などの各種データからなる。」(【0058】)の記載、
および引用文献2の上記(2-2)「この薬液データは、例えば、その薬液シリンジ200に関する、容量、シリンダ部材210の耐圧、シリンダ部材210の内径、ピストン部材220のストローク、個体ごとの識別データ、などの各種データと、充填されている薬液に関する、製品ID、化学分類、含有成分、粘度、消費期限、などの各種データからなる。」の記載からすると、本件補正発明の「薬液条件データ」と、引用文献2の上記(2-2)における「薬液データ」とは同じものを指すことは明らかである。

(ハ)さらに、本願明細書の「注入実行ヘッド410は、シリンジ保持機構411で薬液シリンジ800が適正に保持されたときのみRFIDチップ810と無線通信する位置にRFIDリーダ416が搭載されている。」(【0056】)や「薬液注入装置400は、薬液シリンジ800が適正に装填されないと薬液条件データを取得しない。このため、薬液シリンジ800が適正に装填されていない状態で薬液注入が実行されることを防止できる。」(【0190】)の記載からすると、
本件補正発明の「注入実行機構に所定の状態で薬液シリンジが装填されると、前記注入実行機構に装填された前記薬液シリンジから薬液条件データを取得する」とは、「注入実行ヘッドに薬品シリンジが適正に装填されると、注入実行ヘッドに装填された薬品シリンジから薬液条件データを取得する」ことを含むものである。
一方、引用文献2の上記(2-4)(2-5)の記載からすると、「注入実行ヘッド110に薬液シリンジ200が適切に装填されると、薬液リーダ122が、薬液シリンジ200に装着されている薬液チップ214から薬液データを取得する」ことも既に知られているものといえる。

(ニ)してみると、引用発明1のインジェクタ216として、
引用文献2の(2-2)、(2-3)に記載されるような、「注入実行ヘッドに装填された薬液シリンジであって、薬液データを登録した薬液チップが装着された薬液シリンジを駆動して薬液を注入する薬液注入装置」を適用すること、
このとき、引用文献(2-4)(2-5)のような「注入実行ヘッドに薬液シリンジが適切に装填されると、薬液リーダが、薬液シリンジに装着されている薬液チップから薬液データを取得する」ことで、
本件補正発明の「薬液シリンジおよび装填された薬液シリンジを駆動して薬液の注入を実行する注入実行機構を有する薬液注入装置」および「注入実行機構に所定の状態で薬液シリンジが装填されると、前記注入実行機構に装填された前記薬液シリンジから薬液条件データを取得するデータ入力部」を構成することは、当業者にとって格別の創作力を要するものではない。

(相違点4)について

本願明細書には「さらに、薬液注入装置400は、上述のように薬液シリンジ800から取得した薬液条件データを薬液注入が完了すると会計関連データとしてHIS900に送信する。従って、薬液注入装置400に一度は装填されたものの交換されて使用されなかった薬液シリンジ800の薬液条件データが会計関連データとしてHIS900に送信されるようなことがない。このため、実際に薬液注入に利用された薬液シリンジ800の薬液条件データのみを、最速のタイミングでHIS900に提供することができる。従って、HIS900は、実際に使用された薬液シリンジ800の薬液条件データで会計処理を迅速に実行することができる。」(【0180】-【0181】)
という記載があり、本件補正発明においては、実際に使用された薬液条件データが会計関連データとして誤り無く利用されるように、かつ会計処理を迅速に行うために、「薬液の注入が完了する」と薬液条件データの少なくとも一部を送信するものである。

一方、引用発明1においては、被検体において当該検査における所定枚数の画像が収集されると、インジェクタ216から出力される、実際に使用された造影剤に係る情報を会計システムに送信することで、会計精度の向上を可能とするものであるが、当該インジェクタ216から出力される、実際に使用された造影剤に係る情報は、薬液の注入を完了した時点で既に確定していることは当業者にとって自明である。したがって、この情報を、所定枚数の画像が収集されるまで待たずに、薬液の注入を完了した時点で会計システムに送信することは、当業者が適宜なし得る設計的変更にすぎない。

結局,本件補正発明は,引用発明1、及び引用文献2の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

6.補正却下の決定のむすび

よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

平成26年5月26日付手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成25年10月9日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1.の<本件補正前の請求項1>)に記載された事項により特定されるものである。

第4 引用文献および引用発明の認定

引用文献1,2の記載事項及び引用発明1の認定は,前記第2の3.に記載したとおりである。

第5 対比及び判断

本願発明は,本件補正発明から前記第2の2.に示した限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2に記載したとおり,引用発明1及び引用文献2の記載事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び引用文献2の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-21 
結審通知日 2015-05-26 
審決日 2015-06-11 
出願番号 特願2012-182954(P2012-182954)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 潤  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 川崎 優
石川 正二
発明の名称 薬液注入装置、透視撮像システム、コンピュータプログラム  
代理人 速水 進治  
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