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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1303884 |
審判番号 | 不服2014-10071 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-30 |
確定日 | 2015-08-06 |
事件の表示 | 特願2013- 6309「太陽電池構造体および太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月16日出願公開、特開2013- 93610〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成19年8月7日に出願した特願2007-205681号(以下「原出願」という。)の一部を平成25年1月17日に新たな特許出願したものであって、平成25年9月11日付けで拒絶理由が通知され、同年10月4日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、平成26年2月24日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して同年5月30日に審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成26年5月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年5月30日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成26年5月30日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成25年10月4日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1である 「 【請求項1】 第1方向に配置された複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セルを接続する配線基板とを備える太陽電池ストリングを有し、 前記太陽電池セルは、受光面側とは反対側の裏面にp型用電極およびn型用電極を備えた裏面電極型太陽電池セルであり、 前記配線基板には、セル接続用配線と、前記第1方向に隣接する前記太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、前記第1方向の両端部に配置されて前記太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが備えられており、 前記太陽電池ストリングが前記第1方向と交差する第2方向に複数配置され、隣り合う前記バスバー電極同士の少なくとも1組が一体的にパターニングされた金属箔で構成されることによって電気的に接続されている、 太陽電池構造体。」を 「 【請求項1】 第1方向に配置された複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セルを接続する配線基板とを備える太陽電池ストリングを有し、 前記太陽電池セルは、受光面側とは反対側の裏面にp型用電極およびn型用電極を備えた裏面電極型太陽電池セルであり、 前記配線基板には、セル接続用配線と、前記第1方向に隣接する前記太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、前記第1方向の両端部に配置されて前記太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが備えられており、 前記太陽電池ストリングが前記第1方向と交差する第2方向に複数配置され、隣り合う前記バスバー電極同士の少なくとも1組が一体的にパターニングされた金属箔で構成されることによって電気的に接続されており、該金属箔によって前記少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極も一体的に構成されている、 太陽電池構造体。」 と補正することを含むものである(下線は請求人が付与したものである。)。 2 本件補正の目的 本件補正は、「該金属箔によって前記少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極も一体的に構成されて」いることを、補正前の請求項1の「隣り合う前記バスバー電極同士の少なくとも1組が一体的にパターニングされた金属箔で構成されることによって電気的に接続されている」ことに挿入することを含むものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。 3 独立特許要件 (1)そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を、記載要件(特許法第36条第6項第1号)について以下に検討する。 (2)本願補正発明は、上記「第2 1」において、補正後の特許請求の範囲の請求項1として示したとおりのものである。 上記「第2 1」によれば、本願補正発明には、「少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極も一体的に構成されている」ことが記載されている。 そこで、本願補正発明の「少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極も一体的に構成されている」ことが発明の詳細な説明に記載されているかどうかについて、以下に検討する。 (3)本願明細書には、次のように記載されている。 ア「【0040】 図6に、本発明に用いられる太陽電池構造体の他の一例の模式的な平面図を示す。ここで、太陽電池構造体は、図2に示す裏面を有する複数の裏面電極型太陽電池セル100がp型用配線およびn型用配線が形成された1枚の配線基板111上に設置されて電気的に接続されることにより構成されている。 【0041】 また、図6に示す構成の太陽電池構造体においては、配線基板111が1枚しか用いられていないので、配線基板111同士を電気的に接続する必要がない点に利点がある。 【0042】 また、図6に示す太陽電池構造体において、太陽電池構造体の電気抵抗を低減する観点から、図6に示すように、裏面電極型太陽電池セル100の接続方向が反転する部分となるバスバー電極部122に導電性部材116を電気的に接続してもよい。」 イ「【0063】 また、PENからなるフィルムからなる配線基板111の表面の全面に18μmの厚さの銅箔を形成した後に、図3に示す形状となるように、銅箔の一部をエッチングにより除去して、配線基板111上に残された銅箔からなるn型用配線109、p型用配線110、接続用電極113、バスバーp電極114およびバスバーn電極115を形成する。これにより、4枚の裏面電極型太陽電池セル100が直列に電気的に接続できるような配線が形成される。 【0064】 ここで、接続用電極113は、隣接する裏面電極型太陽電池セル100間の距離が1mmとなるように設計されている。また、スリット112より外側の銅箔は50mmとなるように設計されている。」 ウ 図2 エ 図3 オ 図6 (4)判断 ア 上記(3)アによれば、「図2に示す裏面を有する複数の裏面電極型太陽電池セル100がp型用配線およびn型用配線が形成された1枚の配線基板111上に設置されて」いること、「図6に示す構成の太陽電池構造体においては、配線基板111が1枚しか用いられていない」ことが記載されているものの、図2、6を参酌しても、p型用配線、n型用配線、接続用電極、バスバー電極の関係は記載されていない。 ここで、「裏面電極型太陽電池セル100のn型用電極106およびp型用電極107はそれぞれ、配線基板111上に設置されたn型用配線109およびp型用配線110に電気的に接続されて」(本願明細書の【0028】)おり、配線基板111上に形成されたp型用配線及びn型用配線がセル接続用配線であることは明らかであるから、本願明細書の【0040】、【0041】、図6には、「少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極が一体的に構成されている」ことが記載されているとはいえない。 イ 上記(3)イによれば、「銅箔の一部をエッチングにより除去して、配線基板111上に残された銅箔からなるn型用配線109、p型用配線110、接続用電極113、バスバーp電極114およびバスバーn電極115を形成する」ことが記載されていて、図3も参酌すると、p型用配線109とバスバーp電極113とを接続すること、n型用配線110とバスバーn電極とを接続することは読み取れるものの、バスバーp電極113に接続されたp型用配線109は接続用電極113とは一体的に構成されておらず、バスバーn電極114に接続されたn型用配線110も接続用電極113とは一体的に構成されていない。 上記アで示したように、配線基板111上に形成されたp型用配線及びn型用配線がセル接続用配線であることは明らかであるから、本願明細書の【0040】ないし【0042】、【0063】、【0064】、図2、3、6には、「少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極が一体的に構成されてい」ることが記載されているとはいえない。 ウ 本願明細書の上記ア及びイ以外の箇所、本願の図においても、「少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極が一体的に構成されている」ことは記載されておらず、また、記載されていることが自明であるとも認められない。 エ 審判請求人は、審判請求の理由で、次のように主張している。 「(3-2).補正の根拠 上記請求項1において、「該金属箔によって前記少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極も一体的に構成されている」との補正は、主には本願出願当初の明細書の段落[0040],[0041],[0063],[0064]及び図面の図6に基づきます。 したがって、上述の特許請求の範囲における補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、さらに明らかに所謂限定的減縮に相当するので、適法なものであると思料致します。 なお、本願明細書において、このような特許請求の範囲の補正に伴う補正を行っており、これについても適法なものであると思料致します。」と主張している。 しかしながら、上記ア及びイで述べたように、本願明細書の段落【0040】、【0041】、【0063】、【0064】、図6には、「少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極が一体的に構成されている」ことは、記載されておらず、記載されていることが自明であるとも認められないので、審判請求人の主張は認められない。 (5)結論 上記(4)より、「少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極が一体的に構成されている」ことは、本願明細書に記載されておらず、また、記載されていることが自明であるとも認められないので、「少なくとも1組のバスバー電極に電気的に接続されたセル接続用配線及び接続用電極が一体的に構成されている」ことを包含する本願補正発明も、本願明細書に記載されておらず、また、記載されていることが自明であるとも認められない。 よって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 4 むすび 以上検討のとおり、本願補正発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、平成25年10月4日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1」において、補正前の特許請求の範囲の請求項1として示したとおりのものである。 2 刊行物、各刊行物の記載事項及び引用発明の認定 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された刊行物である、特開2005-340362号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。 ア「【0025】 以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本願の図面において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を表わすものとする。また、本明細書において、太陽電池モジュールに太陽光が入射する側の面を受光面とし、受光面の反対側にあって太陽光が入射しない側の面を裏面とする。 【0026】 図1に、本発明の太陽電池セルの好ましい一例の模式的な断面図を示す。この太陽電池セルは、シリコン基板などの半導体基板1の裏面にp+層6とn+層5とが裏面に沿って交互に間隔をあけてそれぞれ複数形成されており、p+層6上に点状のp電極11が形成され、n+層5上に点状のn電極12が形成されている太陽電池ウエハ17と、p配線14とn配線15とが絶縁性基板16上に形成されている配線基板18とを含む。そして、太陽電池ウエハ17の裏面上に配線基板18が設置され、p電極11上にはんだ19を介してp配線14が設置されて複数の点状のp電極11が電気的に接続され、n電極12上にはんだ19を介してn配線15が設置されて複数の点状のn電極12が電気的に接続されている。」 イ「【0037】 図8に、本発明の太陽電池モジュールの裏面の好ましい一例の模式的な平面図を示す。この太陽電池モジュールは、図1に示す太陽電池ウエハと同じ構成を有する図9に示す太陽電池ウエハ17a、17b、17cと、図10に示す絶縁性基板16の一面にp電極11を電気的に接続するp配線14とn電極12を電気的に接続するn配線15とこれらの配線を電気的に接続する接続電極20とが形成されている配線基板18とを含む。そして、太陽電池ウエハ17のうち一の太陽電池ウエハ17aのp電極11が配線基板18のp配線14と電気的に接続されており、一の太陽電池ウエハ17aとは異なる他の太陽電池ウエハ17bのn電極12がn配線15と電気的に接続されている。また、太陽電池ウエハ17bのp電極11が配線基板18のp配線14と電気的に接続されており、太陽電池ウエハ17cのn電極12がn配線15と電気的に接続されている。 【0038】 この太陽電池モジュールはたとえば以下のようにして製造される。まず、図9の模式的平面図に示すように、上記のようにして形成された太陽電池ウエハ17a、17b、17cをこれらの裏面側を上方に向けて配列する。次に、図10の模式的平面図に示すように、櫛形状の銅からなるp配線14とn配線15とがそれぞれ互いの複数の櫛歯を向き合わせてそれぞれの櫛歯が絶縁性基板16の一面に沿って交互に配列されるように形成されており、p配線14とn配線15とを電気的に接続する接続電極20が絶縁性基板16の一面に形成されている配線基板18を用意する。そして、この配線基板18をこれらの太陽電池ウエハ17a、17b、17cの裏面上に設置して、配線基板18のp配線14およびn配線15と太陽電池ウエハ17a、17b、17cのp電極11およびn電極12とをはんだを介してそれぞれ電気的に接続する。これにより、図8に示す本発明の太陽電池モジュールが完成する。なお、本発明においては、この太陽電池モジュールをEVA樹脂で挟んだ後にガラス基板などの基板に貼り付けることもできる。 【0039】 このように、本発明の太陽電池モジュールにおいては、点状に形成された太陽電池ウエハ17a、17b、17cのp電極11およびn電極12が配線基板18に予め形成されているp配線14およびn配線15とはんだを介してそれぞれ電気的に接続されている。これにより、太陽電池ウエハ17a、17b、17cのp電極11およびn電極12が銀からなる場合でも、p電極11とp配線14、n電極12とn配線15のそれぞれの接触抵抗を従来よりも低減することができる。また、予め接続電極20が設置された配線基板18を用いることによって、太陽電池ウエハ17a、17b、17cの電気的な接続と構成を同時に、しかも簡便に形成することができる。」 ウ 図1 エ 図8 図8より、紙面横方向に配置された複数の太陽電池ウエハ17a、17b、17c、隣接する太陽電池ウエハ同士17aと17b、17bと17cとを接続する接続電極20、紙面横方向の両端部に配置される接続電極20が備えられていることが、看取できる。 オ 図10 図10より、p配線14とn配線15を接続する接続電極20、及び紙面横方向の両端部に配置される接続電極20が備えられていることが、看取できる。 (2)上記(1)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「太陽電池モジュールに太陽光が入射する側の面を受光面とし、受光面の反対側にあって太陽光が入射しない側の面を裏面とし、 前記太陽電池モジュールは、太陽電池ウエハ17a、17b、17cと、絶縁性基板16の一面にp電極11を電気的に接続するp配線14とn電極12を電気的に接続するn配線15とこれらの配線を電気的に接続する接続電極20とが形成されている配線基板18とを含み、 前記太陽電池ウエハ17a、17b、17cは、半導体基板1の裏面にp+層6とn+層5とが裏面に沿って交互に間隔をあけてそれぞれ複数形成されており、前記p+層6上に点状の前記p電極11が形成され、前記n+層5上に点状の前記n電極12が形成されたものであり、 前記配線基板18は、櫛形状の銅からなる前記p配線14と前記n配線15とがそれぞれ互いの複数の櫛歯を向き合わせてそれぞれの櫛歯が絶縁性基板16の一面に沿って交互に配列されるように形成されており、前記p配線14と前記n配線15とを電気的に接続する接続電極20が絶縁性基板16の一面に形成されたものであり、 前記配線基板18をこれらの太陽電池ウエハ17a、17b、17cの裏面上に設置して、前記配線基板18の前記p配線14および前記n配線15と前記太陽電池ウエハ17a、17b、17cの前記p電極11および前記n電極12とをはんだを介してそれぞれ電気的に接続し、 紙面横方向に隣接する前記太陽電池ウエハ同士17aと17b、17bと17cとを接続する前記接続電極20と、紙面横方向の両端部に配置される接続電極20が備えられている、 太陽電池モジュール」 (3)対比・判断 ア 本願発明と引用発明を対比する。 (ア)引用発明の「紙面横方向」、「太陽電池ウエハ17a、17b、17c」、「配線基板18」、「太陽電池モジュール」、「p電極11」、「n電極12」及び「隣接する太陽電池ウエハ同士17aと17b、17bと17cとを接続する接続電極20」は、本願発明の「第1方向」、「複数の太陽電池セル」、「配線基板」、「太陽電池ストリング」、「p型用電極」、「n型用電極」及び「隣接する太陽電池セル同士を接続する接続用電極」に、それぞれ相当する。 (イ)引用発明の「裏面」は「太陽電池モジュールに太陽光が入射する側の面を受光面とし、受光面の反対側にあって太陽光が入射しない側の面を裏面と」するものであるから、本願発明の「受光面側とは反対の裏面」に相当する。 (ウ)引用発明の「太陽電池ウエハ17a、17b、17c」は「半導体基板1の裏面にp+層6とn+層5とが裏面に沿って交互に間隔をあけてそれぞれ複数形成されており、p+層6上に点状のp電極11が形成され、n+層5上に点状のn電極12が形成されている」ものであることから、引用発明の「太陽電池ウエハ17a、17b、17c」は「裏面に」「p電極11」と「n電極12」「が形成されている」といえる。そして、上記(ア)で示したように引用発明の「p電極11」及び「n電極12」は本願発明の「p型用電極」及び「n型用電極」に相当するので、引用発明の「太陽電池ウエハ17a、17b、17c」は、本願発明の「裏面電極型太陽電池セル」に相当する。 (エ)引用発明の「配線基板18の」「p配線14」及び「n配線15」は、本願発明の「配線基板」「に備えられている」「セル接続用配線」に相当する。 (オ)太陽電池ウエハが発生する電力を取り出す電極が必要であることは自明であることから、引用発明の「紙面横方向の両端部に配置される接続電極20」は、本願発明の「第1方向の両端部に配置されて前記太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極」に相当する。 (カ)上記(ア)より、引用発明の「太陽電池ウエハ17a、17b、17cと、絶縁性基板16の一面にp電極11を電気的に接続するp配線14とn電極12を電気的に接続するn配線15とこれらの配線を電気的に接続する接続電極20とが形成されている配線基板18とを含」む「太陽電池モジュール」は、本願発明の「第1方向に配置された複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セルを接続する配線基板とを備える太陽電池ストリング」に相当する。 (キ)上記(ア)ないし(ウ)より、引用発明の「半導体基板1の裏面にp+層6とn+層5とが裏面に沿って交互に間隔をあけてそれぞれ複数形成されており、前記p+層6上に点状の前記p電極11が形成され、前記n+層5上に点状の前記n電極12が形成された」「太陽電池ウエハ17a、17b、17c」は、本願発明の「前記太陽電池セルは、受光面側とは反対側の裏面にp型用電極およびn型用電極を備えた裏面電極型太陽電池セル」に相当する。 (ク)上記(ア)、(エ)、(オ)より、引用発明の「前記配線基板18は、櫛形状の銅からなる前記p配線14と前記n配線15とがそれぞれ互いの複数の櫛歯を向き合わせてそれぞれの櫛歯が絶縁性基板16の一面に沿って交互に配列されるように形成されており、前記p配線14と前記n配線15とを電気的に接続する接続電極20が絶縁性基板16の一面に形成されたものであり、前記配線基板18をこれらの太陽電池ウエハ17a、17b、17cの裏面上に設置して、前記配線基板18の前記p配線14および前記n配線15と前記太陽電池ウエハ17a、17b、17cの前記p電極11および前記n電極12とをはんだを介してそれぞれ電気的に接続し、紙面横方向に隣接する前記太陽電池ウエハ同士17aと17b、17bと17cとを接続する前記接続電極20と、紙面横方向の両端部に配置される接続電極20が備えられている」ことは、本願発明の「前記配線基板には、セル接続用配線と、前記第1方向に隣接する前記太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、前記第1方向の両端部に配置されて前記太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが備えられている」ことに相当する。 イ 一致点 上記アより、本願発明と引用発明は、 「第1方向に配置された複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セルを接続する配線基板とを備える太陽電池ストリングであって、 前記太陽電池セルは、受光面側とは反対側の裏面にp型用電極およびn型用電極を備えた裏面電極型太陽電池セルであり、 前記配線基板には、セル接続用配線と、前記第1方向に隣接する前記太陽電池セル同士を接続する接続用電極と、前記第1方向の両端部に配置されて前記太陽電池セルが発生する電力を取り出すバスバー電極とが備えられている、 太陽電池ストリング」 の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 ウ 相違点 本願発明では、「前記太陽電池ストリングが前記第1方向と交差する第2方向に複数配置され、隣り合う前記バスバー電極同士の少なくとも1組が一体的にパターニングされた金属箔で構成されることによって電気的に接続されている、太陽電池構造体」であるのに対し、引用発明は「太陽電池モジュール」であることにとどまる点。 エ 判断 上記相違点について検討する。 太陽電池ストリングが第1方向と交差する第2方向に複数配置される太陽電池構造体は、周知技術(例えば、登録実用新案第3123842号公報特に、図1、特開2006-19440号公報特に、図1、2参照。)であり、一般に出力電圧を上げるために直列に接続するセルの数を増やすこと、及び、セルをマトリクス状の配置とすることも周知技術であり、引用発明についても、出力電圧を上げるためにセルの数を増やす方がよいことは自明であるから、太陽電池ストリングを第1方向と交差する第2方向に複数配置される太陽電池構造体とし、隣接するバスバー電極同士の少なくとも1組を接続する構成とすることに、何ら格別の困難性はない。 そして、引用発明も隣接する太陽電池ウエハ同士17aと17b、17bと17cとを接続する接続電極20を備えるものであり、また、電極をパターニングされた金属箔で構成することは周知技術であり、また、引用発明を、太陽電池ストリングを第1方向と交差する第2方向に複数配置する構成としたときに、第2方向に隣接する「太陽電池モジュール」の「紙面横方向の両端部に配置される接続電極20」同士が隣接することは明らかであるから、この隣接する1組の「紙面横方向の両端部に配置される接続電極20」を一体的にパターニングされた金属箔で構成することは、当業者が容易になし得ることである。 してみると、引用発明に周知技術を適用することにより上記相違点にかかる構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。 オ 本願発明が奏する作用効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測できるものである。 カ 小括 よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 第4 結び 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-02 |
結審通知日 | 2015-06-09 |
審決日 | 2015-06-24 |
出願番号 | 特願2013-6309(P2013-6309) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) P 1 8・ 537- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 眞壁 隆一 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 井口 猶二 |
発明の名称 | 太陽電池構造体および太陽電池モジュール |