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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1304315
審判番号 不服2014-15035  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-31 
確定日 2015-08-12 
事件の表示 特願2012-531284「ディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日国際公開、WO2011/038922、平成25年 2月28日国内公表、特表2013-506589〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2010(平成22)年10月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年10月2日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成24年3月30日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出された後、平成24年5月28日に特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出され、平成25年11月22日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年3月25日付けで拒絶査定がされ、平成26年7月31日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年3月9日に上申書が提出されたものである。

第2.平成26年7月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年7月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成26年7月31日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正前の(すなわち、平成26年2月24日提出の手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の下記(イ)の記載へと補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
車両用のディスプレイ装置(10)であって、
前記ディスプレイ装置(10)は、前記車両の運転状態情報に従って色彩情報(14)を表示するように構成され、
前記運転状態情報は、前記車両の現在の燃料消費を示し、
前記ディスプレイ装置(10)は、車両ディスプレイシステムの速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置を含み、
前記色彩情報(14)は、前記速度ディスプレイ装置及び前記rpmディスプレイ装置の有色の背面照明と、前記速度ディスプレイ装置及び前記rpmディスプレイ装置の外に設置される有色のシンボルとを含むことを特徴とするディスプレイ装置(10)。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
車両用のディスプレイ装置(10)であって、
前記ディスプレイ装置(10)は、前記車両の運転状態情報に従って色彩情報(14)を表示するように構成され、
前記運転状態情報は、前記車両の現在の燃料消費を示し、
前記ディスプレイ装置(10)は、車両ディスプレイシステムの速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置を含み、
前記色彩情報(14)は、前記速度ディスプレイ装置及び前記rpmディスプレイ装置の有色のポインタ及び有色の背面照明と、前記速度ディスプレイ装置及び前記rpmディスプレイ装置の外に設置される有色のシンボルであって前記運転状態情報を色彩符号化する有色のシンボルとを含み、
前記ディスプレイ装置(10)は、独立制御可能な色彩光源を含み、前記独立制御可能な色彩光源は、少なくとも2つの異なる色彩を放射するように構成され、前記独立制御可能な色彩光源は、前記有色のポインタ、前記有色の背面照明及び前記有色のシンボルの色彩を変化させるように構成されることを特徴とするディスプレイ装置(10)。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「色彩情報」に関し、「速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置の有色の背面照明」に加えて、「速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置の有色のポインタ」を含む旨、及び「速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置の外に設置される有色のシンボル」が、「運転状態情報を色彩符号化する有色のシンボル」である旨を限定するとともに、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「ディスプレイ装置」が、「独立制御可能な色彩光源を含み、該独立制御可能な色彩光源は、少なくとも2つの異なる色彩を放射するように構成され、該独立制御可能な色彩光源は、有色のポインタ、有色の背面照明及び有色のシンボルの色彩を変化させるように構成される」旨を限定することを含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-1 引用文献
(1)引用文献の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2007-256158号公報(以下、「引用文献」という。)には、「燃費表示装置」に関し、図面とともに、例えば、次のような記載がある。

(ア)「【0001】
本発明は、移動体に設置される燃費表示装置に関し、より詳細には、移動体の運転者に対し、燃費状態に関する情報を注視させることなく燃費状態を認識させる燃費表示装置に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0013】
図1は、本発明に係る燃費表示装置の基本構成を示すブロック図であり、燃費表示装置1は、制御部10、表示手段11および発光手段12を有し、車速センサ2およびエンジンコントローラ3に接続される。
…(中略)…
【0016】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、NVRAM(Non-Volatile RAM)、ROM(Read Only Memory)等を有するコンピュータであり、燃費演算手段100、燃費表示制御手段101および発光制御手段102を有する。
【0017】
燃費演算手段100は、車速センサ2から受信した車輪の回転速度に所定の係数(車輪の円周等)を乗じて得られる所定時間(例えば、0.1秒)当りの移動距離と、エンジンコントローラ3から受信した点火時期(周期)および燃料噴射量に関するデータから得ら
れる所定時間(例えば、0.1秒)当りの燃料噴射量とから、瞬間燃費を算出する手段である。
【0018】
ここで、「瞬間燃費」とは、所定の短い時間における燃費をいい、所定の短い時間は、走行状態やアクセルワークに応じて時々刻々と表示値を変化させるのに十分短い時間であることとし、例えば2秒とする。
…(中略)…
【0021】
燃費表示制御手段101は、表示手段11(例えば、液晶ディスプレイ)に燃費状態を表示させる手段であり、例えば、デジタル表示、アナログ表示、バーグラフ表示で燃費状態を画面上に表示させ、車速センサ2およびエンジンコントローラ3からの信号に基づいて燃費演算手段100が算出した瞬間燃費や平均燃費の値に応じて、液晶ディスプレイ全体または液晶ディスプレイにおける所定の画像の輝度や色調を変更したり、階段状バーグラフの表示段数を変更させたりしながら燃費状態を表示させるようにする。
【0022】
発光制御手段102は、発光手段12における発光を制御する手段であり、例えば、車速センサ2およびエンジンコントローラ3からの信号に基づいて燃費演算手段100が算出した瞬間燃費や平均燃費の値に応じて、発光手段の輝度や色調を変更させる。
…(中略)…
【0026】
発光手段12は、光を発する手段であり、例えば、アクリルやポリカーボネート等の合成樹脂、ガラス等で形成され、内部や表面に単色のLEDを備えることで輝度の変更が可能な照明装置があり、或いは、内部や表面に赤、緑、青の3色LEDで構成され色調の変更が可能な照明装置がある。
【0027】
また、発光手段12は、例えば、直線形、円形、楕円形、矩形、円環、楕円環、矩形環、或いは、意匠を凝らした複雑な形状を有し、液晶ディスプレイの枠やアナログメータの枠を構成してもよく、運転者が運転中に発光手段12から発される光を視界の一部で認識できるよう、インストルメントパネル、ダッシュボード、サンバイザー等に独立の部品(例えば、LED)として設置されてもよい。或いは、発光手段12は、ステアリングホイール、シフトノブ、ウインカーレバー等の部材自体やその表面を発光させるものであってもよく、室内灯であってもよい。さらには、これらを組み合わせた複数の発光体から構成されていてもよい。
【0028】
図2は、表示手段11および発光手段12が配置されるインストルメントパネルPの概略図である。インストルメントパネルPは、燃料残量計M1、速度計M2、回転計M3および水温計M4を有し、回転計M3の中央部に表示手段11が配置され、速度計M2および回転計M3の外枠に円環状の発光手段12が配置されている。
【0029】
図3は、表示手段(液晶ディスプレイ)11に表示される画像の例であり、画面左上部に発光手段12の形状を表すシンボル画像Gが表示され、画面中央部に燃費状態を示すバーグラフBが表示される。なお、シンボル画像Gは、省略されてもよい。表示手段11の制約により表示できない場合も考えられ、係る場合には、表示手段11に表示される画像を極力簡略化する必要があるからである。」(【0013】ないし【0029】)

(ウ)「【0046】
次に、図5を参照しながら燃費表示装置1の別の実施例について説明する。
【0047】
図5は、燃費状態に応じて色調を変更させるカラー表示の液晶ディスプレイ11の例を示す図であり、図5(A)は、燃費が5Km/L未満の場合、図5(B)は、燃費が5Km/L以上10Km/L未満の場合、図5(C)は、燃費が10Km/L以上15Km/L未満の場合、および、図5(D)は、燃費が15Km/L以上の場合をそれぞれ表す。
【0048】
燃費が5Km/L未満の場合、燃費表示装置1は、図5(A)に示すように、燃費表示制御手段101によりバーグラフB(階段状の外枠のみが表示される。)と発光手段12を模したシンボル画像Gとを所定の色調(色の濃淡・明暗・強弱などの具合をいう。ここでは、例えば、赤色とする。)に制御し、それに同調させて、発光制御手段102により発光手段12の色調を液晶ディスプレイ11におけるバーグラフBおよびシンボル画像Gと同じになるように制御する。
【0049】
また、燃費が5Km/L以上10Km/L未満の場合、燃費表示装置1は、図5(B)に示すように、燃費表示制御手段101によりバーグラフBとシンボル画像Gとを図5(A)の場合とは異なる色調(例えば、黄色とする。)に制御し、それに同調させて、発光制御手段102により発光手段12の色調を黄色に制御する。
【0050】
燃費が10Km/L以上15Km/L未満の場合、および、燃費が15Km/L以上の場合も同様に、燃費表示装置1は、燃費表示制御手段101によりバーグラフBおよびシンボル画像Gの色調を段階的に変更させるよう制御しながら(例えば、緑色、青色と順番に変更させる。)、それに同調させて、発光制御手段102により発光手段12の色調も緑色、青色といった具合に段階的に変更させるよう制御する。なお、色調はグラデーションにより無段階に変更させるようにしてもよい。
【0051】
また、燃費表示装置1は、一定の規則性を維持する限り、バーグラフBとシンボル画像Gとが別々の色調や輝度になるように制御してもよく、バーグラフBやシンボル画像Gの色調や輝度と発光手段12の色調や輝度とが異なるように制御してもよい。同様に、燃費表示装置1は、バーグラフBの色調や輝度を固定し、シンボル画像Gの色調や輝度のみを変更させるようにしてもよく、発光手段12の色調を変更させず輝度のみを変更させるようにしてもよい。また、燃費表示装置1は、バーグラフBおよびシンボル画像Gの色調や輝度を固定しながら、発光手段12の色調や輝度を変更させるようにしてもよい。」(【0046】ないし【0051】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)並びに図1、図2、図3及び図5の記載から、引用文献には次の事項が記載されていることが分かる。

(エ)引用文献の上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図1、図2、図3及び図5には、燃費表示装置1とインストルメントパネルPが記載されており、上記(1)(イ)の段落【0013】及び【0028】並びに図1によれば、燃費表示装置1が有する表示手段11及び発光手段12は、インストルメントパネルP上に配置されていることが分かる(燃費表示装置1とインストルメントパネルPは一体のものであるとして、以下、まとめて「表示装置」と呼ぶこととする。)。

(オ)上記(1)(ア)ないし(ウ)の記載から、引用文献に記載された表示装置において、燃費表示装置1は、移動体の燃費状態として瞬間燃費を表示し、該瞬間燃費に応じて色調を変更させるものであることが分かる。

(カ)上記(1)(イ)及び(ウ)並びに図1、図2、図3及び図5の記載から、引用文献に記載された表示装置において、インストルメントパネルPは、速度計M2及び回転計M3を有し、回転計M3の中央部に表示手段11として、シンボル画像G及びバーグラフBを配置し、速度計M2及び回転計M3の外枠に円環状の発光手段12を配置し、燃費表示装置1はシンボル画像G、バーグラフB及び発光手段12の色調を制御するものであることが分かる。

(キ)上記(1)(イ)の記載から、引用文献に記載された燃費表示装置1において、発光手段12は、内部や表面に赤、緑、青の3色LEDで構成され色調の変更可能な照明装置であり、発光制御手段102により色調が変更されるものであることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1、図2、図3及び図5の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 移動体用の表示装置であって、
前記表示装置は、前記移動体の燃費状態に応じて色調を変更するように構成され、
前記燃費状態として、瞬間燃費を表示し、
前記表示装置は、インストルメントパネルPの速度計M2及び回転計M3を含み、回転数計M3の中央に配置されたシンボル画像G及びバーグラフB、並びに速度計M2及び回転数計M3の外枠に配置された円環状の発光手段12の色調を制御するものであり、
前記表示装置の発光手段12は、内部や表面に赤、緑、青の3色LEDで構成され色調の変更可能な照明装置であり、発光制御手段102により色調が変更されるように構成された表示装置。」

2.-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「移動体」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「車両」に相当し、以下同様に「表示装置」は「ディスプレイ装置」に、「インストルメントパネルP」は「車両ディスプレイシステム」に、「速度計M2」は「速度ディスプレイ装置」に、「回転計M3」は「rpmディスプレイ装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明において「移動体の燃費状態に応じて色調を変更する」ことは、その技術的意義からみて、本願補正発明において「車両の運転状態情報に従って色彩情報を表示する」ことに相当する。
そして、引用発明における「瞬間燃費」とは、「所定の短い時間における燃費をいい、所定の短い時間は、走行状態やアクセルワークに応じて時々刻々と表示値を変化させるのに十分短い時間であることとし、例えば2秒とする」(上記2.-1(1)(イ)段落【0018】)であるから、本願補正発明における「車両の現在の燃料消費」であるといえ、引用発明において「燃費状態として、瞬間燃費を表示」することは、本願補正発明において「運転状態情報は、車両の現在の燃料消費を示」すことに相当する。

さらに、引用発明において、表示装置が「回転数計M3の中央に配置されたシンボル画像G及びバーグラフB、並びに速度計M2及び回転数計M3の外枠に配置された円環状の発光手段12の色調を制御するものであ」ることは、シンボル画像G、バーグラフB及び発光手段12の色調が変化することを意味する。一方、本願の明細書の段落【0021】には「好ましくは、色彩情報は、緑色、黄色及び/若しくは赤色の色彩、色彩変化、混合された色彩、色彩の勾配、並びに/又は異なる強度の色彩を含む。」と記載され、色彩情報は色彩そのものを包含するから、引用発明における「色調」は、その語句の意味からみて、本願補正発明における「色彩情報」に相当する。
また、引用発明における「シンボル画像G」は、燃費状態に応じて色調を変更するものであるから、色を有するシンボルであって、燃費状態に応じて色彩符号化するものであるといえるから、本願補正発明における「有色のシンボルであって運転状態情報を色彩符号化する有色のシンボル」に相当する。
したがって、「色彩情報は、運転状態情報を色彩符号化する有色のシンボルを含」むという限りにおいて、引用発明において表示装置が「回転数計M3の中央に配置されたシンボル画像G及びバーグラフB、並びに速度計M2及び回転数計M3の外枠に配置された円環状の発光手段12の色調を制御するものであ」ることは、本願発明において「色彩情報は、速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置の有色のポインタ及び有色の背面照明と、速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置の外に設置される有色のシンボルであって運転状態情報を色彩符号化する有色のシンボルとを含」むことに相当する。

また、引用発明における「赤、緑、青の3色LED」は、色調の変更可能な照明装置である表示装置の発光手段12を構成するものであるから、本願補正発明における「制御可能な色彩光源」に相当する。
そして、「ディスプレイ装置は、制御可能な色彩光源を含み、前記制御可能な色彩光源は、少なくとも2つの異なる色彩を放射するように構成され、前記制御可能な色彩光源は、ディスプレイ装置の色彩を変化させるように構成される」という限りにおいて、引用発明において「表示装置の発光手段12は、内部や表面に赤、緑、青の3色LEDで構成され色調の変更可能な照明装置であり、発光制御手段102により色調が変更されるように構成された」ことは、本願補正発明において「ディスプレイ装置は、独立制御可能な色彩光源を含み、前記独立制御可能な色彩光源は、少なくとも2つの異なる色彩を放射するように構成され、前記独立制御可能な色彩光源は、有色のポインタ、有色の背面照明及び有色のシンボルの色彩を変化させるように構成される」ことに相当する。

以上から、本願補正発明と引用発明は、
「 車両用のディスプレイ装置であって、
前記ディスプレイ装置は、前記車両の運転状態情報に従って色彩情報を表示するように構成され、
前記運転状態情報は、前記車両の現在の燃料消費を示し、
前記ディスプレイ装置は、車両ディスプレイシステムの速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置を含み、
前記色彩情報は、運転状態情報を色彩符号化する有色のシンボルを含み、
前記ディスプレイ装置は、制御可能な色彩光源を含み、前記制御可能な色彩光源は、少なくとも2つの異なる色彩を放射するように構成され、前記制御可能な色彩光源は、ディスプレイ装置の色彩を変化させるように構成されるディスプレイ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

〈相違点〉
「色彩情報は、運転状態情報を色彩符号化する有色のシンボルを含」み、「ディスプレイ装置は、制御可能な色彩光源を含み、前記制御可能な色彩光源は、少なくとも2つの異なる色彩を放射するように構成され、前記制御可能な色彩光源は、ディスプレイ装置の色彩を変化させるように構成される」ことに関し、本願発明においては「色彩情報は、速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置の有色のポインタ及び有色の背面照明と、速度ディスプレイ装置及びrpmディスプレイ装置の外に設置される有色のシンボルであって運転状態情報を色彩符号化する有色のシンボルとを含」み、「ディスプレイ装置は、独立制御可能な色彩光源を含み、前記独立制御可能な色彩光源は、少なくとも2つの異なる色彩を放射するように構成され、前記独立制御可能な色彩光源は、有色のポインタ、有色の背面照明及び有色のシンボルの色彩を変化させるように構成される」のに対し、引用発明においては表示装置が「回転数計M3の中央に配置されたシンボル画像G及びバーグラフB、並びに速度計M2及び回転数計M3の外枠に配置された円環状の発光手段12の色調を制御するものであ」り、「表示装置の発光手段12は、内部や表面に赤、緑、青の3色LEDで構成され色調の変更可能な照明装置であり、発光制御手段102により色調が変更されるように構成された」ものである点(以下、「相違点」という。)。

2.-3 判断
上記相違点について検討する。
車両用表示計の指針から発する光の色調を変えることにより情報を運転者に伝達することは、周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2008-230402号公報の【0011】及び【0017】ないし【0023】、特開2003-312314号公報の段落【0027】等参照。)であるほか、車両用表示計の文字表示板の色調を変化させることにより情報を運転者に伝達することは、周知技術(以下、「周知技術2」という。上記特開2003-312314号公報の段落【0027】、特開2001-138769号公報の段落【0017】及び【0018】等参照。)である。
また、引用発明において、シンボル画像Gを回転数計M3の中央に配置するか、速度計M2及び回転数計M3の外に配置するかということは、インストルメントパネルPの単なるデザインや装置設計上の選択事項にすぎない。
さらに、引用発明において、赤、緑、青の3色LEDで色調を変更可能であるということは、技術常識からみて、赤、緑、青のそれぞれのLEDの発光の強さを制御することにより、混合されて生じる光の色を変えることを意味する。したがって、引用発明における赤のLED、緑のLED及び青のLEDは、独立制御可能な色彩光源として3つの異なる色彩を放射するように構成され、また、表示装置の色彩を変化させるように構成されるものであるといえる。
そして、引用発明は、本願補正発明と同様に、燃費状態に関する情報を注視させることなく燃費状態を認識させる(上記2.-1(1)(ア))ように表示装置を構成するものであるから、引用発明において、周知技術1及び2を参照することによって、シンボル画像Gを速度計M2及び回転数計M3の外に配置し、バーグラフB及び円環状の発光手段12に代えて速度計M2及び回転数計M3の指針と背面照明の色調を、赤、緑、青の3色LEDで制御することによって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。

なお、審判請求人は審判請求書において、「本願発明のディスプレイ装置は、それぞれの場所に配置された3種類の異なる色彩情報を含んでおり、現在の燃料消費の様々な状態が有色のポインタ、有色の背面照明及び有色のシンボルのそれぞれ異なる色彩で独立に制御される色彩光源によって多様に色彩符号化されます。よって、これらの色彩情報の所定の組み合わせにより運転状態情報が運転者によってより無意識に知覚されるので、運転者の注意をそらすことなく運転状態情報をより正確に伝達することが容易になります。」「これに対して、引用文献1?6にはこのような特徴が記載も示唆もされていません。」と主張している。
また、審判請求人は平成27年3月9日提出の上申書において、「本願発明は、割り当てられた独立制御可能な色彩光源を有する車両の運転状態を色彩符号化するために3つの独立した異なる種類の手段(=ポインタ、シンボル及び背景照明)を有することにより、符号化できる運転状態(各状態は光源によって放射される色彩の所定の重畳によって表される)の数が数学的に増えるので、情報の数及び精度が高まり(例えば、情報の数=3nであり、nは生成される色彩の数であり、n≧2である)、運転者の無意識の知覚が注意を専ら交通に保つように向けられることができるという格別の作用効果を奏します。」と主張している。
しかし、明細書の段落【0013】の「照明装置は、複数の独立光源を備えており、放射される光の色彩によって異なる少なくとも2種類の光源が設けられる。照明ダイオードの群にわたって緑色、黄色、赤色又は混合された色彩若しくは色彩の勾配を表示するために、独立して調整可能である、例えば、緑色、黄色及び青色の照明ダイオードが隣り合って群で配置される。」等の記載からみて、特許請求の範囲に記載された「独立制御可能な色彩光源」とは、個々の照明ダイオードを独立して制御することにより色彩若しくは混合色を表示するものを示すにとどまり、「有色のポインタ、有色の背面照明及び有色のシンボルのそれぞれ異なる色彩で独立に制御」されることを特定したものではない。
したがって、審判請求人の上記各主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、失当である。

以上から、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
上記のとおり、平成26年7月31日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成26年2月24日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び平成24年5月28日提出の明細書の翻訳文、並びに国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】のとおりのものである。

2.引用発明
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開2007-256158号公報)記載の発明(引用発明)は、前記第2.の[理由]2.-1の(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
前記第2.の[理由]1.(2)で検討したとおり、本件補正は、該補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明、すなわち本願発明について、その発明特定事項をさらに限定したものである。したがって、本願発明は、本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当するといえる。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2の[理由]2.-2及び2.-3に記載したとおり、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4.むすび
上記第3.のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-19 
結審通知日 2015-03-24 
審決日 2015-03-31 
出願番号 特願2012-531284(P2012-531284)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 575- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 健山村 和人  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 金澤 俊郎
中村 達之
発明の名称 ディスプレイ装置  
代理人 原 裕子  
代理人 三好 秀和  
代理人 伊藤 正和  

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