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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1307338
審判番号 不服2014-13602  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-11 
確定日 2015-11-02 
事件の表示 特願2010-267823「コンピュータ断層像撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日出願公開、特開2011- 67659〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年1月20日を出願日とする特願2000-12322号の一部を新たな特許出願とした出願(優先権主張:平成11年1月20日)であって、その出願日は、特許法第44条第2項の規定により平成12年1月20日とみなされるものである。
当該出願に対して、平成25年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年8月13日付で意見書が提出されたが、平成26年4月7日付けで拒絶査定がなされ、その謄本は同月11日に請求人に送達された。これに対し、平成26年7月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段と、
この投影データ収集手段により収集されたファンビーム投影データをバックプロジェクションすることにより、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段と、
前記部分画像データのうちの少なくとも複数に対して互いに異なる係数を乗算して不連続な重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段と、
前記重み付け手段による前記部分画像データに対する重み付けの係数を変更する重み付け変更手段と
を有することを特徴とするコンピュータ断層像撮影装置。」

第3 引用例の記載事項及び引用例に記載された発明
1 本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平8-24253号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審により付加したもの。)
(1)引用例1に記載の事項
引用例1には、つぎの事項が記載されている。

ア「【0009】
【実施例】
以下、この発明の好ましい一実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。図1はこの発明をローテイション/ローテイション型X線CT装置に適用した一実施例を示すものである。この図1において、X線管1とX線検出器2とが対向配置されており、その間に被検体21が配置できるようになっていて、X線管1とX線検出器2とが一体となって図示しない回転機構により被検体21の周囲に回転させられるようになっている。
【0010】
被検体21を透過したX線はX線検出器2に入射し、透過X線強度を表わす信号が得られる。これにより被検体21におけるX線吸収を示すデータが得られる。X線検出器2は扇型に形成されていて、多数の検出エレメントが円弧方向に並べられている。そこで、X線検出器2から得られるデータは、X線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータということになる。
【0011】
このプロファイルデータは、プロジェクションデータ作成装置3に送られてバックプロジェクションのためのプロジェクションデータに変換される。X線管1とX線検出器2とが基準位置(0゜の角度)から回転していくとき、各角度ごとのプロジェクションデータが順次得られるので、これがバックプロジェクタ4によって、セレクタ5により指定されたメモリ6、7、8、9のいずれかにバックプロジェクションされる。4つのメモリ6、7、8、9は、バックプロジェクション用のメモリであって、それぞれ1プレーンずつとなっている。つまり、4つのメモリ6、7、8、9の各々は、再構成画像が256×256のマトリクスで表わされるピクセルを有するものであれば、そのピクセルに対応した256×256のアドレスを有している。
【0012】
ここでは、X線管1とX線検出器2とが連続回転するとき、図示のようにその0゜?90゜の角度範囲を範囲A、90゜?180゜の角度範囲を範囲B、180゜?270゜の角度範囲を範囲C、270゜?360゜の角度範囲を範囲Dとする。連続回転に伴いプロジェクションデータが、図2に示すように、1回転目の範囲A、B、C、D、2回転目の範囲A、B、C、D、…、と順次得られる。セレクタ5は、範囲Aのプロジェクションデータが得られているときは、メモリ6を指定して、このメモリ6に範囲Aのプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされるようにし、範囲B、C、Dではメモリ7、8、9をそれぞれ指定し、それらに範囲B、C、Dの各々のプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされるようにしている。
【0013】
こうして1回転目が終了したときは、メモリ6、7、8、9の各々に90゜ずつのプロジェクションデータがバックプロジェクションされ、全体では360゜のプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされた状態となるので、これら6、7、8、9の各々の対応するピクセルを加算器10で加算すれば、0゜?360゜の360゜分のプロジェクションデータによる第1の画像#1が得られたことになる(図2参照)。これは、バックプロジェクションという処理が、投影線上のピクセルにプロジェクションデータを加算していくものであることによる。
【0014】
つぎに、1回転目が終了し、それに続く1/4回転目に入ると、メモリ6の初期化が行なわれた後、このメモリ6に範囲Aでのプロジェクションデータがバックプロジェクションされる。最初から数えて1(1/4)回転が終了した時点で、加算器10によりメモリ6、7、8、9の同一ピクセル同士を加算すれば、図2に示すように、90゜?450゜の360゜分のプロジェクションデータによる第2の画像#2が得られたことになる。
【0015】
この場合、バックプロジェクション用メモリの初期化とそこへの再書き込みは、360゜分の全メモリのうち1/4に相当するメモリ6のみについて行なえばよく、他の3/4に相当するメモリ7、8、9についてはなんらの操作も行なわず、そのときまでに格納されていた内容を単にそのまま読み出して加算器10で加算すればよい。つまり、バックプロジェクション操作が全体の1/4に相当するだけでよくなるので、第1の画像#1を得た後第2の画像#2を得るまでの時間がきわめて短いものとなる。
【0016】
つぎの1/4回転が終了すると第3の画像#3が得られ、さらにつぎの1/4回転が終了すると第4の画像が得られるというように、1/4回転ごとにリアルタイムでつぎつぎに360゜分のプロジェクションデータによる画像が得られる。これらの画像は順次画像メモリ11を経て表示装置12に送られて表示される。したがって表示画面上では、X線管1とX線検出器2の撮像系の連続回転に伴って、その回転の1/4回転ごとに、時系列的な多数の画像がリアルタイムで順次表示されることになる。」

イ 図1


(2)引用例1に記載された発明について
ア 図1より、引用例1記載のX線CT装置は、X線管1と、X線検出器2と、プロジェクションデータ作成装置3と、バックプロジェクタ4と、セレクタ5と、メモリ6?9と、加算器10とを備えたものであることが見て取れる。

イ 以上のことから、引用例1には、つぎの発明が記載されていると認められる。

「X線管1と、X線検出器2と、プロジェクションデータ作成装置3と、バックプロジェクタ4と、セレクタ5と、メモリ6?9と、加算器10とを備えたローテイション/ローテイション型X線CT装置であって、
X線管1とX線検出器2とが対向配置されており、その間に被検体21が配置できるようになっており、X線管1とX線検出器2とが一体となって被検体21の周囲を回転するようになっており、X線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータをX線検出器2から得るとともに、このプロファイルデータは、プロジェクションデータ作成装置3に送られてバックプロジェクションのためのプロジェクションデータに変換され、
X線管1とX線検出器2とが基準位置(0゜の角度)から回転していくとき、各角度ごとのプロジェクションデータが順次得られるので、これがバックプロジェクタ4によって、セレクタ5により指定されたメモリ6、7、8、9のいずれかにバックプロジェクションされ、
0゜?90゜の角度範囲を範囲A、90゜?180゜の角度範囲を範囲B、180゜?270゜の角度範囲を範囲C、270゜?360゜の角度範囲を範囲Dとすると、連続回転に伴いプロジェクションデータが、1回転目の範囲A、B、C、D、2回転目の範囲A、B、C、D、…、と順次得られ、セレクタ5は、範囲Aのプロジェクションデータが得られているときは、メモリ6を指定して、範囲Aのプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされるようにし、範囲B、C、Dではメモリ7、8、9をそれぞれ指定し、それらに範囲B、C、Dの各々のプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされるようにし、1回転目が終了したときは、メモリ6、7、8、9の各々に90゜ずつのプロジェクションデータがバックプロジェクションされ、全体では360゜のプロジェクションデータのバックプロジェクションがなされた状態となり、これら6、7、8、9の各々の対応するピクセルを加算器10で加算して、0゜?360゜の360゜分のプロジェクションデータによる第1の画像#1を取得し、1回転目が終了し、それに続く1/4回転目に入ると、メモリ6の初期化が行なわれた後、このメモリ6に範囲Aでのプロジェクションデータがバックプロジェクションされ、最初から数えて1(1/4)回転が終了した時点で、加算器10によりメモリ6、7、8、9の同一ピクセル同士を加算して、90゜?450゜の360゜分のプロジェクションデータによる第2の画像#2を取得し、つぎの1/4回転が終了すると第3の画像#3を取得し、さらにつぎの1/4回転が終了すると第4の画像を取得して、1/4回転ごとにリアルタイムでつぎつぎに360゜分のプロジェクションデータによる画像を取得するローテイション/ローテイション型X線CT装置。」(以下、「引用発明」という。)

2 本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-9589号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審により付加したもの。)
(1)引用例2に記載の事項
ア「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ほぼ同一断面を連続的に計測する際に、アーチファクトの軽減された断層像を高速で得るのに好適なX線CT装置及び画像再構成方法に関する。」

イ「【0013】本発明は、連続的にまたは継続的に撮影を実施した場合において、高速に連続的な画像を再構成することを可能とすると共にアーチファクトの低減を可能にするX線CT装置と画像再構成方法を提供することを目的とする。」

ウ「【0024】本発明において基本的なメモリ10(#1?#7)の使い方、及び重みW_(1)?W_(7)の設定例について以下で述べる。・・・(略)・・・
【0025】(2)、ビュー角度が対向するデータの平均化をはかった例。この例を図3(a)、図9(a)に示す。図9(a)は図3(a)の分割再構成画像に対する重みの変化を示す。
(a)、この例は、30°分の分割再構成画像を得るごとに重みW_(1)?W_(7)を変更する例である。変更の仕方は、互いに対向する関係にある画像に対して、重みの和が“1”になるように変更する。この重み付けは、対向関係にあるデータ相互を加算して加重平均をとり、端部アーチファクトの減少をはかるために行う。
(b)、先ず0°?180°の第1の再構成画像r_(1)(これは図2(a)(b)のr_(1)とは内容的に異なるが、同一記号を使う。以下同じ)を得るには、W_(1)=W_(7)=1/2、W_(2)?W_(6)は1とする。この場合は、g_(1)、g_(7)が対向関係にある。この設定のもとで、0°?30°の分割再構成画像g_(1)を#1に格納する。以下、30°?60°、60°?90°、…、180°?210°の各分割再構成画像g_(2)、g_(3)…、g_(7)を#2、#3、…、#7に格納する。そして、これらの画像を読み出して乗算器13で重み付け乗算を行い、合成器25で加算し、正規の再構成画像r_(1)を得る。この画像r_(1)で、画像g_(1)と画像g_(7)とはビュー角度が互いに対向関係にあるデータであり、この対向データを加算し、1/2化したことで加重平均値となる。かくして端部の不連続性が軽減され、端部不連続によるアーチファクトを軽減できた。
(c)、次に第2の再構成画像r_(2)を得るには、W_(1)=W_(2)=1/2、W_(3)?W_(7)は1とする。この場合は、g_(2)とg_(8)が対向関係にある。この設定のもとで210°?240°の分割再構成画像g_(8)を#1に格納する。この際、#1に格納してあった画像g_(1)はクリアする。そして、#1?#7の画像g_(8)、g_(2)、g_(3)、…g_(7)について、乗算器13を介して合成器25で加算する。この際、画像g_(8)とg_(2)とが対向関係になり、加算平均されて、端部の不連続性を軽減した画像r_(2)を得る。
(d)、画像r_(3)を得るには、W_(2)=W_(3)=1/2、W_(1)、W_(4)?W_(7)は1にする。この場合は、g_(3)とg_(9)が対向関係にある。画像r_(4)を得るにはW_(3)=W_(4)=1/2、W_(1)、W_(2)、W_(5)?W_(7)は1とする。以下同様に、逐次的に再構成画像を得る毎にその切替の短い時間帯の中で重みをその都度変更する。」

エ「【0027】(4)、図3(b)、図9(b)は端部の不連続性の軽減を一層はかった例を示す。図9(b)は図3(b)の分割再構成画像に対する重みの変化を示す。この例では、メモリ10は8個(#1?#8)、及び重み係数W_(1)?W_(8)の乗算器13も8個用意する。
(a)、先ず第1再構成画像r_(1)を得る際には、W_(1)=1/4、W_(7)=3/4、W_(2)=1/2、W_(8)=1/2、W_(3)?W_(6)は1に設定する。この場合はg_(1)とg_(7)、g_(2)とg_(8)がそれぞれ対向関係にある。そして0°?30°の画像g_(1)を#1、30°?60°の画像g_(2)を#2、…、180°?210°の画像g_(7)を#7へ、210°?240°の画像g_(8)を#8へ、格納する。そして、乗算器13を介して読み出し加算することで画像r_(1)を得る。
(b)、第2再構成画像r_(2)を得る際には、W_(1)=W_(3)=1/2、W_(2)=1/4、W_(8)=3/4、W_(4)?W_(7)は1に設定する。この場合は、g_(2)とg_(8)、g_(3)とg_(9)がそれぞれ対向関係にある。そして、240°?270°の画像g_(9)を#1へ格納し、加算し、画像r_(2)を得る。以下同様に、r_(3)、r_(4)、…を得る。互いに対向関係にある分割画像データに対する重みの例としては、和が1となる条件を満たしながら、様々な配分が考えられるがリアルタイム性が重視される場合は最新のデータに対しての重みをより大きい値にする方が望ましい。」

第4 本願発明と引用発明との対比
1
(1)引用発明の「X線管1」、「被検体21」、「プロジェクションデータ」は、それぞれ本願発明の「X線源」、「被検体」、「投影データ」に相当する。

(2)引用発明は、「X線管1とX線検出器2とが対向配置され」て、「その間に被検体21が配置」され、「X線管1とX線検出器2とが基準位置(0゜の角度)から回転していくとき」、「X線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータをX線検出器2から得るとともに、このプロファイルデータは、プロジェクションデータ作成装置3」によって「プロジェクションデータに変換され、」「各角度ごとのプロジェクションデータが順次得られる」ものであるから、引用発明の「プロジェクションデータ作成装置3」は、プロジェクションデータを収集するものといえる。

(3)したがって、引用発明の「X線管1とX線検出器2とが対向配置され」て、「その間に被検体21が配置」され、「X線管1とX線検出器2とが基準位置(0゜の角度)から回転していくとき」、「X線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータ」を変換して「各角度毎のプロジェクションデータを順次得」る「プロジェクションデータ作成装置3」は、本願発明の「X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段」に相当する。

2
(1)引用発明の「プロジェクションデータ」は、「X線管1から扇形に放出されたX線によるX線吸収を示すプロファイルデータ」を「変換」したものであるから、本願発明の「ファンビーム投影データ」に相当する。

(2)また、引用発明は「メモリ6、7、8、9の各々に90゜ずつのプロジェクションデータ」を「バックプロジェクション」し、「6、7、8、9の各々の対応するピクセルを加算器10で加算して、」「360゜分の」画像を得るものであるから、各メモリに「バックプロジェクション」されたものは、部分画像データであるといえる。

(3)よって、上記1(2)も踏まえると、引用発明の「プロジェクションデータ作成装置3」により収集された「各角度ごとのプロジェクションデータ」を「セレクタ5により指定されたメモリ6、7、8、9のいずれかにバックプロジェクション」する「バックプロジェクタ4」は、本願発明の「この投影データ収集手段により収集されたファンビーム投影データをバックプロジェクションすることにより、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段」に相当する。

3
(1)引用発明は、「X線CT装置」であり、「X線管1とX線検出器2とが対向配置され」て、「その間に被検体21が配置」されるものであり、「加算器10によりメモリ6、7、8、9の同一ピクセル同士を加算して、」「360゜分の」「画像」を得るものであるから、引用発明の「画像」は、「被検体21」の断層像であることは技術常識から明らかである。

(2)よって、上記2(2)も踏まえると、引用発明の「メモリ6、7、8、9の各々に対応するピクセル」を「加算して」、「被検体21」の「画像」を得る「加算器10」と、本願発明の「前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段」とは、「複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段」という点で共通する。

4
(1)引用発明の「ローテイション/ローテイション型X線CT装置」は、X線管とX線検出器とがともに被検体の周囲を回転する型のX線CT装置を意味するものであり、CTはコンピュータ断層撮影の略称であるから、本願発明の「コンピュータ断層撮影装置」に相当する。

5 してみると、本願発明と、引用発明とは、つぎの一致点で一致し、つぎの相違点において相違する。

<一致点>
X線源に対して被検体を挟んで前記被検体への投影方向を周期的に変化させながら前記被検体の投影データを順次収集する投影データ収集手段と、
この投影データ収集手段により収集されたファンビーム投影データをバックプロジェクションすることにより、予め設定された所定範囲毎の部分画像データを生成する部分画像生成手段と、
複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成する断層像生成手段と、
を有するコンピュータ断層像撮影装置。

<相違点>
断層像を生成するために、補正発明では、前記部分画像データのうちの少なくとも複数に対して互いに異なる係数を乗算して不連続な重み付けを行う重み付け手段と
前記重み付け手段による前記部分画像データに対する重み付けの係数を変更する重み付け変更手段とを有し
前記重み付け手段で重み付けされた部分画像データを含む複数の部分画像データに基づいて前記被検体の断層像を生成するのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

第5 当審の判断
1 相違点について
(1)「投影データの内、開始部分と終了部分を重複させ、その部分を重み付けしスムージングさせることによって、アーチファクトを軽減させること」は、本願の優先権主張日前に当業者に知られた技術常識(例えば、特開平9-47449号公報の【0005】等参照)であり、重み付け手段の構成を備えていない引用発明においても、アーチファクト低減のために投影データの内、開始部分と終了部分を重複させ、その部分を重み付けしようとすることは、当業者が当然想起し得ることである。

(2)そして、引用例2には、「分割再構成画像を得るごとに重みW_(1)?W_(7)を変更」して、「端部アーチファクトの減少をはか」ったものであって、「先ず」「第1の再構成画像r_(1)を得る」ために、「W_(1)=W_(7)=1/2、W_(2)?W_(6)」を「1と」し、「分割再構成画像g_(1)を」「メモリ」「#1に格納」し、「各分割再構成画像g_(2)、g_(3)…、g_(7)を」「メモリ」「#2、#3、…、#7に格納」し、「これらの画像を読み出して乗算器13で重み付け乗算を行い、合成器25で加算し、正規の再構成画像r_(1)を得」、「次に」「第2の再構成画像r_(2)を得る」ために、「W_(1)=W_(2)=1/2、W_(3)?W_(7)」を「1と」し、「分割再構成画像g_(8)を」「#1に格納してあった画像g_(1)」を「クリア」した後に、「#1に格納」し、「#1?#7の画像g_(8)、g_(2)、g_(3)、…g_(7)について、乗算器13を介して合成器25で加算」し、「端部の不連続性を軽減した画像r_(2)を得」、続いて「画像r_(3)を得る」ために、「W_(2)=W_(3)=1/2、W_(1)、W_(4)?W_(7)」を「1と」し、「画像r_(4)を得る」ために、「W_(3)=W_(4)=1/2、W_(1)、W_(2)、W_(5)?W_(7)」を「1と」し、「以下同様に、逐次的に再構成画像を得る毎にその切替の短い時間帯の中で重みをその都度変更」するように構成した「X線CT装置」が記載されている(上記第3 2 ア、ウ)。

(3)してみると、引用発明において、引用発明における「メモリ6、7、8、9」と「加算器10」との間に、引用例2記載の重み付け乗算を行う「乗算器13」を付加するとともに、「各角度ごとのプロジェクションデータ」を「メモリ6、7、8、9のいずれかにバックプロジェクション」する毎に、引用例2記載の「再構成画像を得る毎に」、「重みをその都度変更」させる技術を適用することは、当業者が容易に想到しうることである。

(4)そして、本願発明の作用効果は、引用発明、引用例2及び技術常識に基づいて当業者が予測し得る程度のことであって格別のものとはいえない。

(5)小括
以上のとおりであり、本願発明は、引用発明及び引用例2及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、請求人は、平成26年7月11日付け審判請求書において、以下の3点を主張している。
ア 一方、本願の請求項1に係る発明は、ファンビームの投影データから部分画像を生成し、かつ、フル再構成法により断層像の生成を行いますが、引用文献2に記載される技術は、ファンビームを平行ビームに変換しこのデータから部分画像を生成し、かつ、ハーフ再構成法により断層像の生成を行う点で相違いたします。

イ 審査官殿は、引用文献1に記載される技術と引用文献2に記載される技術の組み合わせから、本願の請求項1に係る発明の進歩性を否定されておりますが、引用文献2においてはその記載の全てにおいて、ファンビームを平行ビームに変換することが前提となっております。ファンビームを平行ビームに変換するためには、実際には複数時点で取得されたファンビームのデータから互いに平行なビームを抜き出して組み合わせなければなりません。つまり、各投影データは時間的な広がりを持ったデータであり、本願発明のように重み付けを行わなければデータ取得時間差がシビアにアーチファクトに影響するというものではありません。
したがって、平行ビームにおいての画像再構成しか記載されていない引用文献2に記載される技術を、引用文献1に記載される技術のようなファンビームでの画像再構成に適応するという動機付けがそもそも発生しえないものと思料致します。
確かに、審査官殿のご指摘のように、引用文献1および引用文献2にそれぞれ記載される技術は、部分画像生成手段と、複数の部分画像データに基づいて被検体の断層像を生成する断層像生成手段と、を有するコンピュータ断層像撮影装置に関するものであるという上位概念の部分においては共通してはおります。またアーチファクトを抑制すること自体は一般的な技術課題であり、画像を良くするために考慮する技術事項ではあります。しかしながら、それをもって引用文献1および引用文献2にそれぞれ記載される技術を組み合わせられるかどうかは、前述の動機付けの有無の観点も含めて判断されるべきものであると思料致します。

ウ 更に、引用文献2では180°のデータ範囲で再構成を行ういわゆるハーフ再構成法についてのみ記述されております。しかしながらファンビーム再構成においてハーフ再構成を行うためには180°+ファン角度のデータが必要となり、かつ、再構成に用いるその180°+ファン角度の範囲の最初と最後付近のデータにおいては、対向ビームのデータを補償するためにデータ単位での連続的な重み付けが必須であり、部分画像単位での重み付けを行うことはできません。ハーフ再構成でこのような部分画像単位での重み付け再構成ができるのは、平行ビームへの変換を経ているからであって、このような引用文献2の記載に基づいて、フル再構成であれば、本願発明のようなファンビーム再構成における部分画像での重み付けが可能であることに想到することは、当業者であっても容易ではないと思料致します。

上記主張について検討する。
ア 本願の請求項1に係る発明は、フル再構成に特定されているものではないところ、上記アのうち、本願の請求項1に係る発明がフル構成であることを根拠とする出願人の主張は、特許請求の範囲に基づくものではないから、採用することができない。また、引用文献2に記載される技術事項が本願発明の技術と相違するとしても、上記相違点の想到容易性の判断を左右するものではないことは、下記イのとおりである。

イ 引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用するにあたって、引用文献2より引用した技術事項は、再構成画像を得るために、分割再構成画像をメモリに順次格納するとともに、それに応じて各メモリに格納された分割再構成画像の重み付けを順次変更するように構成した点であり、当該技術事項は、メモリと重み付け手段の制御に関するものであって、ファンビームを平行ビームに変換することとは、直接的に関連があるものではない。よって、引用文献2に記載の発明が、ファンビームを平行ビームに変換する方法であったとしても、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用することの阻害要因となるものではない。
そして、上記(1)?(3)において言及したとおり、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用することには動機付けがあるものといえるから請求人の主張イも採用することができない。

ウ 上記イでも検討したように、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用するにあたって、引用文献2より引用した技術事項は、再構成画像を得るために、分割再構成画像をメモリに順次格納するとともに、それに応じて各メモリに格納された分割再構成画像の重み付けを順次変更するように構成した点であり、当該技術事項は、メモリと重み付け手段の制御に関するものであって、ハーフ再構成のCT装置であっても、フル再構成のCT装置であっても適用可能なものであると認められる。
そして、引用発明は、メモリに格納された部分画像を用いて断層像を生成する構成を既に有するものであるし、上記(1)?(3)において言及したとおり、引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用することには動機付けがあるものといえるから請求人の主張ウも採用することができない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2015-09-01 
結審通知日 2015-09-04 
審決日 2015-09-18 
出願番号 特願2010-267823(P2010-267823)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 孝徳  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤田 年彦
麻生 哲朗
発明の名称 コンピュータ断層像撮影装置  
代理人 原 拓実  
代理人 寺西 功一  
代理人 小林 美生子  
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