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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04M |
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管理番号 | 1307381 |
判定請求番号 | 判定2014-600055 |
総通号数 | 192 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2015-12-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2014-11-18 |
確定日 | 2015-10-30 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5033756号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「実時間対話型コンテンツを無線交信ネットワーク及びインターネット上に形成及び分配する方法及び装置」は,特許第5033756号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨と手続の経緯 本件判定請求の趣旨は,平成27年11月18日付けの判定請求書の「5 請求の趣旨」の欄,「6 請求の理由」の「(3)特許第5033756号発明の説明」の項,及び,平成27年5月1日付けの「審尋に対する回答書」の「4 回答の内容」の4-1の項によれば,イ号物件説明書に示す「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」(タブレット型コンピュータ)(以下「イ号物件」という。)は,特許第5033756号の請求項1に係る特許発明(以下,「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。 また,本件に係る手続の経緯は,以下のとおりである。 平成20年10月15日 本件特許に係る特許出願(分割出願) 平成24年 6月 5日 特許査定 平成24年 7月 6日 本件特許登録 平成26年11月18日 本件判定請求 平成27年 2月12日 審尋 平成27年 5月 1日 審尋に対する回答書(請求人) 平成27年 7月16日 答弁書(被請求人) 第2 本件特許発明 本件特許発明は,特許明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。(「A」から「F」の符号は,分説のために請求人が付した記号であるが,便宜上そのままこれを利用する。) 「A ハンドヘルド装置であって, 操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも一つの出力デバイスと, 操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも一つの入力デバイスと, 無線トランスミッタと, 前記少なくとも1つの出力デバイス,前記少なくとも1つの入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する処理回路と, B 前記処理回路で実行可能なプログラムとを備え, そのプログラムは,前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記可視的ラスター・ディスプレイを通じて表示させ, C 前記出力デバイスを通じて操作者へ, (a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー又は(b)取り外し可能なメモリ・デバイスから与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ, D 操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツと,少なくとも単独の受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ, E 前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送ると共に, F この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されているハンドヘルド装置。」 第3 イ号物件 イ号物件説明書に示された「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」(タブレット型コンピュータ)は,以下のとおりである。 ([注意] 表記上の理由で,以下のbにおいて,ハングアウトのアイコン,マイクのアイコン及び受話器のアイコンを,それぞれ「○」,「△」及び「□」と表記した。) 「a Nexusは, i その大きさは高さ200?263.9ミリメートル,幅114?177.6ミリメートル,厚さ7.95?8.9ミリメートル及び重さは130?145グラムであり,手にとって使用することが念頭に置かれたハンドヘルド装置であって, ii 出力デバイスであるディスプレイ,スピーカと, iii 入力デバイスであるディスプレイ兼タッチパネル,マイク,ビデオカメラ等と, iv WiFi及び/または3G回線/あるいはLTE回線等の利用を可能とする無線チップ(無線トランスミッタ)と, v (これら出力デバイス,前記入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する) Qualcomm Snapdragon S4pro等と呼ばれるCPU(処理回路)を含むものである。 b ハングアウトが予めインストールされているGalaxy Nexusのディスプレイ上に,例えば○というアイコンで表示され,このアイコンを指で触れて選択すると,ハングアウトが起動する。△のアイコンに触れると,マイクのオン・オフが切り替えられるようになっている。また,□というアイコンに指で触れるとハングアウトを終了させる。これらは,当該アイコンが操作ガイドの役割を果たしていることを示している。 c Nexusのディスプレイやスピーカを通じてアキラ(操作者)へ,(a)Nexusから空間的に離間した遠隔サーバーであるGoogleサーバーから与えられる,動画コンテンツがディスプレイに表示されたり,音楽コンテンツがスピーカから聞こえる。 例えば,ハングアウトでアキラ(操作者)が保持するNexusのディスプレイにGoogleサーバー経由でマリ(受信者)の顔と体の動き(動画)が表示され,スピーカからマリの掛け声,マリのボーカルが聞こえることによって表示(第1のコンテンツの表現の提示)がされる d 例えば,アキラ(操作者)が,(Nexusから聞こえる)マリの身振り手振りの動画及びボーカル(第1のコンテンツ)を聞きながら(第1のコンテンツの提示)それに合わせて(操作者により決定された時間的関係に従って),(第1のコンテンツの提示に対してインタラクティブに)ギターを弾いてNexusに音楽や動画をマイク及びビデオカメラに入力する(入力デバイスを通じて)とともに,受信者(マリ)のGoogleアカウントのような当該受信者を特定する識別情報とを(受信者に届くように)与える e (そのNexusは)無線チップ経由で(前記無線トランスミッタを通じて),「Galaxy NexusからGoogleサーバーに対して,第2のコンテンツの表現(アキラのギター音楽ないし動画メッセージ)及び,その音楽や動画を共有する相手方であるマリやケンの相手先情報(グーグルアカウント名という識別子によって特定)を送るとともに f 例えば,Nexus及びハングアウトを使用してアキラがNexusのディスプレーやスピーカから聞こえるマリの掛け声やボーカル(第1のコンテンツの表現・メッセージ)に合わせて(操作者により調整された時間的関係)ギターを弾きその音楽(第2のコンテンツ)をNexusのマイクやビデオカメラを通じて入力し,時間のタイミングを保ったままの,マリのボーカルメッセージとアキラのギターメッセージ(第1のコンテンツ及び第2のコンテンツのメッセージ並びに操作者により調整された時間的関係の指標)がケン(受信者)にGoogleサーバー(遠隔サーバー)を通じて送られるように,アキラのNexus及びハングアウトが当該メッセージをGoogleサーバーに送信するNexus。 また,アキラ(Nexus及びハングアウトを使用)とマリ(Googleサーバーから与えられるYouTubeの動画(例えばミュージックビデオ)を共有し,アキラとマリがその動画を見ながら,ミュージックビデオの音楽に合わせてアキラがギター,マリはボーカルをそれぞれ演奏し,ミュージックビデオ及びお互いに相手の状況を視聴覚する場合も同様に本発明を実施している。」 「審尋に対する回答書」の「4 回答の内容」の「4-1」の項によれば,イ号物件説明書第4ページの「Galaxy Nexus」とあるのは「Nexus」の誤記であるとのことであるから,そのように読み替える。なお,イ号物件説明書第8ページの「Galaxy Nexus」も同様に誤記と解されるため,同様に読み替える。 上記「第1 請求の趣旨と手続の経緯」の欄で述べたように,本件判定請求の趣旨は,「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」(タブレット型コンピュータ)(以下「イ号物件」という。)は,特許第5033756号の請求項1に係る特許発明(以下,「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。 よって,上記イ号物件説明書の上記記載において,「Nexus」は,「Nexus9」に読み替えるとともに,請求の理由に記載の「Nexus」も,「Nexus9」に読み替える。 そうすると,証拠として挙げられている甲第2の1号証,甲第2の2号証及び甲第7号証(「Nexus7」に関するもの。),甲第4号証及び甲第9号証(「Nexus10」に関するもの。),並びに,甲第16号証(「Galaxy Nexus」に関するもの。)は証拠として採用しない。すると,イ号物件説明書の上記記載のaのiにおいて,大きさに関する事項は,「Nexus9」について記載された甲第3号証に依拠して,「高さ228.25ミリメートル,幅153.68ミリメートル,厚さ7.95ミリメートル及び重さは425グラム又は436グラム」に置き替えられる。また,イ号物件説明書の上記記載のaのvにおいて,プロセッサに関する事項のうち「Qualcomm Snapdragon S4pro等」は,「Nexus9」について記載された甲第3号証に依拠して,「NVIDIA Tegra K1 Dual Denver」に置き替えられる。 さらに,「審尋に対する回答書」の「4 回答の内容」の「4-2」の(い)の項によれば,イ号物件説明書の第9ないし10ページに記載のfのYouTubeに関連した構成は,判定の対象にしなくてもよいとのことであるが,前記fのうち,YouTubeに関連した部分は,イ号物件説明書の第10ページの「また,アキラ(Nexus及びハングアウトを使用)とマリが…」以降の部分であると認めるので,この部分は,判定の対象から除かれる。 さらに,イ号物件説明書においてc乃至fに記載された,アキラ,マリ,ケン間のビデオ通話の事例は,「操作者がハンドヘルド装置を操作する事例については,例えば,次のようなシチュエーションが考えられる(以下同様の事例を想定する)。」(第4ページ脚注13)と記載されているとおり,仮想事例であり,具体的な証拠に基づくものではないので,対比及び判断の対象とはしない。 しかしながら,「ハングアウト」に関して,甲第10号証には,「概要」の項に,「Googleドライブと連携して,離れたところにいる人と画面共有・共同作業を行うこともできるようになっている。」と記載され,同じく「ハングアウト」に関する甲第14号証には,第01ページの「Case1 遠く離れたあの人といつでも会話」の項に「Google+の「ハングアウト」は,インターネットを利用した無料のビデオチャットサービスです。(…中略…)また,最大10人までの当時参加も可能で,家族や友だち同士の1対1の会話から,学校のサークル活動,ビジネスにおけるミーティングまで活用できるのが大きな特長です。」と記載され,第02ページには,「Case2 高品質なビデオ会議システムとして活用」と記載され,同じく「ハングアウト」に関する甲第15号証には,第1/3ページに「ビデオ通話する:ハングアウトの「ビデオハングアウト」機能を使用すると,お互いの顔を見ながら最大10人で会話ができます。特定の友だちやサークルを招待するのも簡単です。」と記載されており,これらの記載から,「ハングアウト」は,複数の者の間で互いの顔画像を見ながら会話(会議等を含む。)を行う機能を有したアプリケーションであると認められる。よって,当該「ハングアウト」がプリインストールされた「Nexus9」は,複数の者の間で互いの顔画像を見ながら会話(会議等を含む。)を行う機能を有していると認められる。 また,「ハングアウト」の通信方式に関する甲第11号証の「バッキー 2月19日」の欄には,複数のクライアント端末が,Googleのサーバー(Googleサーバー)を介して通信を行うことが記載されている。そうすると,「ハングアウト」がプリインストールされた複数の「Nexus9」の間の通信は,Googleサーバーを介してなされるものと認められる。そうすると,「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」は,出力デバイスを通じて参加者(操作者)へ,Googleサーバーから受信したコンテンツを提示する機能を有している。 また,「ハングアウト」に関する甲第14号証の第10-11ページには,ハングアウトを開始するにあたり,メニューを表示し(「1 メニューを表示する」),メニューから[ハングアウト]をタップし(「2 ハングアウトの画面を表示する」),招待したいユーザーの名前を入力するかプロフィール写真をタップすることによりユーザーを招待して,[ハングアウト開始]をタップし(「3 ユーザーを招待する」),招待したユーザーがハングアウトに参加するまで待ち(「4 参加するのを待つ」),招待したユーザーが参加するとハングアウトが開始される(「5 ハングアウトが開始される」)こと,及び,ユーザーがハングアウトに招待されると,当該ユーザーに通知が届き,通知をタップすると,Google+のアプリが起動し,[ハングアウトに参加]をタップすると招待されたハングアウトに参加できる(「招待されたハングアウトに参加する」)ことが記載されている。 ここで,「ハングアウト」に招待されたユーザーと招待したユーザーとの間ではコンテンツの送受信が可能となることは自明であるから,「ハングアウト」に招待されたユーザーは,招待したユーザーが入力するコンテンツの受信者であることを想定している。そして,「招待したいユーザーの名前」又は「プロフィール写真」に対応する情報は,コンテンツの受信者を特定する識別情報として機能していることが明らかである。そうすると,「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」は,「招待したいユーザの名前」を入力すること,又は,「プロフィール写真」をタップすることにより,受信者を特定する識別情報を入力デバイスを通じて参加者(操作者)に入力させる機能を有している。 また,「ハングアウト」に関して,甲第10号証には,「概要」の項に,「Googleドライブと連携して,離れたところにいる人と画面共有・共同作業を行うこともできるようになっている。」と記載されているように,「ハングアウト」は,複数の者による共同作業を支援し得るものである。ここで,「共同作業」には,合唱,合奏,ダンスのように,コンテンツ間の時間的な関係が重要な作業が含まれるから,「ハングアウト」の利用形態には,当該「共同作業」の内容に応じ,一の参加者が,他の参加者から受信したコンテンツに対して自身が決定した時間的に重なる関係を有するように他のコンテンツを入力することが含まれる。そうすると,「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」は,参加者(操作者)により決定された時間的関係に従って受信したコンテンツに時間的に重なる他のコンテンツを参加者(操作者)に入力させる機能を有している。 また,「ハングアウト」に関する前記甲第14号証の記載においては,招待したいユーザーの名前を入力するかプロフィール写真をタップすることによりユーザーを招待して,[ハングアウト開始]をタップし(「3 ユーザーを招待する」)た後,招待したユーザーがハングアウトに参加するまで待つ(「4 参加するのを待つ」)ことになる。また,前記甲第11号証の記載から,受信者を特定する識別情報がGoogleサーバーに送信され,Googleサーバーが,招待されたユーザーに対して当該ユーザーが招待された旨の情報を送信していることは自明である。また,イ号物件説明書のaのvを考慮すれば,受信者を特定する識別情報が,「無線トランスミッタ」を通じて送信されることは自明である。そうすると,「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」は,「無線トランスミッタ」を通じて,Googleサーバーに受信者を特定する識別情報を送信する機能を有している。 また,「ハングアウト」に関する前記甲第14号証の記載においては,招待されたユーザーが参加した後は,ハングアウトが開始され,招待したユーザーは,コンテンツを入力し,招待されたユーザーに当該コンテンツが送信されることが示されている。また,前記甲第11号証の記載から,当該コンテンツが,直接的にはGoogleサーバーに対して送信されることは自明である。さらに,イ号物件説明書のaのvを考慮すれば,コンテンツが,「無線トランスミッタ」を通じて送信されることは自明である。そうすると,「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」は,「無線トランスミッタ」を通じてGoogleサーバーにコンテンツを送信する機能を有している。 前述のように,「ハングアウト」は,複数の者の間で互いの顔画像を見ながら会話(会議等を含む。)を行う機能を有したアプリケーションであり,互いの顔画像を見ながら会話が成立するためには,会話に参加している各参加者の顔画像及び音声が,相互に送受信されるものと解される。そうすると,一の参加者からGoogleサーバーに送信されたコンテンツは,Googleサーバーにより,そのまま他の参加者に送信されるものと認められる。ここで,Googleサーバーによる送信は,Googleサーバーの機能であって,Nexus9又はNexus9にプリインストールされている「ハングアウト」の機能ではない。 また,処理回路であるプロセッサ(CPU)が,OS及びアプリケーションを実行することにより入出力デバイス及び通信機能を制御しつつ所望の機能を実現すること,すなわち,OS及びアプリケーションである「ハングアウト」が,処理回路に対し,入出力デバイス及び通信機能を制御させることは自明である。 そうすると,イ号物件説明書のbは,前記OS及びアプリケーションである「ハングアウト」が,「Nexus9を操作者参加者が操作する際に,操作者を支援する各種のアイコンを出力デバイスを通じて表示させ」るものと置き換えられる。 また,Nexus9に関する甲第3号証の1/3ページには,「画面」の仕様として「8.9インチIPS LCD TFT」を用いること,すなわち,IPS方式の液晶パネルを用いることが記載されているから,イ号物件説明書のaのii及びiiiにおける「ディスプレイ」は,「液晶パネル」に置き換えられる。 以上より,イ号物件説明書及び各甲号証に記載された事項から,当審は,イ号物件である「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」(タブレット型コンピュータ)を,以下のとおりのものと認定する。 「a Nexus9は, i その大きさは高さ228.25ミリメートル,幅153.68ミリメートル,厚さ7.95ミリメートル及び重さは425グラム又は436グラムであり,手にとって使用することが念頭に置かれたハンドヘルド装置であって, ii 出力デバイスである液晶パネル,スピーカと, iii 入力デバイスである液晶パネル兼タッチパネル,マイク,ビデオカメラ等と, iv WiFi及び/または3G回線/あるいはLTE回線等の利用を可能とする無線チップ(無線トランスミッタ)と, v (これら出力デバイス,前記入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する) NVIDIA Tegra K1 Dual Denverと呼ばれるCPU(処理回路)と, b CPUで実行可能なOS及びアプリケーション「ハングアウト」とを備え, 当該OS及びアプリケーション「ハングアウト」は,Nexus9を操作者が操作する際に,操作者を支援する各種のアイコンを出力デバイスを通じて表示させ, c 前記出力デバイスを通じて操作者へ,Googleサーバーから受信したコンテンツを提示させ, d 操作者により決定された関係に従って前記コンテンツの提示に時間的に重なる他のコンテンツを前記入力デバイスを通じて操作者に入力させ, d’ 受信者を特定する識別情報を前記入力デバイスを通じて操作者に入力させ, e 前記無線トランスミッタを通じて,Nexus9からGoogleサーバーに前記他のコンテンツを送信させ, e’ 前記無線トランスミッタを通じて,Nexus9からGoogleサーバーに前記受信者を特定する識別情報を送信させるように構成されているNexus9。」 第4 当事者の主張 1 請求人の主張 請求人は,「別紙イ号物件説明書に示すとおり,イ号物件である「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」(タブレット型コンピュータ)は,特許第5033756号発明(以下「本件特許発明」という。)に規定するハンドヘルド装置の構成物件をすべて含むから,「ハングアウトがプリインストールされたNexus」は,本特許発明の技術的範囲に属する。」(判定請求書第3ページ第26行?第4ページ第3行)と主張している。 2 被請求人の主張 被請求人は,答弁書にて,概略以下の主張をしている。 (1)請求人は,イ号物件説明書において,アキラ,マリ,ケン間のビデオ通話の事例を挙げて説明を試みているが,イ号物件説明書に「操作者がハンドヘルド装置を操作する事例については,例えば,次のようなシチュエーションが考えられる(以下同様の事例を想定する)。」(第4ページ脚注13)と記載されているとおり,アキラ,マリ,ケン間のビデオ通話の事例は仮想事例であり,しかも具体的な証拠に基づくものではなく,立証として不十分である。(答弁書第3ページ第6-11行) (2)受信者の識別子を入力することはない(構成要件D)(答弁書第3ページ第16行-第4ページ第19行) 本件発明の構成要件Dは,「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツと,少なくとも単独の受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ,」と規定されている。 ここで,構成要件Aでは,「操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも一つの入力デバイス」と規定されていることから,当該構成要件Dは,操作者から入力を受ける入力デバイスを通じて,受信者の識別子が入力されることを規定しているものと理解される。 また,構成要件E及びFにおいて,「遠隔サーバー」と「受信者」を区別して規定していることからすれば,本件発明の「受信者」は「遠隔サーバー」と異なる主体であると理解される。 しかしながら,ハングアウトでのビデオ会議において,イ号物件で入力されるのは操作者の画像/音声のみであって,受信者を示す情報(識別子)は入力されない。このことは,請求人が提出した甲16号証の動画のいずれにも,第2のコンテンツ(画像/音声)が入力される際に,操作者が入力デバイスを通じて受作者の情報を入力していないことからも明らかである。 仮に,ハングアウトでのビデオ会議において,コンテンツ(画像/音声)とともに当該コンテンツの受信者の情報を入力する必要がある場合,操作者において当該コンテンツの受信者の情報を入力するのにー定の時間が必要となり,会話を行う度に大幅なタイムラグが生じてしまうため,ビデオ会議システムとして成立しないことは自明である。 よって,イ号物件では,第2のコンテンツと受信者の識別子を,入力デバイスを通じて与えてはいないから,本件発明の構成要件Dを充足しない。 (3)受信者の識別子を遠隔サーバーに送らない(構成要件E)(答弁書第4ページ第20行-第5ページ第23行) 構成要件Eは,「前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送ると共に,」と規定されている。 前記(2)で述べたとおり,イ号物件において,受信者の識別子に相当する情報が入力デバイスを通じて与えられることはない。また,ハングアウトでビデオ会議が行われる際,イ号物件では,第2のコンテンツに相当するデータを「遠隔サーバー」に相当するGoogleサーバーを宛先として送信するが,この際に,受信者の識別子に相当する情報を送信することはない。 ハングアウトにおいて,ビデオ会議の参加者の情報は,当該ビデオ会議のセットアップ時に既にGoogleサーバーに保存されている。ビデオ会議の各参加者の端末は,Googleサーバーに対して音声・映像のコンテンツを送信し,当該コンテンツを受けたGoogleサーバーは,保存済みの参加者の情報を参照して,当該参加者ヘコンテンツを一斉に送信する。 このように,イ号物件では,第2のコンテンツに相当する情報を送信する際に,受信者の識別子を遠隔サーバーに送ることはないから,構成要件Eを充足することはない。 この点につき,請求人は,平成27年5月1日付け「審尋に対する回答書」2頁)にて,「送信側が第2のコンテンツの表現を遠隔サーバーへ送る際に,受信者を特定する識別情報を送る点について,コンピュータによるデジタル情報通信の方法として常識(公知の技術)であり,甲号証には記載はない。すなわち,インターネット上の通信手段であるパケット通信においては,パケットごとに識別情報が付加されて情報・コンテンツ等が送信されるのである。このとき,受信者を特定する識別情報が付加されなければ,受信者に届かないことはいうまでもない。」と主張している。 しかし,前述したとおり,ハングアウトを用いたビデオ会議では,当該Googleサーバーにおいて既に受信者の情報が保存されており,操作者側のイ号物件はGoogleサーバーに対して情報を送信すれば足り,イ号物件から受信者の情報を別途送信する必要は皆無であるから,請求人の主張は理由がない。 (4)「操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」が送信されない(構成要件F)(答弁書第5ページ第26行-第9ページ第2行) ア 「前記関係」の意義 構成要件Fは,「この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されているハンドヘルド装置。」と規定されている。 ここで,「前記関係」とは,構成要件Dに記載された「操作者により決定された関係」を示すものと理解される。そして,構成要件Dでは「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツ」と規定されていることから,構成要件Fの「前記関係」とは,第1のコンテンツと第2のコンテンツとの時間的な重ね合わせに関する関係を意味するものと,理解される。 イ イ号物件では,第1のコンテンツと第2のコンテンツとの時間的関係は維持されない。 ハングアウトを管理するGoogleサーバーは,ある参加者から(映像・音声の)コンテンツ(第1のコンテンツ)を受信すると,そのまま他の参加者(受信者)にコンテンツを送信しており,他の参加者から受信される別のコンテンツ(第2のコンテンツ)に合わせて,当該第1のコンテンツの送信タイミングを調整していない。 すなわち,ハングアウトにおいては,Googleサーバーと各参加者の端末との間の伝送遅延に起因して,操作者における第1コンテンツの提示と第2コンテンツの入力の時間的間隔と,受信者における第1コンテンツと第2コンテンツの受信との時間的間隔は異なる。 すなわち,遠隔サーバーが時間T1において第1のコンテンツ(ユーザ1,2以外の第三者から入力されたコンテンツ)を,他のユーザであるユーザ1(操作者)及び2(受信者)に送信し,ユーザ1,ユーザ2の端末において,それぞれ時間T2,T3に受信され,画面に第1のコンテンツが表示される。その後,ユーザ1(操作者)において,時間T4に第2のコンテンツを入力すると,当該第2のコンテンツがGoogleサーバーに送られ,Googleサーバーは時間T5で第2のコンテンツを受信する。そして,Googleサーバーは,第2のコンテンツを第2のユーザに送信する。当該第2のコンテンツは,時間T6にて,ユーザ2の端末で受信される。 このように,イ号物件及びGoogleサーバーとの伝送遅延により,ユーザ1における第1及び第2のコンテンツの時間的関係はT4とT2で定まるのに対し,ユーザ2における第1及び第2のコンテンツの時間的関係はT6とT3で定まり,両者は異なる。よって,受信者(ユーザ2)において,第1コンテンツと第2コンテンツの時間的関係が保たれることはない。 以上述べたとおり,ハングアウトを用いたビデオ会議においては,サーバーと端末との間の伝送遅延が生じるため,操作者における第1のコンテンツ(マリの動画及びボーカル)と第2のコンテンツ(アキラのギター音楽又は動画)のタイミングやテンポが保たれたまま,受信者に送られることはないから,「操作者により決定された関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現」が受信者に送信されることはない。 ウ YouTubeに関連した構成について (省略) エ 小括 したがって,イ号物件では「操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す表現」が送信されることはなく,本件発明の構成要件Fを充足しない。 (5)イ号物件は遠隔サーバーの動作制御を行っていない(構成要件F)(第9ページ第3行-16行) 構成要件Fは,「この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させる」との要件が規定されており,当該要件は,ハンドヘルド装置ではなく遠隔サーバーの動作が規定されていることは,その文言から明らかである。 しかるに,イ号物件はハンドヘルド装置であって,遠隔サーバーであるGoogleサーバーの動作制御は行っておらず,Googleサーバーにおいて「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させる」制御は行っておらず,また,請求人もこの点を何ら明らかにしていない。 よって,かかる観点からも,イ号物件は本件発明の構成要件Fを充足していないことは明らかである。 第5 対比及び判断 1 各構成要件の充足性について (1)構成要件Aについて a.「ハンドヘルド装置」について イ号物件のaのiの「その大きさは高さ228.25ミリメートル,幅153.68ミリメートル,厚さ7.95ミリメートル及び重さは425グラム又は436グラムであり,手にとって使用することが念頭に置かれたハンドヘルド装置」は,構成要件Aの「ハンドヘルド装置」を充足する。 b.「出力デバイス」について 本件特許明細書の段落【0024】には,「ハンドヘルド装置」が備えるものとして,「可視的ラスター・ディスプレイ・デバイス24(例えばLCDパネル)」と記載されていることから,本件特許発明の「可視的ラスター・ディスプレイ」は,LCDパネル,すなわち,液晶パネルを含むことが明らかである。 よって,イ号物件のaのiiの「出力デバイスである液晶パネル,スピーカ」は,構成要件Aのうち「操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも一つの出力デバイス」を充足する。 c.「入力デバイス」について 構成要件Aは,「操作者へ出力を提示する可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも一つの出力デバイスと,操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも一つの入力デバイスと」である。ここで,「入力デバイス」は「操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む」ことが特定されるとともに,「可視的ラスター・ディスプレイを含む少なくとも一つの出力デバイス」とは異なるデバイスとして特定されている。 そして,本件特許明細書においても,段落【0024】には,「ハンドヘルド装置」が備えるものとして,「入力のためのスイッチ21の配列」が記載され,当該「スイッチの配列」について,段落【0048】には,「この装置は,スイッチ21の配列(これは,対応するボタンの配列を押すことにより起動できる)」と記載され,さらに,図1には,「ハンドヘルド装置」が,「可視的ラスター・ディスプレイ・デバイス」(24)とは別に,スイッチ21の配列を有することが見て取れることから,「可視的ラスター・ディスプレイ」とは別に「スイッチ配列」を有すると解するのが合理的である。 一方,イ号物件のaのiiiの「液晶パネル兼タッチパネル」において,入力のための「タッチパネル」は,出力デバイスである「液晶パネル」と兼用のものであり,「液晶パネル」とは別に存在するものではない。また,「タッチパネル」自体は,「スイッチ配列」を備えるものでもない。また,イ号物件のaのiiiの「マイク,ビデオカメラ等」が,「スイッチ配列」を備えるものではないことは自明である。 よって,イ号物件のaのiiiの「入力デバイスである液晶パネル兼タッチパネル,マイク,ビデオカメラ等」は,構成要件Aのうち「操作者から入力を受けるスイッチ配列を含む少なくとも一つの入力デバイス」を充足しない。 d.「無線トランスミッタ」について イ号物件のaのivの「WiFi及び/または3G回線/あるいはLTE回線等の利用を可能とする無線チップ(無線トランスミッタ)」は,構成要件Aの「無線トランスミッタ」を充足する。 e.「処理回路」について イ号物件のaのvの「(これら出力デバイス,前記入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する)NVIDIA Tegra K1 Dual Denverと呼ばれるCPU(処理回路)」は,前記c.で述べた点を除いて,構成要件Aのうち「前記少なくとも1つの出力デバイス,前記少なくとも1つの入力デバイス及び前記無線トランスミッタの動作を制御する処理回路」を充足する。 以上(特に,上記c.)から,イ号物件は,構成要件Aを充足しない。 (2)構成要件Bについて イ号物件の「OS及びアプリケーション「ハングアウト」」は,構成要件Cの「プログラム」に相当する。よって,イ号物件の「CPUで実行可能なOS及びアプリケーション「ハングアウト」とを備え」る点は,構成要件Bのうち「前記処理回路で実行可能なプログラムとを備え」る点を充足する。 また,イ号物件の「当該OS及びアプリケーション「ハングアウト」は,Nexus9を操作者が操作する際に,操作者を支援する各種のアイコンを出力デバイスを通じて表示させ」る点は,構成要件Bのうち「そのプログラムは,前記ハンドヘルド装置を操作者が操作する際に,操作者を支援するように,その操作に関する情報を前記可視的ラスター・ディスプレイを通じて表示させ」る点を充足する。 よって,イ号物件は,構成要件Bを充足する。 (3)構成要件Cについて イ号物件の「Googleサーバー」及び「コンテンツ」はそれぞれ,本件特許発明の「ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー」及び「第1のコンテンツ」に相当する。 よって,イ号物件の「前記出力デバイスを通じて操作者へ,Googleサーバーから受信したコンテンツを提示させ」る点は,構成要件Cのうち「前記出力デバイスを通じて操作者へ,(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー」「から与えられる第1のコンテンツの表現を提示させ」る点を充足する。 なお,構成要件Cにおいて,「(a)前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバー」と「(b)取り外し可能なメモリ・デバイス」とは「又は」で接続されているため,当該(a)と(b)とのいずれかを充足すれば足りる。 よって,イ号物件は,構成要件Cを充足する。 (4)構成要件Dについて a.「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツ…を前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」る点 イ号物件の「他のコンテンツ」は,構成要件Dの「第2のコンテンツ」に相当する。 よって,イ号物件の「操作者により決定された関係に従って前記コンテンツの提示に時間的に重なる他のコンテンツを前記入力デバイスを通じて操作者に入力させ」る点は,構成要件Dのうち「操作者により決定された関係に従って第1のコンテンツの提示に時間的に重なる第2のコンテンツ…を前記入力デバイスを通じて操作者から受け取らせ」る点を充足する。 b.「…第2のコンテンツと…受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて受け取らせ」る点 上記記載が「第2のコンテンツ」と「受信者の識別子」とを一組のデータとして同時に受け取ることを特定しているものか,それぞれをいずれかのタイミングで受け取ることを特定するものであるのかについて,以下検討する。 本件特許明細書には,次の記載がある。 「【0034】 ステップ115において,システムは,選択されたバックグラウンド・ミュージックの演奏を聴覚出力トランスデューサ23を通じて提示し,操作者から聴覚入力トランスデューサ22を通じて操作者コンテンツを受け取る。ステップ116は操作者がバックグラウンド・ミュージックを聞きながら,例えば歌うことを可能とする。これは操作者に,操作者コンテンツをバックグラウンド・ミュージックの提示に時間的に重畳させ,この重畳の時間的関係を制御させることを可能にする。 【0035】 ステップ115及び116は,ステップ117が操作者コンテンツの形成が終了したことを判断するまで繰り返される。次にこの処理はステップ103へ続く。代替的に,方法は,操作者が少なくとも1つの受信者を特定して,その受信先へ,メッセージと共に,形成したばかりの操作者コンテンツを送信することを可能とするステップへ続けてもよい。メッセージを送信し得る1つの方式を以下に示す。好ましくは,方法は,操作者がメッセージを送信することを可能にするステップへ直接に進むならば,一つのステップは,操作者がメッセージの送信を断つことを可能にするように与えられる。 【0036】 好ましくはサーバー30は記憶デバイス30に,操作者コンテンツを含むが,操作者により選択されたバックグラウンド・ミュージックを含まないメッセージの表現を記憶する。(以下略)」 「【0043】 e)送信 ステップ144において,操作者は既に形成されたメッセージを送信するように選択される。ステップ145において,操作者は少なくとも1つの受信者を識別する。セルラーフォンを用いる好ましい実施においては,操作者は電話機上の少なくとも1つのボタンを押して1つの電話番号を特定するか,操作者によって既に確立されて,サーバー30により記憶デバイス33に記憶された電話番号又はeメール・アドレスのリストから1つの受信者を選択することができる。代替的な実施においては,操作者は文字数字を特定する公知技術に従って電話機上のボタンを押すことによりeメール・アドレスを特定することが可能になる。選択的なステップ146は,メッセージに含めるべき何らかの付加的なメッセージ(例えばメッセージを受信者へ紹介するテキスト又は視覚的イメージ)を操作者に選択させることを可能とする。この処理はステップ 103へ続く。 【0044】 ステップ147において,サーバー30は,メッセージの表現をステップ145において指定された各受信先へ,その各受信先に適宜な送達方法により送信する。(以下略)」 以上の記載より,本件特許明細書には,操作者コンテンツ(「第2のコンテンツ」)を聴覚入力トランスデューサ(「入力デバイス」)を通じて操作者から受け取らせ, (a)好ましくは,メッセージ(操作者コンテンツ)をサーバーに送信して記憶させ,既に形成されたメッセージ(操作者コンテンツ)を選択して,受信者の電話番号等(「受信者の識別子」)を電話機上のボタン(「入力デバイス」)を通じて操作者から受け取らせ,選択したメッセージを受信者に送信し (b)代替的には,操作者が受信者を特定して,その受信先へ操作者コンテンツを送信する, こと,すなわち,基本的な実施例として,「第2のコンテンツ」を「入力デバイス」を通じて操作者から受け取らせて,「第2のコンテンツ」を遠隔サーバーに送信した後,当該「第2のコンテンツ」の選択と「受信者の識別子」とを入力デバイスを通じて操作者から受け取らせて,選択された「第2のコンテンツ」を受信者へ送信することが記載され,代替的な実施例として,「第2のコンテンツ」の入力に続いて「受信者の識別子」を「入力デバイス」を通じて操作者から受け取らせて,「第2のコンテンツ」と「受信者の識別子」とをサーバへ送信することが記載されている。 以上のことから,構成要件Dの「…第2のコンテンツと…受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて受け取らせ」との記載は,上記の基本的な実施例と代替的な実施例とを包含するものとして解釈するのが合理的である。 すなわち,構成要件Dの「…第2のコンテンツと…受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて受け取らせ」との記載は,「第2のコンテンツ」と「受信者の識別子」とを一組のデータとして同時に受け取らせることを特定しているのではなく,それぞれをいずれかのタイミングで入力デバイスを通じて受け取らせる(入力させる)機能を有していれば足りるものと解される。 なお,上記構成要件Dの記載において,「第2のコンテンツ」と「受信者の識別子」とを入力するごとに一組のデータとして複数回受け取らせる(入力させる)ことまでを具体的に特定しているとはいえないため,「第2のコンテンツ」を入力する際に(入力するごとに),「受信者の識別子」を入力するもの(上記代替的実施例)に限定して解釈することはできない。 一方,イ号物件の「d 操作者により決定された関係に従って前記コンテンツの提示に時間的に重なる他のコンテンツを前記入力デバイスを通じて操作者に入力させ,d’ 受信者を特定する識別情報を前記入力デバイスを通じて操作者に入力させ」からすると,イ号物件は,他のコンテンツと受信者を特定する識別情報のそれぞれを,入力デバイスを通じて操作者に入力させる機能を有している。ここで,イ号物件の「受信者を特定する識別情報」は,本件特許発明の「受信者の識別子」に相当する。 よって,イ号物件の「…コンテンツを前記入力デバイスを通じて動作者に入力させ,受信者を特定する識別情報を前記入力デバイスを通じて操作者に入力させ」る点は,構成要件Dの「…第2のコンテンツと…受信者の識別子とを前記入力デバイスを通じて受け取らせ」る点を充足する。 以上から,イ号物件は,構成要件Dを充足する。 (5)構成要件Eについて 前記(4)のb.で述べたように,本件特許明細書には,基本的な実施例として,「第2のコンテンツ」を「入力デバイス」を通じて操作者から受け取らせて,「第2のコンテンツ」を遠隔サーバーに送信した後,当該「第2のコンテンツ」の選択と「受信者の識別子」とを入力デバイスを通じて操作者から受け取らせて,選択された「第2のコンテンツ」を受信者へ送信することが記載され,代替的な実施例として,「第2のコンテンツ」の入力に続いて「受信者の識別子」を「入力デバイス」を通じて操作者から受け取らせて,「第2のコンテンツ」と「受信者の識別子」とをサーバへ送信することが記載されている。 よって,構成要件Eの「前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送ると共に」との記載についても,上記の基本的な実施例と代替的な実施例とを包含するものとして解釈するのが合理的である。 一方,イ号物件の 「e 前記無線トランスミッタを通じて,Nexus9からGoogleサーバーに前記他のコンテンツを送信させ,e’ 前記無線トランスミッタを通じて,Nexus9からGoogleサーバーに前記受信者を特定する識別情報を送信させる」からすると,イ号物件は,他のコンテンツと受信者を特定する識別情報のそれぞれを,無線トランスミッタを通じてNexus9からGoogleサーバーに送信させる機能を有している。 よって,イ号物件の「前記無線トランスミッタを通じて,Nexus9からGoogleサーバーに前記他のコンテンツを送信させ,前記無線トランスミッタを通じて,Nexus9からGoogleサーバーに前記受信者を特定する識別情報を送信させる」ことは,構成要件Eの「前記無線トランスミッタを通じて,前記ハンドヘルド装置から空間的に離間した遠隔サーバーに対して第2のコンテンツの表現と少なくとも単独の受信者の識別子とを送る」を充足する。 よって,イ号物件は,構成要件Eを充足する。 (6)構成要件Fについて a.「ハンドヘルド装置」が,「遠隔サーバー」が「更なる表現を送信させる」ように「構成されている」点について 構成要件Fの「この遠隔サーバーが,前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信させるように構成されているハンドヘルド装置」は,「ハンドヘルド装置」が「遠隔サーバー」に対して「送信させる」ものであり,「ハンドヘルド装置」は,「遠隔サーバー」に対し使役(制御)するものであることは明らかである。 一方,イ号物件は,各甲号証を参酌しても,入力されたコンテンツをそのまま「Googleサーバー」に送信しているにすぎず,第1のコンテンツと第2のコンテンツとの時間的な関係に関して,「Googleサーバー」に対して何らかの使役的な制御をしている具体的な証拠は示されていない。 よって,イ号物件は,構成要件Fのうち「ハンドヘルド装置」が,「遠隔サーバー」が「更なる表現を送信させる」ように「構成されている」点を,充足しない。 b.「遠隔サーバー」が「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信」する点について 構成要件Fのうち「遠隔サーバー」が「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信」することは,「遠隔サーバー」の構成を特定する事項であるが,イ号物件に係る「Nexus9」は,ハンドヘルド装置であって「遠隔サーバー」ではないから,「遠隔サーバー」の構成を含み得ないことは明らかである。 また,上記「第3 イ号物件」の項で述べたように,「ハングアウト」は,複数の者の間で互いの顔画像を見ながら会話(会議等を含む。)を行う機能を有したアプリケーションであり,互いの顔画像を見ながら会話が成立するためには,会話に参加している各参加者の顔画像及び音声が,相互に送受信されるものと解される。よって,「ハングアウト」において,例えば,参加者がA,B及びCであると仮定して,参加者Aが入力した第1のコンテンツは,当該第1のコンテンツがGoogleサーバーによって受信されたタイミングに従って参加者Bと参加者Cとに送信され,参加者Bが別途入力した第2のコンテンツも,当該第2のコンテンツがGoogleサーバーによって受信されたタイミングに従って参加者Aと参加者Cとに送信されるため,参加者Cが受信する第1のコンテンツと第2のコンテンツとの時間的な関係は,参加者Bによる第1のコンテンツの受信と第2のコンテンツの入力との時間的関係とは等しいとはいえないし,等しいことを示す具体的な証拠も示されていない。 よって,イ号物件は,構成要件Fのうち「遠隔サーバー」が「前記操作者により決定された前記関係を保って配置された第1のコンテンツ及び第2のコンテンツを表す更なる表現を前記少なくとも単独の受信者が受信するように,前記更なる表現を送信」する点を,充足しない。 以上より,イ号物件は,構成要件Fを充足しない。 第6 むすび 以上のとおりであるから,イ号物件(「ハングアウトがプリインストールされたNexus9」(タブレット型コンピュータ))は,本件特許発明の構成要件A,Fを具備しないから,本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって,結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2015-10-22 |
出願番号 | 特願2008-266432(P2008-266432) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(H04M)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 賢司、戸次 一夫 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
林 毅 萩原 義則 |
登録日 | 2012-07-06 |
登録番号 | 特許第5033756号(P5033756) |
発明の名称 | 実時間対話型コンテンツを無線交信ネットワーク及びインターネット上に形成及び分配する方法及び装置 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 木村 広行 |
代理人 | 野村 吉太郎 |
代理人 | 小林 英了 |