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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G10C
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G10C
審判 全部無効 2項進歩性  G10C
管理番号 1307601
審判番号 無効2014-800180  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-11-06 
確定日 2015-10-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4489140号発明「アップライトピアノのアクションの作動方法及びアップライトピアノのアクション」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

1.本件特許

本件特許第4489140号に係る出願は、平成21年7月29日に出願され、平成22年4月9日にその発明について特許の設定登録がなされたものであって、手続の概要は以下のとおりである。

無効審判請求 :平成26年11月 6日
答弁書 :平成27年 2月 2日
訂正請求 :平成27年 2月 2日
手続補正 :平成27年 2月23日
弁駁書 :平成27年 4月 3日
審理事項通知 :平成27年 5月11日(起案日)
口頭審理陳述要領書(被請求人):平成27年 6月26日
口頭審理陳述要領書(請求人) :平成27年 6月26日
口頭審理 :平成27年 7月10日

2.請求人の主張の概要

(1)本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に、周知技術1(甲第3号証、甲第9号証、甲第10号証及び甲第11号証)、周知技術2(甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証)及び周知技術3(甲第3号証、甲第10号証及び甲第11号証)を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
本件特許の請求項3、4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に甲第3号証等に記載の周知技術を適用し、さらに甲第10号証に記載の事項を付加した程度の発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
訂正後の請求項1、2に係る発明は、訂正前の請求項1、2に係る発明に、周知技術である「バットスプリング」を付加したに過ぎない発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。訂正後の請求項3、4に係る発明も、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由1」という。)

また、訂正後の請求項1、2の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に適合するものではなく、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由2」という。)

(2)請求人が提出した証拠は次のとおりである。
甲第1号証:本件特許公報
甲第2号証:特許第2656323号公報
甲第3号証:特開昭49-39410号公報
甲第4号証:平成22年1月6日付提出の意見書
甲第5号証:特公昭54-22084号公報
甲第6号証:特開2007-108661号公報
甲第7号証:特開2007-155964号公報
甲第8号証:特開2008-90169号公報
甲第9号証:特開昭53-135318号公報
甲第10号証:実願平1-35758号(実開平2-126196号)のマイクロフィルム
甲第11号証:特開2006-91516号公報
甲第12号証:特開平7-160251号公報
(以上、審判請求書に添付)
甲第13号証:日本ピアノ調律師協会 入会審査学科例題集
甲第14号証:ウェブサイト(URL http://www.fujiipianoservice.jp/pat.html)のプリントアウト
(以上、審判事件弁駁書に添付)

3.被請求人の主張の概要

(1)本件特許の訂正後の請求項1ないし4に係る発明は、進歩性を有する。
また、訂正後の請求項1、2の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に適合する。

(2)被請求人が提出した証拠は、次のとおりである。
乙第1号証:インターネットホームページ
乙第2号証:インターネットホームページ
乙第3号証:Granfeelパンフレット
(以上、審判事件答弁書に添付)

第2 訂正請求について

1.請求の趣旨

特許第4489140号の明細書、特許請求の範囲を、本件請求書に添付した、訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正することを求める。

2.訂正事項

平成27年2月2日付けの訂正請求における平成27年2月23日付け手続補正により補正された訂正の要旨は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許請求の範囲について訂正特許請求の範囲の請求項1乃至4のとおり訂正するものであって、訂正後の請求項1乃至4は、次のとおりである。なお、下線部が訂正箇所である。

「 【請求項1】
レギュレーティングレールと、ジャックストップレールと、センターレールと、ダンパーストップレールと、を有するとともに、ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを、また、バット及びバットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリングを有しており、演奏者が鍵を押鍵すると、当該ウィッペンが上昇しつつ回動し、当該ウィッペンの上に回動可能に軸止された当該ジャックの突き上げ部の突端が、前記バットの被突き上げ部を突き上げ、ハンマーが回動し、当該ハンマーのハンマーヘッドが弦を打弦するとともに、当該ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、当該突き上げ部の突端が当該被突き上げ部の下から離脱するアップライトピアノのアクションの作動方法であって、
前記レギュレーティングレールと、前記ジャックストップレールと、のうちのいずれかを第1のレールとし、当該第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちのいずれか一方に、板バネ又は捻りコイルバネからなる第1のスプリングを設け、
前記第1のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第1の受け部を、前記第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちの前記第1のスプリングを設けていないものに設け、
前記センターレールと、前記ダンパーストップレールと、のうちのいずれかを第2のレールとし、当該第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに、板バネ又は捻りコイルバネからなる第2のスプリングを設け、
前記第2のスプリングが、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記第2のレールに設け、
前記第2のスプリングが、前記第2のレールに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設け、
演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れる際に、前記第1のレールと前記突き上げ部との間に挟まって撓んだ前記第1のスプリングが、前記突き上げ部の突端を前記バットの前記被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付け、さらに、前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込み、
前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に、前記ハンマーが、前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動すると、前記第2のスプリングが、前記ハンマーのハンマーウッドとハンマーシャンクと前記バットとのうちのいずれかひとつと、前記第2のレールと、の間に挟まって撓み、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に、撓んだ前記第2のスプリングから前記ハンマーに働く力が、この前記ハンマーの回動を停止させることを特徴とするアップライトピアノのアクションの作動方法。
【請求項2】
レギュレーティングレールと、ジャックストップレールと、センターレールと、ダンパーストップレールと、を有するとともに、ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを、また、バット及びバットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリングを有しており、演奏者が鍵を押鍵すると、当該ウィッペンが上昇しつつ回動し、当該ウィッペンの上に回動可能に軸止された当該ジャックの突き上げ部の突端が、前記バットの被突き上げ部を突き上げ、ハンマーが回動し、当該ハンマーのハンマーヘッドが弦を打弦するとともに、当該ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、当該突き上げ部の突端が当該被突き上げ部の下から離脱するアップライトピアノのアクションであって、
前記レギュレーティングレールと、前記ジャックストップレールと、のうちのいずれかが、第1のレールをなし、当該第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちのいずれか一方に、板バネ又は捻りコイルバネからなる第1のスプリングが設けられており、
前記第1のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第1の受け部が、前記第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちの前記第1のスプリングを設けていないものに設けられており、
前記センターレールと、前記ダンパーストップレールと、のうちのいずれかが、第2のレールをなし、当該第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに、板バネ又は捻りコイルバネからなる第2のスプリングが設けられており、
前記第2のスプリングが、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部が、前記第2のレールに設けられており、
前記第2のスプリングが、前記第2のレールに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部が、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられており、
演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れる際に、前記第1のレールと前記突き上げ部との間に挟まって撓んだ前記第1のスプリングが前記突き上げ部に与える力が、前記突き上げ部の突端を前記バットの前記被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付けることができる大きさと方向の力であるとともに、前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込むことができる大きさと方向の力であり、
前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動する前記ハンマーと前記第2のレールとの間に挟まって撓んだ前記第2のスプリングが回動する前記ハンマーに与える力が、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に前記ハンマーの回動を停止させることができる大きさと方向の力であることを特徴とするアップライトピアノのアクション。
【請求項3】
前記第1のレールと前記突き上げ部とのうちの前記第1の受け部が設けられているものに螺合して貫通する螺子の螺子部先端が、前記第1の受け部を支持していることを特徴とする請求項2に記載のアップライトピアノのアクション。
【請求項4】
前記第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットとのうちの前記第2の受け部が設けられているものに螺合して貫通する螺子の螺子部先端が、前記第2の受け部を支持していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のアップライトピアノのアクション。」

3.訂正事項についての判断

上記訂正事項は、請求項1、2に係る発明が前提とするアップライトピアノのアクションが有する部材として「バットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリング」を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

願書に添付した明細書の段落0049に、「本実施の形態に係るアップライピアノは、アクション7が、第1のスプリング59、第2のスプリング66、第1の受け部71、第2の受け部72を有する点を除いて、従来あるものと同様の構成を有する。」との記載があり、そして、従来から存在するアップライトピアノのアクションは、バットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリングを有するのが通例である。
また、願書に添付した図面の図1、図2、図3、図5及び図6においてバット25の左の符号が付されていない部材は、甲第3号証の第2図に示されたバットスプリング21、甲第5号証の第1図に示されたバットスプリング26、甲第6号証の図2に示されたバットスプリング3、甲第8号証の図2に示されたバットスプリング3、甲第9号証の第1図に示されたバットスプリング17及び甲第12号証の図9に示されたバットスプリング35と同様の形状を有しており、該符号が付されてない部材は「バットスプリング」であると認められる。
したがって、請求項1、2に係る発明が前提とするアップライトピアノのアクションが有する部材として「バットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリング」を付加する上記訂正事項は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

上記訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項に記載された事項の解釈に影響を与える明細書又は図面の訂正を含まないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

4.むすび

以上のとおりであるから、平成27年2月2日付けの訂正は、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、該訂正を認める。

第3 無効理由1について

1.本件特許発明

本件特許の請求項1乃至4に係る発明(以下、「本件特許発明1」乃至「本件特許発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるものであるところ、上記「第2 訂正請求について」の「2.訂正事項」に記載したとおりのものである。

なお、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された「バットスプリング」及び「第2のスプリング」は、次のように解すべきものと認める。

(1)バットスプリング
訂正明細書の段落0049に、「本実施の形態に係るアップライピアノは、アクション7が、第1のスプリング59、第2のスプリング66、第1の受け部71、第2の受け部72を有する点を除いて、従来あるものと同様の構成を有する。」との記載があるとともに、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された「バットを元の位置に戻す力をバットに加える」との「バットスプリング」に関する限定は、従来から存在するアップライトピアノのアクションが有するのが通例であるバットスプリングの機能である。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された「バットスプリング」は、従来から存在するアップライトピアノのアクションが有するのが通例であるバットスプリングを意味する。

(2)第2のスプリング
訂正明細書の段落0049に、「本実施の形態に係るアップライピアノは、アクション7が、第1のスプリング59、第2のスプリング66、第1の受け部71、第2の受け部72を有する点を除いて、従来あるものと同様の構成を有する。」との記載があるから、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された「第1のスプリング」及び「第2のスプリング」は、従来から存在するアップライトピアノのアクションが有するのが通例である部材ではない。
訂正特許請求の範囲の請求項1の「前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に、前記ハンマーが、前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動すると、前記第2のスプリングが、前記ハンマーのハンマーウッドとハンマーシャンクと前記バットとのうちのいずれかひとつと、前記第2のレールと、の間に挟まって撓み、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に、撓んだ前記第2のスプリングから前記ハンマーに働く力が、この前記ハンマーの回動を停止させる」との記載及び請求項2の「前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動する前記ハンマーと前記第2のレールとの間に挟まって撓んだ前記第2のスプリングが回動する前記ハンマーに与える力が、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に前記ハンマーの回動を停止させることができる大きさと方向の力である」との記載は、従来から存在するアップライトピアノのアクションに「第1のスプリング」を付加することによって生じた新たな課題を解決するために、さらに「第2のスプリング」を付加することを意味する。このような「第2のスプリング」の機能を、従来から存在するアップライトピアノのアクションが有するのが通例であるバットスプリングは有さない。
したがって、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された「第2のスプリング」は、従来から存在するアップライトピアノのアクションが有するのが通例であるバットスプリング、すなわち同項に記載された「バットスプリング」を含まない。

2.甲第2、3、5乃至12号証

甲第2号証(特許第2656323号公報)には、「アップライトピアノのアクション」について、図面と共に、以下の記載がある。(下線は当審で付加した。)

(1)「本発明はピアノのアクション、特にアップライトピアノのアクションの分野に関する。より詳細には、本発明は、グランドピアノのタッチと同様なタッチをアップライトピアノで得ることを意図した、アップライトピアノのアクションの分野に関する。」(8欄4?8行)

(2)「従って本発明の主目的は、グランドピアノの弾奏特性に匹敵する弾奏特性をもつアップライトピアノのアクションを提供することにある。
特に、弾奏特性に関する本発明の目的は、キー(鍵)が完全に押し下げられた位置から僅かに持ち上げられているときに、確実にキーをリプレーできるように(このことは、グランドピアノのアクションでは可能である)、繰り返し能力を改善することである。」(9欄5?12行)

(3)「本発明のアクションと伝統的なアクションとの間には3つの本質的な相違がある。第1の相違は、ジャックスプリングを省略したことである。伝統的なアクションにおいては、短い円錐形圧縮スプリングからなるジャックスプリングが、ジャックの短いアームすなわちトーとウィッペンとの間に配置されている。本発明のアクションにおいては、ジャックスプリングの機能は、ジャックの頂部に近い個所とバックストップシャンク/バックストップ組立体との間に配置されたジャック/反復スプリングによって与えられる。バックストップシャンク/バックストップ組立体は、このジャック/反復スプリング及び該スプリングを調整するねじを収容するため、詳細に修正されている。本発明においては、ジャック/反復スプリングの付加的な機能によって、ジャックの再係合中にハンマー組立体が支持され、これにより、アクションがその休止位置に戻る運動中にハンマーがバックチェック位置を越えて戻る前に、リプレーできるようになっている。
第2の相違は、伝統的なアクションのハンマースプリングが、手で変形させることによってのみ調整可能であったのに対し、本発明のアクションでは、スプリングにより加えられる力の範囲を調整できるねじを設けたことである。また、後述の理由から、スプリングを強いスプリングで構成し、伝統的のアクションのスプリングよりも大きな力が作用するようにしてある。ハンマーバットとの接触点においてスプリングにより付与される力であって、ハンマーセンターの回りで作用する力によって、グランドピアノのアクションのように、ハンマーシャンクが実質的に水平になるようにハンマーが位置したときにハンマーに作用する重力によって発生されるトルクの範囲内のトルクが発生されるようになっている。
第3の相違は、伝統的なアクションでは、極めて希な場合を除き、キーに付加されるウエイトはすべて、プレーヤーが触れない測の端部すなわち非プレー側端部に配置されていたのに対し、本発明のアクションにおいては、グランドピアノのアクションのように、ウエイトをキーのプレー側端部(プレーヤー側端部)に配置したことである。」(9欄40行?10欄27行)

(4)「第2図は、本発明による修正を組み込んだアップライトピアノのアクションが休止位置にあるところを示す概略図であり、キー38の端部37を矢印D′の方向に押し下げることによって音が出るようになっている。キー38は支点39(該支点39はピアノの基礎構造体に取り付けられている)に載っており、キー38の端部37を押し下げると、支点40が矢印E′の方向に移動する。支点40によって、ウィッペン組立体41がそのセンター(枢支点)42の回りで回転され、該ウィッペン組立体41により支持されたジャック44の端部43によって、ハンマー組立体46のバット(ハンマーバット)45がハンマーセンターすなわち枢支点47(該枢支点47はピアノの基礎構造体に取り付けられている)の回りで回転され、これにより、ハンマーヘッド48が弦49を打つ運動をハンマー組立体46に伝達するようになっている。ハンマーが弦49を打つ前に、ジャック44のトー50が、ダンパーレールすなわち調整レール52(該調整レール52はピアノの基礎構造体に取り付けられている)に調節自在に取り付けられた調整ボタン51と係合する。この係合とウィッペン組立体41の連続運動とによって、ジャック44がジャックセンター53の回りで矢印R′の方向に回転され、これにより、ジャック44の端部43とハンマーバット45とが係合しなくなる。この係合解除運動によって、ジャック/反復スプリング54が圧縮される。該ジャック/反復スプリング54は、その一端が、ジャックの端部43の近くに配置されたパイロット55と係合しており、他端がパイロット56と係合している。パイロット56は、ハンマーバット45と一体のバックストップ組立体57により調節自在に支持されている。パイロット56は、バックストップ組立体57とは独立した構造でハンマーバット45により支持することもでき、従って開示内容に幅をもたせるため、パイロット56はハンマーバット45から構造的に支持されると記載するものとする。ジャック44とハンマーバット45との係合が解除された後、ハンマー組立体46の運動量によってハンマーの運動が維持され、弦を打つこと(ストライク)を完了する。ハンマーは、ハンマー戻しスプリング58の力によって助けられて、弦49からリバウンドする。ハンマーのリバウンドは、バックチェックワイヤ60を介してウィッペン41に支持されたバックチェックブロック59と係合しているバックストップ組立体57によってチェック(急止)される。」(15欄34行?16欄24行)

(5)「第6図は、アクションが休止状態にあるところを示すものである。この状態において、ジャック/反復スプリング54′の作用線(矢印Aで示す)は、ハンマーセンター47′とジャックセンター53′とを結ぶ線と、ハンマーセンター47′に近い位置で交差しており、ジャック/反復スプリング54′に、ハンマーセンター47′を中心とした比較的小さなレバーアームを与えている。第7図は、アクションがバックチェック状態にあるところを示すものであり、この状態においては、ジャック/反復スプリング54′の作用線(矢印A′で示す)が、ハンマーセンター47′とジャックセンター53′とを結ぶ線と、これらの両センター47′、53′のほぼ中間点で交差しており、ジャック/反復スプリング54′に、ハンマーセンター47′を中心とした比較的大きなレバーアームを与えていると共に、ジャックセンター53′を中心とした充分大きなレバーアームを維持している。作用線のアライメントの重要性については、後述する。上記2つの状態におけるアライメントの相違は、各部品の幾何学的形状の詳細及びジャック/反復スプリング54′の取り付け構造の詳細によって与えられる。幾何学的形状については、休止状態での作用線Aがハンマーセンター47′の上方を通るようにして、ジャック/反復スプリング54′の力がハンマー戻しスプリングの作用を補うように構成することができる。特に、休止状態において、ジャック/反復スプリング54′がハンマー組立体に作用するハンマーセンター47′を中心としたトルクをゼロに近づけて、休止状態のトルクをバックチェック状態のトルクに比べて非常に小さくすることができる。休止状態において、ジャック/反復スプリングによってハンマー組立体に作用するハンマーセンターを中心としたトルクは、バックチェック状態に作用するトルクの0?60%であるのが好ましい。本発明のピアノアクションの作動及び特徴について説明すると、キーのプレー側端部38′が、第7図の完全に押し下げられた位置から、該完全押し下げ位置と休止位置(第6図)との間のほぼ中間の位置まで移動するとき、ジャック44′及びウィッペン41′は、これらのジャック及びウィッペンに作用する重力及びジャック/反復スプリング54′の力の作用によって支点40′に追随し、バックチェック59′がバックストップ組立体57′との係合から解除される。ジャック/反復スプリング54′の力は、第7図に矢印A′で示す作用線により与えられるレバーアームと組み合わされて、ストライク方向(音を打ち出す方向)へのトルクをハンマー組立体に与える。調節自在のハンマー戻しスプリング58′及び調節自在のジャック/反復スプリング54′は、ジャック/反復スプリング54′により付与されるトルクと、ハンマー戻しスプリング58′により戻り方向に付与されるトルクとがほぼ等しくなるように設計されかつ調節される。この結果、ジャック/反復スプリング54′によりジャック44′の端部43′がハンマーバット45′と再係合するように移動される間、ハンマー組立体は事実上動かないように保持される。ジャック44′が移動するとき、ジャックセンター53′及びハンマーセンター47′を中心とした、ジャック/反復スプリング54′の有効レバーアームが変化し、ジャックに影響を与えるレバーアームは増大し、ハンマー組立体に影響を与えるレバーアームは減少する。この結果、もしもキーが休止位置に向かって移動し続けるならば、再係合が続きかつハンマー組立体がその休止位置に戻される。しかしながら、アクションが第8図に示す状態にありかつキーのプレー側端部がその休止位置へのほぼ中間にあるときには、ジャック44′とハンマーバット45′との間の係合は完全に有効であり直ちにリストライクを行うことが可能になる。この時点までの、アクションの上記作動は、第2図の実施例と同じである。しかしながら、第9A図、第9B図、第9C図及び第9D図に詳細に示すジャック/反復スプリングの取り付け構造によれば、該スプリングの機能を一層効率のよいものにすることができる。」(21欄17行?22欄34行)

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(a)分野
甲第2号証に記載された発明は、アップライトピアノのアクションの分野に関する。(摘示事項(1))

(b)目的
主目的は、グランドピアノの弾奏特性に匹敵する弾奏特性をもつアップライトピアノのアクションを提供することにあり、特に、キー(鍵)が完全に押し下げられた位置から僅かに持ち上げられているときに、確実にキーをリプレーできるように(このことは、グランドピアノのアクションでは可能である)、繰り返し能力を改善することである。(摘示事項(2))

(c)伝統的なアクションとの本質的な相違
第1の相違は、ジャックスプリングを省略したことである。本発明のアクションにおいては、ジャックスプリングの機能は、ジャックの頂部に近い個所とバックストップシャンク/バックストップ組立体との間に配置されたジャック/反復スプリングによって与えられる。バックストップシャンク/バックストップ組立体は、このジャック/反復スプリング及び該スプリングを調整するねじを収容するため、詳細に修正されている。本発明においては、ジャック/反復スプリングの付加的な機能によって、ジャックの再係合中にハンマー組立体が支持され、これにより、アクションがその休止位置に戻る運動中にハンマーがバックチェック位置を越えて戻る前に、リプレーできるようになっている。
第2の相違は、伝統的なアクションのハンマースプリングが、手で変形させることによってのみ調整可能であったのに対し、本発明のアクションでは、スプリングにより加えられる力の範囲を調整できるねじを設けたことである。また、スプリングを強いスプリングで構成し、伝統的のアクションのスプリングよりも大きな力が作用するようにしてある。
第3の相違は、伝統的なアクションでは、極めて希な場合を除き、キーに付加されるウエイトはすべて、プレーヤーが触れない側の端部すなわち非プレー側端部に配置されていたのに対し、本発明のアクションにおいては、グランドピアノのアクションのように、ウエイトをキーのプレー側端部(プレーヤー側端部)に配置したことである。(摘示事項(3))

(d)発明による修正を組み込んだアップライトピアノのアクション
キー38は支点39(該支点39はピアノの基礎構造体に取り付けられている)に載っており、キー38の端部37を押し下げると、支点40が矢印E′の方向に移動する。支点40によって、ウィッペン組立体41がそのセンター(枢支点)42の回りで回転され、該ウィッペン組立体41により支持されたジャック44の端部43によって、ハンマー組立体46のバット(ハンマーバット)45がハンマーセンターすなわち枢支点47(該枢支点47はピアノの基礎構造体に取り付けられている)の回りで回転され、これにより、ハンマーヘッド48が弦49を打つ運動をハンマー組立体46に伝達するようになっている。ハンマーが弦49を打つ前に、ジャック44のトー50が、ダンパーレールすなわち調整レール52(該調整レール52はピアノの基礎構造体に取り付けられている)に調節自在に取り付けられた調整ボタン51と係合する。この係合とウィッペン組立体41の連続運動とによって、ジャック44がジャックセンター53の回りで矢印R′の方向に回転され、これにより、ジャック44の端部43とハンマーバット45とが係合しなくなる。この係合解除運動によって、ジャック/反復スプリング54が圧縮される。該ジャック/反復スプリング54は、その一端が、ジャックの端部43の近くに配置されたパイロット55と係合しており、他端がパイロット56と係合している。パイロット56は、ハンマーバット45と一体のバックストップ組立体57により調節自在に支持されている。ジャック44とハンマーバット45との係合が解除された後、ハンマー組立体46の運動量によってハンマーの運動が維持され、弦を打つこと(ストライク)を完了する。ハンマーは、ハンマー戻しスプリング58の力によって助けられて、弦49からリバウンドする。ハンマーのリバウンドは、バックチェックワイヤ60を介してウィッペン41に支持されたバックチェックブロック59と係合しているバックストップ組立体57によってチェック(急止)される。(摘示事項(4))

(e)発明のピアノアクションの作動
キーのプレー側端部38′が、第7図の完全に押し下げられた位置から、該完全押し下げ位置と休止位置(第6図)との間のほぼ中間の位置まで移動するとき、ジャック44′及びウィッペン41′は、これらのジャック及びウィッペンに作用する重力及びジャック/反復スプリング54′の力の作用によって支点40′に追随し、バックチェック59′がバックストップ組立体57′との係合から解除される。ジャック/反復スプリング54′の力は、第7図に矢印A′で示す作用線により与えられるレバーアームと組み合わされて、ストライク方向(音を打ち出す方向)へのトルクをハンマー組立体に与える。調節自在のハンマー戻しスプリング58′及び調節自在のジャック/反復スプリング54′は、ジャック/反復スプリング54′により付与されるトルクと、ハンマー戻しスプリング58′により戻り方向に付与されるトルクとがほぼ等しくなるように設計されかつ調節される。この結果、ジャック/反復スプリング54′によりジャック44′の端部43′がハンマーバット45′と再係合するように移動される間、ハンマー組立体は事実上動かないように保持される。(摘示事項(5))

甲第2号証に記載されたアップライトピアノのアクションの作動を方法の発明として捉えることができることを踏まえて、以上を総合勘案すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲第2号証発明」という。)が記載されているものと認める。

「アップライトピアノのアクションの作動方法であって、
第1に、ジャックスプリングを省略し、ジャックスプリングの機能は、ジャックの頂部に近い個所とバックストップシャンク/バックストップ組立体との間に配置されたジャック/反復スプリングによって与えられ、バックストップシャンク/バックストップ組立体は、このジャック/反復スプリング及び該スプリングを調整するねじを収容するため、詳細に修正されており、ジャック/反復スプリングの付加的な機能によって、ジャックの再係合中にハンマー組立体が支持され、これにより、アクションがその休止位置に戻る運動中にハンマーがバックチェック位置を越えて戻る前に、リプレーできるようになっている点、
第2に、ハンマースプリングにより加えられる力の範囲を調整できるねじを設け、スプリングを強いスプリングで構成し、伝統的のアクションのスプリングよりも大きな力が作用するようにしてある点、
第3に、グランドピアノのアクションのように、ウエイトをキーのプレー側端部(プレーヤー側端部)に配置した点で伝統的なアクションと本質的に相違し、
キー38は支点39(該支点39はピアノの基礎構造体に取り付けられている)に載っており、キー38の端部37を押し下げると、支点40が矢印E′の方向に移動し、
支点40によって、ウィッペン組立体41がそのセンター(枢支点)42の回りで回転され、該ウィッペン組立体41により支持されたジャック44の端部43によって、ハンマー組立体46のバット(ハンマーバット)45がハンマーセンターすなわち枢支点47(該枢支点47はピアノの基礎構造体に取り付けられている)の回りで回転され、これにより、ハンマーヘッド48が弦49を打つ運動をハンマー組立体46に伝達するようになっており、
ハンマーが弦49を打つ前に、ジャック44のトー50が、ダンパーレールすなわち調整レール52(該調整レール52はピアノの基礎構造体に取り付けられている)に調節自在に取り付けられた調整ボタン51と係合し、
この係合とウィッペン組立体41の連続運動とによって、ジャック44がジャックセンター53の回りで矢印R′の方向に回転され、これにより、ジャック44の端部43とハンマーバット45とが係合しなくなり、
この係合解除運動によって、ジャック/反復スプリング54が圧縮され、
該ジャック/反復スプリング54は、その一端が、ジャックの端部43の近くに配置されたパイロット55と係合しており、他端がパイロット56と係合しており、
パイロット56は、ハンマーバット45と一体のバックストップ組立体57により調節自在に支持されており、
ジャック44とハンマーバット45との係合が解除された後、ハンマー組立体46の運動量によってハンマーの運動が維持され、弦を打つこと(ストライク)を完了し、
ハンマーは、ハンマー戻しスプリング58の力によって助けられて、弦49からリバウンドし、
ハンマーのリバウンドは、バックチェックワイヤ60を介してウィッペン41に支持されたバックチェックブロック59と係合しているバックストップ組立体57によってチェック(急止)され、
キーのプレー側端部38′が、第7図の完全に押し下げられた位置から、該完全押し下げ位置と休止位置(第6図)との間のほぼ中間の位置まで移動するとき、ジャック44′及びウィッペン41′は、これらのジャック及びウィッペンに作用する重力及びジャック/反復スプリング54′の力の作用によって支点40′に追随し、バックチェック59′がバックストップ組立体57′との係合から解除され、
ジャック/反復スプリング54′の力は、第7図に矢印A′で示す作用線により与えられるレバーアームと組み合わされて、ストライク方向(音を打ち出す方向)へのトルクをハンマー組立体に与え、
調節自在のハンマー戻しスプリング58′及び調節自在のジャック/反復スプリング54′は、ジャック/反復スプリング54′により付与されるトルクと、ハンマー戻しスプリング58′により戻り方向に付与されるトルクとがほぼ等しくなるように設計されかつ調節され、
この結果、ジャック/反復スプリング54′によりジャック44′の端部43′がハンマーバット45′と再係合するように移動される間、ハンマー組立体は事実上動かないように保持されるアップライトピアノのアクションの作動方法。」

甲第3号証(特開昭49-39410号公報)には、「ジャックのジャックストッパとの対向部分にスプリングを設け」ること(2頁右上欄7?8行)、「ジャック15とウイペン13との間にジャックスプリング16が介在装着される」こと(2頁右上欄17?18行)、「(ジャック15は)ジャックストップレール24と対向する部分にその一部を薄板状にして切り起すように舌又は突片状の弾性体25を一体成形により形成する」こと(2頁左下欄10?13行)、「ジャックストップレール24の弾性片25との対向面にはフェルト26が貼着される」こと(2頁左下欄16?18行)、「(ジャック15は)ジャックストップレール24方向に回動する。そしてこのレール24に突き当るのであるが、この時弾性片25または25’によって反発され、元の待機位置に戻るようになる」こと(2頁右下欄10?14行)、「ジャック15はバット20を突き上げた後、弾性片25の反発力によって待機位置に戻る」こと(2頁右下欄17?19行)、「鍵11から指をはなすと、指をはなす速度にかかわりなく、ジャック15は待機位置に迅速且つ確実にセットされるようになる」こと(3頁左上欄2?4行)、発明の一実施例によるピアノアクション(第2図)が記載されている。

甲第5号証(特公昭54-22084号公報)には、「センターレール11に取り付けられたバットフレンジ17」(2欄8?9行)、「バット19に先端をバットフレンジ17部に設けたコード25に係止したバットスプリング26を設け」ること(2欄17?19行)、「グランドピアノにおいて得られるような効果的なアフタータッチをも得ることができ、特に弱い打弦時のハンマー制御を充分円滑に行い得る演奏性能を充分向上させることができるようにするアップライトピアノのアクションを提供しようとするものである」こと(4欄1?6行)、「ダンパーレール32の背面部に、第3図に一部取り出し拡大して示すように各音高のアクションにそれぞれ対応するようにして細片状のばね板36の一端をねじ37により取り付ける」こと(2欄17?20行)、従来のアクションの構成(第1図)、発明の一実施例に係るアクションの構成(第2図)が記載されている。

甲第6号証(特開2007-108661号公報)には、「前記バットの背面に対向するように上下方向に延びるとともに、上端部および下端部が前記バットおよび前記バットフレンジに対してそれぞれ係止され、前記バットを前方に付勢するバットスプリング」(請求項1)、「バット2の背面の上端部は後方に若干突出し、その左右方向の中央に、溝2bが形成されており、この溝2bには、バットスプリング3が取り付けられている」こと(段落0029)が記載されている。

甲第7号証(特開2007-155964号公報)には、「前記バットの背面に対向するように上下方向に延び、下端部に複数の被係止部を有し、上端部および前記複数の被係止部の1つが、前記バットおよび前記バットフレンジに対してそれぞれ係止され、当該バットフレンジに対して、前記複数の被係止部の1つが係止されたときと、他の1つが係止されたときでは、互いに異なるたわみ状態でたわむことによって、前記バットを互いに異なる付勢力で前方に付勢するバットスプリング」(請求項1)、「バット4の背面4bの上端部は後方に若干突出し、その左右方向の中央に、溝4cが形成されており、この溝4cには、バットスプリング14が取り付けられている」こと(段落0019)、バットの構成(図2)が記載されている。

甲第8号証(特開2008-90169号公報)には、「前記バットの後方に設けられ、上下方向に延びるとともに、上端部および下端部が前記バットおよび前記バットフレンジコードにそれぞれ係止され、前記バットを前方に付勢するためのバットスプリング」(請求項1)、「バット2の背面の上端部は後方に若干突出し、その左右方向の中央に、溝2bが形成されており、この溝2bには、バットスプリング3が取り付けられている」こと(段落0025)、バットの構成(図2)が記載されている。

甲第9号証(特開昭53-135318号公報)には、「帯状体にその長手方向に沿って間隔的に複数の付勢部を設け、この付勢部をジャックスプリングとしたこと」(特許請求の範囲第1項)、「帯状体をレギュレチングレールとしたこと」(第4項)、「ジャックスプリング構成体60をレギュレチングレール61に取り付けた」構成(3頁右下欄7?9行)が記載されている。

甲第10号証(実願平1-35758号(実開平2-126196号)のマイクロフィルム)には、「ジャックストップレールにジャックを押しもどすためのスプリングを取り付けた立型ピアノアクション」(実用新案登録請求の範囲第1項、2頁16?17行、第1?5図)が記載されている。

甲第11号証(特開2006-91516号公報)には、ジャック7にスプリング7cを設け、レギュレーティングレール15にフェルト15aが設けられる構成(2頁18?19行、24行、8頁1?3行、図2)が記載されている。

甲第12号証(特開平7-160251号公報)には、「鍵盤復帰が約半分のときでも、グランドピアノと同様に次の打弦ができる」こと(段落0015)が記載されている。

3.対比

そこで、本件特許発明1と甲第2号証発明とを対比する。

(1)アップライトピアノのアクションの作動方法
本件特許発明1と甲第2号証発明とは、「アップライトピアノのアクションの作動方法」である点で一致する。

(2)レール
甲第2号証発明の「調整レール52」は、本件特許発明1の「レギュレーティングレール」に相当するから、本件特許発明1と甲第2号証発明とは、「レギュレーティングレール」を有する点で一致する。
もっとも、本件特許発明1は、「ジャックストップレールと、センターレールと、ダンパーストップレールと、を有する」のに対し、甲第2号証発明は、これらのレールについて特定がない点で相違する。

(3)ジャックスプリング
本件特許発明1は、「ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを」有するのに対し、甲第2号証発明は、「ジャックスプリングを省略し、ジャックスプリングの機能は、ジャックの頂部に近い個所とバックストップシャンク/バックストップ組立体との間に配置されたジャック/反復スプリングによって与えられ」る点で相違する。

(4)バット
甲第2号証発明の「バット(ハンマーバット)45」は、本件特許発明1の「バット」に相当するから、本件特許発明1と甲第2号証発明とは、「バット」を有する点で一致する。

(5)バットスプリング
本件特許発明1は、「バットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリングを有」するのに対し、甲第2号証発明は、ハンマー戻しスプリング58′の力は、戻り方向へのトルクをハンマー組立体に与える点で相違する。

(6)押鍵時のアクションの作動
甲第2号証発明の「キー38」、「ウィッペン組立体41」、「ジャック44の端部43」、「ハンマー組立体46」、「ジャック44のトー50」及び「調整ボタン51」は、それぞれ、本件特許発明1の「鍵」、「ウィッペン」、「ジャックの突き上げ部の突端」、「ハンマー」、「ジャックテール」及び「レギュレーティングボタン」に相当するから、本件特許発明1と甲第2号証発明とは、「演奏者が鍵を押鍵すると、当該ウィッペンが上昇しつつ回動し、当該ウィッペンの上に回動可能に軸止された当該ジャックの突き上げ部の突端が、前記バットの被突き上げ部を突き上げ、ハンマーが回動し、当該ハンマーのハンマーヘッドが弦を打弦するとともに、当該ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、当該突き上げ部の突端が当該被突き上げ部の下から離脱する」点で一致する。

(7)第1のスプリング及び第1の受け部
ジャックを付勢する点で本件特許発明1の「第1のスプリング」と甲第2号証発明の「ジャック/反復スプリング54」とを対応させると、本件特許発明1は、「前記レギュレーティングレールと、前記ジャックストップレールと、のうちのいずれかを第1のレールとし、当該第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちのいずれか一方に、板バネ又は捻りコイルバネからなる第1のスプリングを設け、前記第1のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第1の受け部を、前記第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちの前記第1のスプリングを設けていないものに設け」るのに対し、甲第2号証発明は、「ジャック/反復スプリング54は、その一端が、ジャックの端部43の近くに配置されたパイロット55と係合しており、他端がパイロット56と係合しており、パイロット56は、ハンマーバット45と一体のバックストップ組立体57により調節自在に支持されて」いる点で相違する。

(8)第2のスプリング及び第2の受け部
ハンマーを付勢する点で本件特許発明1の「第2のスプリング」と甲第2号証発明の「ハンマー戻しスプリング58」とを対応させると、本件特許発明1は、「前記センターレールと、前記ダンパーストップレールと、のうちのいずれかを第2のレールとし、当該第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに、板バネ又は捻りコイルバネからなる第2のスプリングを設け、前記第2のスプリングが、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記第2のレールに設け、前記第2のスプリングが、前記第2のレールに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設け」るのに対し、甲第2号証発明は、「スプリングを強いスプリングで構成し、伝統的のアクションのスプリングよりも大きな力が作用するようにしてある」点で相違する。

(9)離鍵時のアクションの作動
本件特許発明1と甲第2号証発明とは、「演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れる」点で一致する。
もっとも、本件特許発明1は、その際に、「前記第1のレールと前記突き上げ部との間に挟まって撓んだ前記第1のスプリングが、前記突き上げ部の突端を前記バットの前記被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付け、さらに、前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込み、前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に、前記ハンマーが、前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動すると、前記第2のスプリングが、前記ハンマーのハンマーウッドとハンマーシャンクと前記バットとのうちのいずれかひとつと、前記第2のレールと、の間に挟まって撓み、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に、撓んだ前記第2のスプリングから前記ハンマーに働く力が、この前記ハンマーの回動を停止させる」のに対し、甲第2号証発明は、「ジャック/反復スプリング54′の力は、第7図に矢印A′で示す作用線により与えられるレバーアームと組み合わされて、ストライク方向(音を打ち出す方向)へのトルクをハンマー組立体に与え、調節自在のハンマー戻しスプリング58′及び調節自在のジャック/反復スプリング54′は、ジャック/反復スプリング54′により付与されるトルクと、ハンマー戻しスプリング58′により戻り方向に付与されるトルクとがほぼ等しくなるように設計されかつ調節され、この結果、ジャック/反復スプリング54′によりジャック44′の端部43′がハンマーバット45′と再係合するように移動される間、ハンマー組立体は事実上動かないように保持される」点で相違する。

そうすると、本件特許発明1と甲第2号証発明とは、次の点で一致する。

<一致点>

「レギュレーティングレールを有するとともに、バットを有しており、演奏者が鍵を押鍵すると、当該ウィッペンが上昇しつつ回動し、当該ウィッペンの上に回動可能に軸止された当該ジャックの突き上げ部の突端が、前記バットの被突き上げ部を突き上げ、ハンマーが回動し、当該ハンマーのハンマーヘッドが弦を打弦するとともに、当該ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、当該突き上げ部の突端が当該被突き上げ部の下から離脱するアップライトピアノのアクションの作動方法であって、
演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れるアップライトピアノのアクションの作動方法。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

(1)本件特許発明1は、「ジャックストップレールと、センターレールと、ダンパーストップレールと、を有する」のに対し、甲第2号証発明は、これらのレールについて特定がない点。

(2)本件特許発明1は、「ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを」有するのに対し、甲第2号証発明は、「ジャックスプリングを省略し、ジャックスプリングの機能は、ジャックの頂部に近い個所とバックストップシャンク/バックストップ組立体との間に配置されたジャック/反復スプリングによって与えられ」る点。

(3)本件特許発明1は、「バットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリングを有」するのに対し、甲第2号証発明は、ハンマー戻しスプリング58′の力は、戻り方向へのトルクをハンマー組立体に与える点。

(4)本件特許発明1は、「前記レギュレーティングレールと、前記ジャックストップレールと、のうちのいずれかを第1のレールとし、当該第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちのいずれか一方に、板バネ又は捻りコイルバネからなる第1のスプリングを設け、前記第1のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第1の受け部を、前記第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちの前記第1のスプリングを設けていないものに設け」るのに対し、甲第2号証発明は、「ジャック/反復スプリング54は、その一端が、ジャックの端部43の近くに配置されたパイロット55と係合しており、他端がパイロット56と係合しており、パイロット56は、ハンマーバット45と一体のバックストップ組立体57により調節自在に支持されて」いる点。

(5)本件特許発明1は、「前記センターレールと、前記ダンパーストップレールと、のうちのいずれかを第2のレールとし、当該第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに、板バネ又は捻りコイルバネからなる第2のスプリングを設け、前記第2のスプリングが、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記第2のレールに設け、前記第2のスプリングが、前記第2のレールに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設け」るのに対し、甲第2号証発明は、「スプリングを強いスプリングで構成し、伝統的のアクションのスプリングよりも大きな力が作用するようにしてある」点。

(6)本件特許発明1は、演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れる際に、「前記第1のレールと前記突き上げ部との間に挟まって撓んだ前記第1のスプリングが、前記突き上げ部の突端を前記バットの前記被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付け、さらに、前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込み、前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に、前記ハンマーが、前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動すると、前記第2のスプリングが、前記ハンマーのハンマーウッドとハンマーシャンクと前記バットとのうちのいずれかひとつと、前記第2のレールと、の間に挟まって撓み、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に、撓んだ前記第2のスプリングから前記ハンマーに働く力が、この前記ハンマーの回動を停止させる」のに対し、甲第2号証発明は、「ジャック/反復スプリング54′の力は、第7図に矢印A′で示す作用線により与えられるレバーアームと組み合わされて、ストライク方向(音を打ち出す方向)へのトルクをハンマー組立体に与え、調節自在のハンマー戻しスプリング58′及び調節自在のジャック/反復スプリング54′は、ジャック/反復スプリング54′により付与されるトルクと、ハンマー戻しスプリング58′により戻り方向に付与されるトルクとがほぼ等しくなるように設計されかつ調節され、この結果、ジャック/反復スプリング54′によりジャック44′の端部43′がハンマーバット45′と再係合するように移動される間、ハンマー組立体は事実上動かないように保持される」点。

4.判断

そこで、上記相違点(2)、(4)及び(6)について検討する。

相違点(2)について
甲第2号証発明のアクションの「ジャックスプリングを省略し、ジャックスプリングの機能は、ジャックの頂部に近い個所とバックストップシャンク/バックストップ組立体との間に配置されたジャック/反復スプリングによって与えられ、バックストップシャンク/バックストップ組立体は、このジャック/反復スプリング及び該スプリングを調整するねじを収容するため、詳細に修正されており、ジャック/反復スプリングの付加的な機能によって、ジャックの再係合中にハンマー組立体が支持され、これにより、アクションがその休止位置に戻る運動中にハンマーがバックチェック位置を越えて戻る前に、リプレーできるようになっている点」は、伝統的なアクションとの本質的な相違である。
伝統的なアクションが「ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを」有するとしても、甲第2号証発明の「ジャック/反復スプリング」は、「ジャックスプリングの機能」と「ジャックの再係合中にハンマー組立体が支持され、これにより、アクションがその休止位置に戻る運動中にハンマーがバックチェック位置を越えて戻る前に、リプレーできるようになっている」「付加的な機能」とが一体化したものであり、伝統的なアクションの「ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを」有する構成に戻す理由はない。
したがって、甲第2号証発明において、「ジャックスプリングを省略し、ジャックスプリングの機能は、ジャックの頂部に近い個所とバックストップシャンク/バックストップ組立体との間に配置されたジャック/反復スプリングによって与えられ」る構成に代えて、「ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを」有する構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

相違点(4)について
甲第2号証発明のアクションの「ジャック/反復スプリングの付加的な機能によって、ジャックの再係合中にハンマー組立体が支持され、これにより、アクションがその休止位置に戻る運動中にハンマーがバックチェック位置を越えて戻る前に、リプレーできるようになっている点」は、伝統的なアクションとの本質的な相違である。
本件特許発明1の「第1のスプリング」の設置形態に類似のものが甲第3、9乃至11号証により公知であるとしても、同号証の「スプリング」は、甲第2号証発明の「ジャック/反復スプリング」のように「ジャックの再係合中にハンマー組立体が支持され、これにより、アクションがその休止位置に戻る運動中にハンマーがバックチェック位置を越えて戻る前に、リプレーできるようになっている」「付加的な機能」を有するものではない。
したがって、甲第2号証発明において、「ジャック/反復スプリング54は、その一端が、ジャックの端部43の近くに配置されたパイロット55と係合しており、他端がパイロット56と係合しており、パイロット56は、ハンマーバット45と一体のバックストップ組立体57により調節自在に支持されて」いる設置形態に代えて、本件特許発明1の「第1のスプリング」の設置形態を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

相違点(6)について
甲第2号証発明のアクションの「ジャック/反復スプリングの付加的な機能によって、ジャックの再係合中にハンマー組立体が支持され、これにより、アクションがその休止位置に戻る運動中にハンマーがバックチェック位置を越えて戻る前に、リプレーできるようになっている点」は、伝統的なアクションとの本質的な相違である。
アップライトピアノにおける、いわゆる「2度打ち」が当業者の技術常識であるとしても、甲第2号証発明においては、「ジャック/反復スプリング54′の力は、第7図に矢印A′で示す作用線により与えられるレバーアームと組み合わされて、ストライク方向(音を打ち出す方向)へのトルクをハンマー組立体に与え、調節自在のハンマー戻しスプリング58′及び調節自在のジャック/反復スプリング54′は、ジャック/反復スプリング54′により付与されるトルクと、ハンマー戻しスプリング58′により戻り方向に付与されるトルクとがほぼ等しくなるように設計されかつ調節され、この結果、ジャック/反復スプリング54′によりジャック44′の端部43′がハンマーバット45′と再係合するように移動される間、ハンマー組立体は事実上動かないように保持される」のであるから、「再係合」に起因する、いわゆる「2度打ち」は起こらない。
したがって、甲第2号証発明において、「ジャック/反復スプリング54′の力は、第7図に矢印A′で示す作用線により与えられるレバーアームと組み合わされて、ストライク方向(音を打ち出す方向)へのトルクをハンマー組立体に与え、調節自在のハンマー戻しスプリング58′及び調節自在のジャック/反復スプリング54′は、ジャック/反復スプリング54′により付与されるトルクと、ハンマー戻しスプリング58′により戻り方向に付与されるトルクとがほぼ等しくなるように設計されかつ調節され、この結果、ジャック/反復スプリング54′によりジャック44′の端部43′がハンマーバット45′と再係合するように移動される間、ハンマー組立体は事実上動かないように保持される」構成に代えて、本件特許発明1のように、「前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に、前記ハンマーが、前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動する」ようにし、さらに、該「回動」に対処するために、「回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に、撓んだ前記第2のスプリングから前記ハンマーに働く力が、この前記ハンマーの回動を停止させる」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

甲第5号証は、本件特許発明1の「第2のスプリング」の設置形態に類似のものが公知であることを示すものであり、甲第6乃至8号証は、「バットスプリング」が周知であることを示すものであり、甲第12号証は、「鍵盤復帰が約半分のときでも、グランドピアノと同様に次の打弦ができる」竪型ピアノが公知であることを示すものであり、いずれも、相違点(2)、(4)及び(6)についての判断を左右するものではない。

したがって、上記相違点(1)、(3)及び(5)について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第2号証発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

本件特許発明2は、本件特許発明1を物の発明として表現したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第2号証発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

本件特許発明3及び4は、本件特許発明2に新たな構成を付加したものであるから、新たな相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3及び4は、甲第2号証発明、周知技術及び公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

5.むすび

以上のとおりであるから、本件特許の訂正後の請求項1乃至4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、周知技術及び公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第4 無効理由2について

1.特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること

(1)請求人の主張
「バット」に「バットスプリング」及び「第2のスプリング」を設ける実施形態は、特許明細書及び図面に開示されていない。
したがって、訂正後の請求項1、2の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

(2)判断
第2 3.で述べたように、特許図面の図1、図2、図3、図5及び図6においてバット25の左の符号が付されていない部材は、「バットスプリング」であると認められる。
また、特許明細書及び図面には、図1乃至図5に係る実施の形態及び図6に係る変形例のほかに、段落0068に、「本実施の形態において、第2のスプリング66の足部67を、ハンマーウッド35、ハンマーシャンク33あるいはバット25に植設し、第2の受け部72を、前記ブラケットの間に新たに固定して設けたレール、ダンパーストップレール56の前側面、あるいは、センターレール4の一部に設けても良い。」との記載がある。
したがって、「バット」に「バットスプリング」及び「第2のスプリング」を設ける実施形態は、特許明細書及び図面に開示されているといえるから、本件特許の訂正後の請求項1、2に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

2.特許を受けようとする発明が明確であること

(1)請求人の主張
「第2のスプリング」が「バットスプリング」と異なる点については、訂正後の請求項1、2の記載からは不明であるとともに、本件特許発明1及び2に包含される発明の範囲を不明確化させるものである。
したがって、訂正後の請求項1、2の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。

(2)判断
第3 1.(1)で述べたように、訂正後の請求項1、2に記載された「バットスプリング」は、従来から存在するアップライトピアノのアクションが有するのが通例であるバットスプリングを意味する。
また、同(2)で述べたように、訂正後の請求項1、2に記載された「第2のスプリング」は、従来から存在するアップライトピアノのアクションが有するのが通例であるバットスプリング、すなわち同項に記載された「バットスプリング」を含まない。
したがって、請求人の主張に根拠はなく、本件特許の訂正後の請求項1、2に係る発明が明確でないとはいえない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第162条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アップライトピアノのアクションの作動方法及びアップライトピアノのアクション
【技術分野】
【0001】
本発明は、アップライトピアノのアクション作動方法及びアップライトピアノのアクションに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なグランドピアノのアクションについて述べる(非特許文献1を参照)。なお、以下の説明において、演奏者から見て手前側を「前」、奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」ということとする。
演奏者が休止状態の鍵を押鍵すると、鍵の後端部がウィッペンを突き上げる。そして、レペティションレバーとジャックがハンマーローラーを押し上げ、ハンマーが上方の弦に向かって回動する。これとほとんど同時に、ダンパーヘッドが上昇し弦から離れる。
【0003】
演奏者がさらに深く鍵を押鍵すると、ハンマーが弦に到達する直前に、ジャックテールがレギュレーティングボタンに接触し、ジャックが回動し、ジャックの突端がハンマーローラーの下から離脱する。
そして、ハンマーヘッドが弦に衝突し、弦が振動する。弦に衝突したハンマーは反転して下降する。このとき、ジャックの突端はハンマーローラーの下に位置しておらず、ハンマーローラーがレペティションレバーを押し下げる。ハンマーはレペティションスプリングの力を受けつつ下降し、バックチェックがハンマーヘッドを捕らえる。
【0004】
次いで、演奏者が鍵を離鍵すると、ウィッペンが下降し、ハンマーヘッドがバックチェックから外れ、レペティションレバーがレペティションスプリングの力で上方に回動し、ハンマーローラーが押し上げられる。ウィッペンは下降しているので、ハンマーは僅かに上昇するだけである。このとき、ジャックがジャックスプリングの力で回動し、ジャックの突端がハンマーローラーの下に戻る。これにより、演奏者は、次の押鍵により同じ弦を再び鳴らすことができる。そして、レペティションレバーがドロップスクリューに当たってハンマーの上昇が止まる。その後、ハンマーは、ウィッペンとともに下降する。
【0005】
グランドピアノの構造上、ジャックの突端がハンマーローラーの下に戻るとき、鍵は完全に押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって約3分の1だけ戻っている。したがって、グランドピアノにおいては、鍵が完全に押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって約3分の1だけ戻れば、同じ鍵を再び押鍵して弦を鳴らすことができる。本発明者が知るある実験例によれば、一定時間内に同じ鍵を連続して押鍵して同じ弦を鳴らすことができる回数は、14回/秒であった。
グランドピアノに特有の鍵のタッチ感は、レペティションスプリングから鍵に伝わる第1の力と、ジャックの突端がハンマーローラーの下に戻るときに鍵に伝わる第2の力と、レペティションレバーがドロップスクリューに当たるときに鍵に伝わる第3の力と、により生まれる。
【0006】
典型的なアップライトピアノのアクションについて述べる(非特許文献1を参照)。
演奏者が休止状態の鍵を押鍵すると、鍵の後端部がウィッペンを突き上げ、ウィッペンが回動する。そして、ジャックの突き上げ部の突端がバットの被突き上げ部を突き上げ、バットを含むハンマー全体がバットフレンジを中心にして弦に向かって回動する。また、ウィッペンの回動により、ダンパーヘッドが弦から離れる。
演奏者がさらに深く鍵を押鍵すると、ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、ジャックが回動し、ジャックの突き上げ部の突端がバットの被突き上げ部の下から離脱し(すなわち、レットオフし)、ハンマーが鍵の動きから切り離される。ハンマーは慣性力により弦に向かって回動し、ハンマーヘッドが弦に衝突し、弦が振動する。弦に衝突したハンマーは反転して弦から離れる。そして、バックチェックがキャッチャーを捕らえ、ハンマーは静止する。
【0007】
次いで、演奏者が鍵を離鍵すると、ウィッペンが下降し、キャッチャーがバックチェックから離れるとともに、ジャックテールがレギュレーティングボタンから離れる。ウィッペンが完全に下降すると、バットの被突き上げ部の下にジャックの突き上げ部の突端が入ることができるスペースができる。そして、ジャックがジャックスプリングにより回動し、ジャックの突き上げ部の突端がバットの被突き上げ部の下に入り、両者が係合する。
【0008】
次に、ジャックとバットが係合するために必要なスペースについて述べる。
アクションの構造上、演奏者が鍵を最も押し下げると、鍵の前端は約10mm下降し、鍵の後端部がウィッペンのヒールを約5mm突き上げ、ジャックフレンジが約5mm上昇する。そして、レットオフしたジャックの突き上げ部の突端も、鍵が休止状態のときから約5mm上昇する。一方、バットは、ジャックに突き上げられてバットフレンジを中心に回動する。バットフレンジからバットの被突き上げ部までの距離は短い。このため、バックチェックがキャッチャーを捕らえた状態において、バットの被突き上げ部は、鍵が休止状態であったときの状態から約1mm上昇しているにすぎない。ここに示した数値は一例であるが、アップライトピアノでは、ジャックの突き上げ部の突端の上昇量が、バットの被突き上げ部の上昇量よりもはるかに大きい。したがって、ハンマーのバットの被突き上げ部の下に、ジャックの突き上げ部の突端が入るに足りるスペースができるのは、ウィッペンが完全に下降し、鍵が休止状態に戻ったときである。
【0009】
もし、鍵が休止状態に戻る前に、ジャックの突き上げ部の突端がバットの被突き上げ部の下に入ろうとすると、ジャックの突き上げ部の突端は、バットの被突き上げ部よりも前方側かつ上側の面に当たるだけであり、ジャックとバットは係合できない。
ジャックとバットが係合することにより、演奏者は次の押鍵により再び同じ弦を鳴らすことができる。前記実験例によれば、一定時間内に同じ鍵を連続して押鍵して同じ弦を鳴らすことができる回数は、7回/秒であった。したがって、グランドピアノに対してアップライトピアノは同じ鍵の連打性が劣る。
【0010】
また、アップライトピアノのアクションには、レペティションレバー、レペティションスプリング、ハンマーローラー及びドロップスクリューが存在しない。このため、アップライトピアノの鍵のタッチ感は、グランドピアノの鍵のタッチ感と大きく異なる。
アップライトピアノがグランドピアノに対して同じ鍵の連打性で劣る点を克服するべく、アップライトピアノのアクションの改良を目的とした技術が提唱されている。
【0011】
アップライトピアノのアクションの改良技術として、例えば、以下に説明するものがある(特許文献1を参照)。なお、この技術を先行技術1という。
先行技術1に係るアクションでは、スプリング部がジャックの突き上げ部に設けられている。ジャックがレットオフすると、スプリング部がレギュレーティングレールに当接してジャックをバット側に付勢する。
演奏者が鍵を離鍵すると、ウィッペン及びジャックが下降し、ジャックがジャックスプリング及びスプリング部により回動する。そして、ジャックとバットが係合する。
【0012】
また、アップライトピアノのアクションの別の改良技術として、以下に説明するものがある(特許文献2を参照)。なお、この技術を先行技術2という。
先行技術2に係るアクションでは、ジャックの突き上げ部の突端側部分と、キャッチャーとの間に、圧縮コイルがジャック/反復スプリングとして取り付けられている。ジャックがレットオフすると、ジャック/反復スプリングがジャックをバット側に付勢する。また、ハンマー戻しスプリングがバットに係合しており、打弦後のハンマーが反転し弦から離れる動作を補助する。
演奏者が鍵を離鍵すると、ウィッペン及びジャックが下降し、ジャックテールがレギュレーティングボタンから離れ、ジャック/反復スプリングによりジャックが回動する。そして、ジャックとバットが係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006-91516号公報
【特許文献2】特許第2656323号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】西口磯春、森太郎、「もっと知りたいピアノのしくみ」、第1版、株式会社音楽之友社、2005年4月30日、p.65?77
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先行技術1に係るアップライトピアノのアクションには、以下の問題点が存在する。
先行技術1のアクションでは、スプリング部の役割はジャックスプリングの補強である。離鍵後、ジャックとバットが係合するタイミングは、バットの被突き上げ部の下に、ジャックの突き上げ部の突端が入ることができるスペースができたときである。したがって、典型的なアップライトピアノと同様、演奏者は、同じ鍵を押鍵して同じ弦を鳴らすため、鍵が休止状態に戻るのを待たねばならない。
【0016】
スプリング部の弾性係数やスプリング部からジャックに働くトルクを大きくして、バットの被突き上げ部の下にジャックの突き上げ部を強引に押し込もうとすることは、次のような不具合を生じ実用に耐えず、演奏上の点から言って論外である。すなわち、ジャックの突き上げ部がバットの被突き上げ部の下に入る際、力がジャックからバットに伝わる。この力は、押鍵時にジャックがバットを突き上げる力よりも小さいが、バットを上方に跳ね上げて、ハンマーを回動させるには充分な大きさである。したがって、ハンマーが回動し、振動中の弦にハンマーヘッドが触れ、弦の振動が止まってしまう。
また、先行技術1のアクションには、レペティションレバー、レペティションスプリング、ハンマーローラー及びドロップスクリューが存在しないので、先行技術1のアクションを備えるアップライトピアノの鍵のタッチ感は、グランドピアノの鍵のタッチ感と大きく異なる。
【0017】
先行技術2に係るアップライトピアノのアクションには、以下の問題点が存在する。
先行技術2のアクションでは、ジャック/反復スプリングの役割はジャックスプリングの代用をなす。離鍵後、ジャックとバットが係合するタイミングは、バットの被突き上げ部の下に、ジャックの突き上げ部の突端が入ることができるスペースができたときである。したがって、典型的なアップライトピアノと同様、演奏者は、同じ鍵を押鍵して同じ弦を鳴らすため、鍵が休止状態に戻るのを待たねばならない。
【0018】
特許文献2に記載されているように、離鍵後、鍵が完全に押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって2分の1戻った際、ジャックとバットが係合するのであれば、先行技術1と同様の不具合が生じ、演奏上の点から言って実用に耐えない。すなわち、バットの被突き上げ部の下にジャックの突き上げ部が入る際、バットが上方に跳ね上がり、ハンマーが回動し、振動中の弦にハンマーヘッドが触れ、弦の振動が止まってしまう。したがって、離鍵後、鍵が完全に押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって2分の1戻った際、ジャックとバットが係合するという構成は、演奏上、論外であると言わざるを得ない。
【0019】
また、ハンマー戻しスプリングは、弦と衝突したハンマーをハンマーレール側へ戻す役割を果たすにすぎない。仮に、ハンマー戻しスプリングの弾性係数やハンマー戻しスプリングからバットに働くトルクを大きくして、ジャックの突き上げ部の突端をバットの被突き上げ部の下に入ることに起因するハンマーの回動を防止しようとすれば、鍵のタッチ感が非常に重くなってしまう。
【0020】
仮に、ハンマーヘッドが弦の振動を止めるという犠牲や鍵のタッチ感が非常に重くなるという犠牲を払うとしても、同じ鍵を押鍵して弦を鳴らすには、鍵が完全に押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって2分の1戻るのを待たねばならない。これでは、連打性がグランドピアノのそれに及ばない。
さらに、ジャック/反復スプリングは圧縮コイルであるので、ジャック/反復スプリングからジャックの突き上げ部に働く力の方向がぶれやすく、鍵のタッチ感が安定しない。
そして、先行技術2のアクションには、レペティションレバー、レペティションスプリング、ハンマーローラー及びドロップスクリューが存在しないので、先行技術2のアクションを備えるアップライトピアノの鍵のタッチ感は、グランドピアノの鍵のタッチ感と大きく異なる。
【0021】
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、アップライトピアノの連打性をグランドピアノと同等のレベルにまで向上可能であり、同じ鍵を連打するためにジャックとバットが係合しても、振動中の弦にハンマーヘッドが当たって弦の振動を止めてしまうことを防止可能であり、さらに、鍵のタッチ感がグランドピアノの鍵のタッチ感に匹敵するともに、安定した鍵のタッチ感を与えるアップライトピアノのアクションの作動方法及びアップライトピアノのアクションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係るアップライトピアノのアクションの作動方法は、レギュレーティングレールと、ジャックストップレールと、センターレールと、ダンパーストップレールと、を有するとともに、ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを有しており、演奏者が鍵を押鍵すると、当該ウィッペンが上昇しつつ回動し、当該ウィッペンの上に回動可能に軸止された当該ジャックの突き上げ部の突端が、バットの被突き上げ部を突き上げ、ハンマーが回動し、当該ハンマーのハンマーヘッドが弦を打弦するとともに、当該ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、当該突き上げ部の突端が当該被突き上げ部の下から離脱するアップライトピアノのアクションの作動方法であって、前記レギュレーティングレールと、前記ジャックストップレールと、のうちのいずれかを第1のレールとし、当該第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちのいずれか一方に、板バネ又は捻りコイルバネからなる第1のスプリングを設け、前記第1のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第1の受け部を、前記第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちの前記第1のスプリングを設けていないものに設け、前記センターレールと、前記ダンパーストップレールと、のうちのいずれかを第2のレールとし、当該第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに、板バネ又は捻りコイルバネからなる第2のスプリングを設け、前記第2のスプリングが、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記第2のレールに設け、前記第2のスプリングが、前記第2のレールに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設け、演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れる際に、前記第1のレールと前記突き上げ部との間に挟まって撓んだ前記第1のスプリングが、前記突き上げ部の突端を前記バットの前記被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付け、さらに、前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込み、前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に、前記ハンマーが、前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動すると、前記第2のスプリングが、前記ハンマーのハンマーウッドとハンマーシャンクと前記バットとのうちのいずれかひとつと、前記第2のレールと、の間に挟まって撓み、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に、撓んだ前記第2のスプリングから前記ハンマーに働く力が、この前記ハンマーの回動を停止させる。
【0023】
演奏者が押鍵した鍵を離鍵した後、ウィッペンが下降しつつ回動する。そして、ジャックテールがレギュレーティングボタンから離れる際、第1のスプリングから力を受けたジャックがバットの方に向かって回動しようとする。ジャックがバットの方に回動しようとすると、ジャックの突き上げ部の突端が、バットの被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付けられ、第1のスプリングの力がバットにジャックを介して働く。第1のスプリングの力により、バットがバットフレンジを中心に上方に持ち上がるように回動し、ジャックの突き上げ部の突端がバットの被突き上げ部の下に強制的に押し込まれる。そして、ジャックとバットが係合する。
第1のスプリングから延びて自由端となっている足部が、第1の受け部に当接し、第1のスプリングからジャックの突き上げ部に力が働く。第1の受け部に当接する足部の形状を変えることにより、第1のスプリングからジャックの突き上げ部に働く力やトルクの大きさを容易に調節できる。第1のスプリングから延びて自由端となっている足部の形状を変えるには、例えば、この足部の撓み具合や曲がり具合を変えれば良い。
第1のスプリングは捻りコイルバネであることがより好ましい。第1のスプリングの弾性係数は、そのコイルの巻き数やコイルの径を変えることにより容易に調節できる。
【0024】
ジャックとバットが係合する際、バットが回動して、ハンマーが弦の方に向かって回動する。この回動するハンマーに、第2のスプリングから力が働き、ハンマーの回動が停止し、ハンマーヘッドが振動中の弦に触れることを第2のスプリングが防止する。なお、第2のスプリングからハンマーに働く力は、弦とは反対の方向の力の成分、すなわち、前方向の力の成分を有すれば良い。
第2のスプリングから延びて自由端となっている足部が、第2の受け部に当接し、第2のスプリングからハンマーに力が働く。第2の受け部に当接する足部の形状を変えることにより、第2のスプリングからハンマーに働く力やトルクの大きさを容易に調節できる。第2のスプリングから延びて自由端となっている足部の形状を変えるには、例えば、この足部の撓み具合や曲がり具合を変えれば良い。
第2のスプリングは捻りコイルバネであることがより好ましい。第2のスプリングの弾性係数は、そのコイルの巻き数やコイルの径を変えることにより容易に調節できる。
アップライトピアノの構造上、ジャックテールがレギュレーティングボタンから離れる際、鍵は完全に押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって約3分の1だけ戻っている。したがって、鍵が完全に押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって約3分の1だけ戻れば、ジャックとバットが第1のスプリングの力により強制的に係合し、演奏者は、同じ鍵を押鍵して同じ弦を鳴らすことができる。
本発明者が試験したところによると、第2のスプリングを板バネ又は捻りコイルバネとすることにより、第2のスプリングから第2の受け部に働く力の方向や大きさがぶれにくくなり、安定した鍵のタッチ感を得ることができる。
第2の受け部がハンマーウッドとハンマーシャンクとバットのうちのいずれかに設けられている場合、第2の受け部の位置がバットフレンジに近ければ近いほど、ハンマーが回動して第2のスプリングが第2の受け部に当たる際に生じる音が小さくなる。ハンマーが回動する際において、ハンマーと一緒に回動する第2の受け部の回動速度が、バットフレンジに近ければ近いほど、遅くなるからである。
第2の受け部が第2のレールに設けられている場合、第2のレールがバットフレンジに近ければ近いほど、ハンマーが回動して第2のスプリングが第2の受け部に当たる際に生じる音が小さくなる。ハンマーが回動する際において、ハンマーと一緒に第2のスプリングが回動するが、第2のスプリングのうちの第2の受け部に当たる部位の回動速度が、バットフレンジに近ければ近いほど、遅くなるからである。
第2のスプリングが第2の受け部に当たる際に生じる音を小さくするために、第2の受け部に当たる第2のスプリングの部位をフェルト等の布や樹脂等の柔軟性を有する素材によって被覆することができる。また、第2のスプリングが当たる第2の受け部の部位をフェルト等の布や樹脂等の柔軟性を有する素材によって被覆しても良い。
【0025】
第2のスプリングがハンマーに及ぼすトルクの大きさの観点より、第2のスプリングからハンマーに働く力の作用点をハンマーの回動中心であるバットフレンジから遠ざければ、第2のスプリングの弾性係数を小さくできる。第2のスプリングからハンマーに働く力の作用点がハンマーシャンク上にある場合と、ハンマーウッド上にある場合とを比べると、ハンマーウッド上にある場合の方が、第2のスプリングの弾性係数は小さくてすむ。第2のスプリングからハンマーに働く力の作用点がハンマーシャンク上にある場合、その作用点がバット側からハンマーヘッド側に遠ざかるにしたがって、第2のスプリングに必要な弾性係数は小さくてすむ。第2のスプリングからハンマーに働く力の作用点がハンマーシャンク上にある場合と、バット上にある場合とを比べると、バット上にある場合の方が、第2のスプリングの弾性係数は小さくてすむ。第2のスプリングの弾性係数と、第2のスプリングからハンマーに働く力の作用点の位置を調節すれば、第2のスプリングが鍵のタッチ感に及ぼす影響を調節できる。
【0026】
演奏者は、第1のスプリングから鍵に伝わる力と、ジャックとバットが係合するときに鍵に伝わる力と、ハンマーヘッドが振動中の弦に触れることを第2のスプリングが防止するときに鍵に伝わる力とを、鍵のタッチ感として感じとる。このタッチ感はグランドピアノのタッチ感に匹敵するものである。第1のスプリングから鍵に伝わる力が、グランドピアノでレペティションスプリングから鍵に伝わる前記第1の力に相当し、ジャックとバットが強制的に係合するときに鍵に伝わる力が、グランドピアノでジャックの突端がハンマーローラーの下に戻るときに鍵に伝わる前記第2の力に相当し、ハンマーヘッドが振動中の弦に触れることを第2のスプリングが防止するときに鍵に伝わる力が、グランドピアノでレペティションレバーがドロップスクリューに当たるときに鍵に伝わる前記第3の力に相当するからである。
【0027】
なお、第1のレールとして、例えば、従来のアップライトピアノにあるジャックストップレールやレギュレーティングレールを挙げることができる。また、ブラケットの間に新たなレールを架け渡して固定し、これを第1のレールとしても良い。第2のレールとして、例えば、従来のアップライトピアノにあるセンターレールやダンパーストップレールを挙げることができる。また、ブラケットの間に新たなレールを架け渡して固定し、これを第2のレールとしても良い。
【0028】
請求項2の発明に係るアップライトピアノのアクションは、レギュレーティングレールと、ジャックストップレールと、センターレールと、ダンパーストップレールと、を有するとともに、ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを有しており、演奏者が鍵を押鍵すると、当該ウィッペンが上昇しつつ回動し、当該ウィッペンの上に回動可能に軸止された当該ジャックの突き上げ部の突端が、バットの被突き上げ部を突き上げ、ハンマーが回動し、当該ハンマーのハンマーヘッドが弦を打弦するとともに、当該ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、当該突き上げ部の突端が当該被突き上げ部の下から離脱するアップライトピアノのアクションであって、前記レギュレーティングレールと、前記ジャックストップレールと、のうちのいずれかが、第1のレールをなし、当該第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちのいずれか一方に、板バネ又は捻りコイルバネからなる第1のスプリングが設けられており、前記第1のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第1の受け部が、前記第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちの前記第1のスプリングを設けていないものに設けられており、前記センターレールと、前記ダンパーストップレールと、のうちのいずれかが、第2のレールをなし、当該第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに、板バネ又は捻りコイルバネからなる第2のスプリングが設けられており、前記第2のスプリングが、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部が、前記第2のレールに設けられており、前記第2のスプリングが、前記第2のレールに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部が、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられており、演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れる際に、前記第1のレールと前記突き上げ部との間に挟まって撓んだ前記第1のスプリングが前記突き上げ部に与える力が、前記突き上げ部の突端を前記バットの前記被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付けることができる大きさと方向の力であるとともに、前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込むことができる大きさと方向の力であり、前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動する前記ハンマーと前記第2のレールとの間に挟まって撓んだ前記第2のスプリングが回動する前記ハンマーに与える力が、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に前記ハンマーの回動を停止させることができる大きさと方向の力である。
請求項2の発明により、請求項1の発明を実施できる。
【0030】
請求項3の発明に係るアップライトピアノのアクションは、請求項2に記載のアップライトピアノのアクションであって、前記第1のレールと前記突き上げ部とのうちの前記第1の受け部が設けられているものに螺合して貫通する螺子の螺子部先端が、前記第1の受け部を支持している。
第1の受け部を支持する螺子の螺子部先端がその被螺合部材から突出する長さを変えれば、第1のスプリングと第1の受け部との当たり具合を容易に調節できる。このあたり具合を調節することにより、第1のスプリングからジャックの突き上げ部に働く力やトルクの大きさを容易に調節できる。
本発明者が試験したところによると、第1のスプリングを板バネ又は捻りコイルバネとすることにより、第1のスプリングから第1の受け部に働く力の方向や大きさがぶれにくくなり、安定した鍵のタッチ感を得ることができる。
【0035】
請求項4の発明に係るアップライトピアノのアクションは、請求項2又は請求項3に記載のアップライトピアノのアクションであって、前記第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットとのうちの前記第2の受け部が設けられているものに螺合して貫通する螺子の螺子部先端が、前記第2の受け部を支持している。
第2の受け部を支持する螺子の螺子部先端がその被螺合部材から突出する長さを変えれば、第2のスプリングと第2の受け部との当たり具合を容易に調節できる。このあたり具合を調節することにより、第2のスプリングからハンマーに働く力やトルクの大きさを容易に調節できる。
【発明の効果】
【0036】
上記のようなアップライトピアノのアクションの作動方法及びアップライトピアノのアクションであるので、アップライトピアノの連打性をグランドピアノと同等のレベルにまで向上可能であり、同じ鍵を連打するためにジャックとバットが係合しても、振動中の弦にハンマーヘッドが当たって弦の振動を止めてしまうことを防止可能であり、さらに、鍵のタッチ感がグランドピアノの鍵のタッチ感に匹敵するともに、安定した鍵のタッチ感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】鍵が休止状態の位置にあるときに左側から見たアップライトピアノのアクションの構成図である。
【図2】鍵が完全に押し下げられてハンマーヘッドが打弦した直後に左側から見たアップライトピアノのアクションの構成図である。
【図3】鍵が完全に押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって3分の1戻ったときに左側から見たアップライトピアノのアクションの構成図である。
【図4】第1のスプリングと第2のスプリングの構成図であり、(i)が第1のスプリングと第2のスプリングの前面図、(ii)が第1のスプリングと第2のスプリングの左側面図である。
【図5】図1の部分拡大図である。
【図6】鍵が完全に押し下げられてハンマーヘッドが打弦した直後に左側から見た変形例に係るアップライトピアノのアクションの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を実施するための形態を図1から図5を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、「時計回り」あるいは「反時計回り」というときは、図1から図3における時計回りあるいは反時計回りのことをいうものとする。
図1?図3に示すように、本実施の形態に係るアップライトピアノは、左右方向に並ぶ多数の鍵1(ひとつだけ図示)と、各鍵1に対応する弦90を有する。鍵1の中央部が、筬3に立設されたバランスピン(図示せず)に、回動可能に支持されている。筬3の左右端部にはブラケット(図示せず)がそれぞれ形成されている。左右のこれらのブラケットの間には、センターレール4が架け渡されて固定されている。
鍵1の後端部上方にアクション7が形成されている。アクション7は、ウィッペン8、ジャック18、ハンマー32、ダンパー39を有する。
【0039】
ウィッペン8の後端部にはスプーン9が立設されている。スプーン9よりもやや前側において、ウィッペン8は、センターレール4の下部のウィッペンフレンジ10に回動可能に軸止されている。ウィッペンフレンジ10よりも前側において、ウィッペン8はその下側にヒール11を有し、その上側にジャックフレンジ12を有する。ヒール11がキャプスタンボタン2を介して、鍵1の後端部の上に載っている。ジャックフレンジ12よりも前側において、ウィッペン8はその上側にジャックスプリング13を有する。ウィッペン8の前端部には、バックチェックワイヤ14が立設されており、その先端にバックチェック15が取り付けられている。
【0040】
ジャック18は、前方に突出するジャックテール19と、上下方向に延びる突き上げ部20とを有し、ジャックテール19と突き上げ部20とがLの字型をなす。ジャックテール19と突き上げ部20とがなす角部において、ジャック18はジャックフレンジ12に回動可能に軸止されている。ジャックスプリング13がジャックテール19とウィッペン8との間に設置されており、ジャックテール19を上方に付勢している。突き上げ部20の前側面の下端側部分には、第1のスプリング59をなす捻りコイルバネが取り付けられている。
【0041】
図4に示すように、第1のスプリング59はコイル部60と2本の足部62、63を有する。コイル部60の一端が足部62に連なり、コイル部60の他端が足部63に連なっている。足部62が突き上げ部20に植設されている。足部63が上下方向に延び、その上方の先端が自由端をなす。
ジャックテール19の上方に、レギュレーティングボタン47が形成されている。レギュレーティングボタン47は、左右に延びるレギュレーティングレール48に螺合するレギュレーティングスクリュー49の先端に支持されている。レギュレーティングレール48はフォークスクリュー50によりセンターレール4に固定して取り付けられている。
【0042】
突き上げ部20の前方に、左右に延びるジャックストップレール53がある。ジャックストップレール53は、第1のレールをなし、ジャックストップレールスクリュー54によりセンターレール4に固定して取り付けられている。ジャックストップレール53に、螺子81が螺合して貫通している。螺子81の螺子部先端がジャックストップレール53の後側から突出している。螺子81の螺子部先端に、第1の受け部71が支持されている。第1の受け部71は、基材73とフェルト77を有する。螺子81の螺子部先端が基材73を前側から支持し、基材73の後側にフェルト77が貼られており、フェルト77が突き上げ部20の前側面と対向している。フェルト77は、突き上げ部20の左右の幅と同じ幅か、突き上げ部20の左右の幅よりも大きな幅を有する。
【0043】
第1のスプリング59の弾性係数と、第1のスプリング59が第1の受け部71に当たって撓むことによりジャック18に与えるトルクの大きさとは、以下のように調整されている。すなわち、これらの弾性係数とトルクは、後述する鍵1の押鍵時において、ジャック18のレットオフを妨げない大きさであり、かつ、後述する鍵1の離鍵時において、突き上げ部20の突端を被突き上げ部27の下に強制的に押し込み可能な大きさである。
【0044】
ハンマー32は、バット25、ハンマーシャンク33、ハンマーヘッド34を有する。
バット25の後側面の下部は、センターレール4の前側上部のバットフレンジ26に回動可能に軸止されている。バット25の前側面の上部に、キャッチャーシャンク28を介してキャッチャー29が取り付けられている。バット25は、その下側面に被突き上げ部27を有し、被突き上げ部27に革製のスキン75が貼られている。バット25の前側面のうちキャッチャーシャンク28の付け根より下にある部分に、革製のスキン76が貼られている。すなわち、バット25において、被突き上げ部27よりも前方側かつ上方側にある面にスキン76が貼られている。スキン75の前端とスキン76の下端が連続して一体となっている。
【0045】
バット25の上側面には上下方向に延びるハンマーシャンク33が立設されており、ハンマーシャンク33の上端にハンマーヘッド34が取り付けられている。ハンマーヘッド34は、ハンマーシャンク33の上端から後方に延びるハンマーウッド35と、ハンマーウッド35の後端側部分に取り付けられたハンマーフェルト36とを有する。
ハンマーシャンク33の上端側部分には螺子82が螺合して前後方向に貫通しており、螺子82の螺子部先端がハンマーシャンク33の後側に突出している。螺子82の螺子部先端には、第2の受け部72が支持されている。第2の受け部72は基材74とフェルト78を有する。螺子82の螺子部先端が基材74を前側から支持し、基材74の後側にフェルト78が貼られており、フェルト78が後方を向いている。フェルト78は、ハンマーシャンク33の太さと同じ大きさの左右の横幅か、ハンマーシャンク33の太さよりも大きな左右の横幅を有する。
【0046】
ダンパー39は、ダンパーレバー40、ダンパーワイヤー43、ダンパーヘッド44を有する。
ダンパーレバー40の中央部が、センターレール4の後側上部に固定したダンパーフレンジ41に回動可能に軸止されている。ダンパーレバー40の前側面下端部が、スプーン9の先端と対向している。ダンパーヘッド44がダンパーワイヤー43を介してダンパーレバー40の上端に取り付けられている。ダンパーヘッド44は、ダンパーレバー40に取り付けられたダンパースプリング42から力を受けて弦90に圧接している。
【0047】
ハンマーシャンク33の前方にハンマーストップレール55があり、ダンパーワイヤー43の前方にダンパーストップレール56がある。ハンマーストップレール55とダンパーストップレール56は、左右の前記ブラケットの間にそれぞれ架け渡されて固定されている。ダンパーストップレール56が第2のレールをなす。
ダンパーストップレール56の前側面上に、第2のスプリング66をなす捻りコイルバネが取り付けられている。
【0048】
図4に示すように、第2のスプリング66はコイル部61と2本の足部67、68を有する。コイル部61の一端が足部67に連なり、コイル部61の他端が足部68に連なっている。足部67がダンパーストップレール56に植設されている。足部68は、その先端側がコの字型に折れ曲がっている。足部68のコの字型部分は、フェルト78の左右の横幅と同じ大きさの左右の横幅か、フェルト78の左右の横幅よりも大きな左右の横幅を有する。足部68が前方の斜め上方向に延び、その先端が自由端をなす。足部68の長さは、バットフレンジ26を中心として回動するハンマーヘッド34と干渉しあうことがない長さであり、バットフレンジ26を中心として回動するハンマーシャンク33の第2の受け部72に足部68のコの字型部分が当たる長さである。
【0049】
第2のスプリング66の弾性係数と、第2のスプリング66が第2の受け部72を介してハンマー32に与えるトルクの大きさとは、以下のように調整されている。すなわち、これらの弾性係数とトルクは、鍵1の押鍵時において、ハンマー32の打弦を妨げない大きさであり、かつ、鍵1の離鍵時において、回動するハンマー32を停止させてハンマー32の打弦を防止可能な大きさである。
そして、弦90がアクション7の後方に張られている。
本実施の形態に係るアップライピアノは、アクション7が、第1のスプリング59、第2のスプリング66、第1の受け部71、第2の受け部72を有する点を除いて、従来あるものと同様の構成を有する。
【0050】
次に、作用について説明する。
先ず、鍵1が休止状態にある場合について説明する(図1及び図5を参照)。鍵1が休止状態にある場合、鍵1の前端は最も上昇した位置にあり、鍵1の後端は最も下降した位置にある。そして、ウィッペン8も最も下降した位置にある。
ジャック18の突き上げ部20の突端は、バット25の被突き上げ部27の下に入って係合している。ジャックテール19はレギュレーティングボタン47から離れている。突き上げ部20と第1の受け部71との間は離れている。そして、第1のスプリング59の足部63の先端側部分と突き上げ部20の前側面との間も離れており、足部63が第1の受け部71のフェルト77に当たっている。
【0051】
バット25は、キャッチャー29が最も下降した位置にあり、キャッチャー29はバックチェック15から離れている。ハンマーシャンク33はハンマーストップレール55に接した状態となっており、ハンマーヘッド34は弦90から最も離れた位置にある。第2のスプリング66の足部68は第2の受け部72のフェルト78から離れている。また、ダンパーヘッド44はダンパースプリング42の力により弦90に圧接している。
【0052】
次に、演奏者が鍵1を押鍵し、鍵1の前端部が休止状態の位置から最も押し下げられた位置まで下降する場合について説明する(図2を参照)。
演奏者が鍵1を押鍵すると、鍵1が時計回りの方向に回動し、鍵1の後端部が上昇する。鍵1の後端部がヒール11を突き上げ、ウィッペン8がウィッペンフレンジ10を中心として反時計回りの方向に回動しつつ上昇する。
ウィッペン8が回動を開始すると、直ちに、スプーン9がダンパーレバー40の下端を後方に押し、ダンパーレバー40がダンパーフレンジ41を中心として時計回りの方向に回動し、ダンパーヘッド44が弦90から離れる。
ウィッペン8の回動と上昇に伴って、ジャック18がウィッペン8と共に上昇する。ジャック18の上昇過程において、突き上げ部20の突端がバット25の被突き上げ部27を突き上げる。
【0053】
突き上げ部20の突端が被突き上げ部27を突き上げた後も、ウィッペン8は回動と上昇を続ける。突き上げ部20の突端が被突き上げ部27を突き上げた後に、ジャックテール19がレギュレーティングボタン47に当たる。その後も、ウィッペン8は回動と上昇を続ける。レギュレーティングボタン47がジャックテール19を上から押さえるので、ジャック18がジャックフレンジ12を中心として時計回りの方向に回動し、突き上げ部20の突端が被突き上げ部27の下から前方に離脱する(すなわち、レットオフする)。レットオフした突き上げ部20は、第1の受け部71側に接近し、第1のスプリング59が突き上げ部20と第1の受け部71との間に挟まって撓む。
【0054】
第1のスプリング59の弾性係数と、第1のスプリング59が第1の受け部71に当たって撓むことによりジャック18に与えるトルクの大きさは、ジャック18のレットオフを妨げない大きさである。したがって、第1のスプリング59が突き上げ部20の離脱を妨げることはない。
バット25は、被突き上げ部27を突き上げられて、バットフレンジ26を中心として反時計回りの方向に回動する。すなわち、ハンマー32が反時計回りの方向に回動する。ハンマー32が回動すると、第2のスプリング66の足部68が第2の受け部72に当たって撓む。なお、第2のスプリング66の弾性係数と、第2のスプリング66が第2の受け部72を介してハンマー32に与えるトルクの大きさとは、押鍵時におけるハンマー32の打弦を妨げない大きさである。したがって、ハンマーヘッド34は、第2のスプリング66に妨げられることなく弦90を打つ。弦90は、ハンマーヘッド34が衝突して振動することにより、音を発する。
【0055】
ハンマーヘッド34が弦90を打った後、ハンマー32は反転して時計回りの方向に回動する。そして、キャッチャー29がバックチェック15に捕まり、ハンマー32は停止する。このとき、鍵1の前端は休止状態の位置から最も下降しており、鍵1の後端は休止状態の位置から最も上昇している。また、突き上げ部20の突端は、被突き上げ部27よりも上方にあり、スキン76の前側に位置している。
【0056】
次に、演奏者が鍵1を離鍵し、鍵1の前端部が最も押し下げられた位置から上昇する場合について説明する(図3を参照)。
演奏者が鍵1を離鍵すると、鍵1が反時計回りの方向に回動し、鍵1の後端部が下降を開始する。鍵1の後端部が下降すると、ウィッペン8が、時計回りの方向に回動しつつ下降する。ウィッペン8が下降を開始すると、直ちに、キャッチャー29がバックチェック15から離れ、ハンマー32は回動可能になる。
【0057】
アップライトピアノの構造上、鍵1の前端部が最も押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって約3分の1戻る(すなわち、鍵1の後端部が最も上昇した位置から休止状態の位置に向かって約3分の1戻る)と、ジャックテール19はレギュレーティングボタン47に接するだけとなり、レギュレーティングボタン47がジャックテール19を上から押さえつける力がなくなる。そして、撓んだ第1のスプリング59から突き上げ部20に働く力により、ジャック18がジャックフレンジ12を中心として反時計回りの方向に回動しようとし、先ず、突き上げ部20の突端がバット25に押し付けられる。突き上げ部20の突端が押し付けられる位置は、バット25の前側面であり、被突き上げ部27よりも上側のスキン76が貼られた位置である。バット25の前側面に押し付けられた突き上げ部20の突端は、第1のスプリング59から働く力により、被突き上げ部27の下に強制的に押し込まれる。
【0058】
突き上げ部20の突端が被突き上げ部27の下に強制的に押し込まれる際、突き上げ部20の突端からバット25に力が働く。この力によりバット25は上方に跳ね上がり、バット25がバットフレンジ26を中心として反時計回りの方向に回動する。バット25が回動するとハンマー32が反時計回りの方向に回動する。ハンマー32が回動すると、第2のスプリング66の足部68が第2の受け部72に当たり、第2のスプリング66が撓む。第2のスプリング66の弾性係数と、第2のスプリング66が第2の受け部72を介してハンマー32に与えるトルクの大きさとは、離鍵時において回動するハンマー32の回動を停止させ、かつ、ハンマー32による弦90の打弦を防止可能な大きさである。したがって、第2のスプリング66により、ハンマーヘッド34が弦90に触れる前に、ハンマー32は回動を停止する。これにより、振動中の弦90にハンマーヘッド34が触れて弦90の振動が止まることも防止される。
【0059】
突き上げ部20の突端が被突き上げ部27の下に入り、ジャック18とバット25が係合するので、演奏者は、離鍵した鍵1を再び押鍵し、ウィッペン8を介して、突き上げ部20により被突き上げ部27を突き上げることができる。
すなわち、離鍵した鍵1の前端部が最も押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって約3分の1戻れば、演奏者は、再び同じ鍵1を押鍵して振動中の弦90をハンマー32で打弦できる。鍵1の前端部が最も押し下げられた位置から休止状態の位置に向かって約3分の1戻れば同じ鍵1を連打できるので、その連打性はグランドピアノの連打性と同等のレベルになる。
【0060】
演奏者は、第1のスプリング59から鍵1に伝わる力F1と、突き上げ部20が被突き上げ部27の下に強制的に押し込まれるときに鍵1に伝わる力F2と、第2のスプリング66がハンマー32の回動を停止させるときに鍵1に伝わる力F3と、を感じることができ、グランドピアノに匹敵するタッチ感を得ることができる。力F1が、グランドピアノにおけるレペティションスプリングから鍵に伝わる前記第1の力に相当し、力F2が、グランドピアノにおけるジャックの突端がハンマーローラーの下に戻るときに鍵に伝わる前記第2の力に相当し、力F3が、グランドピアノにおけるレペティションレバーがドロップスクリューに当たったときに鍵に伝わる前記第3の力に相当するからである。
【0061】
第1のスプリング59からジャック18に働く力やトルクの大きさは、ジャックストップレール53の後側から突出する螺子81の螺子部先端の突出量を変えることにより、簡単に調節できる。同様に、第2のスプリング66からハンマー32に働く力やトルクの大きさは、ハンマーシャンク33の後側から突出する螺子82の螺子部先端の突出量を変えることにより、簡単に調節できる。
【0062】
本実施の形態において、第2のスプリング66の足部68が斜め前方の上方向に延びているとしたが、代わりに、図6の変形例に示す構成としても良い。この変形例においては、足部68が斜め前方の下方向に延びている。そして、第2の受け部72が、ハンマーシャンク33のバット25側の根元近傍部分に形成されている。
第2の受け部72をハンマーシャンク33のバット25側の根元近傍部分に形成することにより、ハンマー32が回動して足部68が第2の受け部72に当たる際に生じる音を小さくできる。ハンマー32が回動する際、ハンマー32と一緒に回動する第2の受け部72の回動速度が、ハンマー32の回動中心であるバットフレンジ26に近ければ近いほど、遅くなるからである。
【0063】
本実施の形態において、第1の受け部71が、ジャックストップレール53に螺合して貫通する螺子81により支持されているとしたが、代わりに、ジャックストップレール53の後側にフェルト78を貼り付け、このフェルト78を第1の受け部71としても良い。同様に、第2の受け部72が、ハンマーシャンク33に螺合して貫通する螺子82により支持されているとしたが、代わりに、ハンマーシャンク33にフェルト77を巻きつけ、このフェルト77を第2の受け部72としても良い。
【0064】
本実施の形態において、第1の受け部71が基材73とフェルト77とからなるとしたが、第1の受け部71を以下のように構成しても良い。すなわち、ジャックストップレール53の後側にフェルト77を2点で固定する。フェルト77の固定されている2点の間の部分の裏側に、ジャックストップレール53に螺合して貫通する螺子81の螺子部先端を当てる。そして、螺子81の螺子部先端が当たっているフェルト77を第1の受け部71とする。第1のスプリング59からジャック18に働く力やトルクの大きさは、ジャックストップレール53の後側から突出している螺子81の螺子部先端の突出量を変えることにより、簡単に調節できる。
【0065】
同様に、第2の受け部72を以下のように構成しても良い。すなわち、ハンマーシャンク33の後側にフェルト78を2点で固定する。フェルト78の固定されている2点の間の部分の裏側に、ハンマーシャンク33に螺合して貫通する螺子82の螺子部先端を当てる。そして、螺子82の螺子部先端が当たっているフェルト78を第2の受け部72とする。第2のスプリング66からハンマー32に働く力やトルクの大きさは、ハンマーシャンク33の後側から突出している螺子82の螺子部先端の突出量を変えることにより、簡単に調節できる。
【0066】
本実施の形態において、第1のスプリング59及び第2のスプリング66を、ねじりコイルバネの代わりに板バネによって形成しても良い。この場合、板バネの長手方向両端側部分を足部とし、一方の足部を第1のスプリング59における足部62又は第2のスプリング66における足部67とし、他方の足部を第1のスプリング59における足部63又は第2のスプリング66における足部68とする。そして、板バネの足部62又は足部67となる端側部分近傍の曲率を他の部分よりも小さくする。
【0067】
本実施の形態において、第1のスプリング59の足部62を、前記ブラケットの間に新たに固定して設けたレール、ジャックストップレール53、あるいは、レギュレーティングレール48に植設し、第1の受け部71を突き上げ部20の前側面に設けても良い。
本実施の形態において、第2のスプリング66の足部67をセンターレール4に植設しても良い。これにより、足部68の長さを変えやすくなり、第2のスプリング66を調節しやすくなる。また、足部67を前記ブラケットの間に新たに固定して設けたレールに植設しても良い。
【0068】
本実施の形態において、第2のスプリング66の足部67を、ハンマーウッド35、ハンマーシャンク33あるいはバット25に植設し、第2の受け部72を、前記ブラケットの間に新たに固定して設けたレール、ダンパーストップレール56の前側面、あるいは、センターレール4の一部に設けても良い。
本実施の形態において、スキン75、76を毛織物等の織布や不織布により形成しても良いし、フェルト77、78を、革、毛織物等の織布あるいは不織布により形成しても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 鍵
4 センターレール
7 アクション
8 ウィッペン
10 ウィッペンフレンジ
12 ジャックフレンジ
15 バックチェック
18 ジャック
19 ジャックテール
20 突き上げ部
25 バット
26 バットフレンジ
27 被突き上げ部
29 キャッチャー
32 ハンマー
33 ハンマーシャンク
34 ハンマーヘッド
35 ハンマーウッド
39 ダンパー
47 レギュレーティングボタン
53 ジャックストップレール
56 ダンパーストップレール
59 第1のスプリング
62、63 第1のスプリングの足部
66 第2のスプリング
67、68 第2のスプリングの足部
71 第1の受け部
72 第2の受け部
81、82 螺子
90 弦
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レギュレーティングレールと、ジャックストップレールと、センターレールと、ダンパーストップレールと、を有するとともに、ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを、また、バット及びバットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリングを有しており、演奏者が鍵を押鍵すると、当該ウィッペンが上昇しつつ回動し、当該ウィッペンの上に回動可能に軸止された当該ジャックの突き上げ部の突端が、前記バットの被突き上げ部を突き上げ、ハンマーが回動し、当該ハンマーのハンマーヘッドが弦を打弦するとともに、当該ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、当該突き上げ部の突端が当該被突き上げ部の下から離脱するアップライトピアノのアクションの作動方法であって、
前記レギュレーティングレールと、前記ジャックストップレールと、のうちのいずれかを第1のレールとし、当該第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちのいずれか一方に、板バネ又は捻りコイルバネからなる第1のスプリングを設け、
前記第1のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第1の受け部を、前記第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちの前記第1のスプリングを設けていないものに設け、
前記センターレールと、前記ダンパーストップレールと、のうちのいずれかを第2のレールとし、当該第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに、板バネ又は捻りコイルバネからなる第2のスプリングを設け、
前記第2のスプリングが、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記第2のレールに設け、
前記第2のスプリングが、前記第2のレールに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部を、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設け、
演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れる際に、前記第1のレールと前記突き上げ部との間に挟まって撓んだ前記第1のスプリングが、前記突き上げ部の突端を前記バットの前記被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付け、さらに、前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込み、
前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に、前記ハンマーが、前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動すると、前記第2のスプリングが、前記ハンマーのハンマーウッドとハンマーシャンクと前記バットとのうちのいずれかひとつと、前記第2のレールと、の間に挟まって撓み、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に、撓んだ前記第2のスプリングから前記ハンマーに働く力が、この前記ハンマーの回動を停止させることを特徴とするアップライトピアノのアクションの作動方法。
【請求項2】
レギュレーティングレールと、ジャックストップレールと、センターレールと、ダンパーストップレールと、を有するとともに、ジャックのジャックテールとウィッペンとの間にジャックスプリングを、また、バット及びバットを元の位置に戻す力をバットに加えるバットスプリングを有しており、演奏者が鍵を押鍵すると、当該ウィッペンが上昇しつつ回動し、当該ウィッペンの上に回動可能に軸止された当該ジャックの突き上げ部の突端が、前記バットの被突き上げ部を突き上げ、ハンマーが回動し、当該ハンマーのハンマーヘッドが弦を打弦するとともに、当該ジャックテールがレギュレーティングボタンに当たり、当該突き上げ部の突端が当該被突き上げ部の下から離脱するアップライトピアノのアクションであって、
前記レギュレーティングレールと、前記ジャックストップレールと、のうちのいずれかが、第1のレールをなし、当該第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちのいずれか一方に、板バネ又は捻りコイルバネからなる第1のスプリングが設けられており、
前記第1のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第1の受け部が、前記第1のレールと、前記突き上げ部と、のうちの前記第1のスプリングを設けていないものに設けられており、
前記センターレールと、前記ダンパーストップレールと、のうちのいずれかが、第2のレールをなし、当該第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに、板バネ又は捻りコイルバネからなる第2のスプリングが設けられており、
前記第2のスプリングが、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部が、前記第2のレールに設けられており、
前記第2のスプリングが、前記第2のレールに設けられている場合には、前記第2のスプリングをなす板バネ又は捻りコイルバネから延びて自由端となっている足部が当接する第2の受け部が、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットと、のうちのいずれかひとつに設けられており、
演奏者が前記鍵を離鍵し、前記ウィッペンが下降しつつ回動し、前記ジャックテールが前記レギュレーティングボタンから離れる際に、前記第1のレールと前記突き上げ部との間に挟まって撓んだ前記第1のスプリングが前記突き上げ部に与える力が、前記突き上げ部の突端を前記バットの前記被突き上げ部よりも前方側かつ上方側にある面に押し付けることができる大きさと方向の力であるとともに、前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込むことができる大きさと方向の力であり、
前記第1のスプリングが前記突き上げ部を前記被突き上げ部の下に押し込む際に前記突き上げ部から前記被突き上げ部に働く力を受けて前記弦に向かって回動する前記ハンマーと前記第2のレールとの間に挟まって撓んだ前記第2のスプリングが回動する前記ハンマーに与える力が、回動する前記ハンマーヘッドが前記弦に触れる前に前記ハンマーの回動を停止させることができる大きさと方向の力であることを特徴とするアップライトピアノのアクション。
【請求項3】
前記第1のレールと前記突き上げ部とのうちの前記第1の受け部が設けられているものに螺合して貫通する螺子の螺子部先端が、前記第1の受け部を支持していることを特徴とする請求項2に記載のアップライトピアノのアクション。
【請求項4】
前記第2のレールと、前記ハンマーウッドと、前記ハンマーシャンクと、前記バットとのうちの前記第2の受け部が設けられているものに螺合して貫通する螺子の螺子部先端が、前記第2の受け部を支持していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のアップライトピアノのアクション。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-08-19 
結審通知日 2015-08-21 
審決日 2015-09-01 
出願番号 特願2009-176144(P2009-176144)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (G10C)
P 1 113・ 851- YAA (G10C)
P 1 113・ 537- YAA (G10C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 聡一郎  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 酒井 朋広
関谷 隆一
登録日 2010-04-09 
登録番号 特許第4489140号(P4489140)
発明の名称 アップライトピアノのアクションの作動方法及びアップライトピアノのアクション  
代理人 村松 義人  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 村松 義人  
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