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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J |
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管理番号 | 1307648 |
審判番号 | 不服2014-10603 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-04 |
確定日 | 2015-11-11 |
事件の表示 | 特願2008-543317「イオン源、システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月14日国際公開、WO2007/067317、平成21年 4月30日国内公表、特表2009-517844〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、2006年11月15日(パリ条約による優先権主張2005年12月2日 米国、2006年3月20日 米国、2006年4月28日 米国、2006年5月9日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年8月11日付けで拒絶理由が通知され、平成24年2月16日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年11月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成25年4月15日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、平成26年1月27日付けで平成25年4月15日付けの手続補正の補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して平成26年6月4日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、同年8月6日付けで前置報告がなされ、平成27年1月16日付けで上申書が提出されたものである。 第2 平成26年6月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年6月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成26年6月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本件補正前の平成24年2月16日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項26である 「【請求項26】 気体を気体電界イオン源と相互作用させることによって、イオンビームを発生させることと、 前記イオンビームを試料と相互作用させて、該試料から粒子を出すことと、 検出器によって検出された粒子のエネルギー及び軌道の角度に基づく検出器からのスペクトル及び/又は画像を作り出すことと、 を含むことを特徴とする方法。」が、 「【請求項1】 気体を気体電界イオン源と相互作用させることによって、イオンビームを発生させることと、 前記イオンビームを試料と相互作用させて、該試料から粒子を出すことと、 検出器によって検出された粒子のエネルギー及び軌道の角度に基づく検出器からのスペクトル及び/又は画像を作り出すことと、 を含み、 前記粒子が、散乱イオンであり、 前記散乱イオンを散乱する前記試料の表面での原子の質量は、前記散乱イオンのエネルギー及び軌道の角度を用いて決定される ことを特徴とする方法。」 と補正された(下線は請求人が付与したものである。)。 2 本件補正の目的 本件補正により、補正前の請求項26に「粒子が、散乱イオンであり、前記散乱イオンを散乱する前記試料の表面での原子の質量は、前記散乱イオンのエネルギー及び軌道の角度を用いて決定される」が追加されたが、これは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを進歩性(特許法第29条第2項)について以下に検討する。 (1)本願補正発明の認定 本願補正発明は、上記1において、本件補正後の請求項1として記載したとおりのものと認める。 (2)刊行物、各刊行物の記載事項及び引用発明の認定 ア 本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平6-308058号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付与した。)。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はラザフォード後方散乱分光分析装置に係わり、例えば、ラザフォード後方散乱分光法による固体試料表面の組成の定量分析、または固体試料表面の不純物の定量分析における散乱イオンエネルギースペクトルの測量装置、および散乱イオンエネルギースペクトルの測定方法に用いて好適なものである。」 (イ) 「【0016】 【作用】前記のように構成したラザフォード後方散乱分光分析装置の作用を図面を参照して説明する。図1は、本発明によるラザフォード後方散乱分光分析装置の一実施例を示す図である。 【0017】図1において、1は試料に照射するイオンの軌道であり、2は分析試料である。また、3_(-1)?3_(-n)は照射したイオンが試料によって散乱された場合の散乱イオンの軌道である。 【0018】次いで、4_(-1)?4_(-n)は散乱イオンを検出するための検出器である。本実施例において設置する検出器は、第1の検出器4_(-1)から第番目の検出器4_(-n)までのn個であり、散乱角はそれぞれの検出器4_(-1)から検出器4_(-n)に対応してそれぞれθ_(-1)からθ_(-n)に設定する。 【0019】散乱イオン検出器4_(-1)?4_(-n)は、検出器同志が互いに触れ合わない程度の距離で、また、検出器同志が互いに散乱イオンを遮蔽しないような位置関係に設置する。検出器4_(-1)?4_(-n)は有感面積が同じものを使用するとともに、試料2からの距離が等しくなるようにする。 【0020】また、照射イオンの入射方向と、分析試料2と検出器4とを結ぶ線のなす角度(散乱角)が90度よりも大きくなるように各検出器4_(-1)?4_(-n)を設置することが望ましい。設置する検出器4の数は、分析の目的とする感度に応じて、増やせばよく、検出器4を設置する数を多くするほど分析感度は高くなる。 【0021】第1の検出器4_(-1)から最後の検出器4_(-n)(nは検出器の数)の散乱角は、それぞれθ_(-1)からθ_(-n)に設定する。なお、散乱角θ_(-1)からθ_(-n)は等間隔でも、不均一な間隔でもいずれでも任意でよいが、それぞれの値を正確に把握しておく必要がある。 【0022】操作法は、先ず分析試料2にエネルギーがE_(0)のイオンを照射するとともに、イオンを照射しつつ、検出器4_(-1)から検出器4_(-n)までのすべての検出器を同時に作動させる。そして、試料表面上に存在している質量がMの元素によって散乱されたイオンをn個の検出器4で同時に検出する。 【0023】このようにして各検出器4_(-1)?4_(-n)から得られる信号電圧を増幅器5_(-1)?5_(-n)でもって増幅する。そして、増幅された各検出器からの出力電圧を、A/D変換器6_(-1)?6_(-n)によりディジタル化する。 【0024】各A/D変換器6_(-1)?6_(-n)によりディジタル化された検出器出力を、次に、多重波高分析器7_(-1)?7_(-n)に与え、増幅されるとともにディジタル化された各検出器からの信号電圧と、イオン照射時におけるその頻度とを各検出器ごとに分析し、散乱イオンのエネルギースペクトルを出力する。 【0025】そして、検出器4_(-1)から検出器4_(-n)までの各検出器ごとの測定したエネルギースペクトルのずれを合成スペクトル生成器8で補正するとともに、加算して合成スペクトルを出力する。 【0026】各検出器ごとのエネルギースペクトルのずれの補正はつぎのように行う。すなわち、イオンを分析試料2に照射した際に、試料表面で散乱されるイオンのエネルギーは、原理的に次の式で示されるエネルギーである。 Ei=K(θi)E0 ・・・(1式) 【0027】ただし、Eiは検出器4_(-i)で検出される散乱イオンのエネルギーであり、K(θi)は次の式によって決まる係数である。 K(θi)={(M^(2) -m^(2) sin^(2)θi)^(1/2) +mcos θi}^(2) /(M+m)^(2) ・・・(2式) θi:イオンが分析試料2に入射する方向と、イオンが分析試料2に入射する位置と検出器4_(-i)とを結ぶ線がなす角度 m:照射イオンの質量 M:分析する元素の質量 E0 :照射イオンのエネルギー E0 、m、Mは全ての検出器に共通である。 【0028】また、散乱イオンの強度は原理的につぎの式で示す強度である。 Yi=α×σ(θi)×N ・・・(3式) 【0029】ただし、Yiは検出器4_(-i)で検出される散乱イオンの強度であり、αは定数、Nは分析元素の濃度、σ(θi)は次の式によって決まる係数である。 σ(θi)=β×1/sin^(4)θi×(γ+cos θi)^(2) /γ ・・・(4式) 【0030】ただし、 γ=〔1-((m/M)sin θi)^(2) 〕^(1/2 )・・・(5式) である。 【0031】次に、分析方法を説明する。先ず、検出器4_(-1)から検出器4_(-n)までの各検出器ごとに、K(θi)とσ(θi)とを前記の式により計算する。次に、多重波高分析器7によって出力した検出器4_(-2)から検出器4_(-n)までの散乱イオンのエネルギースペクトル中のピークの位置と強度を検出器4_(-1)から出力するエネルギースペクトルのピーク位置と強度にそろえるための補正を行う。 【0032】すなわち、検出器4_(-i)(iは2からn)によって測定したスペクトル中のピークのエネルギーEiはつぎの式によりEi’に換する。 Ei’=Ei×K(θ1)/K(θi) ・・・(6式) 【0033】また、検出器iによって測定したスペクトル中のピークの強度はYiは、次の式によりYi’へ変換する。 Yi’=Yi×σ(θ1)/σ(θi) ・・・(7式) そして、変換したスペクトルをすべて加算して合成し、図1中の9で示す出力装置に出力する。 【0034】検出システム(検出器、増幅器、アナログディジタル変換器、多重波高分析器からなる系)の不感時間は、1個の検出器が単位時間あたりに計測する散乱イオンの個数に比例して増大するから、前記の作用によって、本発明の検出システムの不感時間は、検出器の散乱イオンの検出面積が本発明で用いる検出器のn倍であるような1個の検出器を用いた従来技術の検出システムの不感時間の1/n以下になる。すなわち、本発明による検出システムでは、従来技術と同等の不感時間で、n倍の計数率を得ることが可能となる。 【0035】 【実施例】以下、本発明のラザフォード後方散乱分光分析装置の一実施例を図面を参照して説明する。なお、本実施例においては、シリコン単結晶基板上にヒ素を1×10^(14)atoms/cm^(2) の濃度で付着させて分析試料2とした。 【0036】図2は、従来のラザフォード後方散乱分光分析装置と本発明によるラザフォード分光分析装置とにより測定を行って得られた散乱イオンのエネルギースペクトルを比較したものであり、従来の装置で得られたスペクトルは符号10と符号11で示してある。 【0037】前述したように、従来の装置では検出器は1個のみであり、散乱角160°の位置に設置した。また、照射したイオンは、エネルギーが2000keV のヘリウムであり、照射量は20μCとした。なお、図2の10は基板であるシリコンによって散乱されたヘリウムイオンのピークである。また、11はヒ素によって散乱されるヘリウムのピークであり、100倍に拡大して示してあるが、きわめて微弱なピークしか検出されていない。 【0038】一方、本発明による装置で得たスペクトルは、12と13で示してある。本発明によるラザフォード後方散乱分光分析装置の実施例では、検出器は10個用いた。なお、照射するヘリウムのエネルギーと照射量は従来の装置による測定と同一にしている。 【0039】12は基板のシリコンによって散乱されたヘリウムのピークで、13はヒ素によって散乱されたヘリウムのピークであり、100倍に拡大して表示してある。図2から明らかなように、従来の装置では微弱なピークとしてしか検出されなかったヒ素のピークが、本発明の装置では、従来装置の10倍以上の強度で検出できた。」 (ウ)図1 (エ)図2 (オ)上記(イ)の【0037】の「従来の装置では検出器は1個のみであり、散乱角160°の位置に設置した。また、照射したイオンは、エネルギーが2000keV のヘリウムである」こと及び【0038】の「照射するヘリウムのエネルギーと照射量は従来の装置による測定と同一にしている」との記載により、「本発明によるラザフォード後方散乱分光分析装置の実施例」で照射するヘリウムのエネルギーは2000keVであると認められる。 (カ)ラザフォード後方散乱分光分析装置では、まず【0026】の(1式)及び(2式)から、「M:分析する元素の質量」を決定することが、当業者の技術常識であることから、引用文献1の「ラザフォード後方散乱分光分析装置」においても、【0026】の(1式)及び(2式)により、「M:分析する元素の質量」を決定していることは明らかである。 イ 上記アより、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「分析試料2にエネルギーがE_(0)のイオンを照射するとともに、イオンを照射しつつ、検出器4_(-1)から検出器4_(-n)までのすべての検出器を同時に作動させ、試料表面上に存在している質量がMの元素によって散乱されたイオンをn個の検出器4で同時に検出し、 散乱イオンのエネルギースペクトルを出力する方法であって、 ここで、照射したイオンは、エネルギーが2000keVのヘリウムであり、 イオンを分析試料2に照射した際に、試料表面で散乱されるイオンのエネルギーは、次の式で示されるエネルギーであり、 Ei=K(θi)E0・・・(1式) ただし、Eiは検出器4_(-i)で検出される散乱イオンのエネルギーであり、K(θi)は次の式によって決まる係数である、 K(θi)={(M^(2) -m^(2) sin^(2)θi)^(1/2) +mcos θi}^(2) /(M+m)^(2) ・・・(2式) θi:イオンが分析試料2に入射する方向と、イオンが分析試料2に入射する位置と検出器4_(-i)とを結ぶ線がなす角度 m:照射イオンの質量 M:分析する元素の質量 E0 :照射イオンのエネルギー E0 、m、Mは全ての検出器に共通であるものであって、 分析する元素の質量Mを前記(1式)及び(2式)により決定し、 前記検出器4_(-1)から検出器4_(-n)までの各検出器ごとの測定したエネルギースペクトルのずれを合成スペクトル生成器8で補正するとともに、加算して前記合成スペクトルを出力する方法。」 (3)対比・判断 ア 本願補正発明と引用発明1を対比する。 (ア)引用発明1の「分析試料2」及び「検出器4_(-1)?検出器4_(-n)」は、本願補正発明の「試料」及び「検出器」に、それぞれ相当する。 (イ)引用発明1の「エネルギーが2000keV のヘリウムであ」る「照射したイオン」は、本願補正発明の「イオンビーム」に相当する。また、引用発明1において、「イオンビームを発生させること」は自明のことである。 (ウ)引用発明1の「散乱イオン」は、本願補正発明の「粒子」及び「散乱イオン」に相当する。 (エ)引用発明1の「試料表面上に存在している質量がMの元素によって散乱されたイオン照射したイオンが試料によって散乱され」ることは、本願補正発明の「イオンビームを試料と相互作用させて、該試料から粒子を出すこと」に相当する。 (オ)引用発明1の「散乱イオンのエネルギーEi」は、本願補正発明の「粒子のエネルギー」及び「散乱イオンのエネルギー」に相当する。 (カ)引用発明1の「イオンが分析試料2に入射する方向と、イオンが分析試料2に入射する位置と検出器4_(-i)とを結ぶ線がなす角度θi」は、本願補正発明の「粒子の」「軌道の角度」及び「散乱イオンの」「軌道の角度」に相当する。 (キ)引用発明1において、「Eiは検出器4_(-i)で検出される散乱イオンのエネルギーであり、」「θi:イオンが分析試料2に入射する方向と、イオンが分析試料2に入射する位置と検出器4_(-i)とを結ぶ線がなす角度」であるから、「検出器4_(-1)から検出器4_(-n)までのすべての検出器を同時に作動させ、試料表面上に存在している質量がMの元素によって散乱されたイオンをn個の検出器4で同時に検出」することは、本願補正発明の「粒子のエネルギー及び軌道の角度」が「検出器によって検出された」ことに相当する。 すると、引用発明1の「イオンを照射しつつ、検出器4_(-1)から検出器4_(-n)までのすべての検出器を同時に作動させ、試料表面上に存在している質量がMの元素によって散乱されたイオンをn個の検出器4で同時に検出し、」「前記検出器4_(-1)から検出器4_(-n)までの各検出器ごとの測定したエネルギースペクトルのずれを合成スペクトル生成器8で補正するとともに、加算して前記合成スペクトルを出力する」ことは、本願補正発明の「検出器によって検出された粒子のエネルギー及び軌道の角度に基づく検出器からのスペクトル及び/又は画像を作り出すこと」に相当する。 (ク)引用発明1の「(1式)」及び「(2式)」に「散乱イオンのエネルギーEi」及び「イオンが分析試料2に入射する方向と、イオンが分析試料2に入射する位置と検出器4_(-i)とを結ぶ線がなす角度θi」が用いられていることから、引用発明1の「分析する元素の質量M」が「散乱イオンのエネルギーEi」及び「イオンが分析試料2に入射する方向と、イオンが分析試料2に入射する位置と検出器4_(-i)とを結ぶ線がなす角度θi」を用いて決定されることは明らかである。 すると、引用発明1の「イオンを分析試料2に照射した際に、試料表面で散乱されるイオンのエネルギーは、原理的に次の式で示されるエネルギーであり、 Ei=K(θi)E0・・・(1式) ただし、Eiは検出器4_(-i)で検出される散乱イオンのエネルギーであり、K(θi)は次の式によって決まる係数である、 K(θi)={(M^(2) -m^(2) sin^(2)θi)^(1/2) +mcos θi}^(2) /(M+m)^(2) ・・・(2式) θi:イオンが分析試料2に入射する方向と、イオンが分析試料2に入射する位置と検出器4_(-i)とを結ぶ線がなす角度 m:照射イオンの質量 M:分析する元素の質量 E0 :照射イオンのエネルギー E0 、m、Mは全ての検出器に共通であるものであって、 分析する元素の質量Mを前記(1式)及び(2式)により決定」することは、本願補正発明の「前記散乱イオンを散乱する前記試料の表面での原子の質量は、前記散乱イオンのエネルギー及び軌道の角度を用いて決定される」ことに相当する。 イ 上記アより、本願補正発明と引用発明1は、 「イオンビームを発生させることと、 イオンビームを試料と相互作用させて、該試料から粒子を出すことと、 検出器によって検出された粒子のエネルギー及び軌道の角度に基づく検出器からのスペクトル及び/又は画像を作り出すことと、 を含み、 前記粒子が、散乱イオンであり、 前記散乱イオンを散乱する前記試料の表面での原子の質量は、前記散乱イオンのエネルギー及び軌道の角度を用いて決定される 方法。」 の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 <相違点1> 本願補正発明では、「気体を気体電界イオン源と相互作用させることによって、イオンビームを発生させる」のに対し、引用発明1では、「エネルギーが2000keV のヘリウムであ」る「照射したイオン」を、どのように発生させるかが明らかでない点。 ウ 相違点1の判断 気体を気体電界イオン源と相互作用させることによって、イオンビームを発生させることは、周知技術(例えば、特開昭61-171048号公報の特に特許請求の範囲、第3頁右上欄、第1、2図、特開平2-230641号公報の特に第3頁右上欄、第2図(a)参照。)であり、また、気体電界イオン源をイオンビームを偏向して被分析体表面をスイープする分析装置に用いることも知られている(特開昭61-171048号公報の特に特許請求の範囲、第4頁左下欄参照。)ことから、引用発明1の「エネルギーが2000keV のヘリウムであ」る「照射したイオン」を発生させる手段として、上記周知技術を採用して「気体を気体電界イオン源と相互作用させることによって、イオンビームを発生させる」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 エ 効果について そして、本願補正発明が奏する作用効果も、引用発明1及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。 オ 結論 よって、本願補正発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)独立特許要件についての小括 以上検討のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものである。 4 本件補正についての結び 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成24年2月16日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし52に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項26に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」「1」において、本件補正前の特許請求の範囲の請求項26として示したとおりのものである。 2 刊行物、各刊行物の記載事項及び引用発明の認定 (1)原査定の拒絶の理由に用いられた、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平8-220030号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付与した。)。 ア「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、試料表面近傍層に存在する水素原子をはじめとする軽元素原子の存在分布を求める表面分析方法およびその表面分析装置に関するものである。」 イ「【0012】 【実施例】図1は、本発明に係る表面分析方法および分析装置の一実施例を説明する図である。 【0013】ここで、試料表面近傍層に水素原子を含んだ試料1に、数100keVに加速しエネルギーの揃ったイオンビーム2を照射する。試料1の表面近傍層において、照射イオンは水素原子を反跳し、反跳された水素原子の一部はイオンとなり、表面で散乱された入射イオンとともに3の方向にさまざまなエネルギーを持って向かう。6は静電型エネルギー分析器であり、3の粒子のうち一定のエネルギーを持つイオンのみを通過させる。7は極薄膜フィルタであり、静電型エネルギー分析器6によってエネルギー分析された水素イオンと散乱イオンの内、水素イオンのみを選択的に透過させる。8は粒子検出器であり、極薄膜フィルタ7を通過した水素イオンの数をカウントする。粒子検出器8に位置感応型の粒子検出器を用いることにより、反跳水素イオンの角度分布を求めることができる。」 ウ「【0015】図3は、300keVのヘリウムイオンをプローブとした場合の、反跳水素イオンの反跳角と反跳水素イオンのエネルギーとの関係を示す図である。反跳角10度から30度の間で、図2で示した1.5ミクロン厚さのアルミニウム薄膜により、有効に選別できるエネルギーとなる。1.5ミクロンのアルミニウム薄膜を用いた場合、エネルギー分析の後にアルミニウム薄膜を通過した粒子は、7?50keVのエネルギーを持つ。このエネルギーは、表面下数100オングストローム内部まで表面近傍層の水素分析を可能にするエネルギーである。」 オ 図1 カ 図3 (2)上記(1)より、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「試料表面近傍層に水素原子を含んだ試料1に、イオンビーム2を照射し、 前記試料1の表面近傍層において、照射イオンは水素原子を反跳し、反跳された水素原子の一部はイオンとなり、表面で散乱された入射イオンとともに静電型エネルギー分析器6の方向にさまざまなエネルギーを持って向かい、静電型エネルギー分析器6により散乱イオン3及び反跳イオンの粒子のうち一定のエネルギーを持つイオンのみを通過させ、極薄膜フィルタ7により、前記静電型エネルギー分析器6によってエネルギー分析された水素イオンと散乱イオンの内、水素イオンのみを選択的に透過させ、粒子検出器8により、前記極薄膜フィルタ7を通過した水素イオンの数をカウントし、前記粒子検出器8に位置感応型の粒子検出器を用いることにより、反跳水素イオンの角度分布を求め、 300keVのヘリウムイオンをプローブとした場合の、反跳水素イオンの反跳角と反跳水素イオンのエネルギーとの関係を示す図を作成する、 表面分析方法。」 (3)対比・判断 ア 対比 (ア)引用発明2の「イオンビーム2」、「試料1」及び「水素イオン」は、本願発明の「イオンビーム」、「試料」及び「粒子」に、それぞれ相当する。 (イ)引用発明2において、「イオンビーム2」が発生していることは自明のことである。 また、引用発明2の「試料1の表面近傍層において、照射イオンは水素原子を反跳し、表面で散乱された入射イオンとともに静電型エネルギー分析器6の方向にさまざまなエネルギーを持って向か」うことは、本願発明の「イオンビームを試料と相互作用させて、該試料から粒子を出すこと」に相当する。 (ウ)引用発明2の「粒子検出器8」において「カウント」された「水素イオンの数」は、「静電型エネルギー分析器6によって」「一定のエネルギーを持つイオンのみを通過させ」、「極薄膜フィルタ」により「水素イオンのみを選択的に透過させ」た「水素イオン」の数であり、また、引用発明2の「反跳水素イオンの角度分布」は「粒子検出器8に位置感応型の粒子検出器を用いることにより、」「求め」られたものであるから、引用発明2の「反跳水素イオンの反跳角と反跳水素イオンのエネルギーとの関係」は、「静電型エネルギー分析器6によって」「通過させ」て「粒子検出器8」によって検出された「反跳水素イオンのエネルギー」及び「反跳水素イオンの角度」に基づくものといえる。 (エ)引用発明2の「反跳水素イオンの反跳角と反跳水素イオンのエネルギーの関係を示す図」は、本願発明の「粒子のエネルギー及び軌道の角度に基づく」「スペクトル及び又は画像」に相当する。 (オ)上記(ウ)ないし(エ)より、引用発明2の「静電型エネルギー分析器6により、反跳されたイオン及び散乱されたイオン3の粒子のうち一定のエネルギーを持つイオンのみを通過させ、極薄膜フィルタ7により、前記静電型エネルギー分析器6によってエネルギー分析された水素イオンと散乱イオンの内、水素イオンのみを選択的に透過させ、粒子検出器8により、前記極薄膜フィルタ7を通過した水素イオンの数をカウントし、前記粒子検出器8に位置感応型の粒子検出器を用いることにより、反跳水素イオンの角度分布を求め、 300keVのヘリウムイオンをプローブとした場合の、反跳水素イオンの反跳角と反跳水素イオンのエネルギーとの関係を示す図を作成する、 表面分析方法」は、本願発明の「検出器によって検出された粒子のエネルギー及び軌道の角度に基づく検出器からのスペクトル及び/又は画像を作り出すことと、を含む」「方法」に相当する。 イ 上記アより、本願発明と引用発明2は、 「イオンビームを発生させることと、 イオンビームを試料と相互作用させて、該試料から粒子を出すことと、 検出器によって検出された粒子のエネルギー及び軌道の角度に基づく検出器からのスペクトル及び/又は画像を作り出すことと、 を含む、方法」 の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 <相違点2> 本願発明では、「気体を気体電界イオン源と相互作用させることによって、イオンビームを発生させる」のに対し、引用発明2では、「300keVのヘリウムイオン」である「イオンビーム2」であることにとどまり、「イオンビーム2」を、どのように発生させるかが明らかでない点。 ウ 相違点2の判断 気体を気体電界イオン源と相互作用させることによって、イオンビームを発生させることは、周知技術(例えば、特開昭61-171048号公報の特に特許請求の範囲、第3頁右上欄、第1、2図、特開平2-230641号公報の特に第3頁右上欄、第2図(a)参照。)であり、また、気体電界イオン源をイオンビームを偏向して被分析体表面をスイープする分析装置に用いることも知られている(特開昭61-171048号公報の特に特許請求の範囲、第4頁左下欄参照。)ことから、引用発明2の「300keVのヘリウムイオン」である「イオンビーム2」を発生させる手段として、上記周知技術を採用して「気体を気体電界イオン源と相互作用させることによって、イオンビームを発生させる」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 エ 効果について そして、本願発明が奏する作用効果も、引用発明2及び周知技術から当業者が予測できる域を超えるものではない。 オ 結論 よって、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 結び 以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-12 |
結審通知日 | 2015-06-16 |
審決日 | 2015-06-29 |
出願番号 | 特願2008-543317(P2008-543317) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 仁美、田邉 英治 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
山口 剛 井口 猶二 |
発明の名称 | イオン源、システム及び方法 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 神 紘一郎 |