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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1307367
審判番号 不服2014-24470  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-01 
確定日 2015-11-05 
事件の表示 特願2010-159994号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 2日出願公開、特開2012- 19948号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年7月14日の出願であって,平成26年2月6日付けで拒絶の理由が通知され,同年3月24日に意見書及び手続補正書が提出されたところ,平成26年10月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成26年12月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年12月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,本件補正により,特許請求の範囲は,平成26年3月24日付け手続補正書の
「【請求項1】
演出を行う演出役物と,
第1表示画面を有する表示器と,
前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段と,
前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,前記演出役物の動作を予告する第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備える,遊技機。
【請求項2】
始動条件の成立により,遊技情報を取得する取得手段と,
前記取得手段により取得された遊技情報に基づいて,特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段とを備え,
前記第1演出画像は,前記演出役物の動作を予告すると共に,前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された可能性を示唆する画像である,請求項1に記載の遊技機。」
から,平成26年12月1日付け手続補正書の
「【請求項1】
始動条件の成立により,遊技情報を取得する取得手段と,
前記取得手段により取得された遊技情報に基づいて,特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と,
演出を行う演出役物と,
第1表示画面を有する表示器と,
前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段と,
前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,前記演出役物の動作を予告する第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え,
前記第1演出画像は,前記演出役物の動作を予告すると共に,前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された可能性を示唆する画像である,遊技機。」
に補正された(下線は,補正箇所を明示するために当審にて付した。)。

2 補正の適否
(1)本件補正
本件補正は,特許請求の範囲について,以下に挙げる補正事項である。

ア 補正前の請求項1における「演出を行う演出役物と,第1表示画面を有する表示器と,前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段と,前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,前記演出役物の動作を予告する第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備える,」という記載を,
「始動条件の成立により,遊技情報を取得する取得手段と,前記取得手段により取得された遊技情報に基づいて,特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と,演出を行う演出役物と,第1表示画面を有する表示器と,前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段と,前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,前記演出役物の動作を予告する第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え,」とする補正。

イ 補正前の請求項1における「遊技機。」という記載を,
「前記第1演出画像は,前記演出役物の動作を予告すると共に,前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された可能性を示唆する画像である,遊技機。」とする補正。

ウ 請求項2を削除する補正。

(2)補正の目的要件違反等についての検討
ア 補正事項アについて
補正事項アは,「取得手段」,「特別遊技判定手段」を備える点を限定する補正であり,かつ,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,上記補正事項アは,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項イについて
補正事項イは,「第1演出画像」に関する構成を具体的に限定する補正であり,かつ,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,上記補正事項イは,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

ウ 補正事項ウについて
補正事項ウは,請求項2を削除する補正であり,特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。

そして,本件補正は新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)引用文献1に記載された発明
特開2002-239091号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(1-a)「【0007】また,前記移動制御手段は,前記演出用部材が第1の位置と第2の位置とを取り得るように前記演出用部材を所定の移動態様で移動制御する手段であり,前記装飾用部材は,前記第1の位置または第2の位置の内のいずれか一方に前記演出用部材が位置する場合には,前記演出用部材を遊技者側から目視不能とするように構成されることを特徴とするようにしても良い。これによれば,演出用部材の2つの位置間の移動により演出用部材の出没動作が可能となり,簡単な構成により,例えば演出用部材が目視できる位置に出現した場合に大当りとなる可能性が高まったことを報知する構成等に利用できる。」
(1-b)「【0015】そして,特別図柄始動口104に遊技玉が入賞されて乱数抽選が行われ,この抽選された乱数が大当り値である時には,各表示エリアにおいて少なくとも1つの識別情報の変動表示が開始されその後,当り有効ライン上に所定表示パターン(例えば「7,7,7」)の表示が特別図柄表示装置100によって行われ,大入賞口106が所定パターンで開閉制御されて遊技者にとって有利な大当り遊技状態となる。」
(1-c)「【0028】そして,特別図柄表示装置100のCPU1020は,データ受信回路1140が受信したコマンドに応じて生成した制御データを画像処理用LSI(VDP)1060に与えると,画像処理用LSI(VDP)1060は,キャラクタイメージデータ領域から獲得したキャラクタデータを解凍してパレットデータ領域から獲得した色彩データで色付けして,シナリオデータ領域から獲得した情報で指定されたビデオRAM1080上の位置に画像展開したデータを一時的に格納し,一時的に格納したデータをLCDパネル用インターフェイス回路1100に送ることによって,LCDパネル1120によって,変動表示速度変化等を含む様々な画像表示が細かに行われる。」
(1-d)「【0032】ステップS200では,RAM203の初期化処理として記憶エリアのクリア処理を実行し,次いで,ステップS210では,初期制御処理を行うためのデータをRAM203の所定の領域にセットする。一方,ステップS120では,RAM203内に形成される図示しない,大当り判定用,小当り判定用等の各種の乱数生成用ループカウンタのカウント値をインクリメントし,ステップS130では,遊技機制御に用いる各種のタイマのタイマ値を更新する。したがって,電源初期投入時にはRAMクリア,初期データセット処理等のイニシャライズが行われて,主制御部200のスタック領域に所定スタック値がスタックされる一方,電源初期投入時ではない場合にも各種乱数更新等のイニシャライズが行われ,これに対応する第2の所定スタック値が,主制御部200のスタック領域にスタックされる。」
(1-e)「【0052】また,図18に示すようにカバー1700は,透明部1701と非透明部1702とから成っていて,両部の境界線(符号Y)の存在方向が鉛直方向となるようにされている。図17に示すように,メカキャラクタ1601が位置B2に位置する場合には,非透明部1702によってメカキャラクタ1601が遊技者側からは目視不能とされているが,その反面,メカキャラクタ1601が位置A2に位置する場合には,透明部1701によってメカキャラクタ1601が遊技者側からは目視可能とされている。かくして,ソレノイド1500がオン状態にされると,それまでカバー1700に隠れていたメカキャラクタ1601が右方向から左方向に出現するように演出されることになる。
【0053】図20は,移動判定用乱数テーブル2000の説明図であり,この移動判定用乱数テーブル2000は,図3のプログラムROM1040に格納されている。CPU1020は,RAM1090を用いて,移動判定用乱数を0から19まで循環的にカウントアップしている。そして,選択した移動判定用乱数が「0?15」の場合にはメカキャラクタ1601を非移動とし,一方,選択した移動判定用乱数が「16から19」の場合にはメカキャラクタ1602を移動する制御を行なう。」
(1-f)「【0057】(動作)次に,図19を参照して主要部の動作について説明する。今,第1のコマンド,第2のコマンドを受信しているものとする。先ず,CPU1020は,第1のコマンドにて指定された変動パターンが特定の変動パターン,例えば,図6に示す17種類の変動パターンの内,当り期待値が高い変動パターン(この場合変動パターン16,17)か否かを判定する。第1のコマンドで指定された変動パターンが特定変動パターンである場合(Yes)にはステップS1910に移行し,一方,特定変動パターンでない場合(No)にはステップS1930に移行する。」
(1-g)「【0060】次いで,ステップS1930において,CPU1020は指定された変動パターンに対応した図柄変動表示等をLCDパネル1120において行なう。なお,この際登場させるキャラクタ画像をメカキャラクタ1601と同じものとすれば一層演出効果が増す。また,他のキャラクタ画像を登場させてこれがメカキャラクタ1601を招くようなアクション例えば「いらっしゃい!○○(キャラクタ名)」等と叫ぶアクションを行なうのに応答して,メカキャラクタ1601が図面左側に移動して登場するようにする等も格別の演出効果に富む。」
(1-h)「【0064】また,CPU1020は,メカキャラクタ1601が第1の位置(B2)と第2の位置(B1)とを取り得るようにメカキャラクタ1601を所定の移動態様で移動制御するが,カバー1700は,第1の位置にメカキャラクタ1601が位置する場合には,メカキャラクタ1601を遊技者側から目視不能とされているので,メカキャラクタ1601の登場,退場動作を実現できて演出効果に富む。なお,第2の位置を通常時の位置としてメカキャラクタ1601を目視可能とし,第1の位置にメカキャラクタ1601が移動した時にメカキャラクタ1601が出現するようにしても良く,この場合には図18における透明部1701と非透明部1702の存在位置を交換すれば良い。これによれば,メカキャラクタ1601の2つの位置間の移動によりメカキャラクタ1601の出没動作が可能となり,簡単な構成により,例えばメカキャラクタ1601が目視できる位置に出現した場合に大当りとなる可能性が高まったことを報知する構成等に利用できる。
【0065】そして,CPU1020は移動制御を行なう他に,遊技機の動作を全体的に制御する主制御部200からの制御コマンドに応答して特別図柄表示装置100を用いた表示制御を行う手段を更に備えているので,主制御部200の制御負担を軽減させながら以上説明してきたような演出を行なうことができる。」

上記の事項を総合すると,引用文献1には,次の発明が記載されていると認められる(以下,「引用発明1」という。)。
「大当り判定用,小当り判定用等の各種の乱数生成用ループカウンタがRAM203内に形成され,特別図柄始動口104に遊技玉が入賞されて乱数抽選が行われ,
抽選された乱数が大当り値である時には,遊技者にとって有利な大当り遊技状態とする手段と,
カバー1700に隠れている右方向から左方向の目視できる位置に出現する演出を行うメカキャラクタ1601と,
画像表示が行われるLCDパネル1120と,
選択した移動判定用乱数が「0?15」の場合にはメカキャラクタ1601を非移動とし,選択した移動判定用乱数が「16から19」の場合にはメカキャラクタ1602を移動する制御を行うCPU1020と,
他のキャラクタ画像を登場させてこれがメカキャラクタ1601を招くような「いらっしゃい!○○(キャラクタ名)」と叫ぶアクションを行うのに応答して,メカキャラクタ1601が左側に移動して登場するようにするCPU1020とを備え,
CPU1020は,変動パターンが当り期待値が高い変動パターン(この場合変動パターン16,17)か否かを判定し,他のキャラクタ画像を登場させてこれがメカキャラクタ1601を招くような「いらっしゃい!○○(キャラクタ名)」と叫ぶアクションを行うのに応答して,メカキャラクタ1601が目視できる位置に出現した場合に大当りとなる可能性が高まったことを報知する,遊技機。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明1とを比較する。

ア 引用発明1の「特別図柄始動口104に遊技玉が入賞されて」及び「乱数」は,それぞれ,本願補正発明の「始動条件の成立により」及び「遊技情報」に相当する。
また,「乱数抽選」を行う時には,「遊技情報」である「乱数」を取得することは明らかであるから,引用発明1は本願補正発明の「遊技情報を取得する取得手段」に相当する構成を有しているといえる。
以上のことから,引用発明1の「大当り判定用,小当り判定用等の各種の乱数生成用ループカウンタがRAM203内に形成され,特別図柄始動口104に遊技玉が入賞されて乱数抽選が行われ」は,本願補正発明の「始動条件の成立により,遊技情報を取得する取得手段」に相当する。

イ 引用発明1の「抽選された乱数」及び「遊技者にとって有利な大当り遊技状態」は,それぞれ,本願補正発明の「前記取得手段により取得された遊技情報」及び「特別遊技」に相当する。
また,引用発明1の「抽選された乱数が大当り値である時には,遊技者にとって有利な大当り遊技状態とする手段」は,抽選された乱数が大当り値であるか否かに基づいて大当り遊技状態とするか否かを判定している手段であるといえる。
以上のことから,引用発明1の「この抽選された乱数が大当り値である時には,遊技者にとって有利な大当り遊技状態とする手段」は,本願補正発明の「前記取得手段により取得された遊技情報に基づいて,特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段」に相当する。

ウ 引用発明1の「カバー1700に隠れている右方向から左方向の目視できる位置に出現する演出」及び「メカキャラクタ1601」は,それぞれ,本願補正発明の「演出」及び「演出役物」に相当する。
以上のことから,引用発明1の「カバー1700に隠れている右方向から左方向の目視できる位置に出現する演出を行うメカキャラクタ1601」は,本願補正発明の「演出を行う演出役物」に相当する。

エ 引用発明1の「LCDパネル1120」は,本願補正発明の「表示器」に相当する。
また,引用発明1の「LCDパネル1120」は,「画像表示が行われる」ものであり,引用発明1が表示画面を有していることは明らかである。
以上のことから,引用発明1の「画像表示が行われるLCDパネル1120」は,本願補正発明の「第1表示画面を有する表示器」に相当する。

オ 引用発明1の「CPU1020」は,「選択した移動判定用乱数が「0?15」の場合にはメカキャラクタ1601を非移動とし,選択した移動判定用乱数が「16から19」の場合にはメカキャラクタ1602を移動する制御を行う」から,本願補正発明の「演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段」に相当するといえる。
以上のことから,引用発明1の「選択した移動判定用乱数が「0?15」の場合にはメカキャラクタ1601を非移動とし,選択した移動判定用乱数が「16から19」の場合にはメカキャラクタ1602を移動する制御を行うCPU1020」は,本願補正発明の「前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段」に相当する。

カ 引用発明1の「他のキャラクタ画像」は,本願補正発明の「第1演出画像」に相当する。
また,引用発明1は「他のキャラクタ画像を登場させてこれがメカキャラクタ1601を招くような「いらっしゃい!○○(キャラクタ名)」と叫ぶアクションを行うのに応答して,メカキャラクタ1601が左側に移動して登場する」から,「他のキャラクタ画像」は,「メカキャラクタ1601が左側に移動して登場する」ことの予告を行っているといえる。
そして,引用発明1の「CPU1020」は,「他のキャラクタ画像」を表示させる制御を行っているから,本願補正発明の「表示制御手段」に相当するといえる。
以上のことから,引用発明1の「他のキャラクタ画像を登場させてこれがメカキャラクタ1601を招くような「いらっしゃい!○○(キャラクタ名)」と叫ぶアクションを行うのに応答して,メカキャラクタ1601が左側に移動して登場するようにするCPU1020とを備え」は,本願補正発明の「前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,前記演出役物の動作を予告する第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え」に相当する。

キ 上記カにおいて既に検討したように,引用発明1の「メカキャラクタ1601を招くような「いらっしゃい!○○(キャラクタ名)」と叫ぶアクションを行う」「他のキャラクタ画像」は,本願補正発明の「演出役物の動作を予告する第1演出画像」に相当する。
また,引用発明1は,「変動パターンが当り期待値が高い変動パターン(この場合変動パターン16,17)か否かを判定し」,「メカキャラクタ1601が目視できる位置に出現した場合に大当りとなる可能性が高まったことを報知する」から,引用発明1の「他のキャラクタ画像を登場させてこれがメカキャラクタ1601を招くような「いらっしゃい!○○(キャラクタ名)」と叫ぶアクションを行う」画像が,本願補正発明の「前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された可能性を示唆する画像」に相当するといえる。
以上のことから,引用発明1の「CPU1020は,変動パターンが当り期待値が高い変動パターン(この場合変動パターン16,17)か否かを判定し,他のキャラクタ画像を登場させてこれがメカキャラクタ1601を招くような「いらっしゃい!○○(キャラクタ名)」と叫ぶアクションを行うのに応答して,メカキャラクタ1601が目視できる位置に出現した場合に大当りとなる可能性が高まったことを報知する,遊技機」は,本願補正発明の「前記第1演出画像は,前記演出役物の動作を予告すると共に,前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された可能性を示唆する画像である,遊技機」に相当する。

そうすると,両者は,
「始動条件の成立により,遊技情報を取得する取得手段と,
前記取得手段により取得された遊技情報に基づいて,特別遊技を行うか否かを判定する特別遊技判定手段と,
演出を行う演出役物と,
第1表示画面を有する表示器と,
前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段と,
前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,前記演出役物の動作を予告する第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備え,
前記第1演出画像は,前記演出役物の動作を予告すると共に,前記特別遊技判定手段により前記特別遊技を行うと判定された可能性を示唆する画像である,遊技機。」
である点で一致し,相違点はない。

したがって,本願補正発明は,引用発明1と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明1について
1 本願発明1
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,平成26年3月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
演出を行う演出役物と,
第1表示画面を有する表示器と,
前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段と,
前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,前記演出役物の動作を予告する第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備える,遊技機。」

2 引用文献2に記載された発明
特開2007-275370号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(2-a)「【0035】
以下,本実施の形態におけるパチンコ遊技機(遊技機)1の構成について,図面を参照しながら説明する。図1?図27は,プリペイドカード方式を適用した遊技機1の一実施の形態を示している。」
(2-b)「【0045】
スペーサー10は,遊技盤2の後方(背面側)に配設されるとともに,液晶表示装置21の前方(前面側)に配設される。つまり,スペーサー10は,遊技盤2と液晶表示装置21によって扶持される。このスペーサー10は,透過性を有した材料で形成されており,中央に大きな貫通孔10aが設けられている。そして,スペーサー10は,貫通孔10aに,遊技球を後述する補助演出装置30内へ誘導して流入させる誘導流路61および遊技球を遊技機の外部へ排出させる回収流路62を有する振分け装置60,アウト口17に入球した遊技球のうち少なくとも一部が上記誘導流路61を介して内部に流入する補助演出装置(演出領域)30,遊技に関する所定の情報を報知する電飾ユニット26等が納められるような厚みを提供する。」
(2-c)「【0046】
また,スペーサー10の背面には,上述した液晶表示装置21が配置されている。なお,液晶表示装置21の表示領域21aは,演出画像を表示する領域と,装飾図柄の可変表示が行われる装飾図柄表示領域21b(図26参照)とからなっている。」
(2-d)「【0087】
これにより遊技者は,上記フリッパー操作ボタン100a,100bを押下してフリッパー30a,30bを揺動(可動)させることにより,補助演出装置30内の遊技球の転動に影響を与えることが可能となる。この場合,遊技者は,アウト口17に入球後補助演出装置30内に流入した遊技球の転動に影響を与えて,その転動を楽しむことが可能となる。但し,本発明のフリッパー30a,30bは,フリッパー操作ボタン100a,100bが操作されない場合においても,所定のタイミングで揺動するようになっていてもよい。」
(2-e)「【0155】
また,サブCPU301は,第1判定手段,第2判定手段,振分け装置制御手段,遊技球誘導手段,操作検知手段,可動部材制御手段,表示制御手段の各機能を有している。
【0156】
第1判定手段は,所定の第1条件が成立したか否かを判定する手段である。
【0157】
具体的には,第1判定手段は,メインCPU(大当り遊技状態移行判定手段)201によって,大当り遊技状態に移行させるか否かの判定が行われた場合(すなわち,遊技球が始動口18に入賞した場合)に,所定の第1条件が成立したか否かを所定の乱数抽選に基づいて判定している。ここで,本実施の形態における所定の第1条件とは,アウト口17に入球した遊技球を誘導流路61へ流入させるための条件のことであり,当該第1条件が成立すると,後述する振分け装置制御手段の制御によって,振分け装置60における振分け板60bが,図4(a)に示すように回収流路62への通路を塞ぐ位置に揺動する。この場合,振分け流路60aを流下する遊技球400が,誘導流路61へと流入するようになる。」
(2-f)「【0160】
振分け装置制御手段は,第1判定手段による判定結果に応じて振分け装置60を制御する手段である。
【0161】
例えば,振分け装置制御手段は,第1判定手段の判定により所定の第1条件が成立した場合には,振分け装置60における振分け板60bを,回収流路62への通路を塞ぐ位置に揺動させる制御を行う(図4(a)参照)とともに,遊技球搬送装置61aの駆動制御用のモータ61aaを駆動させることにより,搬送ベルト61abを作動させる制御を行う(図5参照)。これにより,アウト口17に入球した遊技球400が誘導流路61に流入されるようになるとともに,誘導流路61内に流入して搬送ベルト61abの搬送フィン61adに搭載された遊技球400が,補助演出装置30のガイド通路42へと移送(誘導)されるようになる。
【0162】
一方,振分け装置制御手段は,所定の第1条件が成立しなかった場合には,振分け装置
60における振分け板60bを誘導流路61への通路を塞ぐ位置に揺動させる制御を行っている(図4(b)参照)。この場合,アウト口17に入球した遊技球400は,回収流路62に流入して遊技機の外部へ排出されるようになる。」
(2-g)「【0175】
画像制御回路305は,サブCPU301からの指示(ワークRAM303の所定の作業領域にセットされた演出データに基づいた指示)に応じて,表示領域21aに装飾図柄の可変表示などの表示を実行するものであり,各種画像データを記憶する画像データROM305bと,サブCPU301からの制御に応じて対応する画像データを画像データROM305bから抽出し,抽出したその画像データを基にして装飾図柄の可変表示や演出画像の表示などを実行するためのデータを生成するVDP(Video Display Processor)305aと,VDP305aにより生成された表示画像データをアナログ信号に変換するD/A変換回路(D/Aコンバータ)305dとを具備する。」
(2-h)「【0265】
また,ステップS240-6-1(図16)において,第1条件に対応する演出データがセットされた場合,セットされた演出データに含まれる態様に従った演出画像の表示を行うように,VDP305aに指示するためのデータを経時的に変化させる。VDP305aが所定時間ごとに送信される上記指示を実行することにより,補助演出装置30を指差しているキャラクタ画像501(例えば,人物のキャラクタ“ドンちやん”など),当該キャラクタ画像501に関連する文字画像505(例えば,「チャンスボックスにご注目!」など)等が表示される(図26参照)。なお,ここでいうチャンスボックスとは,補助演出装置30のことである。
【0266】
この場合,キャラクタ画像501の指差す補助演出装置30に遊技者の関心を集めることができ,アウト口17に入球した遊技球に,より遊技者の関心を集めることができる。」
(2-i) 段落【0045】,【0157】の記載を参照すると,図4(a)?6には,アウト口17に入球した遊技球400が誘導流路61を経由して補助演出装置30内へ流入する点が図示されている。
(2-j) 段落【0046】,【0265】の記載を参照すると,図26には,補助演出装置30を指差しているキャラクタ画像501と「チャンスボックス(補助演出装置30)にご注目!」という文字画像505を表示領域21aに表示させる点が図示されている。

上記事項を総合すると,引用文献2には,次の発明が記載されていると認められる(以下,「引用発明2」という。)。
「フリッパー操作ボタン100a,100bが操作されない場合においても,所定のタイミングでフリッパー30a,30bを揺動(可動)させることにより,アウト口17に入球後内に流入した遊技球の転動に影響を与え,その転動を楽しむことが可能な補助演出装置30と,
演出画像を表示する領域と,装飾図柄の可変表示が行われる装飾図柄表示領域21b(図26参照)とからなる表示領域21aを有する液晶表示装置21と,
遊技球が始動口18に入賞した場合に,アウト口17に入球した遊技球が誘導流路61を経由して補助演出装置30内へ流入させるための第1条件が成立したか否かを,乱数抽選に基づいて判定する第1判定手段と,第1条件が成立した場合には,振分け板60bを,回収流路62への通路を塞ぐ位置に揺動させることにより,アウト口17に入球した遊技球が誘導流路61に流入されるようにすると共に,第1条件が成立しなかった場合には,振分け板60bを誘導流路61への通路を塞ぐ位置に揺動させることにより,アウト口17に入球した遊技球を回収流路62に流入して遊技機の外部へ排出されるようにする振分け装置制御手段と,
第1条件に対応する演出データがセットされた場合,補助演出装置30を指差しているキャラクタ画像501と「チャンスボックス(補助演出装置30)にご注目!」という文字画像505を表示領域21aに表示させるサブCPU301と,
を備える,パチンコ遊技機1」

3 対比
本願発明1と引用発明2とを比較する。
ア 引用発明2の「補助演出装置30」は,「フリッパー操作ボタン100a,100bが操作されない場合においても,所定のタイミングでフリッパー30a,30bを揺動(可動)させることにより,アウト口17に入球後内に流入した遊技球の転動に影響を与え,その転動を楽しむことが可能な」ものであるから,流入した遊技球による「演出」を行う「役物」であるといえる。
以上のことから,引用発明2の「フリッパー操作ボタン100a,100bが操作されない場合においても,所定のタイミングでフリッパー30a,30bを揺動(可動)させることにより,アウト口17に入球後内に流入した遊技球の転動に影響を与え,その転動を楽しむことが可能な補助演出装置30」は,本願発明1の「演出を行う演出役物」に相当する。

イ 引用発明2の「演出画像を表示する領域と,装飾図柄の可変表示が行われる装飾図柄表示領域21b(図26参照)とからなる表示領域21a」及び「液晶表示装置21」は,それぞれ,本願発明1の「第1表示画面」及び「表示器」に相当する。
以上のことから,引用発明2の「演出画像を表示する領域と,装飾図柄の可変表示が行われる装飾図柄表示領域21b(図26参照)とからなる表示領域21aを有する液晶表示装置21」は,本願発明1の「第1表示画面を有する表示器」に相当する。

ウ 引用発明2では,「遊技球が始動口18に入賞した場合に,アウト口17に入球した遊技球が誘導流路61を経由して補助演出装置30内へ流入させるための第1条件が成立」したことを「第1判定手段」により判定すると共に,「振分け板60bを,回収流路62への通路を塞ぐ位置に揺動させることにより,アウト口17に入球した遊技球が誘導流路61に流入されるように」「振分け装置制御手段」にて制御することにより,遊技球が「補助演出装置30内へ流入」して,上記アで検討した演出を行うものである。
このことから,引用発明2の「第1判定手段」及び「振分け装置制御手段」は,本願発明1の「決定手段」に相当する。
以上のことから,引用発明2の「遊技球が始動口18に入賞した場合に,アウト口17に入球した遊技球が誘導流路61を経由して補助演出装置30内へ流入させるための第1条件が成立したか否かを,乱数抽選に基づいて判定する第1判定手段と,第1条件が成立した場合には,振分け板60bを,回収流路62への通路を塞ぐ位置に揺動させることにより,アウト口17に入球した遊技球が誘導流路61に流入されるようにすると共に,第1条件が成立しなかった場合には,振分け板60bを誘導流路61への通路を塞ぐ位置に揺動させることにより,アウト口17に入球した遊技球を回収流路62に流入して遊技機の外部へ排出されるようにする振分け装置制御手段」は,本願発明1の「前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段」に相当する。

エ 引用発明2の「補助演出装置30を指差しているキャラクタ画像501と「チャンスボックス(補助演出装置30)にご注目!」という文字画像505」,「サブCPU301」及び「パチンコ遊技機1」は,本願発明1の「第1演出画像」,「表示制御手段」及び「遊技機」に相当する。
また,上記アにおいて既に検討したように,引用発明2の「補助演出装置30」は,「所定のタイミングでフリッパー30a,30bを揺動(可動)させる」ものであるから,動作を行う演出役物であるといえる。
そして,「フリッパー30a,30bを揺動(可動)させる」という演出役物の動作により,「補助演出装置30」内の遊技球に影響を与えるから,演出役物の動作は,第1条件が成立した時に行われるといえる。
それに,第1条件が成立した場合,「第1条件に対応する演出データがセットされ」ることは明らかである。
しかしながら,引用発明2の「補助演出装置30を指差しているキャラクタ画像501と「チャンスボックス(補助演出装置30)にご注目!」という文字画像505を表示領域21aに表示させる」ことは,「補助演出装置30」に注目を集めるために行うことであるといえるが,必ずしも「補助演出装置30」の動作を予告するため行うことであるとはいえない。
以上のことから,引用発明1の「第1条件に対応する演出データがセットされた場合,補助演出装置30を指差しているキャラクタ画像501と「チャンスボックス(補助演出装置30)にご注目!」という文字画像505を表示領域21aに表示させるサブCPU301と,を備える,パチンコ遊技機1」は,本願発明1と「前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,」演出役物に関する「第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備える,遊技機」に相当する構成を有する点で共通している。

そうすると,両者は,
「演出を行う演出役物と,
第1表示画面を有する表示器と,
前記演出役物を用いた演出を行うか否かを決定する決定手段と,
前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に,演出役物に関する第1演出画像を前記第1表示画面に表示させる表示制御手段とを備える,遊技機」
である点で一致し,以下の点で相違している。

<相違点>
「前記決定手段によって前記演出役物を用いた演出を行うと決定された場合に」,「表示制御手段」が「前記第1表示画面に表示させる」「第1演出画像」に関して,
本願発明1は「演出役物の動作を予告する」ものであるのに対して,
引用発明2では,補助演出装置30を指差しているキャラクタ画像501と「チャンスボックス(補助演出装置30)にご注目!」という文字画像505であるため,このような構成でない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
<相違点>について
引用発明2は,遊技球が補助演出装置30(演出役物)内へ流入させる第1条件に対応する演出データがセットされた場合,補助演出装置30(演出役物)に注目を集める内容をキャラクタ画像501(第1演出画像)と文字画像505(第1演出画像)に表示させるものである。
キャラクタ画像501(第1演出画像)と文字画像505(第1演出画像)に表示させ内容を,どのような内容にするかは設計的事項程度のことにすぎず,補助演出装置30(演出役物)のフリッパー30a,30bの揺動(動作)の予告とすることは,当業者が容易になし得る程度のことにすぎない。
また,遊技機において,画像により可動役物の動作を予告することは,特開2008-29765号公報(段落【0114】?【0129】,図6,図7等参照。),特開2004-65528号公報(キャラクタC,51の登場[表示]により,可動体35,53,58の動作を予告する点が記載されている。段落【0034】,【0038】?【0039】,図15?17等参照。)にも記載されているように周知(以下,「周知技術」という。)である。
引用発明2の第1演出画像に上記周知技術を施して上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
そして,本願発明1の作用効果も,引用発明2,または,引用発明2及び上記周知技術に基づいて,当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本願発明1は,引用発明2,または,引用発明2及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-04 
結審通知日 2015-09-08 
審決日 2015-09-24 
出願番号 特願2010-159994(P2010-159994)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 瀬津 太朗
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

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