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審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1308563
審判番号 不服2010-28132  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-13 
確定日 2015-12-15 
事件の表示 特願2010-700060「粉末薬剤多回投与器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、「本件出願」という。)は、平成22年4月5日に出願され、平成22年9月6日付けで拒絶査定され、そして、同年12月13日に審判請求がされ、その後、当審より平成24年3月21日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して、同年5月28日付けで手続補正書(延長の理由を記載した資料の補正)及び意見書が提出されたものである。

2.本件出願
本件出願は、特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったために、特許3960916号(以下、「本件特許」という。)の特許発明の実施をすることができなかったとして、2年2月23日の特許権存続期間の延長登録を求めるものである。
そして、本件出願の願書には、その政令で定める処分(以下、「本件処分」という。)として、次の事項が記載されている。
(1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認
(2)処分を特定する番号
承認番号 22100AMX01348000
(3)処分の対象となった物
販売名 リノコートパウダースプレー鼻用25μg
有効成分の成分 ベクロメタゾンプロピオン酸エステル
(4)処分の対象となった物について特定された用途
アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎

3.本件特許及び本件特許発明
本件特許は、2001年(平成13年)6月12日(特願2002-510136号、優先権主張2000年6月12日 日本国)を国際出願日として出願され、平成19年5月25日に特許権の設定登録がされたものである。
そして、本件特許明細書の特許請求の範囲には、請求項1?26が記載されており、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、次のとおりである。

「多回投与操作分の粉末薬剤を貯蔵可能な薬剤貯蔵室(5a)を規定する手段と、
前記薬剤貯蔵室(5a)底面の下部に設けた単回投与用操作分の粉末薬剤を収容可能な薬剤収容部(5b)と、
前記薬剤貯蔵室(5a)の底面との間で接触を保ちつつ充填位置と投与位置との間を移動可能で、充填位置にて開口手段(2f)により前記薬剤収容部(5b) を前記薬剤貯蔵室(5a)に対して開口し、投与位置にて前記薬剤収容部(5b)を前記薬剤貯蔵室(5a)に対して閉鎖すると共に管(2g、2d)を介して 前記薬剤収容部(5b)を装置の外部へ連通させる薬剤導出部(2)と、
前記薬剤貯蔵室(5a)底面の下部に設けた穴(5c)に連通し、かつ前記薬剤導出部(2)を充填位置と投与位置の間で移動させるための手段(13)と、
前記薬剤収容部(5b)の底部に設けたフィルター(6a)を介して該薬剤収容部(5b)に空気を送り込むことのできるポンプ部(3)と、
を具備し、
前記薬剤導出部(2)は、充填位置にあるとき前記薬剤貯蔵室(5a)内の粉末薬剤が前記開口手段を介して前記薬剤収容部(5b)内に充填可能とし、その際、前記穴(5c)は、前記管(2g、2d)を介してポンプ部(3)と外部とを連通させることが可能な場所に位置し、
投与位置では、該薬剤収容部(5b)内の粉末薬剤が空気と共に前記管(2g、2d)を介して装置外部へ噴射され、その際、前記穴(5c)を前記開口手段(2f)とは接合させずに閉鎖するように構成したことを特徴とする粉末薬剤多回投与器。」

また、請求項2?26に係る発明は、請求項1を直接的又は間接的に引用して記載された「粉末薬剤多回投与器」であるが、カウンター付のノズルに関する事項は、請求項1?26のいずれにも記載されていない。

4.当審が通知した拒絶理由の概要
当審が通知した拒絶理由は、本件特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当するというものであり、その具体的な理由の概要は、次の(A)、(B)に示すとおりである。
(A)本件処分の対象となった医薬品が、本件特許発明の発明特定事項のすべてを備えているとはいえないから、本件処分の対象となった医薬品の製造販売行為は、本件特許発明の実施行為に該当しない。
(B)本件処分の対象となった医薬品が、本件特許発明の発明特定事項のすべてを備えているとすると、先行処分の対象となった医薬品も、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項及び用途に該当する事項」と同じ事項を備えていることから、本件特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項及び用途に該当する事項」によって特定される範囲は、先行処分によって実施できるようになっていた。

5.判断
(1)(A)の理由について
平成24年5月28日付け手続補正書により補正された延長の理由を記載した資料の1.(3)の説明、及び、同日付け意見書の2.の釈明は妥当なものと認められ、本件処分に係る承認書には、本件特許発明の発明特定事項に該当する事項のすべてが記載されており、本件処分の対象となった医薬品は、本件特許発明の発明特定事項のすべてを備えているといえるから、(A)の理由は解消した。

(2)(B)の理由について
本件処分は、薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認であることから、本件処分の対象となった医薬品は、先に承認を受けた医薬品の承認事項の一部を変更したものであることは明らかである。
そして、本件出願に添付の延長の理由を記載した資料に添付された、医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請書9ページの「3.変更事項」の記載によれば、本件処分の対象となった医薬品の、先に承認を受けた医薬品(先行処分の対象となった医薬品)からの変更事項は、一体型多回噴霧器の「ノズル」を「ノズル(カウンター付)」にした点であると認められる。
(この点については、請求人も、本件処分の対象となった医薬品の、先行処分の対象となった医薬品からの変更事項が、「一体型多回噴霧器の『ノズル』を『ノズル(カウンター付)』に変更したこと」であることを認めている(平成24年5月28日付け意見書3.(4))。)
ここで、上記変更事項に係る「ノズル(カウンター付)」に関する事項、すなわち、カウンター付のノズルに関する事項は、特許請求の範囲に記載されておらず(上記3.参照。)、本件特許発明の発明特定事項ではないから、上記(1)で述べたとおり、本件処分に係る承認書に、本件特許発明の発明特定事項(カウンター付のノズルに関する事項を含まない)に該当する事項のすべてが記載されているといえる以上、先行処分に係る承認書にも、本件処分に係る承認書に記載された本件特許発明の発明特定事項に該当する事項のすべてと同じ事項が記載されていると解するのが相当である。
また、本件処分に係る承認書は、用途の点について、先行処分に係る承認書から変更されていないものと認められる。
そうすると、本件特許発明のうち、本件処分の対象となった医薬品の承認書に記載された、「発明特定事項及び用途に該当する事項」によって特定される範囲は、先行処分によって実施できるようになっていたといえる。
したがって、本件特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当する。

なお、この判断に対して、請求人は、平成24年5月28日付け意見書において、「現実に薬事法(…)第14条第9号の規定による承認があった以上、たとえ先行処分によって「ノズル」を備えた本件特許発明の実施が可能であった事情があるとしても、当該承認なくして「ノズル(カウンター付)」を備えた本件特許発明の実施ができなかったことは明らかで、本願は、特許法第67条の3第1項第1号には該当いたしません。カウンターなしの医薬品についての先行処分によって、カウンター付の医薬品の実施まで解除されたとは、いかなる詭弁をもっても説明できるものではありません」(3.(4))と主張する。
しかし、既に述べたとおり、「ノズル(カウンター付)」に関する事項、すなわち、カウンター付のノズルに関する事項は、特許請求の範囲に記載されておらず、本件特許発明の発明特定事項ではない。
カウンター付のノズルに関する事項を発明特定事項として備えていない本件特許発明は、カウンターなしの医薬品についての先行処分によって既に実施することができたことが明らかであり、発明特定事項となっていない点を変更した医薬品について処分を受けることが、本件特許発明の実施に必要であったと解することはできない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号に該当し、特許権の存続期間の延長登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-11 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-01 
出願番号 特願2010-700060(P2010-700060)
審決分類 P 1 8・ 71- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中西 聡  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 穴吹 智子
平井 裕彰
発明の名称 粉末薬剤多回投与器  
代理人 為山 太郎  

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