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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41J
審判 全部無効 2項進歩性  B41J
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B41J
管理番号 1304245
審判番号 無効2014-800087  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-05-30 
確定日 2015-06-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4336622号発明「プリントおよびカットを行う方法ならびにプログラム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要

本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4336622号(以下「本件特許」という。)の請求項1から請求項5に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。

第2 手続の経緯の概要

本件特許第4336622号に係る手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成16年 5月26日 出願

平成21年 7月 3日 設定登録(特許第4336622号)

平成26年 5月30日 本件無効審判請求、甲第1の1?6号証提出、(無効2014-800087号)

平成26年 9月26日 審判答弁書、訂正請求書

平成26年11月14日 弁駁書(1)、(2)、甲第7?9号証提出

平成26年12月4日付け 審理事項通知書提出

平成27年 1月 6日 口頭審理陳述要領書(請求人)、甲第1号証の3提出

平成27年 1月 9日 口頭審理陳述要領書(被請求人)、乙第1?4号証提出

平成27年 1月23日 口頭審理

平成27年 2月 6日 上申書(被請求人)

平成27年 2月10日 上申書(請求人)

第3 訂正請求について

1.訂正の内容

被請求人が平成26年9月26日付けの訂正請求書により請求する訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正しようとするものであって、その請求の内容は以下のとおりである。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップとを含む、」とあるのを、「作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、前記用紙を引き出すステップと、前記カットデータに基づいて輪廓のカットを行わせるステップとを含む、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

(2) 訂正事項2
明細書の段落【0007】に「作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップとを含む」とあるのを、「作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、前記用紙を引き出すステップと、前記カットデータに基づいて輪廓のカットを行わせるステップとを含む、」に訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載の方法。」とあるのを、「プリントおよびカット装置においてプリント及びカットを行う方法であって、グラフィックソフトウェアにおいて、画像の輪廓をカットするための特色名を入力させるステップと、前記特色名として所望の色を選択させるステップと、前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪廓データを作成させるステップと、前記作成された画像データおよび輪廓データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップとを含む、プリントおよびカットを行う方法。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

(4) 訂正事項4
訂正事項3の訂正を行った特許請求の範囲の請求項2に「前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、」とあるのを、「前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、RIPソフトウエアで乾燥時間を指定するステップと、」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

(5) 訂正事項5
訂正事項3および4の訂正を行った特許請求の範囲の請求項2に「さらに前記プリントおよびカット装置において、前記プリントデータで印刷するステップと、前記印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップと、乾燥後に前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを含む、」とあるのを、「前記プリントデータで印刷するステップと、前記印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウエアで指定された乾燥時間の経過を待つステップと、乾燥後に前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを含む、」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

(6) 訂正事項6
明細書の段落【0009】に「好ましくは、方法は、プリントおよびカット装置において、プリントデータで印刷するステップと、印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップと、乾燥後にカットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを含む。」とあるのを、「この発明にかかる、プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行う他の方法は、プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行う方法であって、グラフィックソフトウェアにおいて、画像の輪廓をカットするための特色名を入力させるステップと、前記特色名として所望の色を選択させるステップと、前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪廓データを作成させるステップと、前記作成された画像データおよび輪廓データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、RIPソフトウエアで乾燥時間を指定するステップと、作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、前記プリントデータで印刷するステップと、前記印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップと、乾燥後に前記カットデータに基づいて輪廓のカットを行わせるステップとを含む。」に訂正する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に「作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップとを実行させる」とあるのを、「作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、前記用紙を引き出すステップと、前記カットデータに基づいて輪廓のカットを行わせるステップとを実行させる」に訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に「プログラム。。」とあるのを、「プログラム。」に訂正する。

(9) 訂正事項9
明細書の段落【0012】に「作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップとを実行させる。」とあるのを、「作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、前記用紙を引き出すステップと、前記カットデータに基づいて輪廓のカットを行わせるステップとを実行させる。」に訂正する。

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5に「請求項4に記載のプログラム。」とあるのを、「コンピュータにプリントおよびカットを行わせるプログラムであって、グラフィックソフトウェアにおいて、画像の輪廓をカットするための特色名を入力させるステップと、特色名として所望の色を選択させるステップと、選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪廓データを作成させるステップと、作成された画像データおよび輪廓データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップとを実行させるプログラム。」に訂正する。

(11) 訂正事項11
訂正事項10の訂正を行った特許請求の範囲の請求項5に「RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、」とあるのを、「RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、RIPソフトウエアで乾燥時間を指定するステップと、」に訂正する。

(12) 訂正事項12
訂正事項10および11の訂正を行った特許請求の範囲の請求項5に「さらに前記プリントおよびカット装置において、プリントデータで印刷するステップと、印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップと、乾燥後にカットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを実行させる」とあるのを、「プリントデータで印刷するステップと、印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウエアで指定された乾燥時間の経過を待つステップと、乾燥後にカットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを実行させる」に訂正する。

(13) 訂正事項13
明細書の段落【0013】に「好ましくは、プログラムは、プリントおよびカット装置において、プリントデータで印刷するステップと、印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップと、乾燥後にカットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを実行させる。」とあるのを、「他のプログラムは、コンピュータにプリントおよびカットを行わせるプログラムであって、グラフィックソフトウェアにおいて、画像の輪廓をカットするための特色名を入力させるステップと、特色名として所望の色を選択させるステップと、選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪廓データを作成させるステップと、作成された画像データおよび輪廓データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、RIPソフトウエアで乾燥時間を指定するステップと、作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、プリントデータで印刷するステップと、印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウエアで指定された乾燥時間の経過を待つステップと、乾燥後に前記カットデータに基づいて輪廓のカットを行わせるステップと実行させる。」に訂正する。

2.本件訂正請求についての当事者の主張

(1)請求人の主張

ア.訂正事項1、7は「用紙を引き出すステップ」の追加を含むところ、単に「用紙を引き出す」では、用紙をどこからどの程度引き出すのかが不明であり、このように構成が不明であることも相俟って、「用紙を引き出す」ことの目的が不明である。(弁駁書(1)3頁12?16行)
また、請求項1、4は複数のステップを羅列してこれらのステップを「含む」や「実行させる」とされているのみであり、また、用紙を引き出すステップを規定する発明特定事項自体において他のステップとの順序が規定されているわけでもないので、被請求人が主張する作用効果を発揮し得ない順序も含まれ、印刷後且つカット前に用紙を引き出す場合があり得るとしても、被請求人が主張する上記の作用効果は明細書には一切記載されていないので、訂正事項1、7の技術的意義を認めることはできない。(弁駁書(1)4頁15?27行)

イ.本件の明細書、図には「RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップは」記載されておらず、訂正事項4、5、6、11、12および13における「RIPソフトウエアで乾燥時間を指定するステップ」の追加は、新規事項の追加に該当する。(弁駁書(1)5頁1行?6頁19行、口頭審理陳述要領書2頁16?19行)

(2)被請求人の主張

ア.請求人は、本件訂正発明1は、輪廓をカットするステップと用紙を引き出すステップとの順序を規定していないこと、および用紙を引き出すことの意味内容が不明であることから、技術駅意義が不明である旨主張するが、輪廓をカットするステップと用紙を引き出すステップとの順序は訂正後の請求項1の全体の記載から自明であり、また本件特許の明細書および図面を参酌することにより当然に導かれる事項である。
また、請求項に記載された用語については、特段の理由がない限りその用語が有する通常の意味に解釈されるべきであり、「引き出す」という用語は通常、「中にあるものを外に出して見えるようにする」といった意味を有している。したがって、「用紙を引き出すステップ」が、印刷された部分が分かるように用紙をプリントおよびカット装置の中から外に出すステップであることは自明である(口頭審理陳述要領書4頁16行?5頁6行)。

イ.本件特許明細書には「RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップ」という文言は記載されていないが、段落【0031】の「印刷後、RIPソフトウェアで指定されている乾燥時間の経過を待ち(S24)、その後に、用紙を引き出す(S25)。」との記載から、RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップが存在することは自明な事項である。
また本件特許明細書の【発明を実施するための最良の形態】の欄では、「指定」という用語は主に入力または選択という行為を意味しており、入力または選択という行為がステップに該当することは明らかである。
さらに、段落【0031】には、「上記した乾燥時間は、印刷メディアによって異なるが、数分から数十分程度である。」と記載されている。この記載は、乾燥時間は予め変更不能なように一律にさだめられたものではなく、適宜に指定できるものであることを示唆しており、このことからもRIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップが存在することを示す記載といえる(平成27年2月6日付けで提出された上申書2頁10?24行)。

3.当審の判断

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件特許の請求項1に、「前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、前記用紙を引き出すステップと、前記カットデータに基づいて輪廓のカットを行わせるステップ」の各ステップを付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。同様に、請求項1を引用する請求項3に係る発明を減縮するものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書(段落【0030】-【0031】)、特許請求の範囲又は図面(図5)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1により訂正する特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3、4、5について
訂正事項3、4、5は、従属項であった本件特許の請求項2を独立項とし、「RIPソフトウエアで乾燥時間を指定するステップ」、前記プリントデータで印刷するステップと、前記印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップ「であって、前記RIPソフトウエアで指定された乾燥時間の経過を待つステップ、」の各ステップを付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。同様に、請求項2を引用する請求項3に係る発明を減縮するものである。
次に本件請求項2に「RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップ」を付加することが新規事項に該当するか否かについて検討する。
本件特許明細書には「【0031】印刷後、RIPソフトウェアで指定されている乾燥時間の経過を待ち(S24)、その後に、用紙を引き出す(S25)。CPUは特色名で指定された輪郭カットデータのみをカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10に送出して、先に印刷した上に重ねて輪郭線のカットを行う(S26)。ここで、上記した乾燥時間は、印刷メディアによって異なるが、数分から数十分程度である。」と記載されている。ここで「乾燥時間」は、「印刷メディアによって異なる」から、印刷メディアに応じて乾燥時間を指定しなければならないことは明らかである。そして当然、印刷後、印刷するメディアに応じた乾燥時間を指定しなければ乾燥時間の経過を待つことはできない。してみると上記「RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップ」および「RIPソフトウェアで指定された乾燥時間の経過を待つステップ」は本件特許明細書に記載からみて自明の事項である。したがって「RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップ」との事項は本願明細書の全ての記載を総合することにより導き出せる技術的事項であるから新規事項の追加であるとはいえない。
よって、訂正事項3、4、5は、願書に添付した明細書(段落【0030】-【0031】)、特許請求の範囲又は図面(図5)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項3、4、5により訂正する特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記(3)のとおり、訂正事項6は、願書に添付した明細書(段落【0030】-【0031】)、特許請求の範囲又は図面(図5)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項7について
訂正事項7は、上記(1)と同様の理由で、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、願書に添付した明細書(段落【0030】-【0031】)、特許請求の範囲又は図面(図5)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項8について
訂正事項8は、本件特許の請求項4のに「プログラム。。」とあるのを、「プログラム。」に訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項8は、願書に添付した明細書(段落【0030】-【0031】)、特許請求の範囲又は図面(図5)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正事項7により訂正する特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項9は、願書に添付した明細書(段落【0030】-【0031】)、特許請求の範囲又は図面(図5)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(8)訂正事項10、11、12について
訂正事項10、11、12は、上記(3)と同様の理由で、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、願書に添付した明細書(段落【0030】-【0031】)、特許請求の範囲又は図面(図5)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(9)訂正事項13について
訂正事項13は、訂正事項10、11、12により訂正する特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項13は、願書に添付した明細書(段落【0030】-【0031】)、特許請求の範囲又は図面(図5)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(10)請求人の主張について
請求人は、『訂正事項1、7の「前記用紙を引き出すステップ」との事項の技術的意義が不明であり、請求項1、4に係る発明は当業者が実施することができる程度に明確であるとは言えない。』旨主張する。
しかしながら訂正の要件は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号ないし第3号及び特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第4項ないし第8項の規定に適合する事項のみであって、これらの規定される要件を満たせば訂正請求は認められるものである。
してみると、上記請求人の主張は、上記訂正の要件とは関係のない事項であるから、上記請求人の主張は理由がない。
なお、上記の請求人の主張は、無効理由1として判断した。

4.小括

したがって、一群の請求項についての本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第4 本件訂正後の特許発明

上記のとおり、一群の請求項についての本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし5に記載された発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」、「本件訂正発明3」、「本件訂正発明4」、及び「本件訂正発明5」という。また、これらを総称して「本件訂正発明」という。)。

「【請求項1】
プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう方法であって、
グラフィックソフトウェアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
前記特色名として所望の色を選択させるステップと、
前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
前記作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、
前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、
前記用紙を引き出すステップと、
前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを含む、プリントおよびカットを行なう方法。
【請求項2】
プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう方法であって、
グラフィックソフトウェアにおいて 画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
前記特色名として所望の色を選択させるステップと、
前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
前記作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、
前記プリントデータで印刷するステップと、
前記印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウェアで指定された乾燥時間の経過を待つステップと、
乾燥後に前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを含む、プリントおよびカットを行なう方法。
【請求項3】
前記特色名は任意の色の名称を含む、諦求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
コンピュータにプリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なわせるプログラムであって、
グラフィックソフトウェアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
特色名として所望の色を選択させるステップと、
選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと
前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、
前記用紙を引き出すステップと、
前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを実行させるプログラム。
【請求項5】
コンピュータにプリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なわせる
プログラムであって、
グラフィックトウェアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
特色名として所望の色を選択させるステップと、
選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、
プリントデータで印刷するステップと、
印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウェアで指定された乾燥時問の経過を待つステップと、
乾燥後にカットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを実行させるプログラム。」

第5 請求人の主張及び証拠方法

請求人は、「特許第4336622号の特許請求の欄に記載された請求項1ないし5に記載された発明についての特許を無効とする。審判請求費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、無効理由の概要は以下のとおりであって、本件特許は無効とすべきである旨主張している。

1.訂正発明1、4の「用紙を引き出すステップ」に関して、単に「用紙を引き出す」では「用紙をどこから、どの程度引き出すのか」が不明であって、発明の詳細な説明にも用紙を引き出す処理の具体的な内容に関する説明はなく、したがって、本件特許に係る発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及び請求項4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されてものとはいえない。
よって本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
加えて、上記「用紙を引き出すステップ」については、構成が不明確であることも相俟って「用紙」を引き出すことが果たす働きや役割が不明であり、技術的意義が理解できず、そして、出願時の技術的意義を考慮すると発明を特定するための事項が不足していることが明らかである。
よって訂正発明1、4は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(以下、「無効理由1」という。)。

2.訂正された請求項1、4に係る発明に対する無効理由は、甲1号証の3を実施した発明又は甲1号証の3記載の発明と同一であり特許法第29条第1項第2号ないし第3号に該当して特許を受けることはできないというものと、甲1号証の3を実施した発明又は甲1号証の3記載の発明において、用紙を引き出す構成が少なくとも従来技術であることの一例として甲第6、8号証に照らして、用紙を引き出す処理に係る事項は設計事項であって、当業者において容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。(以下、「無効理由2」という。)。

3.訂正された請求項2、5に係る発明に対する無効理由は、甲1号証の3を実施した発明において、ソフトウェアで乾燥時間を指定する構成が少なくとも従来技術であることの一例としての甲第9号証に照らして、乾燥時間の指定に係る事項は設計事項であって当業者において容易に想到することができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものと、甲1号証の3記載の発明にインク乾燥の待ちに係る技術常識(例えば、甲第5号証、甲第6号証も適宜参酌。)、前記乾燥時間の指定に係る設計事項を適宜適用することによって、当業者において容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
(以下、「無効理由3」という。)。

4.訂正されたされた請求項3に係る発明に対する無効理由は、甲1号証の3を実施した発明ないし甲1号証の3に記録された発明に、前記用紙を引き出す処理に係る設計事項、前記乾燥時間の指定に係る設計事項、特色名の指定に係る設計事項を適宜適用することによって当業者において容易に想到することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない(以下、「無効理由4」という。)。

5.また、上記無効理由を立証するための証拠方法は、以下のとおりである。

(証拠方法)

甲第1号証の1:「Wasatch SoftRIP Version 4.5」のヘルプファイルをプリントしたもの。

甲第1号証の2:甲第1号証の日本語訳。

甲第1号証の3:「Wasatch SoftRIP Version 4.5」のソフトウェア、ヘルプファイルが記録されて販売されたソフトウェアCD-ROM。

甲第2号証の1:「Wasatch SoftRIP Version 4.5」(シリアルナンバー7212、2003年1月30日)の送付状。

甲第2号証の2:「Wasatch SoftRIP Version 4.5」(シリアルナンバー7212、2003年1月30日)のレジストレーションフォーム。

甲第3号証の1:「Wasatch SoftRIP Version 4.5」(シリアルナンバー9555、2002年12月16日)の送付状。

甲第3号証の2:「Wasatch SoftRIP Version 4.5」(シリアルナンバー9555、2002年12月16日)のレジストレーションフォーム。

甲第4号証:「Wasatch SoftRIP Version 4.5」(シリアルナンバー7212)の動作報告書。

甲第5号証:Roland DG社製のプリントおよびカット装置(CAMMJET CJ-500)のユーザマニュアル。
1頁末行に「Copyright 1999 ROLAND DG CORPORATION、末頁末行に「R2-991015」と表記されている。

甲第6号証:特開2000-190481号公報(公開日平成12年7月11日)。

甲第7号証:「Wasatch SoftRIP Version 4.5」を製造販売しているWasatch Computer Technology社社長の宣誓供述書。

甲第8号証:特開平11-221792号公報(公開日平成11年8月17日)。

甲第9号証:PX-7000/9000ユーザ-ズガイド
2002年11月22日改訂版Rev.02、末頁「改訂履歴」参照。

第6 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上記請求人の主張に対し、本件特許を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。

第7 本件無効理由についての当審の判断

1.無効理由1
請求項1、4の「用紙を引き出すステップ」とは、用紙を引き出すつまりプリントおよびカット装置内にある用紙を引っ張って外に出すことを意味する(乙1?4号証参照)ものであって、その記載自体は明確であるし、請求項1、4全体の記載から本件特許発明を明確に把握することができる。
また、「用紙を引き出す」ことの目的は請求項1、4の記載からは必ずしも明らかではないが、このことをもって本件特許発明が明確でないとする理由にはならない。
したがって、本件特許の請求項1、4は明確であるから、本件特許を無効理由1により無効とすることはできない。
また本件明細書の発明の詳細な説明には「【0031】 印刷後、RIPソフトウェアで指定されている乾燥時間の経過を待ち(S24)、その後に、用紙を引き出す(S25)。CPUは特色名で指定された輪郭カットデータのみをカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10に送出して、先に印刷した上に重ねて輪郭線のカットを行う(S26)。ここで、上記した乾燥時間は、印刷メディアによって異なるが、数分から数十分程度である。」と記載され、用紙が印刷された後、引き出されることが示されており、用紙がプリントおよびカット装置から引き出されることは当業者にとって自明の事項である。
また、一般に引き出すとは、「(1)中にあるものを引っ張って外に出す。(2)隠れているものを取り出してわかるようにする」(乙1号証)を意味するものであるから、これらの事項を踏まえると、印刷された部分がわかるようにプリントおよびカット装置の中から外に出すことであると当業者は理解することができる。
したがって、本件特許明細書の記載は、当業者においてその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、無効理由1により本件特許を無効とすることはできない。

2.主な各甲号証の記載について

(1)甲第1号証について
甲第1号証の3、および甲第1号証の2によれば、以下の事実が認められる。
上記第5.5のとおり、甲第2号証の1、甲第2号証の2、甲第3号証の1、甲第3号証の2にはそれぞれ、「Wasatch SoftRIP Version 4.5」が2003年1月30日と2002年12月16日に請求人に送付されたことが示されている。よって甲第1号証の3である「Wasatch SoftRIP Version 4.5」のソフトウェアおよびヘルプファイルが記録されたソフトウェアCD-ROMは、本件出願日前に頒布されたものである。
そして、平成27年1月23日の口頭審理において、 上記ヘルプファイルをプリントした甲1号証の1およびその日本語訳である甲1号証の2の内容が、編集、変更されたものではないことを確認した。
甲第1号の3証のヘルプファイルの画像には、頁は付されていないが、甲第1号証の3の画像を印刷して、用紙に付された頁(甲第1号証の2)を、便宜上、甲第1号証の3の頁として記載する。

ア.「When the Contour Cutting feature is enabled, SoftRIP will extract cutting paths from PostScript jobs created in Corel Draw, Adobe Illustrator and QuarkXpress. ・・・Paths created with a spot color name such as cutpath or cutcontour will be shown as an animated blue and white dashed lines on SoftRIP’s preview screen (see Illustration C1). When output to a digital cutter or print-and-cut inkjet device, the paths shown will be cut. Illustration C1 shows artwork created for a CD-ROM label using ordinary colors. The dashed blue lines indicate where the cutpath spot color was used. When this job is sent to a print-and-cut device, the color image will be printed, then the knife will cut out the label on the paths. 」
「ContourCutting機能が有効にされると、SoftRipはCorelDraw(登録商標)、AdobeIllustrator(登録商標)やQuarkXpress(登録商標)で作成されたPostScript(登録商標)ジョブからカッティングパスを抽出します。・・・・cutpathやcutcontourなどのスポットカラー名で作成されたパスは、SoftRipのプレビュー画面に点滅する青と白の破線(図C1を参照)で表示されます。デジタルカッターまたはプリント&カットインクジェット機で出力されると、表示されているパスが切り取られます。図C1は、CD-ROMラベル用に通常色を使って作成されたアートワークを表しています。このジョブがプリント&カット機に送られると、カラー画像が印刷され、ナイフがパスに沿ってラベルを切り取ります。」(Wasatch SoftRIPを使用したカッティング 1/2頁8?24行)(下線部は審判で付した。以下同じ。)

イ.「The following tech note will walk you through creating a CutPath to use with Wasatch SoftRIP, from Adobe Illustrator 8, 9 10.
4.To create a new Swatch you can click on the right arrow of the Swatch Window and select New Swatch.
5.The Swatch name must be CutPath.
6.The Color type must be Spot Color.
7.The Color mode may be set to any color space you choose. Whatever color you select, SoftRIP will replace this color with marching ants along the cut path. ・・・
11.Select the Stroke Color and then select the CutPath color swatch.
12.You can create your art work with the CutPath stroke around the art you wish to have cut out. 」
[以下の技術ノートでは、AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10から、WasatchSoftRIPで使用するCutPathを作成する方法を説明します。・・・
4.新しいスウォッチを作成するためには、SwatchWindowの右矢印をクリックしてNewSwatchを選択します。
5.スウォッチ名は必ずCutPathにします。
6.カラータイプは必ずSpotColorにします。
7.カラーモードは、どのようなカラースペースを選択して設定してもよいです。どの色を選択しても、SoftRIPがカット線上の色を「マーチングアント(点滅破線)」に変更します。・・・
11.Stroke Colorを選択してから、CutPathカラースウォッチを選びます。
12.切り取りたい箇所をCutPath線で囲むことにより、アートワークを作成できます。](Adobe Illustrator 8/9/10でCutPathを作成する 1/1頁7?23行)

ウ.「Cutting Devices
November 22, 2002
Currently Supported:
Roland CAMMJET CJ-400/500
Mimaki CG-130 Series
Allen Datagraph 800 Plus Series」
「カッティングデバイス
2002年11月22日
現在 Wasatch SoftRIPをサポートしている製品:
・Roland CAMMJET CJ-400/500
・Mimaki CG-130シリーズ
・Allen Datagraph 800プラスシリーズ
・Generic HPGL カッター(大半のメーカーと機種に対応)」(カッティングデバイス 1/1頁1?7行)

エ.甲第1号証発明(甲第1号証の3記載の発明)の認定

(ア)上記アの「カッティングパス」は、「ナイフがパスに沿ってラベルを切り取」るものであるのに対して、上記イの「WasatchSoftRIPで使用するCutPath」は、「切り取りたい箇所をCutPath線で囲む」ものであるから、上記アの「カッティングパス」と上記イの「WasatchSoftRIPで使用するCutPath」は同意である。

(イ)上記イの「マーチングアント(点滅破線)」は上記アの「点滅する青と白の破線(図C1を参照)」と同じものであり、上記イの「どの色を選択しても、SoftRIPがカット線上の色を「マーチングアント(点滅破線)」に変更」するとの記載から、「カッティングパス」には任意の色(どの色)が選択されるといえる。
よって、上記イの記載を踏まえると、AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10により、カッティングパスを作成することは、スウォッチ名をCutPathに設定し、カラータイプはSpotColorに設定し、任意の色を選択する手順を含んでいるといえる。

(ウ)上記アより、「PostScript(登録商標)ジョブ」は「AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10」で作成されるものであり、SoftRipは該「PostScript(登録商標)ジョブ」からカッティングパス(CutPath)を抽出することや、カラー画像が印刷され、ナイフがパスに沿ってラベルを切り取ることからみて、該「PostScript(登録商標)ジョブ」には「カラー画像データ」と「カッティングパス(CutPath)」を備えているといえる。また上記「SoftRip」と「WasatchSoftRIP」は同意である。

(エ)上記ア、イには、カラー画像の印刷と、ラベルを切り取りをするための各手順が記載されているので、カラー画像の印刷と、ラベルを切り取りをするための方法が記載されているといえる。

(オ)上記ア?ウの開示事項および上記(ア)?(エ)を総合すると、甲第1号証には、以下のとおりの発明つまり、甲第1号証の3記載の発明が示されていると認められる(以下「甲第1号証発明」という。)。

「AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10を操作して、スウォッチ名をCutPathに設定しカラータイプはSpotColorに設定し任意の色を選択する操作をおこない作成されたカッティングパスと、カラー画像データが含まれるPostScript(登録商標)ジョブをAdobeIllustrator(登録商標)8/9/10で作成し、WasatchSoftRIP(登録商標)は前記PostScript(登録商標)ジョブからカッティングパスを抽出するものであり、このジョブがプリント&カット機に送られると、カラー画像が印刷され、ナイフがパスに沿ってラベルを切り取る方法。」

オ 甲1号証の3を実施した発明の認定
甲第4号証によれば、以下のとおりの事項が記載されている。
「III 動作確認の概要
構成
下図の構成にてSoftRIPを使用してプリントカットを行った。各装置およびソフトウェアは、いずれも本件特許出願日(2004年5月26日)前に一般に販売されている表1に記載のものである。使用したプリント&カット装置「CAMMJET CJ-500」の写真も以下に示す。
」(1頁11行?2頁上欄)

上記構成図の「PC」とは上記表1の「『パソコン』と『Think Pad A21p』」のことであり、以下同様に「Illustrator v8.0」は「『グラフィックソフトウェア」と『Adobe Illustrator v8.0J』」であり、「SoftRIP v4.5」は「『RIP(Raster Image Process)ソフトウェア』と『Wasatch SoftRIP v4.5』」であり、「Windows98」は「『OS』と『Windows98』」であり、「『CAMMJET CJ-500』と『Print&Cut device』」は「『Roland CAMMJET CJ-500』と『プリント&カット装置』」である。
上記構成図のPC内部に示された「Illustrator v8.0」、「SoftRIP v4.5」及び「Windows98」は、これらのソフトウェアがPCにインストールされていることを示している。
上記構成図の「IEEE1284」とは、下記デジタル大辞泉によれば、主にプリンタ用のインターフェース規格であり。インターフェースとは、下記ASCII.jpデジタル用語辞典によれば、コンピューターと周辺機器を接続するための規格や仕様・・・ハードウェアでは、機器同士を接続するコネクターの規格を指すものであるので、上記構成図には「PC」と「Print&Cut device」がIEEE1284規格のコネクタによって接続されているといえる。

デジタル大辞泉
アイトリプルイー‐いちにはちよん【IEEE1284】
IEEE(米国電気電子学会)が制定した、パラレルポートのインターフェース規格。主にプリンター用。

ASCII.jpデジタル用語辞典
インターフェース
コンピューターと周辺機器を接続するための規格や仕様、またはユーザーがコンピューターなどを利用するための操作方法や概念のこと。ハードウェアでは、機器同士を接続するコネクターの規格を指す。ソフトウェアでは、プログラム間でデータをやり取りするために定められた仕様やAPIなどがある。人間がコンピューターを操作しやすくするための技術を、ヒューマンインターフェース、またはユーザーインターフェースと呼ぶ。パソコンでは、画面に表示されるメニューやボタンをキーボードやマウス、タッチパネルなどを使って操作するグラフィカル・ユーザーインターフェース(GUI)が採用されている。

よって、上記構成図と表1には、「AdobeIllustrator(登録商標)8とWasatchSoftRIP(登録商標)v4.5とWindows98をインストールしたパソコン(Think Pad A21p)と、プリント&カット装置(CAMMJET CJ-500)をIEEE1284規格のコネクタによって接続した構成」が開示されているといえる。

上記甲第4号証の開示事項および上記エを総合すると、甲1号証の3を実施した発明とは、以下のとおりの発明であると認められる(以下「甲第1号証実施発明」という。)。

「AdobeIllustrator(登録商標)8とWasatchSoftRIP(登録商標)v4.5とWindows98をインストールしたパソコン(Think Pad A21p)と、プリント&カット装置(CAMMJET CJ-500)をIEEE1284規格のコネクタによって接続した構成において、AdobeIllustrator(登録商標)8を操作して、スウォッチ名をCutPathに設定しカラータイプはSpotColorに設定し任意の色を選択する操作をおこない作成されたカッティングパスと、カラー画像データが含まれるPostScript(登録商標)ジョブをAdobeIllustrator(登録商標)8/9/10で作成し、WasatchSoftRIP(登録商標)v4.5は前記PostScript(登録商標)ジョブからカッティングパスを抽出するものであり、このジョブがプリント&カット機に送られると、カラー画像が印刷され、ナイフがパスに沿ってラベルを切り取る方法。」

上記のとおり、甲第1号証の3である「Wasatch SoftRIP Version 4.5」のソフトウェアおよびヘルプファイルが記録されたソフトウェアCD-ROMは、本件出願日前に頒布されたものであり、下記(2)で後記のとおり、Roland DG社製のプリントおよびカット装置(CAMMJET CJ-500)のユーザマニュアルである甲第5号証は、本件出願日前に頒布されたものである。
しかしながら、上記甲第1号証実施発明が、本件の出願前に公然実施された状態であったことを示す証拠は何ら提出されていないので、上記甲第1号証実施発明が、公然実施された状態であったものとは認められないが、さらに本件訂正発明が甲第1号証実施発明と同一であるか、また、甲第1号証発明が、甲第5、6、8、9号証発明に基づいて当業者が容易に発明することができたか否かについて検討する。

(2)甲第5号証
上記第5.5のとおり、甲第5号証には、「Copyright 1999 ROLAND DG CORPORATION」と「R2-991015」の表記があるので、甲第5号証は、本件出願日前に頒布されたものである。そして、甲第5号証には、以下のとおり記載されている。
「This sets the drying time for the material.For materials with low absorbency that are difficult to dry ,make the settinng for a longer time. When printing is followed by cutting.cutting is performed after waiting for the set time.」
「これは印刷物の乾燥時間を設定する。・・・印刷に続いてカッティングが行われるときには、カッティングは、設定時間の間待機した後に行われる。」(CAMMJET CJ-500 USER’S MANUAL 74頁)
上記第5.5のとおり、甲第5号証は、プリントおよびカット装置(CAMMJET CJ-500)のユーザマニュアルであるから、上記「設定」はプリントおよびカット装置の操作であり、同「印刷」、同「カッティング」は、プリントおよびカット装置の動作である。

上記から、甲第5号証には、以下のとおりの事項が示されていると認められる(以下「甲第5号証発明」という。)。
「印刷物の乾燥時間を設定し、印刷に続いてカッティングが行われるときには、カッティングは、設定時間の間待機した後に行われるプリントおよびカット装置。」

(3)甲第6号証
上記第5.5のとおり、甲第6号証の公開日は、平成12年7月11日であるから、甲第6号証は、本件出願日前に頒布されたものである。そして、甲第6号証には、以下のとおり記載されている。

「【0018】図2は、インクジェット記録装置100の側断面図である。プラテン201は、被記録材(メディア)であるロール紙202を上面に載置する。CPU21は、ロール紙202がロール211から引き出されてプラテン201上にセットされたことをメディアセンサ203により検出すると、吸引ファン204を回転させ、プラテン201上に設けられたメディアの吸引孔208からの吸引によりロール紙202をプラテン上に吸い付ける。なお、ロール211は、装置背面にスプール(後述)により保持されている。
【0019】ロール紙202は、グリッドローラ206とピンチローラ207によって駆動搬送されて、プラテン201上を移動する。プラテン201の上方には、プラテン201と平行に例えば2本の互いに平行なガイドシャフトが架設されている。ガイドシャフトには、スライド軸受けを介して往復移動自在にキャリッジが取り付けられており、キャリッジをガイドシャフトに沿って平行に移動し得るようにしている。このキャリッジには、インクを吐出するヘッド205が搭載されている。キャリッジは、キャリッジモータ(図4の34)およびベルト(図示せず)により、制御部20の制御に応じて動作し、搭載しているヘッド205をガイドシャフトに平行に往復移動させる。キャリッジの移動可能範囲の一端の画像形成領域外の退避位置に、前記回復系ユニット37が設けられている。
【0020】このような構成において、ヘッド205はキャリッジと共にガイドシャフトに沿って左右に移動する、このとき、図示していないノズルからインクを吐出し、ノズル幅分の画像を形成する。次にロール紙202はグリッドローラ206とピンチローラ207によってノズル幅分搬送される。この繰り返しで画像形成が行われる。
【0021】画像の形成終了後、図3に示すように、カッター溝209に沿ってカッター301を移動させることによりロール紙202は所定の長さにカットされる。カッター301は、キャリッジ上に搭載されており、図示しないカッター引き出し位置にキャリッジを移動させることにより刃の部分が引き出される構成となっている。また、刃の部分を引き出した状態でキャリッジを移動させることによりロール紙202をカットすることが可能となっている。
【0022】カッター301によるロール紙202のカットで、印字の終了した部分(以下、印字カット紙片またはメディア片)302と、印字前のロール紙202とが分離される。印字カット紙片302の吸引を行うことにより、インクの乾燥に必要な時間(インク乾燥期間)、印字カット紙片302を保持し、画像の保護を行う。」

上記から、甲第6号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第6号証発明」という。)。
「ロール紙202がロール211から引き出されてプラテン201上にセットされたことをメディアセンサ203により検出すると、吸引ファン204を回転させ、プラテン201上に設けられたメディアの吸引孔208からの吸引によりロール紙202をプラテン上に吸い付け、ヘッド205はキャリッジと共にガイドシャフトに沿って左右に移動しノズルからインクを吐出し、ノズル幅分の画像を形成し、次にロール紙202はグリッドローラ206とピンチローラ207によってノズル幅分搬送され、この繰り返しで画像形成が行われ、画像の形成終了後、カッター301を移動させることによりロール紙202は所定の長さにカットされ、印字の終了した部分(以下、印字カット紙片またはメディア片)302と、印字前のロール紙202とが分離され、印字カット紙片302の吸引を行うことにより、インクの乾燥に必要な時間(インク乾燥期間)、印字カット紙片302を保持し、画像の保護を行うインクジェット記録装置。」

(4)甲第8号証
上記第5.5のとおり、甲第8号証の公開日は、平成11年8月17日であるから、甲第8号証は、本件出願日前に頒布されたものである。そして、甲第8号証には、以下のとおり記載されている。

「【0007】次に、本発明のラベル作成装置によるラベル作成動作を説明する。ラベル作成動作の前に、操作者は記録部1のサーマルヘッド部11をプラテン12から、ラミネート加工部2の圧着ローラ21を搬送ローラ22から、さらに切断機部3のピンチローラ35を駆動ローラ36からそれぞれ離反させておく。次にシート材料40を搬送ローラ22まで引き出して、インクリボン13より巻き戻されたインクシートを介してサーマルヘッド11をプラテン12に圧接させるとともに、圧着ローラ21を搬送ローラ22に圧接して、引き出したシート材料40とラミネートフィルムを挟持させる。この状態で、図示しない駆動機構により搬送ローラ22を図の矢印方向に回転駆動して、シート材料40の先端部分が切断機部3のピンチローラ35および駆動ローラ36に達する位置まで搬送し、ピンチローラ35を駆動ローラ36に圧接してシート材料40の(搬送方向と直交する方向の)両端部を挟持させる。これで、ラベル作成装置は待機状態となる。
【0008】ラベル作成動作において、図示しない制御装置は、コンピュータ等の上位装置より送信される記録データに基づいて、搬送ローラ22を回転駆動してシート材料40を搬送するとともに、サーマルヘッド11に形成された複数の発熱抵抗素子を選択的に発熱駆動する。これにより、インクシート上に塗布されたインクが溶融されてシート材料40の表面上に転写され、所望の画像が形成される。記録済みのインクシートは、リボン巻き取り部14により順次巻き取られ、また、記録が行われたシート材料40はラミネート加工部2に搬送される。
【0009】記録部1により記録が行われたシート材料40は、圧着ローラ21によりラミネートフィルムを介して搬送ローラ22に押圧されているので、図示しない駆動機構により搬送ローラ22が回転駆動することにより、シート材料40は順次搬送されると同時に、その表面部分全体にラミネートフィルムが圧着されて、ラミネート加工が施される。記録、およびラミネート加工が行われたシート材料40は、切断機部3に搬送される。
【0010】制御装置は、切断データ(記録部1により記録を行った個々のラベルの外形データなど)に基づいて、駆動ローラ36の駆動機構、ホルダ32の上下動機構、キャリッジ33の駆動機構を制御して、シート材料40(ラミネート加工が施された粘着シート部分)を切断する。即ち、駆動ローラ36を正逆回転させてシート材料40を搬送方向に正逆移動させるとともに、同時にホルダ32の上下動およびキャリッジ33をシート材料40の搬送方向と直交する方向に移動させることにより、カッティングペン31をシート材料40に対して相対的に2次元方向に移動させる。さらにホルダ32を上下動させることにより、ホルダ32が下降してカッティングペン31がシート材料40に圧接されると、シート材料40が切断される。このように、シート材料40の(第1の方向への)移動、カッティングペン31の(第1の方向に直交する第2の方向への)移動をそれぞれ制御することにより、記録およびラミネート加工が施されたシート材料を所望の形状に切断することができる。以上のように、記録、ラミネート加工が施されたたシート材料40は、バッファ部32を経由して順次切断機部3に搬送され、切断機部3において各々外形加工が施されて、個々のラベルが作成される。」

上記から、甲第8号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第8号証発明」という。)。
「ラベル作成動作において、サーマルヘッド11に形成された複数の発熱抵抗素子を選択的に発熱駆動し、インクシート上に塗布されたインクが溶融されてシート材料40の表面上に転写され、所望の画像が形成され、記録が行われたシート材料40はラミネート加工部2に搬送され、シート材料40は順次搬送されると同時に、その表面部分全体にラミネートフィルムが圧着されて、ラミネート加工が施され、記録、およびラミネート加工が行われたシート材料40は、切断機部3に搬送され、制御装置は、切断データ(記録部1により記録を行った個々のラベルの外形データなど)に基づいて、駆動ローラ36の駆動機構、ホルダ32の上下動機構、キャリッジ33の駆動機構を制御して、シート材料40(ラミネート加工が施された粘着シート部分)を切断して、個々のラベルが作成されるラベル作成装置。」

(5)甲第9号証
上記第5.5のとおり、甲第9号証は、2002年11月22日に頒布されたことが示されているから、甲第9号証は、本件出願日前に頒布されたものである。そして、甲第9号証には、以下のとおり記載されている。
「EPSON PX-7000/9000 ユーザーズガイド」(表紙)、
「プリンタドライバの設定画面の開きかたやボタン名は、各アプリケーションソフトによって異なります。詳細は、各ソフトウェアの取扱説明書を参照してください。・・・
アプリケーションソフトを起動します。
[ファイル]メニューから[ページ設定](または[用紙設定]などの用紙設定関連コマンド)を選択します。・・・
Windows からの印刷」(28頁)、
「[用紙調整]ダイアログ
[手動設定]ダイアログで[用紙調整]ボタンをクリックすると、[用紙調整]ダイアログが開いて、用紙関連の以下の設定が行えます。エプソン純正専用紙以外用紙をお使いになる場合は、お使いになる用紙(ユーザー用紙)の特性に合わせて[用紙調整]ダイアログで設定してから印刷を行ってください。・・・
ヘッドパス毎の乾燥時間
インクが乾燥するまでプリントヘッドの往復移動を停止する時間(乾燥時間)を設定できます。インク乾燥時間は、スライドバーを左端(標準0秒)から右(最長+50)へ動かすか、ボックスに直接秒数(0.1秒単位)を入力して設定します(初期値:0秒)。」(49頁)

上記から、甲第9号証には、以下のとおりの発明が示されていると認められる(以下「甲第9号証発明」という。)。
「プリンタ EPSON PX-7000/9000において、紙の特性に合わせて用紙調整ができ、インクが乾燥するまでプリントヘッドの往復移動を停止する時間即ちヘッドパス毎の乾燥時間を設定できるプリンタ。」

3.本件訂正発明1について

(1)対比

ア. 本件訂正発明1と、甲第1号証発明を対比すると、
後者における「任意の色を選択」は、前者における「所望の色を選択」に相当し、以下同様に、「カッティングパス」は「『輪郭データ』と『カットデータ』」に、「カラー画像データ」は「『画像データ』と『プリントデータ』」に、「PostScript(登録商標)ジョブ」は「RIPが認識可能なデータ」に、「AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10」は「グラフィックソフトウェア」に、「WasatchSoftRIP((登録商標)」は「RIP」に、「プリント&カット機」は「プリントおよびカット装置」に、「カラー画像が印刷され、ナイフがパスに沿ってラベルを切り取る方法」は「プリントおよびカットを行なう方法」に、それぞれ相当する。

イ.後者の「AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10の操作においてスウォッチ名をCutPathに設定し」の「スウォッチ」とは、下記(ウ)によれば、カラーや濃度(色合い)、グラデーション、パターンに名前を付けたものであるから、「スウォッチ名をCutPathに設定」することは、色の名を「CutPath」とすることであるといえる。
また、後者の「AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10を操作して・・・カラータイプはSpotColorに設定し」の「SpotColor」とは、「特色」の意味(下記(ア)、(イ)参照。)であるので、上記「カラータイプはSpotColorに設定」することは、「カラータイプは特色に設定」することであるといえる。
また、後者の「カッティングパス」とは、「ナイフがパスに沿ってラベルを切り取る」ものであるから、前者の「画像の輪郭をカットするため」のものといえる。
よって、甲第1号証発明は、カラータイプを特色に設定し、該特色の名(スウォッチ名)を「CutPath」とした色に所望の色を選択するものであるから、前者の「画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、前記特色名として所望の色を選択させるステップ」を備えているといえる。

(ア)研究社 英和コンピューター用語辞典
spot color?【名詞】
スポットカラー, 特色《表示したい色のインクを使って実現する色; cf. process color》.

(イ)デジタル大辞泉
スポット‐カラー【spot color】
カラー印刷をするとき、特別に調合したインクで表される色。通常の色は、青緑色(cyan)、赤紫色(magenta)、黄色(yellow)、黒(black)の4色(CMYK)の割合を変えたプロセスカラーで表されるが、金、銀、蛍光色などはあらかじめ個別のインクが用いられる。特色。特練色。

(ウ)アドビ(adobe)社ホームページ、Illustrator /スウォッチの説明
「Illustrator /スウォッチの使用と作成
スウォッチについて
スウォッチとは、カラーや濃度(色合い)、グラデーション、パターンに名前を付けたものです。ドキュメントに関連付けられたスウォッチはスウォッチパネルに表示されます。スウォッチの表示方法には個別表示とグループ表示があります。
https://helpx.adobe.com/jp/illustrator/using/using-creating-swatches.html」

ウ.後者の「カッティングパス」は「任意の色が選択され」るものであるから、前者の「選択された所望の色を含む」といえる。
後者の「カッティングパスと、カラー画像データ」は、いずれの段階かで作成されるものである。
よって、甲第1号証発明は、「選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップ」を有するといえる。

エ.後者の「PostScript(登録商標)ジョブ」は、「カッティングパス(輪廓データ)と、カラー画像データ(画像データ)が含まれる」ものであるから、「カッティングパス(輪廓データ)と、カラー画像データ(画像データ)から「PostScript(登録商標)ジョブ」に変換されるといえる。
後者の「PostScript(登録商標)ジョブ」とは、RIPによって認識されるデータ(下記(ア)参照。)である。
後者の「AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10」は「PostScript(登録商標)ジョブ」を作成し、同「WasatchSoftRIP(登録商標)は前記PostScript(登録商標)ジョブからカッティングパスを抽出するものであ」るから、「PostScript(登録商標)ジョブ」は「AdobeIllustrator(登録商標)8/9/10」から「WasatchSoftRIP(登録商標)」へ送信されるといえる。
よって、甲第1号証発明は、「作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップ」を有するといえる。

(ア)デジタル大辞泉
リップ【RIP】[raster image processor]
《raster image processor》PostScriptのデータをビットマップに展開するためのハードウエア。同じ機能をもたせたソフトウエアRIPもある。

オ.上記エ.のとおり、後者の「PostScript(登録商標)ジョブ」は、「カッティングパス(輪廓データ)と、カラー画像データ(画像データ)から変換されたものである。
後者の「PostScript(登録商標)ジョブ」は、「カッティングパスと、カラー画像データが含まれる」ものであり、WasatchSoftRIP(登録商標)は前記PostScript(登録商標)ジョブからカッティングパスを抽出するものである。
「プリント&カット機」は、カラー画像を印刷し、ナイフがパスに沿ってラベルを切り取るものであるから、該パス(カッティングパス)はWasatchSoftRIP(登録商標)が前記PostScript(登録商標)ジョブから抽出したものである。
そして、上記エ.(ア)のとおり、RIPとはPostScriptのデータをビットマップ(画像データ)に展開するものであることを勘案すると、「プリント&カット機」で印刷されるカラー画像のデータは、上記パス(カッティングパス)と同様に、WasatchSoftRIP(登録商標)が前記PostScript(登録商標)ジョブから抽出されたものであると解される。
そして、上記ア.のとおり、後者の「カッティングパス」、「カラー画像データ」はそれぞれ前者の「『輪郭データ』と『カットデータ』」、「『画像データ』と『プリントデータ』」に相当するから、甲第1号証発明は、「RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップ」を有するといえる。

カ.したがって、両者は、
「プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう方法であって、
グラフィックソフトウェアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
前記特色名として所望の色を選択させるステップと、
前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
前記作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、
前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、
前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを含む、プリントおよびカットを行なう。」点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本件訂正発明1は、「用紙を引き出すステップ」を備えるのに対し、甲第1号証発明は、そのようなものは備えていない点。

(2)判断
そうすると、甲第1号証発明は、上記相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を具備していない。
したがって、本件訂正発明1が、甲第1号証発明であるとすることはできない。

上記相違点1について以下検討する。
甲第6号証発明は、「ヘッド205はキャリッジと共にガイドシャフトに沿って左右に移動しノズルからインクを吐出し、ノズル幅分の画像を形成し、次にロール紙202はグリッドローラ206とピンチローラ207によってノズル幅分搬送され、この繰り返しで画像形成が行われ、画像の形成終了後、カッター301を移動させることによりロール紙202は所定の長さにカットされ」るものであり、甲第8号証発明は「サーマルヘッド11に形成された複数の発熱抵抗素子を選択的に発熱駆動し、インクシート上に塗布されたインクが溶融されてシート材料40の表面上に転写され、所望の画像が形成され、記録が行われたシート材料40はラミネート加工部2に搬送され、シート材料40は順次搬送されると同時に、その表面部分全体にラミネートフィルムが圧着されて、ラミネート加工が施され、記録、およびラミネート加工が行われたシート材料40は、切断機部3に搬送され」るものであって、つまり、印刷を行う行程において用紙が搬送されるものであって、本件訂正発明1のように印刷が終わった後に用紙を引き出すものではないから、上記相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項は備えていない。
そして、甲第1号証発明は、Wasatch SoftRIPVersion 4.5のヘルプファイルであって、甲第1号証発明の課題等に関する事項は示されておらず、また甲第1号証発明の課題を立証する証拠も存在しないから、甲第1号証発明に、甲第6、8号証発明を適用する動機付けも見出せないし、また相違点1に係る本願発明の発明特定事項が設計的事項とする根拠もない。
また甲第5、9号証も、それぞれ「印刷物の乾燥時間を設定し、印刷に続いてカッティングが行われるときには、カッティングは、設定時間の間待機した後に行われる」、「紙の特性に合わせて用紙調整ができ、インクが乾燥するまでプリントヘッドの往復移動を停止する時間即ちヘッドパス毎の乾燥時間を設定できる」ものであるから「用紙を引き出す」ことを備えるものではない。
したがって、甲第1号証発明に相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たということはできない。

(3)小括

よって、甲第1号証発明において、上記相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えるものとすることが、当業者にとって容易に想到し得るものではないから、本件訂正発明1についての特許は、無効理由2により無効とすることはできない。

4.本件訂正発明2について

(1)対比

本件訂正発明2と甲第1号証発明を対比すると、

上記3.で検討したと同様に、両者は、

「プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう方法であって、
グラフィックソフトウェアにおいて 画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
前記特色名として所望の色を選択させるステップと、
前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
前記作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪廓データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、
前記プリントデータで印刷するステップと、
乾燥後に前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを含む、プリントおよびカットを行なう方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点2]
本件訂正発明2は、「RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップ」と、「前記印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウェアで指定された乾燥時間の経過を待つステップ」を備えるのに対し、甲第1号証発明は、そのようなものは備えていない点。

(2)判断

上記相違点2について以下検討する。
2.(2)で示したとおり、甲第5号証発明において印刷物の乾燥時間を設定することは、プリントおよびカット装置の操作として行うものであり、本件訂正発明2のように「RIPソフトウェア」で「乾燥時間」を指定するものではないから、上記相違点2に係る本件訂正発明2の発明特定事項は備えていない。
甲第9号証発明の、「プリンタ EPSON PX-7000/9000において、紙の特性に合わせて用紙調整ができ、インクが乾燥するまでプリントヘッドの往復移動を停止する時間即ち、ヘッドパス毎の乾燥時間)を設定できるプリンタ」について、上記の「ヘッドパス」とは、プリントヘッドが往復動しながらプリントするシリアル型のインクジェットプリンタにおいて、前記往復動の一行程のことを指すので、上記「ヘッドパス毎の乾燥時間」とは、プリント中のプリントヘッドの往復動作毎にヘッドを停止させる時間のことであり、本件訂正発明2のように印刷が終了した後に乾燥時間を設けるものではないから、上記相違点2に係る本件訂正発明2の発明特定事項は備えていない。
そして、甲第1号証発明は、Wasatch SoftRIPVersion 4.5のヘルプファイルであって、甲第1号証発明の課題等に関する事項は示されておらず、また甲第1号証発明の課題を立証する証拠も存在しないから、甲第1号証発明に、甲第5、9号証発明を適用する動機付けも見出せないし、また相違点2に係る本願発明の発明特定事項が設計的事項とする根拠もない。
また甲第6、8号証も、それぞれ、「ヘッド205はキャリッジと共にガイドシャフトに沿って左右に移動しノズルからインクを吐出し、ノズル幅分の画像を形成し、次にロール紙202はグリッドローラ206とピンチローラ207によってノズル幅分搬送され、この繰り返しで画像形成が行われ、画像の形成終了後、カッター301を移動させることによりロール紙202は所定の長さにカットされ」るもの、「サーマルヘッド11に形成された複数の発熱抵抗素子を選択的に発熱駆動し、インクシート上に塗布されたインクが溶融されてシート材料40の表面上に転写され、所望の画像が形成され、記録が行われたシート材料40はラミネート加工部2に搬送され、シート材料40は順次搬送されると同時に、その表面部分全体にラミネートフィルムが圧着されて、ラミネート加工が施され、記録、およびラミネート加工が行われたシート材料40は、切断機部3に搬送され」るものであって、つまり、印刷を行う行程において用紙が搬送されるものであるから、「乾燥時間」を指定するものではない。
したがって、甲第1号証発明に相違点2に係る本件訂正発明2の発明特定事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たということはできない。

(3)小括

よって、甲第1号証発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明2の発明特定事項を備えるものとすることが、当業者にとって容易に想到し得るものではないから、本件訂正発明2についての特許は、無効理由3により無効とすることはできない。

5.本件訂正発明3?5について
(1)本件訂正発明3?5について検討すると、本件訂正発明3は、本件訂正発明1、2を引用するものであって、上記3、4のとおり、本件訂正発明1、2が、当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に本件訂正発明3は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(2)本件訂正発明4、5は「プログラム」に係る発明であるのに対して、本件訂正発明1、2は「方法」に係る発明である以外、本件訂正発明4、5はそれぞれ本件訂正発明1、2と発明特定事項に異なるところはない。
よって、本件訂正発明4、5についての特許は、それぞれ上記3、4で示した本件訂正発明1、2に対すると同じ理由で無効とすることはできない。

(2)小括

よって、本件訂正発明3?5についての特許は、無効理由2?4により無効とすることはできない。

6.甲1号証実施発明について
上記2.(1)オで示したように、甲第1号証実施発明は、甲第1号証発明に「AdobeIllustrator(登録商標)8とWasatchSoftRIP(登録商標)v4.5とWindows98をインストールしたパソコン(Think Pad A21p)と、プリント&カット装置(CAMMJET CJ-500)をIEEE1284規格のコネクタによって接続した構成」が加わった以外は甲第1号証発明と異なるものではない。
してみると、甲第1号証発明と甲第1号証実施発明とに実質的な差異はない。
よって上記3、4、5で示した判断と同じ理由で、本件訂正発明1?5についての特許は、無効理由2?4により無効とすることはできない。

第8 むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件訂正についての特許を無効にすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プリントおよびカットを行う方法ならびにプログラム
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷、サイン、グラフィックアーツなどで、シール・ラベルを作成する場合に使用するプリントおよびカットを行う方法ならびにプログラムに関し、特に、容易にシールラベル等が作成できるプリントおよびカットを行う方法ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリントおよびカットが可能な装置がたとえば特許第2905074号公報に開示されている。同公報によれば、プリントとカットの工程が別々の工程で行なわれるため、それぞれの工程用に異なるデータが別々に準備されていた。
【特許文献1】特許第2905074号公報(段落番号0023等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のプリントおよびカットが可能な装置は上記のように構成されていたため、プリントとカットに用いるデータを別々に準備する必要があるとともに、プリントとカットのための位置あわせをする必要があった。
【0004】
また、プリントとカットを同一機器で行える複合機用のRIP(Raster Image Processor)やプリント&カット対応のウインドウズドライバなどでは、輪郭カット線の色指定により、輪郭カット線を認織していた。
【0005】
この場合には、プリントおよびカットが可能な複合機線分の色により認識していたため、RIPやドライバ側で指定されている色と完全に合わせる必要があり、カラーマネージメントの設定によってはカット線として認識されない場合があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、プリントおよびカットが簡単にできるよう、画像のプリントと輪郭カット線とを容易に準備できるプリントおよびカット方法ならびにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる、プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう方法は、グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、特色名として所望の色を選択させるステップと、選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、前記用紙を引き出すステップと、前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを含む。
【0008】
グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させ、その特色名として所望の色を選択させる。選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成し、作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信し、RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するため、輪郭カット線の認識が確実に行われるプリントおよびカット方法を提供できる。また、従来はYMCKの4版とカット用の版の5版が必要となる場合があったが、分版などの特殊な出力を必要としないで、通常の出力方法で容易にプリントおよびカットが実現できる。
【0009】
この発明にかかる、プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう他の方法は、プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう方法であって、グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、前記特色名として所望の色を選択させるステップと、前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、前記作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップと、作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、前記プリントデータで印刷するステップと、前記印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウェアで指定された乾燥時間の経過を待つステップと、乾燥後に前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを含む。
【0010】
プリントデータの印刷後に所定の時間乾燥させ、その後に輪郭カットを行う。その結果、確実に輪郭カットが可能になる。
【0011】
さらに好ましくは、特色名は任意の色の名称を含む。
【0012】
この発明の他の局面においては、コンピュータにプリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なわせるプログラムである。プログラムは、グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を準備するステップと、特色名として所望の色を選択させるステップと、選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、前記用紙を引き出すステップと、前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを実行させる。
【0013】
他のプログラムは、コンピュータにプリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なわせるプログラムであって、グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、特色名として所望の色を選択させるステップと、選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップと、作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、プリントデータで印刷するステップと、印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウェアで指定された乾燥時間の経過を待つステップと、乾燥後にカットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを実行させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施の形態に係るプリントおよびカットを行う方法が適用される、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタの全体構成を示す概略図である。
【0015】
カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10は、後に説明する、パソコン等からの指示によって、用紙上に所望の画像を印刷し、それカッティングヘッドに設けられたカッターで切断する。図1を参照して、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10は、本体11と本体11を支持する脚18とを含む。本体11は、印刷用のインクを出力するインクジェットヘッド15と、インクジェットヘッド15で描かれた画像の輪郭等を切断するカッタを有するカッティングヘッド16と、インクジェットヘッド15を図中左右方向の副走査方向に移動させる際のガイドとなる直動レール14と、本体11の一方端部に設けられた操作パネル13と、本体11の両側端部に設けられたサイドカバー12とを含む。
【0016】
操作パネル13には、操作状態を表示する表示部と、インクジェットヘッド15およびカッティングヘッド16の位置を指定するカーソルキーや、画像データの信号に基づいて画像の作成または切り抜きを開始すべき所定部位の領域を指定するための開始領域設定キーや、設定された開始領域からの画像の作成または切り抜きを開始するための作動開始キーなどが設けられている。
【0017】
本体11の前面には、フロントカバー21が設けられ、本体11のインクジェットヘッド15の下部には、プラテン20が設けられている。本体11の左端部には、インクジェットヘッド15での印字時に図示のない用紙をプラテン20上でピンチロール(図示無し)で挟むためのピンチロールレバー19が設けられている。
【0018】
インクジェットヘッド15は、それぞれが黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のインクを出力する図示のないインクジェットノズルを有する。
【0019】
図2は外部のパソコン30とカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10との接続状態を示す図である。図2を参照して、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10には、外部に設けられたパソコン30から印刷データおよびカットデータが出力され、印刷データに基づいて画像が図示のない用紙上に印刷され、カットデータによって、印刷された画像がカットされる。
【0020】
すなわち、パソコン30には、図示のない記憶装置やメモリ等が設けられ、そこに、所望の画像を作成するためのグラフィックソフトウエア31が設けられている。ユーザはこのグラフィックソフトウエア31で所望の画像を作成し、同時に作成した画像をカットする色を指定し、それでもって、所望の輪郭切断用のカット線を作成する。その後、画像データおよびカット線データとがRIP32へ送られる。なお、ここではRIP32がパソコン30の内部にソフトウエアとして含まれるように記載しているが、これに限らず、RIP32はパソコン30とは別置きのハードウエアRIPとして具体化されてもよい。
【0021】
次にグラフィックソフトウエア31における処理について説明する。図3はグラフィックソフトウエア31における図示のないCPUの処理手順を示すフローチャートである。グラフィックソフトウエア31は任意の画像を作成できるソフトウエアであり、画像の作成だけでなく、その画像をカットする輪郭線を描くことができる。
【0022】
図3を参照して、グラフィックソフトウエア31においては、輪郭カット用の「特色名」の入力が可能である(S11)。ユーザはこの「特色名」を入力すればそれによって画像のカット用の輪郭線を作成できる。
【0023】
ここで、特色名としては輪郭カット線用の特色名ライブラリとして準備されてもよい。具体的なカット用の特色名としては、「CutContour」、「Cutpath」、「CutLine」等を使用する。このような名称を付すのは、CPUでの理解が容易であるためである。他に、「CutContour カット線」のように先頭の文字列が一致する場合もカット腺として認識するようにしてもよい。
【0024】
ユーザは所望の画像を作成した後、その画像をカットするための輪郭線を描く「特色名」の色を選択する(S12)。ここで「特色名」として選択するのは、他の画像データと異なるということを明示するためと、後に説明するRIPにおいてそのデータをベクトルデータに変換させるためである。
【0025】
次いで、ユーザは所望の画像を作成し、指定した特色名で輪郭線を作成する(S13)。その後、CPUは画像データおよび特色データをポストスクリプトデータとしてRIP32へ送信する(S14)。この「特色名」として指定される色は特に限られるものではなく、任意の色を「特色名」として指定できる。
【0026】
図4は、パソコン30に接続されたディスプレイの画面上で、特色名を設定する場合の画面表示例を示す図である。
【0027】
図4を参照して、輪郭カット用の特色名として、所望の名前を特色名入力欄41に入力するとともに、そのための所望の色を色選択部42で選択する。ここで、特色名としては、上記した名称を指定するのが好ましい。特色名は、キーボードから入力するようにしてもよいし、入力欄41にポップアップ式に表示し、そこから選択できるようにしてもよい。
【0028】
図4の右下には、輪郭カット用の特色名として、「CutContour」43が色Aで指定されている状態を示している。図の中央部に表示された画像において、文字ならびに線46および47で示す部分が、所望の選択された色で形成され、線45はカット用輪郭線として、色Aで表示される。
【0029】
ここで、ソフトウエアは、アドビイラストレータ(登録商標)などのグラフィックソフトウェアであり、輪郭カット線用の特色名を持った特色ライブラリを用意するのが好ましい。
【0030】
次にRIPにおける処理について説明する。図5はRIPにおける処理手順を示すフローチャートである。図5を参照して、RIP32ではグラフィックソフトウエア31から送信されてきたポストスクリプトデータを受信する(S21)。次いで特色名をもとに輪郭カットデータと印刷データとを分離し(S22)、データ中の特色名で指定された輪郭カットデータ以外のデータを印刷するために(S23)、印刷データをカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10に送信する。
【0031】
印刷後、RIPソフトウェアで指定されている乾燥時間の経過を待ち(S24)、その後に、用紙を引き出す(S25)。CPUは特色名で指定された輪郭カットデータのみをカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10に送出して、先に印刷した上に重ねて輪郭線のカットを行う(S26)。ここで、上記した乾燥時間は、印刷メディアによって異なるが、数分から数十分程度である。
【0032】
上記実施の形態においては、グラフィックソフトウエアとRIPとを別のソフトウエアとして説明したが、これに限らず、同一のソフトウエア内で処理するようにしてもよい。
【0033】
上記実施の形態においては、RIPをパソコンに設けた場合について説明したが、これに限らず、RIPをカッティングヘッド付きインクジェットプリンタに設けてもよい。
【0034】
以上のように、この発明によれば、印刷データと特色名で指定された輪郭カットのためのベクタデータを単一のデータに含んでグラフィックソフトウエアで準備できるため、印刷データとカット用データとを別々のポストスクリプトデータとして作成する必要が無い。
【0035】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明に係るプリントおよびカット方法は、グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名とその色とを入力させ、入力された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成し、作成された画像データおよび輪郭データをRIPにおいてプリントデータおよびカットデータを作成するため、輪郭カット線の認識が確実に行われるため、プリントおよびカット方法として有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】カッティングヘッド付きインクジェットプリンタを示す外観図である。
【図2】外部パソコンとカッティングヘッド付きインクジェットプリンタとの接続状態を示す図である。
【図3】グラフィックソフトウエアにおける動作を示すフローチャートである。
【図4】パソコンに接続されたディスプレイの画面上で、特色名を設定する場合の画面表示例を示す図である。
【図5】RIPにおける処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
10 カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ、11 本体、12 サイドカバー、13 操作パネル、14 直動レール、15 インクジェットヘッド、16 カッティングヘッド、18 脚、19 ピンチロールレバー、20 プラテン、21 フロントカバー、30 パソコン、31 グラフィックソフトウエア、32 RIP。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう方法であって、
グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
前記特色名として所望の色を選択させるステップと、
前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
前記作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、
前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、
前記用紙を引き出すステップと、
前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを含む、プリントおよびカットを行なう方法。
【請求項2】
プリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なう方法であって、
グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
前記特色名として所望の色を選択させるステップと、
前記選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
前記作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
前記RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータを前記プリントおよびカット装置へ送信するステップと、
前記プリントデータで印刷するステップと、
前記印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウェアで指定された乾燥時間の経過を待つステップと、
乾燥後に前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを含む、プリントおよびカットを行なう方法。
【請求項3】
前記特色名は任意の色の名称を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
コンピュータにプリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なわせるプログラムであって、
グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
特色名として所望の色を選択させるステップと、
選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、
前記プリントデータで用紙に印刷するステップと、
前記用紙を引き出すステップと、
前記カットデータに基づいて輪郭のカットを行なわせるステップとを実行させるプログラム。
【請求項5】
コンピュータにプリントおよびカット装置においてプリントおよびカットを行なわせるプログラムであって、
グラフィックソフトウエアにおいて、画像の輪郭をカットするための特色名を入力させるステップと、
特色名として所望の色を選択させるステップと、
選択された所望の色を含む色で画像データおよび輪郭データを作成させるステップと、
作成された画像データおよび輪郭データをRIPが認識可能なデータに変換して送信するステップと、
RIPにおいて、変換された画像データおよび輪郭データからプリントデータおよびカットデータを作成するステップと、
RIPソフトウェアで乾燥時間を指定するステップと、
作成されたプリントデータおよびカットデータをプリントおよびカット装置へ送信するステップと、
プリントデータで印刷するステップと、
印刷されたプリントデータが乾燥するまで待つステップであって、前記RIPソフトウェアで指定された乾燥時間の経過を待つステップと、
乾燥後にカットデータに基づいて輪郭のカットを行わせるステップとを実行させるプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-03-30 
結審通知日 2015-04-01 
審決日 2015-05-15 
出願番号 特願2004-155694(P2004-155694)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (B41J)
P 1 113・ 536- YAA (B41J)
P 1 113・ 537- YAA (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 孝明  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
畑井 順一
登録日 2009-07-03 
登録番号 特許第4336622号(P4336622)
発明の名称 プリントおよびカットを行う方法ならびにプログラム  
代理人 後藤 高志  
代理人 古市 昭博  
代理人 佐藤 和彦  
代理人 後藤 高志  
代理人 村瀬 一美  
代理人 酒匂 禎裕  
代理人 古市 昭博  
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