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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C11B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C11B
管理番号 1309048
審判番号 不服2014-5944  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-02 
確定日 2015-12-24 
事件の表示 特願2007-512592号「臭気低減組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日国際公開、WO2005/110499、平成19年12月20日国内公表、特表2007-537325号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17(2005)年5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成16(2004)年5月12日、平成17(2005)年2月26日、英国(GB))を国際出願日とする出願であって、平成20年5月12日付けで手続補正書が提出され、平成23年9月9日付けの拒絶理由通知に応答して平成24年3月12日付けで手続補正書と意見書が提出され、さらに、平成24年11月12日付けの拒絶理由通知に応答して平成25年5月20日付けで手続補正書と意見書が提出され、その後、平成24年11月12日付けの拒絶理由通知に記載した理由により平成25年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年4月2日に拒絶査定不服審判が請求されると共に同日付けで手続補正補正書が提出されたものである。

II.平成26年4月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年4月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1における以下の補正を含むものである。
補正前
「【請求項1】
フェニルエチルメチル エーテル、シプリゼート(Cyprisate)、カモナール(Camonal)及びパラクレシルメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの臭気低減物質を含む、悪臭アミンを中和するための臭気低減組成物とアンモニアとを含むヘアトリートメント組成物。」

補正後
「【請求項1】
悪臭アミンを中和するための臭気低減組成物とアンモニアとを含むヘアトリートメント組成物において、前記臭気低減組成物がフェニルエチルメチル エーテル、シプリゼート(Cyprisate)、カモナール(Camonal)及びパラクレシルメチルエーテルからなる群より選択される1つの臭気低減物質を前記臭気低減組成物の容量に基づいて少なくとも1%含むヘアトリートメント組成物。」(注:下線は補正箇所を示すものである。)

2.補正の適否
(2-1).補正の目的
上記補正は、請求項1に係る発明の「フェニルエチルメチル エーテル、シプリゼート(Cyprisate)、カモナール(Camonal)及びパラクレシルメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つ」を「フェニルエチルメチル エーテル、シプリゼート(Cyprisate)、カモナール(Camonal)及びパラクレシルメチルエーテルからなる群より選択される1つ」とすることにより、4つの臭気低減物質からなる群から「少なくとも1つ」の臭気低減物質が選択されていたところを「1つ」の臭気低減物質が選択される場合に限定するものであり、また、限定されていなかった臭気低減物質の含有量を「臭気低減組成物の容量に基づいて少なくとも1%含む」と限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2-2).独立特許要件について
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-2-1).原査定の概要
原査定は、平成24年11月12日付けの拒絶理由に記載した理由3(特許法第29条第1項第3号)、理由4(特許法第29条第2項)により拒絶するものであり、理由4は、「平成25年5月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成24年11月12日付けの拒絶の理由に引用された本願優先日前の刊行物(引用文献2)である特開平2003-137758号公報に記載されたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである」を旨とするものである。

(2-2-3).引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前の刊行物(引用文献2)である特開平2003-137758号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記述および表示がある。
(a)「【請求項1】(A)炭化水素類、(B)アルコール類、(C)フェノール類、(D)アルデヒド類及び/又はアセタール類、(E)ケトン類及び/又はケタール類、(F)エーテル類、(G)合成ムスク類、(H)酸類、(I)ラクトン類、(J)エステル類、(K)含窒素及び/又は含硫及び/又は含ハロゲン化合物、(L)天然香料からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有することを特徴とする頭髪化粧料用のマスキング組成物。」

(b)「【請求項2】(A)炭化水素類の含有率が5?90重量%、(B)アルコール類の含有率が10?90重量%、(C)フェノール類の含有率が1?50重量%、(D)アルデヒド類及び/又はアセタール類の含有率が5?50重量%、(E)ケトン類及び/又はケタール類の含有率が10?80重量%、(F)エーテル類の含有率が1?50重量%、(G)合成ムスク類の含有率が0.1?30重量%、(H)酸類の含有率が0.1?20重量%、(I)ラクトン類の含有率が0.1?30重量%、(J)エステル類の含有率が10?90重量%、(K)含窒素及び/又は含硫及び/又は含ハロゲン化合物の含有率が0?10重量%、(L)天然香料の含有率が0?70重量%であることを特徴とする請求項1記載の頭髪化粧料用のマスキング組成物。」

(c)「【請求項8】(F)エーテル類が・・・・・(中略)・・・・・、p-クレジルメチルエーテル、・・・・・(中略)・・・・・、フェニルエチルメチルエーテル、・・・・・(中略)・・・・・から選ばれる少なくとも1種の合成香料であることを特徴とする請求項1?7に記載の頭髪化粧料用のマスキング組成物。」

(d)「【請求項17】マスキングする不快臭が、基剤臭、アミン臭、アンモニア臭、硫黄臭、酸臭、錆臭、煙草臭、動物臭、ハロゲン臭の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1?16に記載の頭髪化粧料用のマスキング組成物。
【請求項18】頭髪化粧料がパーマネントウェーブ剤であることを特徴とする請求項1?17に記載のマスキング組成物。」

(e)「【請求項20】請求項1?17に記載のマスキング組成物を1×10^(-7)?5.0重量%含有してなる頭髪化粧料。」

(f)「【0004】この調合香料の機能性の一つに、汗臭、腋臭、頭髪臭などのヒトの体臭や、獣臭、獣毛臭などのペット臭の、マスキング効果があり、また当該調合香料が用いられる各種フレグランス製品に使用されている基材のマスキング効果である。従って、調合香料は快い香りを賦香すると共にマスキング剤としての機能が要求される。とりわけ頭髪化粧料においては、頭髪のパーマネント、脱色、染色、コンディショニング、整髪など種々の加工が施されるため、それらに用いられる基剤の不快臭、例えば界面活性剤臭、特殊ポリマー臭、アンモニア臭、酸臭、硫黄臭などが顕著であり、それをマスキングすることが重要である。すなわち、頭髪化粧料においては香料の持つマスキング効果が、当該化粧料の品質において重要な役割を担っている。」

(g)「【0031】本発明のマスキング用組成物は頭髪化粧料用として好適に用いられ、特に好ましくはパーマネントウェーブ剤用及び染毛剤用として用いられる。」

(h)「【0045】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。(以下、特に記載がなければ、処方中の数値は重量部を示す。)
実施例1?350:(A)炭化水素類、(B)アルコール類、(C)フェノール類、(D)アルデヒド類及び/又はアセタール類、(E)ケトン類及び/又はケタール類、(F)エーテル類、(G)合成ムスク類、(H)酸類、(I)ラクトン類、(J)エステル類、(K)含窒素及び/又は含硫及び/又は含ハロゲン化合物、(L)天然香料からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有する調合処方例を表1?35に示した。これらはいずれも幻想的な香りを有し、嗜好性に優れたものであった。なお、分類中A?Lは上記(A)?(L)を示し、Surは界面活性剤、Solは溶剤を示し、「ジメチルスルフィド(1%)」は「ジメチルスルフィドの1%エタノール溶液」を示し、処方中の?は「合計を100に合わせる」ことを示す。」

(i)「【0047】実施例351?590及び比較例1?96:パーマネントウェーブ剤エデト酸二ナトリウム0.5、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液1、プロピレングリコール1、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート1、パラオキシ安息香酸メチル0.1、チオグリコール酸アンモニウム13.5、強アンモニア水2、クエン酸0.5、重炭酸アンモニウム2.5、精製水77.9からなるパーマネントウェーブ用第1剤と、臭素酸ナトリウム8、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム5、ポリオキシエチレントリデシルエーテル1、パルミチン酸イソプロピル2、塩化-オルト-(2-ヒドロキシ-3,8-トリメチル アンモニオ)プロピル0.2、パラオキシ安息香酸メチル0.1、無水硫酸ナトリウム1、48%水酸化ナトリウム水溶液(pH調整剤)適量、クエン酸(pH調整剤)適量、精製水83からなるパーマネントウェーブ用第2剤を調製し、第1剤に実施例1?240の組成物を種々の濃度で製造工程中に添加し、本発明のパーマネントウェーブ剤(実施例351?590)を得た。また、上記の濃度とは異なって添加したパーマネントウェーブ剤(比較例1?96)を調製した。」

(j)「【0050】[試験例2]上記実施例351?770及び比較例1?168について、30?60歳代男性6名からなる専門パネルで、消臭効果、マスキング効果、着香効果の官能評価を行った。評価は5段階評価とし、×:効果無し、△:わずかに効果有り、○:効果有り、◎:優れた効果有り、◎◎:強すぎるほどの効果、とした。結果を表37?50に示す。いずれの試験例においても、本発明のマスキング組成物は優れた効果を示した。」

(k)【表1】には、実施例2、6、9、10の組成物における「(F)p-クレジルメチルエーテル」の数値がそれぞれ「10」、「5」、「1」、「1」であることの表示がある。

(l)【表10】には、実施例92、95、98、99、100の組成物における「(F)フェニルエチルメチルエーテル」の数値がそれぞれ「10」、「5」、「3」、「1」、「1」であることの表示がある。

(m)【表37】には、実施例352(添加する組成物が実施例2)、356(同実施例6)、359(同実施例9)、360(同実施例10)の効果がそれぞれ「消臭効果◎ マスキング効果◎ 着香効果×」、「消臭効果○ マスキング効果◎ 着香効果△」、「消臭効果○ マスキング効果◎ 着香効果△」、「消臭効果○ マスキング効果◎ 着香効果△」であることの表示がある。

(n)【表40】には、実施例442(添加する組成物が実施例92)、445(同実施例95)、448(同実施例98)、449(同実施例99)、450(同実施例100)の効果がそれぞれ「消臭効果◎ マスキング効果◎ 着香効果×」、「消臭効果◎ マスキング効果◎ 着香効果×」、「消臭効果○ マスキング効果◎ 着香効果△」、「消臭効果○ マスキング効果◎ 着香効果△」、「消臭効果○ マスキング効果◎ 着香効果△」であることの表示がある。

(2-2-4).引用例に記載の発明
(A)引用例には、上記(a)からして「(A)炭化水素類、(B)アルコール類、(C)フェノール類、(D)アルデヒド類及び/又はアセタール類、(E)ケトン類及び/又はケタール類、(F)エーテル類、(G)合成ムスク類、(H)酸類、(I)ラクトン類、(J)エステル類、(K)含窒素及び/又は含硫及び/又は含ハロゲン化合物、(L)天然香料からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の香料を含有する、頭髪化粧料用のマスキング組成物」が記載されているということができる。

(B)引用例には、上記(c)(k)(l)からして「(F)エーテル類としてp-クレジルメチルエーテルあるいはフェニルエチルメチルエーテルを用いる」ことが記載されているということができる。

(C)引用例には、上記(d)(f)からして「パーマネントウェーブ剤(頭髪化粧料)の『アンモニア臭などの不快臭』をマスキングするためにマスキング組成物を用いる」ことが記載されているということができる。

(D)引用例には、上記(a)(h)(k)からして「実施例2、6、9、10のマスキング組成物の100重量部の内に(F)p-クレジルメチルエーテルがそれぞれ10重量部(10%)、5重量部(5%)、1重量部(1%)、1重量部(1%)含まれる」こと、上記(a)(h)(l)からして「実施例92、95、98、99、100のマスキング組成物の100重量部の内に(F)フェニルエチルメチルエーテルがそれぞれ10重量部(10%)、5重量部(5%)、3重量部(3%)、1重量部(1%)、1重量部(1%)含まれる」こと、上記(i)(j)(m)(n)からして「これらの組成物を種々の濃度で含有するパーマネントウェーブ剤のマスキング効果がいずれも◎(優れた効果有り)、同消臭効果が◎(優れた効果有り)または○(効果有り)である」ことが記載されているということができる。

(E)引用例には、上記(a)(i)からして「アンモニアを含有するパーマネントウェーブ用第1剤に実施例2、6、9、10、92、95、98、99、100のマスキング組成物のいずれかを添加する」ことが記載されているということができる。

上記(a)ないし(n)の記述・表示事項、および、上記(A)ないし(E)の検討事項より、引用例には、
「アンモニアを含有するパーマネントウェーブ用第1剤に実施例2、6、9、10、92、95、98、99、100の『アンモニア臭などの不快臭をマスキングするためのマスキング組成物』のいずれかを添加したパーマネントウェーブ剤(頭髪化粧料)において、実施例2、6、9、10の『アンモニア臭などの不快臭をマスキングするためのマスキング組成物』が(F)p-クレジルメチルエーテルをそれぞれ10%、5%、1%、1%含み、あるいは、実施例92、95、98、99、100の『アンモニア臭などの不快臭をマスキングするためのマスキング組成物』が(F)フェニルエチルメチルエーテルをそれぞれ10%、5%、3%、1%、1%含むパーマネントウェーブ剤(頭髪化粧料)。」(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

(2-2-5).対比、判断
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比する。
(ア)引用例記載の発明の「『アンモニア臭などの不快臭をマスキングするためのマスキング組成物』」、「パーマネントウェーブ剤(頭髪化粧料)」は、本願補正発明の「臭気低減組成物」、「ヘアトリートメント組成物」それぞれに相当する。

(イ)引用例記載の発明の「p-クレジルメチルエーテル」、「フェニルエチルメチルエーテル」は、本願補正発明の「パラクレシルメチルエーテル」、「フェニルエチルメチルエーテル」に相当する。

(ウ)引用例記載の発明の「アンモニアを含有するパーマネントウェーブ用第1剤に実施例2、6、9、10、92、95、98、99、100の『アンモニア臭などの不快臭をマスキングするためのマスキング組成物』のいずれかを添加したパーマネントウェーブ剤(頭髪化粧料)」は、本願補正発明の「臭気低減組成物とアンモニアとを含むヘアトリートメント組成物」に相当する。

(エ)引用例発明の「実施例2、6、9、10の『アンモニア臭などの不快臭をマスキングするためのマスキング組成物』が(F)p-クレジルメチルエーテルをそれぞれ10%、5%、1%、1%含み、あるいは、実施例92、95、98、99、100の『アンモニア臭などの不快臭をマスキングするためのマスキング組成物』が(F)フェニルエチルメチルエーテルをそれぞれ10%、5%、3%、1%、1%含む」は、本願補正発明の「臭気低減組成物がフェニルエチルメチル エーテル、シプリゼート(Cyprisate)、カモナール(Camonal)及びパラクレシルメチルエーテルからなる群より選択される1つの臭気低減物質を臭気低減組成物の容量に基づいて少なくとも1%含む」に相当する。

上記より、本願補正発明と引用例記載の発明とは、
「臭気低減組成物とアンモニアとを含むヘアトリートメント組成物において、前記臭気低減組成物がフェニルエチルメチル エーテル、シプリゼート(Cyprisate)、カモナール(Camonal)及びパラクレシルメチルエーテルからなる群より選択される1つの臭気低減物質を前記臭気低減組成物の容量に基づいて少なくとも1%含むヘアトリートメント組成物。」である点で一致し、次の点で一応相違している。
<相違点>
本願補正発明では、「悪臭アミンを中和するための」臭気低減組成物であるのに対し、引用例記載の発明では、「アンモニア臭などの不快臭をマスキングするための」マスキング組成物(臭気低減組成物)である点。

<相違点>について検討する。
引用例記載の発明は、アンモニア臭などの不快臭をマスキング(低減)するために、p-クレジルメチルエーテル(パラクレシルメチルエーテル)あるいはフェニルエチルメチルエーテルを用いるものであるということができ、一方、本願補正発明は、悪臭アミンを中和(低減)するために、パラクレシルメチルエーテルあるいはフェニルエチルメチルエーテルを用いるものであるということができ、そして、本願明細書の【0021】(以下の※参照)の記載からして、この悪臭アミンにはアンモニア(アンモニア臭)が含まれていることから、両者は、アンモニア臭の低減のために、パラクレシルメチルエーテルあるいはフェニルエチルメチルエーテルを用いるという点で同じであるので、この点において、引用例記載の発明の「マスキング」と本願補正発明の「中和」とは、同等のメカニズムであるとみるのが妥当である。
したがって、上記の一応の相違点は実質的な相違点ではなく、本願補正発明と引用例記載の発明は実質的に等しいものである。

※「【0021】
有利には、本発明の方法において前記悪臭アミンはアンモニアを含む。一の態様において、悪臭源は、ヘアトリートメント製品を含む。好適には、前記ヘアトリートメント製品は、ヘアカラー製品である。代替的には前記ヘアカラー製品はヘアをブリーチするための製品である。」

なお、請求人は、審判請求書において、「引用文献2には、(A)乃至(L)の12種類に分類し、これらの群から選ばれる少なくとも1種以上の素材を特定の濃度で適宜に配合して、前記組成物を提供することが記載されているが、実施例を参照すると1つの調合香料の素材を含むものは記載されていない(表1乃至35)。更に、表38乃至50の記載からは表1乃至35に記載のいずれかの組成物を1%乃至1×10^(-4)%(重量)使用した例において、消臭、マスキング、着香効果のすべてが同時に改良された例も存在していないものと思料する。これに対して本願発明は1つの臭気低減物質であっても悪臭を低減し、その成分強度を有意に維持できるという発明者らの発見に基づくものである(段落0023)。引用文献2には官能基ごとに分類された調合香料の素材を適宜組み合わせて使用するという技術的思想が記載されているのであって、アンモニアを多く含む環境において、嗅覚的に安定である1つの成分を利用するものではないものと思料する。」との主張をしているが、本願補正発明は、「臭気低減組成物がフェニルエチルメチル エーテル、シプリゼート(Cyprisate)、カモナール(Camonal)及びパラクレシルメチルエーテルからなる群より選択される1つの臭気低減物質を前記臭気低減組成物の容量に基づいて少なくとも1%含む」を発明特定事項にするものであって、これは、臭気低減組成物を前提にするものである、つまり、複数の臭気低減物質の使用を排除するものではなく、また、【0023】の記載はもとより、実施例を含めた明細書全般の記載をみても、「1つの臭気低減物質であっても悪臭を低減し、その成分強度を有意に維持できる」ことを志向するものであるとはいえないことから、請求人の上記主張は、特許請求の範囲および明細書の記載に基づくものではないので、これを採用することはできない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2-2-6).むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
平成26年4月2日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成25年5月20日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「II.」「1.補正の内容」の「補正前」で示したとおりのものである。

1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(引用例)の記載事項は、前記「II.」「2.補正の適否」「(2-2-3).引用例に記載された事項」に記載したとおりである。

2.対比、判断
上記「II.」「2.補正の適否」「(2-1).補正の目的」で示したように、本件補正における請求項1の補正事項は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであることから、本願発明は、本願補正発明を包含している。
そうすると、本願補正発明は、上記「II.」「2.補正の適否」「(2-2-5).対比・判断」で示したように、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するので、本願補正発明を包含する本願発明も同じく、引用例に記載された発明であるということができる。

IV.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
それ故、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-14 
結審通知日 2015-07-22 
審決日 2015-08-07 
出願番号 特願2007-512592(P2007-512592)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C11B)
P 1 8・ 575- Z (C11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡谷 祐哉  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 豊永 茂弘
菅野 芳男
発明の名称 臭気低減組成物  
代理人 山崎 行造  
代理人 奥谷 雅子  
代理人 赤松 利昭  

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