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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E03F
管理番号 1305662
審判番号 無効2015-800002  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-12-27 
確定日 2015-09-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第4528743号発明「側溝用集水枡及び側溝の施工方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4528743号(以下「本件特許」という。平成18年5月9日出願、平成22年6月11日登録、請求項の数は5である。)の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効にすることを求める事案である。

第2 手続の経緯
本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成26年12月27日 審判請求
平成27年 3月24日 審判事件答弁書
平成27年 6月 9日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成27年 6月16日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年 7月 2日 口頭審理

第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
上面に開口部が形成される集水枡本体と、この集水枡本体の上面における歩道側に該歩道と車道とを区分するために設けられる縁石とを有して成る側溝用集水枡であり、前記集水枡本体の上面開口部に枠体が固定されると共に、該枠体の内側に通水性を有する多孔蓋が抜き取り可能に嵌め込まれ、前記縁石の下部には前記枠体の上方位置で歩道側から車道側に通じる導水口が形成され、前記枠体における歩道側の端縁部には前記導水口における歩道側の開口部分の上部に通水可能な開口領域を残して該導水口における歩道側の開口部分の下部を覆う堰板が取り付けられることを特徴とする側溝用集水枡。
【請求項2】
車道側よりも歩道側で導水口の開口高さが大きく設定されることを特徴とする請求項1記載の側溝用集水枡。
【請求項3】
集水枡本体の側壁上部に、舗装路面を透過した浸透水を集水枡本体内に誘導するための通水孔が穿設されることを特徴とする請求項1、又は2記載の側溝用集水枡。
【請求項4】
多孔蓋は、縦格子と横格子とにより形成されるグレーチング床版であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の側溝用集水枡。
【請求項5】
上面に開口部が形成される集水枡本体と、この集水枡本体の上面における歩道側に該歩道と車道とを区分するために設けられる縁石と、前記集水枡本体の上面開口部に固定される枠体と、該枠体の内側に抜き取り可能に嵌め込まれる通水性を有する多孔蓋とを有すると共に、前記縁石の下部には前記枠体の上方位置で歩道側から車道側に通じる導水口が形成される構造の側溝用集水枡を備える側溝を施工する方法であって、
車道の路肩部を掘削して該掘削部分に前記集水枡本体を定置し、該集水枡本体の上面における歩道側に沿って前記縁石の据付を行った後、前記集水枡本体の周囲において車道と歩道を舗装材により舗装する一方、歩道の舗装前には前記集水枡本体の上面開口部に固定される前記枠体の歩道側の端縁部に前記縁石の下部に形成される導水口の開口部分の長さより大きな長さを有する堰板を取り付け、この堰板により前記導水口における歩道側の開口部分の上部に通水可能な開口領域を残して該導水口における歩道側の開口部分の下部を覆い、歩道を舗装するときに舗装材を前記堰板の上端縁の位置まで打設することを特徴とする側溝の施工方法。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、本件特許発明1ないし5の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成27年6月9日付け口頭審理陳述要領書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。

(1)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明1についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由1」という。)。
イ 本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明1についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由2」という。)。

(2)本件特許発明2について
ア 本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術、並びに甲第6号証及び甲第7号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明2についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由3」という。)。
イ 本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術、並びに甲第6号証及び甲第7号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明2についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由4」という。)。

(3)本件特許発明3について
ア 本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術、並びに甲第5号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明3についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由5」という。)。
イ 本件特許発明3は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術、並びに甲第5号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明3についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由6」という。)。

(4)本件特許発明4について
ア 本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明4についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由7」という。)。
イ 本件特許発明4は、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明4についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由8」という。)。

(5)本件特許発明5について
ア 本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明5についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由9」という。)。
イ 本件特許発明5は、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明5についての特許は無効とされるべきものである(以下「無効理由10」という。)。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:株式会社ホクエツの製品カタログ、89頁
甲第2号証:意匠登録第1061084号公報
甲第3号証:登録実用新案第3023143号公報
甲第4号証:特開平11-193568号公報
甲第5号証:特開2003-193412号公報
甲第6号証:特開2002-54106号公報
甲第7号証:特開2005-105814号公報

3 請求人の具体的な主張
(1)甲号証の記載
ア 甲第1号証に記載された事項
(ア)甲第1号証には、暗渠型側溝に一体に組み込まれた集水枡が記載されており、この集水枡は、途中で中断した開口部分を有する縁石、グレーチング及び泥溜部を有している。また、グレーチングを抜き取り可能にする枠体が側溝の上部に設けられている。
(イ)甲第1号証のグレーチングは、枠体に取り外し可能に設けられるものであることが推認できる。
(ウ)甲第1号証の中間開口部分有り縁石は、歩道側と車道とを区分するために設けられるものであり、当該開口部分は歩道側と車道側に通じる。
(エ)甲第1号証のグレーチング保護プレートは、本件特許発明のごとく歩道が車道よりも高く縁石よりも低い状況下では堰板の役目を果たす。

イ 甲第2号証に記載された事項
甲第1号証に記載された集水枡が付いた暗渠型側溝と同一のものが甲第2号証に記載されている。

ウ 甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項
グレーチングを枠体から容易に抜き取ることができる技術は、甲第3号証及び甲第4号証にみられるように公知である。

エ 甲第5号証に記載された事項
甲第5号証は、集排水用ブロックに関するものであり、集排水用ブロックの側面に、排水性路面を透過した浸透水を導水部に導くための導水路が形成されることが記載されている。

(2)本件特許発明1の進歩性について
ア 本件特許発明1と甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明とを対比すると、集水枡本体、縁石、枠体及び多孔蓋(グレーチング)を有している点は共通する。
イ 甲第1号証に記載された縁石が、中間がとぎれて縁石材を有しない部分(中間開口部分)を有するのに対し、本件特許発明1では、縁石は中間が途切れず導水口が形成されている点で相違する。
ウ しかし、ともに歩道側から車道側に通じており歩道上の雨水が堰板(又は保護プレート)を乗り越えてグレーチングに流れ込むこと、及び、施工の際の歩道側の土留め壁となり施工後は縁石の倒れ込みを防ぐ点では共通し、導水口が形成された縁石は公知であったことを考慮すると、雨水の通り道の開口面積が広くとれるか取れないかの差にすぎないから、縁石の中間開口部分と導水口とは同視できる。
エ 甲第1号証では、縁石と歩道とは同一高さとされているため、保護プレートは縁石の高さ寸法と同一の長さの幅寸法Hを有する長方形状に形成されているが、本件特許発明のごとく歩道が縁石よりも低い場合に、設定される歩道面に合わせた寸法になるように保護プレートの縁石の幅寸法Hを決めることは、当業者が容易に推考し得たものである。
オ したがって、本件特許発明1は、当業者が容易に推考し得たものである。
カ 本件特許発明1の堰板では、車両のタイヤが縁石に接触した際の過大な衝撃荷重を受け止めきれずに縁石が歩道側に倒れ込むのを防止できない。

(3)本件特許発明2の進歩性について
ア 甲第6号証及び甲第7号証には、導水口の開口高さが歩道側で大きく設定されることが開示されている。
イ したがって、進歩性が欠如している本件特許発明1に公知である技術事項(車道側よりも歩道側で導水口の開口高さが大きく設定されている)を付け加えた本件特許発明2は、当業者が容易に推考し得たものである。

(4)本件特許発明3の進歩性について
ア 甲第5号証は、集排水用ブロックに関するものであり、集排水用ブロック100の側面に、排水性路面を透過した浸透水を導水部に導くための導水路が形成されることが開示されている。。
イ したがって、進歩性が欠如している本件特許発明1又は2に、公知の技術事項(集水枡本体の側壁上部に、舗装路面を透過した浸透水を集水枡本体内に誘導するための通水孔が穿設されること)を付加した本件特許発明3は、当業者が容易に推考し得たものである。

(5)本件特許発明4の進歩性について
ア 甲第1号証及び甲第2号証に、多孔蓋が縦格子と横格子とにより形成されるグレーチング床版であることが記載されている。
イ したがって、本件特許発明4は、当業者が容易に推考し得たものである。

(6)本件特許発明5の進歩性について
ア 車道の路肩部を掘削して該掘削部分に泥溜部(集水枡本体)を定置し、当該泥溜部の上面における歩道側に沿って縁石の据付を行うこと、その後、泥溜部の周囲において車道と歩道を舗装材により舗装することは、当時からすでに行われていた。
イ 一方、歩道の舗装前には、縁石の中間開口部分には、設定された歩道面と同?高さとすることができるように、該中間開口部分の水平長さより大きな長さを有する保護プレートが取り付けられる。そして、この保護プレートの上端縁の位置までコンクリート等が打設され、車道も舗装される。
ウ したがって、本件特許発明5は、当業者が容易に推考し得たものである。

第5 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成27年3月24日付け審判事件答弁書、平成27年6月16日付け口頭審理陳述要領書を参照。)。

1 甲第1号証について
甲第1号証のパンフレットの裏には数字が四角で囲われた「H14.9」の記載があるが、これがパンフレットの発行日であるという明確な証拠はなく、甲第1号証が直ちに本件特許の出願前に発行されていたとはいえない。

2 本件特許発明1の進歩性について
(1)本件特許発明1においては、集水桝の上部に縁石を設けることが必須の構成要件であるが、甲第1号証及び甲第2号証では、集水枡及びグレーチンクの上部では縁石が中断している。すなわち、集水枡の上部には縁石が存在していない。

(2)本件特許発明1においては、縁石の下部に歩道側から車道側に通じる導水口が設けられることが必須の構成要件であるが、甲第1号証及び甲第2号証では、導水口付きの縁石は記載されていない。
本件特許発明1においては、歩道側から車道側に通じる導水口が下部に設けられた縁石が、集水桝(グレーチング上部)の上に設けられている。そのため、本件発明に係る側溝用集水枡を側溝ブロックと結合させた際に、グレーチング上部においても縁石を中断させることなく連続させることができるという効果が生じる。

(3)本件特許発明1においては、歩道側の開口部分の上部に通水可能な開口領域を残して該導水口における歩道側の開口部分の下部を覆う堰板が必須の構成要件であるが、甲第1号証及び甲第2号証には、中断した縁石の両端にボルト固定される保護プレートが開示されており、かつ、保護プレートは縁石の上端及び歩道と同一高さになるように構成されている。

(4)甲第1号証及び甲第2号証には通水可能な開口領域を残して該導水口における歩道側の開口部分の下部を覆う堰板は開示されていないし、保護プレートを乗り越えて雨水が集水桝に流入する構成が開示されていない。そのため、導水口における歩道側の開口部分の下部を覆う堰板を想到することは困難である。
本件特許発明1では、歩道側の開口部分の上部に通水可能な開口領域を残して該導水口における歩道側の開口部分の下部を覆う堰板を設けることによって、歩道の路面を堰板の上端縁の位置まで高くすると共に、歩道及び車道の両方向から、雨水を集水枡本体内に良好に導くことができるようにしている。この効果は甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明からは得られないものである。
したがって、甲第1号証及び甲第2号証に開示されている例は本件発明が解決しようとする課題に過ぎず、甲第1号証及び甲第2号証から容易に本件特許発明1を想到することはできない。

3 本件特許発明2の進歩性について
(1)甲第6号証に記載の発明は歩車道境界縁石ブロックに係る発明であって、集水枡に関する発明ではない。また本件特許発明2に係る導水口は、歩道側の開口部分の上部に通水可能な開口領域を残して該導水口における歩道側の開口部分の下部を覆う堰板が設けられるが、甲第6号証に記載の導水口は導水口の開口部分の下部を覆う堰板が取り付けられることもない。したがって、歩道側壁面の上記流入口の下縁水準が車道側壁面の上記流入口下縁水準より若干高く形成されていたとしても、本件特許発明2とは全く構成が異なる発明であって、本件発明を容易に想到することはできない。

(2)同様に、甲第7号証に記載の発明にも導水口の開口部分の下部を覆う堰板が取り付けられることはない。また甲第7号証においてはグレーチングを着脱するために、導水口の一方が大きく開口しているが、本件特許発明2の構成は、歩道の路面高さをより大きくしながら、歩道側における導水口の上部に通水可能な開口領域を確保する目的で設けられているため、作用及び効果が異なっている。

(3)このように甲第6号証と甲第7号証には本件特許発明2の構成要件が開示されておらず、本件特許発明2と相違している。そして、甲第6号証と甲第7号証に記載の発明からは得られない格別の効果を本件発明は有するものであり、進歩性を有することは明らかである。
さらに、請求項2は請求項1の従属項であり、上述したように本件特許発明1は進歩性を有するから、本件特許発明2も進歩性を有するものである。

4 本件特許発明3の進歩性について
甲第5号証には集排水ブロックの側面に排水用路面を透過した浸透水を導水部に導くための導水路が形成されているものの、甲第5号証にはグレーチンク上部に縁石が設けられることもなく、縁石の導水口の開口部分の下部を覆う堰板が取り付けられることもない。したがって、本件特許発明3とは全く構成が異なる発明であって、本件特許発明3の構成要件が開示されておらず、本件特許発明3と相違している。
また、請求項3は請求項1及び2の従属項であり、上述したように本件特許発明1及び2は進歩性を有するから、本件特許発明3も進歩性を有するものである。

5 本件特許発明4の進歩性について
請求項4は請求項1ないし3の従属項であり、上述したように本件特許発明1ないし3は進歩性を有するから、本件特許発明4も進歩性を有するものである。

6 本件特許発明5の進歩性について
(1)甲第1号証及び甲第2号証では、集水枡及びグレーチングの上部では縁石が中断しているため、「集水枡本体の上面における歩道側に該歩道と車道とを区分するために設けられる縁石」及び「前記縁石の下部には前記枠体の上方位置で歩道側から車道側に通じる導水口が形成される構造」が開示されていない。

(2)甲第1号証及び甲第2号証では、保護プレートは、縁石の開口部に取り付けられるものではなく、中断した縁石の両端にボルト固定される。そのため、「縁石の下部に形成される導水口の開口部分の長さより大きな長さを有する堰板」が開示されていないし、「この堰板により前記導水口における歩道側の開口部分の上部に通水可能な開口領域を残して該導水口における歩道側の開口部分の下部を覆」うことも開示されていない。

(3)したがって、先行技術発明と本件特許発明5は全く異なる構成であり、記載も示唆もされていない。そして本件発明には、先行技術発明からは得られない格別の効果があり、進歩性を有するものである。

第6 当審の判断
1 各甲号証の記載
(1)甲第2号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【意匠に係る物品の説明】本物品は、参考図(1)(2)に示されるように歩道と車道との境界部分などに採用される水路を構成するためのコンクリートブロックであり、両端部で歩車道境界ブロックと一体的に構成され、中央部にはグレーチングを載置するための受枠を一体的に形成したものである。各参考図に示される設置状態に示されるように、本物品設置時の頂面歩道側には歩車道境界ブロックを載置するための箇所が設けられており、該歩車道境界ブロック載置部に設けられた2個の凹部に車道境界ブロック下部から突出した鉄筋を挿入せしめ、モルタル及び/又は接着剤によって両者を固定するものである。また、本物品の頂面中央部には各参考図に示す如きグレーチングを施すための開口部が形成されると共に、参考図(2)のような枡部を本物品下部に形成するために、底面図にあるように底面にも開口部を形成している。更に、各参考図にあるように、歩車道境界ブロック側の受枠端上にプレートを両端のブロックとボルト等の連結材で固定することで歩道面と同一高さとすることができるように構成されている。」

イ 参考図(1)は次のものである。


ウ 参考図(2)は次のものである。


エ 甲第2号証には、上記アに摘記した事項及び上記イ、ウの図示内容からみて、次の発明(以下「甲2発明1」という。)が記載されていると認められる。

「コンクリートブロックの頂面歩道側の両端部に歩車道境界ブロックが一体的に固定され、該コンクリートブロックの中央部には受枠が一体的に形成され、該受枠にはグレーチングが載置され、
該コンクリートブロックの頂面中央部にはグレーチングを施すための開口部が形成されると共に、底面の開口部に枡部が形成され、
歩車道境界ブロック側の受枠端上にプレートを両端の歩車道境界ブロックとボルト等の連結材で固定することで歩道面と同一高さとしてなる水路部材。」

オ 甲2発明1の水路部材を参考図(2)に図示されるように設置するには、車道の路肩部を掘削して、該掘削部に水路構成用ブロックを定置した後、該掘削部を埋め戻して舗装することが必要であることは当業者にとって自明の事項であり、該参考図(2)からは、歩道の舗装が縁石及びプレートの上端縁の位置まで敷設されていることがみてとれるから、甲第2号証には、上記アに摘記した事項及び図示内容からみて、次の発明(以下「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。

「コンクリートブロックの頂面歩道側の両端部に歩車道境界ブロックが一体的に固定され、該コンクリートブロックの中央部には受枠が一体的に形成され、該受枠にはグレーチングを載置され、
該コンクリートブロックの頂面中央部にはグレーチングを施すための開口部が形成されると共に、底面の開口部に枡部が形成され、
歩車道境界ブロック側の受枠端上にプレートを両端の歩車道境界ブロックとボルト等の連結材で固定することで歩道面と同一高さとしてなる水路部材の設置方法であって、
車道の路肩部を掘削して、該掘削部に水路部材を定置した後、該掘削部を埋め戻して舗装し、歩道の舗装は縁石及びプレートの上端縁の位置まで敷設する水路部材の施工方法。」

(2)甲第1号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した甲第1号証には、その記載内容からみて、甲第2号証に記載された水路を構成するためのコンクリートブロックと同一構造の製品のカタログと認められるところ、甲第1号証に「枡部」として記載されている製品は、甲2発明1の「水路部材」と同一のものと認められ、89頁右下の設置状態を示す図も参照すると、甲第1号証には、甲2発明1及び甲2発明2と同様の発明が記載されているものと認められる。

(3)甲第3号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0008】
【考案の実施の形態】
以下、この考案の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1において、符号1は排水用の側溝で、この側溝1の上部の開口部2の両側部に断面L形をなす受枠3が互いに対向して設けられている。そしてこれら受枠3の内側にステンレス製のグレーチング4が嵌合され、このグレーチング4により側溝1の開口部2が覆われている。
【0009】
グレーチング4は、両サイドに配置する一対のサイドプレート5と、これらサイドプレート5間に平行に配設されたメインバー6と、これらメインバー6を貫通するように配設されたクロスバー7とで格子状に構成されている。」

イ 「【0019】
一方、グレーチング4を受枠3の内側から取り外す場合には、グレーチング4の一端側の端部を一定以上の力で上方に引き上げれる。これに応じて、グレーチング4に接着されている一方のファスナー片8aの各突起9が、受枠3に接着されている他方のファスナー片8bの各突起9の隣接間から離脱して一方のファスナー片8aと他方のファスナー片8bとの接合が外れ、したがって受枠3の内側からグレーチング4を容易に能率よく取り外すことができる。」

(4)甲第4号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0018】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1?2において本発明に係る側溝用ブロック1は、下端開放の門形をなすブロック本体2を用いる。該ブロック本体2は、従来一般に採用されている構成をほとんどそのまま有するものであり、左右対向する側壁部3,3の上部が、その前後端部分においてのみ連結梁5,5で一体に連結されると共に、両側壁部間の下部が開放状態6とされている。又前記前後の連結梁5,5間に形成された開口部7が、図3に示すように、左右側壁部3,3の上端部分の内側に設けられた蓋嵌合凹部9,9に左右側部分10,10が嵌合し且つ該蓋嵌合凹部の底面11で支持される蓋板12により閉蓋可能とされている。……
【0019】本実施の形態においては、図7に示すように、前記開口部7が、前後方向の長さが等しい3枚の蓋板12,12,12を用いて閉蓋可能とされ、該蓋板12の上面13が、前記連結梁5の上面15と面一となるように構成されている。
【0020】又図1、図4に示すように、前記開口部7の前後方向の中央部分において、前記蓋板12の前後長さに略等しい前後長さを有し且つ覆体16が着脱可能に嵌め込まれる仕切枠体17が固定され、前記開口部7の内、該仕切枠体17の前後に隣り合う部分7a,7aを、前記蓋板12で夫々閉蓋可能としてなる。」

イ 「【0027】図4、図7は、例えばグレーチングとしての覆体16を、その左右側部分44,44を前記支持部43,43に載せて嵌め込んだ状態を示すものであり、該覆体16の上面45は、前記仕切片部25の上端に略等しくなるようにしている。」

(5)甲第5号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0016】
【実施例】さて、以下に本発明の最適と思われる実施例を図に沿って説明する。
(実施例1)図1には、本発明の実施例1における集排水ブロック100の斜視図が示されており、図2は、集排水ブロック100を道路に施工した状態における図1のA-A断面図が示されている。本実施例1における集排水ブロック100は、上方の上部ブロック片10と下方の下部ブロック片20とからなり、これらを重層固定して略箱形の集水枡を形成することができる。上部ブロック片10は、矩形の蓋状に形成されていて、複数の丸孔が形成された鉄板が側面に取り付けられ導水孔30が形成されている。さらに、この導水孔30から下部ブロック片20の集水部21に連通して設けられた連通口からなる導水路11が設けられている。また上面中央にはグレーチングを載置するための開口部が形成されている。下部ブロック片20は、内部に集水部21が設けられた箱状に形成されていて、その側面には集水部21に溜まった水を外部に流すためのパイプを連結できるように形成されている。」

イ 「【0018】道路に設置された集排水用ブロック100は、道路に降った雨が排水性路面200を浸透しつつ、導水孔30まで達し導水路11を経由して集水部21に溜まることになる。また、浸透しきれずに排水性路面200上を流れてきたり、歩道側から流れてきた雨水は、上面のグレーチングを通って集水部21に排水される。さらに、集水部21に溜まった雨水は下部ブロック片20の側面に設けられたパイプによって外部に流されることになる。」

(6)甲第6号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。

「【0007】
【発明の実施の形態】歩道9と車道10との境界部に側溝ブロック11を埋設し、上端開口部を正方形又は長方形板状ブロック1で閉鎖する。この板状ブロック1の幅は側溝ブロック11の上面外幅に一致し、側溝ブロック11の上部両側壁面にボルト12で固定し、該ブロック1の上方に突出した鉄板13,13間に上記板状ブロック1を挟持する(図1、図2、図5参照)。
【0008】長方形板状ブロック1の上面には該ブロック1の長辺と平行に歩車道境界縁石2を該ブロック1と一体に形成し、該縁石2の歩道側壁面2’及び車道側壁面2”に雨水流入口3,4を一定間隔毎に開口し(図2参照)、該流入口3,4の双方に連通する排出口7を上記ブロック1の下面5に開口する。
【0009】そして上記縁石2の歩道側壁面2’の上記流入口3の下縁3’の水準が車道側壁面2”の上記流入口4の下縁4’の水準より若干(50mm程度)高く形成され、かつ上記両流入口3,4の上縁3”、4”の水準が上記縁石2の天端8の水準より低い位置に形成される。」

(7)甲第7号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道と車道の境界に設置した側溝の開口に装着し、歩道と車道の境界を形成する歩車道境界蓋ブロックに関する。」

イ 「【0018】
図5?7に示す歩車道境界蓋ブロック10は、板状の蓋部11と、蓋部11の上面から長さ方向に沿って立設した境界部12とで断面が概略逆T字形に形成され、その長さ方向のほぼ中央に集水孔が形成されている。集水孔は、境界部12を水平方向に貫通する横孔15と、横孔15に連通し蓋部11を縦方向に貫通する縦孔16とからなる。縦孔16には段部17が形成され、ここにグレーチング13が載置、装着されている。横孔15は一方が大きく開口したテーパ孔となっており、この大きな開口からグレーチングを容易に着脱でき、また、図7に示すように、清掃ホース18を側溝内に差し込んでバキュームでゴミを吸い出し、容易に清掃することができる。歩車道境界蓋ブロック10を所々に配置することで、管理桝の設置が不要となる。」

2 甲第2号証に基づく無効理由(無効理由2、4、6、8及び10)について
(1)無効理由2について
ア 本件特許発明1と甲2発明1との対比
本件特許発明1と甲第2発明1とを対比する。

(ア)甲2発明1の「頂面中央部にはグレーチングを施すための開口部が形成される」「コンクリートブロック」と「底面の開口部に形成され」る「枡部」を併せたものは、本件特許発明1の「上面に開口部が形成される集水枡本体」に相当する。

(イ)甲2発明1の「コンクリートブロックの頂面歩道側の両端部に」「一体的に固定され」る「歩車道境界ブロック」は、本件特許発明1の「集水枡本体の上面における歩道側に該歩道と車道とを区分するために設けられる縁石」に相当する。

(ウ)甲2発明1の「コンクリートブロックの中央部」に「一体的に形成され」る「受枠」は、本件特許発明1の「集水枡本体の上面開口部に」「固定される」「枠体」に相当する。

(エ)甲2発明1の「該受枠に」「載置され」る「グレーチング」は、本件特許発明1の「該枠体の内側に」「抜き取り可能に嵌め込まれ」る「通水性を有する多孔蓋」に相当する。

(オ)甲2発明1の「プレート」及び「水路部材」は、それぞれ本件特許発明1の「堰板」及び「側溝用集水枡」に相当する。

(カ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「上面に開口部が形成される集水枡本体と、この集水枡本体の上面における歩道側に該歩道と車道とを区分するために設けられる縁石とを有して成る側溝用集水枡であり、前記集水枡本体の上面開口部に枠体が固定されると共に、該枠体の内側に通水性を有する多孔蓋が抜き取り可能に嵌め込まれ、堰板が取り付けられる側溝用集水枡。」

(キ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
縁石の構造及び堰板の取付態様に関し、本件特許発明1では、縁石の下部に枠体の上方位置で歩道側から車道側に通じる導水口が形成され、枠体における歩道側の端縁部には導水口における歩道側の開口部分の上部に通水可能な開口領域を残して該導水口における歩道側の開口部分の下部を覆う堰板が取り付けられるのに対し、甲第2発明1では、歩車道境界ブロックは、コンクリートブロックの頂面歩道側の両端部に固定され、歩車道境界ブロック側の受枠端上にプレートを両端の歩車道境界ブロックとボルト等の連結材で固定することで歩道面と同一高さとしてなる点。

イ 判断
(ア)相違点1について
a 甲第2号証の参考図(1)及び(2)(上記1(1)イ及びウを参照。)をみると、歩道境界ブロック及びプレートの上端縁の高さに合わせて歩道が構築されていることからみて、甲第2発明1の歩車道境界ブロックは、歩道部分の土留めとしての機能し、プレートは歩車道境界ブロックが設けられていないコンクリートブロックの中央部において、同様に歩道部分の土留めとして機能しているものと認められる。
b 他方、側溝の上部に設けられる縁石の下部に排水のための開口を設けることは、本件特許の出願前に周知の技術である(例えば、甲第6号証には、縁石2の歩道側壁面2’及び車道側壁面2”に雨水流入口3,4を一定間隔毎に開口することが記載されている(上記1(6)の摘記事項を参照。)。甲第7号証には、歩車道境界蓋ブロック10の境界部12に集水孔を形成することが記載されている(上記1(7)の摘記事項を参照。)。また、本件特許明細書の段落【0013】ないし【0014】にも、従来技術として、縁石の下部に、路面に降った雨水を側溝内に導くため、車道A1と歩道A2に通じる導水口A3を設けることが記載されている)。
そして、上記周知の縁石は、下部に設けられた開口を通して雨水を側溝内に排水するために、少なくとも開口付近の歩道の表面が開口の下端部と同じ高さとなるように設置する必要がある。
c してみると、上記周知の縁石を、甲第2発明1の歩車道境界ブロックが設けられていないコンクリートブロックの中央部に適用し、歩道部分の土留めとして機能させることは、当業者が容易に着想し得たものとはいえず、上記周知の縁石の開口の下部を、歩道部分の土留めとして機能するプレートで覆うことも、同様に当業者が容易に着想し得たものとはいえない。
d また、甲第3及び4号証には、「グレーチングを枠体に抜き取り可能に嵌め込むこと」(上記1(3)及び(4)を参照。)が記載されていることは認められるが、甲2発明1において、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることを教示するものではない。
e よって、甲2発明1において、本件特許発明1の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(イ)請求人の主張について
a 請求人は、本件特許発明1の堰板と甲第2発明1のプレートは、ともに歩道上の雨水が乗り越えてグレーチングに流れ込むこと、及び施工の際の歩道側の土留め壁となり施工後は縁石の倒れ込みを防ぐ点では共通し、導水口が形成された縁石は公知であったことを考慮すると、雨水の通り道の開口面積が広くとれるか取れないかの差にすぎないから、縁石の中間開口部分と導水口とは同視できる旨、及び、甲2発明1では、縁石と歩道とは同一高さとされているため、保護プレートは縁石の高さ寸法と同一の長さの幅寸法Hを有する長方形状に形成されているが、本件特許発明1のごとく歩道が縁石よりも低い場合に、設定される歩道面に合わせた寸法になるように保護プレートの縁石の幅寸法Hを決めることは、当業者が容易に推考し得たものである旨主張する。
b しかし、甲2発明1の歩車道境界ブロックは歩道面と同一高さとするもの(上記1(1)ウを参照。)であって、本件特許発明1の縁石の如く、歩道面より高く設置することを前提としたものではないから、甲第2発明1の両端の歩車道境界ブロックの間(中間開口部分)と本件特許発明1の導水口とは同視できるものではなく、また、上記(ア)のとおり、下部に排水のための開口を設けた周知の縁石を、甲第2発明1に適用することは、当業者が容易に着想し得たものとはいえないから、請求人の主張は、いずれも採用できない。

ウ 小活
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明1、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)無効理由4について
本件特許発明2は、本件特許発明1に従属し、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明2と甲2発明1とは、少なくとも上記(1)ア(キ)の相違点1で相違する。
そして、上記(1)イ(ア)で説示したように、甲第6及び7号証の記載事項(上記1(6)及び(7)を参照。)は、甲2発明1において、上記相違点1に係る本件特許発明2の構成とすることを教示するものではない。
よって、無効理由2における検討と同様の理由により、本件特許発明2は、甲2発明1、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術、並びに甲第6号証及び甲第7号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)無効理由6について
本件特許発明3は、本件特許発明1又は2に従属し、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明3と甲2発明1とは、少なくとも上記(1)ア(キ)の相違点1で相違する。
そして、甲第5号証には、請求人が主張するように、請求項3で限定された構成である「通水孔」が開示されているとしても、甲2発明1において、上記相違点1に係る本件特許発明3の構成とすることを教示するものではない。
よって、無効理由2における検討と同様の理由により、本件特許発明3は、甲2発明1、甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術、並びに甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)無効理由8について
本件特許発明4は、本件特許発明1ないし3に従属し、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明4と甲2発明1とは、少なくとも上記(1)ア(キ)の相違点1で相違する。
よって、無効理由2における検討と同様の理由により、本件特許発明4は、甲2発明1、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)無効理由10について
ア 本件特許発明5と甲2発明2との対比
本件特許発明5と甲第2発明2とを対比する。

(ア)甲2発明2の「頂面中央部にはグレーチングを施すための開口部が形成される」「コンクリートブロック」と「底面の開口部に形成され」る「枡部」を併せたものは、本件特許発明5の「上面に開口部が形成される集水枡本体」に相当する。

(イ)甲2発明2の「コンクリートブロックの頂面歩道側の両端部に」「一体的に固定され」る「歩車道境界ブロック」は、本件特許発明5の「集水枡本体の上面における歩道側に該歩道と車道とを区分するために設けられる縁石」に相当する。

(ウ)甲2発明2の「コンクリートブロックの中央部」に「一体的に形成され」る「受枠」は、本件特許発明5の「集水枡本体の上面開口部に固定される枠体」に相当する。

(エ)甲2発明2の「該受枠に」「載置され」る「グレーチング」は、本件特許発明5の「該枠体の内側に抜き取り可能に嵌め込まれる通水性を有する多孔蓋」に相当する。

(オ)甲2発明2の「水路部材」及び「水路部材の施工方法」は、本件特許発明5の「側溝用集水枡」及び「側溝の施工方法」に相当する。

(カ)甲2発明2において、プレートの固定は、掘削部の埋め戻し及び舗装の前に行われることは自明の事項であるから、「歩車道境界ブロック側の受枠端上にプレートを両端の歩車道境界ブロックとボルト等の連結材で固定する」ことと、本件特許発明5の「歩道の舗装前には前記集水枡本体の上面開口部に固定される前記枠体の歩道側の端縁部に前記縁石の下部に形成される導水口の開口部分の長さより大きな長さを有する堰板を取り付け」ることは、「歩道の舗装前に堰板を取り付け」る点で共通する。

(キ)甲2発明2の「車道の路肩部を掘削して、該掘削部に水路部材を定置した後、該掘削部を埋め戻して舗装し、歩道の舗装は縁石及びプレートの上端縁の位置まで敷設する」は、本件特許発明5の「車道の路肩部を掘削して該掘削部分に前記集水枡本体を定置し」、「前記集水枡本体の周囲において車道と歩道を舗装材により舗装する」及び「歩道を舗装するときに舗装材を前記堰板の上端縁の位置まで打設する」に相当する。

(ク)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「上面に開口部が形成される集水枡本体と、この集水枡本体の上面における歩道側に該歩道と車道とを区分するために設けられる縁石と、前記集水枡本体の上面開口部に固定される枠体と、該枠体の内側に抜き取り可能に嵌め込まれる通水性を有する多孔蓋とを有する側溝用集水枡を備える側溝を施工する方法であって、
車道の路肩部を掘削して該掘削部分に前記集水枡本体を定置し、前記集水枡本体の周囲において車道と歩道を舗装材により舗装する一方、歩道の舗装前には堰板を取り付け、歩道を舗装するときに舗装材を前記堰板の上端縁の位置まで打設する側溝の施工方法。」

(ケ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点2>
縁石の構造及び堰板の取付態様に関し、本件特許発明5では、縁石の下部に枠体の上方位置で歩道側から車道側に通じる導水口が形成され、枠体の歩道側の端縁部に縁石の下部に形成される導水口の開口部分の長さより大きな長さを有する堰板が取り付けられるのに対し、甲2発明2では、歩車道境界ブロックは、コンクリートブロックの頂面歩道側の両端部に固定され、歩車道境界ブロック側の受枠端上にプレートを両端の歩車道境界ブロックとボルト等の連結材で固定することで歩道面と同一高さとしてなる点。

<相違点3>
側溝を施工する手順に関し、本件特許発明5では、掘削部分に集水枡本体を定置し、集水枡本体の上面における歩道側に沿って縁石の据付を行うのに対し、甲2発明2では、掘削部へのコンクリートブロックの定置と、コンクリートブロックへの歩車道境界ブロックの固定及び歩車道境界ブロックへのプレートの固定との施工順序が不明な点。

イ 判断
上記相違点2は、上記(1)ア(キ)の相違点1と実質的に同じものである。
よって、上記相違点3については検討するまでもなく、無効理由2における検討と同様の理由により、本件特許発明5は、甲2発明2、並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 甲第1号証に基づく無効理由(無効理由1、3、5、7及び9)について
(1)甲第1号証の発行時期について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した甲第1号証(カタログ)の裏表紙には、「H14.9」と記載されており、当該記載は「平成14年9月」を意味すると解されるところ、当該年月が本件特許の出願日より3年以上前であること、甲第2号証によると、甲第1号証に記載された製品と同一製品に係る意匠出願が平成9年7月22日になされていることを踏まえると、甲第1号証は、遅くとも本件特許の出願前には頒布されたものと推認できる。

(2)甲第1号証に基づく無効理由についての判断
上記1(2)のとおり、甲第1号証には、甲2発明1及び甲2発明2と同様の発明が記載されているにすぎないから、上記2の検討と同様の理由により、本件特許発明1ないし5は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、審判請求人の主張する無効理由によっては、本件特許発明1ないし5の特許を無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-17 
結審通知日 2015-07-22 
審決日 2015-08-04 
出願番号 特願2006-130261(P2006-130261)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (E03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田畑 覚士  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 中田 誠
赤木 啓二
登録日 2010-06-11 
登録番号 特許第4528743号(P4528743)
発明の名称 側溝用集水枡及び側溝の施工方法  
代理人 羽鳥 亘  
代理人 中村 希望  
代理人 岡野 正義  
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