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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1308113
審判番号 不服2014-15790  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-08 
確定日 2015-11-25 
事件の表示 特願2012-168650「信頼される処理技術を使用したデジタル権利管理」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月27日出願公開、特開2012-257292〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2006年5月5日(以下「優先日」と記す。)のアメリカ合衆国での出願を基礎とするパリ条約に基づく優先権主張を伴って、2007年5月4日に国際出願され、平成20年11月5日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面及び、特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文が提出された特願2009-509765号を原出願とする特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(以下「分割出願」と記す。)として、平成24年7月30日付けで出願されたものであって、平成24年8月29日付けで手続補正書が提出されるとともに、同日付けで上申書が提出されて、同日付けで審査請求がなされ、平成25年7月10日付けで拒絶理由通知(平成25年7月16日発送)がなされ、平成25年11月8日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、平成25年11月22日付けで最後の拒絶理由通知(平成25年11月26日発送)がなされ、平成26年3月20日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、平成26年4月4日付けで上記平成26年3月20日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(平成26年4月8日謄本発送、送達)がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(平成26年4月8日謄本発送、送達)がなされたものである。
これに対して、「『原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする。』、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成26年8月8日付けで本件審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出された。
そして、平成26年11月28日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成27年1月13日付けで上申書が提出された。

第2 平成26年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年8月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成26年8月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成25年11月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項27の記載

「【請求項1】
要求するエンティティ(RE)と、ターゲットエンティティ(TE)との間でデジタル著作権管理(DRM)を実行するための方法であって、
前記REによって実行される以下のステップ、
(a)前記TEに、前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求するステップと、
(b)前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報とを受信するステップと、
(c)レスポンダに、前記TEの信頼されている証明書を、完全性検証のために転送するステップと
(d)前記レスポンダから、前記TEの信頼されている証明書の前記完全性検証の結果のインジケーションを受信するステップと、
(e)前記受信したインジケーションと、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての前記情報とに基づいて、前記TEにおいて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップであって、前記判定するステップは、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく実行される、ステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記REは、権利発行者(RI)であり、および、前記TEは、前記デバイスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記デバイスが前記RIとの前記登録プロトコルを開始する前に、前記方法を開始するトリガを前記デバイスが前記RIに送信することによって実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記デバイスが前記RIに最も直近に登録したときからの経過した時間に基づいて、周期的に実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのプラットフォーム完全性ステータスを前記RIに対して最も直近に検証したときからの経過した時間に基づいて、周期的に実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記REは、コンテンツ発行者(CI)であり、および、前記TEは、前記デバイスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのプラットフォーム完全性ステータスを前記CIに対して最も直近に検証したときからの経過した時間に基づいて、周期的に実行されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記デバイスが前記CIからコンテンツを購入するときに実行されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
保護されたコンテンツを前記デバイスが獲得することを可能にする前記別のプロトコルは、Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
要求するエンティティ(RE)と、ターゲットエンティティ(TE)との間でデジタル著作権管理(DRM)を実行するための方法であって、
前記TEによって実行される以下のステップ、
前記REから、前記TEが前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求する要求を受信するステップと、
プラットフォーム完全性検査を実行するステップと、
前記REに、前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性検証ステータスとを送信するステップであって、前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記TEの完全性ステータスについて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを示すように前記REによって使用されるように構成され、前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく、前記REによって使用されるように構成されている、ステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記REは、権利発行者(RI)であり、および、前記TEは、前記デバイスであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記デバイスは、前記デバイスがrights object acquisition protocol(ROAP)プロセスを開始するよりも前に、前記方法を開始するトリガを前記RIに送信することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ROAPプロセスは、2パス登録、2パス参加ドメイン、または2パス退去ドメインのうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記デバイスが前記RIとのrights object acquisition protocol(ROAP)プロセスを完了した後、周期的に実行されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ROAPプロセスは、2パス登録、2パス参加ドメイン、または2パス退去ドメインのうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのDRMソフトウェア完全性ステータスを前記RIに対して検証し、および、報告した後、周期的に実行されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのDRMソフトウェアを更新した後に実行されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記RIは、前記デバイス上のメディアプレーヤ上でDRMソフトウェア完全性検査を実行するよう、前記デバイスに要求することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記REは、コンテンツ発行者(CI)であり、および、前記TEは、前記デバイスであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記デバイスは、前記デバイスがrights object acquisition protocol(ROAP)プロセスを開始するよりも前に、前記方法を開始するトリガを前記CIに送信することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記デバイスが前記CIとのrights object acquisition protocol(ROAP)プロセスを完了した後、周期的に実行されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのDRMソフトウェア完全性ステータスを前記CIに対して検証し、および、報告した後、周期的に実行されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのDRMソフトウェアを更新した後に実行されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記CIは、前記デバイス上のメディアプレーヤ上でDRMソフトウェア完全性検査を実行するよう、前記デバイスに要求することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
保護されたコンテンツを前記デバイスが獲得することを可能にする前記別のプロトコルは、Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)を備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(a)乃至(d)は、前記CIからのトリガに基づいて少なくとも第2の時間において実行されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項27】
前記REに、前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性検証ステータスとを送信するステップは、権利オブジェクト要求メッセージが前記デバイスから権利発行者(RI)に送信されることになる前に実行されることを特徴とする請求項10に記載の方法。」
(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を、

「【請求項1】
要求するエンティティ(RE)と、ターゲットエンティティ(TE)との間でデジタル著作権管理(DRM)を実行するための方法であって、
前記REによって実行される以下のステップ、
(a)前記TEに、前記TEの信頼されている証明書を報告するよう要求するステップと、
(b)前記TEの信頼されている証明書を受信するステップと、
(c)レスポンダに、前記TEの信頼されている証明書を、完全性検証のために転送するステップと、
(d)前記レスポンダから、前記TEの信頼されている証明書の前記完全性検証の結果のインジケーションを受信するステップと、
(e)前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう要求するステップと、
(f)前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報を受信するステップと、
(g)前記受信したインジケーションと、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての前記情報とに基づいて、前記TEにおいて十分な信頼を与えて、Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)において前記TEを進めるか、または、権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップであって、前記判定するステップは、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく実行される、ステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記REは、権利発行者(RI)であり、および、前記TEは、前記デバイスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記デバイスが前記RIとの前記登録プロトコルを開始する前に、前記方法を開始するトリガを前記デバイスが前記RIに送信することによって実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記デバイスが前記RIに最も直近に登録したときからの経過した時間に基づいて、周期的に実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのプラットフォーム完全性ステータスを前記RIに対して最も直近に検証したときからの経過した時間に基づいて、周期的に実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記REは、コンテンツ発行者(CI)であり、および、前記TEは、前記デバイスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのプラットフォーム完全性ステータスを前記CIに対して最も直近に検証したときからの経過した時間に基づいて、周期的に実行されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記デバイスが前記CIからコンテンツを購入するときに実行されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
権利オブジェクトを前記デバイスが獲得することを可能にする前記別のプロトコルは、Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
要求するエンティティ(RE)と、ターゲットエンティティ(TE)との間でデジタル著作権管理(DRM)を実行するための方法であって、
前記TEによって実行される以下のステップ、
前記REから、前記TEが前記TEの信頼されている証明書を報告するよう要求する要求を受信するステップと、
前記REに、前記TEの信頼されている証明書を送信するステップと、
前記REから、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう要求する要求を受信するステップと、
プラットフォーム完全性検査を実行するステップと、
前記REに、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性検証ステータスを送信するステップであって、前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記TEの完全性ステータスについて十分な信頼を与えて、Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)において前記TEを進めるか、または、権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを示すように前記REによって使用されるように構成され、前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく、前記REによって使用されるように構成されている、ステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記REは、権利発行者(RI)であり、および、前記TEは、前記デバイスであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記デバイスは、前記デバイスがRights Object Acquisition Protocol(ROAP)プロセスを開始するよりも前に、前記方法を開始するトリガを前記RIに送信することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ROAPプロセスは、2パス登録、2パス参加ドメイン、または2パス退去ドメインのうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記デバイスが前記RIとのRights Object Acquisition Protocol(ROAP)プロセスを完了した後、周期的に実行されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ROAPプロセスは、2パス登録、2パス参加ドメイン、または2パス退去ドメインのうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのDRMソフトウェア完全性ステータスを前記RIに対して検証し、および、報告した後、周期的に実行されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのDRMソフトウェアを更新した後に実行されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記RIは、前記デバイス上のメディアプレーヤ上でDRMソフトウェア完全性検査を実行するよう、前記デバイスに要求することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記REは、コンテンツ発行者(CI)であり、および、前記TEは、前記デバイスであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記デバイスは、前記デバイスがRights Object Acquisition Protocol(ROAP)プロセスを開始するよりも前に、前記方法を開始するトリガを前記CIに送信することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記デバイスが前記CIとのRights Object Acquisition Protocol(ROAP)プロセスを完了した後、周期的に実行されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのDRMソフトウェア完全性ステータスを前記CIに対して検証し、および、報告した後、周期的に実行されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記デバイスが前記デバイスのDRMソフトウェアを更新した後に実行されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記CIは、前記デバイス上のメディアプレーヤ上でDRMソフトウェア完全性検査を実行するよう、前記デバイスに要求することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
権利オブジェクトを前記デバイスが獲得することを可能にする前記別のプロトコルは、Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)を備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(a)乃至(d)は、前記CIからのトリガに基づいて少なくとも第2の時間において実行されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項27】
前記REに、前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性検証ステータスとを送信するステップは、権利オブジェクト要求メッセージが前記デバイスから権利発行者(RI)に送信されることになる前に実行されることを特徴とする請求項10に記載の方法。」
(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。なお、下線は、補正箇所を示すものとして、当審で付与したものである。)

に補正するものである。

2.新規事項追加禁止要件について

本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か、即ち、本件補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて、以下に検討する。

本件補正のうち、本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1に変更する補正は、下記の補正事項を含むものである。

【補正事項1】
本件補正前請求項1の
「登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップ」
を、補正後請求項1の
「Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)において前記TEを進めるか、または、権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップ」との記載に変更する補正。

上記補正事項1のうち、本件補正前請求項1の「登録プロトコル」が、補正後請求項1では「Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)」と、「登録プロトコル」に限らないものとなっている。

しかしながら、明細書の段落【0186】には「RI704は、デバイスプラットフォームの完全性に十分な信頼を与えて、登録プロトコルまたはRO獲得プロトコルなどのDRM手続きをさらに進めるかどうかを決定する。」と記載されているものの、「登録プロトコル」に限らない任意の「ROAP」についてTEを進めることについては、当初明細書等の記載内容からは読み取れない。

以上に検討したとおり、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

3.審判請求書における請求人の主張について

請求人は、上記平成26年8月8日付けで提出された審判請求書において、「本願の請求項1に係る発明において、却下された補正における請求項1及び10に記載された「登録プロトコル」を「Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)」の記載に変更しております。補正後の請求項1は、例えば、本願の第0215段落乃至第0220段落及び図9の記載に基づいております。」と主張しているが、段落【0220】に「方法900は、デバイス902およびRI904が、相互プラットフォーム完全性検証を実現することを可能にする。そのような検証後、デバイスは、ROAP登録プロトコルを開始することができる。」との記載はあるものの、やはり「登録プロトコル」に限らない任意の「ROAP」については記載されていない。

4. むすび

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 原審補正却下の決定の適否について

1.補正却下の決定の対象となった補正の内容

平成26年3月20日付けの手続補正の内容は、以下を含むものである。

「 【請求項1】
要求するエンティティ(RE)と、ターゲットエンティティ(TE)との間でデジタル著作権管理(DRM)を実行するための方法であって、
前記REによって実行される以下のステップ、
(a)前記TEに、前記TEの信頼されている証明書を報告するよう要求するステップと、
(b)前記TEの信頼されている証明書を受信するステップと、
(c)レスポンダに、前記TEの信頼されている証明書を、完全性検証のために転送するステップと
(d)前記レスポンダから、前記TEの信頼されている証明書の前記完全性検証の結果のインジケーションを受信するステップと、
(e)前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう要求するステップと、
(f)前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報を受信するステップと、
(g)前記受信したインジケーションと、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての前記情報とに基づいて、前記TEにおいて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップであって、前記判定するステップは、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく実行される、ステップと
を備えることを特徴とする方法。
・・・(中略)・・・
【請求項10】
要求するエンティティ(RE)と、ターゲットエンティティ(TE)との間でデジタル著作権管理(DRM)を実行するための方法であって、
前記TEによって実行される以下のステップ、
前記REから、前記TEが前記TEの信頼されている証明書を報告するよう要求する要求を受信するステップと
前記REに、前記TEの信頼されている証明書を送信するステップと、
前記REから、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう要求する要求を受信するステップと、
プラットフォーム完全性検査を実行するステップと、
前記REに、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性検証ステータスを送信するステップであって、前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記TEの完全性ステータスについて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを示すように前記REによって使用されるように構成され、前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく、前記REによって使用されるように構成されている、ステップと
を備えることを特徴とする方法。」

2.原審補正却下理由

上記平成26年4月4日付けの補正の却下の決定の理由は概略次の通りのものである。

『 理 由

同日付け手続補正書により補正された請求項1には「(g)前記受信したインジケーションと、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての前記情報とに基づいて、前記TEにおいて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップであって、前記判定するステップは、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく実行される、ステップ」が記載され、補正された請求項10には「前記REに、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性検証ステータスを送信するステップであって、前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記TEの完全性ステータスについて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを示すように前記REによって使用されるように構成され、前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく、前記REによって使用されるように構成されている、ステップ」が記載されている。

これら請求項に対する補正について検討するに、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という)の明細書180段落の記載「本発明は、DRMエンティティ(例えば、デバイス、RI、またはCI)の信頼状態または完全性に関する情報が、OMA DRM手続きの前提条件として、いずれの2つのDRMエンティティの間でも明示的に、相互に要求され、交換される方法を開示する。」からすると、本願発明は「OMA DRM手続き」の前提条件に関するものである。そして、当初明細書等の請求項1に「権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコルにおいて前記TE装置を進めるか、または、デバイスが権利発行者(RI)からの権利オブジェクト(RO)を獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TE装置を進めるのかを決定するステップ」と記載され、請求項8に「前記DRMソフトウェア完全性ステータス標識は、前記TE装置の完全性ステータスに十分な信頼を与えて、権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコルにおいて前記TE装置を進めるか、または、デバイスが前記RIからの権利オブジェクト(RO)を獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TE装置を進めるのかを示すように構成される」と記載されていることからすると、「登録プロトコル」としては、「OMA DRM手続き」における「権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコル」が記載されているのみであり、「権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコル」以外の「登録プロトコル」については、記載も示唆もされていない。

そうすると、請求項1,10において「登録プロトコルにおいて前記TEを進める」と、登録プロトコルを「権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコル」に特定されない任意の登録プロトコルとする、この補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものではない。

よって、この補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により上記結論のとおり決定する。』

2.当審の判断

上記平成26年4月4日付けの補正の却下の決定の適否について検討すると、平成26年3月20日付けの手続補正後の請求項1には、「登録プロトコルにおいて前記TEを進める」との記載があり、ここでいう「登録プロトコル」は「権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコル」に限らないものとなっている。しかしながら、明細書等の段落【0197】、【0215】、【0222】等には「ROAP登録プロトコル」について記載されているものの、「ROAP登録プロトコル」以外の「登録プロトコル」については記載も示唆もされていない。
よって、「登録プロトコルにおいて前記TEを進める」との記載を含む請求項1に対する補正は、当初明細書等の範囲内においてしたものではない。

したがって、上記平成26年3月20日付け手続補正書による補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下するとした、原審補正却下の決定は適法なものであり、これは取り消すべきものではない。

第4 本件審判請求の成否について

1.本願の特許請求の範囲

平成26年8月8日付の手続補正は上記のとおり却下された。そして、平成26年4月4日付けの原審補正却下の決定は妥当なものであり、拒絶査定された請求項は平成25年11月8日付け手続補正書のものである。
したがって、本願の特許請求の範囲は、上記平成25年11月8日付け手続補正書によって補正された上記補正前の請求項に記載のとおりのものである。

2.平成25年11月8日付け意見書

平成25年11月8日付けで提出された意見書の概要は、下記のとおりである。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

『2.出願人の対応
上記拒絶理由通知に対し、出願人は、本意見書と同日付の手続補正書により特許請求の範囲の記載を補正しました。これにより、本願発明は特許法第17条の2第3項の要件を満たすことを主張します。

2-1 請求項1
出願人は、請求項1について、本請求項記載のステップ(c)から「そのTE装置のプラットフォーム完全性ステータスについての情報」の記載を削除し、かつ、ステップ(d)から「前記TE装置のプラットフォーム完全性ステータス」の記載を削除しました。また、ステップ(e)に記載の「TE」を、登録プロトコルにおいて進めるかを判定することを明確にするとともに、当該TEを進めるかを判定するステップが、レスポンダに、TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく実行されることを明確にしました。さらに、請求項1全体の表現を改めました。

2-2 請求項10
出願人は、請求項10について、同項記載の「要求」が、「TEがTEの信頼されている証明書と、TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求する」ものであることを明確にするとともに、本項記載の方法が、プラットフォーム完全性検査を実行すること、および、TEの信頼されている証明書と、TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性検証ステータスとを送信することを行うことを明確にしました。また、本項記載の「自己証明された自身のプラットフォーム完全性」が、TEの完全性ステータスについて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいてTEを進めるかなどを示すようにREによって使用されるように構成されることを明確にするとともに、「自己証明された自身のプラットフォーム完全性」が、レスポンダに、TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく、REによって使用されることを明確にしました。さらに、請求項10全体の表現を改めました。

2-3 その他
出願人は、その他の請求項について、表現を改める補正をしました。

3.拒絶理由に対する意見
3-1 指摘1
審査官殿は、本願請求項1に記載のステップ(a)、(b)、(c)及び(d)が、当初明細書等に記載されていないと認定されました。上記指摘に対し、補正後の請求項1に記載された「TEの信頼されている証明書と、TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求する」こと、および、「TEの信頼されている証明書と、TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報とを受信すること」は、図8の802、804、810及び814、ならびに第0211段落及び第0212段落に記載されています。このことから、ステップ(a)及び(b)については、審査官殿が指摘されたような不備はないものと思料します。また、補正後の請求項1に記載された「TEの信頼されている証明書を、完全性検証のために転送すること」、および、「TEの信頼されている証明書の完全性検証の結果のインジケーションを受信すること」は、図8の806及び808、ならびに第0211段落に記載されています。以上のことから、本願請求項は、指摘1のような不備はないものと思料します。

3-2 指摘2
審査官殿は、本願請求項1について、「当初明細書等には、補正前の請求項1が『権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコルにおいて前記TE装置を進める』と記載する如く、TE装置を進めることを『権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコル』にて行うことは記載されているものの、補正後の請求項1が単に『前記TE装置を進める』と記載する如く、TE装置を進めることを、何ら特定されない任意の態様で行うことは記載も示唆もされていない。」と認定されました。上記指摘に対して、上述した補正により、補正後の請求項1及び請求項10に記載の「TE」が、登録プロトコルにおいて進められることが明確になりました。したがって、指摘2は解消したものと思料します。

3-3 指摘3
審査官殿は、「レスポンダからの、TE装置の信頼される資格証明の完全性検証とTE装置のプラットフォーム完全性ステータスとの指示に基づいて、TE装置を進めることを決定する別のプロトコルが、補正前の請求項1に記載の如く『デバイスが権利発行者(RI)からの権利オブジェクト(RO)を獲得することを可能にする』ものであることは記載されているものの、『デバイスが保護されたコンテンツを獲得することを可能にする』ものであるということは、記載も示唆もされていない。」と認定されました。上記指摘に対し、ROは、「保護されたコンテンツにリンクされた許可およびその他の属性の集合」であることが記載されています(第0037段落)。このことから、「デバイスが権利発行者(RI)からの権利オブジェクト(RO)を獲得することを可能にする」ことには、補正後の請求項1及び10に記載の「保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする」ことが含まれることが明白です。したがって、本願請求項は、指摘3のような不備はないものと思料します。』

3.平成25年11月22日付け拒絶理由

平成25年11月22日付けで通知した拒絶の理由は、下記のとおりである。

『 理 由

平成25年8月29日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


平成25年11月8日付け手続補正書により、特許請求の範囲の請求項1は「要求するエンティティ(RE)と、ターゲットエンティティ(TE)との間でデジタル著作権管理(DRM)を実行するための方法であって、
前記REによって実行される以下のステップ、
(a)前記TEに、前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求するステップと、
(b)前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報とを受信するステップと、
(c)レスポンダに、前記TEの信頼されている証明書を、完全性検証のために転送するステップと
(d)前記レスポンダから、前記TEの信頼されている証明書の前記完全性検証の結果のインジケーションを受信するステップと、
(e)前記受信したインジケーションと、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての前記情報とに基づいて、前記TEにおいて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップであって、前記判定するステップは、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく実行される、ステップと
を備えることを特徴とする方法。」
と補正された。

この請求項1に対する補正について検討するに、補正後の請求項1に記載の「(a)前記TEに、前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求するステップ」、「(b)前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報とを受信するステップ」の各ステップは、当初明細書等に記載も示唆もされていない。そうすると、前記の如きステップ(a)、(b)を記載する請求項1に対する補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものではない。

なお出願人は平成25年11月8日付け意見書において、前記のステップ(a)、(b)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「当初明細書等」という)の図8の802、804、810及び814、ならびに第0211段落及び第0212段落に記載されている旨を主張している。
この主張について検討するに、当初明細書等図8の802の記載「RE(要求するエンティティ)が、TE(ターゲットエンティティ)のTCG資格証明を報告するよう、TEに要求を送信する」、804の記載「TEが、TEのTCG資格証明をREに送信する」、806の記載「REが、TEのTCG資格証明を、検証のためにOCSPレスポンダに送信する」、808の記載「OCSPレスポンダが、TEのTCG資格証明を精査し、検証ステータスをREに報告する」、810の記載「REが、TE自らのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信する」、812の記載「TEが、TE自らのプラットフォーム完全性ステータスを検査する」、814の記載「TEが、プラットフォーム完全性ステータスフラグをREに送信する」、816の記載「終了」、及び、当初明細書等明細書211,212段落の記載
「【0211】
方法800は、REが、TEのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信することから始まる(ステップ802)。この要求に応答して、TEは、TEのTCG資格証明をREに送信する(ステップ804)。これらのTCG資格証明には、例えば、プラットフォーム資格証明、TPM資格証明、または準拠資格証明が含まれることが可能である。次に、REが、TEのTCG資格証明を、これらの資格証明の検証のためにOCSPレスポンダに送信する(ステップ806)。OCSPレスポンダは、TEのTCG資格証明を精査して、検証ステータスをREに報告する(ステップ808)。
【0212】
REが、TE自らのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信する(ステップ810)。TEは、TEのプラットフォーム完全性ステータスを検査し(ステップ812)、プラットフォーム完全性ステータスフラグをREに送信し(ステップ814)、方法は、終了する(ステップ816)。」からすると、当初明細書等に記載のものは、REが、TEのTCG資格証明を報告するよう、TEに要求を送信するか(図8)、REが、TEのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信する(211段落)と、TEが、TEのTCG資格証明をREに送信し、REが、TEのTCG資格証明を、検証のためにOCSPレスポンダに送信し、OCSPレスポンダが、TEのTCG資格証明を精査し、検証ステータスをREに報告し、REが、TE自らのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信し、TEが、TE自らのプラットフォーム完全性ステータスを検査し、TEが、プラットフォーム完全性ステータスフラグをREに送信し、終了する、ものである。
そうすると、当初明細書等に記載のものは、REが、TEのTCG資格証明を報告するよう、TEに要求を送信するか、REが、TEのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信するか、の何れかであって、「(a)前記TEに、前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求するステップ」というように、一つのステップにおいて、TEの信頼されている証明書とTEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとの二つを報告するよう、要求することは、記載も示唆もされていない。また、当初明細書等に記載のものは、TEが、TEのTCG資格証明をREに送信するものであるから、REは、TEのTCG資格証明を受信するものであって、「(b)前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報とを受信するステップ」というように、一つのステップにおいて、TEの信頼されている証明書と共に「TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報」をも受信するということは、記載も示唆もされていない。
したがって、出願人の意見書における主張は、当初明細書等の記載に基づくものではないから、採用しない。

また、補正後の請求項1の記載「(e)前記受信したインジケーションと、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての前記情報とに基づいて、前記TEにおいて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップであって、前記判定するステップは、前記レスポンダに、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスを、検証のために予め転送することなく実行される、ステップ」について検討するに、当初明細書等の明細書180段落の記載「本発明は、DRMエンティティ(例えば、デバイス、RI、またはCI)の信頼状態または完全性に関する情報が、OMA DRM手続きの前提条件として、いずれの2つのDRMエンティティの間でも明示的に、相互に要求され、交換される方法を開示する。」からすると、本願発明は「OMA DRM手続き」の前提条件に関するものであって、当初明細書等の請求項1に「権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコルにおいて前記TE装置を進めるか、または、デバイスが権利発行者(RI)からの権利オブジェクト(RO)を獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TE装置を進めるのかを決定するステップ」と記載されていることからすると、「登録プロトコル」としては、「権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコル」が記載されているのみであり、「権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコル」以外の「登録プロトコル」については、記載も示唆もされていない。そうすると、「(e)前記受信したインジケーションと、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての前記情報とに基づいて、前記TEにおいて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進める」なる記載とする請求項1に対する補正は、当初明細書等の範囲内においてしたものではない。

さらに、補正後の請求項1の記載「保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進める」なる事項もまた、当初明細書等に記載も示唆もされていない。
この点に関し、出願人は意見書にて、当初明細書等37段落には、ROが「保護されたコンテンツにリンクされた許可およびその他の属性の集合」であることが記載されおり、このことから、「デバイスが権利発行者(RI)からの権利オブジェクト(RO)を獲得することを可能にする」ことには、補正後の請求項1に記載の「保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする」ことが含まれることが明白である旨を主張している。
しかしながら、「権利発行者(RI)からの権利オブジェクト(RO)」と「保護されたコンテンツ」とは別のものであるから、「権利発行者(RI)からの権利オブジェクト(RO)を獲得することを可能にする別のプロトコル」もまた、「デバイスが保護されたコンテンツを獲得することを可能にする別のプロトコル」とは、別のプロトコルである。
また、当初明細書等の記載「前記レスポンダからの前記TE装置の信頼される資格証明の完全性検証ステータスと前記TE装置からの前記プラットフォーム完全性ステータス標識とに基づいて、前記TE装置のプラットフォーム完全性ステータスに十分な信頼を与えて、権利オブジェクト獲得プロトコル(ROAP)登録プロトコルにおいて前記TE装置を進めるか、または、デバイスが権利発行者(RI)からの権利オブジェクト(RO)を獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TE装置を進めるのかを決定するステップ」(請求項1)、「以下は、OMA DRMにおいて定義される主なエンティティのいくつかである。」(6段落)、「RO(権利オブジェクト) 保護されたコンテンツにリンクされた許可およびその他の属性の集合。」(37段落)、「ROAP(権利オブジェクト獲得プロトコル) デバイスが、RIからROを要求し、獲得することを可能にするプロトコル。」(38段落)からすると、当初明細書等37段落に「保護されたコンテンツにリンクされた許可およびその他の属性の集合」であると記載の「RO」は、「登録プロトコル」である「ROAP(権利オブジェクト獲得プロトコル)」によって、デバイスがRIから要求し獲得するものであるから、この37段落の記載は、補正後の請求項1の記載「登録プロトコルにおいて前記TEを進める」についての記載であって、「保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進める」についての記載ではない。したがって、当初明細書等37段落の記載は、補正後の請求項1の記載「保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進める」の根拠とはなり得ない。
してみれば、出願人のこの点に関する意見書の主張も理由がないものであり、採用しない。

同日付け手続補正書により補正された請求項10には「前記REから、前記TEが前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求する要求を受信するステップ」、「前記REに、前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性検証ステータスとを送信するステップ」、「前記自己証明された自身のプラットフォーム完全性は、前記TEの完全性ステータスについて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを示すように前記REによって使用されるように構成され」と記載されている。
これらの記載を加入する請求項10に対する補正もまた、請求項1について述べたと同じことから、当初明細書等の範囲内においてしたものではない。

なお、当該補正がなされた請求項1-27に記載した事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないことが明らかであるから、当該請求項に係る発明については新規性進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。

最後の拒絶理由通知とする理由
この拒絶理由通知は、最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものである。』

4.平成26年3月20日付け意見書

平成26年3月20日付けで提出された意見書の概要は、下記のとおりである。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

『1.はじめに
平成25年11月26日付けの拒絶理由通知書によれば、本願は、次の理由によって拒絶をすべきものとされました。
理由:本願の請求項1-27に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.出願人の対応
上記拒絶理由通知に対し、出願人は、本意見書と同日付の手続補正書により特許請求の範囲の記載を補正しました。これにより、本願発明は特許法第17条の2第3項の要件を満たすことを主張します。

2-1 請求項1
出願人は、請求項1に記載のステップ(a)を、「(a)前記TEに、前記TEの信頼されている証明書を報告するよう要求するステップ」と、「(e)前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう要求するステップ」とに分割しました。また、同項記載のステップ(b)を、「(b)前記TEの信頼されている証明書を受信するステップ」と、「(f)前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報を受信するステップ」とに分割しました。この補正は、図8、及び、第0210段落乃至第0213段落の記載に基づいています。
さらに、同項記載の「別のプロトコル」が権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にするプロトコルであることを明確にしました(請求項9についても同様)。

2-2 請求項10
出願人は、請求項10に記載のステップ「前記REから、前記TEが前記TEの信頼されている証明書と、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスとを報告するよう要求する要求を受信するステップ」を、「前記REから、前記TEが前記TEの信頼されている証明書を報告するよう要求する要求を受信するステップ」と、「前記REから、前記TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう要求する要求を受信するステップ」とに分割するとともに、「前記REに、前記TEの信頼されている証明書を送信するステップ」を追加しました。
また、同項記載の「別のプロトコル」について、上記と同様の補正をしました(請求項25についても同様)。

3.拒絶理由に対する意見
3-1 指摘1
審査官殿は、本願請求項1に記載のステップ(a)、(b)、(c)及び(d)が、当初明細書等に記載されていないと認定されました。
上記指摘に対し、補正後の請求項1に記載されたステップ(a)は、図8の802に対応し、ステップ(b)は、図8の804に対応し、ステップ(c)は、図8の806に対応し、ステップ(d)は、図8の808に対応し、ステップ(e)は、図8の810に対応し、ステップ(f)は、図8の814に対応します。
以上のことから、本願請求項は、指摘1のような不備はないものと思料します。

3-2 指摘2
審査官殿は、本願請求項1について、「前記受信したインジケーションと、前記TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての前記情報とに基づいて、前記TEにおいて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進めるか、または、保護されたコンテンツをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコルにおいて前記TEを進めるかを判定するステップ」が、当初明細書等に記載されていないと認定されました。
上記指摘に対し、「前記TEにおいて十分な信頼を与えて、登録プロトコルにおいて前記TEを進める」については、図9、及び、第0215段落乃至第0220段落のROAP登録プロトコルにおける完全性検証についての記載によってサポートされています。また、補正後の「権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコル」は、図10、及び、第0221段落乃至第0225段落の記載によってサポートされています。第0221段落の記載から明らかなように、図10では、変更されたROAP登録プロトコルにおける完全性検証の記載がされています。第0038段落の記載から、「ROAP(権利オブジェクト獲得プロトコル)」は、デバイスが、RIからROを要求し、獲得することを可能にするプロトコルであり、ROは権利オブジェクトです(第0037段落)。上記説明から、ROAP登録プロトコルに変更が加わると、そのプロトコルは「権利オブジェクトをデバイスが獲得することを可能にする別のプロトコル」に該当するものと思料します。
以上のことから、本願請求項は、指摘2のような不備はないものと思料します。』

5.当審の判断

本願の請求項1は、その記載からして、次の事項(A)(B)を含んでいる。

(A)REがTEに対して、「TEの信頼されている証明書」と、「TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータス」とを報告するよう要求する態様

(B)REがTEから、「TEの信頼されている証明書」と、「TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報」とを受信する態様

しかしながら、当初明細書を参照すると、
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。以下同じ。)

「【0211】
方法800は、REが、TEのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信することから始まる(ステップ802)。この要求に応答して、TEは、TEのTCG資格証明をREに送信する(ステップ804)。これらのTCG資格証明には、例えば、プラットフォーム資格証明、TPM資格証明、または準拠資格証明が含まれることが可能である。次に、REが、TEのTCG資格証明を、これらの資格証明の検証のためにOCSPレスポンダに送信する(ステップ806)。OCSPレスポンダは、TEのTCG資格証明を精査して、検証ステータスをREに報告する(ステップ808)。
【0212】
REが、TE自らのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信する(ステップ810)。TEは、TEのプラットフォーム完全性ステータスを検査し(ステップ812)、プラットフォーム完全性ステータスフラグをREに送信し(ステップ814)、方法は、終了する(ステップ816)。」

との記載があり、ここで上記「REが、TEのプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信することから始まる(ステップ802)」との記載は、前後の記載や対応する図8の記載からして「REが、TEのTCG資格証明を報告するよう、TEに要求を送信することから始まる(ステップ802)」の誤記と認められる。
してみると、当初明細書等に記載のものは、REがTEのTCG資格証明を報告するよう要求を送信し、これに対してTEはTCG資格照明をREに送信し、またREはプラットフォーム完全性ステータスを報告するよう、TEに要求を送信し、これに対してTEはプラットフォーム完全性ステータスをREに送信するものであって、「TEの信頼されている証明書」と「TEの自己証明された自身のプラットフォーム完全性ステータス」との二つの報告を一つのステップで要求することは、当初明細書等に記載も示唆もされていないし、「TEの信頼されている証明書」と共に「TEの自己証明されたプラットフォーム完全性ステータスについての情報」を一つのステップで受信するということも、当初明細書等に記載も示唆もされていない。

よって、平成25年11月8日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてしたものでなく、また、自明であるとも認められない。

6.上申書の補正案について

請求人は、上記平成27年1月13日付け上申書において、請求項9及び請求項25の「保護されたコンテンツを前記デバイスが獲得することを可能にする前記別のプロトコルは、Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)を備える」を、「権利オブジェクトを前記デバイスが獲得することを可能にする前記別のプロトコルは、Rights Object Acquisition Protocol(ROAP)登録プロトコルを備える」と変更する補正案を提示しているが、当初明細書等には「別のプロトコル」が「ROAP登録プロトコル」を備えることは記載されておらず、上記補正案は当初明細書等の記載の範囲内においてしたものではない。
したがって、当該補正案も新規事項を含むものであるから、当該補正案を採用する機会を請求人に与える必要性は認められない。

なお、請求人は、平成25年7月10日付けの新規事項を理由とする拒絶理由通知の後に、補正の機会が3回あったにもかかわらず、拒絶理由を解消していない、または新たな新規事項を含む補正を繰り返している。このことからも、更なる補正の機会を与えることは他の事件との関係でも公平性を欠くこととなると判断した。

7.むすび

以上のとおり、平成25年11月8日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-17 
結審通知日 2015-06-23 
審決日 2015-07-10 
出願番号 特願2012-168650(P2012-168650)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 浜岸 広明
石井 茂和
発明の名称 信頼される処理技術を使用したデジタル権利管理  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 竹内 明  

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