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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B04B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B04B
管理番号 1309027
審判番号 不服2013-11938  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-25 
確定日 2016-01-12 
事件の表示 特願2009-504152「遠心分離機用ロータユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日国際公開、WO2007/114766、平成21年 9月10日国内公表、特表2009-532204〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年3月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年4月4日、スウェーデン国)を国際出願日とする出願であって、平成25年2月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月25日に拒絶査定を不服として審判請求がなされ、当審において平成26年4月3日付けで拒絶理由を通知し、これに対し、平成26年7月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成26年7月8日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という)。
「遠心分離機用のロータユニットであって、該ロータユニットが回転軸(R)周りに配置されており、前記遠心分離機が、分離される成分の混合物を該ロータユニットに供給する入口(9)と、該ロータユニットの動作中に分離された成分用の少なくとも1つの出口(25、26)と、を有し、
ロータユニットは、
前記ロータユニット内側に形成されており、前記少なくとも1つの出口(25,26)と接続されている分離チャンバ(2)と、
前記入口(9)と前記分離チャンバとに接続されており、該分離チャンバ(2)内に半径方向に形成されている入口チャンバ(6)と、
前記分離チャンバ(2)内で互いに軸方向に離間して前記回転軸(R)と同軸に配置されている金属からなる複数の分離ディスク(10)と、
を有し、
前記複数の分離ディスク(10)のうちの少なくともいくつかは、複合体を形成するように分離不能に共に接合されており、
前記複数の分離ディスクのうちの前記少なくともいくつかは、はんだ付けまたは溶接により接合部を介して互いに接合されており、前記接合部は前記入口チャンバ(6)と前記分離チャンバ(2)との間の隔壁を構成し、
前記隔壁は、前記複数の分離ディスク(10)の半径方向内側部分で、該複数の分離ディスク(10)の前記少なくともいくつかに接合されており、
前記接合部は、前記回転軸(R)を取り囲み、互いに隣接する前記複数の分離ディスク(10)のすべての対の間に設けられていることを特徴とする、ロータユニット。」

3.当審拒絶理由の概要
平成26年4月3日付けの当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


特許請求の範囲の請求項1の「複数の分離ディスクのうちの前記少なくともいくつかは、前記入口チャンバ(6)と前記分離チャンバ(2)との間の隔壁を構成するはんだ付けまたは溶接によって互いに接合されている」の記載は、発明の詳細な説明の記載を参照しても「隔壁を構成するはんだ付けまたは溶接」の具体的な説明は認められず、実際にどのような構成を意味するのか不明確である。

2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


本願明細書の【0022】、【0024】?【0026】の記載について、具体的にどの部分が溶接されているのか明確でない。
一方、高い精度を要する遠心分離機のロータにおいては、分離ディスク間の隔離部材(間隔保持部材)を配置して、各分離ディスク間に正確な間隔を形成することが一般的であると認められ(例えば、平成24年5月31日付け拒絶理由で示した特表平11-506385号公報の第4頁参照)、各分離ディスク間の間隔保持部材を設けることなしに、はんだ付けまたは溶接で各分離ディスク間に精度よく間隔を形成する方法が当業者にとって周知であるとは認められない。
したがって、本願の発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確に記載されておらず、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるともいえない。
なお、上記理由1及び理由2が解消された際に、原査定の理由が妥当であると判断される可能性がある点に留意されたい。」

4.当審拒絶理由についての判断
当審拒絶理由に対して、請求人は、平成26年7月8日付け意見書において、「請求項1の「前記複数の分離ディスクのうちの前記少なくともいくつかは、はんだ付けまたは溶接により接合部を介して互いに接合されており、」との構成要件は、分離ディスク同士が接合部によって互いに接合されていればよいことを示しており、分離ディスク同士が接合部を介して直接接合されている場合のみではなく、別の部材(例えば引き込み部材14)が互いに隣接する分離ディスクと接合部(はんだ材又は溶接材)27を介して接合することにより、分離ディスク同士が互いに接合される態様をも包含することを意図しています。
例えば、図2及び図3に示す実施形態では、互いに隣接する分離ディスク10が接合部(はんだ材又は溶接材)27を介して直接に接合されています。なお、明細書の段落[0022]の「複数の分離ディスク10は金属でできているとともに、それらの半径方向内側の部分で接合部27によって共に接合されている。」との記載は、一の分離ディスクの半径方向内側の部分が、それと隣接する分離ディスクの半径方向内側の部分に対して、接合部(はんだ材又は溶接材)27によって接合されているということを意味しており、このことは、当該記載及び図面等から明確であるものと思料します。」、「なお、遠心分離機用のローラユニットにおいて、一般に、分離ディスク間の隙間は小さいので、例えば図2に示すように接合部27(図2ではその厚みが誇張して描かれている。)によって、互いに隣接する分離ディスク同士を接合することは可能です。」(「(3)拒絶の理由1及び理由2について」参照、意見書第2頁第29?42行及び第3頁第34?37行)と主張している。
「互いに隣接する分離ディスク同士を」「はんだ付けまたは溶接により」「直接接合」「することは可能」であることは、請求人が意見書で指摘するまでもなく当業者に自明である。
しかしながら、当審拒絶理由の「2.」は、「互いに隣接する分離ディスク同士を、はんだ付けまたは溶接により直接接合すること」が可能か否かを問題としたのではなく、「記」に記載したとおり、「各分離ディスク間の間隔保持部材を設けることなしに、はんだ付けまたは溶接で各分離ディスク間に精度よく間隔を形成する方法」が、本願明細書に説明されていないし、かつ、そのような方法が当業者にとって周知の技術的事項であるとも認められないことが問題であると指摘したのである。
それにもかかわらず、請求人は、「各分離ディスク間の間隔保持部材を設けることなしに、はんだ付けまたは溶接で各分離ディスク間に」、遠心分離機用のロータユニットとして利用可能な程に「精度よく間隔を形成する」ため、どのような方法で「互いに隣接する分離ディスク同士を接合」するのかについて、意見書においても補正書においても何も説明していない。また、そのような方法が、当業者にとって周知の技術的事項であることの証拠も示していない。
したがって、平成26年7月8日付けの意見書及び手続補正書の内容を考慮しても、当審拒絶理由の「2.」で指摘した点は、依然として不備である。

5.原査定の拒絶の理由についての判断
平成26年7月8日付けの意見書及び手続補正により、本願発明は「分離ディスク同士が」「別の部材(例えば引き込み部材14)が互いに隣接する分離ディスクと接合部(はんだ材又は溶接材)27を介して接合することにより、分離ディスク同士が互いに接合される態様をも包含する」ことが明らかになったので、その限りにおいて、当審拒絶理由の「1.」は、解消した。
そこで、本願発明の「分離ディスク同士が別の部材を介して接合する態様」に着目し、原査定の拒絶の理由が妥当であるかを以下で検討する。
(1)引用文献及び引用発明
ア.原審の拒絶の理由に引用された特開平3-501705号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「本発明により、加速ディスクを遠心分離機のローターに固定するためのなんらの別個の手段も必要としない。これによりそのコストが省け、また加速ディスクの設置がより容易になっている。
本発明の範囲内で、前記の閉鎖手段はコンビネーションディスクの間に設置する別個のガスケットを含めてもよいだろうが、しかしその代りにコンビネーションディスク自身がちょうどその積重ね体の中で軸方向に抑え付けられ中央の入口室の囲りで互いにシーリングするように形成されてもよい。コンビネーションディスクはまた前記閉鎖手段により互いに恒久的に接続されていてもよい。」(第2頁左下欄第13?24行)
(b)「第1図は略図的に遠心分離機のローターを示し、そのローターボディーは上部1と下部2からなり、それら各部はロッキングリング3により軸方向に互いに抑えられている。ローターボディーは垂直なドライブシャフト4によって支持されている。
ローターの内部には分離室5が形成され、その中には以下でコンビネーションディスクと名付けられる部分的に円錐形のディスクの積重ね体が配置されている。この種類のコンビネーションディスクは第1図に関しその平面図が第2図に示されている。
各コンビネーションディスクは分離室5内の分離ディスクを形成する截頭円錐形の部分7と、中央の環状平面部分8を有する。平面部分8はローター軸の囲りにリング状の位置するいくつかの貫通孔を有する。さらに平面部分8はシーリング部材9を有し、それは第2図から分るようにローター軸の囲りに、一定数の孔10が半径方向シーリング部材9の内側に位置され、一方その他の孔11が半径方向外側に残るように配置されている。
第1図から分るように、コンビネーションディスク6の積重ね体の中でシーリング部材9は、中央入口室が分離室5から分離されたローターの中に形成されるように隣接するコンビネーションディスク6の間の間隙を閉鎖する。入口室12には各コンビネーションディスクの中央の平面部8の主要部分が位置し、それらは遠心分離機のローターの作動中はローターの回転の中を徐々に液体を乗せて運ぶように調整された加速ディスクとして動作する。
それぞれ別個のコンビネーションディスクの孔10は軸方向にそろえられて位置しそれによりシーリング部材9の半径方向内側即ち入口室12の中にディスクの積重ね体を貫く多数の軸方向径路を形成し、一方これに対応して孔11はシーリング部材9の半径方向外側即ち分離室5の中に軸方向の径路を形成する。分離される成分の液体混合物のための固定された入口パイプ13はディスク6の中央孔を通って入口室12の内部に伸びている。入口パイプは入口室12の最も下の部分で開いており、第1図から分るように最下部のディスク6の平面部8の中央の部分はこのエリアでは取り除かれている。
…。
ローターボディの上部1にはローターで分離された1つの混合物成分用の出口室15が形成されている。出口室15はローターボディの部分1の開口16を通りディスク6の孔11によって形成された軸方向の径路に通じている。最上部のディスク6のシーリング部材9はローターボディの部分1の下側にシーリングして接している。
云わゆるベアリングディスク型の固定された出口部材17は入口パイプ13によって支持され、そして出口室15に延びている。
ローターの部分2の半径方向最外側の部分を通る多数の半径方向の孔18は、ローターに供給された混合物から分離された比較的重い成分のための出口を形成する意図のものである。」(第2頁右下欄第23行?第3頁左下欄第10行)
(c)「第3図はコンビネーションディスクの今一つの実施例を示している。それは6aで指示されており、截頭円錐部分7aと中央平坦部分8aを有する。截頭円錐部分7aは間隔部材19aと孔20aを有する。平坦部分8aはそれぞれ孔10aとllaからなる2つの同心リングと、これらの孔のリングの間に環状のシーリング部材9aを有する。
第4図はコンビネーションディスクの平面部即ち加速ディスク8にプレスされた溝に、シーリング部材9(あるいは9a)がいかに配置されるかの例を示している。
第5図はコンビネーションディスクが互いにシーリングされるために以下に配置されるかを今一つの例を示す。この場合ディスクはなるべくプラスチックで作られ、ディスクの積重ね体がローターボディの部分1と2(第1図)により軸方向に互いに組合わされているとき、各ディスクの環状の部分9bが隣接するディスクに接触してシーリング部材として作用する。
もし望まれるならば、コンビネーションディスク特にそれらがプラスチックで作られたときには、いわゆるスナップ-ロック結合と呼ばれる方法により互いに分離可能なようにかみ合わせて形成される。これによりディスクは一単位として取扱うことができる積重ね体に組立てられるが必要に応じて分解することができよう。第5図に示す部分9bはこのような場合に前述のようなスナップ-ロック結合ができるように形成され、それは同時にディスク間のシーリング手段を形成する。
本発明の範囲内でコンビネーションディスク間の望ましいシーリングをディスクを恒久的に相互結合することによって達成することが代案として可能である。」(第4頁左上欄第21行?左下欄第3行)
(d)上記記載事項及びFig.1より、上部1と下部2からなるローターボディーをロッキングリング3で結合し、ドライブシャフト4で支持していることが分かる。そして、Fig.1より、ローターは、ドライブシャフト4の軸(Fig.1の一点鎖線)周りに配置されているといえる。
前記ローターの内部に、孔11を介して出口部材17と接続するとともに、孔18にも接続する分離室5があることが分かる。また、ローターの内部には、入口パイプ13と分離室5とに接続されており該分離室5の半径方向内側に形成されている入口室12が設けられていることが分かる。
さらに、前記分離室5内には、複数のコンビネーションディスク6が、互いに軸方向に離間して前記ドライブシャフト4の軸と同軸に配置されている点がみてとれる。
(e)Fig.2、Fig.3より、シーリング部材9,9aはコンビネーションディスク6,6aの半径方向内側部分に中心を取り囲むように配置されている点がみてとれる。
(f)Fig.5より、環状の部分9bはコンビネーションディスク6の上面より突出した部分である点がみてとれる。

上記(b)(c)より、シーリング部材9bは9及び9a同様、コンビネーションディスクの半径方向内側部分に中心を取り囲むように配置され、入口室12と分離室5を分離すると認められ、以上の記載事項及び図面によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「遠心分離機用のローターであって、該ローターがドライブシャフト4の軸周りに配置されており、前記遠心分離機が、分離される成分の混合物を該ローターに供給する入口パイプ13と、前記ローターに供給され混合物から分離された成分のための出口を形成する出口部材17及び孔18とを有し、
ローターは、前記ローターの内部に形成されており、前記出口部材17及び孔18と接続されている分離室5と、前記入口パイプ13と前記分離室5とに接続されており該分離室5の半径方向内側に形成されている入口室12と、
前記分離室5内で互いに軸方向に離間して前記ドライブシャフト4の軸と同軸に配置されているプラスチックからなる複数のコンビネーションディスク6とを有し、
前記複数のコンビネーションディスク6は、各コンビネーションディスク6の半径方向内側部分に中心を取り囲むように形成した環状の部分9bに設けたスナップ-ロック結合で、一単位として取扱うことができる積重ね体を形成するように、共に分離可能に接合されており、前記環状の部分9bはコンビネーションディスク6の上面より突出し、隣接するコンビネーションディスクに接触して入口室12と分離室5を分離するシーリング部材として作用する遠心分離機のローター。」

イ.同じく、原審の拒絶の理由に引用された特開平11-506385号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「従来、この種の遠心分離機用の分離円板は薄いシート状金属製であった。隣接する分離円板間の隔離部材として機能させるためには、やはり薄いシート状金属製の薄片または小型円形円板を、溶接もしくは何らかの別の方法によって分離円板(通常は、全ての分離円板の上面もしくは下面)に固定していた。
例えばUS-A-3335946に記載のように、すでにかなり以前に、円錐台型分離円板をプラスチック材料製とすることで、金属製の分離円板よりかなり安価なものとすることができるはずであることが提言されている。…実際、特に大型の遠心分離機に関する場合および/または比較的高速回転に関する場合、分離円板がプラスチック製であった場合にその円板の望ましくない変形を防止することは困難もしくは不可能であることが明らかになっている。」(第4頁第8?28行)
(b)「前述の分離円板間の隔離部材は、任意の適当な種類のものとすることができる。それは、分離円板と一体のものであることができるか、あるいはそれらを溶接、半田付けまたは接着などの何らかの好適な方法で固定することができる。別法として、それらを分離円板間に着脱可能な形で取り付けることが可能である。それらはさらに、任意の適当な形状を有することができる。」(第6頁第第13?17行)

(2)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ローター」、「入口パイプ13」、「ローターに供給され混合物から分離された成分のための出口を形成する出口部材17及び孔18」、「分離室5」、「入口室12」は、本願発明の「ロータユニット」、「入口」、「ロータユニットの動作中に分離された成分用の少なくとも1つの出口」、「分離チャンバ」、「入口チャンバ」にそれぞれ相当し、引用発明の「ローターがドライブシャフト4の軸周りに配置されており」は、ローターがドライブシャフト4の軸を回転軸として回転すると認められるので本願発明の「ロータユニットが回転軸周りに配置されており」に相当すると認める。
また、引用発明の「分離室5内で互いに軸方向に離間して前記ドラブシャフト4の軸と同軸に配置されているプラスチックからなる複数のコンビネーションディスク6」と、本願発明の「分離チャンバ内で互いに軸方向に離間して回転軸と同軸に配置されている金属からなる複数の分離ディスク」とは、「分離チャンバ内で互いに軸方向に離間して回転軸と同軸に配置されている複数の分離ディスク」である限りにおいて一致する。
さらに、引用発明の「複数のコンビネーションディスク6は、各コンビネーションディスク6の半径方向内側部分に中心を取り囲むように形成した環状の部分9bに設けたスナップ-ロック結合で、一単位として取扱うことができる積重ね体を形成するように、共に分離可能に接合されており、前記環状の部分9bはコンビネーションディスク6の上面より突出し、隣接するコンビネーションディスクに接触して入口室12と分離室5を分離するシーリング部材として作用する」と、本願発明の「複数の分離ディスクのうちの少なくともいくつかは、複合体を形成するように分離不能に共に接合されており、前記複数の分離ディスクのうちの前記少なくともいくつかは、はんだ付けまたは溶接により接合部を介して互いに接合されており、前記接合部は前記入口チャンバと前記分離チャンバとの間の隔壁を構成し、前記隔壁は、前記複数の分離ディスクの半径方向内側部分で、該複数の分離ディスクの少なくともいくつかに接合されており、前記接合部は、前記回転軸を取り囲み、互いに隣接する前記複数の分離ディスクのすべての対の間に設けられている」とは、前者の「複数のコンビネーションディスク6」に「各コンビネーションディスク6の半径方向内側部分に中心を取り囲むように形成し」、「入口室12と分離室5を分離するシーリング部材として作用する」ように接合され、「一単位として取扱うことができる積重ね体を形成する」「環状の部分9b」が、後者の「複数の分離ディスク」に「回転軸を取り囲み、互いに隣接する複数の分離ディスクのすべての対の間に設けられ」、「入口チャンバと分離チャンバとの間の隔壁を構成し、前記隔壁は、前記複数の分離ディスクの半径方向内側部分で」接合され、「複合体を形成する」「接合部」に対応し、「複数の分離ディスクのうちの少なくともいくつかは、複合体を形成するように接合部を介して互いに接合されており、前記接合部は入口チャンバと分離チャンバとの間の隔壁を構成し、前記隔壁は、前記分離ディスクの半径方向内側部分で、該分離ディスクに接合されており、前記接合部は、前記回転軸を取り囲み、互いに隣接する前記複数の分離ディスクのすべての対の間に設けられている」の限りにおいて一致する。
したがって、両者は、
「遠心分離機用のロータユニットであって、該ロータユニットが回転軸周りに配置されており、前記遠心分離機が、分離される成分の混合物を該ロータユニットに供給する入口と、該ロータユニットの動作中に分離された成分用の少なくとも1つの出口と、を有し、
ロータユニットは、
前記ロータユニット内側に形成されており、前記少なくとも1つの出口と接続されている分離チャンバと、
前記入口と前記分離チャンバとに接続されており、該分離チャンバ内に半径方向に形成されている入口チャンバと、
前記分離チャンバ内で互いに軸方向に離間して前記回転軸と同軸に配置されている複数の分離ディスクと、
を有し、
前記複数の分離ディスクのうちの少なくともいくつかは、複合体を形成するように接合部を介して互いに接合されており、前記接合部は入口チャンバと分離チャンバとの間の隔壁を構成し、前記隔壁は、前記分離ディスクの半径方向内側部分で、該分離ディスクに接合されており、前記接合部は、前記回転軸を取り囲み、互いに隣接する前記複数の分離ディスクのすべての対の間に設けられているロータユニット。」
である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、分離ディスクが金属からなるのに対して、引用発明ではプラスチックからなる点。

[相違点2]
本願発明では、隔壁が、「別の部材」を、互いに隣接する、複数の分離ディスクと接合することにより形成されるのに対し、引用発明では、予めコンビネーションディスクに形成した環状の部分9bを、隣接するコンビネーションディスクと接合することにより隔壁を形成する点。

[相違点3]
本願発明では、はんだ付け又は溶接で分離不能に接合するのに対して、引用発明では、スナップロック結合で分離可能に接合する点。

上記相違点1について検討すると、大型もしくは高速の遠心分離機の場合でも分離円板(本願発明の「分離ディスク」に相当)の変形が防止されるように金属製のものを用いることは周知技術にすぎず(上記(1)イ.(a)参照)、この点は当業者が容易になし得た事項にすぎないと認める。
次に、上記相違点2について検討すると、遠心分離機の分離円板の材料に応じて、別の部材を接合して分離円板の上面あるいは下面より突出する部分(隔離部材)を形成することは引用文献2に記載された事項であり(上記(1)イ.(a)(b)参照)、当業者が適宜用い得る組立て方法であると認められ、引用発明において、コンビネーションディスク上面から突出する環状の部分9bを当該コンビネーションディスク上面に別の部材を接合することで形成することは当業者が容易になし得たことである。
次に、上記相違点3について検討すると、引用文献1には、コンビネーションディスクを恒久的に相互結合することが示唆され(上記(1)ア.(c)参照)、恒久的な或いは封止可能な接合手段として、はんだ付け又は溶接は周知技術であるから(上記(1)イ.(b)、特開平11-149915号公報参照)、引用発明において、接合手段としてはんだ付け又は溶接を用いて、コンビネーションディスク及び隔壁を分離不能に接合するのは当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2に記載された事項並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
上記4.で述べたとおり、本願は、発明の詳細な説明又は特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
また、上記5.で述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2014-08-19 
結審通知日 2014-08-26 
審決日 2014-09-11 
出願番号 特願2009-504152(P2009-504152)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B04B)
P 1 8・ 537- WZ (B04B)
P 1 8・ 536- WZ (B04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰三  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 渡邊 真
熊倉 強
発明の名称 遠心分離機用ロータユニット  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 緒方 雅昭  

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