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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N |
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管理番号 | 1306897 |
審判番号 | 不服2014-17690 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-09-05 |
確定日 | 2015-10-14 |
事件の表示 | 特願2011-541266「排ガスラインに液状の還元剤を液滴で付加するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日国際公開、WO2010/076084、平成24年 5月31日国内公表、特表2012-512358〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、2009年11月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年12月17日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成23年5月20日に特許法第184条の5第1項に規定する書面が提出され、同年7月20日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成25年8月5日付けで拒絶理由が通知され、同年11月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年4月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明について 本件出願の請求項1ないし13に係る発明は、平成25年11月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願時に願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。 「 【請求項1】 液滴で液状の還元剤(1)であって尿素溶液である還元剤を内燃エンジン(3)の排気ライン(2)に付加する方法であって、少なくとも以下の工程: (a)前記内燃エンジン(3)が作動している間に、少なくとも1つの排ガスパラメータ(4)を検出する工程、 (b)前記排ガスパラメータ(4)に応じて付加される前記還元剤(1)の液滴(6)の大きさ(5)を決定する工程、 (c)前記液滴(6)の前記決定された大きさ(5)に応じて、前記排気ライン(2)へ向かう前記還元剤(1)の第1の搬送圧力(7)を設定する工程、 (d)付加ユニット(8)により、前記還元剤(1)を前記排気ライン(2)に付加する工程、 を含む、方法。」 1 刊行物 (1)刊行物の記載 原査定の拒絶理由に引用され、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-38942号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の記載がある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、希薄燃焼可能な内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排気浄化装置に関するものである。」(段落【0001】) イ 「【0008】 【発明が解決しようとする課題】ところが内燃機関の排気ポートにおいて還元剤の供給をする場合、通常、排気ポートとNOx触媒との距離が離れており、内燃機関の運転条件によっては排気流に還元剤がのりにくく、還元剤の供給の効率が悪い場合が生じる。具体的には内燃機関が低回転で低負荷の領域では排気の流速が遅く添加される還元剤の粒径が大きいと、排気通路内において還元剤の壁面付着が多くなり、その結果、排気ポートにおけるリッチスパイクとNOx触媒でのリッチスパイクの度合いが異なってくる。 【0009】例えば、排気ポート側でのリッチスパイクが、目標とするリッチの度合いに達するものであっても、NOx触媒側では、壁面付着によってNOx触媒に到達する還元剤の量が減少してリッチの度合いが低下する。したがって目標とする還元剤の添加ができずに、NOx触媒でのNOx還元が十分に行われないことになる。 【0010】反対に、内燃機関の高負荷時において還元剤の粒径が小さいと、高負荷時には排気温度が高く排気管の温度も比較的高くなるために、NOx触媒に到達するまでに排気ポートから供給された還元剤の多くが蒸発、拡散し、NOx触媒に到達する還元剤の薄くなり、リッチの度合いが低下する。したがって上述した場合と同様にNOx触媒でのNOx還元が十分に行われない。 【0011】このようにしてNOx触媒のNOx吸収能力が飽和して回復できない状態が生じると、排気中のNOxがリークする虞がある。本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、内燃機関の運転状態が変化しても常にNOx触媒に適切な量の還元剤を供給することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。」(段落【0008】ないし【0011】) ウ 「【0012】 【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。すなわち、希薄燃焼可能な内燃機関の排気通路に設けられ、吸収したNOxを還元剤によって放出して還元するNOx触媒と、このNOx触媒の上流の排気通路に設けられた還元剤供給手段と、内燃機関の負荷を検出する負荷検出手段と、内燃機関の負荷に応じて添加還元剤の粒径を制御する粒径制御手段と、を備え、前記負荷検出手段により検出された負荷に基づいて粒径が制御された還元剤をNOx触媒に添加することを特徴とする。 【0013】内燃機関の低回転、低負荷時は排気の流速が遅く、粒径の大きい還元剤は排気流に乗りにくいが、添加する還元剤の粒径を小さくしてこれを排気流に乗せることで、排気通路内における還元剤の壁面付着を抑制することができる。すなわち内燃機関の低負荷のときは排気温度が低く排気の流速が遅いので、前述のように粒径を小さくすることで、排気通路内の壁面付着を低減させることができる。この場合、例えば還元剤の添加装置を電磁弁を利用するものとして、その開き初めと閉じ終わりはシートチョークにより噴射される還元剤の粒径が粗いことを利用し、還元剤の粒径を調整する。 【0014】一方、内燃機関の高回転、高負荷時には排気の流速が速く、排気が高温である。そこで還元剤の微粒化及び気化の促進されること、及び還元剤を排気流に乗せやすいことを考慮し、還元剤の粒径を大きくしてこれをNOx触媒に到達させる。本発明では以上のような制御によってNOx触媒を確実に行うことができる。 【0015】また本発明では、車両の運転状態に応じて還元剤添加の可否を判断する添加可否判断手段を備えることが望ましく、NOx触媒が活性温度にあるか否か、内燃機関の運転領域が還元剤添加可能な範囲にあるか否かを判断し、NOxを放出、還元させることが可能なときに還元剤の供給がされるようにして、還元剤がNOx触媒をすり抜けることを防止する。 【0016】また高負荷時には噴射時間を短くかつインターバルを短くする。このようにすれば低負荷時には還元剤の粒径が小さく、反対に高負荷時には粒径が大きくなる。 【0017】前記粒径制御手段は、還元剤の噴射圧力を変化させることで還元剤の粒径を制御するものが採用できる。還元剤の噴射時の圧力が高ければその粒径は小さくなり、噴射圧力が低ければ粒径は大きくなる。 【0018】また前記粒径制御手段は、還元剤の粒径の制御を還元剤の噴射ノズルの噴孔の大きさを調整することで行うものを採用できる。この噴射ノズルの噴孔が小さければ噴射される還元剤の粒径は小さくなり、反対に噴孔が大きければ粒径は大きくなる。 【0019】さらに前記粒径制御手段は、還元剤の粒径の制御を還元剤の温度を調整することで行うものを採用できる。すなわち内燃機関が低負荷で排気が低流量のときは還元剤の温度を高くし、反対に高負荷で排気が高流量のときは還元剤の温度を低くする。前者では温度の上昇によって還元剤の気化が促進され粒径は小さくなり排気通路の壁面付着は減少する。後者では気化が少ないので粒径は大きく保たれる。 【0020】さらにまた前記粒径制御手段は、還元剤の粒径の制御を還元剤の噴射ノズルに供給する空気量を調整することで行うものを採用できる。この場合は、噴射ノズルに供給される空気量が増大すれば、還元剤の粒径は小さくなる。 【0021】なお、前記に掲げた粒径制御手段は、可能な限りこれらを組み合わせても実施できる。本発明の排気浄化装置において、希薄燃焼可能な内燃機関としては、筒内直接噴射式のリーンバーンガソリンエンジンやディーゼルエンジンを例示することができる。 【0022】また前記負荷検出手段による負荷の検出は、アクセル開度センサの出力信号、またはエアフロメータによる吸入空気量を示す出力信号に基づいて負荷の程度を求めることができる。 【0023】本発明の排気浄化装置における排気浄化装置におけるNOx触媒としては、吸蔵還元型NOx触媒や選択還元型NOx触媒を例示することができる。吸蔵還元型NOx触媒は、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときにNOxを吸収し、流入する排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出し、N_(2)に還元する触媒である。この吸蔵還元型NOx触媒は、例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とが担持されてなる。 【0024】選択還元型NOx触媒は、酸素過剰の雰囲気で炭化水素の存在下でNOxを還元または分解する触媒をいい、ゼオライトにCu等の遷移金属をイオン交換して担持した触媒、ゼオライトまたはアルミナに貴金属を担持した触媒、等が含まれる。 【0025】本発明の排気浄化装置において、還元剤噴射手段は、還元剤供給ポンプ、排気通路に設けた還元剤噴射ノズル等で構成することができる。」(段落【0012】ないし【0025】) エ 「【0042】したがって、ディーゼルエンジンでは、NOx触媒のNOx吸収能力が飽和する前に所定のタイミングで、排気ガス中に還元剤を供給して排気ガス中の酸素濃度を低下せしめ、NOx触媒に吸収されたNOxを放出し還元する必要がある。尚、前記還元剤としては、一般に、ディーゼルエンジンの燃料である軽油を使用することができる。 【0043】そのため、この実施の形態では、ECU9によりエンジン1の運転状態の履歴からNOx触媒に吸収されたNOx量を推定し、その推定NOx量が予め設定した所定値に達したときに、所定時間だけ制御弁22を開弁して所定量の燃料を燃料添加ノズル19から排気中に噴射し、NOx触媒に流入する排気中の酸素濃度を低下させ、NOx触媒に吸収されたNOxを放出させてN_(2)に還元するようにしている。 【0044】ここで燃料添加ノズル19は燃料を排気集合管15に向かって噴射するので、添加された燃料は排気集合管15にスムーズに流れる。そして、燃料添加ノズル19は4番気筒の排気ポート13に取り付けられており、一方、排気マニホールド14におけるEGR管23の接続部位は1番気筒に近接した位置であるので、燃料添加ノズル19から添加された燃料がEGR管23に回り込むことはない。」(段落【0042】ないし【0044】) オ 「【0057】以下、排気ポート13において燃料添加ノズル19から還元剤を供給するに際し、ディーゼルエンジン1の負荷状態を判断し、特に排気の流速に応じて還元剤としての燃料(軽油)の粒径を制御する場合について説明する。 (第1の実施の形態)この実施の形態の排気浄化装置では、燃料添加パターンを高吸入空気量の場合と、低吸入空気量の場合とに分けて、それぞれ異なる燃料添加パターンによって制御するものとした。 【0058】この制御は、図3に示す燃料添加ルーチンに従って実行され、この処理ルーチンは、ECU9のROMに矛め記憶されており、CPUによって繰り返し実行されるルーチンである。 【0059】先ず、図3に示すように、ステップ100では、ディーゼルエンジン1の吸入空気量が低いか高いかを判断する。吸入空気量が低ければステップ101に進み、低吸入空気量マップによる燃料添加を実施し、また吸入空気量が高ければステップ102に進み、低吸入空気量マップによる燃料添加を実施する。 【0060】燃料の噴射弁の開き初めと閉じ終わりはシートチョークにより燃料粒径が粗くなる。そこで図4に示すような燃料添加調整を実施する。図4(A)は、低吸入空気量時における燃料添加を示し、aは噴射停止、bは噴射を表す。図示のように低吸入空気量時には噴射時間を長く、また噴射インターバルを長くする。このようにすれば噴射される燃料の粒径は小さくなり、排気の流速が遅くても排気の流れに乗りやすくなり、排気通路内に燃料が付着することが低減される。 【0061】図4(B)は、高吸入空気量時における燃料添加を示し、噴射時間を短く、インターバルをきわめて短くして複数回にわたり噴射し、比較的長いインターバルをおいてこれを繰り返す。このようにすれば噴射される燃料の粒径は大きくなり、添加された燃料が排気の流れに乗り、排気通路中で蒸発することなく、これをNOx触媒まで到達させることができる。 【0062】また、図5は電磁弁を使用した燃料噴射ノズル19から噴射される燃料粒径と、電磁弁のリフト量との関係を示し、このリフト量が多くなると燃料粒径は小さくなることを示している。したがって電磁弁のリフト量を変化させて添加される燃料粒径を調整することも可能である。 【0063】この実施の形態では、低吸入空気量と高吸入空気量を判断して切り換えているが、ディーゼルの場合は噴射量、または噴射量と回転数で領域を定めてもよい。 (第2の実施の形態)この実施の形態では、燃料噴射ノズル19からの燃料噴射の圧力を変化させて低吸入空気量または高吸入空気量に対応するようにした。 【0064】この燃料圧力(燃圧)調整は、図6に示す燃料添加ルーチンに従って実行され、この燃料添加ルーチンは、ECU9のROMに予め記憶されており、CPUによって繰り返し実行されるルーチンである。 【0065】燃料噴射ノズル19から燃料噴射の圧力が高くなると燃料の粒径は小さくなり微粒化するが、通常の燃料噴射に比べると噴射量が増加する。したがって同量の燃料を噴射する場合は、噴射期間を短くして添加量が同一になるように修正しなくてはならない。したがって燃圧の上昇と添加量との関係を予め求め、これをマップとしてECU9のROMに記憶し、ディーゼルエンジン1の運転状況に応じた一定量を供給する際には、圧力の変化に応じた期間の噴射がされるようにする。 【0066】図6に示すように、ステップ200では、ディーゼルエンジン1が低吸入空気量域の状態であるか、または高吸入空気量域であるか否かを判断する。もし吸入空気量が高ければステップ201に進み、通常燃圧で燃料添加を実施する。 【0067】一方、吸入空気量が低ければステップ202に進み、燃圧を上昇させ、燃料の添加量が増大しないように添加期間を短くして燃料添加を実施する。 ・・・(省略)・・・。」(段落【0057】ないし【0067】) (2)上記(1)及び図面から分かること ア 上記(1)オの段落【0057】の記載から、還元剤は、液滴で液状であることが分かる。 イ 上記(1)オの段落【0066】及び【0067】並びに図6の記載から、ステップ200では、ディーゼルエンジン1の吸入空気量を検出し、その結果に応じて、次のステップを、ステップ201にするかステップ202にするかを決定していることが分かる。また、上記(1)オの段落【0064】及び図6の記載等から、ディーゼルエンジン1が作動している間にステップ200を実行することは、明らかである。 ウ 上記(1)オの段落【0057】、【0066】及び【0067】の記載、並びに、上記(1)ウの段落【0013】及び【0022】の記載から、ステップ200でディーゼルエンジン1の吸入空気量を検出するのは、ディーゼルエンジン1の負荷状態を検出するためであり、上記イにおけるステップ201又はステップ202を決定することは、負荷状態を判断し、排気の流速に応じて還元剤の液滴の粒径を決定することであることが分かる。 エ 上記(1)オの段落【0066】及び【0067】の記載、並びに、上記(1)ウの段落【0017】の記載から、上記ウで決定した還元剤の液滴の粒径を実現するために、還元剤の噴射圧力を設定することが分かる。 オ 上記(1)オの段落【0066】及び【0067】並び上記(1)エの記載から、ステップ201又はステップ202では、上記エで設定した噴射圧力で、還元剤を燃料添加ノズル19から排気集合管15に向かって噴射することが分かる。 カ 上記アないしオから、ステップ200並びにステップ201及びステップ202は、排気の流速に応じて粒径の大きさ変更した還元剤を、ディーゼルエンジン1の排気集合管15に噴射する方法であることが分かる。 (3)刊行物に記載された発明 上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されているといえる。 「液滴で液状の還元剤をディーゼルエンジン1の排気集合管15に噴射する方法であって、 ディーゼルエンジン1が作動している間に、ディーゼルエンジン1の負荷状態を検出し、 ディーゼルエンジン1の負荷状態に応じて、噴射する還元剤の液滴の粒径を決定し、 決定した還元剤の液滴の粒径に応じて、排気集合管15へ向かって噴射する還元剤の噴射圧力を設定し、 燃料添加ノズル19により、還元剤を排気集合管15へ噴射する方法。」 2 対比 本願発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、刊行物に記載された発明における「液滴で液状の還元剤」及び「還元剤」は、その構成、機能及び技術意義からみて、本願発明における「液滴で液状の還元剤」及び「還元剤」に相当し、以下同様に、「ディーゼルエンジン1」は「内燃エンジン」に、「排気集合管15」は「排気ライン」に、「噴射する」は「付加する」に、「還元剤の液滴の粒径」は「還元剤の液滴の大きさ」に、「噴射圧力」は「第1の搬送圧力」に、「燃料添加ノズル19」は「付加ユニット」に、それぞれ相当する。 また、刊行物に記載された発明における「ディーゼルエンジン1の負荷状態」は、「内燃機関の運転状態を表す情報」という限りにおいて、本願発明における「排ガスパラメータ」に相当する。 してみると、本願発明と刊行物に記載された発明とは、 「液滴で液状の還元剤を内燃エンジンの排気ラインに付加する方法であって、少なくとも以下の工程: (a)内燃エンジンが作動している間に、少なくとも1つの内燃機関の運転状態を表す情報を検出する工程、 (b)内燃機関の運転状態を表す情報に応じて付加される還元剤の液滴の大きさを決定する工程、 (c)液滴の決定された大きさに応じて、排気ラインへ向かう還元剤の第1の搬送圧力を設定する工程、 (d)付加ユニットにより、還元剤を排気ラインに付加する工程、 を含む、方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明においては、還元剤が尿素溶液であるのに対して、刊行物に記載された発明においては、還元剤が尿素溶液であるか否か不明な点(以下、「相違点1」という。)。 (相違点2) 「内燃機関の運転状態を表す情報」に関し、本願発明においては、「排ガスパラメータ」であるのに対し、刊行物に記載された発明においては、「ディーゼルエンジン1の負荷状態」である点(以下、「相違点2」という。)。 3 判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 刊行物に記載された発明は、上記1(1)ウの段落【0023】及び【0024】に記載されているように、NOx触媒として吸蔵還元型NOx触媒や選択還元型NOx触媒が例示されたものであるところ、これらの触媒と共に用いる還元剤として尿素溶液を用いることは、本件出願の優先日前に周知の技術である(例として、特開2004-506830号公報[段落【0005】及び【0006】]、特開2005-299520号公報[段落【0015】及び【0016】並びに【0021】及び【0022】]及び特開2008-69731号公報[段落【0002】及び【0034】]等参照。以下、「周知技術」という。)。 してみると、刊行物に記載された発明における還元剤として、尿素溶液を採用し、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。 (2)相違点2について 刊行物に記載された発明の「ディーゼルエンジン1の負荷状態」は、上記1(1)ウの段落【0013】及び上記1(1)オの段落【0057】に記載されているように、排気の流速を把握するためのものであるから、ディーゼルエンジン1の負荷状態を検出して排気の流速を把握することに代えて、排気の流速を直接検出するようにすることは、当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎないものである。 一方、本件出願の明細書の段落【0017】を参照すると、排ガス流速、すなわち排気の流速は、排ガスパラメータの1つである。 してみると、刊行物に記載された発明において、排気の流速を把握するために「ディーゼルエンジン1の負荷状態」を検出することに代えて、排ガスパラメータの1つである排気の流速を検出するようにし、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。 そして、本願発明は、全体としてみても、刊行物に記載された発明及び周知技術から予想される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 上記第2のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-05-12 |
結審通知日 | 2015-05-19 |
審決日 | 2015-06-01 |
出願番号 | 特願2011-541266(P2011-541266) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲村 正義 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
佐々木 訓 松下 聡 |
発明の名称 | 排ガスラインに液状の還元剤を液滴で付加するための方法および装置 |
代理人 | 寺田 雅弘 |
代理人 | 多田 繁範 |