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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E01B
管理番号 1304430
審判番号 無効2014-800044  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-03-26 
確定日 2015-08-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第5367111号発明「軌道パッドおよびレール締結装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5367111号に係る出願(特願2012-65417号)は、平成24年3月22日に特許出願され、平成25年9月20日に特許権の設定登録がされたものであり、その後、請求人エスライト技研株式会社から無効審判が請求されたものである。以下において、請求以後の経緯を整理して示す。

(1)平成26年3月26日 審判請求書の提出
(2)平成26年6月13日 答弁書の提出
(3)平成26年9月10日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
(4)平成26年9月10日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
(5)平成26年9月26日 口頭審理の実施

第2 本件発明
本件特許第5367111号の請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項に特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
タイプレートの上に配置されて既に固化している既設の可変パッドと、レールとの間に設けられる軌道パッドであって、
前記可変パッドはレール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有しており、
下面に、前記可変パッドの上に配置されたとき各凸リブを挿入可能な凹溝を有し、前記レールの伸長方向に飛び出すのを防止するために、長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部を有していることを
特徴とする軌道パッド。
【請求項2】
各凹溝は、各凸リブを収容し、前記下面が前記可変パッドの各凸リブの間の上面に接して載る深さに構成されていることを特徴とする請求項1記載の軌道パッド。
【請求項3】
タイプレートの上に配置され、内部に樹脂を注入して形成された可変パッドと、
前記可変パッドとレールとの間に設けられた請求項1または2に記載の軌道パッドとを有し、
レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有して既に固化している既設の前記可変パッドの上に、各凹溝に各凸リブを挿入して前記軌道パッドを配置して成ることを
特徴とするレール締結装置。

第3 当事者の主張概要
1.請求人の主張概要
請求人は、特許第5367111号の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、無効とすべき理由を次のように主張すると共に、証拠方法として甲第1号証?甲第8号証を提出している。

(理由)
本件特許の請求項1ないし請求項3に係る発明は、本件出願前に頒布されていた甲第4号証及び甲第2号証並びに甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、従って、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特許第5367111号公報
甲第2号証:特開昭57-201402号公報
甲第3号証:特開平8-41803号公報
甲第4号証:特開2011-174299号公報
甲第5号証:特開2011-38319号公報
甲第6号証:特開2006-265841号公報
甲第7号証:特願2012-65417号に係る平成25年6月11日付け提出の意見書
甲第8号証:特開平10-237802号公報

2.被請求人の主張概要
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由が無い旨主張すると共に、証拠方法として乙第1、2号証を提出している。

[証拠方法]
乙第1号証:東北新幹線で使用された使用済み可変パッドを代理人弁理士 須田 篤が平成26年6月9日にデジタルカメラで撮影し作成した、既設の可変パッドの(A)全体を示す写真と、(B)右端部分を拡大した写真。
乙第2号証:特開2012-241440号公報

第4 甲各号証に記載された事項
甲第1号証は、本件特許公報であり、甲第7号証は本件出願に係る意見書であるので、説示は省略する。

(1)甲第2号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開昭57-201402号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲2ア:「3.〔発明の群細な説明〕
スラブ軌道の施工においては、各部材、各部品の製作公差、施工公差の不整を補正して所定の精度に軌道を仕上げると同時に、レールを均等に支持しうるようにするために、レール締結部には現場で所定厚さに形成できるようにした可変パッキングが使用される。
第1図及び第2図は前記従来の可変パッキングを示し、内部に補強繊維(1)を有し、且つ逆止弁付き注入口(2)及び排気口(3)を具えた袋状体(4)よりなる可変パッキング(a)を、第3図に示す如く、コンクリートスラブ(b)上のタイプレート(c)と軌道パット(d)との間に介装し、硬化剤を添加した液状樹脂を前記袋状体(4)内の注入口(2)より圧入するとともに、同袋状体(4)内の空気と排気口(3)より排出し、袋状態(4)内の空気を完全に排出して排気口(3)クリップで閉じ、袋状体(4)樹脂で充填膨腹させたのち同樹脂を硬化せしめ、前記タイプレート(c)及び軌道パット(d)間の間隙を完全に填隙し、袋状体(4)内の補強繊維(1)よって硬化物を強化プラスチックとなし、高強度を有する可変パッキングを構成するものである。(第4図参照)」(第1頁左下欄第17行?右下欄第18行)

甲2イ:「即ち従来の可変パッキングにおいては上下2枚のフイルム(4a)(4b)の周辺部を周辺シール部(4c)によって袋状に成型しているので、樹脂注入により第4図に示すように両端か膨らみ、一応可変パッキングの移動防止効果を発軌するが、前記膨らみ部(5)は円形断面となり、レール(e)の移動が衝撃的に生起した場合には膨らみ部(5)を乗超えて移動してしまい、移動止め効果が不十分であつた。」(第2頁左上欄第4行?第11行)

甲2ウ:第4図には、軌道パッド(d)の下の可変パッキング(a)はレール伸長方向の両端に膨らみ部(5)を有した構成が図示されている。

(2)甲第3号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開平8-41803号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲3ア:「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レール底面とタイプレートとの間に軌道パッドと共に介装される樹脂注入式パッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】軌道スラブやPCまくら木にレールを締結する場合、タイプレートをこれら軌道スラブやPCまくら木に固定し、このタイプレートに可変パッドおよび軌道パッドを挟んでレールを載せ、レールを保持している。
【0003】ここに可変パッドは、樹脂を注入した袋であり、樹脂の注入量を調節することによりレール面の高さを調整するものである。なおこの樹脂は袋の注入後に硬化する。」
甲3イ:「【0032】袋66に樹脂を注入すると、袋66は所定厚さになると共に、タイプレート14および軌道パッド40のゴム板54から突出した部分38A(図6参照)が膨張する。この膨張した部分38Aはタイプレート14と軌道パッド40に係合して相対的移動が規制される。また前記したゴム板54の横溝64にも係合する。さらに袋66の突出部66Cや注入口66A、空気抜き口66Bにも樹脂が流入して硬化しているから、これらの部分がタイプレート14の突壁48に係合する。このため可変パッド38は一層確実にタイプレート14に位置決め固定される。」

甲3ウ:図6には、軌道パッド40の下の可変パッド38は、レール伸長方向の両端部において膨張した部分38Aを有した構成が図示されている。

(3)甲第4号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開2011-174299号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲4ア:「【0020】
図1および図2に示すように、タイプレート11は、鉄製で、ほぼ矩形状の基板11aと、基板11aの上面に対してほぼ垂直上方に突出して一体的に設けられた1対のショルダー11bとを有している。各ショルダー11bは、基板11aの幅方向に沿って伸びており、所定の間隔を開けて互いに平行に設けられている。タイプレート11は、基板11aの幅方向を軌道の長さ方向に合わせて、枕木(図示せず)の上に設けられている。
【0021】
図3に示すように、可変パッド12は、透明シートを二つ折りにした矩形の薄い袋状を成している。可変パッド12は、対角の位置にそれぞれ注入口12aと排出口12bとを有し、注入口12aには逆止弁21が溶着されている。可変パッド12は、内部に樹脂繊維シート22を収納し、縁辺部に、袋を貫通して内部から外部に伸びる複数の糸体23を有している。糸体23は、綿糸から成っている。図1および図2に示すように、可変パッド12は、タイプレート11の上に配置されている。可変パッド12は、注入口12aから内部に樹脂を注入し、固化させることにより形成されている。」

甲4イ:「【0023】
図4に示すように、軌道パッド13は、矩形のゴム板から成り、底面13aに、所定の間隔をあけて互いに平行に設けられた2本の溝13bを有している。図1および図2に示すように、軌道パッド13は、底面13aを下にして、2本の溝13bがレール1の伸長方向に対して垂直方向に伸びるよう可変パッド12の上に配置されている。
【0024】
図1、図2および図5に示すように、鋼板14は、軌道パッド13の上面を覆うよう、軌道パッド13の上に貼り付けられている。鋼板14は、タイプレート11よりもレール1の伸長方向に長く形成され、レール1の伸長方向の両端に、軌道パッド13の外側で下方に湾曲して折り曲げられた湾曲部14aを有している。また、鋼板14は、各湾曲部14aの肩から下方に向かって伸びる、それぞれ3本の補強溝14bを有している。各補強溝14bは、断面が、湾曲部14aの肩でV字状を成し、湾曲部14aの下方でU字状を成している。」

甲4ウ:「【0028】
次に、作用について説明する。
レール締結装置10は、ゴム板から成る軌道パッド13が、底面13aに、レール1の伸長方向に対して垂直方向に伸び、所定の間隔をあけて互いに平行に設けられた2本の溝13bを有しているため、レール1の上を走行する車両の走行状態によって、レール1の伸長方向に沿って引っ張られたり押されたりしても、軌道パッド13がタイプレート11に対してレール1の伸長方向にずれにくい。また、可変パッド12の内部に注入した樹脂により、可変パッド12が軌道パッド13の底面13aの溝13bの形状に対応した形状で固まるため、軌道パッド13がレール1の伸長方向にずれるのをより効果的に防止することができる。鋼板14の各湾曲部14aがレール1の伸長方向で軌道パッド13を挟み、鋼板14の各突出部14cがレール1の伸長方向でタイプレート11を挟むため、軌道パッド13がレール1の伸長方向にずれるのをさらに効果的に防止することができる。」

甲4エ:図2は、レール締結装置の斜視図であり、同図には、タイトプレート11とレール1の間に、下から可変パッド12、軌道パッド13、鋼板14の順で積層して配置された構成が図示されている。

甲4オ:図5は、鋼板および軌道パッドが図示され、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は側面図である。図5(a)?(c)によれば、軌道パッド13上に貼り付けられた鋼板14は、レールの長さ方向の両端部中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった湾曲部14aを有したことが図示されている。そして、図5(c)には、軌道パッド13の端面と前記湾曲部14aの間には空所を有したことが図示されている。

上記記載事項を総合すると、甲第4号証には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。

「タイプレート11の上に配置され、可変パッド12と、レール1との間に設けられる上面に鋼板14が貼り付けられた軌道パッド13であって、
前記鋼板14は軌道パッド13が上記レール1の伸長方向にずれるのを防止するために、長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった湾曲部14aを有し、軌道パッド13の端面と前記湾曲部14aの間には空所を有した軌道パッド13。」

(4)甲第5号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開2011-38319号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲5ア:「【0003】
又、ゴム製軌道パッドは、ばね定数を下げる又は均一化するために、片面又は両面に溝等が形成されているものが多い。一方、レールは、気温等の温度変化に伴って伸縮するため、軌道パッドの上面に、耐食性に優れた鋼板(例えば、ステンレス鋼板)又は合成樹脂板を付着させ、軌道パッドの上面でレールを滑らせることも行われている。このことは、軌道パッドの上面に擦過による損傷が発生することを防ぐためである。」

(5)甲第6号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開2006-265841号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲6ア:「【要約】
【課題】
鋼板付き軌道パッドにおいて生じる鋼板や軌道パッド自体の飛散による問題を解消する。」

(6)甲第8号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(特開平10-237802号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲8ア:「【0007】次に、図3及び図4はこの発明に係る軌道パッドの他の実施形態を示したものであり、この実施形態においてはゴム板1´は縦長であり、折り曲げ片4の位置まで延びており、この折り曲げ片4に追随して下方へ折れ曲がっている。つまり、ゴム板1´は折り曲げ片4の内側に貼り付いた状態になっている。・・・」

第5 当審の判断
A 本件発明1
1.請求人の主張について
請求人は審判請求書において、本件発明1を下記のように(A)、(A-1)、(B)に文節して、次のa.?c.の主張をしている。
「【請求項1】
(A)タイプレート(11)の上に配置されて既に固化している既設の可変パッド(12)と、レール(1)との間に設けられる軌道パッド(13)であって
(A-1)前記可変パッド(12)はレール(1)伸長方向の両端に上方に突出する凸リブ(12d、12d)を有しており、
(B)下面に、前記可変パッド(12)の上に配置されたとき各凸リブ(12d、12d)を挿入可能な凹溝(32)を有し、前記レールの伸長方向に飛び出すのを防止するために、長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部(21e)を有している
ことを特徴とする軌道パッド。」

a.甲第2号証及び甲第3号証
「上記構成要件(A)及び(A-1)については、『軌道パッド(13)』が『可変パッド(12)とレール(1)との間に設けられる』こと、及び、既設の固化した可変パッド(12)に『レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブ(12d、12d)』が生じることは当業者には極めて周知の事項である。」(審判請求書第4頁第第1行?7行)

b.甲第4号証
「上記構成要件(B)の『下面に、前記可変パッド(12)の上に配置されたとき各凸リブ(12d、12d)を挿入可能な凹溝(32)を有し』、とする『軌道パッド』自体の構成は、甲第4号証に示されている通り公知のものである。
すなわち、甲第4号証の【0024】には次の記載がある。
『【0024】
図1、図2および図5に示すように、鋼板14は、軌道パッド13の上面を覆うよう、軌道パッド13の上に貼り付けられている。鋼板14は、タイプレート11よりもレール1の伸長方向に長く形成され、レール1の伸長方向の両端に、軌道パッド13の外側で下方に湾曲して折り曲げられた湾曲部14aを有している。』
上記において、『下方に湾曲して折り曲げられた湾曲部14a』は『鋼板14』であるが、これは以下に述べるように、本件特許発明1では「軌道パッド」の一部を構成するものであり、従って、甲第4号証は『前記レールの伸長方向に飛び出すのを防止するために、長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部(21e)を有している』軌道パッドを開示している。
すなわち、本件特許明細書(甲第1号証)の【0018】、【0024】の記載から分かるように、本件特許発明1では、『軌道パッド13』は、『硬質ゴム板13a』と『樹脂板13b』や『超硬質ゴム板21b』とからなるものとされている。
これらの『樹脂板13b』や『超硬質ゴム板21b』は、『レール』に対する『軌道パッド』の耐摩耗性を高めるために用いられるものであり、例えば、甲第5号証や甲第6号証の記載から分かるように従来から用いられてきた鋼板の代わりに用いられるものである。
従って、甲第4号証に開示の『鋼板14』は、本件特許発明1の要件(B)にある『軌道パッド』を構成しており、従って、甲第4号証は、本件特許発明1の構成要件(B)にある『長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部(21e)』を有している『軌道パッド』を開示しているものである。
更に、甲第4号証に開示の軌道パッド13(特に図5(c)参照)を可変パッド(12)上に載置した場合、そのときに可変パッドにできる『凸リブ』は軌道パッド(13)の端面と『下方に折れ曲がった突出部(14a)』との間に形成された空所(本件特許発明1における凹溝(32))に収まる。
従って、甲第4号証は、上記(B)で規定される軌道パッド自体の構成全体を開示していることが分かる。」(審判請求書第4頁第9行?第6頁第17行)

c.公知技術と周知技術の組み合わせ
「以上から分かるとおり、本件特許発明1は、甲第2号証及び甲第3号証に示され、従って、実際にレールが敷設されている現場においては周知の固化した『凸リブ』を有する既設の可変パッドと甲第4号証に開示の如き公知の軌道パッドとの組み合わせを規定するものであるが、その組み合わせはなんら技術的に新しいものではなく、本件特許発明に記載されるような技術的効果を奏するものでもなく、従って、本件特許発明1には何らの進歩性もないものであり無効とされるべきものである。」(審判請求書第8頁第20行?第26行)

さらに、請求人は口頭審理陳述要領書において、以下のd.の主張をしている。
d.「本件特許発明1は軌道パッドに関するものであり、凸リブを有する固化している既設の可変パッドは、本件特許発明1の前提条件を規定するものであり、甲第2号証(図4)及び甲第3号証(図6)に示されるごとく周知事項である。
甲第4号証は、
レールから枕木やタイプレートに伝わる振動の緩衝等を目的に用いられる硬質ゴム板からなる軌道パッドであって、
レールの長さ方向に飛び出すのを防止するために、長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部(湾曲部14a)と該軌道パッドの(長さ方向)前後端縁に沿って可変パッドに生じている凸リブを受け入れ可能な凹溝(湾曲部14aと軌道パッド13の前後端面との間に形成される凹溝)と、
を有する軌道パッド
を開示している。
この軌道パッドを本件特許の請求項1の記載に倣って記述すれば次の通りである。
「タイプレートの上に配置されて既に固化している既設の可変パッドと、レールとの間に設けられる軌道パッドであって、
前記可変パッドはレール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有しており、
下面に、前記可変パッドの上に配置されたとき各凸リブを挿入可能な凹溝を有し、前記レールの伸長方向に飛び出すのを防止するために、長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部を有していることを
特徴とする軌道パッド」
従って、本件特許発明1は甲第4号証と比較して構成上での実質的差異はない。
よって、本件特許発明は、甲第2号証や甲第3号証の開示を前提条件に甲第4号証に開示のものから容易に想到し得たものであり、特許法29条第2項の規定に違反してなされたものである。」(口頭審理陳述要領書第2頁第1行?第29行)

2.被請求人の主張について
被請求人は審判事件答弁書で、次のa.?c.のように主張している。

a.本件特許発明(請求項1)と甲第2号証および甲第3号証との比較
「既設の固化した可変パッドに『レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブ』が生じることは知られている。しかしながら、既設の軌道パッドを交換する際には、可変パッドも一緒に交換するのが当業者にとって常識であり、既設の固化した可変パッドをそのまま使用して軌道パッドのみを新しく交換することは想定されていなかった。
本件特許発明(請求項1)は、特に、(A)レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有して、既に固化している既設の可変パッドの上に配置される、(B)そのとき、下面に、可変パッドの各凸リブを挿入可能な凹溝を有している、(C)長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部を有している、という特徴的な構成を有する。
本件特許発明(請求項1)は、その構成により、本件特許発明(請求項1)は、(a)既設の可変パッドの各凸リブの間の上面と、軌道パッドの下面との間に隙間が生じるのを防ぐことができ、軌道狂いやバタつき、軌道パッドの反り等を防止することができる(本件特許明細書の段落番号「0010」、「0025」参照)、(b)軌道パッドを交換するとき、既存の固化した可変パッドを引き続き使用することができ、可変パッドも同時に交換しなければならない場合と比べ、軌道パッドを交換するときの費用の低減を図ることができる、(c)レールの伸長方向に飛び出すのを防止することができる、という顕著な作用効果が得られるものである。さらに、(d)軌道パッドの下面の凹溝が可変パッドの凸リブに対して弾力的に接触し、衝撃を吸収して車両の走行を滑らかにするとともに、レールを車両が通る度に繰り返し加わる大きな衝撃に対して可変パッドを割れにくくする、(e)凹溝に可変パッドの各凸リブを挿入する際に、下方に折れ曲がった突出部により位置決めすることができる、という顕著な作用効果を得ることもできる。
一方、甲第2号証および甲第3号証には、既設の固化した可変パッドをそのまま再利用して軌道パッドのみを新しく交換可能であることは全く記載されていない。甲第2号証には、『スラブ軌道の施工においては、各部材、各部品の製作公差、施工公差の不整を補正して所定の精度に軌道を仕上げると同時に、レールを均等に支持しうるようにするために、レール締結部には現場で所定厚さに形成できるようにした可変パッキングが使用される』(第7ページ左下欄の第18行?同右下欄の第3行参照)と記載され、甲第3号証には、『レール底面とタイプレートとの間に軌道パッドと共に介装される樹脂注入式パッドに関する』(第2ページ左欄第12行?第14行参照)と記載されるように、可変パッドは軌道パッドと一緒に設けられるもので、既設の固化した可変パッドをそのまま使用して軌道パッドのみを新しく交換することは、甲第2号証および甲第3号証から予測することはできない。
甲第2号証および甲第3号証には、本件特許発明(請求項1)の特徴的な構成(A)?(C)も、その作用効果(a)?(e)も全く記載されていない。」(審判事件答弁書第2頁第14行?第3頁第25行)

b.甲第4号証との比較
「本件特許発明(請求項1)と甲第4号証とを比較すると、甲第4号証には、軌道パッド13の上に鋼板14を貼り付けたものが記載されているが、鋼板14は軌道パッド13の一部ではなく、軌道パッド13と鋼板14とは別部材である。軌道パッドはレールの下に挿入するパッキン材の役割の部材であり、鋼板はその上面にレールを載せて、レールの伸縮に対して滑りを良好にするとともに軌道パッドが列車の風圧で飛散するのを防ぐ役割の部材である。部材の役割が異なるため、鋼板14を軌道パッド13の構成の一部とみることはできない。甲第4号証の軌道パッド13は、既に固化している既設の可変パッドの上に配置されるものではなく、下面に、可変パッドの各凸リブを挿入可能な凹溝を有するものでもない。軌道パッド13は、新設する際に新設の可変パッドの上に配置されるものである。軌道パッド13は、長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部も有していない。
このように、甲第4号証の軌道パッド13は、本件特許発明(請求項1)の特徴的な構成(A)?(C)を有しておらず、その作用効果(a)、(b)、(d)、(e)を奏することができない。
仮に、甲第4号証の鋼板14が軌道パッド13を構成するものとし、鋼板14を、甲第5号証に記載の合成樹脂板、または甲第6号証に記載の、硬度がA98Hs以上の表層板部に置き換えたとし、既設の可変パッドの上に配置可能なものとする。この場合、可変パッドの上に配置したとき、鋼板14に対応する合成樹脂板または表層板部の、ゴム板から成る軌道パッド13からはみ出た部分に荷重がかかると、その荷重をそのはみ出た部分では強度的に支えることができず、折れて飛散するか変形してしまう。
はみ出た部分が可変パッドの凸リブにより支えられたとしても、甲第5号証に記載の合成樹脂板、または甲第6号証に記載の、硬度がA98Hs以上の表層板部には鋼板14ほどの強度はないため、レールを車両が通る度に繰り返し加わる大きな衝撃により、合成樹脂板または表層板部のはみ出た部分のみならず、可変パッドの凸リブまで破損するおそれがある。」(審判事件答弁書第3頁第26行?第4頁第25行)

c.公知・周知技術との比較
「請求人は、甲第8号証の図3及び図4に示される『軌道パッドを新設の可変パッド上に載置したとした場合には、本件特許図6(a)に示される如き『凸状リブ12d』はそれ自体が生じない』と主張する。
しかしながら、既存の可変パッドは殆どが乙第1号証に示すように、凸リブ12dを有するものであり、その既存の可変パッドを引き続き使用することができ、可変パッドも同時に交換しなければならない場合と比べ、軌道パッドを交換するときの費用の低減を図ることができるのが、本件特許発明(請求項1)の特有の作用効果(b)である。
本件特許発明(請求項1)の軌道パッドは、凸リブを有する可変パッドの上に配置されるものであり、凸リブを有しない可変パッドを前提としていない。その上、甲第8号証の軌道パッドは試験的に構内の一部で施工されるのみで、甲第8号証の軌道パッドを載置した可変パッドは極めて数が少ない。そのような可変パッドは軌道パッドと同時に交換しても費用への影響は寡少であり、本件特許発明(請求項1)の目的とするところではない。
以上のとおり、請求人は軌道の現状を認識しておらず、本件特許発明の技術的意味が誤った認識のもとになされていると主張する請求人の認識自体が誤っている。
従って、本件特許発明(請求項1)は、甲第2号証乃至甲第4号証に基づいて当業者が容易に発明するこどができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当する発明ではない。」(審判事件答弁書第7頁第12行?第8頁第2行)

3.対比、判断
3-1 対比
本件発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明において、鋼板14は軌道パッド13の一部を構成するか否かについて両当事者間で争いはあるが、鋼板14は軌道パッド13に貼着されていることもあり、当審では、甲4発明の鋼板14は軌道パッド13の一部を構成しているものとして審理を進める。
そうすると、甲4発明の「軌道パッド13」と「鋼板14」は、本件発明1の「軌道パッド」に相当する。そして、甲第4発明の「鋼板14」の「湾曲部14a」は本件発明1の「軌道パッド」の「突出部」に相当する。また、甲4発明の軌道パッド13の端面と前記湾曲部14aの間の「空所」は、本件発明1の軌道パッド下面に設けた「凹溝」に相当する。
また、甲4発明の「軌道パッド13が上記レール1の伸長方向にずれるのを防止する」は、本件発明1の「軌道パッド」が「前記レールの伸長方向に飛び出すのを防止する」に相当する。

したがって、本件発明1と甲4発明の一致点、相違点は次の通りである。

(一致点)
「タイプレートの上に配置された可変パッドと、レールとの間に設けられる軌道パッドであって、
下面に、凹溝を有し、前記レールの伸長方向に飛び出すのを防止するために、長さ方向の両端の中央部に、長さ方向に突出して先端が下方に折れ曲がった突出部を有している
軌道パッド。」

(相違点1)
本件発明1では、軌道パッドは既に固化している既設の可変パッドと、レールとの間に設けられ、前記可変パッドはレール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有しているのに対し、甲4発明では、軌道パッドは可変パッドと、レールとの間に設けられるが、可変パッドは既に固化している既設のものではなく、可変パッドはレール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有しているか否か不明である点。

(相違点2)
本件発明1では、軌道パッドは下面に、前記可変パッドの上に配置されたとき各凸リブを挿入可能な凹溝を有しているが、甲4発明では、軌道パッドは下面に凹溝を有しているが、凹溝が各凸リブを挿入可能か否か不明である点。

3-2 判断
(1)相違点1について
a.請求人の主張
請求人は、甲第2、3号証を提示し、「『軌道パッド(13)』が『可変パッド(12)とレール(1)との間に設けられる』こと、及び、既設の固化した可変パッド(12)に『レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブ(12d、12d)』が生じることは当業者には極めて周知の事項である」(審判請求書第4頁第第1行?7行)と主張し、また、「本件特許発明1は、甲第2号証及び甲第3号証に示され、従って、実際にレールが敷設されている現場においては周知の固化した『凸リブ』を有する既設の可変パッドと甲第4号証に開示の如き公知の軌道パッドとの組み合わせを規定するものであるが、その組み合わせはなんら技術的に新しいものではなく、本件特許発明に記載されるような技術的効果を奏するものでもなく、従って、本件特許発明1には何らの進歩性もない」(審判請求書第8頁第20行?第26行)と主張している。

b.被請求人の主張
被請求人は、「甲第2号証および甲第3号証には、既設の固化した可変パッドをそのまま再利用して軌道パッドのみを新しく交換可能であることは全く記載されていない。甲第2号証には、・・・と記載され、甲第3号証には、・・・と記載されるように、可変パッドは軌道パッドと一緒に設けられるもので、既設の固化した可変パッドをそのまま使用して軌道パッドのみを新しく交換することは、甲第2号証および甲第3号証から予測することはできない。」と主張している。(審判事件答弁書第3頁第12行?第25行)

c.当審の判断
甲第2号証に記載の「可変パッキング(a)」は本件発明1の「可変パッド」に相当し、レール伸長方向の両端の「膨らみ部(5)」は本件発明1の「凸リブ」に相当するから、甲第2号証には、レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有した可変パッドが記載されている。
また、甲第3号証に記載のレール方向の両端部において「膨張した部分38A」は、本件発明1の「凸リブ」に相当するから、甲第3号証には、レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有した可変パッドが記載されている。
したがって、可変パッドにおいて、「レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有した」構成は、甲第2号証、甲第3号証に記載されているように周知技術であるといえる。
しかしながら、甲第2号証および甲第3号証に記載された可変パッドは軌道パッドと一緒(施工時期は同時)に設けられるものであり、甲第2号証および甲第3号証には、既設の固化した可変パッドをそのまま再利用して軌道パッドだけを新しく交換可能とするような記載はなく、示唆もされていない。
一方、甲4発明では、軌道パッドは可変パッドと、レールとの間に設けられるが、可変パッドは既に固化している既設のものではなく、甲4アにその製造方法が記載されているように、軌道パッドと同時に設けられるものである。つまり、甲4発明には、既に固化した可変パッドに対し軌道パッドを後から交換可能とする構成はないし、甲第4号証全体からもそのような記載、示唆はない。
したがって、仮に、甲第2号証、甲第3号証に記載の可変パッドの構成が周知技術であり、その上に載置された軌道パッドだけを交換すべき状況が生じたとしても、甲4発明の軌道パッドを交換用として使用する動機付けは存在しない。よって、甲4発明における軌道パッドを、甲第2号証、甲第3号証に記載された周知技術である可変パッドに適用することは困難であり、前記相違点1に係る本件発明1の構成は当業者が容易になし得ることはできない。

なお、請求人は以下のような主張もしているので、一応検討する。
審判請求書第7頁第7行?第8頁第9行において、「しかし、新規の可変パッド及び軌道パッドを設置するときには、袋状の可変パッドは軌道パッドの下に設定され、その状態で硬化性の樹脂が充填され膨張して軌道パッドをレールに押し付けるようにするものであり、・・・
・・・新たな軌道パッドは寧ろ可変パッドの『レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブ(12d)』の間にピッタリと嵌るようになるものである。
・・・そのような軌道パッド13を『(新設の)可変パッド12』の上に設置したとすると、そのときに生じる凸状リブ12d、12dは、上記中央部分の伸張部の(図5(b)で見で)上下両側にある空所部分に生じるはずである。従って、凸状リブ12d、12dができた既設の可変パッド12の上に、新規の軌道パッドを交換して載せたとしても、凸状リブ12d、12dは上記中央部の伸張部の両側の空所部分に入ることになり図6(a)のような隙間31ができるようにはならない。
すなわち、軌道パッド13の上面に荷重がかかったとしても図6(b)に示される曲がりは生じない。従って、図6(b)も錯誤に基づくものである。」と主張している。
しかしながら、本件発明の軌道パッドは、レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有した既に固化した可変パッドを対象にしており、それ以外の可変パッドは対象としないことは、本件発明1の発明特定事項である「既に固化した可変パッド」より明らかであるから、請求人の主張は採用することができない。

(2)相違点2について
甲4発明において、軌道パッドは下面に凹溝を有しているが、可変パッドはレール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有していない。一方、前記の検討のとおり、可変パッドにおいて、「レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有した」構成は、甲第2号証、甲第3号証に記載されているように周知技術である。しかしながら、本件発明1の前記可変パッドは、「既に固化した可変パッド」を対象としている以上、前記相違点(1)の検討のとおり、甲4発明における軌道パッドを甲第2号証、甲第3号証に記載された周知技術である可変パッドに適用することは困難である。
さらに、甲4発明における軌道パッドの下面の凹溝(空所)について、それを設けた目的が甲第4号証には記載されておらず、甲4ウの記載、甲4オの図示事項からも可変パッドとの関係は不明である。また、甲第2号証、甲第3号証に記載された「レール伸長方向の両端に上方に突出する凸リブを有した可変パッド」の「両端に上方に突出する凸リブ」の間隔と、甲4発明の軌道パッド下面の凹溝同士の間隔について同じ間隔か否かも不明であり、凸リブ、凹溝の深さについても不明である。
結局、本件発明1は軌道パッドは下面に、前記(既に固化した)可変パッドの上に配置されたとき各凸リブを挿入可能な凹溝を、意図的に設けた構成を有しており、この構成については、甲第2号証?甲第4号証には記載されておらず、また、甲4発明に甲第2号証、甲第3号証に記載された周知技術を適用しても見いだせない。
したがって、甲4発明における軌道パッドを、甲第2号証、甲第3号証に記載された周知技術である可変パッドに適用することは困難であり、仮に適用できたとしても、前記相違点2に係る本件発明1の構成は当業者が容易になし得ることはできない。

(3)まとめ
そして、本件発明1は明細書に記載のとおり作用効果を奏するものである。
したがって、甲第5号証、甲第6号証、甲第8号証に記載された事項を考慮しても、本件発明1は甲4発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

B 本件発明2、3
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、本件発明2、3は本件発明1について示した理由と同様の理由により、甲第5号証、甲第6号証、甲第8号証に記載された事項を考慮しても、甲4発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

第6.むすび
以上のとおり、本件発明1?3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明1?3に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-28 
結審通知日 2014-10-30 
審決日 2014-11-14 
出願番号 特願2012-65417(P2012-65417)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (E01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤澤 和浩  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 住田 秀弘
本郷 徹
登録日 2013-09-20 
登録番号 特許第5367111号(P5367111)
発明の名称 軌道パッドおよびレール締結装置  
代理人 須田 篤  
代理人 伊藤 茂  
代理人 須田 篤  
代理人 楠 修二  
代理人 楠 修二  

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