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審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許  A61F
審判 全部無効 2項進歩性  A61F
審判 全部無効 特174条1項  A61F
審判 全部無効 1項2号公然実施  A61F
管理番号 1306309
審判番号 無効2013-800178  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-09-18 
確定日 2015-10-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第5183189号発明「蓄熱材マット」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成19年12月21日 本件出願
平成23年7月28日 意見書及び手続補正書の提出
平成24年5月10日 意見書及び手続補正書の提出
平成25年1月25日 特許権の設定登録(特許第5183189号 請求項数6)
平成25年9月17日付け本件無効審判の請求
平成25年9月17日付け証人等尋問事項書及び尋問事項書(請求人)の提出
平成26年5月22日 審判事件答弁書の提出
平成26年7月3日 当事者尋問申出書及び尋問事項書(被請求人)の提出
平成26年7月30日 証人等尋問申出書及び尋問事項書(請求人)の提出
平成26年9月17日 口頭審理陳述要領書(請求人)の提出
平成26年9月17日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
平成26年10月2日 第1回口頭審理、証人尋問、当事者尋問
平成26年10月23日 上申書(請求人)の提出
平成26年11月21日 上申書(被請求人)の提出
平成26年11月29日 上申書(請求人)の提出

第2.本件特許発明
特許第5183189号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)。

「【請求項1】
第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材マットであって、
前記蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなしており、
前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていないことを特徴とする蓄熱材マット。
【請求項2】
前記蓄熱材パックの前記カバーに対する固着が縫着であることを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱材マット。
【請求項3】
前記境界部分の上には、固着用目印が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の蓄熱材マット。
【請求項4】
前記固着用目印は、経時的自己消滅インクにより形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の蓄熱材マット。
【請求項5】
前記蓄熱材パック要素に封入された蓄熱材は、前記蓄熱材パック要素の内容積よりも少な目に封入されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の蓄熱材マット。
【請求項6】
前記境界部分が、前記横方向固着部によって前記カバーに対して固着されていて、前記横方向固着部によって前記カバーに固着された前記境界部分が飛び飛びに形成されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の蓄熱材マット。」

第3.請求人による主張
1.主張の概要
(無効理由1)
本件特許発明1及び2は、その特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるから、平成23年法律第63号改正附則第2条第9項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第123条第1項第6号の規定により無効とされるべきである。

(無効理由2)
本件特許発明1及び2は、その出願前である平成19年12月7日に日本国内で販売されたものと同一のものであるから、特許法第29条第1項第2号に規定する、本件特許の出願前に日本国内において公然実施をされた発明であり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

(無効理由3)
本件特許発明1ないし6は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である、甲第65号証ないし甲第70号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

(無効理由4)
本件特許発明1ないし6は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である、甲第66号証ないし甲第71号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

(無効理由5)
本件特許は、平成23年7月28日付けでした手続補正(以下、「本件補正1」という。)及び平成24年5月10日付けでした手続補正(以下、「本件補正2」という。)が、本件特許の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「出願当初の明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであり、本件特許は、特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきものである。

2.証拠方法
(1)書証
請求人は、証拠方法として、以下のものを提出した。
甲第1号証:本件特許発明に係る特許第5183189号公報
甲第2号証:請求人ナオ・シング株式会社代表取締役である直里達也(以下「直里」という。)が作成した平成25年7月25日付け陳述書及び添付された以下の資料1ないし16
資料1:ナオ・シング株式会社の履歴事項全部証明書
資料2:直里のメモ帳抜粋頁の写し-1、2
資料3:直里のメモ帳抜粋頁の写し-3
資料4:ヤマト運輸株式会社・伝票(2種)の写し-1
資料5:三井物産M・福嶋氏からKB・福田氏宛メール出力の写し-1、2
資料6:直里から株式会社京都西川・平井氏宛メール出力の写し-3
資料7:直里からKB・福田氏宛メール出力の写し-4
資料8:KB・福田氏から直里宛メール出力の写し-5
資料9:直里からKB・福田氏宛メール出力の写し-6
資料10:三井物産M・福嶋氏から株式会社京都西川殿宛メール出力の写し-7、8
資料11:直里のメモ帳抜粋頁の写し-4
資料12:ヤマト運輸株式会社・伝票(2種)の写し-2並びに仮納品書の写し及び物品受領書の写し-3
資料13:ヤマト運輸株式会社・伝票(2種)の写し-1並びに宅急便出荷予定一覧表の写し-2及び宅急便出荷予定一覧表の写し-3
資料14:カタログ「ディノス2008春夏リビング」の表紙、広告頁の写し
資料15:モリリン殿の「取扱い説明書」の写し
資料16:特許第5183189号公報
甲第3号証:直里が業務に当って携帯しているメモ帳の抜粋頁・写し
甲第4号証:直里が業務に当って携帯しているメモ帳の抜粋頁・写し
甲第5号証:直里が平成19年9月14日に株式会社京都西川本社において直里発明の内容を説明した際に持参したナオ・シング(当時の社名は「直寝具株式会社」-以下同じ-)製ジェル小パック7個連結体と同種の製品を撮影した写真
甲第6号証:ヤマト運輸株式会社・宅急便の(平成)19年9月21日付け伝票・写し及び同(平成)19年10月6日付け伝票・写し
甲第7号証:直里作成の平成19年10月11日付け電子メール・写し
甲第8号証:直里作成の平成19年10月20日付け電子メール及び添付ファイル・写し
甲第9号証:KBセーレン従業員・福田順一氏作成の平成19年10月23日付け電子メール・写し
甲第10号証:直里作成の平成19年11月1日付け電子メール及び添付ファイル・写し
甲第11号証:東京都千代田区紀尾井町3-23 三井物産マーケティング株式会社(以下「三井物産マ」という)従業員・営業部長 福嶋陸三郎氏作成の平成19年11月12日付け電子メール及び添付ファイル・写し
甲第12号証:直里が業務に当って携帯しているメモ帳の抜粋頁・写し
甲第13号証:ヤマト運輸株式会社・宅急便の(平成)19年12月26日付け伝票・写し及び同(平成)19年12月26日付け伝票・写し
甲第14号証:ヤマト運輸株式会社・宅急便の(平成)19年6月8日付け伝票・写し及び同(平成)19年9月25日付け伝票・写し
甲第15号証:ヤマト運輸株式会社・宅急便の2007年12月13日付け宅急便出荷予定一覧表・写し
甲第16号証:ヤマト運輸株式会社・宅急便の2007年12月17日付け宅急便出荷予定一覧表・写し
甲第17号証:商品カタログ「ディノス2008春夏リビング及び表紙及び広告頁」・写し
甲第18号証:モリリン株式会社が使用している同社販売に係るナオ・シング製ジェル小パック連結体の「取扱い説明書」・写し
甲第19号証:請求人の一員である株式会社京都西川の従業員・商品6部 部長 堀尾正樹(以下「堀尾」という。)が作成した平成25年8月8日付け陳述書。
甲第20号証:株式会社京都西川の営業経歴書・写し
甲第21号証:ナオ・シングから株式会社京都西川宛に送信された平成16年10月14日付けFAX送信書、アクアピローの特徴及びアクア資料・写し
甲第22号証:ナオ・シングから株式会社京都西川宛に提出された平成16年12月21日付け商品提案書3種・写し
甲第23号証:株式会社京都西川発行に係る2006?2007・ROSE SCENE・ローズシーン・ローズ商品総合カタログの表紙、第81頁、第98頁及び奥付け頁・写し
甲第24号証:福井県越前市矢放町第16号1番地2 株式会社オーシンが「朝までクール」なる商品名で平成18年4月頃から販売していた冷感敷パッドの商品カタログ(2007.6.27初版)・写し
甲第25号証:平成19年9月初めに株式会社京都西川本社において、大阪府大阪市西区江戸堀1-15-16 中山商事株式会社従業員・長坂優グループマネージャー(当時)から堀尾に提供された大阪市西区西本町1-14-15 アキレス株式会社の商品カタログ及び同氏作成の提案説明メモ・写し
甲第26号証:堀尾が作成した平成19年9月20日付け出張日報・写し
甲第27号証:平成19年9月20日の午後に堀尾が被請求人本人と面談し、株式会社京都西川が販売予定のナオ・シング製ジェル小パック7個連結体を用いる冷感敷パッドの商品見本の製造を依頼した際に、商品コンセプト、当該パッドの構成及び製造方法の説明に使用した備長炭シート入りパッドのミニチュア見本を撮影した写真
甲第28号証:大阪府泉大津市曽根町2-15-3 株式会社光洋キルティング従業員・田中直樹部長(当時)が作成した平成25年5月20日付け文書・写し
甲第29号証:被請求人従業員・西村某が記入した平成19年10月3日付け納品書(株式会社京都西川所定の納品書)・写し
甲第30号証:三井物産マ従業員・福嶋陸三郎氏作成の平成19年10月2日付け電子メール・写し
甲第31号証:日本郵便・EMS便の2007年10月12日付け伝票・写し
甲第32号証:平成19年10月20日にKBセーレンからFAXにて株式会社京都西川に届いた直里が作成したジェルパッド(冷感敷パッド)とピローパッド(冷感枕パッド)の各製造用図面・写し
甲第33号証:平成19年11月1日にKBセーレンからメールにて株式会社京都西川に届いた直里が作成したジェルパッド(冷感敷パッド)の修整製造用図面2種・写し
甲第34号証:平成19年11月6日に被請求人からFAXにて株式会社京都西川に届いた被請求人本人が作成した冷感マット(冷感敷パッド)見本の図面・写し
甲第35号証:平成19年11月12日に三井物産マからメールにて株式会社京都西川に届いたアクアジェルパッド(冷感敷パッド)の見積書と規格図面2種・写し
甲第36号証:平成19年11月13日に被請求人からFAXにて株式会社京都西川に届いた被請求人本人が作成した平成19年11月13日付け冷感パット(冷感敷パッド)の提案図面2種・写し
甲第37号証:平成19年11月21日に三井物産マからメールにて株式会社京都西川に届いたジェルパッド(冷感敷パッド)の再見積書
甲第38号証:堀尾が作成した平成19年12月3日付け出張日報・写し
甲第39号証:平成19年12月5日に被請求人からFAXにて株式会社京都西川に届いた株式会社イノアックコーポレーションの蓄冷剤(液状ジェル)に関する報告書・写し
甲第40号証:被請求人が株式会社京都西川に発行した平成19年12月20日付け納品書(株式会社京都西川所定の納品書)・写し
甲第41号証:堀尾が作成した平成20年1月7日付け出張日報・写し
甲第42号証:本件特許発明に係る特開2009-148455号公報
甲第43号証:被請求人がイオンリテール株式会社に弁理士 伊藤晃氏を代理人として書留内容証明郵便物にて送付した平成22年5月26日付け警告書・写し
甲第44号証:被請求人が株式会社ダイエーに書留内容証明郵便物にて送付した平成22年5月27日付け警告書・写し
甲第45号証:被請求人がイズミヤ株式会社に弁理士 伊藤晃氏を代理人として書留内容証明郵便物にて送付した平成22年6月24日付け警告書・写し
甲第46号証:被請求人が株式会社ヤマダ電機に弁理士 伊藤晃氏を代理人として書留内容証明郵便物にて送付した平成22年8月11日付け警告書・写し
甲第47号証:被請求人が請求人に弁理士 伊藤晃氏を代理人として書留内容証明郵便物にて送付した平成22年6月1日付け警告書・写し
甲第48号証:請求人が被請求人に弁護士 小野誠之氏及び請求人株式会社京都西川の代表取締役 大河内徹心氏の連名で送付した平成22年12月7日付け通知書・写し
甲第49号証:株式会社京都西川本社の玄関ロビー受付の来訪者記録ノート・平成19年10月23日?平成20年2月21日分の抜粋頁・写し
甲第50号証:特許庁電子図書館IPDL公報テキスト検索により、被請求人本人が発明者として掲載されている公開特許公報及び特許公報の検索結果・写し
甲第51号証:特開2008-11988号公報フロントページ
甲第52号証:特開2008-24784号公報フロントページ
甲第53号証:特開2008-295850号公報フロントページ
甲第54号証:特開2010-35676号公報フロントページ
甲第55号証:特開2010-131289号公報フロントページ
甲第56号証:特開2010-252969号公報フロントページ
甲第57号証:特開2011-131008号公報フロントページ
甲第58号証:特開2012-56388号公報フロントページ
甲第59号証:特開2012-102925号公報フロントページ
甲第60号証:特開2012-223281号公報フロントページ
甲第61号証:特開2012-231894号公報フロントページ
甲第62号証:特開2013-5937号公報フロントページ
甲第63号証:特開2013-66504号公報フロントページ
甲第64号証:特許第3002463号公報
甲第65号証:特開平10-276591号公報
甲第66号証:特開平9-391号公報
甲第67号証:特開2004-208840号公報
甲第68号証:特開平8-98749号公報
甲第69号証:特開昭50-33046号公報
甲第70号証:登録実用新案第3035662号公報
甲第71号証:特開2005-144036号公報
甲第72号証:特願2007-329796号の平成23年7月28日付け手続補正書
甲第73号証:特願2007-329796号の平成23年7月28日付け意見書
甲第74号証:特願2007-329796号の平成24年3月14日付け拒絶理由通知書
甲第75号証:特願2007-329796号の平成24年5月10日付け手続補正書
甲第76号証:特願2007-329796号の平成24年5月10日付け意見書
甲第77号証の1:請求人株式会社京都西川の2007年10月31日付け仕入先元帳253頁・写し
甲第77号証の2:請求人株式会社京都西川の2007年12月28日付け仕入先元帳252頁・写し
甲第78号証の1:請求人株式会社京都西川の平成20年ローズテクニー発売25周年記念キャンペーンに係る社内用チラシ・写し
甲第78号証の2:請求人株式会社京都西川の(平成)21年1月29日付け商品部手配用注文書・写し
甲第78号証の3:請求人株式会社京都西川の2009年2月2日付け売上伝票・写し
甲第78号証の4:請求人株式会社京都西川2009年7月28日取引先別総勘定元帳データベース出力・写し(出力日2014年6月26日)
甲第78号証の5:請求人株式会社京都西川の仕訳検索確認表データベース出力・写し(出力日2004年6月26日)
甲第79号証:請求人株式会社京都西川が被請求人及び弁理士 伊藤 晃 氏に送付した平成22年12月8日付け通知書・写し
甲第80号証:特開2003-159160号公報
甲第81号証:特開2006-61561号公報
甲第82号証:特開2001-190362号公報
甲第83号証:田中直樹氏による平成26年10月17日付け陳述書
甲第84号証:田中直樹氏による平成26年11月27日付け陳述書(補充)

(2)当事者本人及び証人
ア 本人
氏名 直里 達也

イ 証人
氏名 堀尾 正樹

第4.被請求人による主張
1.主張の概要
(無効理由1に対し)
本件特許発明1及び2は被請求人代表者であり、本件出願の願書に記載の発明者である寶田博介(以下「寶田」という。)が自ら着想し、完成させたものであるから、本件特許発明1及び2に係る特許は、平成23年法律第63号改正附則第2条第9項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第123条第1項第6号の規定に該当せず、無効とされるものではない。

(無効理由2に対し)
本件特許発明1及び2は、その特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明ではないから、特許法第29条第1項第2号の規定に該当するものとはいえない。よって、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものであるとはいえない。

(無効理由3に対し)
本件特許発明1ないし6は、甲第65号証ないし甲第70号証に記載された発明により当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。よって、本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきであるとはいえない。

(無効理由4に対し)
本件特許発明1ないし6は、甲第66号証ないし甲第71号証に記載された発明により当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。よって、本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきであるとはいえない。

(無効理由5に対し)
本件特許は、本件補正1及び本件補正2が、本件特許の出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるとはいえない。よって、本件特許は、特許法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきであるとはいえない。

2.証拠方法
(1)書証
被請求人は、証拠方法として、以下のものを提出した。
乙第1号証:株式会社彌生ホームページの内容(http://www.yayoinet.co.jp/)
乙第2号証:株式会社タカラの履歴事項全部証明書
乙第3号証の1:特開2000-29624号公報
乙第3号証の2:登録実用新案第3063412号公報
乙第3号証の3:登録実用新案第3080134号公報
乙第3号証の4:登録実用新案第3059145号公報
乙第4号証:寶田による陳述書及び添付された以下の資料1ないし11
資料1:特許等の出願日順リスト
資料2:株式会社京都西川向け売り上げを示す資料
資料3:ジェルパッド製品に関する株式会社京都西川との流れ
資料4:平成18年10月5日に寶田が株式会社京都西川本社を訪問したことを示すための資料
資料5:平成19年7月26日に寶田が株式会社京都西川本社を訪問したことを示すための資料
資料6:平成20年1月30日に行った、製作したサンプルを洗濯した場合の生地の縮み具合をテストした様子を撮影した写真
資料7:ジェルパットサンプル作成及び資料仕入れ月表
資料8:有限会社タカラ宛の株式会社京都西川作成の領収書
資料9:保管荷役請求書
資料10:株式会社京都西川宛の有限会社タカラ作成の念書
資料11:平成20年2月26日に寶田が、特許出願の話をしたことを示すための資料
乙第5号証:ナオ・シング株式会社ホームページの出力物(http://www.asmot.jp/)
乙第6号証の1:特開2000-175795号公報
乙第6号証の2:特開2008-125537号公報
乙第6号証の3:特開2012-40182号公報
乙第6号証の4:特開2013-75075号公報
乙第6号証の5:特開2010-88548号公報
乙第7号証:「ジェルパットサンプル作成及び資材仕入れ月表」及び添付された以下の資料1ないし5
資料1:有限会社タカラが、株式会社京都西川に宛てた売上伝票表
資料2:株式会社光洋キルティングが、有限会社タカラに宛てた納品書
資料3:株式会社光洋キルティングが、ユーバ産業株式会社に宛てた注文書及び、ユーバ産業株式会社が、有限会社タカラに宛てた納品書ほか
資料4:株式会社光洋キルティングが、蔭山株式会社に宛てた注文書及び、蔭山株式会社が、有限会社タカラに宛てた請求書ほか
資料5:株式会社光洋キルティングが、福広株式会社に宛てた注文書及び、福広株式会社が、有限会社タカラに宛てた納品書ほか
乙第8号証:報告書(株式会社イノアックコーポレーション)
乙第9号証の1:本件特許発明につき青山特許事務所に出願を依頼した際の図面
乙第9号証の2:乙第9号証の1の図面の青山特許事務所における受信履歴
乙第10号証の1:(株)イノアックコーポレイション宛のFAX送信表
乙第10号証の2:「(有)タカラ様向け蓄冷剤仕様図」(イノアック社)
乙第11号証の1ないし11:加工契約(指図)書
乙第12号証:再公表特許公報(WO2007/108235)
乙第13号証の1及び2:蓄熱材パックの画像
乙第14号証:ナオシング製ジェルパック連結体の画像
乙第15号証の1:イノアック社製「クールワン」の画像
乙第15号証の2:イノアック社製「LOGOS」仕様ジェルパック連結体の画像
乙第16号証:直里から福嶋氏へ宛てた電子メールの出力物
乙第17号証の1:イノアック社による報告書
乙第17号証の2:イノアック社による蓄冷剤検査成績書
乙第18号証の1ないし3:(本件アイスジェルパッド及びセットで製造されていた枕の)規格書
乙第19号証の1ないし3:本件アイスジェルパッドと同一規格で製造されていた枕の画像
乙第20号証:被請求人が、請求人に宛てた警告書
乙第21号証:(製品の)仕様書
乙第22号証:請求人株式会社京都西川と被請求人との間の商品取引基本契約書
乙第23号証:無効2013-800129号の審決
乙第24号証:特願2007-329796号の明細書
乙第25号証:特願2007-329796号の図面
乙第26号証:履歴事項全部証明書(株式会社 青山)
乙第27号証:帝国データバンクCOSMOSNETからの出力物(株式会社青山の企業概要)
乙第28号証:Googleストリートビューからの出力物(滋賀県東近江市小八木町1-5)
乙第29号証:株式会社京都西川ホームページからの出力物
乙第30号証:Wikipedia(株式会社京都西川)からの出力物
乙第31号証の1ないし3:履歴事項全部証明書((株)京都西川,西川リビング(株)及び西川産業(株))
乙第32号証:照会状(平成26年10月28日付け)
乙第33号証:郵便局ホームページからの出力物(配達状況詳細等)
乙第34号証:照会状(平成26年11月8日付け)
乙第35号証:郵便局ホームページからの出力物(配達状況詳細等)

(2)当事者本人
ア 本人
氏名 寶田 博介

第5.無効理由1について
1.請求人の主張
(1)直里が本件発明の発明者であること
(1-1)直里発明完成までの経緯
平成18年5月頃、株式会社オーシンが「朝までクール」なる商品名をもって販売している冷感敷パッドに関して、ジェルが漏れないように表生地と裏生地の各裏面にポリエチレンをラミネートした生地で形成された長方形の扁平状袋体にジェルを充填・封入した構造であるため、非常に重く(約8?10kg)、汗を吸わず、洗濯できず、折畳みが困難であり、内部のジェルが移動し易いという問題点があることを知った。
そこで、直里は、軽く、汗を吸い、洗濯でき、容易に折畳め、内部のジェルの移動が少ない冷感敷パッドの提供を技術的課題として検討を進めるうちに、前記特許第3002463号の冷感枕におけるジェルを収納した合成樹脂製フィルムからなる長方形の扁平状小袋を冷感敷パッドに用いることを思い付いた。
直里は、検討・試作を進め、顆粒の薬を収納した扁平状小袋が複数個連結しているのを見て、前記小袋を複数個連結した連結体を用いれば連結体一本当たりの面積が大きくなるので、固定作業の簡易化が図れると考えた。
さらに、直里は、敷パッド用の表生地と裏生地を重ね合せた長方形の扁平状袋体を縦方向(長方形の短辺側を「縦」、長辺側を「横」とする?以下、同じ?)に区画して複数個の収納室を並列させて設け、当該各収納室に前記小袋を複数個連結した連結体を一本づつ収納することを着想し、その具現化を進めて発明を完成した。(審判請求書第28?30頁)

(1-2)直里発明
直里が、前記着想を具現化して完成した発明(以下「直里発明」という。)は、「表生地(例えばブロード織コットン)と裏生地(例えばダブルラッセル編ポリエステル)を重ね合せて、キルティングにより縫着して縦方向に仕切った複数の収納室(例えば7室)を並列させて設けた長方形(例えば縦100cm×横200cm)の扁平状袋体における該各収納室のそれぞれに複数本のジェルを収納した小袋を複数個連結した連結体(例えばナオ・シング製ジェル60gを充填した10cm×10cmのポリエチレンとナイロンのラミネートフィルム製小パック7個をシール巾28mmの連結部によって連結したもの7本、なお、当該小パックの連結部以外のシール巾は14mm)を1本づつ挿入して収納し、当該扁平状袋体の上縁部(200cm側)と各前記連結体の上端部(14mm巾のシール部分)とをヘム巻により縫着して表生地と各前記連結体の上端部と裏生地とを固定すると共に下縁部(200cm側)と各前記連結体の下端部(14mm巾のシール部分)とをヘム巻により縫着して表生地と各前記連結体の下端部と裏生地とを固定し、当該扁平状袋体の各側縁部(100cm側)を表生地及び裏生地のキルティング(固定部)より隙間を設けてヘム巻により縫着して表生地と裏生地のみを固定し、さらに、各収納室のそれぞれに前記連結体が1本づつ収納されている当該扁平状袋体に、各前記連結体の連結部(28mm巾のシール部分)の真ん中を横切るキルティングを施して表生地と各前記連結体の連結部と裏生地とを固定してなる冷感敷パッド」である。(審判請求書第30頁)

(1-3)直里発明による効果
直里発明によれば、ジェルの使用量を減らせるので軽く、表生地と裏生地にラミネートを施す必要がないので汗を吸うと共に手洗いであれば洗濯もでき、各前記連結体の各連結部を折目として容易に折畳め、各前記連結体の移動が殆んど生じないという効果が得られるから、前記問題点を解決することができ、さらに、前記連結体を扁平状袋体の縦方向に仕切って設けた各収納室に挿入・収納しているので固定作業が容易になると共に、目的とする冷感敷パッドのサイズに応じた長さの前記連結体が選べる(所要の長さに応じた数のジェルを収納した小袋を連結すればよい)ので、製造コストが安いという効果を得ることができる。(審判請求書第30?31頁)

(1-4)直里発明の完成時点
直里は、平成18年8月頃、ナオ・シングが以前から出願手続きを依頼している千明武弁理士に直里発明の概要を口頭で説明して特許出願について相談している。ただし、相談の結果、特許化は困難との結論になって、出願はしていない(甲第2号証第6頁)。
また、直里は、平成18年10月12日に株式会社京都西川の本社で同社従業員・堀尾及び同長江宏氏に直里発明の内容を説明している。
したがって、直里発明は遅くとも平成18年8月乃至10月12日の間には完成した。(審判請求書第31頁)

(1-5)本件特許発明1及び2と、直里発明との対比
(本件特許発明1及び2)
本件特許発明1、2を、構成要件毎に分節すると以下のA.?G.のとおりである。
「【請求項1】
A.第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材マットであって、
B.前記蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなしており、
C.前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、
D.縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、
E.前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていない
F.ことを特徴とする蓄熱材マット。
【請求項2】
G.前記蓄熱材パックの前記カバーに対する固着が縫着であることを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱材マット。」

(直里発明)
一方、直里発明を、構成要件毎に分節すると、以下のa.?g.のとおりである。
「a.表生地と裏生地を重ね合せてキルティングにより縫着して縦方向に仕切った複数の収納室を並列させて設けた縦100cm X 横 200cm の敷パッドにおける
b.各収納室のそれぞれに吸水性高分子からなる含水ジェルの半固形状物が充填されたラミネートフィルム製小パックを複数個連結した連結体を1本づつ挿入して収納した後、
c.この敷パッドの上縁部と各小パック連結体の上端部とをヘム巻により縫着して表生地と各小パック連結体の上端部と裏生地とを固定すると共に下縁部と各小パック連結体の下端部とをヘム巻により縫着して表生地と各小パックの下端部と裏生地とを固定し、
d.この敷パッドの各側縁部を表生地及び裏生地のキルティング部より隙間を設けてヘム巻により縫着して表生地と裏生地のみを固定した後、
e.各収納室に収納されている各小パック連結体の連結部の真ん中を横切るキルティングを施して表生地と各小パックの連結部と裏生地とを固定してなる
f.冷感敷パッド
g.前記各パック連結体の前記表生地と裏生地に対する固定がキルティングである冷感敷パッド。」

以上から、本件特許発明1及び2の構成要件AないしGと、直里発明の構成要件aないしgとは、実質的に同一のものであるから、両者は同一発明であって、その奏する効果も実質的に同一のものであることは明らかである。

したがって、直里は、本件特許に係る出願前に本件特許発明1及び2について発明したものである。(審判請求書第43?45頁)

(2)寶田は、本件特許発明1及び2の発明者ではないこと
(2-1)直里が、株式会社京都西川従業員・堀尾他に、直里発明の内容を説明したこと
平成18年10月12日に、直里が株式会社京都西川本社を訪れ、株式会社京都西川従業員・堀尾及び同長江宏氏に直里発明を実施した冷感敷パッドを提案し、発注して欲しい旨を申し入れ、「ナオ・シング製の吸水性高分子からなる含水ジェルの半固形状物を60g充填したラミネートフィルム製の10cm×10cmの小パック(以下「小パック」という)を複数個連結した連結体(以下「小パック連結体」という)を1本づつ挿入・収納した後、この敷パッドの上縁部と各小パック連結体の上端部とをヘム巻により縫着して表生地と各小パック連結体の上端部と裏生地とを固定し、下縁部と各小パック連結体の下端部とをヘム巻により縫着して表生地と各小パックの下端部と裏生地とを固定し、各側縁部を表生地及び裏生地のキルティング部より隙間を設けてヘム巻により縫着して表生地と裏生地のみを固定」するという直里発明を実施した冷感敷パッドについて説明した。
また、平成19年9月14日に、直里が株式会社京都西川本社を訪れ、千貫、堀尾及び平井氏に直里発明を実施した冷感敷パッドの内容を説明した。(審判請求書第32?33頁)

(2-2)堀尾は寶田を訪社して、直里発明に係る冷感敷パッドの内容を寶田に説明して、商品見本の製造を依頼したこと
平成19年9月20日に、堀尾は寶田を訪社し、寶田に直里発明に係る冷感敷パッドの商品見本の製造を依頼した。
前記依頼に際し、堀尾は寶田に直里発明に係る冷感敷パッドの商品コンセプト、構成及び製造方法を詳細に説明しており、特に、構成及び製造方法の説明に当っては、以前寶田から提案された備長炭入りシートを用いた敷パッドのミニチュア見本(1枚の備長炭入りシートをこのシートの面積よりも少し大きい面積の表生地と裏生地とで挟んで周囲をヘム巻にて縫着し、格子状にキルティングを施して表生地と備長炭シートと裏生地を固定したもの)を提示し、口頭にて「1枚の備長炭シートに替えてジェルを充填したラミネートフィルム製小パック7個の連結体複数本を使用し、表生地と裏生地を重ねてキルティングによって縦方向に仕切ることによって複数の収納室を並列させて設け、この複数の収納室のそれぞれに当該連結体を1本ずつ収納し、キルティングによって表生地と小パックの連結部と裏生地とを固定し、周囲をヘム巻にて縫着し、小パック7個連結体の上縁部及び下縁部を表生地と裏生地とに固定して左右側縁部は表生地と裏生地に固定しない構造の冷感敷パッドを製造して欲しい」旨を指示した。
平成19年9月25日に、株式会社京都西川本社において被請求人本人に千貫及び堀尾が直里発明に係る冷感敷パッドの商品コンセプトを再度説明し、堀尾が「キルティング加工は多針キルト機を備えている株式会社 光洋キルティングの田中直樹部長(当時)に商品見本のキルティング加工の趣旨を連絡してあるから(株)光洋キルティングに依頼して商品見本2枚を製造するように」と指示した。(審判請求書第38?39頁)

(2-3)寶田が、株式会社京都西川に本人作成の直里発明に係る冷感敷パッドの図面をFAXにて送ったこと
平成19年11月6日に、寶田から株式会社京都西川に、本人作成の直里発明に係る冷感敷パッドの商品見本の図面(甲第34号証)が届いた。
次いで、平成19年11月13日に、寶田から株式会社京都西川に、本人作成の直里発明に係る冷感敷パッドの構成とほぼ同じものである冷感敷パッドの図面(甲第36号証)が届いた。(審判請求書第39頁)

(2-4)寶田が、株式会社京都西川に納品した冷感敷パッドについて
平成19年12月7日に寶田が株式会社京都西川に納品した冷感敷パッドの構成は、甲第36号証の寸法が変更されたものであって、堀尾が平成19年9月20日に寶田に説明した冷感敷パッドの構成とは、イノアック製の液状ジェルを用いた点のみが異なるものであった。(審判請求書第40?41頁)

(3)まとめ
以上のとおりの理由及び証拠により、本件出願前に直里が本件特許発明1、2と同一の発明をして、その発明を堀尾が寶田に説明し、その後寶田が、その発明について出願したのであるから、本件特許発明1及び2に関して、その発明者が被請求人代表者である寶田ではなく請求人代表者である直里であることが明らかであって、その特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるから、本件特許発明1及び2に係る特許は、平成23年法律第63号改正附則第2条第9項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第123条第1項第6号の規定により無効とされるべきである。

2.被請求人の主張
(1)寶田が本件発明の発明者であること
(1-1)寶田による本件発明完成までの経緯
a)「朝までクール」ヒットを受けての冷感マット開発検討段階
平成18年5月頃、オーシン社が販売していた「朝までクール」(甲第24号証)という冷感マットが大ヒットし、寝具業界で大きな注目を集めていた。
平成18年10月5日、寶田が請求人株式会社京都西川本社を訪問した(乙第4号証の資料2及び資料4)際に、当時の請求人株式会社京都西川の商品11部寺石泰典氏と寶田との間で、オーシン社の「朝までクール」のことが話題になり、寶田は、「朝までクール」のような冷感マットを考えてみるので、いいものが出来たら(請求人株式会社京都西川で)買って欲しいというようなことを話した。したがって、この頃から、寶田は、蓄熱材マットの開発について検討するようになった。
「朝までクール」を見て、寶田の頭にまず一番初めに浮かんだ問題点は、マット(敷物)は人が上に乗って使用するものであるため、人が踏んだ時にジェルが動いて滑ったりしないかということ、及びジェルを入れたパックが破裂しないかということであった。
寶田は、まず、軽くて破れにくく、安価で、水分が抜けにくい蓄熱材パックを探した。特に、蓄熱材パックが破れないというのは絶対条件であったため、寶田と冷感枕の取引があった伊藤繊株式会社を通じて、蓄熱材の製造も行っている三重化学工業株式会社に、ジェルと一緒に緩衝剤を入れた蓄熱材パックを試作してもらう等、色々な蓄熱材パックを試した(乙第13号証の1及び2、乙第4号証)。
また、上記冷感マットに特有の課題を踏まえ、最適な蓄熱材を提供してもらうため、平成19年8月頃から、寶田は、イノアック社から、色々なタイプの保冷剤の提供を受け、冷感マットへの適用を検討した。
他方、蓄熱材を収容するマットのカバーについても、当時から取引があった株式会社光洋キルティング(以下「光洋キルティング社」という。)に頼んで、試作品を作ってもらい(乙第7号証及び乙7号証の資料2)、蓄熱材とカバーとをどのように組み合わせるか等についても、並行して検討を進めた。
このように、平成18年10月5日から平成19年8月頃の期間においては、寶田による冷感マットの開発に向けた検討が始められていたが、まだ試行錯誤の段階であって、本件特許発明が具体的に完成するには至っていなかった。(答弁書第25?28頁)

b)ナオシング製ジェルパック連結体の提供と発明の完成、出願まで
平成19年9月20日頃、被請求人本社を堀尾が訪れ、寶田に対し、ナオシング製ジェルパック連結体を示して、「これで冷感マットを作れないか。」、「いいものが出来れば買う。」と述べた。
請求人らは、この時、堀尾が、寶田に対し、「口頭で」本件特許発明1及び2と実質的に同一の「直里発明」の内容を説明したと主張するが(審判請求書第38頁7行目以下等)、後述のとおり、この時、寶田は、ナオシング製ジェルパック連結体を示されただけであり、「直里発明」なるものの内容などは一切聞かされなかった。
ナオシング製ジェルパック連結体は、蓄熱材パック要素を複数個連結した、冷感枕ではよく使われているジェルを小分けに収容したジェルパック連結体をマット用に大きくしたものであって、蓄熱材の量がパックごとにバラバラであったり、パックの長さが一定でないなど、一見して粗悪なものであった。
そして、このような形状の蓄熱材を1本ずつ小分けに収容してカバーとの固着を工夫すれば、簡易な構成で、軽く、破れにくく、製造コストも安い実用的な冷感マットが作成できるのではないか、と考えた寶田は、平成19年9月22日に、ナオシング製ジェルパック連結体のサンプル40本を請求人株式会社京都西川の本社から持ち帰り、光洋キルティング社に、ジェルを小分けに収容できるカバーを作成させて(乙第7号証及び乙7号証の資料2)、そこにナオシング製ジェルパック連結体を収容したサンプルを2枚作成し、平成19年10月2日頃、請求人株式会社京都西川に納品した。
但し、納品したサンプルは、小分けされた収容室にナオシング製ジェルパック連結体を入れただけで、蓄熱材パックとカバーとの固着もされていない未完成なものであった。(乙第4号証)。
この時点では、蓄熱材パックとカバーとの固着の仕方などはまだ寶田の中でもイメージが完成していなかった。
寶田は、次の段階として、収容室に蓄熱材パックを1本ずつ収容しただけでは、人が上に乗ったり寝転んだりして過重が加えられると、蓄熱材パックがマットの中で動いて捩れたり、蓄熱材が偏在したりするため、蓄熱材パックとカバーとを固着する必要があると考えていた。(答弁書第28?30頁)

(1-2)本件発明の完成時点
蓄熱材パックとカバーとの固着については、縦横両方の縁部を固着する構成にすると、蓄熱材パックとカバーとの伸度の違いにより、蓄熱材パックが破れやすくなるという問題があり、またカバーの中に入って外からでは見え難いジェルパック連結体の連結部分をジェル収納部分に穴をあけずに縫うということは技術的に非常に困難であり、コストもかかる、そのため、寶田は、「蓄熱材パックとカバーとを上縁部及び下縁部で横方向のみ固着する構成」がベストである、と思い至り、平成19年11月頃、本件特許発明を完成させた。
最終的に、本件特許発明については、平成19年11月28日、青山特許事務所の文字秀雄弁理士宛に、完成した発明の概要を記載した図面をFAXにより送信した(乙第9号証の1及び2)。
その図面は、甲第1号証に開示された本件特許発明の内容と完全に一致するものである。
寶田は、平成19年11月6日及び同月13日に、請求人株式会社京都西川に対し、冷感マットの図面をFAX送信しているところ、この時点では、本件特許発明の内容は完成していたにも拘わらず、被請求人が請求人株式会社京都西川に送信した図面には、蓄熱材パックとカバーとの縫製線が一切記載されていない(甲第34号証及び甲第36号証)。
これは、被請求人において、特許出願を準備中であったことから、本件特許発明の核心部分である、蓄熱材パックとカバーとの固着構造については、出願が完了するまで誰にも明らかにせず、秘密にしていたためである。仮に、本件特許発明1及び2の内容について、寶田が堀尾から教えられたものであったというのであれば、請求人株式会社京都西川に対して、このように本件特許発明の内容を伏せた図面をFAXする必要は全くない。また、堀尾が寶田に対し、本件特許発明1及び2の内容を教えていたのであれば、むしろ、蓄熱材パックとカバーとの固着構造が図面に記載されているのが自然である。それにもかかわらず、甲第36号証には固着構造に関する記載が全くなされていないのであって、このことからも、寶田が本件特許発明を独自に完成させたことが明らかである。(答弁書第30?36頁)

(2)被請求人が直里発明を冒認出願したとの主張について
a)本件特許発明1及び2は、平成19年11月頃、寶田が自ら完成させた発明であり、それ以前に、直里が、本件特許発明1及び2と実質的に同一の「直里発明」なるものを完成していたなどということはあり得ない。

b)平成19年9月20日及び同月25日に、寶田が、堀尾より、本件特許発明1及び2と実質的に同一の「直里発明」の内容を「口頭で」知らされた事実などない。
寶田は、平成19年9月20日頃、堀尾から、請求人ナオシング製のジェルパック連結体(以下「ナオシング製ジェルパック連結体」という。)を示され、「これで冷感マットを作れないか。」、「いいものが出来れば買う。」と言われただけであり、本件特許発明1及び2は、堀尾からの上記要請を受けて、寶田が、自ら着想し、完成させたものであり、直里発明を冒認したものではない。(答弁書第18?19頁)

(3)まとめ
以上のとおりの理由及び証拠により、本件特許発明1及び2に関して、その発明者が被請求人代表者である寶田であることは明らかであるから、その特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとはいえず、本件特許発明1及び2に係る特許は、平成23年法律第63号改正附則第2条第9項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第123条第1項第6号の規定により無効とされるべきではない。

3.当審の判断
(1)本件特許発明の本質的部分について
本件特許発明の出願から特許権の設定登録までの経緯
平成19年12月21日 本件出願
平成23年5月23日付け 拒絶理由通知
平成23年7月28日付け 意見書及び手続補正書の提出
平成24年3月14日付け 拒絶理由通知(最後)
平成24年5月10日付け 意見書及び手続補正書の提出
平成24年12月27日 特許査定
平成25年1月25日 特許権の設定登録

a)平成23年5月23日付け拒絶理由通知において、本件出願は、引用文献1ないし3に記載の発明により当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの理由が通知された。

b)それに対して平成23年7月28日付け手続補正書(甲第72号証)において、特許請求の範囲の請求項1の記載に関して
「【請求項1】
第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材マットであって、
前記蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなしており、
前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が前記カバーに固着されていないことを特徴とする蓄熱材マット。」(下線部は、補正箇所を表す。)と補正された。

c)そして、同日付けの意見書(甲第73号証)において、
「従来、蓄熱材パックの上縁部と下縁部と左縁部と右縁部との全ての縁部をカバーに対して固着しないで蓄熱材パックを取り出し口から着脱自在に取り出しできるように構成された全フリータイプのものと、蓄熱材パックの上縁部と下縁部と左縁部と右縁部との全ての縁部をカバーに対して固着した全固着タイプのものとが、存在していた。」、
「従来の全フリータイプのものは、蓄熱材パックが収容室の中で動き回るために捩れたり偏在したりするという問題がある。」、
「カバーはバイアス方向に比較的大きな伸度を示すのに対して、ラミネートフィルムからなる蓄熱材パックがあまり大きな伸度を示さないために、バイアス方向の引張力が蓄熱材マットに作用すると、カバーが大きく伸びようとするのに対して蓄熱材パックがほとんど伸びない。その結果、蓄熱材パックをカバーに対して固着している固着部分が外れてしまい、固着部分が外れる際にラミネートフィルムの破損を誘発してラミネートフィルム内の蓄熱材を流出させる恐れがある。」、
「蓄熱材マットの通常の使用場面で起こり得るバイアス方向の引張力に対して、従来の全固着タイプのものは非常に弱いという問題がある。」、
「(補正後の請求項1に係る発明は、)収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が前記カバーに固着されていないことを特徴としている。要するに、本発明に係る蓄熱材マットは、蓄熱材パックがカバーに対して部分的に一体的に固着された所謂部分的固着構造を備えることを特徴としている。」とした上で、
「引用文献1乃至3のいずれの発明も、蓄熱材パックがカバーに対して部分的に一体的に固着された所謂部分的固着構造を備えるという補正後の新請求項1に係る技術的特徴に関して何らの開示や示唆をなすものではない。」という主張がなされた。

d)これに対して、平成24年3月14日付け拒絶理由通知(最後)(甲第74号証)において、請求項1の「各蓄熱材パックでは」「縦方向に延在する左縁部及び右縁部が前記カバーに固着されていない」構成は、出願当初の明細書には記載されておらず、出願当初の明細書の記載から自明の構成とも認められないとし、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとの理由で、拒絶理由が通知された。

e)これに対して、平成24年5月10日付け手続補正書(甲第75号証)において、出願当初の図1及び明細書における段落【0017】の記載を根拠に、請求項1に対して「・・収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていない・・」との補正がなされた。

f)そして、同日付けの意見書(甲第76号証)において、
「参考説明図(図1)において、縦方向固着部40と蓄熱材パック60の縦方向の縁部との間には、縦方向のすき間が形成されている。当該縦方向のすき間は、蓄熱材パック60の縦方向の左右の縁部が、縦方向固着部40からそれぞれ離間していて、縦方向固着部40によってカバー10,20に固着されていないことを示している。」、
「これに対して、参考説明図(図1)における上端側及び下端側の横方向固着部51及びその周辺では、横方向固着部51を示す点線が存在するものの、横方向の一点鎖線や横方向のすき間が存在していない。」、
「このことは、蓄熱材パック60の上端側及び下端側に位置する横方向の周縁端部が横方向固着部51によって固着されているために、蓄熱材パック60の上端側及び下端側に位置する横方向の縁部が、横方向固着部51のラインよりも蓄熱材マット1の縁部の側にそれぞれ存在して、蓄熱材マット1の周縁端部によって隠れてしまう(すなわち、蓄熱材パック60の上端側及び下端側に位置する横方向の縁部が、不図示になってしまう)ことを示している。」、
「出願当初の明細書の段落0023は、「蓄熱材パック60は、一つの蓄熱材パック要素66だけが上下方向に延在して、蓄熱材パック60の上縁部と下縁部とがカバー10,20に固着されている単一形態であってもよい。・・・」ことを開示している。当該記載からも、「蓄熱材パックにおいては、縦方向に延在する左縁部及び右縁部がカバーに固着されていない」という技術的事項が、明瞭に且つ十分に開示されている」、
「したがって、「蓄熱材パックにおいては、縦方向に延在する左縁部及び右縁部がカバーに固着されていない」という技術的事項、及び、「蓄熱材パックの縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、縦方向固着部からそれぞれ離間している」という技術的事項が、図1において、明瞭に且つ十分に開示されている。」という主張がなされた。
そして、平成24年12月27日付けで特許査定がなされた。

g)以上によれば、従来、蓄熱材パックをカバーに収納した状態において、蓄熱材パックの全ての縁部をカバーに対して固着しない全フリータイプと、蓄熱材パックの全ての縁部をカバーに対して固着する全固着タイプが存在し、そのうち全フリータイプにおいては、蓄熱材パックが収容室の中で動き回るために捩れたり偏在したりするという問題があり、全固着タイプにおいては、蓄熱材マットの通常の使用場面で起こり得るバイアス方向の引張力に対して、従来の全固着タイプのものは非常に弱いという問題があるとの知見に基づいて、本件特許発明においては、「各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によってカバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、縦方向固着部によってカバーに固着されていない」ことを有するものとすることにより、これらの問題を解決したものと認められる。
よって、本件特許発明のうち、「各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によってカバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、縦方向固着部によってカバーに固着されていない」ことが、本件特許発明における本質的部分である。

(2)寶田が本件特許発明を行ったか否かについて
a)寶田の経歴及び技術的背景
乙第4号証第1?2頁及び乙第1号証から、寶田が、昭和50年頃、株式会社弥生に入社し昭和59年頃から、寝具類を製造する同社豊浜工場の製品開発業務に携わっていたことがうかがえる。
また、乙第2号証、乙第4号証第2頁、乙第4号証の資料1、乙第3号証の2、乙第3号証の3から、寶田は、平成10年に有限会社タカラを設立し、布団やマットレス等の寝具の開発にも携わったこと、自らが発明した寝具や敷物に関する特許及び実用新案登録の出願を行っていたことがうかがえる。
以上のことから、寶田は本件特許の蓄熱材マットと関連する寝具や敷物の開発に携わり自らの発明も特許及び実用新案登録の出願を行っており、本件特許発明をするに足る技術的知識及び経験を有すると認められる。

b)本件特許発明をする契機
甲第2号証第3頁、甲19号証第3頁、乙第4号証第3頁及び、当事者寶田博介の当事者尋問における陳述(以下「寶田の陳述」という。)から、平成18年4月ないし5月頃、寝具の分野において、オーシン社の「朝までクール」という冷感敷パッドの商品が注目されていたことがうかがえる。そして、乙第4号証第3?4頁及び寶田の陳述から、寶田は、平成18年10月に株式会社京都西川本社を訪問し、そこで京都西川の寺石氏と、この「朝までクール」を話題にして会話したことを契機に同年11月頃、冷感マットの開発に着手したことがうかがえる。

c)課題の認識及び開発行動について
乙第4号証第4?5頁及び寶田の陳述から、寶田は、従来の蓄熱マットはマット上に人が乗ると蓄熱材のジェルのパックが破損するという問題点を認識し、人が乗っても破損しない構造とするという課題を認識したことがうかがえ、三重化学工業株式会社に依頼して緩衝材を入れた蓄熱材パックを検討し、その後、株式会社イノアックコーポレーションから様々なタイプの蓄熱材パックの提供を受けて蓄熱材パックの冷感マットへの適用を検討したことがうかがえる。また、それと並行して、蓄熱材を収容するカバーについても株式会社光洋キルティングに試作品の製作を依頼して、蓄熱材パックとカバーとをどのように固着するかについても検討を進めたことがうかがえる。

d)発明の着想
乙第4号証第6頁から、寶田は、平成19年9月20日に、ナオシング製のジェルパック連結体を提示されるとともに、堀尾よりこのジェルパックを使用した冷感マットを作るよう依頼されたことがうかがえる。

e)発明の完成
乙第4号証第7頁から、寶田は、平成19年11月頃、ジェルパック連結体とカバーとをジェルパックの上縁部及び下縁部の連結部で横方向にのみ縫い付ける構成に思い至ったことがうかがえ、乙第4号証、乙第9号証の1から、寶田は、青山特許事務所の文字秀雄弁理士に、その内容を記載した図面をFAXしていることから、出願を依頼したと認められる。

f)寶田が出願依頼した発明
乙第9号証の1左上には、「青山特許事務所 文字様」と記載され、右下には、四角囲いの「FAX済」というスタンプ印とともに、「有)タカラ 宝田」の記載と、「宝田」の押印がなされている。
乙第9号証の1右上には、「敷物として、図1の様な、袋状の物を作り、・・」と記載されており、乙第9号証の2には、「H19.11.28」、「青山特許事務所 文字様」、「有)タカラ 宝田」の記載とともに「<冷熱マットの件>」と記載されていることからみると、乙第9号証の1左上の図1は、マットの平面図であると認められ、その下には「断面」の記載とともに断面図が図示され、さらにその下には、図1の平面図において四角形に囲われた部分に対応する部分断面図が図示されている。また上記断面図右側には、「拡大」の記載とともに拡大図が図示され、その下には中材を被覆するフィルムの平面図が図示されている。
上記乙第9号証の1の右端には、「H19.11.28」、「この商品は、フィルムと中材・表面生地で構成される.中材は一般に蓄冷、蓄熱剤して作られているフィルムと中材として構成されている。本品の特長は、敷物として、図1の様な、袋状の物を作り・・・また中材を表、生地とヌイ合せ、比較的不安定な中材を個定し安定化させ・・・」と記載されている。
そして、紙面中央よりやや下の「図2」で示されるとともに、「拡大」の記載のある断面図には、フィルムと中材とからなる帯状の部材が表生地と裏生地との間に収容され、該帯状の部材の右端が表生地と裏生地との間に挟まれた部分における短い縦線に対して「ヌイor接着」と記載されている。
図2の下部に示される図面には、該帯状の部材の短手方向の右端斜線部に対して、引出線とともに「シートヌイ代」と記載されている。
図1には、長方形を横線で12等分したものが図示されている。そして、上端を除く上から5本の横線に対して、それぞれ引出線とともに「ヌイ」と記載されている。
図1の下部に示される「断面」の記載のある図面においては、フィルムと中材からなる帯状の部材が表生地と裏生地との間に収容されており、フィルムと中材からなる帯状の部材の左右両端が、表生地と裏生地との間に挟まれており、該左右の挟まれた部分に短い縦線が図示されている。
図1の下から2本目の横線の一部分に記載された正方形で図示された部分からの引出線によって導かれる断面図(乙第9号証の1左下)には、表生地と裏生地とが接触した部分に、さらに引出線が設けられ、「ミシン縫製及び接溶着」、「多少すき間あっても可」と記載されている。そして、この断面図は、中材と中材とが表地と裏地の固着部分によって離間していることが図示されていることからみると、図1の縦方向からみた断面図であって、表生地と裏生地との間には、中材が収容されており、右側の中材の左端、左側の中材の右端と、それぞれ表生地と裏生地とが接触した部分との間に隙間があることが看取できる。
以上から、フィルムと中材とからなる帯状の部材は、図2の下部に示される図面からみて、少なくともその右端の斜線部において、「シートヌイ代」と図示される部分が、図2における「ヌイor接着」で図示される箇所において表生地と裏生地に縫着あるいは接着されるものと認められる。さらに、図1の下部に示される「断面」の記載のある図面には、フィルムと中材からなる帯状の部材の左右両端が、表生地と裏生地との間に挟まれており、左右両端の挟まれた部分に、図2において「ヌイor接着」の記載をもって示された短い縦線が左右両端に図示されていることからすると、フィルムと中材とからなる帯状の部材の短手方向の左右両端が表生地と裏生地に縫着あるいは接着で固着されていることが認められる。
一方、図1の下から2本目の横線の一部分に記載された正方形で図示された部分から引出線をもって図示される断面図は、当該正方形で図示された部分についての断面図と認められ、その右側の中材の左端、左側の中材の右端とにおいて、それぞれ表生地と裏生地とが接触したミシン縫製及び接溶着した部分との間に隙間があることが看取でき、横線における他の部分の断面もこの構造であることがうかがえることから、フィルムと中材からなる帯状の部材の長手方向の両側端において隙間が図示されているといえる。
したがって、乙第9号証の1は、平成19年11月28日に、寶田が青山特許事務所 文字弁理士あてにFAXで送信したものであって、少なくとも、本件特許発明の本質的部分である「各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によってカバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、縦方向固着部によってカバーに固着されていない」ことが図示されているといえる。

g)上記a)?f)を総合すると、寶田は本件特許発明を発明するに十分な技術的知識と経験を有し、発明をする契機があったことがうかがえ、また、本件発明の課題を認識し、実際に開発活動を行っていることがうかがえ、本件発明に想到する事実が、証拠及び証言から認められる。そして、本件特許発明の本質的部分である「各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によってカバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、縦方向固着部によってカバーに固着されていない」が記載された図面を特許出願の依頼のために作成していることから、本件特許発明を寶田が発明したと認められる。
また、寶田が作成した乙第9号証の1の図面は本件特許明細書に添付された図面とほぼ同じ内容であることからみても、本件特許発明を寶田が行ったと認められ、本件特許出願における発明者欄にも、寶田博介と記載されている。

(3)寶田の本件特許出願が直里の発明した発明を知得してなされたものか否かについて
a)直里のした発明
甲第2号証第5?6頁から、直里のした発明は、請求人の主張する「直里発明」のとおりのものと認められる。

b)直里が発明を完成した時期
甲第2号証第6頁第16?21行から、直里は、平成18年8月頃、ナオ・シングが以前から出願手続きを依頼している千明武弁理士に直里発明の概要を口頭で説明して特許出願について相談していることがうかがえ、また、甲第2号証第9頁から、平成18年10月12日に株式会社京都西川の本社で同社従業員・堀尾及び同長江宏氏に直里発明の内容を説明していることがうかがえる。これらの事項を総合すると、直里は、上記直里発明を、平成18年8月乃至10月12日の間には完成させていたと認められる。

c)堀尾が直里から直里発明の内容を知得したか否かについて
甲第2号証第7?8頁から、平成18年10月12日に、株式会社京都西川本社において、直里は堀尾に対して、メモ帳に略図(甲第2号証の資料2、甲第3号証と同一)を描いて示しながら直里発明に係る冷感敷パッドの構造について説明したことがうかがえる。
さらに、甲第2号証第8?9頁から、平成19年9月14日に、株式会社京都西川本社において、直里が堀尾に対して、ジェル小パック連結体を提示し、直里がメモ帳に略図(甲第2号証の資料3、甲第4号証と同一)を描いて示しながら直里発明に係る冷感敷パッドの構造について説明したことがうかがえる。
そして、甲第19号証第3?4頁、甲第19号証第8?9頁の、堀尾が直里から知得した冷感敷パッドに関する構成と、甲第2号証第7?8頁の直里が堀尾へ説明した冷感敷パッドの構成とは同一のものである。
以上のことを総合すると、堀尾は、平成18年10月12日と平成19年9月14日の2回の説明により、直里から直里発明の内容を知得したと認められる。

d)堀尾が寶田に説明した事項について
甲第19号証第10?11頁、甲第26号証、乙第4号証第6頁、及び、証人堀尾正樹の証人尋問における証言(以下「堀尾の証言」という。)、寶田の陳述から、平成19年9月20日に、堀尾が、被請求人有限会社タカラ(当時)を訪問し、寶田と面会したこと、その面会において、堀尾は寶田に、ジェル小パック連結体を提示し、このジェル小パック連結体を使用した冷感マットの見本または試作品の製造して納品することを依頼し、寶田がその製造及び納品を承諾したことが認められる。
また、甲第2号証第10頁、甲第6号証、甲第19号証第11頁、乙第4号証第6頁、堀尾の証言、寶田の陳述から、平成19年9月22日に寶田が株式会社京都西川本社を訪れ、上記平成19年9月20日依頼を受けた冷感マットに使用するナオシング製のジェル小パック連結体40本を受領したと認められる。
そして、甲第19号証第11頁、乙第4号証第6頁から、その依頼に応じ、平成19年10月2日に、寶田が株式会社京都西川本社に、冷感マットの商品見本2枚を納品したと認められる。

そこで、平成19年9月20日に、堀尾が寶田に、ジェル小パック連結体を使用した冷感マットの見本または試作品の製造を依頼した際に、本件特許発明を寶田が堀尾から知得したか否かについて検討する。
請求人は、本件特許発明の内容を請求人に説明したと主張する証拠として甲第27号証の写真を提出し、甲第27号証に撮影された、備長炭シート入りパッドのミニチュア見本を使用して、口頭にて「1枚の備長炭シートに替えてジェルを充填したラミネートフィルム製小パック7個の連結体複数本を使用し、表生地と裏生地を重ねてキルティングによって縦方向に仕切ることによって複数の収納室を並列させて設け、この複数の収納室のそれぞれに当該連結体を1本ずつ収納し、キルティングによって表生地と小パックの連結部と裏生地とを固定し、周囲をヘム巻にて縫着し、小パック7個連結体の上縁部及び下縁部を表生地と裏生地とに固定して左右側縁部は表生地と裏生地に固定しない構造の冷感敷パッドを、表生地にはブロード織コットン生地を、裏生地には被請求人が株式会社京都西川に納品している備長炭・ゲルマニウム入りハンドフックに使用しているダブルラッセル編ポリエステル生地を使用して製造して欲しい」旨を指示し、さらに、「今月22日頃に使用する小パック7個の連結体が届くので株式会社京都西川本社で受け取り、できるだけ早く見本を製造して欲しい」旨を指示したと主張している(審判請求書第38頁/甲第19号証第10?11頁)。
一方、被請求人は、平成19年9月20日に、堀尾からナオシング製のジェルパック連結体を示されて、「これで冷感マットを作れないか。」、「いいものが出来れば買う」と言われただけで、具体的構成については指示されていない旨主張している。(答弁書第28頁/乙4号証第6頁)

そこで、甲第19号証第10?11頁、堀尾の証言、乙第4号証6、8頁をみると、いずれにおいても、上記平成19年9月20日の依頼において、製造する冷感マットの説明に、書面または図面を使用していないことが認められる。
また、請求人が提出した甲第27号証の上面写真、及び、部分カット写真から、このマットは、青色のシートをグレーのシートで挟持しその周囲が縫製され、また面全体が格子状に縫製されたものが看取できる。そしてこの構成は、前述の直里発明の構成またはそれに類する構成を備えるものとは認められず、さらには、直里発明の構成の前提である「表生地と裏生地を重ね合せて、縫着して縦方向に仕切った複数の収納室を並列させて設けた扁平状袋体」すら有していない。
してみると、このような構成の甲第27号証のマットを提示しながら、甲第19号証第10頁に記載された内容の説明をしたとの主張は不自然であるし、依頼すべき直里発明の構成を正しく構成を伝えることは困難であると認められる。
したがって、平成19年9月20日に、堀尾から寶田に、このマットを使用して直里発明の内容を説明したか否かは不明である。
また、甲第19号証第10頁によると、堀尾が寶田に説明したとされる内容は、表生地と裏生地の具体的素材、これらの素材で収納室を複数作ること、収納するジェルパックの本数、ジェルパックの固定方法など細かな指示内容であり、これらの事項を書面も図面もなく、正確に理解し、記憶し、その後、製造して納品することは、たとえ当業者といえども困難であると認められる。
以上のことを総合すると、平成19年9月20日の、堀尾が寶田に、ジェル小パック連結体を使用した冷感マットの見本または試作品の製造を依頼した時に、請求人の主張する直里発明の内容を堀尾から寶田に伝えたか否か不明である。
また、請求人は、この依頼の5日後である、平成19年9月25日に、株式会社京都西川を訪問した寶田に、直里発明に係る冷感敷パッドの商品コンセプトを再度説明したと主張するが(審判請求書第39頁、甲第19号証の第11頁)、その説明の具体的内容は不明であり、そもそも、請求人からの証拠では平成19年9月25日に、堀尾が寶田に会ったか否かも不明である。
そして、上記製造依頼に応じた、ナオシング製のジェル小パック連結体を使用した冷感マットの見本は平成19年10月2日に納品されており、仮に、請求人が主張するような説明がされて製造された見本であるなら、この納品物は甲第19号証第10?11頁に記載された説明内容と同一の構成を有するものであるはずであるが、その納品物の構成がどのようなものであったかも不明である。
これらのことを総合すると、平成19年9月20日に、堀尾は寶田と面会し、ナオシング製ジェルパックを使用した冷感マットの製造、納品を依頼したことは認められるが、その際、本件特許発明の本質的部分を説明して依頼したとまでは認めることはできない。

なお、甲19号証第14?15頁、及び、乙第4号証第8?9頁から、上記納品後の平成19年12月7日に、寶田が株式会社京都西川に、ナオシング製ジェルパックに代えて、イノアック製ジェルパックを使用した冷感マットを納品したと認められる。堀尾の証言によれば、この納品物が、ジェルパックの両端部をヘム巻きにて固定するよう指示したとおりに製造されているか確認したとしているが、その納品物は、構造上外から見ただけでは、ジェルパック両端がヘム巻きされているか目視はできないことが明らかであり、また、堀尾の証言によれば、その納品物を振ってジェルが動かないか確認しただけであり、分解してまで確認していないと認められることからも、堀尾が寶田に対し、ジェルパックの両端部をカバーに固着し、縦方向に延在する縁部がカバーに固着されていないことを正確に指示したうえで冷感マットの見本の作成を依頼したとまでは認められない。

e)小括
以上のとおりであるから、平成19年9月20日、及び、平成19年9月25日に、堀尾は寶田に、直里発明の内容を説明して依頼したとまでは認めることはできないから、直里発明を寶田が堀尾から知得したとは認めることができない。

(4)請求人が、寶田が直里発明を知得したとするその他の主張
(4-1)請求人は、上記の他に、寶田が直里発明を知得したとして以下の主張をしている。(審判請求書第48?49頁)
a)寶田が作成して株式会社京都西川に平成19年11月6日にFAXした甲第34号証の図面と、同様に、平成19年11月13日にFAXした甲第36号証の図面とを対比すると、前者に示された冷感敷パッドに比べて、後者に示された冷感敷パッドの構成がより具体化していること。

b)寶田は、冷感敷バッドの量産体制に参加した平成19年11月初めから同年12月21日の間に株式会社京都西川の本社を少なくとも5回訪社して、堀尾、平井氏と量産体制につき打ち合わせをしていること。

(4-2)判断
上記(4-1)a)、b)に対して以下判断する。
a)寶田が作成して株式会社京都西川にFAXして提案を行った甲第34号証の「冷感マット」あるいは甲第36号証の「冷感パット」の図面について以下検討する。
甲第34号証の図面は、「冷感マット」の全体の寸法及び区画の形態について示すものと認められるが、紙面左側のマットの縦方向に「52」、横方向に「86」、上側に「(1枚)」と記載され、紙面右側のマットの縦方向に「86」、横方向に「140」、上側に「(1枚)」と記載され、さらに下端右手に(単位CM)との記載が認められるものの、ジェルパック連結体本体及び、ジェルパック連結体と表生地、裏生地との固着構造については、図示あるいは記載されていない。
甲第36号証の図面は、「冷感パット」の全体の寸法及び区画の形態について示すものと認められるが、紙面中央左側上部に、「45g×8個」、「2.5↓」、「2.5↓」の記載とともに、そのそれぞれに「1、2、3・・・11」(1枚目)、「45g×8個」、「2.5↓」、「2.5↓」の記載とともに、そのそれぞれに「1、2、3・・・8」(2枚目)と番号が付されている偏平状の楕円形が横に8個連なっている部分は、その形状からジェルパック連結体であると推認できるが、ジェルパック連結体本体及び、ジェルパック連結体と表生地、裏生地の固着構造については、図示あるいは記載されていない。
よって、甲第34号証、甲第36号証の図面には、そもそもジェルパック連結体と表生地、裏生地の固着構造について記載されていないから、本件特許発明の本質的部分について何ら開示するものではなく、甲第36号証の図面に示された冷感パットが、甲第34号証の図面に示された冷感マットに比べてより具体化していることをもって、平成19年11月6日から13日の間の量産体制での活動を通じて、ジェルパック連結体と表生地、裏生地の固着構造の詳細、すなわち本件特許発明の本質的部分を含む冷感敷パッドの構成を寶田が知得したということはできない。

b)寶田が、平成19年11月初めから同年12月21日の間に株式会社京都西川の本社を少なくとも5回訪社して、堀尾、平井氏と量産体制につき打ち合わせを行った際に、仮に直里発明による冷感敷パッドの構成について話し合われたとしても、それが本件特許発明の本質的部分を含むものかについて請求人は明らかにしていないから、前記寶田の訪社によって、ジェルパック連結体と表生地、裏生地の固着構造の詳細、すなわち本件特許発明の本質的部分を含む冷感敷パッドの構成を寶田が知得したということはできない。

(5)平成26年10月23日付け上申書、平成26年11月29日付け上申書の主張及び証拠について
請求人は、寶田による「平成19年12月7日頃、本件アイスジェルパッドのサンプル品を株式会社京都西川に持ち込んだことはあるが、この時も、ジェルパックとカバーとの固着はしていないものを持ち込んだはずである」(乙第4号証第8?9頁/寶田の陳述)という陳述に対する反証として、平成26年10月23日付け上申書とともに甲第83号証を、平成26年11月29日付け上申書とともに甲第84号証(田中直樹による陳述書)を提出し、上記上申書において、寶田の商品見本と冷感敷パッドに関するジェルパック連結体の上下の両端が側生地と固着されていないという陳述は、明らかに信憑性を欠くものであると主張している。
これら甲第83号証、甲第84号証には、平成19年10月、同年12月に、有限会社タカラ(代表者寶田博介)の依頼により作成して寶田に納品した冷感敷パッドのサンプルは、「ジェルパック連結体の上下の両端が、側生地に固着するようにヘム巻きで縫着されていた」との陳述内容が記載されている。
しかしながら、上記証拠を検討しても、寶田が直里発明を知得したことを立証するものではなく、また上述の寶田が自ら本件特許発明をしたことを否定することもできないから、甲第83号証、甲第84号証の内容は結論に影響を及ぼすものではない。

(6)結論
以上のとおりであるから、本件特許発明は寶田が自ら課題を認識し、発明を完成させ特許出願したものであると認められ、また、直里のした発明を寶田が知得してその発明の特許出願をしたとは認めることができない。
よって、本件特許発明1及び2に係る特許は、平成23年法律第63号改正附則第2条第9項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第123条第1項第6号の規定に該当せず、無効とされるべきとはいえない。

第6.無効理由2について
1.請求人の主張
(1)平成19年12月7日に、寶田は、前記提案の液状ジェルを用いる冷感敷パッド5枚(90×100:3枚、90×140:1枚、90×200:1枚)を寶田が株式会社京都西川本社に持ち込んで、代金20,736円で販売した。
(2)販売された前記液状ジェルを用いる冷感敷パッドは、いずれも甲第36号証の図面とは、寸法が異なっているが、平成19年9月20日に堀尾が、寶田に説明した冷感敷パッドの構成とは、イノアック製の液状ジェル小パック8個連結体を用いることのみにおいて異なっていた。
(3)前記液状ジェルを用いる冷感敷パッドの販売にあたって、被請求人と請求人との間には秘密保持などの約束はなく、寶田と堀尾との間にも秘密保持などの約束はなかった。
(4)平成19年12月7日に寶田により販売された液状ジェルを用いる冷感敷パッドの構成は、寶田からFAXで請求人に届けられた冷感敷パッドの提案図面2枚(甲第36号証)と、平成19年9月20日に堀尾が寶田に説明している冷感敷パッドの構成のとおりであって、本件特許発明1、2と実質的に同一のものである。
(5)以上の事実から、本件特許発明1及び2は、その出願前である平成19年12月7日に日本国内で販売されたものと同一のものであるから、特許法第29条第1項第2号に規定する、本件特許の出願前に日本国内において公然実施をされた発明であり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。(審判請求書第51?55頁)

2.被請求人の主張
(1)請求人は、平成19年12月7日に寶田が請求人に販売したとする冷感敷パッドが、本件特許発明1、2と同一であったと主張するが、この主張は、何ら客観的証拠を示されていない。
(2)本件特許発明の構成のうち「収容室のそれぞれに収容された各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によってカバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、縦方向固着部によってカバーに固着されていない」は、本件特許発明の主要部となる構成であり、寶田は、特許出願が完了するまで株式会社京都西川に対しても秘密にしていた。
寶田は、平成19年11月6日と同月13日に、株式会社京都西川に送信した図面には、ジェルパック連結体とカバーとの縫製線が一切記載されていないが、寶田は、意識的に、縫製線等の本件特許発明の特徴的部分に係る内容を記載しなかった。
しかも、平成19年12月7日の時点では、連結部分を広げるよう、平成19年12月3日に仕様変更依頼したイノアック製のジェルパック連結体はできあがっておらず、ジェルパックとカバーとを固着した製品を作ることはできなかった。
したがって、平成19年12月7日に寶田が請求人に納品した冷感敷パッドのサンプルは、本件特許発明1、2と実質的に同一のものではなかった。
(3)仮に、平成19年12月7日に寶田が請求人に納品した冷感敷パッドのサンプルが、本件特許発明1、2と実質的に同一であったとしても、請求人と被請求人との間で秘密保持契約が存在し、請求人は、被請求人に対して秘密保持義務を負っていたから、公知となることはない。
したがって、本件特許発明1及び2は、その特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明ではないから、特許法第29条第1項第2号の規定に該当するものとはいえない。
(4)以上により、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきとはいえない。(答弁書第65?70頁)

3.当審の判断
(1)甲第19号証第14?15頁の内容、甲第40号証の納品書の品名及びその欄の「12/7寶田持ち込み」の記載、同証の出荷及び荷受欄の日付の記載、及び、乙第4号証第8?9頁の(3)イの内容、並びに、堀尾の証言、寶田の陳述から、平成19年12月7日に、寶田が株式会社京都西川本社に、ジェルパックを内部に収納した冷感マットを納品したと認められる。

(2)そこで、当該納品された冷感マットの構成がどのような構成であったか検討する。
甲第19号証第14?15頁の、平成19年12月7日に、寶田が京都西川本社に持参した5枚の冷感敷パッドは、同年11月13日に寶田からFAXにて受けとっている寶田作成の冷感パッド提案図の寸法を変更したもので、いずれも株式会社イノアックコーポレーション製の液状ジェル小パック8個連結体を用いた冷感敷パッドであり、その構成は、堀尾が、同年9月20日に寶田に説明した京西冷感敷パッドの構成とは株式会社イノアックコーポレーション製の液状ジェル小パック8個連結体を用いている点のみが異なっているものであった旨の記載、乙第4号証第8?9頁、堀尾の証言、及び寶田の陳述を総合してみると、平成19年12月7日に、寶田が株式会社京都西川本社に納品した冷感マットは、表生地と裏生地との間に株式会社イノアックコーポレーション製の液状ジェル小パック8個連結体を収納し、表生地と裏生地との周囲をヘム巻きで固定したものであったと認められる。
そこで、冷感マットのジェル小パック連結体が、ヘム巻きにより表生地と裏生地とに固定されていたか否かについて検討する。
甲第19号証第14?15頁において堀尾は、「持参された当該冷感敷パッド5枚は、いずれも株式会社イノアックコーポレーション製の液状ジェル小パック8個連結体を用いた冷感敷パッドであり、その構成は私が同年9月20日に寶田氏に説明しています京西冷感敷パッドの構成とは株式会社イノアックコーポレーション製の液状ジェル小パック8個連結体を用いている点のみが異なっているものでした」と述べている。一方、堀尾は、上記納品された冷感パッドの構成については、納品物を分解して固定された部分を確認せず、冷感マットを振ることでジェル小パックが冷感マット内で動かないことで固定されているか否かを確認したと証言している。さらに、堀尾は「ヘム巻き」とは必ずしも中材と外材とを一緒に固定することまで意味するものではないと証言している。
しかも、納品された冷感マットは、その構造上、外観からは液状ジェル小パック連結体の端部がヘム巻きにより表生地と裏生地とに固定されているか否かは判別できないものと考えられる。
したがって、堀尾の「その構成は私が同年9月20日に寶田氏に説明しています京西冷感敷パッドの構成とは株式会社イノアックコーポレーション製の液状ジェル小パック8個連結体を用いている点のみが異なっているものでした」との陳述は、寶田が同年12月7日に持参した冷感敷パッドのヘム巻きについて、表生地と裏生地と、液体ジェル小パック連結体との関係を確認することなくなされたものと認められる。
したがって、堀尾の上記陳述に基づき、寶田が同年12月7日に持参した冷感パッドのジェル小パック連結体がヘム巻きにより表生地と裏生地とに固定されていたとすることはできない。

(3)一方、寶田が株式会社京都西川に送信した甲第36号証の図面には、冷感マットの構成を示す図が記載されていると認められるが、この図にはジェル小パック連結体と表生地、裏生地との固定を示す記述や図示は認められない。
そして、上述の「第5.無効理由1について」の「3.(2)、e)」で判断したとおり、寶田は遅くとも平成19年11月には本件特許発明を完成させており、同じく上記「第5.無効理由1について」の「3.(2)、a)」で判断したとおり、寶田は特許出願の経験を有しているから、特許出願まで発明の内容を秘匿することの重要性を認識していると認められ、その秘匿に反するような本件特許発明の特徴的部分に関連する「液状ジェル小パックの端部をヘム巻きにより表生地と裏生地とに固定した」構成を備えた冷感マットを納品することは、通常しないと考えられる。
さらに、乙第10号証の1によると、寶田は、平成19年12月3日に、「両端のヌイ代が狭くて縫製が問題有り」と記載して、イノアック製のジェルパック連結体のシール幅を拡げるように株式会社イノアックコーポレーションに対して仕様変更をするように依頼しており、乙第10号証の2によると、改良後のジェルパック連結体の図面が送られてきたのが平成19年12月17日であるから、平成19年12月7日の時点においては、改良後のジェルパック連結体は完成していなかったと認められる。
よって、平成19年12月7日に納品された冷感マットには、改良される前のジェルパック連結体が用いられたと認められるから、このことからも、平成19年12月7日に寶田が株式会社京都西川に納品した冷感マットが、「液状ジェル小パックの端部をヘム巻きにより表生地と裏生地とに固定した」構成を備えるものであったと認めることはできない。

(4)以上のとおりであるから、平成19年12月7日、寶田が株式会社京都西川本社に、ジェルパックを内部に収納した冷感マットは、表生地と裏生地との間に液状ジェル小パック8個連結体を収納し、表生地と裏生地との周囲をヘム巻きで固定したものとまでは認められるが、ジェル小パック連結体が、ヘム巻きにより表生地と裏生地とに固定されていたとまでは認められない。

(5)してみると、上記平成19年12月7日に寶田が株式会社京都西川に納品した冷感マットは、せいぜい「表生地と裏生地との間に、液状ジェル小パック8個連結体を収納し、表生地と裏生地との周囲をヘム巻きで固定されている」構造であるにすぎず、本件特許発明1、2に係る「収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていない」という構成を有しているとまでは認められない。
よって、本件特許発明1及び2と、上記平成19年12月7日に寶田が株式会社京都西川に納品した冷感マットとが同一のものであるとは認められない。

(6)まとめ
以上のとおり、平成19年12月7日に寶田が株式会社京都西川に納品した冷感敷パッドの構成が本件特許発明1、2のものであるとはいえないから、冷感敷パッドの納品にあたって、被請求人と請求人との間に秘密保持などの約束が存在したかについて検討するまでもなく、平成19年12月7日に寶田が冷感敷パッドを請求人に納品したことをもって、本件特許発明1、2が公然実施されたとはいえない。
したがって、本件特許発明1、2は、その特許出願前に日本国内において公然実施された発明ではなく、特許法第29条第1項第2号の規定に該当するものとはいえないから、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきとはいえない。

第7.無効理由3について
1.各甲号証の記載事項
(1)甲第65号証
甲第65号証には、「蓄熱体シート及び蓄熱体シートを用いた構造物」に関して以下の事項が記載されている。
1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】所定温度域でゲル化して蓄熱効果のある液相蓄熱体が、袋内に充填されて成る蓄熱体パックと、
該蓄熱体パックを平面的に複数収納するよう、2枚の保護シートが縫合されて形成された複数のポケットを有するポケットシートとから成り、
該ポケットシートに前記蓄熱体パックが収納されて形成されたことを特徴とする蓄熱体シート。
【請求項2】複数の前記蓄熱体パックが、帯状に連続して形成されていることを特徴とする請求項1記載の蓄熱体シート。
【請求項3】前記蓄熱体パックは、多数の小室に前記液相蓄熱体が分けられて充填され、シート状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の蓄熱体シート。
【請求項4】前記保護シートは、空気層を備える断熱シートであることを特徴とする請求項1記載の蓄熱体シート。
【請求項5】フックに吊るすための穴等の吊り手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の蓄熱体シート。
【請求項6】隣接するもの同士を接続するため、前記保護シート表面に面ファスナーが設けられていることを特徴とする請求項1記載の蓄熱体シート。
【請求項7】請求項1、2、3、4、5または6記載の蓄熱体シートをテントシートとして用いて所定空間を覆い、貯蔵物を収容する内空間を形成したことを特徴とする蓄熱体シートを用いた構造物。
【請求項8】前記貯蔵物が冷蔵を要するものであり、前記内空間を冷却する冷却装置が設けられたことを特徴とする請求項7記載の蓄熱体シートを用いた構造物。」

1b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・従来の冷蔵施設を建設するには多額の費用を必要とし、中小規模の施設、或いは簡易的な施設を構築するには不向きであるという課題があった。最近の農業では、農作物の多様化が進み、各農家が個別に出荷調整を行うことが求められてきているが、各農家が個別に出荷調整を行う場合は、中小規模、或いは簡単に組立解体できる簡易的な冷蔵施設で十分であり、構築コスト及びランニングコストの低いものでなければ普及しない。また、外気の温度変化に応じて単に内空間の温度を調整するのでは、低料金の夜間電力を利用したり、外気の温度変化を平均化して利用することができない。すなわち、余分なエネルギーを浪費し、ランニングコストを低減できないという課題があった。
【0004】そこで、本発明の目的は、内空間の温度を所定の範囲に維持する冷蔵施設等を、容易に構築でき、そのランニングコストを低減するための蓄熱体シート及び蓄熱体シートを用いた構造物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。すなわち、本発明に係る蓄熱体シートによれば、所定温度域でゲル化して蓄熱効果のある液相蓄熱体が、袋内に充填されて成る蓄熱体パックと、該蓄熱体パックを平面的に複数収納するよう、2枚の保護シートが縫合されて形成された複数のポケットを有するポケットシートとから成り、該ポケットシートに前記蓄熱体パックが収納されて形成されたことを特徴とする。
【0006】また、複数の前記蓄熱体パックが、帯状に連続して形成されていること、或いは、前記蓄熱体パックは、多数の小室に前記液相蓄熱体が分けられて充填され、シート状に形成されていることで、液相蓄熱体を片寄ることなく、効率良く平面的に配することができる。」

1c)「【0012】20は蓄熱体パックであり、所定温度域でゲル化して蓄熱効果のある液相蓄熱体22が、袋24内に充填されて成る。液相蓄熱体22は、所定温度域外ではゾル化しているが、例えば0°C?30°Cの温度域でゲル化するものを利用できる。なお、この温度域は液相蓄熱体22の成分を調整することで適宜調整することが可能である。この液相蓄熱体22は、ゾル状態とゲル状態との間の一種の相変化に伴って蓄熱し、或いは潜熱を放熱する。従って、液相蓄熱体22によれば、周囲の温度を所定の温度域に維持するように作用する。また、液相蓄熱体22を包装している袋24は、熱溶着によって袋状に形成され、液相蓄熱体22が充填された後は再び熱溶着によって封止できる樹脂シートによって形成されている。樹脂シートとしては、いわゆるビニール、ナイロン等の薄膜シートを利用できる。
【0013】30はポケットシートであり、蓄熱体パック20を平面的に複数収納するよう、2枚の保護シート40、40が縫合されて形成された複数のポケット32を有する。48は縫い目である。このポケットシート30の各ポケット32のそれぞれに、蓄熱体パック20が収納されている。これにより、ポケットシート30に蓄熱体パック20が収納されて、液相蓄熱体22が平面的に配された蓄熱体シート10を形成することができる。
【0014】本実施例によれば、蓄熱体パック20は、図1に示すように、複数が帯状に連続されて形成され、帯状パック26になっている。このように形成された帯状パック26が、細長く形成されたポケット32に挿入され、挿入口が縫合されることで閉じたポケット32内に収納される。・・・このように、蓄熱体パック20をポケット32内に収納することで、液相蓄熱体22を片寄ることなく、効率良く平面的に配した蓄熱体シート10を形成することができる。

1d)「【0017】そして、本実施例によれば、図2に示すように、以上のように形成された保護シート40が2枚重ねられて、所定の間隔をおいて縫合されることで、前述したポケット32が形成されている。また、そのポケット32内に、前述したように蓄熱体パック20が収納されている。・・・」

1e)「【0027】以上の実施例では冷蔵施設について説明したが、保温施設としても好適に利用できるのは勿論である。また、蓄熱体シート10、100は床に敷くことも可能であるし、多重に設置してもよい。・・・
【0028】
【発明の効果】本発明に係る蓄熱体シートによれば、液相蓄熱体が平面的に好適に収納され、巻き取ったり、折り畳んだりできるシート状に好適に形成されており、テント布のように取り扱うことができる。また、液相蓄熱体の蓄熱効果によって、この蓄熱シートで覆われた内空間の温度を好適に維持することができる。このため、本発明によれば、内空間の温度を所定の範囲に維持する冷蔵施設等を、容易に構築でき、そのランニングコストを低減することができるという著効を奏する。」

1f)図1の記載から、保護シート40、40が、所定の間隔をおいた細長く形成された複数のポケット32を形成する縫い目48を有することが看取できる。

1g)図1の記載から、複数の蓄熱材パック20が、境界部分を介して帯状に連続していることが看取できる。

上記1a)ないし1e)の記載及び1f)及び1g)の図示内容を総合すると、甲第65号証には、次の発明(以下「甲65発明」という)が記載されている。
「保護シート40、40を2枚重ねて、縫い目48によって所定の間隔をおいて縫合されることにより形成された、複数のポケット32を有するポケットシート30と、
前記ポケット32内に収納される複数の蓄熱体パック20と、を備える蓄熱体シートであって、
前記蓄熱体パック20は、熱溶着によって封止できる樹脂シートによって形成された袋24内に液相蓄熱体22が充填されており、複数の蓄熱体パック20が、境界部分を介して帯状に連続されて帯状パック26が形成され、
前記帯状パック26が、細長く形成されたポケット32に挿入され、挿入口が縫合されることで閉じたポケット32内に収納される蓄熱体シート。」

(2)甲第66号証
甲第66号証には、「寝具等用の帯状封入剤シート」に関して以下の事項が記載されている。
2a)「【請求項1】2枚合わせにした連続長の帯状不織布に、周辺を熱シールして長手方向に等間隔に形成したポケット内に、木炭粒、活性炭粒、乾燥笹の葉の細片、その他の粒状乃至細片状の封入剤を設定量宛封入して設けた、帯状封入剤シートであり、該帯状封入剤シートを目的寸法に切断して用いるように備えたことを特徴とする、
寝具等用の帯状封入剤シート。」

2b)「【0005】
【実施例1】次に、本発明の実施例につき説明すると、2枚合わせにした連続長の帯状不織布1に、周辺を熱シールして長手方向に等間隔に形成したポケット2内に、木炭粒、活性炭粒、乾燥笹の葉の細片、その他の粒状乃至細片状の封入剤3を設定量宛封入して設けた、帯状封入剤シートAであり、該帯状封入剤Aシートを目的寸法に切断して用いるように備えたものである。(図1、図2)」

2c)「【0006】
【実施例2】上記帯状封入剤シートAを目的に応じ設定長に切断して設けた切断封入剤シートA´を、不織布を2枚合わせにし、布団形、机形、その他の各種の平面形状若しくはその数分の1(図示例、1/3)の平面形状に形成した不織布シート4に周辺を熱シールして形成したポケット5内に挿入設置して、各種平面形状の封入剤シートBを設け、該封入剤シートBを布製その他のカバー6で被包して封入剤敷物等Cを設けたものである。(図3、図4)」

2d)「【0007】上記において、不織布シート4のポケット5に切断封入剤シートA´を挿入設置したとき、不織布シート4と帯状封入剤シートAの一部を重合して熱シールすることにより、ポケット5内の帯状封入剤シートAがずれ動かないように備える。」

2e)「【0009】封入剤3は、木炭粒、活性炭粒、木質の細片、乾燥笹の葉の細片、ボレーその他の多孔物質の粒状体、龍骨その他の漢方薬剤、その他の、遠赤外線効果、防除菌効果、防除臭効果、防除湿効果、各種薬理的効果等を発揮する粒状体乃至細片状体である。」

2f)「【0010】然して、本発明帯状封入剤シートAは、下記例のように使用する。敷布団略同じ平面形状若しくはその数分の1(例、1/3)の平面形状に形成した不織布シート4の各ポケット5に切断封入剤シートA´を封入して、封入剤シートBを設け、該シートBにカバー6を被せて、敷布団とシーツの中間に敷いて使用する封入剤敷物Cを設ける。(図3、図4参照)」

2g)図1、図2には、帯状封入剤シートAにおいて、封入剤3が封入されて設けられた複数のポケット2が、境界部分を設けて形成されていることが図示されている。

2h)図3には、不織布シート4を熱シールすることによって、長手方向に設けた複数のポケット5が上下方向に3箇所形成されていること、最上段には、切断封入剤シートA´が矢印方向に挿入されること、中段と、最下段には、長手方向に設けた複数のポケット5に切断封入剤シートA´が封入されたものが図示されている。

2i)図4には、封入剤シートBを、縫着によって区分された収容室を備えたカバー6に挿入設置することが図示されている。

上記2a)ないし2f)の記載及び2g)ないし2i)の図示内容から、甲第66号証には、次の発明(以下「甲66発明」という)が記載されている。
「2枚合わせにした不織布シート4を熱シールすることによって形成された複数のポケット5を備える封入剤シートBと、
前記複数のポケット5内に、2枚合わせにした連続長の帯状不織布1に、周辺を熱シールして、長手方向に境界部分を設けることにより形成した複数のポケット2内に、木炭粒、活性炭粒、乾燥笹の葉の細片、その他の粒状乃至細片状の封入剤3を設定量封入して設けた複数の切断封入剤シートA′を挿入設置して、
封入剤シートBにおける不織布シート4と切断封入剤シートA′の一部を重合して熱シールを行った、封入剤シートBからなる寝具等用の帯状封入剤シート。」

(3)甲第67号証
甲第67号証には、「洗濯可能な羽毛掛け布団」に関して、以下の事項が記載されている。
3a)「【請求項1】
表生地と中間生地と裏生地とで構成され、該表生地と該中間生地の間には、羽毛が収納されていると共に、該羽毛の移動を防止するため、該表生地と該中間生地にはキルティングが施されており、該中間生地と該裏地の間は、該中間生地及び該裏生地に縫着された立体マチによって複数個の室に分割されていると共に、各室内に羽毛入り中袋を出し入れ自在に装着しうることを特徴とする洗濯可能な羽毛掛け布団。」

3b)「【0011】
本発明に係る洗濯可能な羽毛掛け布団は、基本的に、表生地1と中間生地2と裏生地3とで構成されている。しかるに、図1に示すように、通常の使用状態では、一般的な羽毛掛け布団と何ら変わるところはない。すなわち、表生地1と裏生地3とが両表面に現れ、羽毛掛け布団の横の一端において、表生地1又は中間生地2と裏生地3との接合部11を有している。この接合部11は、例えば、表生地1又は中間生地2と裏生地3に、ファスナー,面ファスナー,紐及びフックなどの公知の開閉具を取り付ければよい。」

3c)「【0018】
立体マチ5及び羽毛入り中袋7には、両者を係合しうる係合具が、各々設けられている。
すなわち、立体マチ5には、係合具15が設けられており、羽毛入り中袋7には、係合具17が設けられている。係合具17が図2に示したようなループの場合には、係合具15は面ファスナーテープや紐などが用いられる。また、係合具17がホックの雄である場合には、係合具15はホックの雌が用いられる。もちろん、係合具15と17とは逆転させてもよく、係合具15がループになると、係合具17は面ファスナーテープや紐などとなる。また、係合具15を立体マチ5に設けずに、表生地1,中間生地2又は裏生地3に設けてもよいことも、言うまでもないことである。」

3d)「【0022】
本発明に係る洗濯可能な羽毛掛け布団は、以下のようにして使用する。すなわち、冬季においては、羽毛入り中袋7,7・・・を、各室6,6・・・に入れて、立体マチ5など及び羽毛入り中袋7に設けられた各係合具15及び17を係合して装着し、その後、羽毛掛け布団の横の一端に設けられた接合部11を閉じて、羽毛掛け布団として使用する。冬季以外の季節(春,秋乃至は夏)においては、各室6,6・・・に装着されている羽毛入り中袋7を取り出して、羽毛掛け布団として使用する。また、この羽毛掛け布団を洗濯する場合には、取り出した羽毛入り中袋7を、各々、家庭用洗濯機で洗濯する。また、羽毛入り中袋7を取り出せば、表生地1と中間生地2の間に収納されている羽毛の量は少ないので、これら全体を家庭用洗濯機で洗濯する。そして、洗濯後には、乾燥を行うが、さらにビーティングを行うと、充填されている羽毛の動きが大きくなり嵩高性が回復しやすくなるので好ましい。」
上記3a)ないし3d)の記載から、甲第67号証には、以下の事項が記載されている。
「表生地1と中間生地2と裏生地3とで構成され、該表生地1と該中間生地2の間には、羽毛が収納されていると共に、該羽毛の移動を防止するため、該表生地1と該中間生地2にはキルティングが施されており、該中間生地2と該裏地3の間は、該中間生地2及び該裏生地3に縫着された立体マチ5によって複数個の室6に分割されていると共に、各室内に羽毛入り中袋7を出し入れ自在に装着しうるものであって、立体マチ5には、係合具15が設けられており、羽毛入り中袋7には、係合具17が設けられており、
羽毛入り中袋7を、各室6に入れて、立体マチ5及び羽毛入り中袋7に設けられた各係合具15及び17を係合して装着し、その後、羽毛掛け布団の横の一端に設けられた接合部11を閉じて、羽毛掛け布団として使用する洗濯可能な羽毛掛け布団。」

(4)甲第68号証
甲第68号証には、「敷布団」に関して、以下の事項が記載されている。
4a)「【請求項1】表裏側生地の内部に中綿とクッション部材とを配置した敷布団において、
内部に保冷部材が封入された袋体を、前記クッション部材及び前記中綿と共に前記表裏側生地の内部に配置したことを特徴とする敷布団。」

4b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、保冷部材を用いて清涼感を得る敷布団に関するものである。」

4c)「【0015】本実施例の布団1は、表側生地2と、保冷部材7が封入された袋体3と、その袋体3と表側生地2との間に配置された上側綿4と、その袋体3の下部に配置されたクッション部材8と、そのクッション部材8と裏側生地5との間に配置された下側綿6とから構成されている。
【0016】前記表裏側生地2、5は、綿や麻、ウール、絹等の植物や動物の天然繊維紡糸や、ナイロンやポリエステル、アクリル、ビニロン等の合成繊維紡糸、レーヨンやアセテート等の再生繊維紡糸等から織られたものが使用されている」

4d)「【0017】前記袋体3は、保冷部材7が洩れることのない軟質合成樹脂膜、例えば塩化ビニールから形成さている。その袋体3は、保冷部材7の片寄りを防止するため、外周を高周波溶着によりシールされた複数の筒状の密閉袋が連続したマット状に構成され、各々の筒状袋の内部に保冷部材7が封入されている。」

4e)「【0022】前記袋体3は、複数の筒状密閉袋毎に適当な間隔を設けた箇所に、その袋体3と、前記クッション部材8とを前記表裏側生地2、5に固定するために、キルティング加工を施している。」

(5)甲第69号証
甲第69号証には、「裁縫用目印付着具」に関して、以下の事項が記載されている。
5a)「本発明は、裁縫作業において布地を裁断又は縫合する際、その処理をすべき線を表示するのに用いる器具に関する」(公報第1頁左欄第11?13行)

5b)「本発明の用具に使用されるインキとしては、付着した目印が長期間残留しても差支えない場合には、一般の染料溶液を用い、・・・また、コバルト・ニッケル錯塩のエチレングリコール溶液に保留剤として非イオン界面活性剤を入れたものをインキとして用いると、青色の目印を付することができるが、この目印は数時間後に空気酸化によって自然に消滅する。」(公報第2頁右上欄第6?18行)

(6)甲第70号証
甲第70号証には、「ウオーターマットレス」に関して、以下の事項が記載されている。
6a)「【請求項1】 マットレスの幅方向の長さに略一致させた長さの合成樹脂製円筒バック(10)の適所に、逆止弁(21)と密閉蓋(22)とを有した注水口(20)を設け、
上記合成樹脂製円筒バック(10)に水を注入して注水口(20)を密閉したものを、複数本をその長手方向をマットレス幅方向に向けて並べて、マットレスカバー(30)内に収納してなるウオーターマットレス。」

6b)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、水をクッション材として使用した、ウオーターマットレス(ウオーターベットのマットを含む。)に関するものである。」

6c)「【0026】
上記合成樹脂製円筒バック10に水を注入するに際して、所定量の防腐剤を混入するとよく、また、合成樹脂製円筒バック10の素材自体に抗菌財を混入しておくこともよい。また、先述もしたように合成樹脂製円筒バック10への水の注入量は適宜調整するものとし、その注水量は合成樹脂製円筒バック10の容量の60?90%程度が最も適しているものであることが試験の結果判明した。」

(7)甲第71号証
甲第71号証には、「冷感マット」に関して、以下の事項が記載されている。
7a)「【0008】
本発明の冷感マットは、保冷パックと、保冷パックを内部に収容し得る柔軟なカバーとからなる冷感マットにおいて、保冷パックは、扁平な袋体に保冷材及び無機微粒子の混合物を充填密封した扁平な形状有し、カバーは、内部に保冷パックを収容し得る複数の収納室を有する扁平な形状を有していることを特徴とするものである。
この無機微粒子は、無水超微粒子シリカ、含水ケイ酸微粒子、アルミナ超微粒子から選ばれた少なくとも1種の無機微粒子であることが好ましい。」

7b)「【0015】
上記の冷感マットを使用するときには、カバー10のファスナーの金具11をスライドさせて収納室10aを開口させ、各収納室10aにそれぞれ1個ずつ保冷パック20を挿入し、金具11をスライドさせて収納室10aの開口を閉じる。
これを例えば、椅子の座面に載せ、その上に座ると、太腿の裏側から臀部の広範囲にかけて徐々にひんやりと冷たさを感じ、その冷感が数時間持続する。
冷感を感じなくなったときには、使用をやめ、混合物内の結晶化が進むまでしばらく放置するか、カバー10内から保冷パック20を取り出し、冷蔵庫や冷凍庫に入れ、結晶化を促進させ、混合物が凍結する前に取り出して再使用すればよい。」

7c)「【0018】
また、例えば、上記実施例において、冷感マットの中央の縫い目に沿って、また、各収納室の短辺と平行で、収納室の略中央を通る直線に沿って、各収納室の開口を設け、さらに必要に応じてその開口部の形状を工夫することなどにより、この冷感マットを持ち上げたときに、開口から保冷パックが脱落しなければ、ファスナーは使用しなくてもよい。
また、その使用目的も座布団に限定されるものではなく、例えば、枕、敷布、車椅子の座布団や背もたれパッド、ベビーカーやチャイルドシートの敷きパッドなどに使用してもよい。
さらに、その使用目的は、人間に限定されず、例えば、犬や猫などのペット用のマットとして使用してもよい。
また、複数の冷感マットを寝具上に敷くなどのように、複数の冷感マットを組み合わせて使用してもよい。」

上記7a)ないし7c)の記載から、甲第71号証には以下の事項が記載されている。
「保冷パックと、保冷パックを内部に収容し得る柔軟なカバーとからなる冷感マットにおいて、保冷パックは、扁平な袋体に保冷材及び無機微粒子の混合物を充填密封した扁平な形状を有し、カバーは、内部に保冷パックを収容し得る複数の収納室を有する扁平な形状を有している冷感マット。」

(8)甲第80号証
甲第80号証には、「炭入り寝具マット及び掛け布団」に関して、以下の事項が記載されている。
8a)「【請求項1】体積抵抗率が0.5?200Ω・cm、平均粒度が2?10mmである炭粒体と、該炭粒体の平均粒度より小さい内径を有する合成樹脂製小パイプを混合し、見かけ比重を0.1?0.5g/ccの範囲に調整し、その混合物を、重ね合わせた一対の不織布を所定間隔に縫製しこれによって形成された複数列のチャンバを有するマット本体の各チャンバに充填せしめたことを特徴とする炭入り寝具用マット。
【請求項2】前記不織布が、目付50?750g/m^(2)であることを特徴とする請求項1に記載の炭入り寝具用マット。
【請求項3】前記マット本体の各チャンバに、炭粒体と合成樹脂製小パイプの混合物を充填する際、中央部の複数列の各チャンバには綿を充填し、残余のチャンバには、その周縁部側に向って順次炭粒体の混合比率を高めた混合物を充填することを特徴とする請求項1に記載の炭入り寝具用マット。」

8b)「【0023】
【発明の効果】本発明の炭入り寝具用マットによれば、脱臭性及び脱湿性に優れ、使用者の体臭が染み込み介護者に不快感を与える可能性がある介護用寝具として極めて有効である。」

(9)甲第81号証
甲第81号証には、「寝具」に関して、以下の事項が記載されている。
9a)「【請求項1】
融点が約25?35℃の範囲の蓄熱材を内包する複数のマイクロカプセルからなる造粒物が、通気性のある布帛で保持された寝具。」

9b)「【0001】
本発明は、掛け布団、敷き布団、毛布、マットレス、ベッドパッド、シーツ及び枕などの寝具に関するものであり、環境温度が不快な領域に変化しても快適な温度と寝心地、通気性、風合いが維持される温度緩衝性に優れた寝具に関するものである。」

(10)甲第82号証
甲第82号証には、「竹炭入りマット」に関して、以下の事項が記載されている。
10a)「【請求項1】通気性材料からなる袋状のマット本体を備え、
このマット本体内に竹炭を収納したことを特徴とする竹炭入りマット。
【請求項2】前記マット本体が、平面縦横に並列する多数の空間部を内部に有する第一袋体と、この第一袋体の各空間部に収納された竹炭入りの多数の第二袋体とによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の竹炭入りマット。
【請求項3】前記通気性材料が、不織布からなることを特徴とする請求項1または2記載の竹炭入りマット。」

10b)「【0023】このように寝具用マットとして用いると、睡眠している間に、次に示すような竹炭4の効能○1?○5を受けることができる。
○1 遠赤外線による保温・蓄熱作用によって肩こりや足等の冷えを解消する。
○2 マイナスイオンによるヒーリング作用によって精神安定,疲労回復および安眠等を促進する。
○3 吸着力(木炭の数?十倍)による吸着作用によって寝具の湿度を調整する。
○4 アルカリ性による殺菌作用によって、寝具へのだに等の寄りつきを抑制する。
○5 吸汗作用によって寝汗を吸収する(パイル綿のマットカバー2とマット本体3の組み合わせ使用によって効能が倍加する)。」(「○1?○5」は、それぞれ、○の中に1?○の中に5を表す。)

2.対比・判断
本件特許発明1と、甲65発明とを対比すると、甲65発明の「保護シート40、40」は、本件特許発明1の「第1カバー及び第2カバー」に相当し、甲65発明の「2枚重ね」ることは、本件特許発明1の「重ねあわせ」ることに相当し、甲65発明の「縫い目48」の方向は、「保護シート40、40」に、「複数のポケット32」を形成する方向であって、本件特許発明1における「縦方向」であるといえるから、甲65発明の「縫い目48によって所定の間隔をおいて縫合される」ことは、本件特許発明1の「縦方向固着部によって仕切られる」ことに相当し、甲65発明の「ポケット32」は、本件特許発明1の「収容室」に相当し、甲65発明の「ポケットシート30」は、本件特許発明1の「袋状のカバー」に相当し、甲65発明の「蓄熱体パック20」は、本件特許発明1の「蓄熱材パック」に相当し、甲65発明の「熱溶着によって封止できる樹脂シートによって形成された袋24」は、本件特許発明1の「ラミネートフィルム」に相当し、甲65発明の「液相蓄熱体22」は、本件特許発明1の「蓄熱材」に相当し、甲65発明の「充填」されることは、本件特許発明1の「封入」することに相当し、甲65発明の「複数の蓄熱体パック20が、境界部分を介して帯状に連続され」て「形成」された「帯状パック26」は、本件特許発明1における「複数個の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態」をなす「蓄熱材パック」に相当し、甲65発明における「ポケット32に挿入」することは、本件特許発明1における「収容室」に「収容」することに相当する。
そして、甲65発明の「蓄熱体シート」と、本件特許発明1の「蓄熱材マット」とは、「蓄熱材面状体」であることにおいて共通する。

そうすると、両者は、次の点で一致する。

[一致点]
「第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材面状体であって、
前記蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなしている蓄熱材面状体。」

そして、両者は、次の点で相違する。

[相違点1]
蓄熱材面状体が、本件特許発明1においては、「蓄熱材マット」であるのに対して、甲65発明においては、「蓄熱材シート」である点。

[相違点2]
収容室内に収容された複数の蓄熱材パックに関して、本件特許発明1においては、各蓄熱材パックの「横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されている」のに対して、甲65発明においては、帯状パック26が、保護シート40に対して固着されているか不明である点。

以下、相違点について検討する。

[相違点1について]
甲65発明における「蓄熱材シート」は、「液相蓄熱体が平面的に好適に収納され、巻き取ったり、折り畳んだりできるシート状に好適に形成されており、テント布のように取り扱うことができる。また、液相蓄熱体の蓄熱効果によって、この蓄熱シートで覆われた内空間の温度を好適に維持することができる」ものであって、空間内の温度を調整するものである一方、「蓄熱体シート10、100は床に敷くことも可能である」(第7.1.(1)、1e)【0027】、【0028】の記載参照)と、床に敷いて用いることの示唆もあるから、甲65発明の「蓄熱材シート」を床に敷く「蓄熱材マット」とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2について]
まず、甲第66号証、及び甲第67号証に、上記相違点2に係る本件特許発明1の、各蓄熱材パックにおける「横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されている」について記載や示唆があるかどうかについて検討する。
甲第66号証には、寝具等用の帯状封入剤シートに関して、「2枚合わせにした不織布シート4を熱シールすることによって形成された複数のポケット5を備える封入剤シートBと、前記複数のポケット5内に、2枚合わせにした連続長の帯状不織布1に、周辺を熱シールして、長手方向に境界部分を設けることにより形成した複数のポケット2内に、木炭粒、活性炭粒、乾燥笹の葉の細片、その他の粒状乃至細片状の封入剤3を設定量封入して設けた複数の切断封入剤シートA′を挿入設置して、封入剤シートBにおける不織布シート4と切断封入剤シートA′の一部を重合して熱シールを行」うという発明が記載されているに過ぎない。
この点について請求人は、甲第66号証に開示された発明は、「帯状封入剤シートA(蓄熱材パック)における短手方向(横方向)に延在する右辺(上縁部)のみが熱シール部分(横方向固着部)によって不織布シート4に重合し、短手方向(横方向)に延在する左辺(下縁部)が熱シール部分(横方向固着部)に重合していない」(審判請求書第64頁)と主張するが、請求人が主張するとおり、「帯状封入剤シートAにおける短手方向に延在する右辺(上縁部)が熱シール部分(横方向固着部)によって不織布シート4に重合」していることが図3の図示内容からうかがえるとしても、それ故に、帯状封入剤シートAの短手方向に延在する左辺(下縁部)までもが、熱シール部分(横方向固着部)によって不織布シート4に重合することについての記載や示唆がなされているとはいえない。
さらに、甲第67号証には、羽毛掛け布団に関して、「表生地1と中間生地2と裏生地3とで構成され、該表生地1と該中間生地2の間には、羽毛が収納されていると共に、該羽毛の移動を防止するため、該表生地1と該中間生地2にはキルティングが施されており、該中間生地2と該裏地3の間は、該中間生地2及び該裏生地3に縫着された立体マチ5によって複数個の室6に分割されていると共に、各室内に羽毛入り中袋7を出し入れ自在に装着しうるものであって、立体マチ5には、係合具15が設けられており、羽毛入り中袋7には、係合具17が設けられており、
羽毛入り中袋7を、各室6に入れて、立体マチ5及び羽毛入り中袋7に設けられた各係合具15及び17を係合して装着し、その後、羽毛掛け布団の横の一端に設けられた接合部11を閉じて、羽毛掛け布団として使用する洗濯可能な羽毛掛け布団」という事項が記載されているに過ぎない。
この点について請求人は、甲第67号証には、「中間生地2と裏地3の間に複数の室6,6・・・を形成し、各室6,6・・・に中袋7を入れ、各室6,6・・・両開口に設けられた係止具15に中袋7の両端に設けられた係止具17を固着する構成が開示されています」(審判請求書第65頁)と主張するが、羽毛入り中袋7の短手方向に延在する左辺(下縁部)において、そもそも係合具17とそれに対応する係合具15が設けられているか不明であって、係合具15と係合具17によって立体マチ5に対して係合して装着することについての記載や示唆がなされているとはいえない。
したがって、甲66発明、甲第67号証において、上記相違点2に係る本件特許発明1における「横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されている」ことの記載や示唆がなされているとはいえない。
よって、甲65発明において、上記相違点2に係る本件特許発明1とすることが当業者が容易になし得たとすることはできない。
さらに、甲第68号証ないし甲第70号証、及び甲第80号証、甲第81号証のいずれにも上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は記載されておらず、また、示唆する記載も見当たらない。

3.小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲65発明、甲66発明、甲第67号証、甲第68号証ないし甲第70号証、甲第80号証、甲第81号証の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に該当するとはいえない。

4.本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、いずれも本件特許発明1あるいは、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし5を引用するものであるところ、本件特許発明1が、上記のとおり当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、本件特許発明2ないし6についても同様に、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定に該当するとはいえない。

第8.無効理由4について
1.各甲号証の記載事項
各甲号証の記載事項については、上記「第7.1.各甲号証の記載事項」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本件特許発明1と、甲66発明とを対比すると、甲66発明の「2枚合わせ」にすることは、本件特許発明の「重ね合わせる」ことに相当し、甲66発明の「不織布シート4」は、本件特許発明の「第1カバー及び第2カバー」に相当し、甲66発明の「熱シールすることによって形成された」ことは、熱シールは、複数の収容室を形成する方向であって、本件特許発明1における「縦方向」であるといえるから、本件特許発明1の「縦方向固着部によって仕切られた」ことに相当し、甲66発明の「複数のポケット5」は、本件特許発明1の「複数の収容室」に相当し、甲66発明の「封入剤シートB」は、本件特許発明1の「袋状のカバー」に相当し、甲66発明の「ポケット5内」に「挿入設置」することは、本件特許発明1の「収容室内」に「収容」することに相当する。
そして、甲66発明の「2枚合わせにした連続長の帯状不織布1に、周辺を熱シールして、長手方向に境界部分を設けることにより形成した複数のポケット2内に、木炭粒、活性炭粒、乾燥笹の葉の細片、その他の粒状乃至細片状の封入剤3を設定量封入して設けた」、「切断封入剤シートA′」と、本件特許発明1の「ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなして」いる「蓄熱材パック」とは、「複数個連結形態をなす収容部に封入物を入れたパック」であることにおいて共通し、
さらに、甲66発明の「寝具等用の帯状封入剤シート」と、本件特許発明1の「蓄熱材マット」とは、「マット」であることにおいて共通する。

そうすると、両者は、次の点で一致する。

[一致点]
「第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の複数個連結形態をなす収容部に封入物を入れたパックと、を備えるマット。」

[相違点1]
複数個連結形態をなす収容部に封入物を入れたパックが、本件特許発明1においては、「蓄熱材パック」であって、「ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなして」いるものであるのに対して、
甲66発明においては、「切断封入剤シートA′」であって、「2枚合わせにした連続長の帯状不織布1に、周辺を熱シールして、長手方向に境界部分を設けることにより形成した複数のポケット2内に、木炭粒、活性炭粒、乾燥笹の葉の細片、その他の粒状乃至細片状の封入剤3を設定量封入して設けた」ものである点。

[相違点2]
封入物を入れたパックが、本件特許発明1においては、「横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によってカバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていない」のに対して、
甲66発明においては、封入剤シートBにおける不織布シート4と切断封入剤シートA′の一部を重合して熱シールを行なうというにとどまり、不織布シート4と切断封入剤シートA′のどの部分を重合して熱シールを行なうのか不明である点。

[相違点3]
マットが、本件特許発明1においては、「蓄熱材マット」であるのに対して、甲66発明においては、「寝具等用の帯状封入剤シート」である点。

以下、相違点について検討する。

[相違点1について]
甲第71号証には、「保冷パックと、保冷パックを内部に収容し得る柔軟なカバーとからなる冷感マット」であって、「保冷パックは、扁平な袋体に保冷材及び無機微粒子の混合物を充填密封した扁平な形状を有し、カバーは、内部に保冷パックを収容し得る複数の収納室を有する扁平な形状を有」することが記載されているから、袋状カバーの複数の収納室に収容する「封入物を入れたパック」は、甲第71号証の記載事項においては「保冷材を充填密封した偏平な形状を有する保冷パック」であるといえる。
しかしながら、甲第71号証の記載事項における「保冷材を充填密封した偏平な形状を有する保冷パック」は、「複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態」をなすものではないから、甲66発明の「切断封入剤シートA′」に代えて甲第71号証の記載事項における「保冷材を充填密封した偏平な形状を有する保冷パック」を採用したとしても、上記相違点1に係る本件特許発明1のものとなるとはいえない。
さらに、甲66発明の切断封入剤シートA′における、木炭粒、活性炭粒、木質の細片、乾燥笹の葉の細片、その他の多孔物質の粒状体乃至細片状の封入剤に代えて蓄熱材を採用する動機付けがあるともいえない。

よって、上記相違点1に係る本件特許発明は、甲66発明及び甲第71号証の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

[相違点2について]
まず、甲第67号証に、上記相違点2に係る本件特許発明1の、各蓄熱材パックにおける「横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されている」について記載や示唆があるかどうかについて検討する。
甲第67号証には、羽毛掛け布団に関して、「表生地1と中間生地2と裏生地3とで構成され、該表生地1と該中間生地2の間には、羽毛が収納されていると共に、該羽毛の移動を防止するため、該表生地1と該中間生地2にはキルティングが施されており、該中間生地2と該裏地3の間は、該中間生地2及び該裏生地3に縫着された立体マチ5によって複数個の室6に分割されていると共に、各室内に羽毛入り中袋7を出し入れ自在に装着しうるものであって、立体マチ5には、係合具15が設けられており、羽毛入り中袋7には、係合具17が設けられており、
羽毛入り中袋7を、各室6に入れて、立体マチ5及び羽毛入り中袋7に設けられた各係合具15及び17を係合して装着し、その後、羽毛掛け布団の横の一端に設けられた接合部11を閉じて、羽毛掛け布団として使用する洗濯可能な羽毛掛け布団」という事項が記載されているに過ぎない。
この点について請求人は、甲第67号証には、「中間生地2と裏地3の間に複数の室6,6・・・を形成し、各室6,6・・・に中袋7を入れ、各室6,6・・・両開口に設けられた係止具15に中袋7の両端に設けられた係止具17を固着する構成が開示されています」(審判請求書第71頁)と主張するが、羽毛入り中袋7の短手方向に延在する左辺(下縁部)において、そもそも係合具17とそれに対応する係合具15が設けられているか不明であって、係合具15と係合具17によって立体マチ5に対して係合して装着することについての記載や示唆がなされているとはいえない。
次に、甲第71号証の記載事項について検討すると、甲第71号証の「カバー10のファスナーの金具11をスライドさせて収納室10aを開口させ、各収納室10aにそれぞれ1個ずつ保冷パック20を挿入し、金具11をスライドさせて収納室10aの開口を閉じる」(第7.1.(7)7b))の記載からみて、カバー10とカバー10に挿入される保冷パック20が互いに固着されるものではないことは明らかである。
したがって、甲第67号証、甲第71号証において、上記相違点2に係る本件特許発明1における「横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によってカバーに固着されている」ことの記載や示唆がなされているとはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲66発明、甲第67号証の記載事項及び甲第71号証の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
さらに、甲第68号証ないし甲第70号証の記載事項、及び甲第80号証、甲第82号証の記載事項のいずれにも、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は記載されておらず、また、示唆する記載も見当たらない。

[相違点3について]
上記[相違点1について]において判断したとおり、甲66発明の切断封入剤シートA′における、木炭粒、活性炭粒、木質の細片、乾燥笹の葉の細片、その他の多孔物質の粒状体乃至細片状の封入剤を蓄熱材とすることができないのであるから、甲66発明における「寝具等用の帯状封入剤シート」を、本件特許発明1における「蓄熱材マット」とすることが、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。

3.小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲66発明、甲第67号証の記載事項及び甲第71号証の記載事項、甲第68号証ないし甲第70号証の記載事項、及び甲第80号証、甲第82号証の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に該当するとはいえない。

4.本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、いずれも本件特許発明1あるいは、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし5を引用するものであるところ、本件特許発明1が、上記のとおり当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、本件特許発明2ないし6についても同様に、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定に該当するとはいえない。

第9.無効理由5について
1.補正の内容
(1)請求項1に係る本件補正1は次のとおりである。
「【請求項1】
ラミネートフィルム内に蓄熱材を封入した複数の蓄熱材パックと、
蓄熱材パックを対応する複数の収容室の内部に収容するカバーと、を備える蓄熱材マットであって、
蓄熱材パックの周縁がカバーに対して固着されていることを特徴とする蓄熱材マット。」を、
「【請求項1】
第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材マットであって、
前記蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなしており、
前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が前記カバーに固着されていないことを特徴とする蓄熱材マット。」と補正する。

(2)請求項1に係る本件補正2は次のとおりである。
「【請求項1】
第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材マットであって、
前記蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなしており、
前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が前記カバーに固着されていないことを特徴とする蓄熱材マット。」を、
「【請求項1】
第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材マットであって、
前記蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなしており、
前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていないことを特徴とする蓄熱材マット。」と補正する。

したがって、本件補正1、2により請求項1の記載は、出願当初の、
「【請求項1】
ラミネートフィルム内に蓄熱材を封入した複数の蓄熱材パックと、
蓄熱材パックを対応する複数の収容室の内部に収容するカバーと、を備える蓄熱材マットであって、
蓄熱材パックの周縁がカバーに対して固着されていることを特徴とする蓄熱材マット。」から、
「【請求項1】
第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、
前記収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材マットであって、
前記蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなしており、
前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていないことを特徴とする蓄熱材マット。」(下線部は、出願当初のものに対する補正箇所を示す。)と補正されたものである。

そこで、この補正後の請求項1の記載が、出願当初の明細書等に記載されている事項の範囲内のものであるかどうかについて以下検討する。

2.出願当初の明細書等に記載されている事項について
(1)明細書の記載
(1-1)「【請求項1】
・・・
蓄熱材パックの周縁がカバーに対して固着されていることを特徴とする蓄熱材マット。」
(1-2)「【0010】
上記構成の蓄熱材マットによれば、蓄熱材パックの周縁がカバーに対して固着されていることにより、カバーと蓄熱材パックとが一体化される。・・・」
(1-3)「【0017】
図1は、本発明に係る蓄熱材マット1を説明する模式図である。図1において、蓄熱材マット1の内部構造が分かるように、内部に収容されている蓄熱材パック60を一点鎖線で示している。また、固着用目印70を二点鎖線で示している。縦方向固着部40,41及び横方向固着部50,51を点線で示している。図2は、図1に示した蓄熱材マット1の一部断面図である。」
(1-4)「【0018】
大略矩形形状をした蓄熱材マット1は、図1に模式的に示すように、綿やレーヨンやポリエステル等の布素材からなる上カバー10と下カバー20とを重ね合わせてその上下方向の周縁端部を縫製して、上下方向に延在する周縁端部側の縦方向固着部41を左右に形成する。上カバー10と下カバー20とは、袋状に一体化される。周縁端部側の縦方向固着部41は、縫着又は接着又は熱融着によって形成されている。
【0019】
周縁端部側の縦方向固着部41と隣接する中央側(非周縁端部側)の縦方向固着部40との間、あるいは中央側(非周縁端部側)の各縦方向固着部40の間には、それぞれ収容室30が形成される。各収容室30は、縦方向固着部40,41に対して並行に延在している。図1においては、左右の周縁端部側の縦方向固着部41と、7個の非周縁端部側の各縦方向固着部40と、8個の収容室30が図示されている。・・・」
(1-5)「【0020】
このように構成されたカバーの各収容室30には、蓄熱材パック60がそれぞれ収容される。収容室30に収容された蓄熱材パック60は、縫着又は接着又は熱融着によってカバー10,20に対して固着される。その結果、蓄熱材マット1の上下の周縁端部には、横方向固着部51が形成される。」
(1-6)「【0021】
蓄熱材パック60は、ナイロンフィルムとポリエチレンフィルムとを積層した上下のラミネートフィルム62を重ね合わせて三辺を熱圧着(熱融着)して袋状体を形成し、形成された袋状空間に蓄熱材64を封入したあと開口部を熱圧着して閉止したものである。蓄熱材パック60は、収容室30に挿入可能であるように寸法構成されている。・・」
(1-7)「【0023】
蓄熱材パック60は、一つの蓄熱材パック要素66だけが上下方向に延在して、蓄熱材パック60の上縁部と下縁部とがカバー10,20に固着されている単一形態であってもよい。好ましくは、上下方向に配置される複数の小分けされた蓄熱材パック要素66が、境界部分68を介して連結されている複数個連結形態である。図1に示した実施例では、一列に9個の蓄熱材パック要素66が整列配置されている。したがって、図1に示した蓄熱材マット1は、全体として、9(個)×8(列)=72個の蓄熱材パック要素66を備えている。・・・」

(2)図1、図2の図示内容
図1から、少なくとも次の事項が窺える。
(2-1)蓄熱材マット1の左右両端部近傍における縦方向の点線41(縦方向固着部41)の間に、縦方向の点線(縦方向固着部40)が7本引かれ、蓄熱材マット1が8つの部分に区切られており、蓄熱材マット1の上下端部近傍にそれぞれ横方向の点線51(横方向固着部51)が引かれていること。
(2-2)縦方向の点線41(縦方向固着部41)と、縦方向の点線(縦方向固着部40)とに対して、上端部の横方向の点線51(横方向固着部51)から下端部の点線51(横方向固着部51)に至る縦方向の一点鎖線が、それぞれ間隔を有して引かれていること。

図2から、少なくとも次の事項が窺える。
(2-3)蓄熱材パック60は、上カバー10下面と下カバー20上面との間における収容室30に位置すること。
(2-4)収容室30内の蓄熱材パック60の左端と右端は、それぞれ上カバー10と下カバー20とが接している、符号50,68、符号68で示される部分から、それぞれ間隔を有していること。

3.判断
(1)請求項1の記載のうち、「第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、収容室内に収容された複数の蓄熱材パックと、を備える蓄熱材マット」について

記載事項(1-4)には、蓄熱材マット1が、上カバー10と下カバー20とを重ね合わせて袋状に一体化されることにより形成されるとともに、周縁端部側の縦方向固着部41や中央側の縦方向固着部40により上カバー10と下カバー20とを固着することにより、8個の収容室30を形成することが記載されている。
記載事項(1-5)には、カバーの各収容室30に、蓄熱材パック60がそれぞれ収容されることが記載されている。
そして、以上の記載から、出願当初の明細書には、「第1カバー及び第2カバーを重ね合わせて、縦方向固着部によって仕切られた複数の収容室を有する袋状のカバーと、収容室内に収容された複数の蓄熱材パック、とを備える蓄熱材マット」が記載されていたものと認められる。

(2)請求項1の記載のうち、「蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなして」いるについて、

記載事項(1-6)には、蓄熱材パック60が、上下のラミネートフィルム62を重ね合わせて袋状体を形成し、形成された袋状空間に蓄熱材64を封入したものであることが記載されている。
記載事項(1-7)には、蓄熱材パック60が、上下方向に配置される複数の小分けされた蓄熱材パック要素66が、境界部分68を介して連結されている複数個連結形態からなるものであることについて記載されている。
そして、以上の記載から、出願当初の明細書には、「蓄熱材パックは、ラミネートフィルム内に蓄熱材が封入されており、複数の蓄熱材パック要素が境界部分を介して連結されている複数個連結形態をなして」いることが記載されていたものと認められる。

(3)請求項1の記載のうち、「収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されている」について

記載事項(1-1)、(1-2)には、蓄熱材パックの周縁がカバーに対して固着されていることが記載されている。
また、記載事項(1-4)には、周縁端部側の縦方向固着部41や中央側の縦方向固着部40により上カバー10と下カバー20とを固着することにより8個の収容室30を形成することが記載されている。
そして、これらの事項と、記載事項(1-5)「このように構成されたカバーの各収容室30には、蓄熱材パック60がそれぞれ収容される。収容室30に収容された蓄熱材パック60は、縫着又は接着又は熱融着によってカバー10,20に対して固着される。その結果、蓄熱材マット1の上下の周縁端部には、横方向固着部51が形成される。」から、少なくとも、各収容室30に収容された蓄熱材パック60が、カバー10,20に対して固着されることによって、蓄熱材マット1の上下の周縁端部に横方向固着部51が形成されるといえる。
さらに、記載事項(1-7)「【0023】
蓄熱材パック60は、一つの蓄熱材パック要素66だけが上下方向に延在して、蓄熱材パック60の上縁部と下縁部とがカバー10,20に固着されている単一形態であってもよい。好ましくは、上下方向に配置される複数の小分けされた蓄熱材パック要素66が、境界部分68を介して連結されている複数個連結形態である。・・・」は、蓄熱材パック60の上縁部、下縁部とカバー10,20との固着に関する記載であるから、蓄熱材パック要素66が、単一のものであっても、複数個連結形態のものであっても、蓄熱材パック60の上縁部と下縁部とが、カバー10,20に対して固着されることを意味すると解せられる。
そして、以上の記載を総合すると、少なくとも各収容室30に収容された蓄熱材パック60の上縁部と下縁部とが、カバー10,20に対して固着されることによって、蓄熱材マット1の上下の周縁端部に横方向固着部51が形成されるといえるから、
出願当初の明細書には「収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されている」ことが記載されていたものと認められる。

(4)請求項1の記載のうち、「前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、・・・縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていない」について

a)明細書の記載事項について
記載事項(1-4)には、縦方向固着部41や縦方向固着部40により上カバー10と下カバー20とを固着することにより収容室30を形成することが記載されており、また、記載事項(1-5)には、その形成された収容室30に蓄熱材パック60が収容されることが記載されている。
一方、蓄熱材パック60を縦方向固着部40や縦方向固着部41により上カバー10あるいは下カバー20に固着することについての記載はない。

b)図1、図2の図示内容について
記載事項(1-3)には、「図1において、蓄熱材マット1の内部構造が分かるように、内部に収容されている蓄熱材パック60を一点鎖線で示している。」と記載されている。したがって、図1の図示内容(2-2)において、縦方向の一点鎖線は、蓄熱材パック60の縦方向部分であるから、上記の蓄熱材パック60の縦方向部分は、縦方向固着部40及び縦方向固着部41とから離間していると認められる。
ところで、記載事項(1-3)には、「図2は、図1に示した蓄熱材マット1の一部断面図である。」と記載され、図2には、上カバー10と下カバー20とが接触している部分や、蓄熱材パック60及び収納室30の横断面が図示されていることから、図2は、図1における横断面の一部であるといえる。そして、明細書の記載事項及び図1の図示内容に照らし、図2の符号50,68、符号68は、いずれも縦方向固着部を示すものであって、本来40と記載すべきものであったと認められる。したがって、図2には、図示内容(2-4)に照らし、収容室30内の蓄熱材パックの左端、右端は、縦方向固着部40から、それぞれ間隔を有していることが示されているといえる。
そうすると、収容室30内において蓄熱材パック60の左端及び右端は、縦方向固着部40から離間しており、かつ、上カバー10と下カバー20に対して縦方向固着部40において固着されていないといえる。

以上、a)、b)の検討から、出願当初の明細書等には、「前記収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、・・・縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていない」ことが記載されていたものと認められる。

以上のとおりであるから、補正後の請求項1は、すべての構成が、出願当初の明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内のものであると認められる。

4.請求人の主張に対して
(1)請求人は、審判請求書において、「補正1における「各蓄熱材パックでは、…縦方向に延在する左縁部及び右縁部が前記カバーに固着されていない」なる構成に関しては、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないため、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない。
すなわち、出願当初の明細書には、次のような記載がある。
「蓄熱材パックの周縁がカバーに対して固着されていることを特徴とする。(【0009】)
「蓄熱材パックの周縁がカバーに対して固着されていることにより、カバーと蓄熱材パックとが一体化される。したがって、マットを普通の使用状態で使用したり折り畳んで使用したりしても、蓄熱材パックが収容室内部で捩れたり偏在することが防止される。」(【0010】)
「このように構成することにより、蓄熱材の偏在が蓄熱材パック要素に留まるために、蓄熱材パックの全体としては、蓄熱材の偏在が低減される。そして、蓄熱材パック要素の境界部分も固着されることにより、収容室内部での蓄熱材パックの捩れや偏在を低減することができる」(【0011】)
これらの記載を参酌すれば、出願当初の明細書等には、蓄熱材パックの全周縁、換言すれば、上縁部、下縁部、左縁部及び右縁部からなる全ての縁部がカバーに対して固着されている構成が開示されていると判断するのが自然である。
また、補正1における「各蓄熱材パックでは、…縦方向に延在する左縁部及び右縁部が前記カバーに固着されていない」なる構成の根拠となる直接的な構成は出願当初の明細書等には一切記載されていない。」(審判請求書第73頁第12行?第74頁第1行)と主張する。
しかしながら、出願当初明細書における上記(1-5)には、「このように構成されたカバーの各収容室30には、蓄熱材パック60がそれぞれ収容される。収容室30に収容された蓄熱材パック60は、縫着又は接着又は熱融着によってカバー10,20に対して固着される。その結果、蓄熱材マット1の上下の周縁端部には、横方向固着部51が形成される。」と記載され、出願当初明細書における上記(1-7)には、「蓄熱材パック60の上縁部と下縁部とがカバー10,20に固着されている」と記載されており、出願当初明細書における上記(1-5)と(1-7)の記載を併せてみると、カバーの各収容室30に蓄熱材パック60を収容した後に、その上縁部と下縁部とをカバー10,20に固着することが記載されているといえ、出願当初明細書等において、カバーの各収容室30に蓄熱材パック60を収容した後に、蓄熱材パックの周縁全体においてカバーに固着されること、あるいは、蓄熱材パックの左縁部及び右縁部が、カバー10,20に固着されることの記載や示唆がないことから、蓄熱材パックの左縁部及び右縁部は、カバー10,20に固着されていないものと解することができる。
したがって、当該請求人の主張には、理由がない。

(2)請求人は、審判請求書において、「補正1に対して特許法第17条の2第3項違反を理由として通知された拒絶理由通知(起案日:平成24年3月14日、甲第74号証)の対応として提出された意見書(提出日:平成24年5月10日、甲第76号証)において、参考説明図を提出して収容室と蓄熱パックとの位置関係や縦方向固着部と蓄熱パックとの位置関係を説明しているが、この説明において、上側に配置される横方向固着部と下側に配置される横方向固着部との間に架け渡された一点鎖線について、出願当初の図1では「30」「収納室」と示されているにもかかわらず、参考説明図では「蓄熱材パックの縦方向の縁部」とも示し、このことを根拠として補正1が出願当初の明細書等の記載された事項の範囲内でされたものであると主張している。
しかし、当該主張は、出願当初の図1に示された内容を意見書における主張に合わせて出願当初の図1に示されていない内容(「蓄熱材パックの縦方向の縁部」)を加えているのであるから、出願当初の明細書等に記載された事項の範囲から逸脱していることは明白である。」(審判請求書第74頁第2?15行)と主張する。
しかしながら、出願当初の明細書における上記(1-3)には、「図1において、蓄熱材マット1の内部構造が分かるように、内部に収容されている蓄熱材パック60を一点鎖線で示している。・・・縦方向固着部40,41及び横方向固着部50,51を点線で示している。」と記載されており、出願当初の図1において、「30」「収容室」と図示されていると請求人が主張する部分は、一点鎖線で表されているから、蓄熱材パック60の縦方向の縁部を表すことは明らかである。したがって、甲第76号証(平成24年5月10日付け意見書)の参考説明図において、一点鎖線に対して「蓄熱材パックの縦方向の縁部」をもって示すことは、出願当初の明細書等の記載事項の範囲内で行われたものである。そして、出願当初の図1における「30」の引出し線により図示されている部分は、出願当初の図2における「30」の引出し線により図示されている部分からみても、上カバーと下カバーとの間に設けられた収容室30を示したものである。
したがって、当該請求人の主張には、理由がない。

(3)請求人が平成26年10月23日に提出した上申書において、本件特許発明(請求項1)の構成要件E(「収容室のそれぞれに収容された前記各蓄熱材パックでは、横方向に延在する上縁部及び下縁部が横方向固着部によって前記カバーに固着されているのに対して、縦方向に延在する左縁部及び右縁部が、前記縦方向固着部からそれぞれ離間していることにより、前記縦方向固着部によって前記カバーに固着されていない」)によれば、蓄熱材パックの縦方向に延在する左縁部と右縁部は、縦方向固着部によりカバーに固着されていないが、蓄熱材パックの縦方向に延在する左縁部と右縁部がカバーに固着されているか否かは明らかではない。
よって、本件特許発明(請求項1)においては、蓄熱材パックの縦方向に延在する左縁部と右縁部がカバーに固着されているマットと、固着されていないマットが共に含まれていると解釈できる。
そこで、当初明細書等に上縁部、下縁部、左縁部、右縁部の全周縁がカバーに固着されたものしか開示されていないと判断すれば、縦方向に延在する左縁部と右縁部がカバーに固着されていないものに変更する平成23年7月28日付けの補正や、縦方向に延在する左縁部と右縁部がカバーに固着されていないものを含むものに変更する平成24年5月10日付けの補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない。
他方、蓄熱材パックが周縁全体においてカバーに固着することが、出願当初明細書等において記載や示唆がなされていないと判断すると、当初明細書等に蓄熱材パックの縦方向に延在する左縁部と右縁部がカバーに固着されているマットが開示されていないことになる。
そうすると、出願当初の請求項1における「蓄熱材パックの周縁部がカバーに対して固着されている」構成は、縦方向に延在する左縁部と右縁部がカバーに固着されていないものとなるので、平成24年5月10日付けの、蓄熱材パックの周縁部がカバーに対して固着されているものを含むものに変更する補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていないと主張している。
しかしながら、本件特許発明1には「縦方向に延在する左縁部と右縁部が」、「カバーに固着されていない」ことが記載されており、本件特許明細書には、「縦方向に延在する左縁部と右縁部が、カバーに固着されていない」(段落【0009】)と明確に記載されている。
そして、縦方向に延在する左縁部と右縁部が縦方向固着部以外の部分でカバーに固着されることは記載されていないし、本件の特許明細書全体、及び本件特許発明の技術的意義を参酌すれば、縦方向に延在する左縁部と右縁部がカバーに対して固着されないことを要するものである。
よって、本件特許発明(請求項1)において、「蓄熱材パックの縦方向に延在する左縁部と右縁部がカバーに固着されているマットと、固着されていないマットが共に含まれている」ことを前提とする上記請求人の主張には理由がない。

よって、上記請求人の主張には、いずれも理由がない。

5.小括
以上のとおり、本件特許における請求項1の記載は、出願当初の明細書等に記載されたものであるから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるとはいえない

第10.むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明1ないし6を無効とすることはできない。

審判に関する費用は、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-07 
結審通知日 2015-01-09 
審決日 2015-01-20 
出願番号 特願2007-329796(P2007-329796)
審決分類 P 1 113・ 112- Y (A61F)
P 1 113・ 55- Y (A61F)
P 1 113・ 121- Y (A61F)
P 1 113・ 152- Y (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 松下 聡
高木 彰
登録日 2013-01-25 
登録番号 特許第5183189号(P5183189)
発明の名称 蓄熱材マット  
代理人 小野 誠之  
代理人 上村 喜永  
代理人 大住 洋  
代理人 安藤 順一  
代理人 河本 茂行  
代理人 上村 喜永  
代理人 林 由希子  
代理人 河本 茂行  
代理人 安藤 順一  
代理人 前川 真貴子  
代理人 森本 純  
代理人 前川 真貴子  
代理人 小野 誠之  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 林 由希子  
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