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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A63F
管理番号 1304016
判定請求番号 判定2015-600013  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2015-09-25 
種別 判定 
判定請求日 2015-04-16 
確定日 2015-08-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第4087863号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号実施状況説明書及びプレスリリースに示すリアル車将棋は,特許第4087863号の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は,イ号実施状況説明書及びプレスリリースに示すリアル車将棋(以下「イ号物件」という。)は,特許第4087863号(以下「本件特許」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
特許第4087863号の請求項1?2に係る発明(以下「本件特許発明1?2」といい,本件特許発明1及び2をまとめて「本件特許発明」という。)は,本件特許明細書及び図面(甲第1号証)の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものであり,各請求項を構成要件ごとに分説すると次のとおりである(以下分説されたものを「構成要件A?C」という。)。
「【請求項1】
A 将棋駒に武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団その他キャラクターを表現したものを使い,
B 取られた駒を相手が使う場面では,その駒が取られた駒であることを認識出来ることを特徴とした将棋駒。
【請求項2】
C 請求項1の駒を用い,将棋盤に戦場など対戦に適した表現をした将棋からなる将棋セット。」

第3 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は,判定請求書において,概ね次の理由により,イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属する旨を主張している。
(1)イ号実施状況説明書の資料(2)丸1(1の丸囲み数字を「丸1」という。以下同様。)第1頁の「本物の自動車を将棋の駒に・・」,「羽生善治名人の陣営の駒となる“過去の名車”は,次の8車種・・・豊島将之七段の駒は“現行車”8車種は・・」という記載及び第1?4頁掲載の「駒の車画像」並びに同資料(2)丸4第1頁の「16車種40台を『王将』『飛車』『香車』『歩』などの将棋駒に見立て,・・・」,「そもそも車が駒になる・・・。駒となるのは,トヨタの『トヨペットクラウン』(王将)・・・」等が,本件特許発明1のキャラクターを表現したものに相当する。
(2)「請求項1の駒(上記記載)を用い,将棋盤に戦場などの(トヨタ自動車)対戦に適した表現(野球場)をした将棋からなる将棋セット(である)。」及び請求項2の対戦に適した将棋盤を表現したものは,資料(2)丸1第1頁の「野球場には縦54メートル×横33.3メートルの・・・」の記載及び第1?4頁の画像から,対戦に適した将棋盤を表現したものであることが容易に理解できる。
(3)本件車将棋は,本件特許発明と同一か少なくとも均等であることから,本件特許発明の技術範囲に属する。

2 被請求人の主張
被請求人は,判定請求答弁書において,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属さない理由を概ね次のように主張している。
(1)本件特許発明1の「将棋駒」とは,将棋の駒のことであり,広辞苑には,「駒」とは「将棋に用いる山形に尖らせた五角形の小木片」を意味するとされている(乙第2号証)。
本件特許公報の発明の詳細な説明を参酌すると,本件特許発明の「将棋駒に・・・キャラクターを表現」の意味について積極的に定義するような記載は何らなく,発明の実施例において,五角形の将棋の「駒」に,武将絵と王・飛などの文字を描いた構成が記載されているのみである(本件特許公報の段落【0017】の図1の説明欄及び図1)。
本件車将棋では,自動車のルーフ部分に将棋の「駒」を載せたものが用いられているが,当該ルーフ部分に載せられた「駒」には,将棋を行うに当たっての一般的な駒の名称が表記されているだけでキャラクターなどは何も描かれていない(乙第5号証画面2)。
よって,本件車将棋は将棋の「駒」に「武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団その他キャラクター」を表現するものではなく,本件特許発明1の構成要件Aを充足しない。
(2)仮に,本件車将棋における将棋の「駒」を載せた自動車全体をもって,本件特許発明1の「将棋駒」に相当すると解釈したとしても,「自動車」は,本件特許発明1の「武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団」のいずれにも相当しないことは明らかであり,また「キャラクター」とは,一般的に,「小説・映画・演劇・漫画などの登場人物」を意味するものであって(乙第3号証),その用語の意味に「自動車」は含まれない。この点,本件特許公報の発明の詳細な説明を参酌しても,そこには特許請求の範囲の記載と同じく,「武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団」(段落【0013】)の開示があるだけで,本件特許発明1の「武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団その他キャラクター」が自動車をも包含することが窺える記載は一切ない。したがって,本件車将棋における「自動車」は,本件特許発明1の「武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団その他キャラクター」には該当しない。
(3)本件車将棋における,ルーフ部分に載せられた将棋駒には,一般的な駒の名称が表記されているだけで,キャラクターなどは何も描かれておらず,同種の駒は区別できないため,将棋駒のみからは,その駒が取られた駒であることを認識することは不可能である。したがって,本件車将棋は,本件特許発明1の構成要件Bを充足しない。
(4)仮に,本件車将棋における将棋の「駒」を載せた自動車全体をもって,本件特許発明1の「将棋駒」に相当すると解釈したとしても,本件車将棋においては,使用されるトヨタ製自動車について,その車種が「過去の名車」に属するのか又は「現行車」に属するのかを正確に理解している場合に限って,たまたま当該認識が可能となる場合があるにすぎず,客観的に,「取られた駒を相手が使う場面に,その駒が取られた駒であることを認識出来る」という構成を具備するわけではない。
(5)本件車将棋は,マス目だけを描いた将棋盤を野球場に設置したものにすぎないから(乙第5号証画像2),本件車将棋が「将棋盤に戦場など対戦に適した表現をした」という構成を具備しないことは明らかである。
よって,本件特許発明2の構成要件Cを充足しない。
(6)請求人は,本件車将棋は,本件特許発明と均等なものであるとも主張しているが,本件車将棋は,本件特許発明1の構成要件A及びB,並びに,本件特許発明2の構成要件Cをいずれも充足しないものである。そして,本件特許発明と本件車将棋とは,本件特許発明が「将棋駒に・・・キャラクタを表現したもの」(構成要件A)であるのに対し,本件車将棋は,自動車のルーフ部分に将棋の「駒」を載せたものにすぎず,当該ルーフ部分の「五角形の将棋駒」には,将棋を行うに当たっての一般的な駒の名称が表記されているだけでキャラクターなどは何も描かれていない点で,少なくとも相違するところ,かかる相違点は,「天童市の人間将棋」という公知技術の課題を解決したものであること等に鑑みれば,発明の技術的思想の本質的部分であるといえること(第1要件),また,本件車将棋は,「天童市の人間将棋」などの公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考することができたものであること(第4要件),及び,出願当初から「天童市の人間将棋」の公知技術を容易に想起することができていたにもかかわらず,本件特許では敢えてこれを排除されたこと(第5要件)等からすれば,本件車将棋について,本件特許発明1及び2との関係において均等であるとは言えない。
よって,本件車将棋は,本件特許発明と均等なものではなく,本件特許の技術範囲に属しない。

第4 イ号物件
1 請求人によるのイ号物件の特定
請求人は,判定請求書の「丸4 イ号実施状況説明書及びプレスリリースによるリアル車将棋」(第3頁第1行?第4頁第17行)において,概ね以下のように説明している。
請求項1
「将棋駒にトヨタ製自動車を表現したものを使い,取られた駒(自動車)を相手が使う場面では,その駒(自動車)が取られた駒(自動車)であることを認識できることを特徴とした将棋駒(自動車)(対戦である)」
請求項2
「請求項1の駒(上記記載)を用い,将棋盤に戦場などの(トヨタ自動車)対戦に適した表現(野球場)をした将棋からなる将棋セット(である)。」

2 当審によるイ号物件の特定
上記「第3 1」の請求人によるイ号物件の特定では不明確な構成があるので,請求人が提出したイ号実施状況説明書及びプレスリリースに基づき,被請求人が提出した判定請求答弁書,判定請求答弁書に添付した乙第2?5号証の記載を参酌して,イ号物件の構成について検討する。
ア イ号実施状況説明書の資料(2)丸1第1?3頁,及び,乙第5号証の画像2?3には,自動車のルーフ部分に将棋の駒を載せたトヨタ製自動車が映っている。
イ イ号実施状況説明書の資料(2)丸1第1?3頁に映っている,“過去の名車”である王将,飛車,角行の写真(1頁下段?2頁上段,3頁中段)と,“現行車”である王将,飛車,角行の写真(2頁中段?3頁上下段)を見比べると,どちらが「過去の名車」であり,「現行車」であるか区別して認識出来る。
ウ イ号実施状況説明書の資料(2)丸1第1頁には「野球場には縦54メートル×横33.3メートルの巨大将棋盤を設置」と記載され,第1?4頁の写真,及び,乙第5号証の画像2?3には,野球場に設置した巨大将棋盤にマス目だけが描かれている点が映っている。

イ号物件の構成は,上記ア?ウの検討結果を踏まえた上で,当審において次のとおりのものと特定する(以下「構成a?c」という。)。
【イ号物件】
a 将棋の駒に自動車のルーフ部分に将棋の駒を載せたトヨタ製自動車を使い,
b 取られた駒(自動車)を相手が使う場面では,その駒(自動車)が“過去の名車”であるか,“現行車”であるかにより,取られた駒(自動車)であることを認識出来る将棋駒(自動車)。
c 上記記載の駒を用い,野球場に設置した巨大将棋盤にマス目が描かれている将棋からなる将棋セット。

第5 対比・判断
1 本件特許発明1について
イ号物件が本件特許発明1の構成要件A?Bを充足するか否かについて,以下に対比判断する。
(1)構成要件Aの充足性について
ア 構成要件Aと構成aとの対比
イ号物件の構成aと本件特許発明1の構成要件Aとを対比すると,イ号物件では,将棋駒に「自動車のルーフ部分に将棋の駒を載せたトヨタ製自動車」を使っているのに対して,本件特許発明1では,将棋駒に「武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団その他キャラクターを表現したもの」を使っている。
イ 「その他キャラクター」に該当するものについて
本件特許公報の段落【0014】には,実施例として「将棋駒に平家武将名と源氏武将名をそれぞれ入れ」ることが,本件特許公報の段落【0017】及び図1には,実施例として「将棋駒に武将絵」を描くことが記載されている。将棋駒に「平家武将名と源氏武将名」を入れること,または「武将絵」を描くことにより,本件特許公報の段落【0011】?【0012】に記載された「対戦相手が歴史上ありえない人物同士や好みの自分の将棋駒を持つことで将棋に興味を持つ人が増える。」「また,将棋により歴史も自然に学べ,野球・スポーツ選手球団その他キャラクター品と共に販売効果を発揮する。」という効果を奏するといえる。
しかしながら,本件特許公報の段落【0017】及び図1には,実施例として「王・飛などの文字」を描くことが記載されているが,「王・飛などの文字」は一般的な将棋の駒の名称であり,「王・飛などの文字」を描くことにより本件特許公報の段落【0011】?【0012】に記載された上記効果を奏するとはいえない。このことから,「王・飛などの文字」を描くことは,「将棋駒に」「その他キャラクターを表現したもの」に該当しないことは明らかである。
以上のことから,「(その他)キャラクター」の意味は,本件特許公報の上記実施例及び効果の記載を考慮すると,被請求人が判定請求答弁書に添付した乙第2号証(広辞苑第六版)に記載された「小説・映画・演劇・漫画などの登場人物。その役柄。」を意味するといえる。
ウ 判断
イ号実施状況説明書の資料(2)丸1第1?4頁掲載の「駒の車画像」及び乙第5号証画像2?3から明らかなように,「トヨタ製自動車」のルーフ部分に載っている将棋の駒には,一般的な将棋の駒の名称である「王将」「飛車」「角行」などの文字が描かれており,「トヨタ製自動車」には,一般的な将棋の駒の名称である「王将」「飛車」「角行」などの文字,2桁の数字が描かれているが,「武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団」は表現されておらず,「その他キャラクター」についても表現されていない。
また,「将棋の駒」及び「トヨタ製自動車」に描かれているものだけでなく,ルーフ部分に「将棋の駒」を載せた「トヨタ製自動車」自体が,「武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団」「を表現したもの」に該当するともいえず,「その他キャラクター」「を表現したもの」に該当するともいえない。
エ むずび
したがって,イ号物件の構成aは,本件特許発明1の構成要件Aを充足していない。

(2)構成要件Bの充足性について
イ号物件の構成bと本件特許発明1の構成要件Bとを対比すると,イ号物件の「駒(自動車)」は,上記(1)で検討したとおり構成要件Aを充足していないが,「“過去の名車”」及び「“現行車”」である「自動車のルーフ部分に将棋の駒を載せたトヨタ製自動車」は,本件特許発明1の「駒」と同様に「将棋駒」としての機能を有するものである。
上記「第4 2イ」で検討したとおり,「“過去の名車”」と「“現行車”」を見比べれば,「取られた駒を相手が使う場面では」,「その駒が」「“過去の名車”」であるか,「“現行車”」であるかにより,「取られた駒であること」を認識出来る。
したがって,イ号物件の構成bは,本件特許発明1の構成要件Bを充足している。

(3)均等論の適用について
本件特許発明1については,上記(1)で述べたとおり,イ号物件は,「将棋駒に武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団その他キャラクターを表現したものを使い」に対応する構成を有しないから,構成要件Aを充足しない。
さらに,請求人は,上記「第3 1(3)」において言及したように,本件車将棋は,本件特許発明と同一か少なくとも均等である旨主張していることに対し,被請求人は上記「第3 2(6)」において言及したように,本件車将棋は,本件特許発明と均等なものではない旨反論しているから,以下検討する。
ア 均等の要件について
均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するための要件は,最高裁平成10年2月24日判決(平成6年(オ)第1083号)にて,以下のとおり判示されている。
「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,(1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく,(2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,(3)上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,(4)対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,上記対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」(以下上記判示事項の要件である「(1)?(5)」を,「第1?5要件」という。)。

イ 第1要件について
上記判例における「特許発明の本質的部分」は,明細書の特許請求の範囲に記載された構成のうち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分を意味するといえる。
この点を本件特許発明1について検討すると,本件特許発明1は,構成要件Aに規定する「将棋駒に武将名・家紋・写真・野球・スポーツ選手団その他キャラクターを表現したものを使い」という構成を具備することにより,「対戦相手が歴史上ありえない人物同士や好みの自分の将棋駒を持つことで将棋に興味を持つ人が増える。」「将棋により歴史も自然に学べ,野球・スポーツ選手球団その他キャラクター品と共に販売効果を発揮する。」(本件特許公報の段落【0011】?【0012】)という顕著な効果を奏するものである。
このことから,構成要件Aは,本件特許発明1の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分であり,本質的部分である。
したがって,本件特許発明1は特許請求の範囲に記載された構成中にイ号物件と異なる部分(構成要件A)があり,かつ,その異なる部分が本件特許発明1の本質的部分であるから,上記第1要件を満たしていない。

ウ 第4要件について
被請求人が提出した乙第4号証の1には,甲冑を身にまとった人間が将棋の駒になってプロ棋士が対局を行うイベントが毎年4月に天童市の舞鶴山の山頂広場で行われる点が記載されている。被請求人が提出した乙第4号証の2には,平成10年に人間将棋が舞鶴山の山頂広場で行われた点が記載されている。被請求人が提出した乙第4号証の3には,平成10年に,将棋の駒を載せた台と,その台を持つ赤又は青色の甲冑等の衣装を着た人間とが将棋の駒となり,赤と青の陣営とに分かれて,対局がマス目が描かれた将棋盤上で行われた写真が掲載されている。被請求人が提出した乙第4号証の4には,平成12年の「人間将棋」では,「人間将棋」というイベントを戦国時代の合戦に見立てたシナリオを導入すると共に,甲冑等の衣装を身にまとった赤と青の両軍の王将が,対局をおこなう女流プロ棋士等と共に必勝祈願する写真が掲載されている。
これらのことから,本件特許の出願日(平成17年4月19日)以前において,将棋の駒を載せた台と,その台を持つ赤又は青色の甲冑等の衣装を着た人間とが将棋の駒となり,赤と青の陣営とに分かれて対局を行う「人間将棋」というイベントが行われていたといえる。
イ号物件の構成aでは「将棋駒に自動車のルーフ部分に将棋の駒を載せたトヨタ製自動車」を使うのに対して,上記「人間将棋」というイベントでは,将棋の駒に「将棋の駒を載せた台と,その台を持つ赤又は青色の甲冑等の衣装を着た人間」を使う点で相違する。しかしながら,上記「人間将棋」というイベントでも,将棋駒に「将棋の駒」と「将棋の駒を移動させるもの」を使用するものであり,「トヨタ製自動車」は「人間」のように「将棋の駒」を移動させることができる代表的なものであるから,「人間」の代わりに,「トヨタ製自動車」を使用することは,本件特許発明1の出願時において容易に推考できたといえる。
また,上記「人間将棋」というイベントでは,赤色の甲冑等の衣装を着た人間と,青色の甲冑等の衣装を着た人間とが将棋の駒の一部となり,赤と青の陣営とに分かれており,人間の衣装の色により,どちらの陣営の駒か認識出来るから,イ号物件の構成bである「取られた駒を相手が使う場面では,その駒が取られた駒であることを認識できることを特徴とした将棋駒」という構成を充足しているといえる。
したがって,イ号物件の構成は,当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものであるといえるから,上記第4要件を満たしていない。

エ 小括
以上のとおり,上記第1,4要件に該当しないから,上記第2?3,5要件を検討するまでもなく,イ号物件は,本件特許発明1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件特許発明1の技術範囲に属するとすることはできない。

(4)まとめ
したがって,イ号物件は,本件特許発明1の構成要件Aを充足していないから,本件特許発明1の技術範囲に属するとすることはできない。

3 本件特許発明2について
イ号物件が本件特許発明2の構成要件Cを充足するか否かについて,以下に対比判断する。
(1)構成要件Cの充足性について
イ号物件の構成cと本件特許発明2の構成要件Cとを対比すると,イ号物件の「巨大将棋盤」は,本件特許発明2の「将棋盤」に相当する。
イ号物件の構成cの「上記記載の駒」という記載は,イ号物件の構成a?bを引用したものであり,上記「第5 1」において検討したように,イ号物件の構成aは本件特許発明1の構成要件Aを充足していない。
また,イ号物件の「巨大将棋盤」は「マス目が描かれている」だけであり,「マス目」は「戦場など対戦に適した表現」であるとはいえない。
加えて,将棋盤が配置されている野球場は将棋盤であるとはいえない。
これらのことから,イ号物件の「将棋盤」は,戦場など対戦に適した表現をした」ものとはいえない。
したがって,イ号物件の構成cは,本件特許発明2の構成要件Cを充足していない。

(2)均等論の適用について
本件特許発明2については,上記(1)で述べたとおり,イ号物件は,「請求項1の駒を用い,将棋盤に戦場など対戦に適した表現をした将棋からなる将棋セット。」に対応する構成を有しないから,構成要件Cを充足していない。
さらに,請求人は,上記「第3 1(3)」において言及したように,本件車将棋は,本件特許発明と同一か少なくとも均等である旨主張していることに対し,被請求人は上記「第3 2(6)」において言及したように,本件車将棋は,本件特許発明と均等なものではない旨反論しているから,上記「第5 1(3)」と同様に以下検討する。
ア 第1要件について
本件特許発明2は,本件特許発明1の構成要件Aと同様の構成要件を有するものであり,本件特許発明2についても,上記「第5 1」と同様に,イ号物件は構成要件Aを充足していないことに変わりなく,また,第1要件についても上記「第5 1(3)イ」と同様に,本件特許発明2は特許請求の範囲に記載された構成中にイ号物件と異なる部分(構成要件A)があり,かつ,その異なる部分が本件特許発明2の本質的部分であるから,上記第1要件を満たしていない。

イ 第4要件について
上記「第5 1(3)ウ」において既に検討したように,被請求人が提出した乙第4号証の3には,平成10年に,将棋の駒を載せた台と,その台を持つ赤又は青色の甲冑等の衣装を着た人間とが将棋の駒となり,赤と青の陣営とに分かれて,対局がマス目が描かれた将棋盤上で行われた写真が掲載されている。
イ号物件の構成cは,上記「第4 2」において特定した「c 上記記載の駒を用い,野球場に設置した巨大将棋盤にマス目が描かれている将棋からなる将棋セット。」であるから,イ号物件の構成cのうち,「巨大将棋盤」の部分の構成については,上記「人間将棋」というイベントの将棋盤の構成と同一であるといえる。
また,巨大将棋盤を設置する場所は広い場所である必要があることは明らかであり,野球場が広い場所であることは広く知られているから,巨大将棋盤を野球場に設置することは,容易に推考できたことであるといえる。
上記「第5 1(3)ウ」で検討したように,イ号物件の構成a?bは,当業者が上記「人間将棋」というイベントの将棋の駒である「人間」から出願時に容易に推考できたものであるから,イ号物件の構成cについても同様に,当業者が上記「人間将棋」というイベントの将棋の駒である「将棋の駒を載せた台と,その台を持つ赤又は青色の甲冑等の衣装を着た人間」と「将棋盤」とから出願時に容易に推考できたものであるといえる。
したがって,イ号物件の構成cは,当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものであるといえるから,上記第4要件を満たしていない。

ウ 小括
以上のとおり,上記第1,4要件に該当しないから,上記第2?3,5要件を検討するまでもなく,イ号物件は,本件特許発明2の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件特許発明2の技術範囲に属するとすることはできない。

(3)まとめ
したがって,イ号物件は,本件特許発明2の構成要件A,Cを充足していないから,本件特許発明2の技術範囲に属するとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2015-08-04 
出願番号 特願2005-147260(P2005-147260)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 真吾池谷 香次郎  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 関 博文
瀬津 太朗
登録日 2008-02-29 
登録番号 特許第4087863号(P4087863)
発明の名称 ゲーム盤  
代理人 小田 智典  
代理人 根本 浩  
代理人 澤井 光一  
代理人 佐藤 睦  
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