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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1304917
審判番号 不服2014-7720  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-25 
確定日 2015-09-02 
事件の表示 特願2012-261866「偏光光照射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日出願公開,特開2013-152433〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年1月25日に出願した特願2012-13288号(以下,「原出願」という。)の一部を平成24年11月30日に新たな特許出願としたものであって,平成25年10月28日付けで拒絶理由が通知され,同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成26年1月21日付けで拒絶査定がなされたところ,同年4月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成26年4月25日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
平成26年4月25日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成25年12月24日提出の手続補正書による手続補正によって補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲について補正しようとするものであって,そのうち,請求項1についての補正は次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
(1)本件補正前
「線状の光源と,該光源からの光を偏光する偏光素子と,上記光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁とを備えた偏光光照射装置において,上記偏光素子は透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって,
上記外壁に形成した光出射口に偏光素子ユニットを取り付け,該偏光素子ユニットにはワイヤーグリッド偏光素子がワイヤーグリッドを形成された面を光源側に向けて配置されていることを特徴とする偏光光照射装置。」

(2)本件補正後
「線状の光源と,該光源からの光を偏光する偏光素子と,上記光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁とを備えた偏光光照射装置において,
上記偏光素子は透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって,
上記外壁に形成した光出射口を塞ぐように偏光素子ユニットを取り付け,
該偏光素子ユニットは,複数のワイヤーグリッド偏光素子を保持枠内に並べて保持したものであり,
該偏光素子ユニットにはワイヤーグリッド偏光素子がワイヤーグリッドを形成した面を光源側に向けて配置されていることを特徴とする偏光光照射装置。」

2 新規事項の追加の有無及び補正の目的について
(1)補正事項
請求項1についての本件補正は,
ア 本件補正前の「透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子」なる記載を,「透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子」と補正する。(以下,「補正事項1」という。)
イ 本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「外壁に形成した光出射口」に取り付けられた「偏光素子ユニット」が,「光出射口を塞ぐように」取り付けられていることを限定する。(以下,「補正事項2」という。)
ウ 本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「偏光素子ユニット」が,「複数のワイヤーグリッド偏光素子を保持枠内に並べて保持したもの」であることを限定する。(以下,「補正事項3」という。)
エ 本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ワイヤーグリッドを形成された面」を,「ワイヤーグリッドを形成した面」に補正する。(以下,「補正事項4」という。)
との補正事項からなるものである。

(2)新規事項の追加の有無
補正事項1による補正後の「透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子」なる記載が誤記であって,当該記載が「透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子」を意味していることは明らかであるから,本件補正の前後で,その指し示す内容に実質的な違いはないと認める。
また,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面をそれぞれ「当初明細書」,「当初特許請求の範囲」及び「当初図面」といい,これらを併せて「当初明細書等」という。)を検討すると,補正事項2における限定事項である,偏光素子ユニットが光出射口を塞ぐように取り付けられる点については,当初図面の図1から,少なくとも,当該図1が示す「ランプハウスの長手方向に対して直交する方向の断面」(【0015】)においては,偏光素子ユニット80(保持枠82を含む)と光出射口70との間に隙間がないことを把握できること,及び,当初明細書に「第1の実施例」として記載された「偏光光照射装置」において,光出射口70が偏光素子ユニット80によって塞がれていないと,光出射口70と偏光素子ユニット80の間の隙間から偏光していない光(紫外線)が漏れ出て,ワークWに照射されてしまう等の不都合が生じる恐れがあることが当業者に自明であることから,当該限定事項は,本願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であると認められる。
また,補正事項3における限定事項である,偏光素子ユニットが複数のワイヤーグリッド偏光素子を保持枠内に並べて保持したものである点は,当初明細書の【0018】及び【0019】に記載されている。
さらに,補正事項4は,本件補正前の記載の文法上の誤りを正すものであって,本件補正の前後で,その指し示す内容に実質的な違いはない。
したがって,請求項1についての本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされた補正であるから,特許法17条の2第3項の規定に適合する。

(3)補正の目的
補正事項1は,特許法17条の2第5項1号ないし4号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。(なお,当該補正事項1による補正が誤記であることは明らかであるので,当該補正事項1による補正の目的が特許法17条の2第5項各号のいずれの事項にも該当しないことを理由として,本件補正を却下することはしない。)
補正事項2及び3は,いずれも,本件補正前の請求項1に記載された「偏光素子ユニット」なる発明特定事項を限定するものであって,本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,補正事項4は,本件補正前の「ワイヤーグリッドを形成された面」という記載の文法上の誤りを正すものであって,当該記載が「ワイヤーグリッドを形成した面」を意味していることは明らかであるから,特許法17条の2第5項3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
請求項1についての本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含んでいるから,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するのか否か(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か)について検討する。
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1の記載は,前記1(2)に示したとおりのものであるところ,当該請求項1の「透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子」なる記載は誤記であって,正しくは「透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子」であることが明らかであるから,本願補正発明は当該誤記を訂正した次のとおりのものと認められる。

「線状の光源と,該光源からの光を偏光する偏光素子と,上記光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁とを備えた偏光光照射装置において,
上記偏光素子は透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって,
上記外壁に形成した光出射口を塞ぐように偏光素子ユニットを取り付け,
該偏光素子ユニットは,複数のワイヤーグリッド偏光素子を保持枠内に並べて保持したものであり,
該偏光素子ユニットにはワイヤーグリッド偏光素子がワイヤーグリッドを形成した面を光源側に向けて配置されていることを特徴とする偏光光照射装置。」

(2)引用例
ア 特開2006-184747号公報
(ア)特開2006-184747号公報の記載
原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された特開2006-184747号公報(以下,「引用刊行物」という。)は,特許法44条2項の規定により本願の出願時とみなされる原出願の出願時より前(以下,単に「本願の出願前」という。)に頒布された刊行物であって,当該引用刊行物には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶素子の配向膜や,紫外線硬化型液晶を用いた視野角補償フィルムの配向層などに偏光光を照射し,配向特性を生じせしめる偏光光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,液晶パネルを始めとする液晶表示素子の配向膜や,視野角補償フィルムの配向層などの配向処理に関し,所定の波長の偏光光を照射し配向を行なう,光配向と呼ばれる技術が採用されるようになってきた。以下,光により配向を行う配向膜や,配向層を設けたフィルムなど,光により配向特性が生じる膜や層を総称して光配向膜と呼ぶ。
光配向膜は,それが使用される液晶パネルの大型化と共に大型化している。例えば,視野角補償フィルムは,帯状の長いワークであり,配向処理後所望の長さに切断されるものであるが,最近の物の中には,その幅が1500mmと幅広化してきている。
上記のような幅の広い帯状の光配向膜用の光配向用装置として,例えば特許文献1や特許文献2に記載のものが提案されている。
上記特許文献1,2においては,光配向膜の幅に相当する長さの,線状の光源である棒状のランプからの光を,偏光素子により偏光し,棒状ランプの長手方向に対して直交する方向に搬送される配向膜に対して照射することが提案されている。
棒状ランプは,従来より比較的長いものが製造されており,光配向膜の幅方向に対応するような,例えば上記した1500mmといった長さのものを製造することができる。
しかし,棒状ランプから放射される光は拡散光なので,拡散光を効率よく偏光する偏光素子を選択する必要があり,上記公報では,そのような偏光素子としてワイヤーグリッド偏光子と呼ばれる偏光素子が使用されている。
【0003】
ワイヤーグリッド偏光素子については,例えば特許文献3や特許文献4に詳細が示されている。概略の構造は,図11に示すように,長さが幅よりもはるかに長い複数の直線状の電気導体10a(例えばクロムやアルミニウム等の金属線。以下グリッドと呼ぶ)を,同一平面上(例えば石英ガラスなどの基板10b上)に平行に配置したものである。光路中に該偏光素子を挿入すると,グリッドの長手方向に平行な偏光成分は大部分反射され,直交する偏光成分は通過する。したがって,照射される偏光光の偏光軸の方向は,偏光素子のグリッドの長手方向に直交する方向になる。
ワイヤーグリッド偏光素子の特徴として,偏光光の消光比の入射角度(偏光素子に入射する光の角度)依存性が小さいことが知られている。
図12に,棒状ランプとワイヤーグリッド偏光素子を組み合わせた偏光光照射装置の構成例を示す。
高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の棒状ランプ21と,ランプ21からの光を反射する断面が楕円形の樋状集光鏡22を備えた光照射部20を,ランプ21の長手方向が,ワーク40上に形成された光配向膜41の幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置する。光照射部20には,ワイヤーグリッド偏光素子10が設けられている。ワイヤーグリッド偏光素子10は,ランプ21の発光長よりやや長い一辺を持つ長方形状で,その長手方向がランプ21の長手方向に一致するように設けられている。
・・・(中略)・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように,ワイヤーグリッド偏光素子は,入射角度依存性が小さく,斜めに入射する光についても偏光することができる。しかし,発明者らが実験したところ,偏光素子に斜めに入射した光による偏光光は,垂直かそれに近い角度で入射した光による偏光光に比べると,偏光軸が回転し,偏光軸のずれ(以下軸ずれと呼ぶ)を生じることが分かった。偏光光に軸ずれが生じると,光照射領域において偏光軸のばらつきが生じる。
偏光軸がばらついた偏光光により光配向処理を行うと,処理された配向膜を使って作られた液晶表示素子のコントラストが場所により異なり,むらとして目に映るといった問題が生じる。このため,光照射領域での偏光軸のばらつきが士0.1°以内であることが要求される場合もある。
・・・(中略)・・・
棒状ランプのような拡散光を放射する光源を用いる場合,偏光素子にはさまざまな入射角で光が入射するので,偏光素子から出射する偏光光の偏光軸はばらつく。したがって,偏光光が照射される領域での偏光軸のばらつきが大きくなる。
・・・(中略)・・・
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであって,拡散光をワイヤーグリッド偏光素子に入射させて,ワイヤーグリッド偏光素子から出射される偏光光を配向膜に照射して光配向を行う偏光光照射装置において,ワイヤーグリッド偏光素子から出射される偏光光の偏光軸ばらつきを少なくし,光照射領域での偏光軸のばらつきを少なくすることを目的とする。」

b 「【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために種々検討した結果,次のことがわかった。
ワイヤーグリッド偏光子に,ある照度と角度で入射する光の成分に対し,それと同じ照度であり,かつ対称な角度で入射する光の成分を加えると,偏光軸のずれが相殺され,垂直入射と同じ偏光軸の偏光光が出射することを見出した。
・・・(中略)・・・
【0008】
したがって,偏光素子に全方位からバランスよく光を入射させるための補助光学手段を設けることにより,出射する偏光光の偏光軸のばらつきを少なくすることができ,光照射領域での偏光軸のばらつきを少なくすることができる。
・・・(中略)・・・
すなわち,拡散光を出射する光照射部の光出射口を,筒状の反射ミラーにより取り囲み,該筒状の反射ミラーから出射する光をワイヤーグリッド偏光素子に入射させる。」

c 「【発明の効果】
【0010】
本発明においては,以下の効果を得ることができる。
(1)補助光学手段として筒状反射ミラーを用い,光照射部から出射する拡散光が,光照射部の出射口を取り囲むミラーにより反射するようにしたので,偏光素子に光を,全方位からバランスよく入射させることができる。したがって,偏光素子から出射する偏光光の軸ずれを少なくすることができる。」

d 「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の第1の実施例の偏光光照射装置の構成を示す図であり,同図(a)は,本実施例の偏光光照射装置を棒状ランプの長手方向から見た断面図,(b)は棒状ランプの長手方向に直交する方向から見た断面図である。
光照射部20には,前記図11と同様に,線状の光源である,高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の棒状のランプ21と,ランプ21からの光を反射する樋状の集光鏡が内蔵されている。なお,本図を含め以下の図において,棒状ランプ21は発光長を示している。
また,光照射部20には,光配向膜が配置される側には光出射口である開口20aが設けられ,上記ランプ21からの直射光と集光鏡からの反射光が,拡散光として出射する。
ここでは,光源として棒状ランプを例にして説明するが,近年は,紫外光を放射するLEDやLDも実用化されており,このようなLEDまたはLDを直線状に並べて配置すれば,棒状ランプと同等の線状の光源として使用できる。なおその場合は,LEDまたはLDを並べる方向がランプの長手方向に相当する。
なお,現在光配向膜の材料としては,波長260nm土20nmの光で配向されるもの,280nm?330nmの光で配向されるもの,365nmの光で配向されるものなどが知られており,光源の種類は必要とされる波長に応じて適宜選択する。
【0012】
光照射部20の光出射口20a側には,両端が開放された内面が反射面の筒型の補助光学手段(以下,筒型ミラー23と呼ぶ)が設けられる。
筒型ミラー23は,光照射部20から出射するすべての光が入射するように,光照射部の光出射口20aを,筒型ミラー23の開放された一方の端により囲って設けられる。
筒型ミラー23に入射した光は,直接,または内面の反射面で反射されて,もう一方の開放された端から出射する。
ワイヤーグリッド偏光素子10は,この筒型ミラー23の光が出射される側に設ける。筒型ミラー23から出射した光は,上記偏光素子10により偏光され,光配向膜41に照射される。
【0013】
図2は,筒型ミラー23を介してワイヤーグリッド偏光素子10に入射する光を模式的に示す図である。同図を用いてワイヤーグリッド偏光子10に入射する光のバランスについて説明する。なお,光配向膜に入射する光のバランスについても同様に説明できる。
同図に示すように,筒型ミラー23の内側反射面には,光照射部20の棒状ランプ21光源像が映り,同図点線で示す位置に光源の虚像が生じる。
ここで,前記図14と同様に,棒状ランプ21の端に当たる偏光素子面Aに入射する光の成分を考える。従来であれば,部分Aには,光源からの直射光が,例えば入射角+δ(実線b)や+θ(実線a)で入射するのみであった。
しかし,筒型ミラー23を設けることにより,部分Aには,反射面に映る光源の虚像からの光が,入射角-δ(点線d)や-θ(点線e)で入射する。
この虚像からの光は,従来であれば偏光素子の光入射面外に向かうため使用されない光(実線e,実線f)であったものが,筒型ミラーの内側反射面により反射されて偏光素子に入射するものである。
これにより,部分Aには全方位からバランスよく光が入射することになり,偏光素子から出射する偏光光の軸ずれが相殺される。したがって,光照射領域での偏光軸のばらつきが少なくなる。」

e 「【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施例の偏光光照射装置の構成を示す図である。
【図2】図1において筒型ミラーを介してワイヤーグリッド偏光素子に入射する光を模式的に示す図である。
・・・(中略)・・・
【図11】ワイヤーグリッド偏光素子の概略の構造を示す図である。
・・・(中略)・・・
【図1】

【図2】

・・・(中略)・・・
【図11】



(イ)引用刊行物に記載された発明
引用刊行物の【0011】に記載された「第1の実施例」で用いているワイヤーグリッド偏光素子10が,【0003】に記載された「長さが幅よりもはるかに長い複数の直線状の電気導体10a(例えばクロムやアルミニウム等の金属線。以下グリッドと呼ぶ)を,同一平面上(例えば石英ガラスなどの基板10b上)に平行に配置した」という構成を有することは明らかであるから,前記(ア)aないしeで摘記した記載からは,引用刊行物には次の発明が記載されていると認められる。

「線状の光源である,高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の棒状ランプ21と,当該棒状ランプ21からの光を反射する樋状の集光鏡22が内蔵され,光配向膜が配置される側に前記棒状ランプ21からの直射光と前記集光鏡からの反射光の光出射口である開口20aが設けられた光照射部20と,
両端が開放され,内面が反射面となっている筒型ミラー23であって,前記光照射部20から出射するすべての光が入射するように,前記光照射部20の前記光出射口20aを,開放された一方の端により囲って設けられた筒型ミラー23と,
例えばクロムやアルミニウム等の金属線である複数のグリッド10aが,例えば石英ガラスなどの基板10b上に平行に配置されたワイヤーグリッド偏光素子10であって,前記筒型ミラー23の光が出射される側に設けられたワイヤーグリッド偏光素子10と,
を有し,
前記棒状ランプ21からの直射光と前記集光鏡22からの反射光を前記ワイヤーグリッド偏光素子10によって偏光し,当該ワイヤーグリッド偏光素子10から出射される偏光光を光配向膜41に照射して光配向を行う偏光光照射装置。」

イ 周知の事項
(ア)特開2006-126464号公報の記載
特開2006-126464号公報(以下,「周知例1」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該周知例1には次の記載がある。(下線は,後述する第1周知技術及び第2周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,ワイヤーグリッド偏光素子を利用した偏光素子ユニット及び,この偏光素子ユニットを使用して,液晶表示素子の配向膜や紫外線硬化型液晶を用いた視野角補償フィルムの配向層などの配向膜の光配向を行なう偏光光照射装置に関する。」

b 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤーグリッド偏光素子のグリッドの間隔は,前記したように偏光する光の波長よりも短い(望ましくは波長の1/3以下)必要がある。
現在,光配向には波長280nm?320nmの紫外線が用いられる。したがって,光配向用偏光光照射装置に用いるワイヤーグリッド偏光素子は,100nm程度のグリッドを形成する,微細な加工技術が必要である。
そのため,半導体製造に使われるリソグラフィ技術やエッチング技術を利用して,ガラス基板(ガラスウエハ)上にグリットを形成し,適度な大きさに切断して用いる。
しかし,半導体製造に使われる蒸着装置,リソグラフィ装置,エッチング装置等の処理装置は,処理することができる基板の大きさが,現状ではφ300mm程度までであり,大面積のワークに対応できるような大型の偏光素子は製作できない。
そこで,発光長の長い棒状の光源,例えば長さ1500mmの棒状の高圧水銀ランプやメタルハライドランプに応じた,大きな偏光素子が必要な場合,前記特許文献2においてはガラス基板から切り出したワイヤーグリッド偏光素子を1個の偏光子とし,この偏光子を複数,グリッドの方向をそろえ,ランプの長手方向に沿って並べ,一つの偏光素子として使用することが提案されている。ワイヤーグリッド偏光素子を並べて配置するほかの例としては,例えば特許文献5に記載のものがある。
【0006】
しかし,単にワイヤーグリッド偏光素子を並べだけでは,次のような問題がある。
上記したように,ワイヤーグリッド偏光素子の1つ1つは,ガラス基板から切り出している。したがって,その1つ1つのエッジは微小な欠けや凹凸が生じており,これらの偏光素子を突き当てて並べただけでは,その隙間から,光源からの直射光,即ち無偏光光が漏れ,消光比が悪くなる。また,上記したエッジ付近の欠けが,グリッドの欠損を引き起こし,偏光素子の周辺部においては消光比が悪くなる。
・・・(中略)・・・
【0007】
・・・(中略)・・・
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって,ワイヤーグリッド偏光素子を並べて構成する偏光素子ユニットにおいて,偏光素子の境界部分から無偏光光や消光比の悪い偏光光が漏れるのを防ぎ,また,偏光光の偏光軸の方向が偏光素子間でずれること防止した偏光素子ユニット,および該偏光素子ユニットを使用して光配向膜を光配向することができる偏光光照射装置を提供することを目的とする。」

c 「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の第1の実施例の偏光素子ユニットの構成を示す図であり,図1(a)は,本実施例の偏光素子ユニット10を照射光の光軸方向から見た図,図1(b)は偏光素子ユニット10の側面図,図1(c)は遮光板の取り付け例を示す図である。
図1(a)(b)に示すように,上フレーム2a,下フレーム2bからなるフレーム2内にガラス基板から切り出されたワイヤーグリッド偏光素子1が複数並べて配置されている。偏光素子1の配列方向端部(境界部分)には,遮光板3が設けられる。
遮光板3は,例えば図1(c)に示すように取り付けられる。すなわち,フレーム2を上フレーム2a,下フレーム2bから構成し,下フレーム2bの上に複数のワイヤーグリッド偏光素子1を並べ,その上から遮光板と一体となった上フレーム2aをかぶせ固定する。
図1に示すように,遮光板3を設けることにより,遮光板3を設けた部分の照度は低下するが,並べて配置した偏光素子1の隙間から無偏光光が漏れず消光比は低下しない。」

d 「【0017】
上記,実施例はいずれも,光照射部からの偏光光が,光配向膜に対して基本的に垂直に入射する構成である。これに対し,図11に示すように光配向膜に対し,偏光光を斜めに入射させることが求められる場合がある。これは,例えば,液晶を光配向膜に対して所定の角度(プレチルト角という)立ち上げるために行われる。
光照射部からの偏光光の光軸が,光配向膜31に対して斜めになるようにするには,図12に示すように,光照射部20とこれを支持する支柱23をつなぐブロック25に対し,光照射部20を回転軸受24により回転自在に取り付ける。回転軸受けの軸24aは,光照射部20に設けられたランプの長手方向の中心軸と略一致しており,光照射部20は軸24aを中心に同図の矢印方向に回転する。
これにより,光照射部20もしくは光配向膜31の移動方向に直交し,光配向膜31の面に平行な軸を中心として,光照射部20を回転(揺動)させることができる。また,光照射部20を傾けた状態に保持させるための固定手段を適宜設ける。
そして,偏光光を斜めに照射したい場合は,光照射部20をブロックに設けた回転軸受により,光配向膜31と平行な軸の回りに揺動移動させ,光軸が所望の角度になるように調整する。
【0018】
ここで,図11に示すように,光照射部を傾けて斜めに入射させる場合,上記回転軸受の位置が移動しないと,光配向膜31に対して偏光光を垂直に入射させる場合と,斜めに入射させる場合とでは,ランプから光配向膜31までの距離が変化する。すなわち,垂直に偏光光を入射させる場合に比べ,斜めに入射させた場合のほうが,光照射部から光配向膜31までの距離が長くなる。
そこで,光照射部を傾けて光を斜めに入射させても,距離の変化がないように以下の構成にすることが考えられる。
(a)図13(a)に示すように,光照射部20を振り子のように傾け,光照射部のランプ21の中心が光照射面を中心とする円弧上を移動するように構成する。
(b)図13(b)に示すように,光照射部20を傾けたとき,ランプ21と光照射面の距離が等しくなるように,光配向膜31の搬送面を光照射部20に近づける。
(c)図13(c)に示すように,光照射部20を傾けたとき,ランプ21と光照射面の距離が等しくなるように,光照射部20を光配向膜31に近づける。」

e 「【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施例の偏光素子ユニットの構成を示す図である。
・・・(中略)・・・
【図11】光配向膜に対し光照射部を傾けて,偏光光を斜めに入射させる場合を示す図である。
【図12】光照射部を傾けて光を斜めに入射させる場合の構成例を示す図である。
【図13】光照射部を傾けて光を斜めに入射させてもランプと光配向膜の間の距離の変化がないようにした装置の構成例を示す図である。」

f 「【図1】



g 「【図11】

【図12】

【図13】



(イ)特開2009-265290号公報の記載
特開2009-265290号公報(以下,「周知例2」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該周知例2には次の記載がある。(下線は,後述する第1周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶パネルの配向膜や,視野角補償フィルムの配向層などに所定の波長の偏光光を照射して配向を行なう光配向用偏光光照射装置に関し,特に,線状の光源である棒状ランプとワイヤーグリッド型偏光素子を組み合わせた光配向用偏光光照射装置に関するものである。」

b 「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に,本発明の実施例の偏光光照射装置の構成例を示す。
光照射部6には,図8と同様に,線状の光源である,高圧水銀ランプや,水銀に金属を加えたメタルハライドランプ等の棒状のランプ2と,ランプ2からの光を反射する樋状の反射鏡3が内蔵されている。また光出射側にはワイヤーグリッド型偏光素子1が設けられている。ここで,棒状の高圧水銀ランプやメタルハライドランプは,波長300nm以下の光を放射する光源として知られている。
なお,同図では,図8と異なり,光配向膜が形成されているワーク4は,帯状のワークではなく光透過性の基板上に光配向膜4aが形成されたパネル基板であり,ワークステージ5上に載置される。この光配向膜4aの感度は例えば200?300nmの範囲にある。
・・・(中略)・・・
【0016】
図2に本発明の実施例のワイヤーグリッド型偏光素子の構成を示す。
同図に示すように,ワイヤーグリッド型偏光素子のグリッドを,酸化チタン(TiOx)により形成する。
酸化チタンのグリッド1aは,200nm?300nmの波長の光を透過する基板(例えば石英やフッ化マグネシウム等)1bの表面に形成する。グリッドのピッチは150nmである。また,グリッド1aの高さは100nm以上である。
なお,ワイヤーグリッド型の偏光素子は大きなものは作れないので,実際に光照射部6の光出射側に配置する際には,図3に示すように,フレーム1cに,同じ種類のワイヤーグリッド型偏光素子1を複数並べて構成する。偏光素子の個数は,偏光光を照射する領域の大きさに合わせて適宜選択する。」

c 「【図面の簡単な説明】
【0024】
・・・(中略)・・・
【図3】複数の偏光素子を並べて配置したワイヤーグリッド型偏光素子の構成例を示す図である。
・・・(中略)・・・
【図3】



(ウ)特開2011-203669号公報の記載
特開2011-203669号公報(以下,「周知例3」という。)は,原査定の拒絶の理由において「引用文献5」として引用された,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該周知例3には次の記載がある。(下線は,後述する第2周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶ディスプレイ分野に関わる配向膜,位相差層を形成するための偏光露光工程に用いる偏光露光装置に関する。」

b 「【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】偏光露光装置の展開図であり,(a)は上から見た偏光露光装置,(b)は横から見た偏光露光装置,(c)は偏光子の直上から見た偏光露光装置である。」

c 「【0036】
図1はロングアーク方式の紫外線照射装置に偏光子を搭載した形態の偏光露光装置の展開図であり,(a)は上から見た偏光露光装置,(b)は横から見た偏光露光装置,(c)は偏光子の直上から見た偏光露光装置である。
図1(a),(b)に示すように,本実施形態の偏光露光装置は,ロングアークの紫外線光を発光するUVランプ2を複数本収容したUVランプボックス1と,UVランプボックス1の下方に配置された基板搬送コンベア3とを有している。UVランプボックス1は,カラーフィルターの製造プロセスにおける洗浄工程でロングアーク方式の光源ランプとして用いるものを活用している。なお,本実施形態では,172nmの単一輝線の紫外光を出力するUVランプ2を用いている。
UVランプボックス1は,基板搬送コンベア3に対向する面に,UVランプ2からの紫外線光を出射させる照射窓6を有している。この照射窓6の外側には,金属膜スリット7aを複数有し,172nmの紫外光を偏光可能とするワイヤグリッド偏光子(以下,偏光子と略記することがある)7が設置してあるが,照射窓6の内側,つまりUVランプボックス1内に設置してもかまわない。つまり,UVランプ2から被露光基板5までの紫外線光の光路上に位置していればよい。また,偏光子7を照射窓6と別体にせず,照射窓6を構成する石英ガラス自体に直接偏光機能を具備させて,偏光子7を照射窓6と一体に構成してもよい。
基板搬送コンベア3は,複数の搬送コロ4の回転により配向膜である被露光基板5を搬送し,UVランプボックス1の照射窓6から出射されたUVランプ2からの紫外線光の照射エリアを通過させるものである。したがって,基板搬送コンベア3により搬送される被露光基板5は,偏光子7により偏光された偏光紫外線光により露光される。この露光により被露光基板5には,偏光紫外光の偏光方向8(図2)に平行,または垂直の方向に配向規制力が付与される。」

d 「【図1】



(エ)特開2010-91906号公報の記載
特開2010-91906号公報(以下,「周知例4」という。)は,原査定の拒絶の理由において「引用文献2」として引用された,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該周知例4には次の記載がある。(下線は,後述する第3周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の一つとしての液晶装置は,シール材を介して貼り合わされた一対の基板と,該一対の基板の間に封入された液晶層とを備えている。該一対の基板の液晶層側の面には,液晶層に含有される液晶分子を所定の方向に配向させるための配向膜が形成されている。かかる配向膜の配向処理方法として,近年,光配向材料に偏光を露光することにより配向処理を行なう光配向が注目されている(例えば特許文献1)。
【0003】
かかる光配向方法の一つとして,ロングアーク型,すなわち蛍光灯型(長尺状)の光源から照射される光を偏光子を介して配向膜に照射する方法がある(例えば特許文献2)。配向膜が形成された基板を上述の光源の下を搬送することにより,大面積の配向膜の配向処理を効率的に行なうことができる。」

b 「【0040】
図5は,本実施形態,及び後述する第2?第4の実施形態に共通する,光配向処理方法を示す図であり,長尺状の光源32の長手方向33(図6参照)から見た模式断面図である。また,かかる光配向処理方法に用いる装置を示す図でもある。図6は,本実施形態にかかる電気光学装置の製造方法としての光配向処理方法を模試的に示す斜視図である。光源32と集光鏡36と光源32から照射される照射光39とワイヤーグリッド偏光子42と集光レンズ34とマザー基板Wとを図示し,搬送手段38(図5参照)は図示を省略している。以下,上記双方の図を用いて説明する。
【0041】
図5,及び図6に示すように,本実施形態の光配向処理方法に用いる装置は,光源32と,集光鏡36と,ワイヤーグリッド偏光子42と,集光レンズ34と,搬送手段38と,を備えている。光源32は,光配向処理を行なうための紫外線を照射する光源であり,図6に示すように,長尺状,すなわち中心軸を有する棒状の形状を有している。かかる中心軸の方向が長手方向33である。図示するように,長手方向はY方向と略同一である。なお,かかる「長手方向」は,ワイヤーグリッド偏光子42等の他の構成要素にも適用される概念である。集光鏡36は,少なくとも光源32と同等の長さ(長手方向の寸法)を有する長尺状の形状である。光源32の搬送手段38側の反対側を覆う様に位置しており,光源32から周囲に照射された光の多くを,ワイヤーグリッド偏光子42の方向に反射させて集光している。
・・・(中略)・・・
【0048】
ここで,ワイヤーグリッド偏光子42の構成について説明する。図7は,一般的なワイヤーグリッド偏光子の構成を示す図である。図7(a)はワイヤーグリッド偏光子の模式斜視図,図7(b)はワイヤーグリッド偏光子の,ワイヤーグリッドの延在方向に垂直な面における断面図である。
【0049】
ワイヤーグリッド偏光子42は,ガラスあるいは石英等からなる透明基板53と該透明基板上に所定のピッチをもって略平行に配列された幅及び高さが共通の金属体(金属細線)からなる。以下の記載において,かかる金属体をワイヤーグリッド41と称する。ワイヤーグリッド41は透明基板53上に形成された金属膜を干渉露光を用いたフォトリソグラフィー法により形成される。各ワイヤーグリッド41のピッチは,照射される光の波長以下,望ましくは1/3以下が好ましい。ワイヤーグリッド41の形成材料は,反射率の高いAl(アルミニウム)やAg(銀)が好ましい。
【0050】
かかる構造のワイヤーグリッド偏光子42は,上方から照射される光,すなわちワイヤーグリッド41から透明基板53の方向に進む光を偏光分離する性質を有している。具体的には,波長が上述のピッチ,幅,及び高さよりも小さい光が本図における上方から照射された場合,上記光を構成する振動成分のうち,ワイヤーグリッド41の長手方向(延在する方向)と平行する偏光成分を反射し,金属体の長手方向と直交する偏光成分を透過させる性質を有している。したがって自然光を直線偏光にすることができる。
【0051】
図8は,本実施形態で用いられるワイヤーグリッド偏光子42を示す図である。図8(a)はワイヤーグリッド偏光子42を構成する第1のワイヤーグリッド偏光子42aと第2のワイヤーグリッド偏光子42bとの模式平面図,図8(b)はワイヤーグリッド偏光子42の模式斜視図,図8(c)はワイヤーグリッド偏光子42のYZ面における模式断面図である。
【0052】
図8(b)に示すように,ワイヤーグリッド偏光子42は,2つのワイヤーグリッド偏光子,すなわち第1のワイヤーグリッド偏光子42aと第2のワイヤーグリッド偏光子42bとを,若干の間隔を有するように重ねて形成されている。なお,以下の記載において,ワイヤーグリッド偏光子42は,上記2つのワイヤーグリッド偏光子(a,b)の総称としても用いる。
【0053】
図8(a)に示すように,第1のワイヤーグリッド偏光子42aは,透明基板53上の第1の領域51にY方向(すなわち走査線102に直交する方向)に延在するワイヤーグリッド41を備えている。そして,第2のワイヤーグリッド偏光子42bは,透明基板53上の第2の領域52にY方向に対して反時計回りに略45度の方向に延在するワイヤーグリッド41を備えている。上記Y方向が第1の方向であり,該Y方向に対して反時計回りに略45度の方向が第2の方向である。」

c 「【図面の簡単な説明】
【0095】
・・・(中略)・・・
【図5】第1の実施形態の光配向処理方法を示す模式断面図。
・・・(中略)・・・
【図7】ワイヤーグリッド偏光子の構成を示す図。
【図8】第1の実施形態にかかるワイヤーグリッド偏光子の模式図。
・・・(中略)・・・
【図5】

・・・(中略)・・・
【図7】

【図8】



(オ)特開2010-134068号公報の記載
特開2010-134068号公報(以下,「周知例5」という。)は,原査定の拒絶の理由において「引用文献3」として引用された,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該周知例5には次の記載がある。(下線は,後述する第3周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,電気光学装置の製造装置及び電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,電気光学装置の1つとして液晶装置がある。液晶装置は,液晶を配向させるための配向膜を有している。
配向膜としては,樹脂などの有機材料で構成される膜に,液晶を配向させるための処理(以下,配向処理と呼ぶ)を施したものが知られている。そして,配向処理の1つとして,光配向処理が知られている(例えば,特許文献1参照)。」

b 「【0107】
ここで,膜63c及び膜97cのそれぞれに対する配向処理について説明する。
本実施形態では,膜63c及び膜97cのそれぞれに,光の波長が240nm?365nmの紫外光を照射することで配向処理を行う所謂光配向が採用されている。
まず,光配向に適用される光照射装置について説明する。
【0108】
本実施形態における光照射装置190は,図21に示すように,光源部191と,照明光学系193と,偏光分離部195と,投影光学系197と,搬送装置199と,を有している。
光源部191は,光源201と,リフレクタ203と,を有している。
・・・(中略)・・・
【0110】
偏光分離部195は,光路200Pにおいて,照明光学系193と搬送装置199との間に設けられている。本実施形態では,偏光分離部195は,ワイヤーグリッド偏光子207を有している。
・・・(中略)・・・
【0116】
平行光251bは,ワイヤーグリッド偏光子207に入射される。
ここで,ワイヤーグリッド偏光子207は,図23に示すように,基板231に多数のワイヤー233を設けた構成を有している。ワイヤー233は,基板231の一方の主面231aに設けられている。ワイヤー233は,P方向に延在している。多数のワイヤー233は,S方向に間隔Kで並んでいる。間隔Kは,光235の波長よりも短い距離に設定されている。
【0117】
ワイヤーグリッド偏光子207に入射される光235のうち,P方向に沿った偏光軸を有する偏光成分235aは,反射される。S方向に沿った偏光軸を有する偏光成分235bは,ワイヤーグリッド偏光子207を透過する。これにより,光235から,偏光成分235bを分離することができる。なお,基板231の材料としては,例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料が採用され得る。また,ワイヤー233の材料としては,例えば,光反射性が高い金,銀,アルミニウムなどが採用され得る。
光照射装置190において,ワイヤーグリッド偏光子207は,ワイヤー233側が照明光学系193側(図22)に向いた状態で設けられている。」

c 「【図面の簡単な説明】
【0146】
・・・(中略)・・・
【図21】第1実施形態における光照射装置の主要構成を示す斜視図。
【図22】第1実施形態における光照射装置の主要構成を示す側面図。
【図23】本実施形態におけるワイヤーグリッド偏光子の一部分を示す斜視図。
・・・(中略)・・・
【図21】

【図22】

【図23】



(カ)特開2011-53584号公報の記載
特開2011-53584号公報(以下,「周知例6」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該周知例6には次の記載がある。(下線は,後述する第3周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等において,基板の表面に設けられる配向膜に光を照射することで,配向膜に配向処理を行う光配向技術が知られている。光配向技術では,例えば,配向膜に対して斜めに光を照射することで,配向膜のプレチルト角の大きさと方向とを制御している。このような光配向処理を行うための光照射装置が提案されている(例えば,特許文献1および特許文献2参照)。」

b 「【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す側面図。」

c 「【0020】
(第1の実施形態)
<光照射装置の概略構成>
まず,第1の実施形態に係る光照射装置の概要について図を参照して説明する。図1は,第1の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す斜視図である。図2は,第1の実施形態に係る光照射装置の概略構成を示す側面図である。詳しくは,光源の中心軸の方向から見た側面図である。図3は,第1の実施形態に係る反射手段の概略構成を示す平面図である。詳しくは,光照射装置の光源側から見た平面図である。
【0021】
第1の実施形態に係る光照射装置1は,図1および図2に示すように,光源10と,集光鏡12と,レンズ14と,偏光分離素子としてのワイヤーグリッド偏光子20と,反射手段としてのミラーユニット30と,搬送機構40と,を備えている。光照射装置1は,液晶装置に用いられる基板100の表面に設けられた配向膜に光を照射することで光配向処理を行うための光照射装置である。
・・・(中略)・・・
【0027】
ワイヤーグリッド偏光子20は,レンズ14の基板100側に配置されている。ワイヤーグリッド偏光子20は,Y軸に沿った方向を長手方向とする長尺状であり,光源10と同等の長さ(長手方向の寸法)を有している。ワイヤーグリッド偏光子20は,基板21と,基板21上に配列された複数のワイヤーグリッド22と,で構成されている。基板21は,透明な材料からなり,例えばガラスや石英等からなる。
【0028】
ワイヤーグリッド22は,基板21のレンズ14側,すなわち光源10からの光11が照射される側に位置している。ワイヤーグリッド22は,Y軸に沿った方向に延在する直線状の形状を有しており,X軸に沿った方向に所定のピッチで互いに略平行に配列されている。ワイヤーグリッド22の配列ピッチは,照射される光11の波長以下であり,光11の波長の1/3以下であることが好ましい。ワイヤーグリッド22は,光反射率の高い金属体(金属細線)からなり,例えば,Al(アルミニウム)やAg(銀)等からなる。ワイヤーグリッド22は,基板21上に成膜された金属膜を,例えば,フォトレジストや干渉露光を用いたフォトリソグラフィー法によりパターニングすることで形成される。
【0029】
ワイヤーグリッド偏光子20は,ワイヤーグリッド22側から入射し基板21側に進む光を偏光分離して特定方向の偏光に変換する性質を有している。ワイヤーグリッド偏光子20に入射する光11のうち,ワイヤーグリッド22の延在方向,すなわちY軸に沿った方向に平行な偏光成分は反射される。また,入射する光11のうち,ワイヤーグリッド22の延在方向と直交する偏光成分,すなわちX軸に沿った方向に平行な偏光成分は透過する。したがって,光11はワイヤーグリッド偏光子20を透過することにより,X軸方向に振動する直線偏光11aとなり,Z軸に略平行に,ミラーユニット30に向かって照射される。」

d 「【図1】

【図2】



(キ)特開2011-192643号公報の記載
特開2011-192643号公報(以下,「周知例7」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該周知例7には次の記載がある。(下線は,後述する第3周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0006】
本発明者は,反射型偏光板であるワイヤグリッド偏光板において,透過しない光の反射率(偏光反射率)は,ワイヤグリッド構造が存在する導電体面に光が入射した場合と,そうでない面(基材面)に入射した場合で異なり,導電体面に入射した場合の光源光の利用効率が向上することを見出した。そこで,その知見を活かし,投影型映像表示機器内の偏光照明装置におけるワイヤグリッド偏光板の配置を工夫することで,偏光照明装置の明るさを向上できることを見出した。
【0007】
本発明の偏光照明装置の一態様は,光源と,光源から出射した光を反射及び透過することにより偏光分離するワイヤグリッド偏光板と,ワイヤグリッド偏光板からの反射光を反射してワイヤグリッド偏光板に再入射させるように配置された反射材とを具備し,前記ワイヤグリッド偏光板は,基材と,基材表面の所定方向に延在して設けられた導電体(金属ワイヤ)とを有し,光源から出射した光と反射材で反射された光は,基材表面のうち導電体が形成された導電体面に入射することを特徴としている。」

(ク)周知例1及び周知例2から把握される周知の事項
前記(ア)aないしc,e,fに摘記した周知例1の記載事項,及び前記(イ)aないしcに摘記した周知例2の記載事項から,偏光光を配向膜に照射して光配向を行う偏光光照射装置に用いるワイヤーグリッド偏光子について,大型の配向膜に対応できるような大型のワイヤーグリッド偏光素子は製作できないので,複数のワイヤーグリッド偏光素子をグリッドの方向を揃えてフレーム内に並べた偏光素子ユニットを用いて光源が発する光を偏光し,当該偏光光を大型の配向膜に照射して光配向を行うことが,本願の出願前に周知であったと認められる。(以下,「複数のワイヤーグリッド偏光素子をグリッドの方向を揃えてフレーム内に並べた偏光素子ユニットを用いて偏光すること」を「第1周知技術」という。)

(ケ)周知例1及び周知例3から把握される周知の事項
周知例1の図13(a)ないし(c)(前記(ア)gを参照。)から,周知例1に記載された偏光光照射装置の光照射部20が,ランプ21を内蔵するとともに偏光光が出射する開口部が形成されたケースを有しており,前記開口部に偏光素子ユニット10が取り付けられていることを看取できるから,前記(ア)a,d,e及びgに摘記した周知例1の記載事項,及び前記(ウ)aないしcに摘記した周知例3の記載事項から,周知例1及び周知例3には,いずれにも,偏光光を配向膜に照射して光配向を行う偏光光照射装置が記載されており,当該偏光光照射装置における偏光光を照射する光照射部は,偏光光が出射する開口部(周知例1においては前述した図13から看取できるケースにおける開口部,周知例3においては照射窓6が取り付けられるUVランプボックス1の開口部)を形成したケース(周知例1においては前述した図13から看取できるケース,周知例3においてはUVランプボックス1)に光源(周知例1においてはランプ21,周知例3においてはUVランプ2)を内蔵させ,前記開口部にワイヤーグリッド偏光素子(周知例1においては偏光素子ユニット10,周知例3においてはワイヤーグリッド偏光子7)を取り付けるという構成を有していると認められる。
また,本件補正における新規事項の追加の有無を判断するにあたって当業者に自明の事項として述べたように(前記2(2)を参照。),開口部に偏光素子が取り付けられた偏光光照射装置において,開口部が偏光素子によって塞がれていないと,開口部と偏光素子の間の隙間から偏光していない光が漏れ出て,ワークに照射されてしまう等の不都合が生じる恐れがあることが当業者に自明であるから,前記周知例1及び前記周知例3にそれぞれ記載された前述の偏光光照射装置の光照射部におけるケースの開口部は,いずれも,ワイヤーグリッド偏光素子によって塞がれていると認めるのが相当である。
したがって,前記(ア)a,d,e及びgに摘記した周知例1の記載事項,及び前記(ウ)aないしcに摘記した周知例3の記載事項から,偏光光を配向膜に照射して光配向を行う偏光光照射装置において,偏光光を照射する光照射部を,偏光光が出射する開口部を形成したケースに光源を内蔵させ,前記開口部を塞ぐようにワイヤーグリッド偏光素子を取り付けるという構成とすることが,本願の出願前に周知であったと認められる。(以下,「光照射部を,偏光光が出射する開口部を形成したケースに光源を内蔵させ,前記開口部を塞ぐようにワイヤーグリッド偏光素子を取り付けるという構成とすること」を「第2周知技術」という。)

(コ)周知例4ないし周知例7から把握される周知の事項
前記(エ)aないしcに摘記した周知例4の記載事項,前記(オ)aないしcに摘記した周知例5の記載事項,前記(カ)aないしdに摘記した周知例6の記載事項,及び前記(キ)aに摘記した周知例7の記載事項から,透明基板の表面に複数のワイヤーグリッドを並べて配置したワイヤーグリッド偏光子において,ワイヤーグリッドを形成した面が光源側を向くように配置することが,本願の出願前に周知であり,当該配置としたものが,ワイヤーグリッドを形成した面が光源と反対側を向くように配置したものに比べて,光源光の利用効率が高いことが本願の出願前に知られていた(前記(キ)aに摘記した周知例7の記載事項を参照。)と認められる。(以下,「ワイヤーグリッドを形成した面が光源側となるようにワイヤーグリッド偏光子を配置すること」を「第3周知技術」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「棒状ランプ21」,「ワイヤーグリッド偏光素子10」,「偏光光照射装置」,「基板10b」,「グリッド10a」及び「ワイヤーグリッド偏光素子10」は,本願補正発明の「線状の光源」,「偏光素子」,「偏光光照射装置」,「透明基板」,「ワイヤーグリッド」及び「ワイヤーグリッド偏光素子」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明は,「棒状ランプ21」(線状の光源)を有する光照射部20と,棒状ランプ21からの直射光と集光鏡22からの反射光を偏光する「ワイヤーグリッド偏光素子10」(偏光子)とを有しているから,「線状の光源と,該光源からの光を偏光する偏光素子と,上記光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁とを備えた偏光光照射装置」である本願補正発明と,「線状の光源と,該光源からの光を偏光する偏光素子とを備えた偏光光照射装置」である点で一致する。

ウ 引用発明の「ワイヤーグリッド偏光素子10」(偏光子)は,例えばクロムやアルミニウム等の金属線である複数の「グリッド10a」(ワイヤーグリッド)が,例えば石英ガラスなどの「基板10b」(透明基板)上に平行に配置された「ワイヤーグリッド偏光素子10」(ワイヤーグリッド偏光素子)であるから,「透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子」であるという本願補正発明の「偏光子」に関する発明特定事項に相当する構成を具備している。

エ 前記アないしウから,本願補正発明と引用発明とは,
「線状の光源と,該光源からの光を偏光する偏光素子とを備えた偏光光照射装置において,
上記偏光素子は透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子である偏光光照射装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
光源からの光を偏光するワイヤーグリッド偏光素子として,
本願補正発明では,「複数のワイヤーグリッド偏光素子を保持枠内に並べて保持」した「偏光素子ユニット」を用いているのに対して,
引用発明では,そのような「偏光素子ユニット」を用いることが特定されていない点。

相違点2:
本願補正発明が,光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁を備え,当該外壁に形成した光出射口にワイヤーグリッド偏光素子(偏光素子ユニット)を取り付けているのに対して,
引用発明では,そのような外壁を備えることは特定されておらず,かつ,ワイヤーグリッド偏光素子10を取り付ける部材についても特定されていない点。

相違点3:
本願補正発明では,ワイヤーグリッド偏光素子(偏光素子ユニット)が,光出射口を塞ぐように取り付けられているのに対して,
引用発明では,ワイヤーグリッド偏光素子10が,そのように取り付けられることは特定されていない点。

相違点4:
本願補正発明では,「ワイヤーグリッド偏光素子」が「ワイヤーグリッド」を形成した面を「光源」側に向けて配置されているのに対して,
引用発明では,「ワイヤーグリッド偏光素子10」が「グリッド10a」を形成した面を「棒状ランプ21」側に向けて配置されているのか,光配向膜41側に向けて配置されているのかは,特定されていない点。

(4)相違点の容易想到性
ア 相違点1について
引用発明の偏光光照射装置が,例えば1500mmといった幅広の光配向膜に光配向を行うことを想定していることが,引用刊行物の【0002】の記載(前記(2)ア(ア)aを参照。)から当業者に自明であるところ,前記(2)イ(ク)で認定したように,このような幅広の光配向膜に対応できるような大型のワイヤーグリッド偏光素子が製作できないことは本願の出願前に周知であったのだから,前記幅広の光配向膜41に対して光配向を行うことができるようにするために,引用発明において第1周知技術を適用し,複数のワイヤーグリッド偏光素子をグリッドの方向を揃えてフレーム(本願補正発明における「保持枠」に相当する。)内に並べた偏光素子ユニットをワイヤーグリッド偏光素子10として用いること,すなわち,引用発明を,相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2及び相違点3について
引用刊行物に明記はないものの,引用発明において,棒状ランプ21やワイヤーグリッド偏光素子10等の部材を支持する支持部材が必要であることは,明らかである。
また,引用発明は,ワイヤーグリッド偏光素子10から出射される偏光光を光配向膜41に照射して光配向を行う偏光光照射装置であるところ,本件補正における新規事項の追加の有無の判断(前記2(2)を参照。),及び第2周知技術の認定(前記(2)イ(ケ)を参照。)にあたって当業者に自明の事項として述べたように,このような偏光光照射装置において,棒状ランプ21から出射した光が,ワイヤーグリッド偏光素子10を通過せずに無偏光光のまま光配向膜41に照射されることのないように考慮する必要があることは,当業者に自明の事項である。
しかるに,前記(2)イ(ケ)で述べたように,偏光光を配向膜に照射して光配向を行う偏光光照射装置において,偏光光を照射する光照射部を,偏光光が出射する開口部を形成したケースに光源を内蔵させ,前記開口部を塞ぐようにワイヤーグリッド偏光素子を取り付けるという構成とすることが本願出願前に周知であったのだから,引用発明において,棒状ランプ21やワイヤーグリッド偏光素子10等の部材を支持し,かつ,棒状ランプ21からの無偏光光が漏れ出ないようにするために,第2周知技術を適用し,棒状ランプ21等を内蔵するとともに偏光光が出射する開口部(本願補正発明における「光射出口」に相当する。)を形成したケース(本願補正発明における「外壁」に相当する。)を設け,当該ケースの開口部を塞ぐようにワイヤーグリッド偏光素子10を取り付けること,すなわち,引用発明を,相違点2及び相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜なし得た設計上の事項にすぎない。

ウ 相違点4について
引用刊行物の記載からは,引用発明において,ワイヤーグリッド偏光素子10におけるグリッド10aを形成した面を,光配向膜41側に向けて配置しなければならない理由は見当たらず,かつ,前記(2)イ(コ)で認定したように,透明基板の表面に複数のワイヤーグリッドを並べて配置したワイヤーグリッド偏光子において,ワイヤーグリッドを形成した面が光源側を向くように配置することが,本願の出願前に周知であって,当該配置としたものが,ワイヤーグリッドを形成した面が光源と反対側を向くように配置したものに比べて,光源光の利用効率が高いことが本願の出願前に知られていたのであるから,引用発明において,ワイヤーグリッド偏光素子10における光源光の利用効率を高いものとするために第3周知技術を適用して,グリッド10を形成した面が光源である棒状ランプ21側を向くように配置すること,すなわち,引用発明を,相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(5)効果について
本願発明の奏する効果は,引用刊行物の記載及び第1周知技術ないし第3周知技術に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(6)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり,本願補正発明は,引用発明及び第1周知技術ないし第3周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,前記第2〔理由〕1(1)に示したとおりのものと認められる。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項及び引用発明については,前記第2〔理由〕3(2)アのとおりであり,第2周知技術及び第3周知技術については,前記第2〔理由〕3(2)イ(ケ)及び(コ)のとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,両者は,前記第2〔理由〕3(3)ウに示した相違点2及び相違点4(ただし「本願補正発明」を「本願発明」に読み替える。)で相違し,その余の点で一致する。
そして,引用発明を,相違点2に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすること,及び相違点4に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,それぞれ,前記第2〔理由〕3(4)イ,及び前記第2〔理由〕3(4)ウと同様の理由で,第2周知技術に基づいて当業者が適宜なし得た設計上の事項,及び第3周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
また,本願発明の奏する効果は,引用刊行物の記載,第2周知技術及び第3周知技術に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。
したがって,本願発明は,引用発明,第2周知技術及び第3周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,第2周知技術及び第3周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-19 
結審通知日 2015-06-30 
審決日 2015-07-14 
出願番号 特願2012-261866(P2012-261866)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 義明  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 偏光光照射装置  

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