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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) H01R
管理番号 1307382
判定請求番号 判定2015-600017  
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2015-12-25 
種別 判定 
判定請求日 2015-05-26 
確定日 2015-11-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第4150028号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「端子台」は、特許第4150028号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号説明書及びイ号説明図に示す端子台(株式会社正興電機製作所製の端子台、形式:ATS-14C、以下「イ号物件」という)が、特許第4150028号の請求項7に係る発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
特許第4150028号の請求項7に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項7に記載されたとおりのものと認め、その構成要件を分説して記載すると次のとおりである。

「(A)両側に締結用のねじ穴を持つ短冊状の導電端子と、該導電端子を保持する絶縁ユニットとを有する端子台において、
(B)該絶縁ユニットに、圧着端子の外形形状を規制して該圧着端子が誤挿入される圧着端子挿入口部に該圧着端子がセットできないように突出している突出部が設けられ、
(C)該突出部は、前記導電端子を挟んで絶縁する隔壁から突出し、該隔壁間の片側または両側に設けられた圧着端子誤挿入規制用のガイドリブ部であって、該ガイドリブ部は、その上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状に形成されている端子台。」

第3 イ号物件
1 判定請求書に添付された「イ号説明書」には、以下の事項が記載されている。
(1)「【イ号物件の名称】 端子台」(イ号説明書1ページ2行)

(2)「【イ号物件の説明】
株式会社 正興電機製作所が製造販売している端子台(型式番号:ATS-14C)は、添付のイ号説明図(図1、図2-1、図2-2及び図3)に示すものである。」(イ号説明書1ページ3ないし6行)

(3)「イ号物件は従来技術の端子台の構造を基本とするものであり、上段端子台Iと下段端子台IIを備えている。」(イ号説明書1ページ8及び9行)

(4)「上段端子台Iは隔壁w1によって仕切られた多数の圧着端子挿入部jを備えており、各圧着端子挿入部jにねじ付き座金10があり、当該ねじ付き座金10は板ばね11によって上方に付勢されている。そして、そのねじ12はM5(外径5mm)であり、導電端子13のネジ穴13aに螺合される。
また、下段端子台IIも同様に隔壁w2によって仕切られた多数の圧着端子挿入部jを備えており、各圧着端子挿入部jにねじ付き座金15があり、このねじ付き座金15は板ばね11によって上方に付勢されている。そして、そのねじ17はM4(外径4mm)であり、導電端子18のねじ穴18aに螺合される。
上段端子台Iの基本構造は従来周知のもの(例えば、特開2001-52776号公報のもの)と同じであり、その隔壁w1から端子挿入部jに向けて突出部20が突出されている。そしてこの突出部20の平面形状は円柱体を縦に半割にしたようなほぼ半円柱状のもので、その奥側部分で導電端子13を押さえている。そして、この突出部20の上面は水平面でありその導電端子13上面からの高さは3mmであり、当該上面は上記ねじ12の下端面とほぼ等しい高さ位置にある(図1(B-1)参照)。
圧着端子2の圧着端子挿入部jへの挿入が不完全であると圧着端子2の一部が上記突出部20の上面に乗り上げた状態になり、圧着端子2は正規位置にないことが上記ねじ12の締め付け段階で感知されるので、これにより、不正規位置で締めつけられるのが未然に回避される。」(イ号説明書1ページ15行ないし2ページ9行)

(5)「他方、下段端子台IIのねじ17はM4であり、導電端子18のねじ穴18aに螺合される。下段端子台IIの隔壁w2から圧着端子挿入部jに向けて突出部21が突出されており(図2-1(B)参照)、当該突出部21の平面形状は楕円柱体を半割にしたようなほぼ半楕円(より正確には「円弧+水平直線+斜線によるもの)状のもの(図2-2(B)参照)であり、その側面形状は高さが高い前側半部21aと低い奥側半部21bとで構成されている。この突出部21の形状の詳細は図3(A)に示すとおりである。」(イ号説明書2ページ12ないし18行)

(6)「突出部21の前側半部21aの上面は上方に凸の円弧状上面(曲率半径R:2mm)21fであり、奥側半部21bの上面は水平面21gである。前側半部の高さHは3mm、奥側半部21bの高さh1は2mm、厚さtは1mmである。また、突出部21の奥行き長さL:7.7mm、前側半部21aの奥行き長さL1: 2.7mm、前側半部21a下面の奥行き長さL2:3.3mmである。
そして、この奥側半部21bは奥側に大きく延びていて長い範囲で導電端子18を上から押さえている。
そして、上記ねじ17の下端面と突出部21の高さ方向の位置関係は次のとおりである。すなわち、突出部21の前側半部21aの円弧状上面21fの曲率半径の中心は当該突出部の前側端から少し(偏心量e:1mm)だけ奥側にある。したがって、当該円弧状上面21fの頂点より前側は少し前下がりの曲面であり、奥側は奥側に大きく後下がりの曲面である。そして、当該円弧状上面21fの頂点は上記ねじ17の下端面よりほぼ0.4mm高く、反対に、奥側半部21bの水平上面21gは上記ねじ17の下端面よりもほぼ0.6mm低い(図3参照)。」(イ号説明書2ページ20行ないし3ページ7行)

(7)「圧着端子が下段端子台IIの圧着端子挿入部jの入り口に、例えば少し前下がり(上向き)の傾斜状態で挿入されると、圧着端子2は当初、突出部21の入り口の円弧面に線接触して支持され、その後、接触位置を奥側に移動させながら後側下がり(下向き)になり、適宜の下向きの傾斜角度でねじ17の下側に向けて挿入されていく(図3(B)参照)。」(イ号説明書3ページ15ないし19行)

(8)「4.イ号説図における符合の説明
I:上段端子台
II:下段端子台
j:圧着端子挿入部
3:圧着端子
3a:圧着端子の先側部
10,15:ねじ付き座金
12,17:ねじ
13,18:導電端子
13a,18a:ねじ穴
20,21:突出部
21a:突出部21の前側半部
21b:突出部21の奥側半部
21f:上方に凸の円弧状上面
21g:水平面
26:突出部21の奥側半部21bの左右の傾斜面
35:圧着端子3の先側部3aの左右両側の傾斜面」(イ号説明書4ページ8ないし24行)

(9)「【イ号説明図の簡単な説明】
図1(A)は、イ号物件全体の正面図、図1(B)は、側断面図、 図1(B-1)は、図1(B)の一部拡大図、図1(C)は、上段端子台の一部平面図である。
図2-1(A)は、本特許明細書の請求項7に係る発明の突出部1の上面と圧着端子2との、圧着端子2挿入時の関係を模式的に示す側面図(本特許明細書の図6参照)、図2-1(B)は、イ号物件の下段端子台IIの突出部21の上面と圧着端子3との、圧着端子3挿入時の関係を模式的に示す側面図である。
図2-2(A)は、イ号物件の上段端子台Iの圧着端子2が圧着端子挿入部jの正規位置に収まっているときの突出部20と圧着端子2の先側部2aとの関係を模式的に示す平面図であり、図2-2(B)は、イ号物件の下段端子台IIの圧着端子3が圧着端子挿入部jの正規位置に収まっているときの突出部21と圧着端子3の先側部3aとの関係を模式的に示す平面図である。
図3(A)は、イ号物件の下段端子台IIの突出部21の側面形状を模式的に拡大して示す側面図、図3(B)は、同突出部21の前側半部21aの円弧状上面と圧着端子2の先側部2aとの、圧着端子挿入時の関係を模式的に拡大して示すものである。」(イ号説明書4ページ25ないし5ページ14行)

2 イ号説明図には、以下の事項が図示されている。
2-1 イ号物件の上段端子台I
(1)図1(B)、図1(B-1)及び図1(C)を合わせてみると、図1(B-1)に符号13で示される導電端子は、短冊状であり、図1(C)に符号13aで示されるねじ穴13aが両側に設けられている。

(2)図1(B-1)、図1(C)及び図2-2(A)を合わせてみると、図1(B-1)に符号Iで示される上段端子台は、図1(B-1)及び図1(C)に符号jで示される圧着端子挿入部を隔てる図1(B-1)、図1(C)及び図2-2(A)に符号w1で示される隔壁を有する部材からなっている。また、隔壁w1を有する部材は、導電端子13を保持している。

(3)図1(B)、図1(B-1)、図1(C)及び図2-2(A)を合わせてみると、隔壁w1には、図1(B-1)、図1(C)及び図2-2(A)に符号20で示される突出部が突出して設けられ、その突出部20は、その上面部が水平である。

2-2 イ号物件の下段端子台II
(1)図1(B-1)及び図1(C)を合わせてみると、図1(B-1)に符号18で示される導電端子は、側面からみて略Γ字形であり、図1(C)に符号18aで示されるねじ穴が設けられている。なお、図2-1(B)は、請求項7に係る発明に対応させて模式的に示す図であり、イ号物件の下段端子台IIを正しく表していない。

(2)図1(B-1)、図1(C)及び図2-2(B)を合わせてみると、図1(B-1)に符号IIで示される下段端子台は、圧着端子挿入部jを隔てる図1(B-1)及び図2-2(B)に符号w2で示される隔壁を有する部材からなっている。また、隔壁w2を有する部材は、導電端子18を保持している。

(3)図1(B-1)、図1(C)及び図2-2(B)を合わせてみると、図1(C)及び図2-2(B)に符号3で示される圧着端子の左右に、隔壁w2が設けられ、また、隔壁w2には図1(C)及び図2-2(B)に符号21で示される突出部が突出して設けられている。

(4)図1(B-1)、図1(C)、図2-2(B)、図3(A)及び図3(B)を合わせてみると、突出部21は、圧着端子挿入部jの入口方向から、図3(A)及び図3(B)に符号21aで示される上方に凸の円弧状上面部を有する前側半部と、図3(A)及び図3(B)に符号21bで示される水平な上面部を有する奥側半部とからなる。

3 イ号物件の認定
上記1、2-1及び2-2の事項からみて、イ号物件の構成は、本件特許発明に則して記載すると次のとおりのものと認める。
3-1 イ号物件の上段端子台I
「(a1)両側に締結用のねじ穴13aを持つ短冊状の導電端子13と、該導電端子13を保持する隔壁w1を有する部材とを有する上段端子台Iにおいて、
(b1)該隔壁w1を有する部材に、圧着端子挿入部jに対して突出するように突出部20が設けられ、
(c1)該突出部20は、前記導電端子13を挟んで隔壁w1から突出し、該隔壁w1間の両側に設けられた突出部材であって、該突出部材は、その上面部が水平である上段端子台I。」

3-2 イ号物件の下段端子台II
「(a2)締結用のねじ穴18aを持つ、側面からみて略Γ字形の導電端子18と、該導電端子18を保持する隔壁w2を有する部材とを有する下段端子台IIにおいて、
(b2)該隔壁w2を有する部材に、圧着端子挿入部jに対して突出するように突出部21が設けられ、
(c2)該突出部21は、前記導電端子18を挟んで隔壁w2から突出し、該隔壁w2間の両側に設けられた突出部材であって、該突出部材は、上方に凸の円弧状上面部を有する前側半部21aと水平な上面部を有する奥側半部21bとからなる下段端子台II。」

第4 対比・判断
イ号物件が本件特許発明に係る前記分説した各構成要件(A)ないし(C)を充足するか否かについて、以下に対比・判断する。
1 イ号物件の上段端子台I
1-1 構成要件(A)の充足性について
本件特許発明とイ号物件の上段端子台Iとを対比すると、後者の「導電端子13」は、前者の「導電端子」に相当し、後者の「導電端子13を保持する隔壁w1を有する部材」は、通常、端子間に設けられる隔壁を有する部材は、絶縁材から構成されることは明らかであるので、前者の「導電端子を保持する絶縁ユニット」ということができる。
したがって、イ号物件の上段端子台Iは、本件特許発明の構成要件(A)を充足する。
この点について、請求人と被請求人の間に争いはない。

1-2 構成要件(B)の充足性について
本件特許発明とイ号物件の上段端子台Iとを対比すると、後者の「突出部20」は、圧着端子2の外形形状を規制して該圧着端子2が誤挿入される圧着端子挿入部jに該圧着端子2がセットできないように設けられるものであることはその形状からみて明らかであるから、前者の「圧着端子の外形形状を規制して該圧着端子が誤挿入される圧着端子挿入口部に該圧着端子がセットできないように突出している突出部」ということができる。
したがって、イ号物件の上段端子台Iは、本件特許発明の構成要件(B)を充足する。
この点について、請求人と被請求人の間に争いはない。

1-3 構成要件(C)の充足性について
構成要件(C)の「該ガイドリブ部は、その上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状に形成されている」における「テーパ」について検討する。
「テーパー」の一般的な用語の意味は「円錐状に直径が次第に減少している状態。また、その勾配。尖錐。」(広辞苑第六版)であるが、本件特許発明においては、上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状に形成されたガイドリブ部は、本件特許明細書等の実施形態3をみる限り、上記一般的な用語の意味である円錐状とは異なる形状に形成されている。すなわち、ガイドリブ部の上面部は側面からみて、その断面が手前側で高く奥側で低い傾斜面として形成されており、この傾斜面が本件特許発明におけるテーパ状の上面部を意味するものといえる。
さらに、本件特許明細書等の実施形態3に関する「アンプ端子7の挿入を容易にするために、上端面が斜め上から斜め下に傾くテーパを付ける。このリブの高さはアンプ端子やねじのサイズによっても変わる。ねじの足先端とリブの上端部とを面一にしておくと、アンプ端子7を少し斜めにしてそのテーパ面に沿って容易に挿入して所定値にセットできる。」(段落【0060】)、「即ち、図6に示すように、通常の端子台30Aでは、ガイドリブ部41aのテーパ面に沿って、アンプ端子7を、“1”→“2”→“3”の順序で容易に挿入して、アンプ端子7のねじ用穴7aをピンガイド部材8の先端部8aで貫通させて端子3のねじ穴2上にセットする。」(段落【0063】)及び【図6】によれば、ガイドリブ部のテーパ状の上面部はアンプ端子をその上面部に沿わせることで所定値、すなわち、所定の場所であるねじ穴にセットできるという機能を有するものであることがわかる。
そうすると、イ号物件の上段端子台Iの「突出部材」は、その上面部が側面からみて水平であるから、本件特許発明の「ガイドリブ部」、すなわち、「上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状に形成されている」ものとは形状が相違し、また、アンプ端子をその上面部に沿わせることで所定の場所であるねじ穴にセットできるという機能を奏するものでもない。
したがって、イ号物件の上段端子台Iは、本件特許発明の構成要件(C)を充足しない。
構成要件(C)を充足しない点について、請求人と被請求人の間に争いはない。

1-4 まとめ
以上のとおり、イ号物件の上段端子台Iは、本件特許発明の構成要件(C)を充足していないから、本件特許発明の技術的範囲に属するものとはいえない。
この点について、請求人と被請求人の間に争いはない。

2 イ号物件の下段端子台II
2-1 構成要件(A)の充足性について
イ号物件の下段端子台IIは、導電端子18は、側面からみて略Γ字形であって、図1(B-1)及び図1(C)に示すように、その途中で屈曲し、導電端子18は、図1(B-1)及び図1(C)を参酌しても、締結用のねじ穴18aが一つであって、短冊状で両側に締結用のねじ穴を持つものではない。
したがって、イ号物件の下段端子台IIは、本件特許発明の構成要件(A)を充足しない。

請求人及び被請求人は、導電端子18に関し、導電端子18が側面からみて略Γ字形である点及び締結用のねじ穴18aが一つしかない点を看過しているから、両者の主張は採用できない。

2-2 構成要件(B)の充足性について
本件特許発明とイ号物件の下段端子台IIとを対比すると、後者の「隔壁w2を有する部材」は、通常、端子間に設けられる隔壁を有する部材は、絶縁材から構成されることは明らかであるので、前者の「絶縁ユニット」ということができ、後者の「突出部21」は、圧着端子3の外形形状を規制して該圧着端子3が誤挿入される圧着端子挿入部jに該圧着端子3がセットできないように設けられるものであることはその形状からみて明らかであるから、前者の「圧着端子の外形形状を規制して該圧着端子が誤挿入される圧着端子挿入口部に該圧着端子がセットできないように突出している突出部」ということができる。
したがって、イ号物件の下段端子台IIは、本件特許発明の構成要件(B)を充足する。
この点について、請求人及び被請求人の間に争いはない。

2-3 構成要件(C)の充足性について
イ号物件の下段端子台IIの「突出部材」は、圧着端子誤挿入規制のためのものとなることは明らかであるから、該突出部材は、「前記導電端子を挟んで絶縁する隔壁から突出し、該隔壁間の片側または両側に設けられた圧着端子誤挿入規制用」の部材ということができる。
また、イ号説明書には、第3 1(7)に「圧着端子が下段端子台IIの圧着端子挿入部jの入り口に、例えば少し前下がり(上向き)の傾斜状態で挿入されると、圧着端子2は当初、突出部21の入り口の円弧面に線接触して支持され、その後、接触位置を奥側に移動させながら後側下がり(下向き)になり、適宜の下向きの傾斜角度でねじ17の下側に向けて挿入されていく」とあることから、突出部21に設けられた突出部材は、圧着端子2をねじ17の下側に向けて導くものであるから、ガイド部材としても兼用されている。
そうすると、イ号物件の下段端子台IIの「突出部材」は、本件特許発明の「ガイドリブ部」に相当する。
そこで、イ号物件の下段端子台IIの「突出部材」は、側面からみて、上方に凸の円弧状上面部を有する前側半部21aと、水平な上面部を有する奥側半部21bとからなるものであるが、イ号物件の下段端子台IIの前側半部21aについて、さらに検討する。
イ号物件の下段端子台IIの前側半部21aは、上方に凸の円弧状上面部を有するものであるが、図1(B-1)、図3(A)及び図3(B)によれば、圧着端子挿入部jの入口方向からみて、入口側の凸部の頂点より高さが低いところから凸部の頂点に向けて高さが高くなる部位(「以下、「前側半部21a1」という。)と、凸部の頂点から奥側半部との境界に向けて高さが低くなる部位(「以下、「前側半部21a2」という。)とからなることが示されている。
そして、イ号物件の下段端子台IIの前側半部21a1、前側半部21a2および奥側半部21bからなる突出部材は、平面図である図1(C)及び図2-2(B)の突出部21における突出部材の平面形状をみても、突出部21における突出部材を構成する前側半部21a1、前側半部21a2および奥側半部21bが、圧着端子誤挿入規制として機能するために一体不可分のものであることは明らかである。
そうすると、イ号物件の下段端子台IIの「突出部材」は、上方に凸の円弧状上面部を有する前側半部21aと水平な上面部からなる奥側半部21bとからなり、当該前側半部21aは、さらに圧着端子挿入部jの入口方向からて、入口側の凸部の頂点より高さが低いところから凸部の頂点に向けて高さが高くなる部位(前記前側半部21a1)、これに連続して凸部の頂点から奥側半部との境界に向けて高さが低くなる部位(前記前側半部21a2)からなり、前側半部21a1、前側半部21a2、後側半部21bが一体不可分に続くものである。
よって、かかるイ号物件の下段端子台IIの「突出部材」の形状に照らせば、イ号物件の下段端子台IIの「突出部材」は、本件特許発明の「ガイドリブ部」、すなわち、「上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状に形成されている」ものとは形状が相違する。
また、イ号説明書には、前述のように第3 1(7)に「圧着端子が下段端子台IIの圧着端子挿入部jの入り口に、例えば少し前下がり(上向き)の傾斜状態で挿入されると、圧着端子2は当初、突出部21の入り口の円弧面に線接触して支持され、その後、接触位置を奥側に移動させながら後側下がり(下向き)になり、適宜の下向きの傾斜角度でねじ17の下側に向けて挿入されていく」とあるように、圧着端子2は、先端が突出部21の円弧状上面21fに線接触して支持され、その後、圧着端子2が円弧状上面21fに線接触しながら滑ることで先端が水平上面21gに届くと線接触し、圧着端子2は円弧状上面21fと水平上面部21gの二点で支持されるものであり、ガイド部としては機能しているといえる。そうすると、イ号物件の下段端子台IIの「突出部材」は上記のとおり、圧着端子2を支持するものであって沿わせるものではないのに対して、本件特許発明は、ガイドリブ部のテーパ状の上面部はアンプ端子をその上面部に沿わせて所定の場所にセットするものであるから(前記「1-3 構成要件(C)の充足性について」参照)、イ号物件の下段端子台IIの「突出部材」は、本件特許発明のガイドリブ部とその機能においても相違するものである。
したがって、イ号物件の下段端子台IIは、本件特許発明の構成要件(C)を充足しない。

被請求人は、答弁書の8ページ1ないし12行で「請求項7は、『ガイドリブ部は、その上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状に形成されている』と記載しており、ガイドリブ部が他の形状を追加することを拒む記載を一切しておりません。他の形状の追加を拒むのであれば、『テーパ状のみで形成されている』などの限定する言い方が必要であると考えます。したがって、『その上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状』に他の構成が付加された構成は、本特許権の利用関係にあります。周知のように、特許請求の範囲に記載する構成要件をすべて充足すれば特許発明の技術的範囲に入るため、イ号物件は奥側半部21bの有無にかかわらず、前側半部21aを備えた時点で特許発明の技術的範囲に入っております。前側半部21aに奥側半部21bを追加した突出部は、請求項7の発明を利用することになっております。」旨主張している。
イ号物件の下段端子台IIにおける突出部材は、凸部の頂点から奥側半部21bとの境界に向けて高さが低くなる部位(前述の「前側半部21a2」)以外にも、入口側の凸部の頂点より高さが低いところから凸部の頂点に向けて高さが高くなる部位(前述の「前側半部21a1」)及び奥側半部21bを一体不可分に有するものであるから、イ号物件の下段端子台IIにおける「突出部材」と本件特許発明の「その上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状に形成されている」「ガイドリブ部」とは、そもそも形状が異なり、また、圧着端子を沿わせるものではなく、機能も異なることは上記のとおりであるから、前者が後者の利用関係にあるとの被請求人の主張は採用できない。

また、被請求人は、答弁書の6ページ19行ないし7ページ第6行で「さらに、請求人は同日に無効審判を請求しており(無効2015-800128)、甲第1号証(特開2001-52776号公報)、甲第2号証(実開平6-77165号公報)、甲第3号証(実公昭55-55500号公報)が挙げられております。被請求人は本特許権の請求項7に係る発明に無効理由は無いと考えており、無効審判において詳述いたしますが、請求人が挙げた甲第2号証に注目します。請求人が甲第2号証で示したのは図7であり、符号22で示される円弧面です(無効審判請求書の参考図1の一部拡大図)。上記符号22で示される円弧面は傾斜している面であり、イ号物件の突出部の前側半部21aと同じであります。すなわち、請求人はイ号物件の突出部の前側半部21aの形状が請求項7に記載する「テーパ状」に含まれることを認めております。したがって、イ号物件の端子台IIの突出部の前側半部21aは「ガイドリブ部は、その上面部が手前側で高く奥側で低いテーパ状」の文言についてすべて満たします。」旨主張している。
この主張は、イ号物件の下段端子台IIにおける突出部材における前側半部21aの前記前側半部21a2に関するものであるが、上記のとおりイ号物件の下段端子台IIにおいて、前記前側半部21a1、前記前側半部21a2、及び奥側半部21bとは一体不可分のものであって、イ号物件の下段端子台IIにおける「突出部材」と本件特許発明の「ガイドリブ部」とは、両者の形状及び機能も異なることは上記のとおりであるから、被請求人の主張は採用することはできない。

2-4 まとめ
以上のとおり、イ号物件の下段端子台IIは、本件特許発明の構成要件(A)及び(C)を充足していないから、本件特許発明の技術的範囲に属するものとはいえない。

3 まとめ
以上のとおり、イ号物件の上段端子台I及びイ号物件の下段端子台IIは、いずれも本件特許発明の技術的範囲に属するものとはいえない。

第5 むすび
したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2015-10-29 
出願番号 特願2005-143312(P2005-143312)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 哲男中川 真一  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 森川 元嗣
中川 隆司
登録日 2008-07-04 
登録番号 特許第4150028号(P4150028)
発明の名称 端子台  
代理人 三雲 悟志  
代理人 羽立 幸司  
代理人 園田 敏雄  
代理人 三雲 悟志  
代理人 楠本 高義  
代理人 峰 雅紀  
代理人 楠本 高義  
代理人 羽立 章二  
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