• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1306058
審判番号 不服2014-11824  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-23 
確定日 2015-10-01 
事件の表示 特願2010-290369「太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムおよび太陽電池裏面保護材用部材」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日出願公開、特開2012-138490〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年12月27日の出願であって、平成26年3月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月9日付けで手続補正がなされたが、同年6月12日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これに対し、同年6月23日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされたものである。

2 平成26年6月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年6月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、そのうち特許請求の範囲の補正は、本件補正前の
「【請求項1】
ベント付二軸押出機により溶融押出されたポリエステルフィルムであり、末端カルボキシル基量が26当量/トン以下であり、極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、アクリル樹脂、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物を含有する塗布剤を塗布して得られた塗布層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムの塗布層上にフルオロポリマーからなる層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用部材。
【請求項3】
塗布層の厚みが0.03g/m^(2)以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池裏面保護材用ポリエチレンテレフタレートフィルム。」を
「【請求項1】
ベント付二軸押出機により溶融押出された、シリカ粒子を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムであり、末端カルボキシル基量が26当量/トン以下であり、極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロイルシリコンマクロマー、塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびブタジエンから選ばれる、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなるアクリル樹脂、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物を含有する塗布剤をインラインコーティングして得られた塗布層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムの塗布層上にフルオロポリマーからなる層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用部材。
【請求項3】
塗布層の厚みが0.01?0.5g/m^(2)以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池裏面保護材用ポリエチレンテレフタレートフィルム。」と補正するものである。

(2)補正の適否
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1を補正するものであって、本件補正前の発明特定事項である「ポリエステルフィルム」に関し、「シリカ粒子を含有する」事項を限定(以下「補正事項1」という。)し、同じく「塗布剤」が「含有する」「アクリル樹脂」に関し、「アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロイルシリコンマクロマー、塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびブタジエンから選ばれる、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる」事項を限定し、同じく「塗布剤」の「塗布」に関し、「インラインコーティング」する事項を限定するものである。
また、本件補正後の請求項3は、本件補正前の請求項3を補正するものであって、本件補正前の発明特定事項である「塗布層の厚み」に関し、補正前の「0.03g/m^(2)以下」を「0.01?0.5g/m^(2)以下」と補正(以下「補正事項2」という。)するものである。

まず、上記補正事項1について検討する。
上記補正事項1に関し、本願明細書には、「本発明のポリエステルフィルム中には、上記の着色顔料や白色顔料の他に、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭、酸化アルミニウム等の粒子が挙げられる」(【0020】)と記載されており、この記載によると、ポリエステルフィルム中にシリカ粒子を含有する目的として、「易滑性付与」が挙げられている。
一方、本件補正前の請求項1に係る発明の課題は、「耐加水分解性、そしてポリエステルフィルムとフルオロポリマーとの耐湿熱接着性の良好な太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムを提供すること」(【0006】)である。
そうすると、上記補正事項1は、新たにポリエステルフィルムの「易滑性付与」という課題を追加するものであるから、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明とは、発明の解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
また、上記補正事項1が、請求項の削除、誤記の訂正、または、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことも明らかである。
したがって、本件補正の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定された事項を目的とするものではない。

次に、上記補正事項2について検討する。
上記補正事項2は、本件補正前の発明特定事項である「塗布層の厚み」に関し、0.03g/m^(2)より大きく0.5g/m^(2)以下である構成を追加するものであるから、明らかに特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。
また、上記補正事項2が、請求項の削除、誤記の訂正、または、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことも明らかである。
したがって、本件補正の請求項3についての補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定された事項を目的とするものではない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明
平成26年6月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたから、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年4月9付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。(上記「2」[理由]「(1)」の本件補正前の【請求項1】参照。)

4 先願
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願2010-279606号(特開2012-140604号公報参照。以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下これらをまとめて「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
(1)発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂及びその製造方法、ポリエステルフィルム、太陽電池用バックシート、並びに太陽電池モジュールに関する。」
「【0021】
以下、図1?図3を参照して、本発明のポリエステル樹脂の製造方法を詳細に説明し、該説明を通じて本発明のポリエステル樹脂についても述べることとする。
【0022】
図1は、本発明のポリエステル樹脂の製造方法を実施するための固相重合装置の一実施形態を示す図である。
図1に示すように、固相重合装置100は、ポリエステル樹脂の乾燥及び結晶化を行なう乾燥・結晶化槽10と、結晶化処理されたポリエステル樹脂を固相重合する固相重合槽40と、固相重合槽から排出されたポリエステル樹脂を冷却する冷却槽60とを備えている。冷却槽60で冷却されたポリエステル樹脂は、図示しない溶融押出機に供される。溶融押出機で所定条件にて溶融混練され、フィルム状に押出すことでポリエステルフィルムを成形することが可能である。
【0023】
?結晶化・乾燥?
乾燥・結晶化槽10は、エステル化反応及び重縮合反応を設けてポリエステルを生成するエステル化工程を経て合成されたポリエステル樹脂を、加熱により乾燥させると共に結晶化する。なお、エステル化工程については、後述することとする。」
「【0033】
?固相重合?
本発明における固相重合工程では、筒状容器の一端(例えば、軸心方向が重力方向と平行になるように配置された筒状容器の天部)から他端(例えば、該筒状容器の底部)に向けて樹脂を移動させると共に、該筒状容器内に温熱風を供給する。図1に示す一実施形態では、一端に設けられた導入口から自重により落下して筒内を移動するようになっている。
【0034】
温熱風としては、ポリエステル樹脂のAVを上昇させない等、ポリエステル樹脂の性状の変化防止の観点から、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが好ましい。また、供給する温熱風の温度としては、固相重合工程での固相重合を外部加熱せずに良好に行なわせる観点から、180℃以上230℃以下の温度範囲が好ましく、ポリエステル樹脂をこの温度範囲に加熱することが好ましい。温熱風の温度は、より好ましくは190?220℃で、さらに好ましくは195℃以上210℃以下である。また、前記温度範囲に加熱されたポリエステル樹脂ペレット44を固相重合工程に送り、固相重合に供されることが好ましい。
【0035】
固相重合槽40は、乾燥・結晶化槽10で結晶化処理されたポリエステル樹脂を固相重合反応させる。固相重合槽40は、断面円形で筒の軸心方向に長い筒状容器42を備えており、本実施形態では筒状容器42の外壁、すなわち器外から加熱を行なうための加熱器等は配置されていない。なお、断面形状は、円形に限られず任意の形状を選択することができる。固相重合槽40では、乾燥・結晶化槽10で加熱された樹脂が導入されるので、その熱で固相重合が進行し、樹脂が筒状容器内を通過する間は、器外からの加熱を行なわずに固相重合反応させるようになっている。
【0036】
本実施形態の固相重合槽では、その重力方向における上方(固相重合槽の一端)で乾燥・結晶化槽10が接続され、この乾燥・結晶化槽から結晶化処理された樹脂が連続的に導入される。導入された樹脂は、器内を自重で落下して排出口に到達するまでの間に固相重合される。樹脂は、温熱風が供給されている筒状容器の軸心方向(長手方向)に移動し、このとき筒状容器の軸心方向に直交する方向、つまり筒状容器の円形断面の直径方向における、ポリエステル樹脂の温度分布を0.5%以上10%以下に制御する。ポリエステル樹脂の温度分布が0.5%未満であると、AVの分布(バラツキ)が1%以上20%以下の範囲の下限を下回り、密着及び耐候性の両立が難しい。ポリエステル樹脂の温度分布が10%を超えると、AVの分布(バラツキ)が1%以上20%以下の範囲の上限を上回り、極めて大きい或いは小さいAVの樹脂が存在するために耐候性の低下、密着の低下の要因となる。」
「【0039】
ポリエステル樹脂の温度分布を前記範囲にすることで、末端カルボン酸基の量(AV)が、平均値で5以上20以下の範囲であるポリエステル樹脂が得られる。AVは、樹脂(ペレットの場合は複数個)を任意にサンプリングして測定した平均値である。AVが5以上であることで、密着性が良好であり、またAVが20以下であることで、耐候性に優れる。中でも、AV(平均値)は、7以上18以下が好ましく、より好ましくは9以上16以下である。
【0040】
また、作製されたポリエステル樹脂のAVのバラツキは、1%以上20%以下の範囲である。AVのバラツキが1%以上であることで、耐候性と密着の両立が発現し、20%以下であることで、極めて大きい或いは小さいAVの樹脂(例えばペレット)の存在が抑えられているので、耐候性、密着性の両立が図られる。
中でも、前記同様の理由から、ポリエステル樹脂のAVのバラツキは、2%以上18%以下がより好ましく、4%以上16%以下がさらに好ましい。
【0041】
AV測定は、ポリエステル樹脂をベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用いて、これを基準液(0.025N KOH-メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から末端カルボン酸基の量(eq/トン;=末端COOH量)が求められる。なお、本明細書中において、「eq/トン」は1トン当たりのモル当量を表す。
【0042】
固相重合工程では、筒状容器の軸心方向に直交する方向(例えば軸心方向と直行する断面が円形である場合の直径方向)におけるポリエステル樹脂の移動速度分布を、0.1%以上10%以下に制御して固相重合を行なうことが好ましい。
このような分布は、固相重合槽の軸心方向に直行する断面をみたときに、断面中央部を速くし器壁に向かって遅くなっていることが好ましい(直径方向における流速分布)。これにより、中央部と器壁との間にIVの分布(バラツキ)を形成することができる。これは、器壁に近くなるほど、中央部に比べて樹脂の移動速度(流速)が遅くなるために固相重合時間が長くなり、また器壁に近づくにつれ中央部に比べて温熱風の量が低下し易く、温度が低下しやすいためと推測される。このように、低温、長時間の固相重合が進行すると、ポリエステル樹脂の分子量(IV)が増加しやすくなる(即ち、固有粘度IVが増加しやすくなる)結果、IVの分布が形成される。
【0043】
上記したポリエステル樹脂の流速分布は、後述するように充填率により達成できる。
上記のうち、ポリエステル樹脂の移動速度分布は、0.5%以上8%以下がより好ましく、さらに好ましくは1%以上6%以下である。
【0044】
なお、通常の固相重合では、プラグフローを形成させて樹脂を流すため、流速分布は発生しない。
【0045】
ポリエステル樹脂の流速分布を前記範囲にすることで、固有粘度(IV、単位dL/g)が、平均値で0.7以上0.9以下の範囲であるポリエステル樹脂が得られる。IVは、樹脂(ペレットの場合は複数個)を任意にサンプリングして測定した平均値である。IVが0.7以上であることで、耐候性がより良好になり、IVが0.9以下であることで、密着性がより良好になる。IVは、より好ましくは0.73以上0.87以下であり、さらに好ましくは0.76以上0.84以下である。
【0046】
また、作製されたポリエステル樹脂のIVのバラツキは、1%以上20%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以上18%以下であり、さらに好ましくは4%以上16%以下である。IVにバラツキが生じ、そのバラツキが1%以上に大きくなると、低分子量成分と高分子量成分とが混在することになり、密着及び耐候性の向上に有効である。また、IVが20%以下であることで、高分子量成分と低分子量成分の過度の増加が抑えられ、密着に優れる。
【0047】
IVが小さいと、低分子量のポリエステルは粘性が増加し「糊」として作用するために密着に有効に働くので、低分子量成分(低IV)と高分子量成分(高IV)を混在させてIVに連続的なバラツキを付与することにより、密着性と耐候性とを両立することが可能になる。」
「【0062】
?冷却?
冷却槽60は、固相重合槽40での固相重合を終えて排出されたポリエステル樹脂を冷却する。冷却は、筒状の冷却槽(容器)内に熱伝導性のスクリューが配されてスクリューに樹脂を直接接触させて熱交換することで冷却を行なう攪拌方式、あるいは筒状の冷却槽(容器)内に温調風を送り込み、ペレット状等の樹脂を非接触で間接的に温調する非攪拌方式、等により行なうことができる。
【0063】
冷却は、120?20℃の温度領域に降温すればよく、好ましくは80?40℃である。
【0064】
冷却槽60で冷却されたポリエステル樹脂は、図示しない溶融押出機に供され、ポリエステルフィルムの作製に用いられる。」
「【0069】
本発明のポリエステル樹脂は、原料物質として、(A)ジカルボン酸成分と(B)ジオール成分とを用いて、これらの成分を重縮合することにより得られる。
【0070】
ポリエステル樹脂の原料物質として用いられる(A)ジカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
【0071】
ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。より好ましくは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸を主成分として含有する。なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。このようなジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸などのエステル誘導体等である。
【0072】
ポリエステル樹脂の原料物質として用いられる(B)ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3?ベンゼンジメタノール,1,4-ベンセンジメタノール、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等が挙げられる。
【0073】
ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。
脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
【0074】
脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール)の使用量は、前記芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸)及び必要に応じそのエステル誘導体の1モルに対して、1.015?1.50モルの範囲であるのが好ましい。該使用量は、より好ましくは1.02?1.30モルの範囲であり、更に好ましくは1.025?1.10モルの範囲である。該使用量は、1.015以上の範囲であると、エステル化反応が良好に進行し、1.50モル以下の範囲であると、例えばエチレングリコールの2量化によるジエチレングリコールの副生が抑えられ、融点やガラス転移温度、結晶性、耐熱性、耐加水分解性、耐候性など多くの特性を良好に保つことができる。
【0075】
PETは、テレフタル酸とエチレングリコールとをPET成分全体の90モル%以上含むものが好ましく、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上含むものである。
【0076】
エステル化反応及び/又はエステル交換反応には、従来から公知の反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、リン化合物などを挙げることができる。通常、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例に挙げると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
【0077】
これらの中でより好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)であり、さらに好ましいのはPETである。また、前記PETとしては、ゲルマニウム(Ge)系触媒、アンチモン(Sb)系触媒、アルミニウム(Al)系触媒、及びチタン(Ti)系触媒から選ばれる1種又は2種以上を用いて重合されるPETが好ましく、より好ましくはTi系触媒を用いたものである。」
「【0113】
<ポリエステルフィルム>
本発明のポリエステルフィルムは、上記のように結晶化処理、固相重合等を経た後のポリエステル樹脂を溶融押出機に投入して溶融混練し、口金(押出ダイ)から押出すことにより成形することにより作製されるものである。
【0114】
成形されたポリエステルフィルムの延伸前の厚みは、0.3?6mmが好ましく、より好ましくは0.5?5mmであり、さらに好ましくは0.8?4mmである。
また、延伸後の厚みは、40?500μmが好ましく、より好ましくは50?400μmであり、さらに好ましくは70?300μmである。
【0115】
成形は、固相重合後に冷却した後、ポリエステルを乾燥させて残留水分を100ppm以下にした後に、溶融押出機を用いて溶融混練して行なえる。溶融温度は、250℃以上320℃以下が好ましく、260℃以上310℃以下がより好ましく、270℃以上300℃以下がさらに好ましい。溶融押出機は、単軸でも多軸でもよい。熱分解による末端COOHの発生がより抑制される点で、押出機内を窒素置換して行なうのが好ましい。
溶融された溶融樹脂(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出す。このとき、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。」
「【0123】
<太陽電池用バックシート>
本発明の太陽電池用バックシートは、既述の本発明のポリエステルフィルムを設けて構成したものであり、被着物に対して易接着性層、紫外線吸収層、光反射性のある白色層などの機能性層を少なくとも1層設けて構成することができる。既述の本発明のポリエステルフィルムを備えるので、長期使用時において安定した耐久性能を示す。
【0124】
本発明の太陽電池用バックシートは、例えば、1軸延伸後及び/又は2軸延伸後のポリエステルフィルムに下記の機能性層を塗設してもよい。塗設には、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法、カーテンコート法等の公知の塗布技術を用いることができる。
また、これらの塗設前に表面処理(火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等)を実施してもよい。さらに、粘着剤を用いて貼り合わせることも好ましい。
【0125】
-易接着性層-
本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールを構成する場合に太陽電池素子が封止剤で封止された電池側基板の該封止材と向き合う側に、易接着性層を有していることが好ましい。封止剤(特にエチレン-酢酸ビニル共重合体)を含む被着物(例えば太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の封止剤の表面)に対して接着性を示す易接着性層を設けることにより、バックシートと封止材との間を強固に接着することができる。具体的には、易接着性層は、特に封止材として用いられるEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)との接着力が10N/cm以上、好ましくは20N/cm以上であることが好ましい。
さらに、易接着性層は、太陽電池モジュールの使用中にバックシートの剥離が起こらないことが必要であり、そのために易接着性層は高い耐湿熱性を有することが望ましい。
【0126】
(1)バインダー
本発明における易接着性層は、バインダーの少なくとも1種を含有することができる。
バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。中でも、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものを挙げることができる。
前記ポリオレフィンの例として、ケミパールS-120、同S-75N(ともに三井化学(株)製)が挙げられる。前記アクリル樹脂の例として、ジュリマーET-410、同SEK-301(ともに日本純薬工業(株)製)が挙げられる。また、前記アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例として、セラネートWSA1060、同WSA1070(ともにDIC(株)製)、及びH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
前記バインダーの量は、0.05?5g/m^(2)の範囲が好ましく、0.08?3g/m^(2)の範囲が特に好ましい。バインダー量は、0.05g/m^(2)以上であることでより良好な接着力が得られ、5g/m^(2)以下であることでより良好な面状が得られる。
【0127】
(2)微粒子
本発明における易接着性層は、微粒子の少なくとも1種を含有することができる。易接着性層は、微粒子をバインダーに対して5質量%以上1000質量%以下含有することが好ましい。
微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等の無機微粒子が好適に挙げられる。特にこの中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
微粒子の粒径は、10?700nm程度が好ましく、より好ましくは20?300nm程度である。粒径が前記範囲の微粒子を用いることにより、良好な易接着性を得ることが
できる。微粒子の形状には特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のものを用いることができる。
微粒子の易接着性層中における添加量としては、易接着性層のバインダーに対して5?400質量%が好ましく、より好ましくは50?300質量%である。微粒子の添加量は、5質量%以上であると、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性に優れており、1000質量%以下であると、易接着性層の面状がより良好である。
【0128】
(3)架橋剤
本発明における易接着性層は、架橋剤の少なくとも1種を含有することができる。
架橋剤の例としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。湿熱経時後の接着性を確保する観点から、これらの中でも特にオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例として、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-メチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-トリメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2、2’-ヘキサメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス-(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス-(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、ビス-(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス-(2-オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS500、同WS700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
易接着性層中における架橋剤の好ましい添加量は、易接着性層のバインダー当たり5?50質量%が好ましく、より好ましくは20?40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、反射層の強度低下や接着不良が起こりにくく、50質量%以下であることで塗布液のポットライフをより長く保てる。
【0129】
(4)添加剤
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0130】
(5)易接着性層の形成方法
本発明の易接着性層の形成方法としては、易接着性を有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法や塗布による方法があるが、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0131】
(6)易接着性層の物性
本発明における易接着性層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05?8μmが好ましく、より好ましくは0.1?5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であることで必要とする易接着性が得られやすく、8μm以下であることで面状をより良好に維持することができる。
また、本発明における易接着性層は、ポリエステルフィルムとの間に着色層(特に反射層)が配置された場合の該着色層の効果を損なわない観点から、透明性を有していることが好ましい。
【0132】
-紫外線吸収層-
本発明のポリエステルフィルムには、紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層が設けられてもよい。紫外線吸収層は、ポリエステルフィルム上の任意の位置に配置することができる。
紫外線吸収剤は、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースエステル樹脂等とともに、溶解、分散させて用いることが好ましく、400nm以下の光の透過率を20%以下にするのが好ましい。
【0133】
-着色層-
本発明のポリエステルフィルムには、着色層を設けることができる。着色層は、ポリエステルフィルムの表面に接触させて、あるいは他の層を介して配置される層であり、顔料やバインダーを用いて構成することができる。
【0134】
着色層の第一の機能は、入射光のうち太陽電池セルで発電に使われずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることにある。第二の機能は、太陽電池モジュールをオモテ面側から見た場合の外観の装飾性を向上することにある。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させることができる。
【0135】
(1)顔料
本発明における着色層は、顔料の少なくとも1種を含有することができる。顔料は、2.5?8.5g/m^(2)の範囲で含有されるのが好ましい。より好ましい顔料含有量は、4.5?7.5g/m^(2)の範囲である。顔料の含有量が2.5g/m^(2)以上であることで、必要な着色が得られやすく、光の反射率や装飾性をより優れたものに調整することができる。顔料の含有量が8.5g/m^(2)以下であることで、着色層の面状をより良好に維持することができる。
【0136】
顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。これら顔料のうち、入射する太陽光を反射する反射層として着色層を構成する観点からは、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどが好ましい。
【0137】
顔料の平均粒径としては、0.03?0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15?0.5μm程度が好ましい。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が低下する場合がある。
入射した太陽光を反射する反射層として着色層を構成する場合、顔料の反射層中における好ましい添加量は、用いる顔料の種類や平均粒径により変化するため一概には言えないが、1.5?15g/m^(2)が好ましく、より好ましくは3?10g/m^(2)程度である。添加量は、1.5g/m^(2)以上であることで必要な反射率が得られやすく、15g/m^(2)以下であることで反射層の強度をより一層高く維持することができる。
【0138】
(2)バインダー
本発明における着色層は、バインダーの少なくとも1種を含有することができる。バインダーを含む場合の量としては、前記顔料に対して、15?200質量%の範囲が好ましく、17?100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの量は、15質量%以上であることで着色層の強度を一層良好に維持することができ、200質量%以下であることで反射率や装飾性が低下するのを防止できる。
着色層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。バインダーは、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものが挙げられる。
前記ポリオレフィンの例としては、ケミパールS-120、同S-75N(ともに三井化学(株)製)などが挙げられる。前記アクリル樹脂の例としては、ジュリマーET-410、SEK-301(ともに日本純薬工業(株)製)などが挙げられる。前記アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例としては、セラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)、H7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)等を挙げることができる。
【0139】
(3)その他の添加剤
本発明における着色層には、バインダー及び顔料以外に、必要に応じて、さらに架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
【0140】
架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。着色剤中における架橋剤の添加量は、着色層のバインダー当たり5?50質量%が好ましく、より好ましくは10?40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を高く維持することができ、また50質量%以下であることで、塗布液のポットライフをより長く維持することができる。
【0141】
界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を利用することができる。界面活性剤の添加量は、0.1?15mg/m^(2)が好ましく、より好ましくは0.5?5mg/m^(2)が好ましい。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m^(2)以上であることでハジキの発生が効果的に抑制され、また、15mg/m^(2)以下であることで接着性に優れる。
【0142】
さらに、着色層には、上記の顔料とは別に、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。フィラーの添加量は、着色層のバインダーあたり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーを含むことにより、着色層の強度を高めることができる。また、フィラーの添加量が20質量%以下であることで、顔料の比率が保てるため、良好な光反射性(反射率)や装飾性が得られる。
【0143】
(4)着色層の形成方法
着色層の形成方法としては、顔料を含有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法、ポリエステルフィルム成形時に着色層を共押出しする方法、塗布による方法等がある。このうち、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いられる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。しかし、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0144】
(5)着色層の物性
着色層は、白色顔料を含有して白色層(光反射層)として構成されることが好ましい。反射層である場合の550nmの光反射率としては、75%以上であるのが好ましい。反射率が75%以上であると、太陽電池セルを素通りして発電に使用されなかった太陽光をセルに戻すことができ、発電効率を上げる効果が高い。
【0145】
白色層(光反射層)の厚みは、1?20μmが好ましく、1?10μmがより好ましく、更に好ましくは1.5?10μm程度である。膜厚が1μm以上である場合、必要な装飾性や反射率が得られやすく、20μm以下であると面状に優れる。
【0146】
-下塗り層-
本発明のポリエステルフィルムには、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、例えば、着色層が設けられるときには、着色層とポリエステルフィルムとの間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層は、バインダー、架橋剤、界面活性剤等を用いて構成することができる。
【0147】
下塗り層中に含有するバインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。下塗り層には、バインダー以外にエポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。
【0148】
下塗り層を塗布形成するための方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターを利用することができる。前記溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0149】
塗布は、2軸延伸した後のポリエステルフィルムに塗布してもよいし、1軸延伸後のポリエステルフィルムに塗布してもよい。この場合、塗布後に初めの延伸と異なる方向に更に延伸してフィルムとしてもよい。さらに、延伸前のポリエステルフィルムに塗布した後に、2方向に延伸してもよい。
下塗り層の厚みは、0.05μm?2μmが好ましく、より好ましくは0.1μm?1.5μm程度の範囲が好ましい。膜厚が0.05μm以上であることで必要な接着性が得られやすく、2μm以下であることで、面状を良好に維持することができる。
【0150】
-フッ素系樹脂層・ケイ素系樹脂層-
本発明のポリエステルフィルムには、フッ素系樹脂層及びケイ素系(Si系)樹脂層の少なくとも一方を設けることが好ましい。フッ素系樹脂層やSi系樹脂層を設けることで、ポリエステル表面の汚れ防止、耐候性向上が図れる。具体的には、特開2007-35694号公報、特開2008-28294号公報、WO2007/063698明細書に記載のフッ素樹脂系塗布層を有していることが好ましい。
また、テドラー(DuPont社製)等のフッ素系樹脂フィルムを張り合わせることも好ましい。
【0151】
フッ素系樹脂層及びSi系樹脂層の厚みは、各々、1μm以上50μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは1μm以上40μm以下の範囲が好ましく、更に好ましくは1μm以上10μm以下である。
【0152】
-無機層-
本発明のポリエステルフィルムは、更に、無機層が設けられた形態も好ましい。無機層を設けることで、ポリエステルへの水やガスの浸入を防止する防湿性やガスバリア性の機能を与えることができる。無機層は、ポリエステルフィルムの表裏いずれに設けてもよいが、防水、防湿等の観点から、ポリエステルフィルムの電池側基板と対向する側(前記着色層や易接着層の形成面側)とは反対側に好適に設けられる。」
「【0178】
-6.フィルムの評価-
以上のようにして作製したPETフィルムについて、以下の評価を行なった。測定結果を下記表1?表2に示す。
【0179】
(密着性)
PETフィルムの表面にコロナ処理を施した後、下記組成の諸成分を混合して調製された易接着性層用塗布液を、バインダー塗布量が0.09g/m^(2)になるように、コロナ放電処理面に塗布した。その後、180℃で1分間乾燥させ、易接着性層を形成した。」

(2)上記(1)の記載事項の考察
上記(1)の記載事項の【0125】?【0131】に記載された「易接着性層」は、「本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールを構成する場合に太陽電池素子が封止剤で封止された電池側基板の該封止材と向き合う側に、易接着性層を有していることが好ましい。封止剤(特にエチレン-酢酸ビニル共重合体)を含む被着物(例えば太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の封止剤の表面)に対して接着性を示す易接着性層を設けることにより、バックシートと封止材との間を強固に接着することができる」(【0125】)との記載、「本発明の易接着性層の形成方法としては、易接着性を有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法や塗布による方法がある」(【0130】)との記載、「-6.フィルムの評価- 以上のようにして作製したPETフィルムについて、以下の評価を行なった。測定結果を下記表1?表2に示す。
【0179】
(密着性)
PETフィルムの表面にコロナ処理を施した後、下記組成の諸成分を混合して調製された易接着性層用塗布液を、バインダー塗布量が0.09g/m^(2)になるように、コロナ放電処理面に塗布した。その後、180℃で1分間乾燥させ、易接着性層を形成した」(【0178】?【0179】)との記載からみて、先願明細書に記載された「易接着性層」は、「ポリエステルフィルム」(「PETフィルム」)の表面に直接設けられたものであるといえる。

(3)先願発明
上記(1)の記載事項及び(2)の考察によると、先願明細書には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「末端カルボン酸基の量(AV)が、平均値で5以上20eq/トン以下の範囲であり、固有粘度(IV、単位dL/g)が、平均値で0.7以上0.9以下の範囲であるポリエステル樹脂から作製されたポリエステルフィルムを設けて構成される太陽電池用バックシートであって、
ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を多軸の溶融押出機に投入して溶融混練し、口金から押出すことにより成形することにより作製され、
ポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレート(PET)であり、
塗布により易接着性層がポリエステルフィルム表面に直接設けられ、
易接着性層は、バインダーとしてアクリル樹脂を用い、エポキシ系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤を含有する、
太陽電池用バックシート。」

5 対比
ここで、本願発明と先願発明とを対比する。
(1)先願発明の「末端カルボン酸基の量(AV)」、「固有粘度(IV、単位dL/g)」は、本願発明の「末端カルボキシル基量」、「極限粘度(IV)」にそれぞれ相当する。
また、先願発明の「易接着性層」は、「塗布により」「設けられ」るものであるから、本願発明の「塗布層」に相当する。
(2)先願発明の「ポリエステル樹脂を多軸の溶融押出機に投入して溶融混練し、口金から押出すことにより成形することにより作製され」る「ポリエステルフィルム」と、本願発明の「ベント付二軸押出機により溶融押出されたポリエステルフィルム」とは、「多軸押出機により溶融押出されたポリエステルフィルム」で共通する。
(3)先願発明の「末端カルボン酸基の量(AV)が、平均値で5以上20eq/トン以下の範囲であり、固有粘度(IV、単位dL/g)が、平均値で0.7以上0.9以下の範囲であるポリエステル樹脂から作製されたポリエステルフィルムであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)であるポリエステルフィルム」は、本願発明の「末端カルボキシル基量が26当量/トン以下であり、極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であるポリエチレンテレフタレートフィルム」に相当する。
(4)先願発明の「塗布により易接着性層がポリエステルフィルム表面に直接設けられ、易接着性層は、バインダーとしてアクリル樹脂を含有し、架橋剤としてエポキシ系、オキサゾリン系を含有する」は、本願発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、アクリル樹脂、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物を含有する塗布剤を塗布して得られた塗布層を有する」に相当する。

上記(1)?(4)の点から、本願発明と先願発明は、
「多軸押出機により溶融押出されたポリエステルフィルムであり、末端カルボキシル基量が26当量/トン以下であり、極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、アクリル樹脂、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物を含有する塗布剤を塗布して得られた塗布層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護材用ポリエチレンテレフタレートフィルム。」
で一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点)
ポリエステルフィルムを溶融押出す押出機が、本願発明は、「ベント付二軸押出機」であるのに対し、先願発明は、「多軸の溶融押出機」である点。

6 相違点についての検討
本願発明は「太陽電池裏面保護材用ポリエチレンテレフタレートフィルム」という物の発明であって、「ベント付二軸押出機により溶融押出された」という製法による構成の特定により、「太陽電池裏面保護材用ポリエチレンテレフタレートフィルム」としての構成が特段限定されるものではないし、先願発明の「ポリエステル樹脂を多軸の溶融押出機に投入して溶融混練し、」「作製され」たという製法による構成の特定も同様である。
そうすると、本願発明の「ベント付二軸押出機により溶融押出されたポリエステルフィルム」と、先願発明の「ポリエステル樹脂を多軸の溶融押出機に投入して溶融混練し、」「作製され」た「ポリエステルフィルム」との間に実質的な相違点はないから、上記相違点は実質的な相違点ではない。
よって、本願発明は、先願発明と同一である。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願の時点において、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-31 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-17 
出願番号 特願2010-290369(P2010-290369)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 161- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 土屋 知久
井口 猶二
発明の名称 太陽電池裏面保護材用ポリエステルフィルムおよび太陽電池裏面保護材用部材  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ