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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1307363
審判番号 不服2014-16425  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-20 
確定日 2015-11-05 
事件の表示 特願2009-221340「情報処理装置、情報処理装置の制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日出願公開、特開2011- 71760〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年9月25日を出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

手続補正 :平成24年 9月19日
拒絶理由通知 :平成25年 8月30日(起案日)
手続補正 :平成25年11月 5日
拒絶査定 :平成26年 5月15日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成26年 8月20日
手続補正 :平成26年 8月20日
拒絶理由(当審・最初) :平成27年 5月21日(起案日)
手続補正 :平成27年 7月24日

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年7月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。((A)ないし(F)は当審が付与した。以下、構成要件(A)、構成要件(B)・・などという。)

【請求項1】
(A)情報処理装置であって、
(B)ハードディクスと、
(C)ネットワークを介してデータを受信するネットワークインターフェース部と、
(D)前記ネットワークインターフェース部によって受信されたデータを受信して処理する制御部と、
(E)前記プロセッサおよび前記ハードディスクへの電力供給が停止される省電力状態のときに、前記ネットワークインターフェース部が第1パケットパターンのパケットを受信した場合、前記プロセッサへの電力供給を停止したまま前記ハードディスクに電力を供給し、前記ネットワークインターフェース部が第2パケットパターンのパケットを受信した場合、前記ハードディスクおよび前記プロセッサに電力を供給する電源制御手段と、を備え、
(F)前記ネットワークインターフェース部は、前記第1パケットパターンのパケットを受信した場合、前記ハードディスクを参照することによって前記第1パケットパターンのパケットを処理することを特徴とする情報処理装置。

第3 先願明細書の記載事項
(1)先願
当審における拒絶の理由の通知において引用された「特願2009-77507号(特開2010-228239号)」(以下「先願」と表記。)は、平成21年3月26日に出願され、平成22年10月14日に出願公開されたものであって,本件出願の出願日(平成21年9月25日)前に出願され、本件出願の後に出願公開されたものである。
更に、先願に係る発明者と本件出願に係る発明者とが同一の者であるということも、また、本件出願の時の出願人と先願の出願人とが同一の者であるということもできない。

(2)先願明細書の記載
上記先願の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

【0001】
本発明は、メモリに格納されるプログラムを使用して、特定の処理を実行する処理装置に関する。特に、処理装置の消費電力を低減させる技術に関する。

【0018】
(プリンタの構成)
図面を参照して実施例を説明する。図1は、本実施例のプリンタ10の概略図を示す。プリンタ10は、制御部12とネットワークインターフェイス30(以下では、「ネットワークI/F30」という)とプリントエンジン34と表示パネル38等を有する。制御部12は、メインCPU14とメイン用クロック回路16とROM18と2つのRAM20,22とサブCPU24とサブ用クロック回路26とMACコントローラ28とエンジン制御回路32とパネル制御回路36等を有する。
【0019】
メインCPU14は、第2RAM22に格納されているプログラムに従って様々な処理を実行する。メインCPU14は、タイマ機構を内蔵している。以下では、このタイマのことを待機状態タイマと呼ぶ。メイン用クロック回路16は、メインCPU14にクロック信号を供給する。メインCPU14にクロック信号が供給されている間は、メインCPU14は非スリープ状態である。メインCPU14にクロック信号が供給されていない間は、メインCPU14はスリープ状態である。なお、後述するように、メイン用クロック回路16は、サブCPU24によって制御される。
【0020】
サブCPU24は、第1RAM20及び第2RAM22に格納されているプログラムに従って様々な処理を実行する。サブ用クロック回路26は、サブCPU24にクロック信号を供給する。サブ用クロック回路26のクロック信号の周波数は、メイン用クロック回路16のクロック信号の周波数よりも低い。従って、メインCPU14を駆動するための消費電力と比べて、サブCPU24を駆動するための消費電力は小さい。サブ用クロック回路26は、プリンタ10の電源がONにされる(以下ではプリンタ10が起動されるともいう)と、サブCPU24にクロック信号を供給する。また、プリンタ10の電源がOFFにされると、サブCPU24へのクロック信号を停止する。即ち、サブCPU24は、プリンタ10が起動されている間、スリープ状態には設定されず、非スリープ状態で維持される。
【0021】
ROM18には、メインCPU14及びサブCPU24によって実行される複数のプログラムがそれぞれ圧縮された状態で格納されている。各プログラムは、プリンタ10が起動されたときに、第1RAM20又は第2RAM22に展開される。メインCPU14又はサブCPU24は、第1RAM20又は第2RAM22に展開されたプログラムを使用して処理を実行する。ROM18に格納されている全てのプログラムは、一旦、第2RAM22に展開される。次いで、第2RAM22に展開された複数のプログラムのうち、予め決められているプログラムが、第1RAM20にロードされる。なお、図示省略されているが、制御部12は、第1RAM20と第2RAM22のそれぞれに対してクロック信号を供給するための回路も有する。
【0022】
第1RAM20は、SRAMである。図2は、第1RAM20(図1)の格納領域の構成の一例を示す。第1RAM20は、第1省電力処理プログラム格納領域52と、第1代理応答プログラム格納領域54と、第1代理応答用情報格納領域56と、状態変数格納領域58と、代理応答処理管理テーブル60を備える。
【0023】
第1省電力処理プログラム格納領域52には、後述するサブCPU24が省電力処理(図10,11参照)を実行するためのプログラムが格納される。メインCPU14は、第2RAM22に展開された複数のプログラムのうち、サブCPU用の省電力処理プログラムを第1省電力処理プログラム格納領域52にロードして格納する。

【0025】
第1代理応答用情報格納領域56には、サブCPU24がメインCPU14に代理して処理を実行するために必要な情報が格納される。第1代理応答用情報格納領域56に格納される情報の一例として、プリンタ10のIPアドレス、MACアドレス、ノード名等が挙げられる。
【0026】
状態変数格納領域58は、プリンタ10の状態を示す状態変数が格納されている。プリンタ10は、「処理状態」、「待機状態」、「ライトスリープ状態(Lスリープ状態)」、「ディープスリープ状態(Dスリープ状態)」のいずれかの状態で動作する。従って、状態変数格納領域58には、4つの状態に対応する4つの値のうちの1つの値が格納される。

【0034】
第2RAM22(図1)は、SDRAMである。第2RAM22は、メインCPU14とサブCPU24の両者からアクセス可能である。第2RAM22は、第1RAM20よりもメモリの総容量が大きい。このため、第2RAM22は、第1RAM20と比べて、その消費電力が高い。図4は、第2RAM22(図1)の格納領域の構成を示す一例を示す。第2RAM22は、ネットワーク処理プログラム格納領域82と、第2省電力処理プログラム格納領域84と、第2代理応答プログラム格納領域86と、第3代理応答プログラム格納領域88と、第2代理応答用情報格納領域90を備える。

【0042】
図1に示すMACコントローラ28は、ネットワークI/F30によって受信されたパケットをプリンタ10が処理可能な形式に変換する。MACコントローラ28は、例えば、メインCPU14によってパケットの送信が指示されると、第2RAM22からパケットを読み出し、外部装置に送信する、即ち、DMA(Direct Memory Access)を実行する。エンジン制御回路32は、メインCPU14からの指示に従って、プリントエンジン34を制御する。パネル制御回路36は、メインCPU14からの指示に従って、表示パネル38を制御する。表示パネル38は、LCDである。パネル制御回路36は、表示パネル38をON状態とOFF状態との間で移行させる。即ち、パネル制御回路36は、表示パネル38に電圧を印加することによって表示パネル38をON状態とし、電圧の印加を停止することによって表示パネル38をOFF状態とする。

【0054】
(サブCPUの省電力処理)
続いて、サブCPU24が実行する省電力処理の内容を説明する。図10,11は、サブCPU24によって実行される省電力処理のフローチャートを示す。図10,11の処理は、プリンタ10が起動されたことをトリガとして開始される。サブCPU24は、第1RAM20の第1省電力処理プログラム格納領域52(図2参照)に格納されているプログラムを使用して、以下の処理を実行する。最初に、サブCPU24は、WAIT命令を実行する(S50)。サブCPU24は、割り込む要求を受けるまで待機する(即ち実行停止状態に移行する)。上述したように、メインCPU14は、図8のS34において、サブCPU24に割り込む要求を発行する。これにより、サブCPU24の実行停止状態が解除され、S52に進む。
【0055】
S52では、サブCPU24は、第1RAM20の状態変数格納領域58(図2参照)に格納されている状態変数がDスリープ状態98を示すか否かを判断する。S52でNOの場合、S50に進む。即ち、サブCPU24は、状態変数がDスリープ状態98以外を示す場合、実行停止状態で待機する。
【0056】
S52でYESの場合、サブCPU24は、メイン用クロック回路16(図1参照)にクロック供給の停止を指示する(S54)。この結果、メインCPU14は、非スリープ状態からスリープ状態に移行する。続いて、サブCPU24は、第2RAM22を通常動作モードからセルフリフレッシュモードに移行させる(S56)。第2RAM22がセルフリフレッシュモードである間は、第2RAM22から情報を読み出すことができない。第2RAM22がセルフリフレッシュモードである場合、通常動作モードと比べて、第2RAM22の消費電力は低い。サブCPU24は、外部装置からのパケットを受信することを監視している(S58)。パケットを受信する(S58でYES)と、サブCPU24は、当該パケットの送信先として、プリンタ10のIPアドレスが指定されているか否かを判断する(S60)。なお、ブロードキャストパケットの場合は、S60でYESと判断される。S60でNOの場合、S58に戻る。一方において、S60でYESの場合、サブCPU24は、受信パケットが、サブCPU24がメインCPU14に代理して処理すべきパケットであるか否か、換言すれば、受信パケットが代理応答処理の対象パケットであるか否かを判断する(S62)。具体的には、サブCPU24は、受信パケットのプロトコルと一致するプロトコルが代理応答処理管理テーブル60のプロトコル70にあるか否かを判断する。なお、サブCPU24が代理応答処理ができないパケットとは、例えば、第2RAM22の第2代理応答用情報格納領域90のみに格納されている情報(例えばプリンタ10の設定情報)が必要となるパケットや、メインCPU14のみが使用可能なプログラムでしか処理できないパケットである。
【0057】
S62でYESの場合は図11のS80に進み、S62でNOの場合はS64に進む。S64では、サブCPU24は、第2RAM22をセルフリフレッシュモードから通常動作モードに移行する。サブCPU24は、第1RAM20の状態変数格納領域58(図2参照)のDスリープ状態98を示す状態変数を、Lスリープ状態96を示す状態変数に変更する(S66)。次いで、サブCPU24は、メイン用クロック回路16(図1参照)にメインCPU14にクロック供給を開始するよう指示する(S68)。この結果、メインCPU14は、スリープ状態から非スリープ状態に移行する。サブCPU24は、メインCPU14に割り込み要求を発行して(S70)、S50に戻る。この結果、図8のS36のWAIT命令に起因するメインCPU14の実行停止状態が解除される。メインCPU14は、図7のS18に移行し、さらに、図10のS58で受信されたパケット(以下では受信パケットと呼ぶ)に対応する処理を実行する。
【0058】
図11のS80では、サブCPU24は、代理応答処理管理テーブル60(図3参照)を参照することによって、受信パケットのプロトコル70に対応付けられている実行RAM72が「第1RAM」であるか否かを判断する(S80)。即ち、サブCPU24は、使用すべき代理応答プログラムが第1RAM専用プログラム54a又は実行時ロード可能プログラム54bであるのか否かを判断する。ここでNOの場合、即ち、サブCPU24が使用すべき代理応答プログラムが第2RAM専用プログラム88aである場合にS82に進む。一方、ここでYESの場合、即ち、サブCPU24が使用すべき代理応答プログラムが第1RAM専用プログラム54a又は実行時ロード可能プログラム54bである場合にS94に進む。
【0059】
本実施例では、サブCPU24が使用すべき代理応答プログラムが「SNMP」用の代理応答プログラム(第2RAM専用プログラム88a)である場合を例にしてS82からS90を説明する。S82では、サブCPU24は、第2RAM22を通常動作モードに移行させる。続いて、サブCPU24は、SNMP(図3のコラム66)に対応する実行アドレス78で指定された第2RAM22内のアドレスに存在するプログラムを使用して、受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行する(S84)。サブCPU24は、応答パケットを生成することができたか否かを判断する(S86)。本実施例では、受信パケットがSNMPのGETコマンド(例えばプリンタ10のステータスを要求するためのコマンド)である場合、サブCPU24は、応答パケットを生成することができる。一方、受信パケットがSNMPのSETコマンド(例えばプリンタ10の設定値を変更するためのコマンド)である場合、サブCPU24は、応答パケットを生成することができない。また、受信パケットがSNMPのGETコマンドであって、プリンタ10の設定値(例えば、解像度、用紙サイズ等)を要求するコマンドである場合も、サブCPU24は、応答パケットを生成することができない。S86でNOの場合、サブCPU24は、図10のS66に戻る。即ち、サブCPU24は、メインCPU14を非スリープ状態に移行させる(図10のS68)。この結果、メインCPU14が応答パケットを生成することになる。
【0060】
一方において、S86でYESの場合、サブCPU24は、生成した応答パケットを受信パケットの送信元に返信する(S88)。応答パケットの生成が終了すると、サブCPU24は、第2RAM24をセルフリフレッシュモードに再び移行して(S90)、図10のS58に戻る。
【0061】
一方、S94では、サブCPU24は、使用すべき代理応答プログラムが第1RAM20に格納されているのか否かを判断する。即ち、サブCPU24は、代理応答処理管理テーブル60(図3参照)を参照することによって、使用すべき代理応答プログラムに対応する実行可能フラグ76が「実行可」又は「常時実行可」であるのか否かを判断する。ここでNOの場合、即ち、使用すべき代理応答プログラムに対応する実行可能フラグ76が「実行不可」である場合、S96に進み、YESの場合にはS102に進む。
【0062】
S96では、サブCPU24は、第2RAM22を通常動作モードに移行する。次いで、サブCPU24は、使用すべき代理応答プログラム(即ち実行時ロード可能プログラム86a)を第2RAM22から第1RAM20にロードする(S98)。S98のプログラムロード処理は、後で詳しく説明する。サブCPU24は、実行時ロード可能プログラム86aを第1RAM20にロードすると、第2RAM22をセルフリフレッシュモードに移行させる(S100)。なお、S100の処理は、後述するS108の処理の後に実行してもよいし、S102からS108の処理の途中で実行してもよいし、S102からS108と並行して実行される別スレッドで実行してもよい。

【0083】
(7)本実施例では、プリンタ10について説明したが、本明細書に開示された技術は、プリンタ10以外の処理装置、例えば、サーバ、スキャナ、多機能機等に利用することができる。

第4 先願明細書に記載された発明
以上の記載によれば、先願明細書には次の発明(以下、先願発明という。)が記載されている。

4a.先願明細書の【0001】の記載によれば、先願明細書に記載された発明は、「メモリに格納されるプログラムを使用して、特定の処理を実行する処理装置に関する」発明であるといえる。

4b.先願明細書の【0018】によれば、先願明細書の処理装置は、2つのRAM20,22とメインCPU14、サブCPU24とネットワークインターフェイス30とを有している。

4c.先願明細書の【0054】-【0062】によれば、
i)S52で状態変数がDスリープ状態98を示すか否かを判断し、YESの場合、メイン用クロック回路16にクロック供給の停止を指示することで、メインCPU14は、スリープ状態に移行し、第2RAM22を通常動作モードからセルフリフレッシュモードに移行させることで通常動作モードと比べて、第2RAM22の消費電力は低い状態とする。
ii)メインCPU14がスリープ状態、かつ、第2RAM22がセルフリフレッシュモードの状態で、代理応答処理の対象パケットを受信したとき、サブCPU24が使用すべき代理応答プログラムが第2RAM専用プログラム88aである場合にS82に進み、S82では、サブCPU24は、第2RAM22を通常動作モードに移行させ、続いて、サブCPU24は、SNMP(図3のコラム66)に対応する実行アドレス78で指定された第2RAM22内のアドレスに存在するプログラムを使用して、受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行し、サブCPU24は、応答パケットを生成することができた(S86)場合、サブCPU24は、生成した応答パケットを受信パケットの送信元に返信し、応答パケットの生成が終了すると、サブCPU24は、第2RAM24をセルフリフレッシュモードに再び移行して(S90)、図10のS58に戻る。
iii)上記ii)のS86で応答パケットを生成することができなかった場合、サブCPU24は、図10のS66に戻り、サブCPU24は、メインCPU14を非スリープ状態に移行させ、メインCPU14が応答パケットを生成する。
上記i)ないしiii)の制御が行われるから、先願発明の処理装置は当該制御を行う制御手段を有しているといえる。

4d.まとめ
以上まとめると、先願発明として、以下のとおりのものを認定することができる。

メモリに格納されるプログラムを使用して、特定の処理を実行する処理装置であって、
上記処理装置は、2つのRAM20,22とメインCPU14、サブCPU24とネットワークインターフェイス30とを有し、
以下のi)ないしiii)の制御を行う制御手段を有する、
i)S52で状態変数がDスリープ状態98を示すか否かを判断し、YESの場合、メイン用クロック回路16にクロック供給の停止を指示することで、メインCPU14は、スリープ状態に移行し、第2RAM22を通常動作モードからセルフリフレッシュモードに移行させることで通常動作モードと比べて、第2RAM22の消費電力は低い状態とする、
ii)メインCPU14がスリープ状態、かつ、第2RAM22がセルフリフレッシュモードの状態で、代理応答処理の対象パケットを受信したとき、サブCPU24が使用すべき代理応答プログラムが第2RAM専用プログラム88aである場合にS82に進み、S82では、サブCPU24は、第2RAM22を通常動作モードに移行させ、続いて、サブCPU24は、SNMP(図3のコラム66)に対応する実行アドレス78で指定された第2RAM22内のアドレスに存在するプログラムを使用して、受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行し、サブCPU24は、応答パケットを生成することができた(S86)場合、サブCPU24は、生成した応答パケットを受信パケットの送信元に返信し、応答パケットの生成が終了すると、サブCPU24は、第2RAM24をセルフリフレッシュモードに再び移行して(S90)、図10のS58に戻る、
iii)上記ii)のS86で応答パケットを生成することができなかった場合、サブCPU24は、図10のS66に戻り、サブCPU24は、メインCPU14を非スリープ状態に移行させ、メインCPU14が応答パケットを生成する、
処理装置。

第5 対比
本願発明と先願発明とを対比する。

5a.本願発明の構成要件(A)と先願発明とを対比する。
先願発明の「メモリに格納されるプログラムを使用して、特定の処理を実行する処理装置」は、情報処理装置といえることは明らかであるから、本願発明の情報処理装置といえる。

5b.本願発明の構成要件(B)と先願発明とを対比する。
先願発明の第2RAM22は、サブCPU24が、第2RAM22内のアドレスに存在するプログラムを使用して、受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行するため、上記プログラムを記憶しているから、記憶装置という点で本願発明のハードディスクに対応する。
もっとも、先願発明の第2RAM22は、SDRAMである(【0034】)であるから、記憶装置としては共通するものの、ハードウェアとしての構成が異なるといえる。

5c.本願発明の構成要件(C)と先願発明とを対比する。
先願発明は、ネットワークインターフェイス30を有しており、上記ネットワークインターフェイス30は、例えば、先願明細書の【0042】に「図1に示すMACコントローラ28は、ネットワークI/F30によって受信されたパケットをプリンタ10が処理可能な形式に変換する。」とあるように、先願明細書の記載全体を見れば、「ネットワークを介してデータを受信するネットワークインターフェース部」といえることは明らかであるから、先願発明は本願発明の構成要件(C)を有している。

5d.本願発明の構成要件(D)と先願発明とを対比する。
先願発明の制御手段が行う制御のii)には「代理応答処理の対象パケットを受信したとき、・・・受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行し」の処理も含まれており、これは、データを受信して処理を行うことであるといえる。
上記パケットの受信は、ネットワークインターフェイス30を介して行われることは明らかであるから、先願発明は、前記ネットワークインターフェース部によって受信されたデータを受信して処理する制御部を有しているといえる。

5e.本願発明の構成要件(E)と先願発明とを対比する。
先願発明の「メインCPU14がスリープ状態、かつ、第2RAM22がセルフリフレッシュモードの状態」とは、メインCPU14がスリープ状態でない場合(非スリープ状態)、および、第2RAM22がセルフリフレッシュモードの状態ではない場合(通常動作モードの状態)と比して、上記メインCPU14および第2RAM22に供給される電力が節約される省電力状態であるといえる。
先願発明のメインCPU14はプロセッサといえることは明らかであり、第2RAM22は上記5b.で検討したように記憶装置という点で本願発明のハードディスクと対応するといえる。
したがって、先願発明の上記状態は、本願発明の「前記プロセッサおよび前記ハードディスクへの電力供給が停止される省電力状態のとき」と対比して、「前記プロセッサおよび前記記憶装置への電力供給が節約される省電力状態のとき」という意味で対応する。
もっとも、本願発明の上記省電力状態のときは、「前記プロセッサおよび前記ハードディスクへの電力供給が停止される省電力状態」であるのに対し、先願発明では、前記プロセッサが「スリープ状態」および、「前記第2RAM22がセルフリフレッシュモードの状態」である点で相違する。
また、先願発明における、上記省電力状態での、「代理応答処理の対象パケットを受信したとき、サブCPU24が使用すべき代理応答プログラムが第2RAM専用プログラム88aである場合にS82に進み、S82では、サブCPU24は、第2RAM22を通常動作モードに移行させ、続いて、サブCPU24は、SNMP(図3のコラム66)に対応する実行アドレス78で指定された第2RAM22内のアドレスに存在するプログラムを使用して、受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行し、サブCPU24は、応答パケットを生成することができた(S86)場合、サブCPU24は、生成した応答パケットを受信パケットの送信元に返信し、応答パケットの生成が終了すると、サブCPU24は、第2RAM24をセルフリフレッシュモードに再び移行して(S90)、図10のS58に戻る」との構成は、「代理応答処理の対象パケット」として、「第2RAM22内のアドレスに存在するプログラムを使用して、受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行し、サブCPU24は、応答パケットを生成することができ」る、代理応答処理を表すパケットパターンのパケットをネットワークインターフェース30が受信したときの構成といえ、当該パケットパターンを第1パケットパターンと称してもよいことは明らかである。
このとき、先願発明では、サブCPU24は、第2RAM22をそれまでのセルフリフレッシュモードの状態から通常動作モードの状態に移行させているから、本願発明のハードディスクに対応する記憶装置を省電力状態から通常動作状態にしている点で、本願発明の「前記ハードディスクに電力を供給し」に対応する制御を行っているといえる。
もっとも、本願発明では「前記ハードディスクに電力を供給し」であるのに対し、先願発明では、「第2RAM22を通常動作モード」の状態に「移行させ」る点で相違する。
また、上記先願発明の構成では、「代理応答処理の対象パケットを受信したとき」から、「サブCPU24は、第2RAM24をセルフリフレッシュモードに再び移行して(S90)、図10のS58に戻る」まで、メインCPU14はスリープ状態から、非スリープ状態に移行する処理を行っていないから、「前記プロセッサへの電力供給を省電力状態のまま」である点で、本願発明と共通する。
もっとも、本願発明では「前記プロセッサへの電力供給を停止したまま」であるのに対し、先願発明では、前記プロセッサは「スリープ状態」のままである点で相違する。
さらに、先願発明は、「上記ii)のS86で応答パケットを生成することができなかった場合、サブCPU24は、図10のS66に戻り、サブCPU24は、メインCPU14を非スリープ状態に移行させ、メインCPU14が応答パケットを生成する」構成を有しているが、これは、上記ii)で「代理応答処理の対象パケットを受信したとき」に、「第2RAM22内のアドレスに存在するプログラムを使用して、受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行し、サブCPU24は、応答パケットを生成することができ」ない場合の構成であり、上記の場合の受信したパケットについてみれば、上記応答パケットを生成することができない代理応答処理を表すパケットパターンのパケットをネットワークインターフェース30が受信したとき、といえ、当該パケットパターンを第2パケットパターンと称してもよいことは明らかである。
このとき、先願発明では、「メインCPU14を非スリープ状態に移行させ、メインCPU14が応答パケットを生成する」のであるから、記憶装置およびプロセッサを省電力状態から通常動作状態に移行させている点で、本願発明の「前記ハードディスクおよび前記プロセッサに電力を供給する」制御に対応し、先願発明は、当該制御を行う制御手段を有しているといえる。
もっとも、本願発明では上記制御手段による制御が「前記ハードディスクおよび前記プロセッサに電力を供給する電源制御」であるのに対し、先願発明では、「第2RAM22」を「セルフリフレッシュモードの状態」から「通常動作モード」の状態に「移行させ」、および前記プロセッサを「スリープ状態」から「非スリープ状態に移行させ」る制御である点で相違する。
以上まとめると、本願発明と先願発明では、
「前記プロセッサおよび前記記憶装置が省電力状態のときに、前記ネットワークインターフェース部が第1パケットパターンのパケットを受信した場合、前記プロセッサは省電力状態のまま前記記憶装置を通常動作状態にし、前記ネットワークインターフェース部が第2パケットパターンのパケットを受信した場合、前記記憶装置および前記プロセッサを通常動作状態にする電源制御手段と、を備え、」
ている点で共通する。
もっとも、本願発明の省電力状態は、「前記プロセッサおよび前記ハードディスクへの電力供給が停止される」のに対し、先願発明の省電力状態は、プロセッサは「スリープ状態」であり、「第2RAM22がセルフリフレッシュモードの状態」であることから、省電力状態から通常動作状態への移行が、本願発明では、「前記ハードディスクに電力を供給」、および、前記プロセッサに「電力を供給」であるのに対し、先願発明では、「前記第2RAM22」は「セルフリフレッシュモードの状態」から、「通常動作モード」の状態へ「移行」、および、前記プロセッサは「スリープ状態」から、「非スリープ状態に移行」である点で相違する。

5f.本願発明の構成要件(F)と先願発明とを対比する。
先願発明の上記ii)の処理が行われる場合が、本願発明の「前記ネットワークインターフェース部は、前記第1パケットパターンのパケットを受信した場合」に対応することは、上記5e.のとおりである。
このとき、先願発明では、「サブCPU24が使用すべき代理応答プログラムが第2RAM専用プログラム88aである場合にS82に進み、・・・サブCPU24は、SNMP(図3のコラム66)に対応する実行アドレス78で指定された第2RAM22内のアドレスに存在するプログラムを使用して、受信パケットに対応する応答パケットの生成を試行し、・・・生成した応答パケットを受信パケットの送信元に返信し」ているから、「前記記憶装置を参照することによって前記第1パケットパターンのパケットを処理」しているといえる。
もっとも、上記記憶装置が、本願発明ではハードディスクであるのに、先願発明では第2RAM22である点で相違する。
また、先願発明の処理装置が本願発明の情報処理装置に対応することは上記5a.のとおりである。
以上まとめると、本願発明と先願発明とでは「前記ネットワークインターフェース部は、前記第1パケットパターンのパケットを受信した場合、前記記憶装置を参照することによって前記第1パケットパターンのパケットを処理することを特徴とする情報処理装置」である点で対応している。
もっとも、上記記憶装置が、本願発明ではハードディスクであるのに、先願発明では第2RAM22である点で相違する。

5g.まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、補正後発明と刊行物1発明とは、以下の一致点で一致し、一応の相違点として、以下の相違点がある。

(一致点)
情報処理装置であって、
記憶装置と、
ネットワークを介してデータを受信するネットワークインターフェース部と、
前記ネットワークインターフェース部によって受信されたデータを受信して処理する制御部と、
前記プロセッサおよび前記記憶装置が省電力状態のときに、前記ネットワークインターフェース部が第1パケットパターンのパケットを受信した場合、前記プロセッサは省電力状態のまま前記記憶装置を通常動作状態にし、前記ネットワークインターフェース部が第2パケットパターンのパケットを受信した場合、前記記憶装置および前記プロセッサを通常動作状態にする電源制御手段と、を備え、
前記ネットワークインターフェース部は、前記第1パケットパターンのパケットを受信した場合、前記記憶装置を参照することによって前記第1パケットパターンのパケットを処理することを特徴とする情報処理装置。

(相違点1)
記憶装置に関して、本願発明では、記憶装置が「ハードディスク」であって、上記記憶装置の省電力状態が「ハードディスクへの電力供給が停止される省電力状態」、省電力状態から通常動作状態への移行が「前記ハードディスクに電力を供給」であるのに対し、先願発明では、記憶装置が「第2RAM22(SDRAM)」であって、上記記憶装置の省電力状態が「第2RAM22がセルフリフレッシュモードの状態」、省電力状態から通常動作状態への移行が「前記第2RAM22」は「セルフリフレッシュモードの状態」から、「通常動作モード」の状態へ「移行」である点。

(相違点2)
本願発明では、プロセッサの省電力状態が「プロセッサへの電力供給が停止される省電力状態」であり、省電力状態から通常動作状態への移行が「前記プロセッサに電力を供給」であるのに対し、先願発明では、プロセッサの省電力状態が「スリープ状態」であり、省電力状態から通常動作状態への移行が「スリープ状態」から「非スリープ状態に移行」である点。

第6 判断
上記一応の相違点について検討する。

6a.相違点1について
記憶装置として、SDRAMとハードディスクとは互いに周知のハードウェアであり、これらが互いに置換可能であることは、当業者であれば普通に知られたことである。
そして、先願明細書に記載される処理装置は、その実施例はネットワークに接続されるプリンタであるが、これに限らず「プリンタ10以外の処理装置、例えば、サーバ、スキャナ、多機能機等に利用することができる。」(【0083】)ことが想定されており、これらの装置において、ハードディスクを備えることは普通のことである。
一方、先願発明の第2RAM22について、先願明細書の記載をみると、【0021】の記載によれば、第2RAM22は、CPUが実行するためのプログラムを(展開し)記憶しておくための構成である。
ハードディスクを普通に備える処理装置においては、CPUが実行するためのプログラムをハードディスクに記憶しておくことが自然であることを踏まえれば、先願明細書に記載された処理装置を、上記【0083】にあるようなハードディスクを普通に備える処理装置とすれば、CPUが実行するためのプログラムをハードディスクに記憶しておくことが自然であり、先願発明が想定するハードディスクを普通に備える処理装置の上記プログラムを記憶する記憶装置としてハードディスクを用いることは、当業者が普通に想定できることであるから、先願発明の第2RAM22をハードディスクとすることは、先願明細書に記載されていたに等しい事項であるといえる。
そして、本願発明における「第2RAM22がセルフリフレッシュモードの状態」は、記憶装置が省電力状態のことであり、ハードディスクを用いた装置において、その省電力のための状態を実現するために、ハードディスクに対する電力供給を停止する構成を採用することは、普通に知られたことであるから、先願明細書の第2RAM22をハードディスクに置き換えたとき、その省電力状態として、ハードディスクに対する電力供給を停止する状態を採用することはきわめて当たり前のことである。
したがって、上記相違点1に係る構成は、実質的な相違点とはいえない。

6b.相違点2について
プロセッサの省電力状態を実現する構成として、プロセッサに対する電力供給が停止される状態とすることやプロセッサに与えるクロックを通常の動作状態よりも周波数を低くする状態とすることは、いずれもよく知られたことであり、これらは、プロセッサの用途や使用環境等の状態により、適宜採用可能であることは当業者には普通に知られたことである。
先願発明におけるプロセッサのスリープ状態とは、先願明細書を参酌すると、「メインCPU14にクロック信号が供給されていない間は、メインCPU14はスリープ状態である。」(【0019】)とあるから、CPU14(プロセッサ)にクロック信号が供給されていない状態のことであるといえる。
プロセッサにクロックが供給されないということは、プロセッサが動作していない状態であるから、上記よく知られた「プロセッサに与えるクロックを通常の動作状態よりも周波数を低くする状態」でないことは明らかであって、動作しないプロセッサに電力を供給する必要がないことは自明のことであるから、先願発明における、プロセッサのスリープ状態とは、プロセッサに対する電力供給が停止される状態であることは、当業者であれば普通に想定できることであり、先願明細書に記載されたに等しい事項であるといえる。
したがって、相違点2に係る構成は、実質的な相違点とはいえない。

6c.まとめ
以上のように、上記相違点1、相違点2は、いずれも、実質的な相違点とはいえないから、本願発明は、先願発明と実質的に同一であるといえる。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記先の出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。

したがって、本願は、他の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2015-08-25 
結審通知日 2015-09-01 
審決日 2015-09-24 
出願番号 特願2009-221340(P2009-221340)
審決分類 P 1 8・ 16- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 稔篠原 功一  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡邊 聡
豊島 洋介
発明の名称 情報処理装置、情報処理装置の制御方法、及びプログラム  
代理人 西脇 博志  
代理人 水垣 親房  

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