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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1306786
審判番号 不服2013-23804  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-03 
確定日 2015-10-13 
事件の表示 特願2009-531319「空間エネルギー爆縮ユニット及びそれを用いたエネルギー増幅装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月10日国際公開、WO2008/041812、平成22年 6月24日国内公表、特表2010-521415〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年10月1日(パリ条約による優先権主張 2006年10月2日 (KR)大韓民国 2006年10月2日 (KR)大韓民国 2006年10月2日 (KR)大韓民国 2006年11月20日 (KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成25年7月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年12月3日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?26に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1及び11に係る発明(以下、まとめて「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
全体的に正五角形をなす平面構造物1;
前記平面構造物1の上部に離隔して設置されるもので、全体的に正五角錐形をなす立体構造物2;及び
前記平面構造物1と立体構造物2の間を離隔させるもので、その平面構造物1及び立体構造物2の面積より小さい面積を有する離隔構造物3と;を含むことを特徴とする、空間エネルギー爆縮ユニット。
【請求項11】
全体的に正五角形をなす平面構造物15枚または7枚が、各角点が互いに接するように配置されて具現された第1幾何学的構造体;
前記第1幾何学的構造体の上部に離隔して設置されるもので、全体的に正五角錐形をなす五つまたは七つの立体構造物2が角点が互いに接するように配置されて具現される第2幾何学的構造体;及び
前記第1幾何学的構造体と第2幾何学的構造体の間を離隔させるもので、前記平面構造物1と立体構造物2の間に設置され、前記平面構造物1及び立体構造物2の面積より小さい面積を有する多数の離隔構造物3と;を含むことを特徴とする、エネルギー増幅装置。」


3.原査定の理由
一方、原査定の拒絶の理由は、以下のとおりのものである。
「1.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



【理由1,2】について
A.請求項 1?26
本願上記請求項に係る発明は、請求項1又は11で特定された構造を有する、空間エネルギーの爆縮ユニット、及び、空間エネルギーの増幅装置に関するものであり、特定の幾何学的形態を利用することにより、宇宙に充満した空間エネルギーを効果的に爆縮することが可能であって、当該爆縮により空間エネルギーを現実に直間接的に使用できるようにさせ得るというものである。
一方、本願明細書の発明の詳細な説明では、本願発明である空間エネルギー爆縮ユニット(エネルギー増幅装置)の構造が図示されており、また、空間エネルギーを照射した水(以下、処理水という。)と照射していない水を摂取させた場合に、処理水を摂取させた方が、癌細胞の増殖抑制、並びに、アトピー性皮膚炎の改善に有効であったことが開示され、この結果から、空間エネルギーの存在が確認された旨の記載があるものの、発明の詳細な説明には、当該爆縮ユニットを実際に製造し、当該爆縮ユニットにより空間エネルギーが増幅されたことについての具体的な薬理試験データはなんら記載されておらず、また、実験例における処理水についても、どのような装置を使用し、かつ、どのような条件で空間エネルギーを照射したのかが具体的に示されておらず、かかる実験結果が、本願発明である空間エネルギー爆縮ユニットによる空間エネルギーの増幅の結果によるものであることを裏付ける客観的記載は見当たらない。
そして、本願明細書の【背景技術】(段落【0005】を参照)にも記載されるように、空間エネルギーは宇宙に充満しているものの、極めて微量であることが、本願出願時の当業者における技術常識であったと認められるうえ、本願請求項で特定された、特定の幾何学形態を利用した構造を有する装置により、空間エネルギーを増幅し得ることが本願出願時の技術常識であったとは認められないから、本願明細書の発明の詳細な説明、並びに、本願明細書の実験例の結果を参酌したとしても、本願発明である爆縮ユニットが空間エネルギーを増幅させことができる装置となり得るとは、直ちには認められない。
してみれば、この出願の発明の詳細な説明は、上記請求項に係る発明を、当る業者(審決注:「当業者」の誤記であることは当業者に明らかである。)が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとは認められないし、また、上記請求項に記載の発明は、発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超える発明を含むものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものとも認められない。」


4.判断
4-1 特許法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)について
本願発明は、上述のとおり、空間エネルギー爆縮ユニット及びエネルギー増幅装置の発明であるから、特許法第2条第3項第1号にいう物の発明である。また、物の発明における実施には、その物の生産、使用をする行為が含まれる。そして、本願発明におけるその物の使用とは、上記空間エネルギー爆縮ユニット及びエネルギー増幅装置を用いて空間エネルギーを爆縮、増幅することにほかならない。そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえるためには、上記空間エネルギー爆縮ユニット及びエネルギー増幅装置を製造し、これを用いて空間エネルギーを爆縮、増幅することができることを当業者が認識できるに足る記載がなされている必要がある。

そこで、本願明細書の記載を検討するに、本願明細書には、上記空間エネルギー爆縮ユニット及びエネルギー増幅装置を製造し、これを用いて空間エネルギーを爆縮、増幅することに関して、以下の(ア)?(サ)の記載がある。
(ア)「【0015】
図1は本発明の一実施例による空間エネルギー爆縮ユニットの分解斜視図、図2は図1の空間エネルギー爆縮ユニットの他の形態を有する立体構造物の斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施例による空間エネルギー爆縮ユニットは、全体的に正五角形をなす平面構造物1と;平面構造物1の上部に離隔して設置されるもので、全体的に正五角錐形をなす立体構造物2と;平面構造物1と立体構造物2の間を離隔させるもので、その平面構造物1と立体構造物2の面積より小さい面積を有する離隔構造物3と;を含む。この際、離隔構造物3は、全体的に正五角形を持つ。ここで、平面構造物1は1枚以上で具現され、平面構造物の数が多いほど空間エネルギーの爆縮量が多くなる。
【0017】
前述した立体構造物2、離隔構造物3及び平面構造物1は、それらの各辺の配置角度が同一であるように積層される。」(【0015】?【0017】)

(イ)「

」(【図1】)

(ウ)「【0032】
図1、図3、図5及び図7に示す空間エネルギー爆縮ユニットにおいて、平面構造物1は、その幾何学的構造によって、宇宙に充満した空間エネルギーを爆縮させ、立体構造物2は、その幾何学的構造によって、平面構造物1から爆縮した空間エネルギーを前方に集中させる。そして、図2、図4、図6、及び図8に示された形態に立体構造物2’を具現するとき、宇宙に充満した空間エネルギーを爆縮すると同時に前方に集中させる。」(【0032】)

(エ)「【0033】
つぎに、本発明の実施例による空間エネルギー爆縮ユニットを採用したエネルギー増幅装置を説明する。
【0034】
図9は本発明の一実施例によるエネルギー増幅装置を示す図、図10は図9のエネルギー増幅装置の第1幾何学的構造体の斜視図、図11は図9のエネルギー増幅装置の第2幾何学的構造体の斜視図、図12は図10のエネルギー増幅装置の第2幾何学的構造体の他の形態の斜視図、図13は図9のエネルギー増幅装置の第2幾何学的構造体、第1幾何学的構造体、プレート構造体及び離隔構造物の積層構造を示す図である。ここで、図1ないし図4と同じ参照符号は同一機能をする同一部材を指す。
【0035】
図9に示すように、本発明の一実施例によるエネルギー増幅装置は、全体的に正五角形をなす5枚の平面構造物1が各角点が互いに接するように配置されて具現された第1幾何学的構造体10と;第1幾何学的構造体10の上部に離隔して設置されるもので、全体的に正五角錐形をなす五つの立体構造物2が角点が互いに接するように配置されて具現される第2幾何学的構造体20と;第1幾何学的構造体10と第2幾何学的構造体20の間を離隔させるもので、平面構造物1と立体構造物2の間に設置され、平面構造物1及び立体構造物2の面積より小さい面積を有する多数の離隔構造物3と;を含む。
【0036】
第1幾何学的構造体10は一つまたは二つ以上でなる。第1幾何学的構造体10は、その幾何学的な構造によって、宇宙に充満した空間エネルギーを直間接的に使用できるように爆縮させる。
【0037】
第2幾何学的構造体20は、第1幾何学的構造体10によって爆縮された空間エネルギーを前方に集中させる。
【0038】
第1幾何学的構造体10及び第2幾何学的構造体20の面積は爆縮された空間エネルギーの量を増加させる。すなわち、より多い空間エネルギーを得るために、第1幾何学的構造体10の積層数を増大させるか、あるいは第1及び第2幾何学的構造体10、20の面積を増大させる。」(【0033】?【0038】)

(オ)「

」(【図9】)

(カ)「【0041】
離隔構造物3は、多くの第1幾何学的構造体10の間に設置されて第1幾何学的構造体の間が互いに離隔するようにし、第1幾何学的構造体10と第2幾何学的構造体20の間に設置されて第1幾何学的構造体10と第2幾何学的構造体20が互いに離隔するようにし、第1幾何学的構造体10とプレート構造体40の間に設置されて第1幾何学的構造体10とプレート構造体40が互いに離隔するようにする。このような離隔構造物3は、全体的に正五角形を持ち、多くの板が積層されて所定の厚さに具現されるか、あるいは所定の厚さを持つ単品として具現されることができる。
【0042】
離隔構造物3は、放射される空間エネルギーの周波数を変化させる。すなわち、離隔構造物3の厚さによって空間エネルギーの周波数を多様に変化させるものである。離隔構造物3の厚さは3mm?20mmの範囲にあることが好ましく、本実施例においては7mmにした。
【0043】
ケース50は、前方に空間エネルギーが放射されるように放射口52が形成されたカバー51を持つ。ケース50の内部には、プレート孔43に対応するケース孔53が形成されている。
【0044】
前述したプレート構造体40に積層される第1幾何学的構造体10、離隔構造物3及び第2幾何学的構造体20はケース50に内蔵される。すなわち、第1及び第2幾何学的構造体10、20及び離隔構造物3が積層されたプレート構造体40は、図9に示すように、固定部材63のボルト部63aがプレート孔43及びケース孔53を貫通した後、ケース50の後方でナット64によって締結されることにより、ケース50の内部に固定される。」(【0041】?【0044】)

(キ)「【0057】
つぎに、本発明の他の実施例によるエネルギー増幅装置を説明する。
【0058】
図19は本発明の他の実施例によるエネルギー増幅装置を示す図、図20は図19のエネルギー増幅装置の第1幾何学的構造体の斜視図、図21は図19のエネルギー増幅装置の第2幾何学的構造体の斜視図、図22は図21の第2幾何学的構造体の他の形態の斜視図、図23は図19のエネルギー増幅装置の第2幾何学的構造体、第1幾何学的構造体、プレート構造体及び離隔構造物の積層構造を示す図である。ここで、図9及び図14と同じ参照符号は同一機能をする同一部材を指す。
【0059】
図19に示すように、本発明の他の実施例によるエネルギー増幅装置は、全体的に正五角形をなす7枚の平面構造物1が各角点が互いに接するように配置されて具現された第1幾何学的構造体210と;第1幾何学的構造体210の上部に離隔して設置されるもので、全体的に正五角錐形をなす七つの立体構造物2が角点が互いに接するように配置されて具現される第2幾何学的構造体220と;第1幾何学的構造体210と第2幾何学的構造体220の間を離隔させるもので、平面構造物1と立体構造物2の間に設置され、平面構造物1及び立体構造物2の面積より小さい面積を有する多数の離隔構造物3と;を含む。
【0060】
前述した第1幾何学的構造体210は一つまたは二つ以上でなる。第1幾何学的構造体210は、その幾何学的な構造によって、宇宙に充満した空間エネルギーを直間接的に使用できるように爆縮させる。
【0061】
第2幾何学的構造体220は、第1幾何学的構造体110によって爆縮された空間エネルギーを前方に集中させる。
【0062】
第1幾何学的構造体210及び第2幾何学的構造体220の面積は爆縮された空間エネルギーの量を増加させる。すなわち、より多い空間エネルギーを得るために、第1幾何学的構造体210の積層数を増大させるか、あるいは第1及び第2幾何学的構造体210、220の面積を増大させる。
【0063】
前述した立体構造物2、離隔構造物3及び平面構造物1はそれらの各辺の配置角度が同一であるように積層される。」(【0057】?【0063】)

(ク)「

」(【図19】)

(ケ)「【0123】
前述した図9、図14、図19、図24、図29、図34、図39及び図44に示すエネルギー増幅装置は、前述した幾何学的構造によってトーション場の一種である空間エネルギー、つまり宇宙に充満している微弱な空間エネルギーを爆縮して使用可能なエネルギーに変換することで直間接的に利用することができるようにする。」(【0123】)

(コ)「【0124】
空間エネルギーの爆縮メコニズムはいまだに科学的に明確に糾明されていない。しかし、本出願人は多数の反復実験によって空間エネルギーを最適に放射することができる構造を見つけた。このような空間エネルギーは人間の五感で直接分かる程度の強度をゆうするものではないが、多数の実験によってその存在を確認することができる。
【0125】
すなわち、特定対象物に空間エネルギーを照射した場合と照射しない場合を比較したとき、いずれの差異が発生する場合、空間エネルギーが存在することが帰納的に分かるものである。以下、空間エネルギーの存在を確認する多様な実験例を説明する。
【0126】
(1)癌細胞成長実験
図55は一般の飲用水と空間エネルギー処理水を飲んだ白ねずみの腫瘍の大きさをグラフで比較した図である。
【0127】
本実験は2004年4月延世大学校原州医大のキム・ヒョン・ウォン教授及びその研究員によって遂行された。
【0128】
本実験を遂行するために、実験用白ねずみ(C56BL/6)が生活する二つのチャンバーを準備した後、一つのチャンバーには一般の飲用水に空間エネルギーを照射して処理した処理水が入っている給水槽を設置し、他のチャンバー(対照群)には一般の飲用水が入っている給水槽を設置し、それぞれのチャンバー内の実験対象物が給水槽から空間エネルギー処理水または一般の飲用水を自由に摂取することができるようにした。そして、それぞれのチャンバーには悪性皮膚癌細胞(B16 Melanoma)を皮下に注入した実験用白ねずみ(C56BL/6)を同数入れ、20日間にかけて腫瘍の大きさを日別に観察した。
【0129】
図55のグラフにおいて、controlで表示された部分は一般の飲用水を飲んだ白ねずみの腫瘍の大きさを日別に表示したものであり、Life energyで表示された部分は空間エネルギー処理水を飲んだ白ねずみの腫瘍の大きさを日別に表示したものである。
【0130】
20日間にかけて腫瘍の大きさを測定した結果、図55に示すグラフのように、エネルギー増幅装置で爆縮した空間エネルギー処理水を飲んだ白ねずみの場合、腫瘍の大きさが対照群に比べて非常に小さいことを確認することができた。
【0131】
図55のグラフから確認できるように、空間エネルギー処理水を飲んだ白ねずみ(Life energy)の場合、一般の飲用水を飲んだ白ねずみ(control)に比べて腫瘍の大きさが小くなることを確認することができ、これから、空間エネルギー処理水は白ねずみの生体に坑癌作用をすることを確認することができる。すなわち、前述したグラフから、空間エネルギーの存在を確認することができるものである。
【0132】
(2)空間エネルギーで処理した処理水が嬰児や乳児のアトピー患者に及ぶ影響に係わる臨床実験
図49は表1の内容をグラフで示す図で、空間エネルギー処理水服用前の被験者の数を示す図である。また、図50は表2の内容をグラフで示す図で、空間エネルギー処理水服用後の紅斑(Erythema)症状の被験者の数を示す図であり、図51は表2の内容をグラフで示す図で、空間エネルギー処理水服用後の浮腫(Edema)/丘疹(Papulation)症状の被験者の数を示す図であり、図52は表2の内容をグラフで示す図で、空間エネルギー処理水服用後の滲出(Oozing)症状の被験者の数を示す図であり、図53は表2の内容をグラフで示す図で、空間エネルギー処理水服用後の擦り剥き(Excoriation)症状の被験者の数を示す図面であり、図54は表2の内容をグラフで示す図で、空間エネルギー処理水服用後の苔蘚化(Lichenification)症状の被験者の数を示す図である。
【0133】
本臨床実験は、大韓民国ソウル市江南区大峙洞507番地ウィンプラス商家3階に位置するチォングヌェ漢医院(院長、リュウ・ジェ・ギュ)で2005年初に遂行した実験で、空間処理水を嬰児や乳児のアトピー患者に摂取させたとき、空間処理水が嬰児や乳児のアトピー患者に及ぶ臨床学的影響を確認するための実験である。
【0134】
本臨床実験では、本発明のエネルギー増幅装置から放射される空間エネルギーを10日間照射したD社の生水(以下、空間エネルギー処理水という)をチォングヌェ漢医院にアトピー治療を目的で内院した0?4歳の嬰児や乳児のアトピー患者40人(男15人、女25人)に服用させた。
【0135】
本臨床実験において、空間エネルギー処理水を嬰児や乳児のアトピー患者が服用させたとき、服用前と違いがあるべき五つの仮説を設定し、服用前と服用後のアトピー指数(SCORAD)を測定することで、空間エネルギー処理水の臨床学的影響を確認した。
【0136】
ここで、アトピー指数(SCORAD)は、全身皮膚状態及び局部皮膚状態の写真と痒さを同時にチェックした後に結果値を得る場合にだけ有意性があるが、対象者が嬰児や乳児である関係で、全身皮膚状態及び痒さをチェックするのに困難があった。したがって、アトピーの主要症状である五つの症状(紅斑(Erythema)、浮腫(Edema)、丘疹(Papulation)、滲出(Oozing)、擦り剥き(Excoriation)、苔蘚化(Lichenification))症状を点数化して区分した。
【0137】
空間エネルギー処理水服用前のアトピー患者の症状を表1及び図50に示した。
【0138】
[表1]空間エネルギー処理水服用前の被験者症状
・・・
【0139】
[表1]の内容は図11に示すようにグラフで表された。
【0140】
空間エネルギー処理水を嬰児や乳児のアトピー患者が服用したとき、空間処理水服用前と違いがあるべき五つの仮説は下記のようである。
【0141】
(a)仮説1
一ヶ月間にかけて空間エネルギーで10日処理した生水200?300ccを1日3回に分けて服用した嬰児や乳児のアトピー患者の紅斑(Erythema)症状は空間エネルギー処理生水服用前と差があるべきである。
【0142】
(b)仮説2
一ヶ月間にかけて空間エネルギーで10日処理した生水200?300ccを1日3回に分けて服用した嬰児や乳児のアトピー患者の浮腫/丘疹(Edema/Papulation)症状は空間エネルギー処理生水服用前と差があるべきである。
【0143】
(c)仮説3
一ヶ月間にかけて空間エネルギーで10日処理した生水200?300ccを1日3回に分けて服用した嬰児や乳児のアトピー患者の滲出(Oozing)症状は空間エネルギー処理生水服用前と差があるべきである。
【0144】
(d)仮説4
一ヶ月間にかけて空間エネルギーで10日処理した生水200?300ccを1日3回に分けて服用した嬰児や乳児のアトピー患者の擦り剥き(Excoriation)症状は空間エネルギー処理生水服用前と差があるべきである。
【0145】
(e)仮説5
一ヶ月間にかけて空間エネルギーで10日処理した生水200?300ccを1日3回に分けて服用した嬰児や乳児のアトピー患者の苔蘚化(Lichenification)症状は空間エネルギー処理生水服用前と差があるべきである。
【0146】
本臨床実験の結果を[表2]に示した。
【0147】
[表2]空間エネルギー処理水服用後の被験者症状
・・・
【0148】
(a)仮説1に対する結果
嬰児や乳児のアトピー患者の紅斑(Erythema)症状は、10日間にかけて空間エネルギー処理水を1日に200?300ccで3回に分けて服用する前と服用して治療した後に有意の差があった。すなわち、図51に示すように、空間エネルギー処理水を服用して治療した後の患者の紅斑症状は、重程度及び中程度に属した患者が軽程度や0(症状なし)に多数移動、つまり症状が好転したことが分かる。
【0149】
(b)仮説2に対する結果
嬰児や乳児のアトピー患者の浮腫/丘疹(Edema/Papulation)症状は、10日間にかけて空間エネルギー処理水を1日に200?300ccで3回に分けて服用する前と服用して治療した後に有意の差があった。すなわち、図52に示すように、空間エネルギー処理水を服用して治療した後の浮腫/丘疹(Edema/Papulation)症状は多数の患者が0(症状なし)に移動、つまり症状が好転したことが分かる。
【0150】
(c)仮説3に対する結果
嬰児や乳児のアトピー患者の滲出(Oozing)症状は、10日間にかけて空間エネルギー処理水を1日200?300ccで3回に分けて服用する前と服用して治療した後に有意の差があった。すなわち、図53に示すように、空間エネルギー処理水を服用して治療した後の滲出症状は多数の患者が0(症状なし)に移動、つまり症状が好転したことが分かる。
【0151】
(d)仮説4に対する結果
嬰児や乳児のアトピー患者の擦り剥き(Excoriation)症状は、10日間にかけて空間エネルギー処理水を1日200?300ccで3回に分けて服用する前と服用して治療した後に有意の差がなかった。すなわち、図54に示すように、被験者の大半が治療前に擦り剥き症状がひどくなかったので、服用前後の結果の比較によって有意性を探すことは大変難しかった。しかし、空間エネルギー処理水の服用前に比べ、服用後の皮膚状態が一層滑らかになったことを裸眼で確認することができた。
【0152】
(e)仮説5に対する結果
嬰児や乳児のアトピー患者の苔蘚化(Lichenification)症状は、10日間にかけて空間エネルギー処理水を1日に200?300ccで3回に分けて服用する前と服用して治療した後に有意の差がなかった。苔蘚化症状は、大抵発病期間の長い大人晩成重患者に多く現れるので、図54に示すように、満4歳未満の発病期間の短い嬰児や乳児には治療前の苔蘚化症状があまり発見されなかった。
【0153】
前述した結果から確認できるように、紅斑症状(Erythema(仮説1))、浮腫/丘疹症状(Edema/Papulation(仮説2))、滲出症状(Oozing(仮説3))、擦り剥き症状(Excoriation(仮説4))が改善することを確認することができた。苔蘚化(Lichenification(仮説5))の場合にはあまり差がなかったが、仮説1、仮説2、仮説3及び仮説4の結果によって空間エネルギーの存在を確認することができる。
【0154】
本発明のエネルギー増幅装置から放射される空間エネルギーは、前述した癌細胞成長実験や臨床実験で確認されたように、生体エネルギーを活性化させる。しかし、空間エネルギーは後述の多様な分野に多様な効果を発揮する。
【0155】
本発明のエネルギー増幅装置から放射される空間エネルギーを植物に照射すれば、植物の生育促進を起こし、腐敗などの化学反応を抑制する作用まで果たすことが糾明されている。このような結果から、本発明による空間エネルギーは、イオン分極を抑制する非イオン化作用があることが分かる。このような現象は人体内でも起きるもので、前述した内容が正にそれである。
【0156】
また、空間エネルギーを常温20℃で牛乳に3周程度照射したとき、牛乳は腐敗に繋がれなく、取食可能であり、健康食品としても活用されている乳酸菌が含有されたヨーグルトに変化された。
【0157】
また、空間エネルギーを2ヶ月間にかけていちごに照射したとき、いちごが腐敗するか酸敗することがなしに乾燥脱水されて干しぶどうのようにしこしこするように変わり、これは人間が摂取したときに健康に全く無害であった。これは、通常の環境でいちごを保管する場合、3日以上経過すると変質し始め、数日経過後に腐敗するものに比べ、食品を長期保管することができる加工処理方法を提示するものである。
【0158】
また、空間エネルギーを冷蔵りんごに約2年以上照射したとき、水分蒸発によって表皮の一部がくちゃくちゃになったばかり、内部の肉質は新鮮度の面で最初のりんごの肉質と有意差がない。このように、本発明は人間周辺の生体物に適用する場合には、その生体エネルギーを保存させるか強化させることが分かった。」(【0124】?【0158】)

上記(ア)、(イ)、(エ)?(ク)の記載によれば、本願明細書には、上記空間エネルギー爆縮ユニット及びエネルギー増幅装置の構造が説明及び図示されているが、各構造体の材質や具体的な製造方法など、上記ユニット及び装置を実際に製造するために必要な記載は見いだせない。また、上記(カ)及び(ケ)の記載によれば、離隔構造物3は、放射される空間エネルギーの周波数を変化させる、とか、図9や図19に示すエネルギー増幅装置は空間エネルギーを爆縮して使用可能なエネルギーに変換することで直間接的に利用することができる、といったことが記載されているが、これらのことを裏付けるに足る実験結果の記載は伴っていない。また、上記(コ)の記載によれば、空間エネルギーを照射したという水が、癌細胞の増殖抑制やアトピーの改善に有効であったことを示す試験結果が記載され、また、空間エネルギーを植物、牛乳、いちご、冷蔵リンゴに照射したことによるとされる試験結果が記載され、これらの試験結果から、空間エネルギーが存在することが帰納的に分かる、あるいは確認できるとされている。しかしながら、仮に上記試験結果が事実であるとしても、それら試験結果が空間エネルギーによってもたらされたものであることまで確認できるとはいえない。また、これらの試験結果から空間エネルギーが存在することが帰納的に分かるといえるには、上記ユニット及び装置により利用可能な空間エネルギーを照射できることが前提として必要であるところ、その前提が存在することが、本願明細書中で明らかにされていないし、また該前提が本願発明の出願時の技術常識に属することといえる根拠も見いだせないから、上記試験結果から空間エネルギーが存在することが帰納的に分かるともいえない。そして、本願明細書の他の記載を検討しても、上記ユニット及び装置を実際に製造し、それにより空間エネルギーが爆縮、増幅されたことについての具体的な試験データはなんら記載されていない。さらには、空間エネルギーを照射したという上記水等についても、どのような装置を使用し、かつ、どのような条件で空間エネルギーを照射したのか(例えば、明細書記載のどの構造を有する装置なのか、またその材質、大きさ、あるいは、装置と水の距離など)が具体的に示されていない。
そうすると、本願明細書には、上記空間エネルギー爆縮ユニット及びエネルギー増幅装置を製造し、これを用いて空間エネルギーを爆縮、増幅することができることを当業者が認識できるに足る記載がなされているとはいえない。

この点について審判請求人は、審判請求書において、参考文献1?12を提出し、これに基づき、
「本願発明は特許法第36条4項1号および特許法第36条6項1号の要件を満たすものであると考えます。」
と主張する。
しかしながら、本願発明の出願前の文献である参考文献1?8及び12には、上記空間エネルギー爆縮ユニット及びエネルギー増幅装置を製造し、これを用いて空間エネルギーを爆縮、増幅することができることが本願発明の出願時の技術常識に属することであったといえる根拠を見いだせない。また、参考文献9?11は、本願発明の出願後の文献であり、その内容は、本願明細書に何らの記載もないものであり、そのような文献が本願出願後に提出されることによって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす、とすることは、いわゆる先願主義を採用する我が国の特許制度の趣旨に照らし、許されないというべきである。してみれば、参考文献9?11を参酌することはできない。また仮にこれらの文献を参酌したとしても、これらの文献の内容は、本願明細書と同様、得られた実験結果が空間エネルギーによってもたらされたことまで明らかにするものではなく、また空間エネルギーを照射したという水についてどのような装置を使用し、かつ、どのような条件で空間エネルギーを照射したのかが具体的に示されていないものであるから、拒絶理由を覆すことはできない。

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

4-2 特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、本願明細書のサポート要件の存在は、本願出願人すなわち審判請求人が証明責任を負うと解するのが相当である。
ここで、本願発明は、上述のとおりの空間エネルギー爆縮ユニット及びエネルギー増幅装置の発明であるから、その課題は、該ユニット及び装置を用いて空間エネルギーを爆縮、増幅することにほかならない。
しかしながら、4-1で説示したように、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記ユニット及び装置が空間エネルギーを爆縮、増幅することを当業者が認識できるに足る記載がなされているとはいえないし、上記ユニット及び装置が空間エネルギーを爆縮、増幅することは本願発明の出願時の技術常識に属する事項であったというような、格別の事情も見いだせない。

そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲や、その記載や示唆がなくとも当業者が本願発明の出願時の技術常識に照らし本願発明の課題を解決できると認識できる範囲は存在しないものとするほかはないが、それにもかかわらず、本願明細書の特許請求の範囲には本願発明が記載されているから、本願明細書の特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合するものとはいえない。

また、以上4-1及び4-2の判断は、請求項1及び11に係る発明について示したものであるが、請求項6及び19に係る発明についても同様であり、さらに、これらの4つの請求項のいずれかを引用する他の請求項に係る発明についても同様である。


5.むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-21 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2009-531319(P2009-531319)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A61K)
P 1 8・ 536- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中尾 忍  
特許庁審判長 大宅 郁治
特許庁審判官 大久保 元浩
内藤 伸一
発明の名称 空間エネルギー爆縮ユニット及びそれを用いたエネルギー増幅装置  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  

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