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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F |
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管理番号 | 1308307 |
審判番号 | 不服2014-7923 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-28 |
確定日 | 2015-12-04 |
事件の表示 | 特願2010- 79920「感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、これを用いたレジスト膜及びパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日出願公開、特開2011-209660〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成22年3月30日の出願であって、平成25年10月18日付けで拒絶理由が通知され、同年12月27日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年1月17日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として、同年4月28日に審判請求がされると同時に手続補正書が提出され、当審において、平成27年6月23日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成27年8月28日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、そのうち請求項4に係る発明は、平成27年8月28日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項4に記載された次のとおりのものである。 「 (A)下記一般式(1)で表される部分構造をカチオン部に有する下記一般式(ZI)で表されるイオン性化合物であって、活性光線又は放射線の照射によりイオン強度0、25℃、水中における酸解離定数の逆数の対数値pKaが-2以下の酸を発生するイオン性化合物、及び(C)下記(x)及び(y)の群から選ばれる基を少なくとも1つ有する疎水性樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (x)アルカリ可溶性基 (y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基 【化3】 一般式(1)中、 Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、EWGは下記一般式(EW)で表される部分構造である電子求引性基を表す。 【化4】 上記一般式(EW)中、 *は一般式(1)中の酸素原子に直結している結合手を表す。 n_(ew)は-C(R_(ew1))(R_(ew2))-で表される連結基の繰り返し数であり、0又は1の整数を表す。n_(ew)が0の場合は単結合を表し、直接Y_(ew1)が結合していることを示す。 Y_(ew1)は、-C(R_(f1))(R_(f2))-R_(f3)で表されるハロ(シクロ)アルキル基である。R_(f1)はハロゲン原子、パーハロアルキル基、パーハロシクロアルキル基、又はパーハロアリール基を表す。R_(f2)、R_(f3)は各々独立して水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表し、R_(f2)とR_(f3)とが連結して環を形成してもよい。 R_(ew1)、R_(ew2)は、各々独立して水素原子又は置換基を表す。 R_(ew1)、R_(ew2)及びY_(ew1)の少なくとも2つが互いに連結して環を形成していてもよい。 【化5】 上記一般式(ZI)において、 R2_(01)、R_(202)及びR_(203)は、各々独立に、有機基を表す。ただし、R_(201)?R_(203)の少なくとも1つがアリール基である。 R_(201)?R_(203)のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。 Z^(-)は、非求核性アニオンを表す。」 (以下、「本願発明」という。) 3 当審で通知した拒絶理由の概要 当審において、平成27年6月23日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち理由3の概要は、以下のとおりである。 「3 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 記 (1) ・請求項1?3、6?9、14?16 ・先願1 特願2010-120700号(特開2011-6401号、優先権主張特願2009-129349号) (2) ・請求項4?7、9?16 ・先願2 特願2009-210857号(特開2010-107955号) (3) ・請求項4?16 ・先願3 特願2009-57167号(特開2010-210953号) 」 4 引用例の記載事項 上記当審拒絶理由において先願3として引用し、本願の出願の日前の特許出願であって、本願の出願後に出願公開がされた出願である特願2009-57167号(特開2010-210953号)(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (1)「【請求項1】 酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、含フッ素化合物成分(F)とを含有するポジ型レジスト組成物であって、 前記基材成分(A)は、下記一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)と、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)とを有する高分子化合物(A1)を含み、かつ、 前記含フッ素化合物成分(F)は、塩基解離性基を含有する構成単位(f1)を有する含フッ素高分子化合物(F1)を含むことを特徴とするポジ型レジスト組成物。 【化1】 [式(a0-1)中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり、R^(2)は2価の連結基であり、R^(3)はその環骨格中に-SO_(2)-を含む環式基である。]」 (2)「【0215】 <(F)成分> 本発明において、(F)成分は、塩基解離性基を含有する構成単位(f1)を有する含フッ素高分子化合物(F1)(以下「(F1)成分」という。)を含む。 【0216】 (構成単位(f1)) 構成単位(f1)における「塩基解離性基」とは、塩基の作用により解離し得る有機基である。塩基としては、一般的にリソグラフィー分野において用いられているアルカリ現像液が挙げられる。すなわち、「塩基解離性基」は、アルカリ現像液(たとえば、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液(23℃))の作用により解離する基である。 塩基解離性基は、アルカリ現像液の作用により加水分解が生じることにより解離する。そのため、該塩基解離性基が解離すると同時に親水基が形成され、(F1)成分の親水性が高まり、アルカリ現像液に対する親和性が向上する。 (F1)成分において、構成単位(f1)中の塩基解離性基以外の部位(すなわち、構成単位(f1)以外の構成単位中、当該塩基解離性基以外の構成単位(f1)中)にフッ素原子が含まれていない場合には、フッ素原子を含む塩基解離性基であることを要する。一方、構成単位(f1)中の塩基解離性基以外の部位にフッ素原子が含まれている場合には、フッ素原子を含む塩基解離性基であってもよく、フッ素原子を含まない塩基解離性基であってもよい。 なお、フッ素原子を含む塩基解離性基は、塩基解離性基における水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基をいう。 【0217】 構成単位(f1)において、塩基解離性基は、上記定義に該当する有機基であれば特に限定されるものではなく、フッ素原子を含むものであってもよく、フッ素原子を含まないものであってもよく、フッ素原子を含むことが好ましい。特に、構成単位(f1)中に含まれるフッ素原子が、塩基解離性基のみに存在することが好ましい。塩基解離性基がフッ素原子を含む場合、アルカリ現像液の作用により該塩基解離性基が解離した際、フッ素原子も構成単位(f1)から解離するため、アルカリ現像液に対する親和性がより高くなる。 【0218】 塩基解離性基の具体例としては、たとえば、下記一般式(II-1)?(II-4)で表される基が挙げられる。 本発明において、塩基解離性基は、下記一般式(II-1)?(II-4)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、露光時には疎水性であって現像時には親水性となる特性に優れ、かつ、合成が容易である点から、下記一般式(II-1)または(II-4)で表される基であることが特に好ましい。 【0219】 【化67】 [式中、R_(0)はそれぞれ独立してフッ素原子を有していてもよい有機基である。] 【0220】 式(II-1)?(II-4)中、R_(0)は、フッ素原子を有していてもよい有機基である。 「有機基」は、少なくとも1つの炭素原子を含む基である。 R_(0)の構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。 R_(0)において、有機基の炭素数は1?20であることが好ましく、炭素数1?15であることがより好ましく、炭素数1?10が特に好ましく、1?5が最も好ましい。 R_(0)は、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから、フッ素化率が25%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが特に好ましい。「フッ素化率」は、当該有機基における(水素原子およびフッ素原子の合計数)に対する(フッ素原子数)の割合(%)である。」 (3)「【0359】 ポリマー合成例1:高分子化合物(1)の合成] 温度計、還流管を繋いだ3つ口フラスコに、11.77g(69.23mmol)の化合物(8)、15.00g(47.47mmol)の化合物(1)、16.58g(63.29mmol)の化合物(5)、4.65g(27.69mmol)の化合物(6)、3.27g(13.85mmol)の化合物(12)を、76.91gのメチルエチルケトン(MEK)に溶解させた。この溶液に、重合開始剤としてアゾビスイソ酪酸ジメチル(V-601)を22.1mmol添加し溶解させた。これを窒素雰囲気下、3時間かけて、78℃に加熱したMEK42.72gに滴下した。滴下終了後、反応液を4時間加熱攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。得られた反応重合液を大量のノルマル(n-)ヘプタンに滴下し、重合体を析出させる操作を行い、沈殿した白色粉体をろ別、n-ヘプタン/イソプロピルアルコール混合溶媒にて洗浄、乾燥して、目的物である高分子化合物(1)を41g得た。 この高分子化合物(1)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は7,900であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.78であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_^(13)C-NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、a21/a0/a15/a16/a3=35/27/18/13/7であった。 【0360】 【化96】 」 (4)「【0378】 [合成例18:酸発生剤(5)の合成] ・・・(略)・・・ 【0382】 (iii)窒素雰囲気下、三口フラスコに化合物(2-1)(8.54g)及びTHF(42.7g)を加え完溶させた。そこへエチル-N,N-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(4.81g)を添加し、室温にて10分間撹拌した後、N,N-ジメチルアミノピリジン(0.31g)を添加し、30時間反応を行った。反応終了後、ろ別した有機相を濃縮し、ジクロロメタン(42.7g)を加え完溶させた。ジクロロメタン相を水洗後、ジクロロメタンを減圧留去し、得られた油状物質を乾燥することによって酸発生剤(5)9.80gを得た。 【0383】 次に、得られた酸発生剤(5)についてNMRによる分析を行った。 ^(1)H-NMR(DMSO-d6、400MHz):δ(ppm)= 7.75-7.87(m,10H,ArH), 7.63(s,2H,ArH), 4.94(t,2H,OCH_(2)CF_(2)), 4.84(s,2H,OCH_(2)), 2.37(s,6H,CH_(3))^(19)F-NMR(DMSO-d6、376MHz):δ(ppm)=-77.8,-80.4, -111.9,-118.5,-119.7,-123 上記分析の結果から、酸発生剤(5)が下記に示す構造を有することが確認できた。 【0384】 【化106】 」 (5)「【0407】 (iii)含フッ素高分子化合物(1)の合成 温度計、還流管を繋いだ3つ口フラスコに、20.00g(88.44mmol)の化合物(21)、6.60g(29.48mmol)の化合物(25)を39.90gのテトラヒドロフランを加えて溶解させた。この溶液に、重合開始剤としてアゾビスイソ酪酸ジメチル(V-601)を23.58mmol添加し溶解させた。これを窒素雰囲気下、3時間かけて、67℃に加熱したテトラヒドロフラン22.17gに滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、反応液を4時間加熱撹拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。得られた反応重合液を大量のn-ヘプタンに滴下し、重合体を析出させる操作を行い、沈殿した高分子化合物をろ別、洗浄、乾燥して、目的物である含フッ素高分子化合物(1)を13g得た。 この含フッ素高分子化合物(1)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は13,800であり、分散度(Mw/Mn)は1.50であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz^(13)C-NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、f_(111)/f_(2)=77.6/22.4であった。 【0408】 【化116】 」 (6)「【0423】 【表2】 」 (7)「【0426】 表2?4中、各略号はそれぞれ以下のものを示し、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。 (A)-1:前記高分子化合物(10)。 (A)-2:前記高分子化合物(11)。 (A)-3:前記高分子化合物(12)。 (A)-4:前記高分子化合物(1)。 (A)-5:前記高分子化合物(2)。 (A)-6:前記高分子化合物(3)。 (A)-7:前記高分子化合物(13)。 (A)-8:前記高分子化合物(4)。 (A)-9:前記高分子化合物(14)。 (A)-10:前記高分子化合物(5)。 (A)-11:前記高分子化合物(6)。 (A)-12:前記高分子化合物(15)。 (A)-13:前記高分子化合物(7)。 (A)-14:前記高分子化合物(16)。 (A)-15:前記高分子化合物(8)。 (A)-16:前記高分子化合物(9)。 【0427】 (B)-1:(4-メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート。 (B)-2:前記酸発生剤(2)。 (B)-3:下記化学式で表される酸発生剤(3)。 (B)-4:下記化学式で表される酸発生剤(4)。 【0428】 【化122】・・・(略)・・・ 【0429】 (B)-5:前記酸発生剤(5)。 (B)-6:前記酸発生剤(6)。 (B)-7:前記酸発生剤(7)。 【0430】 (F)-1:前記含フッ素高分子化合物(1)。 (F)-2:前記含フッ素高分子化合物(2)。 (F)-3:前記含フッ素高分子化合物(3)。 (F)-4:前記含フッ素高分子化合物(4)。 【0431】 (D)-1:トリ-n-ペンチルアミン。 (E)-1:サリチル酸。 (S)-1:γ-ブチロラクトン。 (S)-2:PGMEA/PGME=6/4(質量比)の混合溶剤。」 (8)上記(1)ないし(7)から、先願の当初明細書等には、以下の発明が記載されていると認められる。 「 酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)と、含フッ素化合物成分(F)とを含有するポジ型レジスト組成物であって、 前記基材成分(A)は、下記一般式(a0-1)で表される構成単位(a0)と、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)とを有する高分子化合物(A1)を含み、かつ、 前記含フッ素化合物成分(F)は、塩基解離性基を含有する構成単位(f1)を有する含フッ素高分子化合物(F1)を含むポジ型レジスト組成物であって、 【化1】 [式(a0-1)中、Rは水素原子、炭素数1?5のアルキル基又は炭素数1?5のハロゲン化アルキル基であり、R^(2)は2価の連結基であり、R^(3)はその環骨格中に-SO_(2)-を含む環式基である。] 前記構成単位(f1)における塩基解離性基は、アルカリ現像液の作用により解離し、解離すると(F1)成分の親水性が高まり、アルカリ現像液に対する親和性が向上する基であり、 前記塩基解離性基の具体例としては、露光時には疎水性であって現像時には親水性となる特性に優れる点から、下記の構造のうち一般式(II-1)または(II-4)で表される基であることが特に好ましく、 [式中、R_(0)はそれぞれ独立してフッ素原子を有していてもよい有機基である。] 前記基材成分(A)、前記酸発生成分(B)及び前記含フッ素化合物成分(F)は、具体的には、 基材成分(A)として下記の構造の高分子化合物(1)、 酸発生成分(B)として下記の構造の酸発生剤(5)、 含フッ素化合物成分(F)として下記の構造の含フッ素高分子化合物(1)、 を含む、ポジ型レジスト組成物。」 5 対比 (1)引用発明の「ポジ型レジスト組成物」は、本願発明の「感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物」に相当する。 (2)引用発明の「酸発生剤(5)」は、本願発明の一般式(1)で表される部分構造において、Xが酸素原子、EWGの一般式(EW)で表される部分構造のn_(ew)が1、Y_(ew1)がペンタフルオロエチル、R_(ew1)及びR_(ew2)が水素原子であり、一般式(ZI)において、R_(201)を上記一般式(1)で現れる部分構造を有する基とすると、R_(202)及びR_(203)がフェニル基であり、Z^(-)がC_(4)F_(9)SO_(3)^(-)である、イオン性化合物に相当する。そして、C_(4)F_(9)SO_(3)^(-)は、本願明細書【0535】に記載された(PAG-J)及び【0550】に記載された(PAG-L)のアニオン部と同一構造であり、本願明細書【0547】に記載された【表3】の実施例14及び比較例1の記載によると、前記(PAG-J)及び(PAG-L)から発生する酸のpKaは-3.57であるから、引用発明の「酸発生剤(5)」から発生する酸のイオン強度0、25℃、水中における酸解離定数の逆数の対数値pKaは-2以下である。 (3)引用発明の「含フッ素高分子化合物(1)」は、「塩基解離性基を含有する構成単位」を含有するものであり、該「塩基解離性基」は、アルカリ現像液の作用により解離して、含フッ素高分子化合物のアルカリ現像液に対する親和性を向上させるものであるから、本願発明の「『(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基』から選ばれる基を少なくとも1つ有する疎水性樹脂」に相当する。 (4)したがって、本願発明と引用発明とは、 「 (A)下記一般式(1)で表される部分構造をカチオン部に有する下記一般式(ZI)で表されるイオン性化合物であって、活性光線又は放射線の照射によりイオン強度0、25℃、水中における酸解離定数の逆数の対数値pKaが-2以下の酸を発生するイオン性化合物、及び(C)下記(x)及び(y)の群から選ばれる基を少なくとも1つ有する疎水性樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。 (x)アルカリ可溶性基 (y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基 【化3】 一般式(1)中、 Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、EWGは下記一般式(EW)で表される部分構造で ある電子求引性基を表す。 【化4】 上記一般式(EW)中、 *は一般式(1)中の酸素原子に直結している結合手を表す。 n_(ew)は-C(R_(ew1))(R_(ew2))-で表される連結基の繰り返し数であり、0又は1の整数を表す。n_(ew)が0の場合は単結合を表し、直接Y_(ew1)が結合していることを示す。 Y_(ew1)は、-C(R_(f1))(R_(f2))-R_(f3)で表されるハロ(シクロ)アルキル基である。R_(f1)はハロゲン原子、パーハロアルキル基、パーハロシクロアルキル基、又はパーハロアリール基を表す。R_(f2)、R_(f3)は各々独立して水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表し、R_(f2)とR_(f3)とが連結して環を形成してもよい。 R_(ew1)、R_(ew2)は、各々独立して水素原子又は置換基を表す。 R_(ew1)、R_(ew2)及びY_(ew1)の少なくとも2つが互いに連結して環を形成していてもよい。 【化5】 上記一般式(ZI)において、 R2_(01)、R_(202)及びR_(203)は、各々独立に、有機基を表す。ただし、R_(201)?R_(203)の少なくとも1つがアリール基である。 R_(201)?R_(203)のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。 Z^(-)は、非求核性アニオンを表す。」 である点で一致し、相違するところはない。 (5)上記(1)ないし(4)からみて、本願発明は、先願の当初明細書等に記載された発明と同一の発明である。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、先願の当初明細書等に記載された発明と同一の発明であり、しかも、本願の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、また本願の出願の時において、本願の出願人が先願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、当審拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-09-29 |
結審通知日 | 2015-10-06 |
審決日 | 2015-10-19 |
出願番号 | 特願2010-79920(P2010-79920) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WZ
(G03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石附 直弥 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
西村 仁志 大瀧 真理 |
発明の名称 | 感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、これを用いたレジスト膜及びパターン形成方法 |
代理人 | 高松 猛 |
代理人 | 尾澤 俊之 |