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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G21F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G21F
管理番号 1306836
審判番号 不服2014-372  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-09 
確定日 2015-10-14 
事件の表示 特願2006-129272「放射線遮蔽組成物及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月24日出願公開、特開2006-317439〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年5月8日(パリ条約による優先権主張2005年5月10日、米国)の出願であって、平成24年2月28日付けで手続補正がなされ、同年10月30日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、これに対して、同年12月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成25年9月27日付けで平成24年12月20日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、平成26年1月9日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成27年1月19日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年3月16日付けで意見書が提出されたものである。

第2 平成26年1月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年1月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項5を限定的に減縮することを目的として下記のとおりに補正したものである。
「【請求項1】
放射線遮蔽組成物であって、
(i)予め決められた粒度の酸化鉛又は予め決められた粒度の鉛複合材と、
(ii)エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂と反応する第2の樹脂とを含む接着剤と、
を含んでなり、前記放射線遮蔽組成物は、硬化する前に自由流動性を有し、
前記エポキシ及び前記第2の樹脂は、発熱反応を起し、混合物の温度を上昇させ、
前記放射線遮蔽組成物は、スプレー缶の加圧源から対象物に塗工することが可能であり、
硬化時において2.5mmの前記放射線遮蔽組成物の皮膜が、5000mRまでのX線量を遮蔽する、放射線遮蔽組成物。」

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

2 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された上記のとおりのものである。

3 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成4年12月11日に頒布された「特開平4-359070号公報」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。ただし、下線は当審で付した。
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、放射線遮蔽にすぐれかつ鉛に比し毒性の低い放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】放射線遮蔽能を有する組成物として、樹脂成分と鉛または鉛化合物とからなる組成物が知られている。
【0003】たとえば、特開昭55-147396号公報には、液状クロロプレン系重合体100重量部、ホウ素、チタン、鉄および鉛から選ばれた金属の粉末またはこれらの金属の化合物の粉末300?1000重量部、繊維状物質0?15重量部、および硬化剤0?50重量部を含有してなるパテ状放射線遮蔽用シール材が示されている。ここで金属の化合物とは酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物などである。実施例では鉛や酸化鉛を用いている。
【0004】特開昭60-71996号公報には、金属またはその化合物と、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル・エチレン共重合樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂との組成物からなる放射線防御用重金属系組成物が示されており、金属またはその化合物の例として、鉛、酸化鉛などが用いられるとしてある。この組成物は押出成形、射出成形、真空成形、爆発成形等の成形手段により成形品の製造に用いられ、実施例では押出成形によりシートを得ている。
【0005】特開昭63-8598号公報には、鉛アルコキシドを主成分とする金属アルコキシドのアルコール溶液を加温・撹拌下に水を添加して加水分解して得られる沈殿をろ取した後、液状結合剤中に混合・分散する放射線遮蔽用ペーストの製造法が示されている。ここで液状結合剤としては、セルローストリアセテート、プロピルセルロース、エチルセルロース等の増粘成分を含む揮発性有機溶媒が用いられるとしてあり、溶媒としてはジクロロメタン、エチルアルコール、アセトン等を用いている。また、その「発明が解決しようとする問題点」の欄には、通常の液状結合剤の中に金属鉛、酸化鉛、鉛ガラス等の微粉末を分散させたペースト状のものが考えられるとの記載がある。そしてこの公報においては、得られるペーストを、X線検出器の近傍に位置する増幅器等を含む電子回路部に用いる放射線遮蔽用のペーストの目的に主として用いている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭55-147396号公報に記載のパテ状放射線遮蔽用シール材は、用途がシール材に限られ、硬度が要求される用途には適用できないこと、毒性が高いこと、鉛同士あるいは鉛と異種材との接着性が良くないことなどの問題点がある。
【0007】特開昭60-71996号公報に記載の放射線防御用重金属系組成物は、溶融成形による成形品の製造を目的としているため、充填、塗布、注型などができないこと、熱可塑性樹脂を用いているため耐熱性が不足すること、毒性が高いことなどの問題点がある。
【0008】特開昭63-8598号公報に記載の放射線遮蔽用ペーストは、鉛アルコキシドを用いるという特殊な方法に関するものである上、有機溶媒を用いているため取り扱いや安全の点で問題があり、毒性も高く、用途も電子回路部の被覆用などに限られるという制約がある。
【0009】本発明は、このような背景下において、作業性が良く、硬化物の物性がすぐれ、応用用途も広く、さらには毒性も比較的低い放射線遮蔽用の樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤に鉛化合物を配合してなるものである。
【0011】以下本発明を詳細に説明する。
【0012】エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールおよびクレゾール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、複素環式エポキシ樹脂などがあげられ、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が重要である。
【0013】硬化剤としては、アミン系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、酸または酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、第三アミン類、イミダゾール類、ルイス酸またはブレンシュテッド酸塩、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート、潜在性硬化剤などの非メルカプタン系硬化剤が用いられる。硬化剤としてポリメルカプタン系硬化剤を用いることもできるが、保存安定性が劣るので、ポリメルカプタン系硬化剤を用いるときは硬化剤成分の50重量%未満にとどめるように留意する。
【0014】鉛化合物としては、硫酸鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、メタクリル酸鉛などの鉛塩や酸化鉛が用いられ、特に鉛塩、なかんずく硫酸鉛が重要である。
【0015】エポキシ樹脂および硬化剤の合計量100重量部に対する鉛化合物の配合量は30?500重量部、好ましくは40?300重量部の範囲から選択され、鉛化合物の配合量が30重量部未満のときは放射線遮蔽効果が不足し、一方500重量部を越えるときは対象物に対する接着性や硬化物の機械的特性が劣るようになる。
【0016】本発明の組成物には、そのほか、エポキシ樹脂に用いられる種々の添加剤を配合することができる。
【0017】本発明の放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物は、放射線遮蔽用パネル同士の突き合わせ接合部における接着または充填用、放射性廃棄物の封じ込め被覆用、放射性物質含有容器などの亀裂の封じ込め用、放射性廃棄物の封じ込め被覆用などの用途に有用である。
【0018】
【作用および発明の効果】鉛化合物はエポキシ樹脂または硬化剤の一方または双方に配合しておき、通常は使用の直前に主剤と硬化剤とを混合する。ただし潜在性の硬化剤を用いるときは一液型とすることができる。そして使用目的に応じ、充填、注入、注型、塗布、含浸、配合等の手段により適用し、硬化させる。
【0019】本発明の放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物には鉛塩などの鉛化合物が配合されているので、エポキシ樹脂の有する本来の硬化性、接着性、機械的特性等の性質が生かされている上、鉛化合物によりすぐれた放射線遮蔽作用が発揮される。また鉛化合物は金属鉛に比し毒性が低いという利点もある。ちなみに、硫酸鉛および鉛の急性毒性は次の通りである。
・・・(略)・・・」
b 上記aの記載事項の考察
上記aの記載事項の【従来の技術】欄には、「放射線遮蔽能を有する」「樹脂成分と鉛または鉛化合物とからなる組成物」(【0002】)として、「ホウ素、チタン、鉄および鉛から選ばれた金属の粉末またはこれらの金属の化合物の粉末」(【0003】)や「金属鉛、酸化鉛、鉛ガラス等の微粉末」(【0005】を用いることが記載されており、【作用および発明の効果】の欄には、「鉛化合物はエポキシ樹脂または硬化剤の一方または双方に配合しておき、通常は使用の直前に主剤と硬化剤とを混合する。ただし潜在性の硬化剤を用いるときは一液型とすることができる。そして使用目的に応じ、充填、注入、注型、塗布、含浸、配合等の手段により適用し、硬化させる」(【0018】)と記載されていることからして、引用例に記載された「本発明の放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物」の「鉛化合物」は、粉末状かそれに近い形態のものであると認められる。
c 引用例記載の発明
上記aの記載事項及び上記bの考察によると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「エポキシ樹脂および硬化剤に鉛化合物を配合してなり、
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などがあげられ、
硬化剤としては、ポリアミド系硬化剤が用いられ、
鉛化合物としては、硫酸鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、メタクリル酸鉛などの鉛塩や酸化鉛が用いられ、
鉛化合物は粉末状かそれに近い形態のものであり、
鉛化合物はエポキシ樹脂または硬化剤の一方または双方に配合しておき、通常は使用の直前に主剤と硬化剤とを混合し、充填、注入、注型、塗布、含浸、配合等の手段により適用し、硬化させる、
放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物。」

4 対比
ここで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂などがあげられ」る「エポキシ樹脂」及び「主剤」は、いずれも本件補正発明の「エポキシ樹脂」に相当する。
また、引用発明の「ポリアミド系硬化剤が用いられ」る「硬化剤」は、本件補正発明の「エポキシ樹脂と反応する第2の樹脂」に相当する。
そうすると、引用発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂などがあげられ」る「エポキシ樹脂」及び「ポリアミド系硬化剤が用いられ」る「硬化剤」「を混合し」たものは、本件補正発明の「エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂と反応する第2の樹脂とを含む接着剤」に相当する。
(2)引用発明の「硫酸鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、メタクリル酸鉛などの鉛塩や酸化鉛が用いられ、」「粉末状かそれに近い形態のものであ」る「鉛化合物」は、本件補正発明の「予め決められた粒度の酸化鉛又は予め決められた粒度の鉛複合材」に相当する。
(3)引用発明の「放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物」は、「主剤と硬化剤とを混合し、」「塗布、含浸」「等の手段により適用し、硬化させる」ことができるものであるから、本件補正発明の「硬化する前に自由流動性を有」する構成に相当する構成を有するものである。
また、引用発明の「放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物」の「硬化」が、発熱を伴うものであることは明らかである。
そうすると、引用発明の「主剤と硬化剤とを混合し、充填、注入、注型、塗布、含浸、配合等の手段により適用し、硬化させる」構成は、本件補正発明の「放射線遮蔽組成物は、硬化する前に自由流動性を有し、前記エポキシ及び前記第2の樹脂は、発熱反応を起し、混合物の温度を上昇させ」る構成に相当する。
(4)本件補正発明の「放射線遮蔽組成物」は「(i)予め決められた粒度の酸化鉛又は予め決められた粒度の鉛複合材と、(ii)エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂と反応する第2の樹脂とを含む接着剤と、を含んでなり、」「硬化する前に自由流動性を有」するものであるが、「エポキシ」及び「第2の樹脂」を混合すると、「発熱反応を起し、混合物の温度を上昇させ」て硬化するものであるから、「エポキシ」及び「第2の樹脂」は混合した「放射線遮蔽組成物」としては保管できないものであるから、本件補正発明の「放射線遮蔽組成物は、スプレー缶の加圧源から対象物に塗工することが可能であ」る構成に関し、混合された「エポキシ及び前記第2の樹脂とを含む」「放射線遮蔽組成物」を如何にして「スプレー缶の加圧源から対象物に塗工する」のか不明である。
しかしながら、審判請求人は、平成27年3月16日付けの意見書において、「当業者に明らかなように、加熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤であったとしても、硬化剤が熱により活性化されてエポキシ樹脂が硬化します。硬化剤が存在しないエポキシ樹脂を加熱しても硬化が発生する化学反応は起こりません。・・・(略)・・・また、例えば、双頭スプレーガン(または双頭ガン)等、塗工と同時に硬化させるための具体的手段は、当業者にとって周知のものでありますので・・・(略)・・・仮に本願の発明の詳細な説明に具体的な手段が開示されていなくても、本剤と硬化剤を塗布時に混合することは、当業者が容易に行うことができる事項であると思料いたします」と主張していることから、本件補正発明の「放射線遮蔽組成物は、スプレー缶の加圧源から対象物に塗工することが可能であ」る構成は、混合する前の本剤と硬化剤とのそれぞれを、異なるスプレー缶の加圧源から対象物に塗布して混合し、塗工と同時に硬化させることが可能である構成を特定するものであると認められる。
すると、本件補正発明の「放射線遮蔽組成物」は、混合する前の本剤と硬化剤とのそれぞれを、異なるスプレー缶の加圧源から対象物に塗布して混合したものと解されるから、引用発明の「通常は使用の直前に主剤と硬化剤とを混合し、充填、注入、注型、塗布、含浸、配合等の手段により適用し、硬化させる、放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物」は、本件補正発明の「放射線遮蔽組成物」に相当し、さらに、引用発明は「鉛化合物はエポキシ樹脂または硬化剤の一方または双方に配合しておき、通常は使用の直前に主剤と硬化剤とを混合し、充填、注入、注型、塗布、含浸、配合等の手段により適用し、硬化させる」ものであって、混合する前の本剤と硬化剤とのそれぞれを、異なるスプレー缶の加圧源から対象物に塗布して混合し、塗工と同時に硬化させることが可能であるものといえるから、本件補正発明の「放射線遮蔽組成物は、スプレー缶の加圧源から対象物に塗工することが可能であ」る構成に相当する構成を有するものである。

上記(1)ないし(4)の点から、本件補正発明と引用発明は、
「放射線遮蔽組成物であって、
(i)予め決められた粒度の酸化鉛又は予め決められた粒度の鉛複合材と、
(ii)エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂と反応する第2の樹脂とを含む接着剤と、
を含んでなり、前記放射線遮蔽組成物は、硬化する前に自由流動性を有し、
前記エポキシ及び前記第2の樹脂は、発熱反応を起し、混合物の温度を上昇させ、
前記放射線遮蔽組成物は、スプレー缶の加圧源から対象物に塗工することが可能である放射線遮蔽組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本件補正発明は、「硬化時において2.5mmの前記放射線遮蔽組成物の皮膜が、5000mRまでのX線量を遮蔽する」のに対し、引用発明は、どの程度の遮蔽性を有するかが不明である点。

5 当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
引用発明は、「放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物」の発明であって、その遮蔽性については、当業者が必要に応じて適宜設計し得ることであるから、引用発明の「放射線遮蔽用エポキシ樹脂組成物」を、「硬化時において2.5mmの前記放射線遮蔽組成物の皮膜が、5000mRまでのX線量を遮蔽する」ものとすることは、当業者が容易になし得たことであって、本件補正発明の数値にも格別の意義が認められない。

上記相違点については以上のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6 本件補正についての補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年1月9日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成24年12月20日付けの手続補正は平成25年9月27日付けで補正の却下の決定がなされているので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年2月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
放射線遮蔽組成物であって、
(i)予め決められた粒度の酸化鉛又は予め決められた粒度の鉛複合材と、
(ii)エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂と反応する第2の樹脂とを含む接着剤と、
を含んでなり、前記放射線遮蔽組成物は、硬化する前に自由流動性を有している、放射線遮蔽組成物。」

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用刊行物及びその記載事項、並びに引用発明は、上記「第2」[理由]「3」に記載したとおりである。

3 対比
本願発明は、本件補正発明の発明特定事項である「エポキシ及び前記第2の樹脂は、発熱反応を起し、混合物の温度を上昇させ、前記放射線遮蔽組成物は、スプレー缶の加圧源から対象物に塗工することが可能であり、硬化時において2.5mmの前記放射線遮蔽組成物の皮膜が、5000mRまでのX線量を遮蔽する」構成を省いたものである。
したがって、本願発明は引用発明である。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-15 
結審通知日 2015-05-19 
審決日 2015-06-01 
出願番号 特願2006-129272(P2006-129272)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G21F)
P 1 8・ 121- Z (G21F)
P 1 8・ 113- Z (G21F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 土屋 知久
伊藤 昌哉
発明の名称 放射線遮蔽組成物及びその製造方法  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  

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