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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W |
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管理番号 | 1304680 |
審判番号 | 不服2013-25217 |
総通号数 | 190 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-20 |
確定日 | 2015-08-19 |
事件の表示 | 特願2012-520790「マルチホップネットワークデータフローに関する通信制約を満たすリソース割当てを提供するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月20日国際公開、WO2011/008975、平成24年12月27日国内公表、特表2012-533937〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2010年(平成22年)7月15日(優先権主張2009年7月15日 米国、2009年12月15日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月11日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日付け手続補正がなされ、同年7月24日付けで拒絶査定され、これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。 そして、平成26年11月27日付けで、当審により拒絶理由が通知され、それに対して、平成27年3月2日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたものである。 2.当審の拒絶理由 平成26年11月27日付けで、当審より通知された拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の理由2は、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないというもので、次のとおりである。 「(1) 請求項1及び2に係る発明では、「前記選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるすべてのノードに最大数のスロットを残し、それによって、新たなデータフローが、それらのQoSが満たされた状態で前記ネットワークに受け入れられる可能性を高める」なる発明特定事項が特定されている。 そして、上記発明特定事項に関して、発明の詳細な説明には、 「【0023】 示された実施形態のブロック203において、エンドツーエンド・データフローの通信要件を満たすことが可能なエンドツーエンド・データパスが選択され、エンドツーエンド・データパスのネットワークノード、およびそれらの関連リンクに関してリソースが割り当てられる。ブロック202において、複数のエンドツーエンド・データパス(例えば、ネットワークノードの異なるセット)が、エンドツーエンド・データフローの通信要件を満たすことが可能な各ノードにおけるリソース利用可能性を備えると決定された場合、ブロック203における動作は、所望されるエンドツーエンド・データフローを提供する際に使用するための最良のエンドツーエンド・データパスを選択するために、そのようなエンドツーエンド・データパスに関して可能性のあるリソース割当てを分析することができる。例えば、エンドツーエンド・データフローに関する可能なリソース割当てが、エンドツーエンド・データフローのために使用されるリソース(例えば、タイムスロット)の総数を最小限に抑える、(例えば、QoS要件が満たされた状態で新たなフローがネットワークに受け入れられる可能性を高めるために)エンドツーエンド・データパス内の実質的にすべてのノードのところに最大数のリソース(例えば、タイムスロット)を残すなどの、エンドツーエンド・データパスとリソース割当てとの組合せを決定するために、分析されることができる。特定のエンドツーエンド・データパスを選択する際に、エンドツーエンド・データパスのネットワークノードにおける利用可能な電力など、追加的なまたは代替的な分析が利用されることもできる(例えば、他のファクタが存在しない状況で、より長い時間にわたって経路利用可能性を保証するために)。」 なる開示がなされている。 しかしながら、請求項1及び2に係る発明の「前記選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるすべてのノードに最大数のスロットを残し」なる発明特定事項は、「前記選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるすべてのノードに」残すとは如何なる事項を意味するのか、また、如何にして最大数のスロットを残すのかが不明であることから、上記発明特定事項は複数の意味(例えば、「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるノードに残るスロットの総数が最大となるようにすること」、「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるノードの内の残るスロットが最少となるノードに残るスロットが最大数となるようにすること」或いは「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるノードの各々で、他の選択されたエンドツーエンド・データパスとの比較において、残るスロットが最大数となるようにすること」など)に解釈することが可能であって、上記発明特定事項に含まれる技術的範囲が明確でない。 このため、請求項1及び2に係る発明は明確でない。 また、発明な詳細な説明には、上記発明特定事項について、如何なる事項を意味するのか、また、如何にして最大数のスロットを残すのか、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 このため、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及び2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」 3.平成27年3月2日付け意見書の概要 上記当審拒絶理由に対し、請求人は、平成27年3月2日付けで、次の記載事項を含む意見書(以下、「意見書」という。)を提出した。 「2.理由2(特許法第36条第4項第1号と、同条第6項第1号および2号とに規定の要件違反)について (1)指摘(1)について 本願明細書の段落[0023]に「ブロック203における動作は、所望されるエンドツーエンド・データフローを提供する際に使用するための最良のエンドツーエンド・データパスを選択するために、そのようなエンドツーエンド・データパスに関して可能性のあるリソース割当てを分析することができる。例えば、エンドツーエンド・データフローに関する可能なリソース割当てが、・・・エンドツーエンド・データパス内の実質的にすべてのノードのところに最大数のリソース(例えば、タイムスロット)を残すなどの、エンドツーエンド・データパスとリソース割当てとの組合せを決定するために、分析されることができる。」と記載されています。 上記記載によれば、エンドツーエンド・データパスとリソース割当てとの組合せを決定するために、エンドツーエンド・データパス内のすべてのノードのところに最大数のリソース(選択されたすべてのノードに残るスロットに最大数のリソース)を残すことが開示されていると思料いたします。 上記のように、本願明細書は、選択されたノードすべてに最大数のリソースを残すことを開示しています。したがって、所望されるエンドツーエンド・データフローを提供する際に選択する可能性のあるノードすべてに最大数のリソースを残すように実施することは当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであると思料いたします。」 4.特許請求の範囲の記載 平成27年3月2日付けで手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1(以下、「請求項1」という。)の記載は以下のとおりである(なお、下線は請求人が付与。)。 「【請求項1】 分散型のマルチホップ時分割多元接続(TDMA)ネットワークにおいてエンドツーエンド・データパスを選択する方法であって、前記エンドツーエンド・データパスは、各ノードにおいて十分な利用可能なリソースを有する複数のエンドツーエンド・データパスから選択され、それによって、所望されるエンドツーエンド・データフローに関するサービス品質(QoS)を保証し、前記方法は、ノードが実行し、前記方法は、 ネットワークのノードにリソース制約情報を伝播させることと、 前記リソース制約情報を使用して、前記少なくとも1つのエンドツーエンド・データパスの各ネットワークノードにおけるリソース利用可能性が、前記エンドツーエンド・データフローの前記QoSを満たすことが可能か否かを決定することと、 前記選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるすべてのノードのところに最大数のスロットを残し、それによって、新たなデータフローが、それらのQoSが満たされた状態で前記ネットワークに受け入れられる可能性を高めることに基づいて、前記所望されるエンドツーエンド・データフローのために少なくとも1つのエンドツーエンド・データパスを選択することと、 前記QoSを満たす前記エンドツーエンド・データフローを提供するために、前記選択されたエンドツーエンド・データパスの各ネットワークノードに通信リソースを割り当てることと を備え、前記選択することは、ロバストなルーティングのために複数のエンドツーエンド・データパスを選択することを備える、 方法」 5.明細書の記載 本願の明細書には、請求項1に係る発明の「前記選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるすべてのノードのところに最大数のスロットを残し」なる発明特定事項に関連して、以下の記載がなされている。(なお、下線は当審が付与。) 「【0023】 示された実施形態のブロック203において、エンドツーエンド・データフローの通信要件を満たすことが可能なエンドツーエンド・データパスが選択され、エンドツーエンド・データパスのネットワークノード、およびそれらの関連リンクに関してリソースが割り当てられる。ブロック202において、複数のエンドツーエンド・データパス(例えば、ネットワークノードの異なるセット)が、エンドツーエンド・データフローの通信要件を満たすことが可能な各ノードにおけるリソース利用可能性を備えると決定された場合、ブロック203における動作は、所望されるエンドツーエンド・データフローを提供する際に使用するための最良のエンドツーエンド・データパスを選択するために、そのようなエンドツーエンド・データパスに関して可能性のあるリソース割当てを分析することができる。例えば、エンドツーエンド・データフローに関する可能なリソース割当てが、エンドツーエンド・データフローのために使用されるリソース(例えば、タイムスロット)の総数を最小限に抑える、(例えば、QoS要件が満たされた状態で新たなフローがネットワークに受け入れられる可能性を高めるために)エンドツーエンド・データパス内の実質的にすべてのノードのところに最大数のリソース(例えば、タイムスロット)を残すなどの、エンドツーエンド・データパスとリソース割当てとの組合せを決定するために、分析されることができる。特定のエンドツーエンド・データパスを選択する際に、エンドツーエンド・データパスのネットワークノードにおける利用可能な電力など、追加的なまたは代替的な分析が利用されることもできる(例えば、他のファクタが存在しない状況で、より長い時間にわたって経路利用可能性を保証するために)。」 6.当審の判断 上記5.のように、「(例えば、QoS要件が満たされた状態で新たなフローがネットワークに受け入れられる可能性を高めるために)エンドツーエンド・データパス内の実質的にすべてのノードのところに最大数のリソース(例えば、タイムスロット)を残す」ことは、明細書に記載されている。 しかしながら、請求項1に係る発明の「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるすべてのノードのところに最大数のスロットを残し」なる発明特定事項について、「すべてのノードのところに」残すとは如何なる事項を意味するのか、また、「最大数のスロット」を残すとは如何なる母集合の中でスロットが最大となるのかが不明である。 上記発明特定事項の技術的意味が不明であるため、上記発明特定事項の技術的意味を推考しても、上記発明特定事項は単一な意味に解釈することはできず、複数な意味(例えば、「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるノードに残るスロットの総数が最大となるようにすること」、「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるノードの内の残るスロットが最少となるノードに残るスロットが最大数となるようにすること」或いは「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるノードの各々で、他の選択されたエンドツーエンド・データパスとの比較において、残るスロットが最大数となるようにすること」など)に解釈され、これらのうちのいずれをもって上記発明特定事項を解釈すべきであるのか不明である。 上記発明特定事項を解釈するために上記5.に摘記した本願の明細書の段落【0023】を参照したとしても、該明細書の記載の記載は上記発明特定事項の換言にすぎず、上記発明特定事項を解釈するうえで有用な記載を含んでいない。 このため、上記発明特定事項はその技術的意味が不明であると共に、上記発明特定事項に含まれる技術的範囲が明確ではない。 また、「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるすべてのノードのところに最大数のスロットを残し」なる上記発明特定事項に関して、上記5.の記載は上記発明特定事項の換言にすぎず、「すべてのノードのところに」残すとは如何なる事項を意味するのか、また、「最大数のスロット」を残すとは如何なる母集合の中でスロットが最大となるのかについて開示していないとともに、上記発明特定事項の実施態様も開示されていない。 このため、上記発明特定事項について、発明な詳細な説明に、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分な開示があると認められない。 さらに、請求人は、意見書において、「上記のように、本願明細書は、選択されたノードすべてに最大数のリソースを残すことを開示しています。したがって、所望されるエンドツーエンド・データフローを提供する際に選択する可能性のあるノードすべてに最大数のリソースを残すように実施することは当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであると思料いたします。」と主張しているが、「本願明細書は、選択されたノードすべてに最大数のリソースを残すことを開示してい」ることを唯一の根拠として、「所望されるエンドツーエンド・データフローを提供する際に選択する可能性のあるノードすべてに最大数のリソースを残すように実施することは当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである」ことは認められない。 このため、該主張をもって、請求項1に係る発明の「選択されたエンドツーエンド・データパスにおけるすべてのノードのところに最大数のスロットを残し」なる発明特定事項が明確であり、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分な開示があるとはいえない。 よって、請求項1に係る発明は未だに明確でないとともに、発明な詳細な説明には、未だに当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 7.むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとともに、本願の明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、本願は特許を受けることができない。 したがって、他の理由について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-20 |
結審通知日 | 2015-03-24 |
審決日 | 2015-04-07 |
出願番号 | 特願2012-520790(P2012-520790) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(H04W)
P 1 8・ 536- WZ (H04W) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保 光宏 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 佐藤 聡史 |
発明の名称 | マルチホップネットワークデータフローに関する通信制約を満たすリソース割当てを提供するためのシステムおよび方法 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 井上 正 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 赤穂 隆雄 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 岡田 貴志 |