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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1307931
審判番号 不服2014-14345  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-23 
確定日 2015-12-15 
事件の表示 特願2009-209838「情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日出願公開、特開2011- 60048、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年9月10日の出願であって,平成24年8月7日に審査請求がされ,平成25年11月27日付けで拒絶理由が通知され,平成26年1月28日に意見,手続補正がされ,平成26年4月22日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,平成26年7月23日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正がされ,平成26年9月17日付けで特許法第164条第3項に定める報告がされ,その後,当審において平成27年6月29日付けで平成26年7月23日付けの手続補正に対し補正の却下の決定と共に拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,平成27年8月31日に意見,手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1乃至11に係る発明は,平成27年8月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「パイプライン処理を実行するパイプライン処理実行部と,
前記パイプライン処理実行部へ第1命令を発行する第1命令部と,前記第1命令よりも優先順位の低い第2命令を前記パイプライン処理実行部へ発行する第2命令部とを有する命令発行制御部と
を具備し,
前記第1命令部は,前記第1命令を前記パイプライン処理実行部へ発行し,前記第1命令の情報である命令発行確定信号を前記第2命令部へ出力し,
前記第2命令部は,
前記第2命令を格納する命令発行キューと,
前記命令発行確定信号に含まれる情報から前記第1命令の情報を読み取り,前記第1命令の演算器使用サイクル数が1であるか否かを判定し,前記第1命令の演算器使用サイクル数が1である場合,処理サイクル数1信号を出力する直前命令処理数認識部と,
所定の第1クロックにおいて前記処理サイクル数1信号を受け取り,命令発行抑止信号を出力しないように制御する命令発行抑止信号生成部と,
を備え,
前記第2命令部は,前記第1クロックで前記命令発行抑止信号を出力しないことによって,前記第1クロックに連続する第2クロックで,前記パイプライン処理実行部へ前記第2命令を発行する
情報処理装置。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由である平成25年11月27日付けの拒絶理由通知(以下,原審拒絶理由」という)には,以下の事項が記載されている。
『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



[請求項]1,2,5-7,10,11
[引用文献]1,2又は3
[備考]
引用文献1には,複数の発行ステージ(実施例ではA0発行ステージ6とM0発行ステージ8)を備え,各発行ステージとも,発行ステージの順序フラグ5,7を参照し,自ステージにある命令よりも前に発行されるべき命令が無く,かつ演算器毎のビジーフラグ9を参照し,発行しようとする演算器がビジーでなければ命令を発行する(発行しようとする演算器がビジーであれば発行を抑止する)発明が記載されている(段落10,図1)。
前記順序フラグは,自命令が発行ステージにセットされる時点で,他の発行ステージに自命令より順序が先である命令が存在することを示すものであり,1つの発行ステージから命令を発行すると他の発行ステージに通知し,通知を受けた発行ステージは対応する「順序フラグ」をリセットするものであって,本願発明の「優先度」を表すものである。
即ち,引用文献1に記載の発明は,優先度の高い命令から順に発行するものである。
引用文献1に記載の発明の,複数の発行ステージのうち,優先度の高い命令を発行する発行ステージが本願発明の「第1命令部」に相当し,優先度の低い命令を発行する発行ステージが本願発明の「第2命令部」に相当する。
引用文献1に記載の発明は,ビジーフラグに基づいて命令の発行/抑止を制御することは記載されているものの,本願発明の「処理サイクル数1信号」に基づいた発行/抑止制御を行っていない点で本願発明と相違する。
この相違点について検討する。
次のクロックサイクルで演算器の演算が終了し演算器のビジーが解除されることを先見して次の命令の発行/抑止制御を行う手法(本願発明の「処理サイクル数1信号」に基づいた発行/抑止制御に相当)は,例えば引用文献2(5頁右下欄16行目?6頁右上欄9行目,第4図)及び引用文献3(段落22,図1)に記載のように周知の技術であり,引用文献1に記載の発明のビジーフラグのチェックに適用することは,当業者であれば容易に推考し得ることである。
よって,請求項1,2,5-7,10,11に係る発明は,引用文献1,引用文献2又は3に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

[引用文献一覧]
1.特開2008-269067号公報
2.特表平4-502824号公報
3.特開平8-161168号公報
4.特開平1-224871号公報』

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項及び引用発明の認定
(1-1)引用文献1の記載事項
本願の出願日前に頒布され,原査定の理由である原審拒絶理由において引用された特開2008-269067号公報(以下,「引用文献1」という。)には,関連図面とともに以下の事項が記載されている。(当審注;下線は,参考のために当審で付与した。)

A 「【0010】
図1を参照すると,本発明の一実施形態としてのベクトル処理装置の発行制御部が示されている。図1において,1は命令デコードステージ1,2は命令デコーダ,3は命令デコードステージ2,4はリソース一致検出回路,5は6のA0発行ステージ(加算器系)にセットされた命令のA0発行ステージ(加算器系)順序フラグ,6はA0命令発行ステージ(加算器系),7は8のM0発行ステージ(乗算器系)にセットされたM0発行ステージ(乗算器系)命令の順序フラグ,8はM0命令発行ステージ(乗算器系),9はビジーフラグ,10はA0命令発行ステージの命令発行チェック回路,11はM0命令発行ステージの命令発行チェック回路,12はA0発行ステージの発行指示,13はM0発行ステージの発行指示で構成される。順序フラグとは,自命令が発行ステージにセットされる時点で,他の発行ステージに自命令より順序が先である命令が存在することを示すフラグである。順序フラグには他の発行ステージに対応したフラグがそれぞれあり,順序フラグに対応した発行ステージの命令が発行された時点でリセットされ,順序フラグが全てリセットになった時点で自命令のリクエストに対応したビジーフラグをチェックして発行可能になる。発行ステージにセットされている未発行の先行命令と後続命令間の発行順序はリソース一致がある場合は順序フラグで発行管理し,発行済みの命令はビジーフラグで後続命令を発行管理する。以下説明を容易にする為,順序フラグと発行ステージの組み合わせを5,6と7,8の2個で説明する。1の命令デコードステージ1にセットされた命令は,2の命令デコーダで命令が使用するリソースのリクエストにデコードされ,3の命令デコードステージ2に格納される。発行ステージ6,8が空いていれば次クロックで発行ステージにセット可能だが空いていなければ空くまで待たされる。先行命令が6,8の発行ステージにある場合,3の命令デコードステージ2のリクエストと命令発行ステージ6,8のリクエストの関係に一致があるかを4のリソース一致検出回路で検出する。検出結果は,命令発行ステージ6が空けば5のA0発行ステージ順序フラグにセットされ,命令発行ステージ8が空けば7のM0発行ステージ順序フラグにセットされる。3の命令デコードステージ2に格納された命令リクエストは,命令発行ステージ6が空けば命令発行ステージ6にセットされ,命令発行ステージ8が空けば命令発行ステージ8にセットされる。命令発行ステージ6,8が空いている場合は命令順や命令種別の規則に従ってセットされる。10のA0発行チェック回路は,6のA0命令発行ステージの命令リクエストに対応するリソースが空いているかを9のビジーフラグでチェックするのと,先行命令に順序を保障しなければならない命令があるかを5のA0順序フラグでチェックする。両チェックがOKになると12の命令発行指示が点灯し,6のA0命令発行ステージの命令リクエストに対応した9のビジーフラグがセットされ,7のM0発行ステージ順序フラグ内のA0命令発行ステージに対応した順序フラグがリセットされる。同様に11のM0発行チェック回路は,8のM0命令発行ステージの命令リクエストに対応するリソースが空いているかを9のビジーフラグでチェックするのと,先行命令に順序を保障しなければならない命令があるかを7のM0順序フラグでチェックする。両チェックがOKになると13の命令発行指示が点灯し,8のM0命令発行ステージの命令リクエストに対応した9のビジーフラグがセットされ,5のA0発行ステージ順序フラグ内のM0命令発行ステージに対応した順序フラグがリセットされる。上記の説明で発行ステージにセットされた時点での複数の発行ステージにセットされている先行命令との関係を順序フラグで示すことにより順序が保障され,順序フラグが全てリセットになった時点で発行が可能になり後続の命令でも先行命令とのリソースの一致がなければ先行命令を複数追い越しての発行が可能になる。」

B「【0017】
本発明の順序FLAGとは発行(演算実行)する前の順序を示す手段でDATAを壊さない様に順序を決める。命令を発行するステージを発行ステージと呼んでいるが、発行ステージにある命令は未発行であり、後続の命令が発行ステージにSETされる時には自分よりも前に発行ステージにSETされた命令との関係を知る必要がありリソースの一致が検出された場合は相手に対応する順序FLAGを発行ステージSETと同時にSETする。SETされた順序FLAGは順序FLAGに対応する発行ステージの命令が発行(演算実行)と同時にRESETされる。後続命令は順序FLAGが全てRESETされて発行の権利を得ることができる。次に発行の権利を得た発行ステージの命令は自分のリソースに対応するBUSY FLAGをチェックする。対応するBUSY FLAGが全てRESETされたことをチェックして発行(演算実行)する」

(1-2)引用発明の認定
ア 上記Aの「本発明の一実施形態としてのベクトル処理装置の発行制御部が示されている。」との記載から,引用文献1には,“ベクトル処理装置及びその発行制御部”の構成が記載されている。

イ 上記Aの「図1において,1は命令デコードステージ1,2は命令デコーダ,3は命令デコードステージ2」及び「1の命令デコードステージ1にセットされた命令は,2の命令デコーダで命令が使用するリソースのリクエストにデコードされ,3の命令デコードステージ2に格納される。発行ステージ6,8が空いていれば次クロックで発行ステージにセット可能だが空いていなければ空くまで待たされる。」との記載から,引用文献1には“命令をセットする命令デコードステージ(1)と,命令が使用するリソースのリクエストをデコードする命令デコーダ(2)と,発行ステージが空いていればセットし,空いていなければ空くまで待つ命令デコードステージ2(3)”が記載されている。

ウ 上記Aの「図1において,(中略)4はリソース一致検出回路,5は6のA0発行ステージ(加算器系)にセットされた命令のA0発行ステージ(加算器系)順序フラグ,6はA0命令発行ステージ(加算器系),7は8のM0発行ステージ(乗算器系)にセットされたM0発行ステージ(乗算器系)命令の順序フラグ,8はM0命令発行ステージ(乗算器系),9はビジーフラグ,(中略),先行命令が6,8の発行ステージにある場合,3の命令デコードステージ2のリクエストと命令発行ステージ6,8のリクエストの関係に一致があるかを4のリソース一致検出回路で検出する。検出結果は,命令発行ステージ6が空けば5のA0発行ステージ順序フラグにセットされ,命令発行ステージ8が空けば7のM0発行ステージ順序フラグにセットされる。」との記載,上記Bの「本発明の順序FLAGとは発行(演算実行)する前の順序を示す手段でDATAを壊さない様に順序を決める。命令を発行するステージを発行ステージと呼んでいるが、発行ステージにある命令は未発行であり、後続の命令が発行ステージにSETされる時には自分よりも前に発行ステージにSETされた命令との関係を知る必要がありリソースの一致が検出された場合は相手に対応する順序FLAGを発行ステージSETと同時にSETする。」との記載から,引用文献1には,“リクエストとリソースの一致を検出するリソース一致検出回路(4)と,命令が発行ステージにセットされる時点で,順序が先である命令が存在するかを示す順序フラグを記録するA0順序フラグ(5)及びM0順序フラグ(7)と,発行された命令を処理するA0発行ステージ(6)及びM0発行ステージ(8)”が記載されている。

エ 上記Aの「図1において,(中略),10はA0命令発行ステージの命令発行チェック回路,11はM0命令発行ステージの命令発行チェック回路,12はA0発行ステージの発行指示,13はM0発行ステージの発行指示で構成される。(中略),10のA0発行チェック回路は,6のA0命令発行ステージの命令リクエストに対応するリソースが空いているかを9のビジーフラグでチェックするのと,先行命令に順序を保障しなければならない命令があるかを5のA0順序フラグでチェックする。両チェックがOKになると12の命令発行指示が点灯し,6のA0命令発行ステージの命令リクエストに対応した9のビジーフラグがセットされ,7のM0発行ステージ順序フラグ内のA0命令発行ステージに対応した順序フラグがリセットされる。同様に11のM0発行チェック回路は,8のM0命令発行ステージの命令リクエストに対応するリソースが空いているかを9のビジーフラグでチェックするのと,先行命令に順序を保障しなければならない命令があるかを7のM0順序フラグでチェックする。両チェックがOKになると13の命令発行指示が点灯し,8のM0命令発行ステージの命令リクエストに対応した9のビジーフラグがセットされ,5のA0発行ステージ順序フラグ内のM0命令発行ステージに対応した順序フラグがリセットされる。」との記載から,引用文献1には“ビジーフラグにより命令リクエストに対応したリソースが空いているかチェックし,順序フラグにより先行命令に順序を保証しなければならない命令があるかをチェックするA0発行チェック回路(10)及びM0発行チェック回路(11)と, 発行しようとする演算器がビジーで無く,かつ自ステージにある命令よりも前に発行されるべき命令が無い場合に命令を発行するA0発行ステージの発行指示(12)及びM0発行ステージの発行指示(13)”が記載されている。

オ 上記ア乃至エの検討より,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「ベクトル処理装置において,
命令をセットするデコードステージ(1)と,
命令が使用するリソースのリクエストをデコードする命令デコーダ(2)と,
発行ステージが空いていればセットし,空いていなければ空くまで待つ命令デコードステージ2(3)と,
リクエストとリソースの一致を検出するリソース一致検出回路(4)と,
命令が発行ステージにセットされる時点で,順序が先である命令が存在するかを示す順序フラグを記録するA0順序フラグ(5)及びM0順序フラグ(7)と,
発行指示された命令を処理するA0発行ステージ(6)及びM0発行ステージ(8)と,
ビジーフラグにより命令リクエストに対応したリソースが空いているかチェックし,順序フラグにより先行命令に順序を保証しなければならない命令があるかをチェックするA0発行チェック回路(10)及びM0発行チェック回路(11)と,
発行しようとする演算器がビジーで無く,かつ自ステージにある命令よりも前に発行されるべき命令が無い場合に命令を発行するA0発行ステージの発行指示(12)及びM0発行ステージの発行指示(13)と,
を備えることを特徴とする発行制御部」

(1-3)引用文献2の記載事項
本願の出願日前に頒布され,原査定の理由である原審拒絶理由において引用された特表平4-502824号公報(以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。

C「第4図は最初の3図面よりもより一般的な説明を提供している。
フェーズ-8において,命令語が選択回路11に入る。命令群選択信号38はフェーズ-7においてどの命令群を選択すべきかを選択回路11に告げる。フェーズ-7において,命令群はデコード回路12.13に送られる。フェーズ-6において,デコードプロセスが始まる。フェーズ-4において,デコードプロセスは完了し信号19および20が発生され,どの供給源が命令によって要求されているかを示す。フェーズ-3において,衝突チェック14.15.24.26.32.33.34.35あるいは36が始まり,現在ビジーであり,あるいは将来ビジーとなる供給源を,現に要求されている供給源と比較する。もし衝突が発生するならば,-次衝突信号22.28.29あるいは37が発生される。もし-次衝突が信号されれば,命令発行はフェーズ0において発生せず,信号発生23はドロップする。フェーズ0において,二次衝突39と呼ばれる今一つの信号が発生されることがある。二次衝突信号39とは,-次衝突信号22.28.29あるいは37を起した供給源衝突が依然存在し,従って命令発行は保留されねばならないことを意味する。
従って先見越しの命令発行制御においては,命令発行を1クロック期間保留させる一次衝突信号を発生し得る一連のチェックが命令発行に先立って行われる。もし衝突がlクロック期間内に解決されないならば,二次衝突信号が追加のクロック期間に対して発生される。衝突が解決されるまでその後の各クロック期間,二次衝突信号は命令発行が発生されるのを防止する。衝突が究極的に解決された時,二次衝突信号は消滅し命令は発行される。その時点,即ち命令発行が当初に発生を予定された時点より十Nフェーズ経過時に,供給源保留フラグが命令発行制御によりセットされる。」(第5頁右下欄16行?第6頁右上欄9行)

(1-4)引用文献3の記載事項
本願の出願日前に頒布され,原査定の理由である原審拒絶理由において引用された特開平8-161168号公報(以下,「引用文献3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。

D「【0022】命令発行制御回路2は,これら構造的ハザードが発生する場合に,資源の競合を解決するために調停回路を持ち調停を行う。例えば命令流a,bともに同一サイクルで基本命令実行回路10への使用要求が機能ユニット使用要求線5を使って命令解読回路1から出されたとする。この場合,命令発行制御回路2は基本命令実行回路10が次サイクルで使用可能かどうかを基本命令状態線13を用いて知り,使用可能な場合には命令発行制御回路2にある調停回路14を用いて命令流a,bのどちらの命令を発行するかを決定する。
【0023】この調停回路14は元来,複数命令流を実行するデータ処理装置において実行回路が命令流の数と同数かそれ以上用意されていない場合には必ず存在し,複数命令流からの使用要求の調停を行う。次にマルチサイクル命令の場合の動作を説明する。命令解読回路1で解読された命令がマルチサイクル命令であった場合,この命令が発行可能かどうかはマルチサイクル命令解読管理回路3が管理しており,そのサイクルでマルチサイクル命令が解読中でさらに次サイクルで継続して解読するか否かを命令発行制御回路2に伝える。」

(2)対比
(ア)引用発明の「ベクトル処理装置」はパイプライン処理を実行する「情報処理装置」と解せるので,引用発明における「発行指示された命令リクエストを処理するA0発行ステージ(6)及びM0発行ステージ(8)」は本願発明における「パイプライン処理を実行するパイプライン処理実行部」に相当する。

(イ)引用発明の「命令が発行ステージにセットされる時点で,順序が先である命令が存在するかを示す順序フラグを記録するA0順序フラグ(5)及びM0順序フラグ(7)と,ビジーフラグにより命令リクエストに対応したリソースが空いているかチェックし,順序フラグにより先行命令に順序を保証しなければならない命令があるかをチェックするA0発行チェック回路(10)及びM0発行チェック回路(11)」は,自命令が発行ステージにセットされる時点で,他発行ステージに自命令より順序が先である命令が存在することを順序フラグで示すものであり,本願発明の「優先順位」を表すものといえる。そうすると,引用発明における「発行しようとする演算器がビジーで無く,かつ自ステージにある命令よりも前に発行されるべき命令が無い場合に命令を発行するA0発行ステージの発行指示(12)及びM0発行ステージの発行指示(13)」は,複数の発行ステージのうち,優先順位の高い命令を発行する発行ステージが本願発明の「第1命令部」に相当し,優先順位の低い命令を発行する発行ステージが本願発明の「第2命令部」に相当するので,本願発明における「前記パイプライン処理実行部へ第1命令を発行する第1命令部と,前記第1命令よりも優先順位の低い第2命令を前記パイプライン処理実行部へ発行する第2命令部とを有する命令発行制御部」に相当する。

(ウ)引用発明の「発行指示された命令を処理するA0発行ステージ(6)及びM0発行ステージ(8)」は,本願発明の「パイプライン処理実行部」といえるので,引用発明における「発行しようとする演算器がビジーで無く,かつ自ステージにある命令よりも前に発行されるべき命令が無い場合に命令を発行するA0発行ステージの発行指示(12)及びM0発行ステージの発行指示(13)」は,本願発明における「前記第1命令部は,前記第1命令を前記パイプライン処理実行部へ発行し,前記第1命令の情報である命令発行確定信号を前記第2命令部へ出力」することとは,後記する点で相違するものの,“命令部は,確定した命令を前記パイプライン処理実行部へ発行する”点で共通する。

(エ)引用発明の「発行ステージが空いていればセットし,空いていなければ空くまで待つ命令デコードステージ2(3)」は,本願発明の「前記第2命令を格納する命令発行キュー」とは,後記する点で相違するものの“命令を格納する命令発行キュー”を備える点で共通する。

本願発明と引用発明とを対比すると,以下の点で一致し,相違する。
<一致点>
「パイプライン処理を実行するパイプライン処理実行部と
前記パイプライン処理実行部へ第1命令を発行する第1命令部と,前記第1命令よりも優先順位の低い第2命令を前記パイプライン処理実行部へ発行する第2命令部とを有する命令発行制御部を具備し,
命令部は,確定した命令を前記パイプライン処理実行部へ発行し,
命令を格納する命令発行キュー
を備える情報処理装置」

<相違点>
(2-1)相違点1
本願発明では「第1命令部の情報である命令確定信号を第2命令部へ出力」しているのに対して,引用発明では特定されていない点。
(2-2)相違点2
本願発明では,「命令発行確定信号に含まれる情報から前記第1命令の情報を読み取り,前記第命令の演算器使用サイクル数が1であるか否かを判定し,前記第1命令の演算器使用サイクル数が1である場合,処理サイクル数1信号を出力する直前命令処理数認識部と,所定の第1クロックにおいて前記処理サイクル数1信号を受け取り,命令発行抑止信号を出力しないように制御する命令抑止信号生成部と,を備え,前記第2命令部は,前記第1クロックで前記命令発行抑制信号を出力しないことによって,前記第1クロックに連続する第2クロックで,前記パイプライン処理実行部へ前記第2信号を発行する」のに対して,引用発明では特定されていない点。

(3)判断
(3-1)相違点1について
引用発明の「A0発行ステージの発行指示(12)」及び「M0発行ステージの発行指示(13)」は,命令発行指示されると「順序フラグ」がリセットすることから,一方の発行ステージが命令発行した情報を他方の発行ステージが取得できると解せる。すなわち,本願発明の「第1命令部の情報である命令確定信号を第2命令部へ出力」することに格別の困難性が認められない。
よって,相違点1は格別なものではない。
(3-2)相違点2について
原審拒絶理由で引用した引用文献2及び3には,次のクロックサイクルで演算器の演算が終了し演算器のビジーが解除されることを先見して次の命令の発行/抑止制御を行う手法が記載されているものの,本願発明の「命令発行確定信号に含まれる情報から前記第1命令の情報を読み取り,前記第命令の演算器使用サイクル数が1であるか否かを判定し,前記第1命令の演算器使用サイクル数が1である場合,処理サイクル数1信号を出力する直前命令処理数認識部と,所定の第1クロックにおいて前記処理サイクル数1信号を受け取り,命令発行抑止信号を出力しないように制御する命令抑止信号生成部」の態様は記載も示唆もされていない。
更に,本願発明の「前記第1クロックに連続する第2クロックで,前記パイプライン処理実行部へ前記第2信号を発行する」ことにより,本願発明の目的である「動作クロックが向上してビジーフラグの更新が遅れる場合でも,パイプライン演算器の使用効率を低下させずに処理できる情報処理装置を提供する」ことを可能にするものである。

(4)小括
したがって,本願発明は,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また,本願請求項8及び10に係る発明は本願発明とカテゴリ違いであり,本願請求項2乃至7及び11に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるので,同様に,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
さらに当審において職権により先行技術の探査を行ったが,本願発明の進歩性を否定する先行技術を発見できなかった。
よって,原査定の理由によって,本願を拒絶することができない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由に概要
当審拒絶理由には以下の事項が記載されている。
『理由A:この出願は,発明の詳細な説明の記載が,下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1?6,10
当該請求項に係る発明には「命令発行確定信号に基づいて」と記載されているが,「命令発行確定信号」に「基づく」ことが,「命令発行確定信号」に含有される情報に基づくと解するのか,「命令発行確定信号」の発行タイミングに基づくと解するのかが,不明である。
発明の詳細な説明の段落【0021】-【0025】(図2A乃至図2Dに関する記載)には「命令発行確定信号」について記載されているものの,「命令発行確定信号」に「命令が使用するリソースを示す使用リソース情報」や「命令の演算TAT情報」が含まれる構成であるか否かが不明であり,「命令発行確定信号に基づいて」を如何に実施するのかが,発明の詳細な説明に記載されていない。そうすると,発明の詳細な説明は当該請求項に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。


理由B:この出願は,特許請求の範囲の記載が,下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)請求項1,5,6,8,10について
当該請求項に係る発明には「第1クロック」及び「第2クロック」と記載されているが,「第1クロック」が何に対しての「第1」なのかが明確でない。つまり,どのようなタイミングのクロックのことを意味しているのかが,明確ではない。段落【0089】?【0102】には「クロック2」又は「クロック3」の処理について記載されているものの,当該請求項に係る発明の「第1クロック」との対応が不明である。

(3)請求項2,4,7,10について
当該請求項に係る発明には「第1命令が使用する第1リソースの情報」と「第2命令が使用する第2リソースの情報」と記載されているが,「第1リソース」と「第2リソース」が異なるリソースと解するのか,同じリソースも含むと解するのかが明確でない。また,段落【0023】「命令が使用するリソースを示す使用リソース情報」との対応が不明である。

(4)請求項3,4,8,9について
当該請求項に係る発明には「演算TAT」又は「演算TAT情報」と記載されているが,それらの違いが不明である。』

2 当審拒絶理由の判断
平成27年8月31日付け手続補正書によって,当審拒絶理由で指摘した請求項(以下,「補正前請求項」という。)に対して,以下の補正が行われた。
(1)当審拒絶理由で指摘した補正前請求項1の「前記命令確定信号に基づいて」は「前記命令発行確定信号に含まれる情報から前記第1命令の情報を読み取り」と補正された。このことにより,「前記命令確定信号」に「基づく」ことが明確になった。よって,当審拒絶理由(1)は解消した。
(2)当審拒絶理由で指摘した補正前請求項1の「第1クロック」は,「所定の第1クロック」及び「前記第1クロック」と補正された。このことにより,「第1クロック」が何に対しての「第1」なのかが明確になった。よって,当審拒絶理由(2)は解消した。
(3)当審拒絶理由で指摘した補正前請求項2の「前記第1命令と前記第2命令とが同一リソースを使用するか否かを判定し,同一リソースを使用しない場合」は「前記第1命令が使用する第1リソースと前記第2命令が使用する第2リソースとが同じリソースを含むか否かを判定し,前記第1リソースおよび前記第2リソースが同じリソースを含まない場合」と補正された。このことにより,「第1命令が使用する第1リソースの情報」と「第2の命令が使用する第2リソースの情報」とに同じリソースも含むことが明確になった。よって,当審拒絶理由(3)は解消した。
(4)当審拒絶理由で指摘した補正前請求項3の「演算TAT情報」と「演算TAT」について,「演算TAT情報」に含まれる「演算TAT」を比較する補正がなされた。このことにより,「演算TAT」と「演算TAT情報」との違いは明確になった。よって,当審拒絶理由(4)は解消した。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-12-01 
出願番号 特願2009-209838(P2009-209838)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三坂 敏夫  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 高木 進
須田 勝巳
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム  
代理人 工藤 実  
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