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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1305998
審判番号 不服2014-5677  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-27 
確定日 2015-09-28 
事件の表示 特願2008-230327号「ゲルと布とのシールアセンブリを備える外科手術用入口部品」拒絶査定不服審判事件〔平成21年4月2日出願公開、特開2009- 66406号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I 手続の経緯
本願は、平成20年9月8日(パリ条約による優先権主張2007年9月17日、米国、2008年7月17日、米国)の出願であって、平成24年12月21日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月11日付けで特許請求の範囲についての手続補正がされ、平成25年6月10日付けで拒絶理由が通知され、平成25年9月12日付けで特許請求の範囲についての手続補正がされたが、平成25年12月25日付けでその補正は却下されるとともに同日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年3月27日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正がされたものである。

II 平成26年3月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年3月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「【請求項1】
外科手術用入口部品アセンブリであって、
入口部品であって、下にある組織へのアクセスを提供するように適合され、該入口部品の長手方向軸に沿って延びる長手軸方向開口部を有し、近位端および遠位端を規定する、入口部品と、
シールであって、ゲル材料および該ゲル材料に対して設置された布材料を含み、該シールは、通路を規定する内部表面を含み、該通路は、該シールによって実質的に密封された関係での外科手術用物体の受容および通過のためのものである、シールと
を含み、
該シールは、近位表面および遠位表面を規定し、該近位表面および該遠位表面の各々に隣接して設置された布層を含み、
該近位表面に隣接して設置された該布層は、該近位表面の長さの一部分のみに沿って延びる、外科手術用入口部品アセンブリ。」

2 補正の目的等
本件補正は、補正前の請求項2に記載された、発明を特定するために必要な事項である「シール」について「シールは、近位表面および遠位表面を規定し」との限定を付加するとともに「布層」について「該近位表面に隣接して設置された該布層は、該近位表面の長さの一部分のみに沿って延びる」との限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項2に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、同法同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1 引用刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-187603号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1-1)「【0001】
・・・
本開示は、外科手術用デバイスに関し、より詳細には、最小侵襲性の外科的手順の間に、外科手術用アクセス装置とともに使用するためのシールアセンブリに関する。」
(1-2)「【0003】
本発明の目的は、内視鏡手順および腹腔鏡手順において、身体中に挿入される任意の器械を密閉するための手段を提供することである。」
(1-3)「【0013】
・・・
本開示の上記シールアセンブリは、それのみであってもカニューレアセンブリに対して内部のシールシステムと組み合わせてであってもよいが、カニューレアセンブリを通って物体を挿入する前、その間、およびその後に、患者の体腔と外気との間に実質的なシールを提供する。・・・」
(1-4)「【0017】
・・・図1?2は、カニューレアセンブリ200のようなアクセスデバイスに設置された、本開示のシールアセンブリ100を図示する。カニューレアセンブリ200は、体腔に接近する意図された目的に適切な、任意の部材であり得、そして代表的に、そこを通しての器具の導入を可能にする通路を規定する。・・・」
(1-5)「【0021】
ここで、図1?2と組み合わせて図3?4を参照して、シールアセンブリ100が、詳細に議論される。シールアセンブリ100は、シールハウジング(一般に、参照番号102として同定される)およびシール104(これは、シールハウジング102内に配置される)を備える。・・・ハウジング構成要素106、108、110の組み立てられた状態において、内部チャネル112が、上壁114および下壁116、ならびに側壁118a、118bの間に規定される。内部チャネル112は、シール104を収容する。・・・」
(1-6)「【0023】
シール要素122は、好ましくは、内部領域を含むセプタムシールであり、この内部領域は、外科手術用器具の密封された受容のための、中心開口部分126を規定する。シール要素122の周囲は、好ましくは、支持カラー120に固定されるか、または支持カラー120に入れられる。その結果、シール要素122は、挿入された物体の操作の間、支持カラー120と一緒に移動する。シール要素122を支持カラー120に固定するための任意の手段(セメント、接着剤などの使用が挙げられる)が、予測される。シール要素122は、エラストマー材料を含み得、そしてこのエラストマー材料に隣接する布層を備えても備えなくてもよい。例えば、1つの実施形態において、シール要素122は、望ましくは、布材料と圧縮成型されたエラストマー材料(例えば、上述の米国特許第6,702,787号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)の特定の実施形態に開示される)を備える。この布は、ポリマー材料の織った材料、編んだ材料、編組された材料、または不織材料を含み得る。あるいは、シール要素122は、軟質ウレタンゲル、シリコンゲルなどから作製された、ゲル材料を含み得る。上記のように、シール要素122および支持カラー120は、単一のユニットとして、モノリシックに形成され得る。・・・」
(1-7)図4の記載から、カニューレアセンブリ200は、軸aに沿って延びる方向のシールアセンブリ100と接続する位置に、開口部を有することが窺える。
(1-8)図2及び図3の記載から、カニューレアセンブリ200は、軸aに沿って延び、第1端(審決注:図2における左側端)及び第2端(審決注:同図における右側端)を有することが窺える。
(1-9)図4の記載から、シール要素は、一定の厚みを有する形状であることが窺える。

上記(1-4)の「カニューレアセンブリ200は、体腔に接近する意図された目的に適切な、任意の部材であり得、そして代表的に、そこを通しての器具の導入を可能にする通路を規定する。」の記載から、カニューレアセンブリ200は、下にある組織へのアクセスを提供するように適合されるものといえる。
上記(1-7)及び(1-8)の図示内容から、カニューレアセンブリ200は、軸aに沿って延びる軸a方向開口部を有し、第1端および第2端を規定するものといえる。
上記(1-6)の「シール要素122は、好ましくは、内部領域を含むセプタムシールであり、この内部領域は、外科手術用器具の密封された受容のための、中心開口部分126を規定する。」と「シール要素122は、軟質ウレタンゲル、シリコンゲルなどから作製された、ゲル材料を含み得る。」との記載を併せてみて、シール要素122は、ゲル材料を含み、シール要素122は、中心開口部分126を規定する内部表面を含み、中心開口部分126は、シール要素122によって実質的に密封された関係での外科手術用器具の受容および通過のためのものであるといえる。
また、シール要素は、上記(1-6)の「シール要素122は、好ましくは、内部領域を含むセプタムシールであり、」との記載と上記(1-9)の図示内容とを併せてみて、第1表面(審決注:図4においてシール要素122の左側の表面)と第2表面(審決注:同じく右側の表面)を有しているといえる。

以上から、刊行物1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
「外科用手術用デバイスであって、
カニューレアセンブリ200であって、下にある組織へのアクセスを提供するように適合され、カニューレアセンブリ200の軸aに沿って延びる軸a方向開口部を有し、第1端および第2端を規定する、カニューレアセンブリ200と、
シール要素122であって、ゲル材料を含み、シール要素122は、中心開口部分126を規定する内部表面を含み、中心開口部分126は、シール要素122によって実質的に密封された関係での外科手術用器具の受容および通過のためのものである、シール要素122と
を含み、
シール要素122は、第1表面および第2表面を規定する、外科用手術用デバイス。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2002-513319号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(2-1)「本発明は、患者の体内に手術器具を導入できるようにした形式のシールシステムに関し、より詳しくは、カニューレ組立体と組み合わせて使用されるシールシステムであって、カニューレ組立体が患者の体内に導入されかつ器具がカニューレを通して患者の体内に導入されるように意図したシールシステムに関する。」(3頁4?7行)
(2-2)「本発明は、カニューレを通して挿入される、種々の直径をもつ器具の回りに気密シールを形成しかつ維持でき、シールユニットを通る器具の挿通性を高めかつ容易にする構造を取り入れたカニューレ組立体用のシールユニットすなわちシール組立体を提供することにより従来技術の欠点を解消することにある。」(5頁17?20行)
(2-3)「第1図および第2図に示すように、シール組立体100は、カニューレ組立体110およびトロカール栓塞子112を備えた慣用的なトロカール組立体と組み合わせて使用される。」(7頁3?5行)
(2-4)「第3図に最も良く示すように、シール部材118は織物128を有し、該織物はシール部材118の近位側および遠位側の両方に配置するのが好ましい。・・・
織物128を備えたシール部材118を形成する1つの方法では、生の、すなわち未硬化のポリイソプレンプラグが、最初に、平らな状態例えば平らなポリイソプレンのシートに圧縮される。平坦化されたポリイソプレンシートの上に、単一層の織物が置かれ、該織物は、例えばカレンダリング等の任意の適当な圧縮方法により末硬化ゴム内に圧縮される。シール部材118の両側に織物を設けたい場合には、この方法がポリイソプレンシートの他方の側にも適用される。ポリイソプレンの織物複合体は、中央孔を形成する外径および内径を備えた円形スラグにダイカットされる。スラグは、ポリイソプレンを硬化させるため、熱い圧縮金型内に入れられる。」(8頁20行?9頁8行)
(2-5)図3の記載から、左下がりのハッチングがされた部材について、2つの略円状の部分があり、一方の円状の部分から、図面上左方向に当該円状の部分の直径より小さな一定の幅の部分が延び、また他方の円状の部分からは図面上右方向に当該円状の部分の直径より小さな一定の幅の部分が延びる形状であることが窺える。また、右下がりのハッチングがされた部材がこれら左下がりのハッチングがされた部材の一定の幅で延びる部分の全部と円状の部分の一部についての上側及び下側に配置されることにより、左下がりのハッチングがされた部材と右下がりのハッチングがされた部材とは、3層構造を形成するとともに、その厚さは、上記円状の部分の直径と略同じであることが窺える。

上記(2-2)の「種々の直径をもつ器具の回りに気密シールを形成しかつ維持でき、シールユニットを通る器具の挿通性を高めかつ容易にする構造を取り入れたカニューレ組立体用のシールユニット」との記載と上記(2-5)の図示内容とを併せてみて、図3の2つの略円状の部分が対向している部分は、実質的に密封された関係での器具の受容および通過のための通路といえる。
したがって、上記(2-4)の記載も併せてみて、刊行物2には、ポリイソプレンシートおよび当該ポリイソプレンシートに対して設置された織物を含むとともに、通路を規定する内部表面を含み、該通路は、シール部材118によって実質的に密封された関係での器具の受容および通過のためのものである、シール部材118が記載されている。
また、上記(2-4)の記載内容と上記(2-5)の図示内容とを併せてみて、シール部材118は、第1表面(審決注:図3における上側の面)及び第2表面(審決注:同図における下側の面)を規定し、該第1表面および該第2表面の各々に隣接して設置された織物の層を含み、該第1表面に隣接して設置された該織物の層は、該第1表面の長さの一部分のみに沿って延びる構造であるといえる。

以上から、刊行物2には、カニューレ組立体と組み合わせて使用されるシールシステムのシール部材118について、ポリイソプレンシートおよび当該ポリイソプレンシートに対して設置された織物を含むとともに、通路を規定する内部表面を含み、該通路は、シール部材118によって実質的に密封された関係での器具の受容および通過のためのものとするとともに、シール部材118は、第1表面及び第2表面を規定し、該第1表面および該第2表面の各々に隣接して設置された織物の層を含み、該第1表面に隣接して設置された該織物の層は、該第1表面の長さの一部分のみに沿って延びる構造とすることが記載されている。
したがって、刊行物2には、外科手術用入口部品アセンブリのシールについて、シール材料に対して設置された布材料を含み、該シールは、近位表面および遠位表面の各々に隣接して設置された布層を含み、該近位表面に隣接して設置された該布層は、該近位表面の長さの一部分のみに沿って延びるものとする発明が記載されている(以下、「刊行物2発明」という。)。

(3)当審において新たに引用する刊行物である米国特許第6702787号明細書(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(訳文として特表2001-525693号公報を援用する。)。
(3-1)「The present disclosure relates to seal systems of the type adapted to allow the introduction of a surgical instrument into a patient's body. In particular, the disclosure relates to a seal system to be used in combination with a cannula assembly where the cannula assembly is intended for insertion into a patient's body and an instrument is inserted into the patient's body through the cannula.(1欄12?19行)(本発明は、患者の体内へ外科用器具を導入できるようなタイプの密封装置に関する。特に、本発明は、カニューレ組立体が患者の体内へ挿入され、器具がカニューレを介して患者の体内へ挿入されるようにカニューレ組立体と組み合わせて用いられる密封装置に関する。(3頁5?8行))」
(3-2)「Referring now in detail to the drawing figures in which like reference numerals identify similar or identical elements, a first embodiment of the seal assembly of the present disclosure is illustrated in FIGS. 1-9, and is designated generally as seal assembly 100.(4欄6?10行)(今、図面を詳細に参照すると(同一の参照符号は、類似又は同一の要素を示している)、本発明の密封組立体の第1の実施形態が図1?図9に示され、これは全体が密封組立体100として示されている。(7頁11?13行))」
(3-3)「A two part ring assembly which includes ring members 120 and 122 are snap fitted together on either side of seal member 118.(4欄19?21行)(2部品構成のリング組立体が、リング部材120,122から成り、これらリング部材は、密封部材118の両側で互いにスナップ嵌めされる。(7頁25?26行))」
(3-4)「Referring now to FIGS. 3-6, seal member 118 includes a fabric disc-shaped portion 128 which is preferably disposed on both the proximal and distal sides of inner section 118b of seal member 118. Alternatively, fabric section 128 may be disposed on just one of either the proximally facing surface or the distally facing surface of inner portion 118b, as desired. Fabric portion 128 may be of any suitable fabric, for example, a SPANDEX material containing 20% LYCRA available from Milliken.
In one method of forming the composite seal member 118 with fabric portion 128 a raw, i.e., uncured polyisoprene plug is first compressed into a flat state, e.g., a flat sheet of polyisoprene. A single layer of fabric is positioned on top of the flattened polyisoprene sheet and compressed into the uncured rubber by any suitable compression process such as, for example, calendering. If it is desired to have fabric on both sides of seal member 118, this process is repeated on the other side of the polyisoprene sheet. The fabric polyisoprene composite is die cut into circular slugs having an outer diameter and an inner diameter which forms a central aperture. The slugs are placed in a hot compression mold to cure the polyisoprene. This step also serves to extrude the outer portions of seal member 118 which extend outwardly from inner section 118b.(4欄47行?5欄3行)(次に、図3?図6を参照すると、密封部材118は、好ましくは密封部材118の内側部分118bの手元側の側部と先端側の側部の両方に設けられた織物でできたディスク状部分128を有している。変形例として、織物部分128を所望に応じて内側部分118bの手元側に向いた表面か、或いは先端側に向いた表面かのいずれか一方だけに設けてもよい。織物部分128は、任意適当な織物、例えばミリケン社から入手できる20%LYCRAを含有したSPANDEX材料であるのがよい。
織物部分128を備えた複合密封部材118を形成する一方法では、未加工、即ち未硬化のポリイソプレン製プラグを先ず最初に平らな状態に、例えば平らなポリイソプレンシートの状態に圧縮する。単一の織物層を平らにしたポリイソプレンシートの頂部上に置き、任意適当な圧縮法、例えばカレンダリング法によって未硬化のゴム内へ圧縮する。もし、密封部材118の両側部上に織物を設けることが望ましい場合、ポリイソプレンシートの他方の側にもこの方法を繰り返す。織物ポリイソプレン複合材を、外径及び中央孔を構成する内径を備えた円形の金属片の状態に打ち抜く。金属片を熱間圧縮成形型内においてポリイソプレンを硬化させる。この工程は、密封部材118の外側部分を押し出すのにも役立ち、この外側部分は内側部分118bから外方に延びる。(8頁18行?9頁6行))」
上記記載からみて、刊行物3には、刊行物2と略同様の記載がされている。

よって、刊行物3には、刊行物2発明と同様の、外科手術用入口部品アセンブリのシールについて、シール材料に対して設置された布材料を含み、該シールは、近位表面および遠位表面の各々に隣接して設置された布層を含み、該近位表面に隣接して設置された該布層は、該近位表面の長さの一部分のみに沿って延びるものとする発明が記載されている(以下、「刊行物3発明」という。)。

3-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「外科用手術用デバイス」は、本願補正発明の「外科手術用入口部品アセンブリ」に相当し、以下同様に、「カニューレアセンブリ200」は「入口部品」に、「軸a」は「長手方向軸」に、「軸a方向開口部」は「長手軸方向開口部」に、「第1端」は「近位端」に、「第2端」は「遠位端」に、それぞれ相当する。
同様に、「シール要素122」は「シール」に、「中心開口部分126」は「通路」に、「外科手術用器具」は「外科手術用物体」に、「第1表面」は「近位表面」に、「第2表面」は「遠位表面」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「外科手術用入口部品アセンブリであって、
入口部品であって、下にある組織へのアクセスを提供するように適合され、該入口部品の長手方向軸に沿って延びる長手軸方向開口部を有し、近位端および遠位端を規定する、入口部品と、
シールであって、ゲル材料を含み、該シールは、通路を規定する内部表面を含み、該通路は、該シールによって実質的に密封された関係での外科手術用物体の受容および通過のためのものである、シールと
を含み、
該シールは、近位表面および遠位表面を規定する、外科手術用入口部品アセンブリ。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明のシールは、ゲル材料に対して設置された布材料を含み、
該シールは、近位表面および遠位表面の各々に隣接して設置された布層を含み、該近位表面に隣接して設置された該布層は、該近位表面の長さの一部分のみに沿って延びるものであるのに対し、引用発明のシールは、本願補正発明に係る当該発明を特定するために必要な事項を有するかどうか不明である点。

3-3 相違点の判断
上記相違点について検討する。
上記3-1(2)に記載したとおり、刊行物2には刊行物2発明が記載されている。
そして、引用発明のシール要素122と刊行物2発明のシール(審決注:刊行物2に記載の「シール部材118」)とはいずれも外科出術用入口部品アセンブリのシールに関するものであり、引用発明のゲル材料と刊行物2のシール材料(審決注:刊行物2に記載の「ポリイソプレンシート」)とはシール手段である点で共通する。
よって、引用発明に刊行物2発明を適用し、引用発明において、シールは、ゲル材料に対して設置された布材料を含み、該シールは、近位表面および遠位表面の各々に隣接して設置された布層を含み、該近位表面に隣接して設置された該布層は、該近位表面の長さの一部分のみに沿って延びるものとすることは当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

また、上記3-1(3)に記載したとおり、刊行物3には刊行物3発明が記載されている。
ところで、刊行物1には、「シール要素122は、エラストマー材料を含み得、そしてこのエラストマー材料に隣接する布層を備えても備えなくてもよい。例えば、1つの実施形態において、シール要素122は、望ましくは、布材料と圧縮成型されたエラストマー材料(例えば、上述の米国特許第6,702,787号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)の特定の実施形態に開示される)を備える。」(上記記載事項(1-6)を参照。)と記載されているから、刊行物3発明を適用することについて示唆がされている。
よって、引用発明に刊行物3発明を適用し、引用発明において、シールは、ゲル材料に対して設置された布材料を含み、該シールは、近位表面および遠位表面の各々に隣接して設置された布層を含み、該近位表面に隣接して設置された該布層は、該近位表面の長さの一部分のみに沿って延びるものとすることは当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び刊行物2発明、または、引用発明及び刊行物3発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2発明、または、引用発明及び刊行物3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成25年3月11日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
外科手術用入口部品アセンブリであって、
入口部品であって、下にある組織へのアクセスを提供するように適合され、該入口部品の長手方向軸に沿って延びる長手軸方向開口部を有し、近位端および遠位端を規定する、入口部品と、
シールであって、ゲル材料および該ゲル材料に対して設置された布材料を含み、該シールは、通路を規定する内部表面を含み、該通路は、該シールによって実質的に密封された関係での外科手術用物体の受容および通過のためのものである、シールと
を含む、外科手術用入口部品アセンブリ。
【請求項2】
前記シールの近位表面および遠位表面の各々に隣接して設置された布層をさらに含む、請求項1に記載の外科手術用入口部品アセンブリ。」

IV 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、2及びそれらの記載事項は、前記IIの「3-1」欄に記載したとおりである。

V 対比・判断
本願発明は、前記IIの「1」欄の本願補正発明から、「シール」の限定事項である「シールは、近位表面および遠位表面を規定し」との構成を省くとともに「布層」の限定事項である「該近位表面に隣接して設置された該布層は、該近位表面の長さの一部分のみに沿って延びる」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記IIの「3-3」欄に記載したとおり、引用発明及び刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-01 
結審通知日 2015-05-07 
審決日 2015-05-19 
出願番号 特願2008-230327(P2008-230327)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 高木 彰
関谷 一夫
発明の名称 ゲルと布とのシールアセンブリを備える外科手術用入口部品  
代理人 大塩 竹志  

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