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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1305960
審判番号 不服2014-17763  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-06 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2011- 79309「薄膜太陽電池向け裏面電極テープ、及びこれを用いる薄膜太陽電池の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月26日出願公開、特開2012-142539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月31日(優先権主張 平成22年12月14日)の出願であって、平成26年2月17日付けで拒絶理由が通知され、同年4月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年9月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年9月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項1について、下記アを、下記イと補正するものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
透明電極フィルムと反射電極フィルムとが積層され、透明電極フィルム自体が接着性を有し、導電性酸化物粒子を、透明電極フィルム用組成物中の固形分100質量部に対して、50?98質量部含むことを特徴とする、薄膜太陽電池用裏面電極テープ。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
透明電極フィルムと反射電極フィルムとが積層され、
透明電極フィルムが、導電性酸化物粒子と、ノンポリマー型バインダーとを含み、透明電極フィルム自体が接着性を有し、導電性酸化物粒子の平均粒径が5?50nmであり、導電性酸化物粒子を、透明電極フィルム用組成物中の固形分100質量部に対して、50?98質量部含み、厚さが30?500nmであることを特徴とする、薄膜太陽電池用裏面電極テープ。」

2.新規事項の有無及び補正の目的要件
本件補正は、本件補正前の「透明電極フィルム」について、「導電性酸化物粒子と、ノンポリマー型バインダーとを含」み、「厚さが30?500nmである」点を限定し、該「導電性酸化物粒子」について、「平均粒径が5?50nm」である点を限定するものであり、願書に最初に添付した明細書の【0018】、【0020】、【0034】、【0106】等の記載からみて、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を、進歩性(特許法第29条第2項)について検討する。

3.本件補正発明の進歩性について
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1.イ」のとおりのものと認める。
(2)引用文献の記載
ア 引用文献1について
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭61-193488号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「非晶質太陽電池の製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。以下、同じ。)。
(引1ア)「上述の本発明は、良好な電気的接合を得るためには光起電力層の非晶質Si半導体層上に直接電極層を膜形成手段等により形成するのが必須であるとの従来の知見に反し、非晶質Si半導体層上に導電性接着剤により別途作成した電極シートを接着することにより、驚くべきことに従来の直接積層した太陽電池に対し遜色のない性能を有する太陽電池が得られることを見出し、なされたものである。」(2頁右下欄11?19行)
(引1イ)「以下、本発明の詳細な説明する。
第1図は、本発明の全体のブロック説明図である。
図示の通り、基板11上にステップaで電極層12が形成される。次いでステップbで非晶質半導体からなる後述の光起電力層13が積層され中間積層体10が形成される。一方、もう一つの基板21上にステップcで電極層22が積層され、電極積層体20が形成される。なお、図から明らかなように、ステップcはステップa及びステップbとは時間的にも空間的にも全く独立して実施できる。
ところで、光照射側に位置する上述の基板11,21と電極層12,22には、後述する透明基板,透明電極が適用される。
ステップdで中間積層体10の光起電力層13上又は/及び電極積層体20の電極層22上には導電性の接着層31が形成される。かかる接着層31には後述する各種のものが適用される。
次いで、ステップeで中間積層体10と電極積層体20とが重ね合わされ、接着層31により接着固定され、非晶質太陽電池30が形成される。」(3頁右上欄4行?左下欄4行)
(引1ウ)「ところで、上述の各ステップa?eには生産性面から連続的に処理される方式が好ましく適用される。そして基板11,21を可撓性の長尺の基板としてロールに巻き上げて各ステップ間を移送し、各ステップではロールを巻戻しつつ処理し再びロールに巻き上げるようにすると、生産性面,品質面で非常に有利である。」(4頁左下欄5?11行)
(引1エ)「本発明の光起電力層の非晶質シリコン半導体層はグロー放電法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法などの公知の方法を用いて堆積する事が出来る。」(3頁右下欄7?10行)
(引1オ)「本発明の導電性接着層としてはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等のバインダー用の高分子樹脂中に酸化錫、酸化インジュウム、酸化チタン等の酸化物導電性微粒子を分散させた分散型の導電性高分子樹脂接着剤が用いられる。又ポリビニルカルバゾール等の導電性高分子樹脂も使用出来る。さらに半田等の低融点金属薄層を接着層として利用することも可能である。接着力、耐久性等の面からは、導電性高分子樹脂、特に分散型の導電性高分子樹脂が、電気抵抗面からは低融点金属薄層が好ましく、用途に応じて選定する。」(4頁左下欄2?14行)
(引1カ)「この導電性接着層が非晶質半導体光起電力層で発生した光電流を電極層に損失なく伝達する役割をはたす為には10^(6)cmΩ以下の抵抗率である事が望ましい。なお、接着層の厚みは特に限定されないが、接着力、耐久性、電気抵抗、光透過性等多くの因子に関係し実験的に決める必要があるが、通常は0.01?10μの範囲で選定される。」(4頁左下欄19行?右下欄5行)
(引1キ)第1図


イ 本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-50356号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「ヘテロ接合太陽電池の製造方法及びヘテロ接合太陽電池」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引2)「【0052】
(実施例)
n型単結晶シリコン基板11として、直径200mm(8インチ)、結晶面(100)、面抵抗50Ωcmのn型単結晶シリコン基板を用意した。また、金属基板12として厚さ200μm、直径200mmのステンレス(SUS304)基板を用意した(工程a)。
次に、n型単結晶シリコン基板11に、加速電圧350keVで水素プラスイオンをドーズ量1.0×10^(17)/cm^(2)の条件で注入した(工程b)。イオン注入層14の深さはイオン注入面13からおよそ3μmとなった。
【0053】
次に、ステンレス基板12にアンチモンをドープした酸化スズの皮膜をスプレー法により形成し、これに酸化インジウムスズからなる平均粒径1.0μmの導電性粒子をフィラーとして、アルコキシシランとテトラアルコキシシランの加水分解重縮合物に上記導電性粒子を80wt%含む導電性材料とし、これをイソプロピルアルコールの溶媒に溶かし、導電性接着剤とした。この導電性接着剤15を介し、単結晶シリコン11とステンレス基板12を密着させた(工程c)。
この貼り合せ基板を250℃で2時間加熱処理後、室温に戻すことによって導電性接着剤15を硬化させて導電性接着層16とすると共に、n型単結晶シリコン基板11とステンレス基板12を強固に貼り合わせた(工程d)。
【0054】
次に、接合界面近傍に高圧窒素ガスを吹き付けた後、該吹き付け面から剥離が開始するように、単結晶シリコン基板を引き剥がすように機械的に剥離を行った(工程e)。このとき、単結晶シリコン基板に背面から補助基板を吸着させた後剥離するようにした。また、剥離転写された単結晶シリコンにフラッシュランプアニール法により表面が瞬間的に700℃以上となる条件で照射し、水素注入ダメージを回復した。
【0055】
n型単結晶シリコン層17の表面に、酸化性雰囲気下での化成スパッタリングにより、300℃でn型の透明半導体薄膜18として酸化インジウムスズの薄膜を1μm形成した(工程f)。
次に、真空蒸着法及びパターニング法により銀電極23を形成した(工程g)。その後、さらに銀の集電電極パターン23を金属マスクを用いて真空蒸着法により形成した。その後、取り出し電極部分を除いた表面を反応性スパッタ法により窒化珪素の透明保護膜27を形成した(工程h)。
【0056】
このようにして、金属基板、導電性接着層、n型単結晶シリコン層とn型半導体層とからなるヘテロ接合による光変換層、電極とが順次積層された薄膜ヘテロ接合太陽電池31を製造した。
このようにして製造したヘテロ接合太陽電池に、ソーラーシュミレーターによりAM1.5で100mW/cm^(2)の光を照射し、変換効率を求めた。変換効率は12%であり、経時変化はなかった。」

ウ 本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-123500号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「画像表示装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引3)「【実施例】
【0044】
(実施例1)
本実施例では、導電性部材を有するスペーサの製造方法と、電子照射位置の調整方法の一例を詳細に説明する。
【0045】
(工程1:スペーサ基材)
スペーサの基材としては、機械的強度、電気的絶縁性に優れたガラスを用い、加熱延伸法を用いて、母材となるガラスを引き伸ばして、長い板状のスペーサ基材を得た。
【0046】
(工程2:高抵抗膜形成)
工程1で作製したスペーサ基材の表面に、高抵抗膜としてゲルマニウムとタングステンとの合金の窒化物をスパッタ法により成膜した。高抵抗膜の膜厚は100nmとし、シート抵抗値は1×10^(11)Ω/□程度であった。
【0047】
(工程3:導電性部材形成)
工程2で形成した高抵抗膜つきスペーサに、Cuの導電性部材22を形成した。導電性部材22をスペーサ7のリアプレート側端面に形成するため、図10に示すように、まず、成膜治具40によりスペーサ7を挟み込んだ。そして、成膜治具40からスペーサ7が所望の高さ突き出るように配置した状態で、スパッタ法によりCuを成膜した。成膜したCu膜のシート抵抗値は1×10^(3)Ω/□程度であった。
【0048】
(工程4:スペーサ固定、導電性部材への給電)
工程3で作製したスペーサ7を、リアプレート8に固定する。固定には、Agのフィラーとセラミックス粉が水ガラスに分散された導電性接着剤を用いた。リアプレート8のうち画像表示領域外の領域でスペーサ7を接着する部分に、不図示の配線を設け、外部電源である電位供給手段23、24から給電できるようにした。なお、リアプレート8とスペーサ7との画像領域内での接触部は、リアプレート8上に絶縁層20を設けることで絶縁した。
【0049】
(工程5 電子照射位置測定、導電性部材への給電)
上述のように作製したスペーサ7と、リアプレート8、フェースプレート1を用いて画像表示装置を形成した。まずは、導電性部材22への給電を、電位供給手段23、24ともに10Vとして、画像表示装置から画像を表示させ、電子照射位置を測定するカメラにより、フェースプレート上における電子の照射位置を撮影した。本実施例の測定結果は、図6に示すようになった。スペーサ近傍の電子の照射位置は、電位供給手段23側でスペーサ7に近づき(図6(a))、電位供給手段24側でスペーサ7から遠ざかっていた(図6(c))。そこで、電位供給手段23から8Vを、電位供給手段24から12Vを導電性部材22に印加し、スペーサ7の長手方向に沿って導電性部材22に電位勾配を形成した。その結果、L1は大きくなる一方、L2は小さくなり、L1とL2の差が小さくなった。これにより、画像表示装置の画質が向上した。」

エ 本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-23418号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「エネルギー貯蔵装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引4)「〔実 施 例〕
以下、本発明の実施例を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施例は電気二重層コンデンサについてのもので、第1図に示されているように、同コンデンサは底の浅い皿状をなすケース本体1と、同ケース本体1に被せられるキャップ2とを備えている。この場合、ケース本体1およびキャップ2は、ともにステンレス材からなり、その各底部には分極性電極3,4が導電性接着材5を介して取付けられている。
この導電性接着材5は、導電性カーボンを含む水溶液中に水ガラスを添加したものからなる。その添加量は1?30wt%が好ましい。水ガラスのモル組成は、Na_(2)O・nSiO_(2)(n=2?4)であり、成分としてはSiO_(2)が23?37%、Na_(2)Oが6?18%である。
第2図にはケース本体1に導電性接着材5を塗布する状態が示されているが、このようにケース本体1の底部に図示しないノズルなどにて多点状、好ましくは3個所程度に塗布し、その上から分極性電極3を押し付けるようにして取付けるとよい。なお実際には、分極性電極3の取付工程に先立って、ケース本体1内にガスケット6が装着される。
各分極性電極3,4間にセパレータ7を配置したのち、ケース本体1に対してキャップ2が被せられ、同ケース本体1の周縁がキャップ2の周縁を包み込むようにかしめられる。」(2頁左上欄19行?左下欄5行)

(3)引用発明の認定
上記(2)アの引用文献1の記載に関し、次のア?ウの事項がいえる。
ア (引1イ)から、基板11、21には、透明基板が適用されるから、基板11、21は、透明基板であるということができる。また、(引1ウ)から、基板11、12は、可撓性の長尺の基板の態様を含む。

イ (引1イ)の「光照射側に位置する上述の基板11,21と電極層12,22には、後述する透明基板,透明電極が適用される」という記載からみて、電極層12、22は、透明電極層12、22ということができ、光の照射は、基板11からであっても、基板21からであってもよいことがわかる。

ウ (引1オ)から、接着層31には、ポリエステル樹脂等が用いられていることから、当業者の技術常識に照らして、該接着層31は、透明であるといえる。

そうすると、引用文献1には、
「可撓性の長尺の透明基板11上に透明電極層12が形成され、非晶質Si半導体からなる光起電力層13が積層された中間積層体10の該光起電力層13上に、重ね合わされ接着固定されて非晶質太陽電池30を形成するために用いられる非晶質太陽電池30用電極シートであって、
光の照射は、透明基板11からであっても、透明基板21からであってもよく、
該電極シートは、長尺の透明基板21上に透明電極層22が積層され、透明電極層22上には、バインダー用の高分子樹脂中に酸化物導電性微粒子を分散させた分散型の導電性高分子樹脂接着剤である、非晶質半導体光起電力層で発生した光電流を電極層に損失なく伝達する役割をはたす透明接着層31が形成されることにより作成され、
該透明接着層31の厚みは0.01?10μである電極シート。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「非晶質太陽電池30」と、本件補正発明の「薄膜太陽電池」は、「太陽電池」である点で共通する。

イ 本件補正発明の「透明電極フィルム」の「フィルム」とは、「薄皮。薄膜。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」のことを意味することが技術常識であるところ、引用発明の「バインダー用の高分子樹脂中に酸化物導電性微粒子を分散させた分散型の導電性高分子樹脂接着剤である透明接着層31」は、接着層を形成しているから「薄皮、薄膜」であって、「フィルム」と呼ぶことができる。
しかも、該「接着層31」は、透明であり、導電性かつ接着性を有しており、「非晶質半導体光起電力層で発生した光電流を電極層に損失なく伝達する役割をはたす」ことから、「電極」と呼ぶことができる。
そうすると、引用発明の「接着層31」は、本件補正発明の「透明電極フィルム」に相当する。

ウ 引用発明の「透明電極層12」と、本件補正発明の「反射電極フィルム」は、「電極フィルム」である点で共通する。

エ 引用発明は、「透明電極層22」上に「透明接着層31」が形成されているから、「透明電極層22」と「透明接着層31」とは、積層されているといえる。
よって、引用発明の「透明基板21上には」「透明接着層31が形成される」ことと、本件補正発明の「透明電極フィルムと反射電極フィルムとが積層され」ることとは、「透明電極フィルムと電極フィルムとが積層され」る点で共通している。

オ 引用発明の「バインダー用の高分子樹脂」と、本件補正発明の「ノンポリマー型バインダー」は、「バインダー」である点で共通する。

カ 引用発明の「酸化物導電性微粒子」は、本件補正発明の「導電性酸化物粒子」に相当する。
よって、引用発明の「透明接着層31」が「バインダー用の高分子樹脂中に酸化物導電性微粒子を分散させた分散型の導電性高分子樹脂接着剤である、非晶質半導体光起電力層で発生した光電流を電極層に損失なく伝達する役割をはたす」ことと、本件補正発明の「透明電極フィルムと反射電極フィルムとが積層され、 透明電極フィルムが、導電性酸化物粒子と、ノンポリマー型バインダーとを含み、透明電極フィルム自体が接着性を有し、導電性酸化物粒子の平均粒径が5?50nmであり、導電性酸化物粒子を、透明電極フィルム用組成物中の固形分100質量部に対して、50?98質量部含み、厚さが30?500nmである」こととは、「透明電極フィルムが、導電性酸化物粒子と、バインダーとを含み、透明電極フィルム自体が接着性を有する」ことで共通する。

キ 引用発明の「電極シート」は、「可撓性の長尺の透明基板21上に透明電極層22が形成」され、「透明電極層22」上に、「透明接着層31が形成された」ものであるから、その形状は「テープ」と呼ぶことができ、しかも、「電極シート」自体が粘着性を有しているということができる。
よって、引用発明の「電極シート」は、本件補正発明の「電極テープ」に相当する。

ク そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「透明電極フィルムと電極フィルムとが積層され、
透明電極フィルムが、導電性酸化物粒子と、バインダーとを含み、透明電極フィルム自体が接着性を有する太陽電池用電極テープ。」である点で一致し、次の相違点1?5で相違する。

(相違点1)
電極フィルムについて、本件補正発明は、「反射電極」であるのに対し、引用発明の「透明電極層22」は、「透明」であって、「反射電極」ではなく、しかも、本件補正発明は「太陽電池用裏面」に用いられるのに対し、引用発明の「電極シート」は、太陽電池の「裏面」に用いられるかどうかは不明な点。
(相違点2)
透明電極フィルムに含まれるバインダーについて、本件補正発明は、「ノンポリマー型」であるのに対し、引用発明では、「透明接着層31」のバインダーは、「高分子樹脂」である点。
(相違点3)
透明電極フィルムに含まれる導電性酸化物粒子について、本件補正発明は、「平均粒径が5?50nmであり、導電性酸化物粒子を、透明電極フィルム用組成物中の固形分100質量部に対して、50?98質量部含」むのに対し、引用発明は、「透明接着層31」に含まれる「酸化物導電性微粒子」の平均粒径は不明であり、「透明電極層22」中にどの程度の量が含まれるか不明な点。
(相違点4)
透明電極フィルムの厚さについて、本件補正発明は、「30?500nmである」のに対し、引用発明の「透明接着層31」の厚みは「0.01?10μ」である点。
(相違点5)
太陽電池について、本件補正発明は、「薄膜太陽電池」であるのに対し、引用発明の「非晶質太陽電池30」は、「薄膜」かどうかは不明な点。

(5)判断
以下、相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明は、「光の照射は、基板11からであっても、基板21からであってもよい」ことから、引用発明において、光の照射を透明基板11から行うようにするか、透明基板21から行うようにするかは、当業者が適宜決定する設計的事項であって、その際に、光の照射が行われない側の電極層を、「反射電極」とすることは当業者にとって周知であるから、引用発明の「透明基板21」側を光の照射が行われない「裏面」とし、「電極シート」を「太陽電池用裏面電極シート」として用いて、引用発明の「透明電極層22」を反射電極として、本件補正発明の上記相違点1に係る構成を備えることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
接着層に用いられる透明なバインダーとして、「ノンポリマー型」のものは周知である(引用文献2の「導電性接着剤」における「アルコキシシランとテトラアルコキシシランの加水分解重縮合物」、引用文献3の「導電性接着剤」における「水ガラス」、引用文献4の「導電性接着材」における「水ガラス」を参照。当業者の技術常識に照らせば、これらは、いずれも透明であって、「ノンポリマー型」である。)。
そして、引用文献1には、「半田等の低融点金属薄層を接着層として利用することも可能である。」(引1オ)という記載があり、引用発明の「透明接着層31」は、「高分子樹脂」を用いたものに限定されないことは明らかであって、「透明接着層31」にどのようなバインダーを用いるかは、接着力、耐久性等を考慮して当業者が適宜決定する事項にすぎないことから、引用発明の「透明接着層31」のバインダーとして、周知の「ノンポリマー型」を用いて、本件補正発明の上記相違点2に係る構成を備えることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
引用発明において、「透明接着層31」に含まれる「酸化物導電性微粒子」の平均粒径や「透明電極層22」中にどの程度の量を含ませるかは、導電率や透明度を勘案して、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
そして、「酸化物導電性微粒子」の平均粒径として、「5?50nm」は格別なものではなく、その量として「固形分100質量部に対して、50?98質量部」とすることも格別なものではない。
そうすると、本件補正発明は、上記相違点3に係る構成格別顕著な作用効果をもたらすものではなく、上記相違点3に係る構成を備えることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点4について)
引用文献1に、「接着層の厚みは特に限定されないが、接着力、耐久性、電気抵抗、光透過性等多くの因子に関係し実験的に決める必要がある」(引1カ)と記載されているように、引用発明において、「透明接着層31」の厚みは、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
そして、その厚みとして、「30?500nm」は格別なものではない。
そうすると、本件補正発明は、上記相違点4に係る構成によって格別顕著な作用効果をもたらすものではなく、上記相違点4に係る構成を備えることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点5について)
「非晶質太陽電池」を用いた薄膜太陽電池は周知であり、引用発明の「非晶質太陽電池30」を、必要に応じて、薄膜太陽電池として構成することは、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
そうすると、本件補正発明の上記相違点5に係る構成を備えることは当業者が容易に想到し得たことである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

4.本件補正発明についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成26年9月6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、同年4月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2 1.ア」のとおりのものと認める。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、及びその記載事項は、前記「第2 3(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「第2 1.」で検討した本件補正発明から、「透明電極フィルム」について、「導電性酸化物粒子と、ノンポリマー型バインダーとを含」む点、「厚さが30?500nmである」点を省き、さらに、該「導電性酸化物粒子」について、「平均粒径が5?50nm」である点を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 3.」に記載したとおり、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-08 
結審通知日 2015-07-14 
審決日 2015-08-07 
出願番号 特願2011-79309(P2011-79309)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 将彦下村 一石  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 川端 修
松川 直樹
発明の名称 薄膜太陽電池向け裏面電極テープ、及びこれを用いる薄膜太陽電池の製造方法  
代理人 渡會 祐介  

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