• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1309052
審判番号 不服2014-8620  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-09 
確定日 2015-12-24 
事件の表示 特願2009- 84336「有機ELディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日出願公開,特開2010-237374〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
本件出願は平成21年3月31日にされた出願であって,その後の手続の概要は,以下のとおりである。
平成25年 3月 4日:拒絶理由通知(同年同月12日発送)
平成25年 4月26日:意見書
平成25年 4月26日:手続補正
平成25年 8月13日:拒絶理由通知(同年同月20日発送)
平成25年10月18日:意見書
平成25年10月18日:手続補正(以下「手続補正2」という。)
平成26年 2月 3日:補正の却下の決定(手続補正2の却下)
平成26年 2月 3日:拒絶査定(同年同月12日送達)
平成26年 5月 9日:手続補正
平成26年 5月 9日:審判請求
平成27年 7月14日:拒絶理由通知(同年同月21日発送)
平成27年 9月18日:意見書
平成27年 9月18日:手続補正書(以下「本件補正」という。)

2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの,以下のものである(以下「本願発明」という。)。
「 透明基材と,該透明基材上に所定のパターンで設けられた少なくとも赤色着色層,緑色着色層及び青色着色層とを有し,前記各着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う酸素バリア膜が設けられているとともに,該酸素バリア膜が,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜,粘着剤を有する酸素バリアフィルムを貼り合わせてなる酸素バリア膜,透明無機材料からなる酸素バリア膜又は無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜であり,
前記青色着色層が染料色素を含有し,前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含有するカラーフィルタと,
少なくとも赤色発光層,緑色発光層及び青色発光層を有する有機EL発光体と,を貼り合わせてなり,
前記有機EL発光体が3色塗り分け方式で作製されたものであることを特徴とする有機ELディスプレイ。」

3 当合議体による拒絶の理由
本件審判を行う審判官の合議体(以下「当合議体」という。)による拒絶の理由1及び2のうち,請求項1についての理由は,概ね,以下のとおりである。
(1) 理由1
この出願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内において,頒布された以下の引用例1?5に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用例1:特開2008-304766号公報
引用例2:特開平5-346506号公報
引用例3:特開2003-311865号公報
引用例4:特開昭62-144103号公報
引用例5:特開2007-63118号公報
なお,引用例1は,引用発明を開示するための文献であり,引用例2?5は,周知技術又は公知技術を開示するための文献である。

(2) 理由2
請求項1は,「有機ELディスプレイ」という物の発明であるが,「該酸素バリア膜が,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜,粘着剤を有する酸素バリアフィルムを貼り合わせてなる酸素バリア膜,透明無機材料を成膜してなる酸素バリア膜又は無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜であり」との記載は,製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため,当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
ここで,物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号,平成24年(受)第2658号)。
しかしながら,本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく,当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって,請求項1に係る発明は明確であるということができないから,特許請求の範囲の請求項1の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

第2 当合議体の判断
1 引用例1の記載及び引用発明
(1) 引用例1の記載
本件出願前に頒布された刊行物である,上記引用例1(【公開番号】特開2008-304766号,【公開日】平成20年12月18日,【発明の名称】カラーフィルター用着色樹脂組成物,カラーフィルター,有機ELディスプレイおよび液晶表示装置,【出願番号】特願2007-152714号,【出願日】平成19年6月8日,【出願人】三菱化学株式会社)には,以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
(a)バインダー樹脂,および(b)溶剤を含有し,かつ下記一般式(I)で表されるトリアリールメタン系色素を溶解してなる,カラーフィルター用着色樹脂組成物。
【化1】

(式(I)中,R^(1),R^(2),R^(3)およびR^(4)はそれぞれ独立にアルキル基を示し,R^(5)はアルキル基または置換基を有しても良いアリール基を示し,X^(-)はCl^(-)またはArSO_(3)^(-)を示す。Arは芳香族環を表し,該芳香族環は,置換基を有していても良いアミノ基で置換されていてもよい。)

【請求項2】
さらに(d)顔料を含有する,請求項1記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(c)モノマーを含有する,請求項1または2記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(e)光重合開始系および/または熱重合開始系を含有する,請求項1ないし3のいずれか一項に記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物。
【請求項5】
前記一般式(I)で表される化合物を,全固形分中1?50重量%溶解させてなる,請求項1ないし4のいずれか一項に記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のカラーフィルター用着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有するカラーフィルター。
【請求項7】
請求項6記載のカラーフィルターを用いて形成された,有機ELディスプレイ。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,分光特性に優れたカラーフィルターの青色画素を提供しうる着色樹脂組成物,これを用いて形成された画素を有するカラーフィルター,並びに該カラーフィルターを用いて形成された有機ELディスプレイおよび液晶表示装置に関する。」

ウ 「【背景技術】
【0002】
近年,フラットディスプレイとして,カラーの液晶表示装置や有機ELディスプレイが注目されており,これらのディスプレイにはカラーフィルタが用いられている。
例えば,カラー液晶表示装置には,一例として,ブラックマトリックス,複数の色(通常,赤(R),緑(G),青(B)の3原色)からなる着色層,透明電極および配向層を備えたカラーフィルタ基板と,薄膜トランジスタ(TFT素子),画素電極および配向層を備えた対向電極基板と,これら両基板を所定の間隙をもたせて対向させ,シール部材で密封して,上記間隙に液晶材料を注入して形成された液晶層とから概略構成された透過型の液晶表示装置がある。また,上記のカラーフィルタの基板と着色層との間に反射層を設けた反射型の液晶表示装置もある。
【0003】
有機ELディスプレイは,原理的には,陽極と陰極との間に有機EL発光層をはさんだ構造の有機EL素子を有するものであるが,実際に,有機EL素子を用いてカラー表示の可能な有機ELディスプレイとするには,(1)三原色の各色をそれぞれ発光する有機EL素子どうしを配列する方式,(2)白色光に発光する有機EL素子を三原色のカラーフィルター層と組み合わせる方式,並びに(3)青色発光する有機EL素子と,青→緑,及び青→赤にそれぞれ色変換する色変換層(CCM層)とを組み合わせるCCM方式等がある。
【0004】
(1)の方式は言うまでもなく,各色の有機EL素子を使用するため高い色再現性を発現し得るのが特徴である。特許文献3乃至4に記載されているように,各色の有機EL素子に対応してカラーフィルターを載置することにより,色再現性の向上や,反射光を吸収することによるコントラスト向上が期待できるため,有望な方式の一つとされている。
又,(2)の白色有機EL+カラーフィルター方式および(3)のCCM方式では,同じ色に発光する有機EL素子を一種類使用すればよいので,上記(1)の方式の有機ELディスプレイにおけるように,各色の有機EL素子の特性を揃える必要が無く,製造コスト面でも工程数および材料の削減等が可能となり,注目を集めているフルカラー化方式である。
【0005】
カラーフィルターおよび色変換フィルターと有機発光体を構成要素とする色変換方式を用いた有機EL素子において,カラーディスプレイの製造工程で要求される耐熱性や,ディスプレイとして使用される際の耐候性,ならびに高精細度の画像が要求されるものについては,顔料分散法で作成されたカラーフィルターを用いるのが主流となっており,感光性樹脂溶液中に赤色,青色または緑色の顔料を粒径1μm以下に微分散したものをガラス基板上に塗布した後,フォトリソグラフィーにより所望のパターンで画素を形成している(特公平4-37987号公報,特公平4-39041号公報等)。
【0006】
カラーフィルターに関しては,色純度,彩度,光透過量の向上が求められており,従来は,光透過量の向上を目的として,画像形成用材料中の感光性樹脂に対する着色顔料の含有量を減らすか,もしくは画像形成用材料により形成される画素の形成膜厚を薄くするというような方法が採られてきた。しかしながら,これらの方法ではカラーフィルター自身の彩度が低下し,ディスプレイ全体が白っぽくなって表示に必要な色の鮮やかさが犠牲となってしまい,逆に彩度を優先して着色顔料含有量をあげるとディスプレイ全体が暗くなり,明るさを確保するためにバックライトの光量を大きくしなければならず,ディスプレイの消費電力増大を招いてしまうという問題がある。
【0007】
これに対して,光透過量の向上を目的として,顔料粒子の粒径をその呈色波長の1/2以下にまで微分散する方法が知られているが(橋爪清,色材協会誌,1967年12月,p608),青色顔料は他の赤色,緑色顔料に比較して呈色波長が短いため,この場合にはさらなる微分散を必要として,コストアップならびに分散後の安定化が問題となる。」

エ 「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は,分光特性に優れたカラーフィルターの青色画素を提供することができ,かつ前述したカラーディスプレイ製造工程で要求される耐熱性をも満たす,着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また,このような着色樹脂組成物を用いることにより,青色画素の色純度および透過率に優れたカラーフィルター,および青色純度の良い有機ELディスプレイ並びに液晶表示装置を提供することを目的とする。」

オ 「【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは,カラーフィルターの青色画素形成用の材料として,特定構造のトリアリルアミン系染料を使用することにより,上記課題を解決できることを見出し,本発明に至った。」

カ 「【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,カラーディスプレイ製造工程で要求される耐熱性も満たし,青色画素の色純度および透過率に優れたカラーフィルターを得ることができ,またこのようなカラーフィルターを使用することにより,有機ELディスプレイの発光や,カラーフィルターのバックライトの発光を効率良く取り出すことができ,高色再現性及び高輝度を両立した有機ELディスプレイや液晶表示装置を提供することができる。」

キ 「【0136】
[(c)顔料]
本発明の着色樹脂組成物は,耐熱性を向上させるため等に,本発明の効果を損なわない範囲で(c)顔料を含有していてもよい。」

ク 「【0174】
[着色樹脂組成物の応用]
本発明の着色樹脂組成物は,通常,すべての構成成分が溶剤中に溶解或いは分散された状態である。これが基板上へ供給され,カラーフィルターや液晶表示装置,有機ELディスプレイなどの構成部材が形成される。
以下,本発明の着色樹脂組成物の応用例として,カラーフィルターの画素としての応用,及びそれらを用いた液晶表示装置(パネル)および有機ELディスプレイについて,説明する。
【0175】
[カラーフィルターの画素]
カラーフィルターの画素は,後述するように様々な方法で形成することができる。ここでは光重合性の着色樹脂組成物を使用してフォトリソグラフィ法にて形成する場合を例に,詳細に説明するが,製造方法はこれに限定されるものではない。
カラーフィルターの透明基板としては,透明で適度の強度があれば,その材質は特に限定されるものではない。材質としては,例えば,ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスルホン系樹脂等の熱可塑性樹脂製シート;エポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂シート;又は各種ガラス等が挙げられる。この中でも,耐熱性の観点からガラス,耐熱性樹脂が好ましい。」

ケ 「【0176】
上述の透明基板上にブラックマトリックスを設け,更に通常は赤色,緑色,青色の画素画像を形成することにより,カラーフィルターを作製することができる。」

コ 「【0179】
黒色の光重合性組成物に関しては透明基板上に,赤色,緑色,青色の着色樹脂組成物に関しては,透明基板上に形成された樹脂ブラックマトリックス形成面上,又は,クロム化合物その他の遮光金属材料を用いて形成された金属ブラックマトリックス形成面上に,塗布,加熱乾燥,画像露光,現像及び熱硬化の各処理を経て,各色の画素画像が形成される。
【0180】
ブラックマトリックスを設けた透明基板上に,赤色,緑色,青色のうち一色の色材を含有する着色樹脂組成物を塗布し,乾燥した後,塗布膜の上にフォトマスクを重ね,このフォトマスクを介して画像露光,現像,必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成させ,着色層を作成する。この操作を,赤色,緑色,青色の三色の着色樹脂組成物について各々行うことによって,カラーフィルター画像を形成することができる。本発明では,青色画素の形成に,上述してきた本発明の着色樹脂組成物を使用する。」

サ 「【0184】
基板に着色樹脂組成物を塗布した後の塗布膜の乾燥は,ホットプレート,IRオーブン,コンベクションオーブンを使用した乾燥法によるのが好ましい。通常は,予備乾燥の後,再度加熱させて乾燥させる。予備乾燥の条件は,前記溶剤成分の種類,使用する乾燥機の性能等に応じて適宜選択することができる。乾燥温度及び乾燥時間は,溶剤成分の種類,使用する乾燥機の性能等に応じて選択されるが,具体的には,乾燥温度は通常40℃以上,好ましくは50℃以上,又,通常80℃以下,好ましくは70℃以下の範囲であり,乾燥時間は通常15秒以上,好ましくは30秒以上,又,通常5分間以下,好ましくは3分間以下の範囲である。又,再加熱乾燥の温度条件は,予備乾燥温度より高い温度が好ましく,具体的には,通常50℃以上,好ましくは70℃以上,又,通常200℃以下,好ましくは160℃以下,特に好ましくは130℃以下の範囲である。又,乾燥時間は,加熱温度にもよるが,通常10秒以上,好ましくは15秒以上,又,通常10分以下,好ましくは5分以下の範囲とするのが好ましい。乾燥温度は,高いほど透明基板に対する接着性が向上するが,高過ぎるとバインダー樹脂が分解し,熱重合を誘発して現像不良を生ずる場合がある。尚,この塗布膜の乾燥工程としては,温度を高めず減圧チャンバー内で乾燥を行なう減圧乾燥法を用いてもよい。
【0185】
画像露光は,着色樹脂組成物の塗布膜上に,ネガのマトリックスパターンを重ね,このマスクパターンを介し,紫外線又は可視光線の光源を照射して行う。この際,必要に応じ,酸素による光重合性層の感度の低下を防ぐため,光重合性層上にポリビニルアルコール層等の酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。上記の画像露光に使用される光源は,特に限定されるものではない。光源としては,例えば,キセノンランプ,ハロゲンランプ,タングステンランプ,高圧水銀灯,超高圧水銀灯,メタルハライドランプ,中圧水銀灯,低圧水銀灯,カーボンアーク,蛍光ランプ等のランプ光源;アルゴンイオンレーザー,YAGレーザー,エキシマレーザー,窒素レーザー,ヘリウムカドミニウムレーザー,半導体レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には,光学フィルターを利用することもできる。
【0186】
カラーフィルターは,着色樹脂組成物の塗布膜に対し,上記の光源によって画像露光を行なった後,有機溶剤,又は,界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液を用いて現像を行うことによって,基板上に画像を形成して作製することができる。この水溶液には,更に有機溶剤,緩衝剤,錯化剤,染料又は顔料を含ませることができる。」

シ 「【0189】
現像方法は,浸漬現像法,スプレー現像法,ブラシ現像法,超音波現像法等の何れかの方法によることができる。
現像の後のカラーフィルターには,熱硬化処理を施す。この際の熱硬化処理条件は,温度は通常100℃以上,好ましくは150℃以上,又,通常280℃以下,好ましくは250℃以下の範囲で選ばれ,時間は5分間以上,60分間以下の範囲で選ばれる。これら一連の工程を経て,一色のパターニング画像形成は終了する。この工程を順次繰り返し,ブラック,赤色,緑色,青色をパターニングし,カラーフィルターを形成する。尚,4色のパターニングの順番は,上記した順番に限定されるものではない。」

ス 「【0197】
[有機ELディスプレイ]
本発明のカラーフィルターを用いて有機ELディスプレイを作成する場合,例えば図1に示すように,カラーフィルター上に有機保護層30および無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製することができる。有機発光体500の積層方法としては,カラーフィルター上面へ透明陽極50,正孔注入層51,正孔輸送層52,発光層53,電子注入層54,および陰極55を逐次形成していく方法や,別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100は,パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。」

セ 「【0198】
次に,合成例,実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが,本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1?3及び比較例1?5>
[1]染料の合成
[1-1]合成例1:
【0199】
【化19】

【0200】
東京化成工業社製Basic Blue 7(CI-42595)5.14重量部を水500重量部に溶解し,攪拌しながら1-ナフタレンスルホン酸ナトリウム4.60重量部を加え,室温で1時間攪拌した。氷冷し,沈殿を濾取し,水で洗浄した。ケーキを風乾したのち,減圧乾燥して,上記構造式で表される染料A 6.11重量部(収率89%)を得た。」

ソ 「【0216】
[4]分光特性及び耐熱性評価
5cm角に切断したガラス基板上に,上記各着色樹脂組成物をスピンコート法により乾燥膜厚1.8μmとなるように塗布し,減圧乾燥させた後,ホットプレート上にて80℃3分間プリベークした。その後,60mJ/cm^(2)の露光量にて全面露光した後,日立製作所製分光光度計U-3310にて,分光透過率を測定し,XYZ表色系における色度(C光源)を算出した。結果を表?4および表?5に示す。
【0217】
実施例の着色樹脂組成物は,類似構造を有する染料を含む着色樹脂組成物(比較例1?4)や従来の顔料分散系着色樹脂組成物(比較例5)に比較して,卓越した分光特性を有することがわかる。特に同一色度座標における輝度(Y)は,従来顔料系に比べて20%以上の向上を示している。
又,類似構造を有する染料(比較例2?4)との比較においては,同一染料濃度,同一膜厚において実施例に記載の着色樹脂組成物が濃い青色を表現しているのに対し,比較例2?4の着色樹脂組成物は淡い青緑色を表現しているに過ぎない(表5の色度データ参照)ことから,色再現性の点で圧倒的な優位性を示しているといえる。
続いて,上記基板のうち分光特性の良好であった実施例1?3及び比較例1について,クリーンオーブンにて150℃,180℃及び200℃にて30分焼成した後,上記同様,分光透過率を測定し,色差(ΔE^(*)ab)を測定した。結果を表?6に示す。実施例の着色樹脂組成物は,比較例の組成物に比べて,高い耐熱性を有し,中でも,実施例1,2が特に優れていることがわかる。
【0218】
【表4】

【0219】
【表5】

【0220】
【表6】



タ 「【0221】
次に,上記塗布基板を,有機電界蛍光発光素子と組合せて色度測定を行った。
[5]有機電界蛍光発光素子の作成
図2に示す有機電界蛍光発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(スパッター製膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を,アセトンによる超音波洗浄,純水による水洗,イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後,窒素ブローで乾燥し,最後に紫外線オゾン洗浄を行った。続いて,正孔輸送層3として,式IXに示す9,9-ビス[4-(N,N-ビスナフチルアミノ)フェニル]-9H-フルオレン(LT-N121,Luminescent Technology社製)をるつぼ温度285℃?310℃として,蒸着速度0.1nm/秒で40nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は1.7×10^(-4)Paであった。
【0222】
【化27】

【0223】
次に,発光層4として,式Xに示す2,2’-ジペリレニル-9,9’-スピロビフルオレン(LT-N428,Luminescent Technology社製)と式XIに示す2,7-ビス[9,9‘-スピロビフルオレニル]-9,9‘-スピロビフルオレン(LT-N628,Luminescent Technology社製)とを,以下の条件で共蒸着した。
【0224】
【化28】

【0225】
【化29】

【0226】
(発光層の蒸着条件)
LT-N428のるつぼ温度320℃?330℃LT-N628のるつぼ温度450℃?455℃
LT-N428の蒸着速度0.1nm/秒
LT-N628の蒸着速度0.05nm/秒
上記の条件により,30nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は1.7?1.9×10^(-4)Paであった。続いて,発光層4の上に,電子輸送層5として式XIIに示す1,3-ビス[2-(2,2‘-ビピリジニル)-1,3,4-オキサジアゾイル]-ベンゼン(LT-N820,Luminescent Technology社製)を同様にして30nmの膜厚で蒸着した。このときのLT-N820のるつぼ温度は255℃?260℃,蒸着速度は0.08nm/秒?0.1nm/秒の範囲で制御し,蒸着時の真空度は1.2×10^(-4)Paであった。
【0227】
【化30】

【0228】
なお上記の正孔輸送層3,発光層4及び電子輸送層5を真空蒸着する際の基板温度は室温に保持した。ここで,電子輸送層5まで形成した素子を,一旦,真空蒸着装置内より大気中に取り出した。次に,陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを,陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させた。続いて,この素子を別の真空蒸着装置内に設置し,有機層を形成した場合と同様に,真空蒸着装置内の真空度が2.3×10^(-5)Pa以下になるまで排気した。次に,陰極9として,先ず,フッ化リチウム(LiF)を,モリブデンボートを用いて,蒸着速度0.008nm/秒?0.01nm/秒,真空度3.7×10^(-6)Paで,0.5nmの膜厚で電子輸送層5の上に製膜した。続いて,同様に,アルミニウムをモリブデンボートにより加熱し,蒸着速度0.1nm/秒?0.2nm/秒,真空度2.7×10^(-6)Pa?2.5×10^(-6)Paで膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。以上の2層型の陰極6を形成する際に,蒸着時の基板温度を室温に保持した。以上の様にして,2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界蛍光発光素子を調製しした。 この素子に6Vの電圧を印加した際の発光の有無と発光色を評価した。この時のEL発光スペクトルの極大波長は436nmであり,CIE色度座標(正面輝度10?1000cd/m^(2)時のCIE色度座標)は(0.16,0.15)であった。
【0229】
[6]分光特性評価
上記有機電界蛍光発光素子と,実施例1?3,比較例1?5の塗布基板を組合せて色度を測定した。結果を表?7に示す。
【0230】
【表7】

【0231】
前記C光源での比較と同様,有機電界蛍光発光素子を光源とした場合の比較においても,実施例に記載の着色樹脂組成物は高い分光特性を有することがわかる。」

(2) 引用発明
引用例1には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。なお,段落番号は,引用発明の認定に活用した引用例1の記載箇所を示すために併記したものである。
「 【0197】カラーフィルター上に有機保護層30および無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製することができ,有機発光体500の積層方法としては,カラーフィルター上面へ透明陽極50,正孔注入層51,正孔輸送層52,発光層53,電子注入層54,および陰極55を逐次形成していく方法や,別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられ,
【0175】カラーフィルターの画素は,様々な方法で形成することができ,
【0180】ブラックマトリックスを設けた透明基板上に,赤色,緑色,青色のうち一色の色材を含有する着色樹脂組成物を塗布し,乾燥した後,塗布膜の上にフォトマスクを重ね,このフォトマスクを介して画像露光,現像,必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成させ,着色層を作成し,この操作を,赤色,緑色,青色の三色の着色樹脂組成物について各々行うことによって,カラーフィルター画像を形成することができ,
青色画素の形成に,着色樹脂組成物を使用し,
着色樹脂組成物は,
【請求項1】(a)バインダー樹脂,および(b)溶剤を含有し,かつ下記一般式(I)で表されるトリアリールメタン系色素を溶解してなり,
【化1】

(式(I)中,R^(1),R^(2),R^(3)およびR^(4)はそれぞれ独立にアルキル基を示し,R^(5)はアルキル基または置換基を有しても良いアリール基を示し,X^(-)はCl^(-)またはArSO_(3)^(-)を示す。Arは芳香族環を表し,該芳香族環は,置換基を有していても良いアミノ基で置換されていてもよい。)
【0016】カラーディスプレイ製造工程で要求される耐熱性を満たし,青色画素の色純度および透過率に優れたカラーフィルターを得ることができ,またこのようなカラーフィルターを使用することにより,有機ELディスプレイの発光を効率良く取り出すことができ,高色再現性及び高輝度を両立した
有機ELディスプレイ。」

2 引用例2?5記載事項
(1) 引用例2
ア 引用例2には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【0020】○本発明の第五の発明の従来の技術
従来,カラーフィルターとしては,基板上にゼラチン,カゼイン,グリューあるいはポリビニルアルコールなどの親水性高分子物質からなる媒染層を設け,その媒染層を色素で染色して着色層を形成する染色カラーフィルターが知られている。
【0021】このような染色法では,使用可能な染料が多くフィルターとして要求される分光特性への対応が比較的容易であるが,媒染層の染色工程に,染料を溶解させた染色浴中に媒染層を浸漬するというコントロールの難しい湿式工程を採用しており,また各色毎に防染用の中間層を設けるといった複雑な工程を有するため歩留りが悪いといった欠点を有している。また染色可能な色素の耐熱性が150 ℃程度以下と比較的低く,該フィルターに熱的処理を必要とする場合には,使用が困難である上,染色膜自体の耐熱性,耐光性等の信頼性が劣るといった欠点も有している。」

(イ)「【0096】なお,本発明のカラーフィルターは,それ自体充分な耐久性を有する良好な材料で構成されているが,特に,より各種の環境条件から,カラーフィルターを保護するためには,カラーフィルター表面に,ポリアミド,ポリイミド,ポリウレタン,ポリカーボネート,シリコン系等の有機樹脂やSi_(3) N_(4) ,SiO_(2) ,SiO,Al_(2) O_(3) ,Ta_(2) O_(3) 等の無機膜をスピンコート,ロールコートの塗布法で,あるいは蒸着法によって,保護層として設けることができる。さらに,上記保護層を形成した後,材料によっては,配向処理を施すことにより,液晶を用いたデバイスへの適用も可能となる。」

イ 引用例2には,以下の技術が記載されている(以下「引用例2記載技術」という。)。
「各種の環境条件から,カラーフィルターを保護するために,カラーフィルター表面に,ポリアミド,ポリイミド,ポリウレタン,ポリカーボネート,シリコン系等の有機樹脂やSi_(3) N_(4) ,SiO_(2) ,SiO,Al_(2) O_(3) ,Ta_(2) O_(3) 等の無機膜をスピンコート,ロールコートの塗布法で,あるいは蒸着法によって,保護層として設ける技術。」

(2) 引用例3
ア 引用例3には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,印刷インキからなる着色層を有し,かつガスバリア性を持つ積層フィルムに係わり,特にフィルム積層に際して,ガスバリア性の劣化や着色層を挟むフィルム基材間の気泡発生を防止した構成の積層フィルムに関する。この積層フィルムは,光学分野の用途に好適に用いられるものである。」

(イ)「【0015】本発明において用いられる透明蒸着フィルム層23の蒸着層3は,水蒸気や酸素等のガスバリア層として機能するものであり,このガスバリア性のレベルは用途により適宜設定されるもので特に限定されるものではない。安定したガスバリア性能を確保すると共に,廃棄による2次公害を抑える上で好ましいのは,Al,Si,Ti,Zn,Zr,Mg,Sn,Cu,Fe等の金属やこれら金属の酸化物,窒化物など,より具体的には,SiOx(x=1.0?2.0),アルミナ,マグネシア,硫化亜鉛,チタニア,ジルコニア,酸化セリウム等であり,これらは必要により2種以上の混合蒸着層としたり,あるいは複層構造の蒸着層とすることも可能である。
【0016】上記無機質蒸着層の好ましい厚さは,通常10?5000Å,より好ましくは50?2000Åの範囲であり,厚さが10Å未満では十分なガスバリア性が得られ難く,また5000Åを超えて過度に厚くしてもそれ以上のガスバリア性向上効果は得られず,むしろ耐屈曲性や製造コストの点で不利となる。
【0017】上記無機質蒸着層の形成には,真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法等の物理蒸着法,あるいは化学蒸着法等が適宜選択して用いられる。真空蒸着法を採用する際の好ましい蒸着材料としては,アルミニウム,珪素,チタン,マグネシウム,ジルコニウム,セリウム,亜鉛等の金属,あるいはSiOx(x=1.0?2.0),アルミナ,マグネシア,硫化亜鉛,チタニア,ジルコニア等の化合物やそれらの混合物が用いられ,加熱法としては,抵抗加熱,誘導加熱,電子線加熱などを用いることができる。また反応ガスとしては,酸素,窒素,水素,アルゴン,炭酸ガス,水蒸気等を導入したり,オゾン添加,イオンアシスト等の手段を併用した反応性蒸着を用いてもよい。更には,基板にバイアスを印加したり,基板の加熱,冷却等の成膜条件を変更してもよい。上記蒸着材料,反応ガス,基板バイアス,加熱・冷却等は,スパッタリング法やCVD法を採用する際にも同様の成膜条件変更が可能である。
【0018】本発明では,上記のガスバリア層を形成する主たる無機化合物層として種々の酸化物や窒化物などが挙げられるが,生産性や性能の点からアルミニウム酸化物や珪素酸化物を主としたものが最も好ましいものである。
【0019】このアルミニウム酸化物または/および珪素酸化物からなるガスバリア層の形成には,電子線加熱や誘導加熱,抵抗加熱を蒸発手段とした真空蒸着法の他,スパッタリング法,CVD法およびイオンプレ-ティング法などを用いることが出来るが,生産性の点から巻取りフィルム上に真空蒸着法を用いて製膜する方法が好ましいものである。」

イ 引用例3には,以下の技術が記載されている(以下「引用例3記載技術」という。)。
「蒸着層3は,水蒸気や酸素等のガスバリア層として機能するものであり,アルミニウム酸化物または/および珪素酸化物からなるガスバリア層の形成には,電子線加熱や誘導加熱,抵抗加熱を蒸発手段とした真空蒸着法の他,スパッタリング法,CVD法およびイオンプレ-ティング法などを用いる,蒸着層。」

(3) 引用例4
ア 引用例4には,以下の事項が記載されている。
(ア)1頁左下欄15行?2頁左上欄13行
「 産業上の利用分野
本発明は透明基板上に着色層を形成して構成されるカラーフィルターに関するものであり,特に液晶カラーディスプレイ及び撮像管用のカラーフィルターの耐光性向上に関する。
従来の技術
ガラス等の透明基板上にゼラチン等の有機染色層を形成した後,染料によって染色し,その染色層上に保護膜を形成して構成されるカラーフィルターは液晶カラーディスプレイ用として実用化されている。しかし,このカラーフィルターに,長時間強い光を照射すると退色して,色が抜けてしまう。このように耐光性が悪いことがカラーフィルターを液晶カラーディスプレイとして用いる場合,大きな問題となっている。
これに対してカラーフィルターの耐光性を高めるために,染色層の上に設けた保護膜の上に,ITO(インジウムティンオキサイド),酸化インジウム等の酸化膜を形成している(特開昭60-112001号公報)。
発明が解決しようとする問題点
しかしながら,酸化膜を形成しただけでは,不十分で,キセノンランプで光を長時間照射すると,カラーフィルターの透過率が変化し退色が起こる。
これば,ITO等の酸化膜がち密な構造をしていないので,染料が光によって分解される時に必要となる物質,例えば,酸素や水を遮断できないからである。
問題点を解決するための手段
透明基板上に着色層,窒化膜層及び透明電極層を順次積層する。
本発明は改善された耐光性を有するカラーフィルターを提供することを目的としている。
作用
窒化膜は分子構造が3次元の網目構造をしているので,ち密な膜である。そのため,染料の耐光性に悪い影響を与える酸素や水の侵入を防止し,カラーフィルターの耐光性を高めることができると考えられる。」

(イ)2頁右上欄5行?右上欄13行
「 本発明に用いる窒化膜層としては,窒化シリコン,窒化ホウ素,窒化アルミニウム等が例としてあげられる。これらの中でも,窒化シリコン膜が耐光性に対して,特によかった。膜厚としては,光の透過率に影響を与えない0.5μm以下がよい。
窒化膜の形成法としては,スパッタ法あるいはプラズマ法が例としてあげられる。窒化シリコンの場合は,プラズマ法の方がピンホールの少ないち密な膜ができる。」

イ 引用例4には,以下の技術が記載されている(以下「引用例4記載技術」という。)。
「光の透過率に影響を与えない膜厚であり,分子構造が3次元の網目構造をしているち密な膜であるため,染料の耐光性に悪い影響を与える酸素や水の侵入を防止し,カラーフィルターの耐光性を高めることができる窒化膜。」

(4) 引用例5
ア 引用例5には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
層状無機化合物を主要構成成分とする膜が,(1)層状無機化合物と水可溶性樹脂から構成される,(2)層状無機化合物の全固体に対する重量比が70%以上である,(3)全光線透過率が80%を超える,(4)ガスバリア性を有する,及び(5)自立膜として利用可能な機械的強度を有する,ことを特徴とする透明材。
【請求項2】
無機層状化合物が,層状ケイ酸,あるいは層状チタン酸,あるいはそれらの塩であることを特徴とする,請求項1に記載の透明材。
【請求項3】
層状無機化合物が,雲母,バーミキュライト,モンモリロナイト,バイデライト,サポナイト,ヘクトライト,スチーブンサイト,マガディアイト,アイラライト,カネマイト,及び層状チタン酸,のうちの一種以上であることを特徴とする,請求項1に記載の透明材。」

(イ)「【請求項5】
加熱,光照射等の任意の方法により,上記添加物分子内,添加物分子間,添加物と無機層状化合物間,無機層状化合物結晶間において,付加反応,縮合反応,重合反応等の化学反応を行わせ,新たな化学結合を生じさせて,光透過性,ガスバリア性,あるいは機械的強度を改善させたことを特徴とする,請求項1に記載の透明材。」

(ウ)「【請求項10】
酸素ガスに対する透過係数が,室温において3.2×10^(-11)cm^(2)s^(-1)cmHg^(-1)未満であることを特徴とする,請求項1から9のいずれかに記載の透明材。」

(エ)「【0002】
ブラウン管方式に代わる,省エネルギーディスプレイとして,液晶,有機ELなどが開発され,電子ペーパー等の用途も含め,ディスプレイ全体のフレキシブル化が次の目標となっており,このための柔軟な,耐熱性透明フィルムが求められている。しかしながら,従来材料,例えば,プラスチックフィルムは,柔軟であるものの,その耐熱性及びガスバリア性は十分とは言えず,薄板ガラスは光透過性・耐熱性に優れるものの,柔軟性が十分ではないという問題がある。しかも,薄板ガラスにはその厚さを0.4ミリメートル程度にまでしかできないため,柔軟性に加えて軽量化が難しいという問題がある。そのため,柔軟性・耐熱性・透明性・ガスバリア性を併せ持つフィルム状材料の開発が強く求められている。特に,柔軟性及び軽量化の実現のために,フィルムを極力薄くすることが望まれており,また,フィルム基板に対しては,表面平滑性,耐薬品性,寸法安定性,あるいは低膨張率性が求められる。」

(オ)「【0021】
したがって,本発明の無機層状化合物膜は,高温条件下でフレキシビリティーに優れ,ガスバリア性に優れた自立膜として,広範に使用することができ,例えば,200℃を超える高温においても化学的に安定で透明性を保つ,柔軟なディスプレイ材料・包装材料・電子デバイス封止材料などとして用いることができる。また,水可溶性高分子は,極性高分子であり,同様に極性を有する無機層状化合物と相互作用し,フレキシビィリティー,強度,透明性の点で優れた薄膜を生成する。そのため,無機層状化合物薄膜の引っ張り,捩れ等による容易な破壊が抑えられ,それにより,自立膜として利用可能な優れた特性を有する無機層状化合物膜が得られる。更に,本発明の無機層状化合物膜は,LCD用基板フィルム,有機EL用基板フィルム,電子ペーパー用基板フィルム,電子デバイス用封止フィルム,レンズフィルム,導光板用フィルム,プリズムフィルム,位相差板・偏光板用フィルム,視野角補正フィルム,PDP用フィルム,LED用フィルム,光通信用部材,タッチパネル用透明フィルム,各種機能性フィルムの基板フィルム,内部が透けて見える構造の電子機器用フィルム,ビデオディスク・CD/CD-R/CD-RW/DVD/MO/MD・相変化ディスク・光カードを含む光記録メディア用フィルム,燃料電池用封止フィルム,太陽電池用フィルム等として用いることも可能である。
【0022】
上記無機層状化合物膜を他部材に貼り付ける一例として,多層化が例示される。つまり,無機層状化合物複合膜を他の材料から作製された膜Bと多層化することにより,気体バリア性能及び機械的強度を向上させて用いることが可能である。例えば,無機層状化合物複合膜とプラスチック膜の一種としてフッ素樹脂フィルムを接着剤によって貼り合わせて多層化した膜が例示される。フッ素樹脂フィルムは低透湿性であることから,フッ素樹脂フィルムと無機層状化合物複合膜との多層膜は高遮湿性及び高ガスバリア性の膜として利用可能である。ここで,膜Bの材質としては,粘土膜との多層膜の成形性が良好であれば,特に制限はないが,好適には,例えば,金属箔,薄板硝子,各種プラスチック膜,紙などが例示される。更に,無機層状化合物複合膜を含む三層以上の多層膜を用いることも可能である。」

(カ)「【0066】
以上詳述したように,本発明は,無機層状化合物を主要構成成分とする膜であることを特徴とする透明材であり,自立膜として利用可能な機械的強度を有し,無機層状化合物粒子の配向積層を高度に向上させた透明材に係るものであり,本発明の無機層状化合物膜は,自立膜として用いることが可能であり,また,200℃を超える高温条件下で使用が可能であり,かつ,フレキシビリティーに優れており,更に,ピンホールの存在しない緻密な材料であり,ガスバリア性に優れるといった特徴を有するものである。したがって,本発明の無機層状化合物膜は,生産あるいは加工時の高温条件に耐える部材であり,フレキシビリティーに優れた透明フィルムとして広範に使用することができる。また,本発明の無機層状化合物膜は,高温条件下において,フレキシビリティーに優れた透明フィルムとして広範に使用することがでる。更に,本発明の無機層状化合物膜は,高いガスバリア性が要求される透明フィルムとして広範に使用することができる。そのため,本発明の無機層状化合物膜は,多くの製品に利用することができる。製品例としては,LCD用基板フィルム,有機EL用基板フィルム,電子ペーパー用基板フィルム,電子デバイス用封止フィルム,レンズフィルム,導光板用フィルム,プリズムフィルム,位相差板・偏光板用フィルム,視野角補正フィルム,PDP用フィルム,LED用フィルム,光通信用部材,タッチパネル用透明フィルム,各種機能性フィルムの基板フィルム,内部が透けて見える構造の電子機器用フィルム,ビデオディスク・CD/CD-R/CD-RW/DVD/MO/MD・相変化ディスク・光カードを含む光記録メディア用フィルム,燃料電池用封止フィルム,太陽電池用フィルム等があげられる。」

イ 引用例5には,以下の技術が記載されている(以下「引用例5記載技術」という。)。
「層状無機化合物と水可溶性樹脂から構成され,加熱,光照射等の方法により新たな化学結合を生じさせて,光透過性,ガスバリア性,あるいは機械的強度を改善させた,層状無機化合物を主要構成成分とする膜であって,
無機層状化合物が,層状ケイ酸,層状チタン酸,雲母,バーミキュライト,モンモリロナイト,バイデライト,サポナイト,ヘクトライト,スチーブンサイト,マガディアイト,アイラライト,カネマイト又は層状チタン酸であり,
酸素ガスに対する透過係数が,室温において3.2×10^(-11)cm^(2)s^(-1)cmHg^(-1)未満である,透明材。」

3 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりである。
ア カラーフィルタ
引用発明の「カラーフィルターの画素は,様々な方法で形成することができ」,例えば,「ブラックマトリックスを設けた透明基板上に,赤色,緑色,青色のうち一色の色材を含有する着色樹脂組成物を塗布し,乾燥した後,塗布膜の上にフォトマスクを重ね,このフォトマスクを介して画像露光,現像,必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成させ,着色層を作成し,この操作を,赤色,緑色,青色の三色の着色樹脂組成物について各々行うことによって,カラーフィルター画像を形成する」方法を採用することができる。
ここで,この方法を採用した引用発明の「透明基板」及び「カラーフィルター」は,それぞれ,本願発明の「透明基材」及び「カラーフィルタ」に相当する。また,引用発明の上記工程からみて,引用発明の「カラーフィルター」は,本願発明の「透明基材上に所定のパターンで設けられた少なくとも赤色着色層,緑色着色層及び青色着色層とを有し」の要件を満たす。

イ 青色着色層
引用発明は,「青色画素の形成に,着色樹脂組成物を使用」するところ,「着色樹脂組成物は,(a)バインダー樹脂,および(b)溶剤を含有し,かつ下記一般式(I)で表されるトリアリールメタン系色素を溶解してなり,
【化1】

(式(I)中,R^(1),R^(2),R^(3)およびR^(4)はそれぞれ独立にアルキル基を示し,R^(5)はアルキル基または置換基を有しても良いアリール基を示し,X^(-)はCl^(-)またはArSO_(3)^(-)を示す。Arは芳香族環を表し,該芳香族環は,置換基を有していても良いアミノ基で置換されていてもよい。)」というものである。そして,この着色樹脂組成物は,「特定構造のトリアリルアミン系染料」(段落【0013】)を含有したものである。
したがって,引用発明の「カラーフィルター」は,本願発明の「前記青色着色層が染料色素を含有し」の要件を満たす。

ウ 有機ELディスプレイ
引用発明の「有機ELディスプレイ」は,本願発明の「有機ELディスプレイ」に相当する。

エ 有機EL発光体
引用発明は,「カラーフィルター上に有機保護層30および無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製することができ」,例えば,「有機発光体500の積層方法としては」,「別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法」を採用することができる。
ここで,この方法を採用した引用発明の「有機発光体500」は,本願発明の「有機EL発光体」に相当する。また,引用発明の「有機ELディスプレイ」は,本願発明の「カラーフィルタと,」「有機EL発光体と,を貼り合わせてなり,」の要件を満たす。

(2) 一致点
本願発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「 透明基材と,該透明基材上に所定のパターンで設けられた少なくとも赤色着色層,緑色着色層及び青色着色層とを有し,
前記青色着色層が染料色素を含有するカラーフィルタと,
有機EL発光体と,を貼り合わせてなる,
有機ELディスプレイ。」

(3) 相違点
本願発明と引用発明は,以下の点で相違する。
ア 相違点1
本願発明は,「前記各着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う酸素バリア膜が設けられているとともに,該酸素バリア膜が,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜,粘着剤を有する酸素バリアフィルムを貼り合わせてなる酸素バリア膜,透明無機材料からなる酸素バリア膜又は無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜であり」という構成を具備するのに対し,引用発明は,有機保護層30及び無機酸化膜40は具備するとしても,何から保護するのか,どのような機能を持っているのか,その目的が特定されておらず,また,成膜方法も明らかではない点。

イ 相違点2
本願発明は,「前記青色着色層が染料色素を含有し,前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含有するカラーフィルタと,少なくとも赤色発光層,緑色発光層及び青色発光層を有する有機EL発光体と,を貼り合わせてなり,前記有機EL発光体が3色塗り分け方式で作製されたものである」という構成を具備するのに対し,引用発明のカラーフィルターは,赤色着色層及び緑色着色層の色素について特定されておらず,また,引用発明の有機EL発光体は3色塗り分け方式で作成されたものであるか明らかではなく,さらに,引用発明の青色着色層,赤色着色層及び緑色着色層と,有機EL発光体の色との対応関係も明らかではない点。

(4) 判断
ア 相違点1について
保護膜によってカラーフィルターを酸素等から保護する必要があることは技術常識であるから,当業者ならば,例えば,引用発明の有機保護層30及び無機酸化膜40に対して,カラーフィルターを酸素等から保護する機能を期待する。なお,本願発明の酸素バリア膜は,「多孔質の,酸化ケイ素」(段落【0060】)程度で良いものである。そして,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜,粘着剤を有する酸素バリアフィルムを貼り合わせてなる酸素バリア膜,透明無機材料からなる酸素バリア膜又は無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜は,引用例2?5記載技術に例示されるように,いずれも周知技術であり,少なくとも公知技術である。
したがって,技術常識を考慮すると,当業者が,引用発明において周知技術又は公知技術の構成を採用して相違点1を克服することは,例えば,以下(ア)?(ウ)のとおり,容易にできたことである。

(ア)本願発明の酸素バリア膜は,「透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜」を発明の要旨に含み,本件出願の段落【0058】には,透明樹脂としてポリアミドが,塗布法としてスピンコート及びロールコートが挙げられているところ,引用例2記載技術のカラーフィルターの保護層も,有機樹脂としてポリアミドが,塗布法としてスピンコート及びロールコートが挙げられているから,酸素バリア膜としての機能を具備する。
したがって,引用発明の有機保護層30を具体化するに際して,引用例2記載技術の構成を採用し,あるいは,引用発明の有機保護層30及び無機酸化膜40に替えて,引用例2記載技術の構成を採用し,引用発明の着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜を設けること(相違点1に係る構成を設けること)は,当業者が容易にできた事項である。あるいは,引用発明のカラーフィルターの透明基板の材質は特に限定されるものではない(段落【0175】)から,透明基板のガスバリア性が不十分な場合において,あらかじめ基板表面に引用例2記載技術の膜を形成した後にカラーフィルター画像を形成する構成として,透明基板側からも,引用発明の着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜を設けること(相違点1に係る構成を設けること)は,当業者が容易にできた事項である。

(イ)本願発明の酸素バリア膜は,「透明無機材料からなる酸素バリア膜」を発明の要旨に含むところ,引用例4記載技術の窒化膜は,染料の耐光性に悪い影響を与える酸素や水の侵入を防止する程度に緻密な膜である。
したがって,引用発明の無機酸化膜40を具体化するに際して,引用例4記載技術の構成を採用し,あるいは,引用発明の有機保護層30及び無機酸化膜40に替えて又は加えて,引用例4記載技術の構成を採用し,引用発明の着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う,透明無機材料からなる酸素バリア膜を設けること(相違点1に係る構成を設けること)は,当業者が容易にできた事項である。あるいは,引用発明のカラーフィルターの透明基板の材質は特に限定されるものではない(段落【0175】)から,透明基板のガスバリア性が不十分な場合において,あらかじめ基板表面に引用例4記載技術の膜を形成した後にカラーフィルター画像を形成する構成として,透明基板側からも,引用発明の着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う,透明無機材料からなる酸素バリア膜を設けること(相違点1に係る構成を設けること)は,当業者が容易にできた事項である。
なお,引用例4記載技術に換えて引用例3記載技術を採用しても,同様である。

(ウ)本願発明の酸素バリア膜は,「無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜」を発明の要旨に含むところ,引用例5記載技術の透明材は,層状無機化合物と水可溶性樹脂から構成され,加熱,光照射等の方法により新たな化学結合を生じさせて,光透過性,ガスバリア性,あるいは機械的強度を改善させた,層状無機化合物を主要構成成分とする膜であって,酸素ガスに対する透過係数が,室温において3.2×10^(-11)cm^(2)s^(-1)cmHg^(-1)未満である。
したがって,引用発明の無機酸化膜40を具体化するに際して,引用例5記載技術の構成を採用し,あるいは,引用発明の有機保護層30及び無機酸化膜40に加えて,引用例5記載技術の構成を採用し,引用発明の着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う,無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜を設けること(相違点1に係る構成を設けること)は,当業者が容易にできた事項である。あるいは,引用発明のカラーフィルターの透明基板の材質は特に限定されるものではない(段落【0175】)から,透明基板のガスバリア性が不十分な場合において,あらかじめ基板表面に引用例5記載技術の透明材を設けた後にカラーフィルター画像を形成する構成として,透明基板側からも,引用発明の着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う,無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜を設けること(相違点1に係る構成を設けること)は,当業者が容易にできた事項である。

イ 相違点2について
引用例1の段落【0003】には,カラー表示の可能な有機ELディスプレイには,(1)三原色の各色をそれぞれ発光する有機EL素子どうしを配列する方式,(2)白色光に発光する有機EL素子を三原色のカラーフィルター層と組み合わせる方式,(3)青色発光する有機EL素子と,青→緑,及び青→赤にそれぞれ色変換する色変換層(CCM層)とを組み合わせるCCM方式等の,種々の方式があることが開示されている。また,引用例1の段落【0004】には,(1)の方式は,各色の有機EL素子を使用するため高い色再現性を発現し得ること,また,各色の有機EL素子に対応してカラーフィルターを載置することにより,色再現性の向上や,反射光を吸収することによるコントラスト向上が期待できることが開示されている。
ここで,引用発明は,赤・緑・青の着色層を具備するカラーフィルターと有機発光体を貼り合わせてなる有機ELディスプレイである。
そして,引用例1の段落【0198】?【0200】,【0216】?【0219】及び【0221】?【0231】には,430nm(青色)の光を透過する着色層を具備する塗布基板と発光色が青色である有機発光体を組み合わせて高い分光特性を得たことが開示され,また,段落【0176】には,通常は,赤色,緑色,青色の画素画像を形成することにより,カラーフィルターを作製することが開示されている。
引用例1には,赤色の光を透過する着色層に対応する有機発光体及び緑色の光を透過する着色層に対応する有機発光体に関する明示的な記載が存在しないけれども,以上の事項を勘案すると,当業者が引用発明を有機ELディスプレイとして具体化する際に,青色の場合と同様に,赤色の光を透過する着色層に対応する有機発光体として発光色が赤色である有機発光体を採用し,また,緑色の光を透過する着色層に対応する有機発光体として発光色が緑色である有機発光体を採用すること,すなわち,「カラーフィルタと,少なくとも赤色発光層,緑色発光層及び青色発光層を有する有機EL発光体と,を貼り合わせてなり,前記有機EL発光体が3色塗り分け方式で作製されたものである」という構成を採用することは,引用発明の延長線上にある設計的事項にすぎない。
なお,本願発明の特許請求の範囲には,「前記青色着色層が染料色素を含有し,前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含有するカラーフィルタと,少なくとも赤色発光層,緑色発光層及び青色発光層を有する有機EL発光体と,を貼り合わせてなり,」と記載され,文脈上は,「青色着色層」と「赤色発光層」,「赤色着色層」と「緑色発光層」,「緑色着色層」と「青色発光層」が,それぞれ対応するように貼り合わせてなるようにも解されるところであるが,技術常識を勘案し,「赤色着色層」と「赤色発光層」,「緑色着色層」と「緑色発光層」,「青色着色層」と「青色発光層」が,それぞれ対応するように貼り合わせてなるものと理解する。

次に,引用例1の段落【0005】の記載からは,顔料分散法で作成されたカラーフィルターは,感光性樹脂溶液中に赤色,青色または緑色の顔料を粒径1μm以下に微分散したものをガラス基板上に塗布した後,フォトリソグラフィーにより所望のパターンで画素を形成していることが理解でき,また,段落【0007】の記載からは,光透過量の向上を目的として,顔料粒子の粒径をその呈色波長の1/2以下にまで微分散する方法が知られているが,青色顔料は他の赤色,緑色顔料に比較して呈色波長が短いため,この場合にはさらなる微分散を必要として,コストアップ及び分散後の安定化が問題となることが理解できる。
ここで,これら引用例1の記載を反対解釈すると,顔料分散法で作成されたカラーフィルターにおいて,赤色顔料及び緑色顔料に関しては,青色顔料に比較して呈色波長が長いため,さらなる微分散を必要とせず,コストアップ及び分散後の安定化が問題とならないこと,すなわち,赤色及び緑色に関しては,顔料を使用しても良いことが理解できる。また,引用発明は,「カラーディスプレイ製造工程で要求される耐熱性を満たし,青色画素の色純度および透過率に優れたカラーフィルターを得ることができ,またこのようなカラーフィルターを使用することにより,有機ELディスプレイの発光を効率良く取り出すことができ,高色再現性及び高輝度を両立した」「有機ELディスプレイ」であるところ,引用例1には,青色については耐熱性を満たす着色樹脂組成物が開示されているけれども,赤色及び緑色については,耐熱性を満たす着色樹脂組成物の開示がない。
そうしてみると,光透過性と耐熱性等の両立を図る当業者において,引用発明のカラーフィルターを,「前記青色着色層が染料色素を含有し,前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含有する」ものとすることは,当然である。
あるいは,本願発明のカラーフィルタについて,特許請求の範囲には,「前記青色着色層が染料色素を含有し,前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含有するカラーフィルタ」と記載され,「前記青色着色層が染料色素を含有し顔料色素を含有せず,前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含有し染料色素を含有しないカラーフィルタ」とは記載されていないところ,引用発明の青色着色層は,染料色素を含有しつつも,発明の効果を損なわない範囲で,顔料を含有しても良いものである(段落【0136】)から,引用発明の赤色着色層及び緑色着色層については,なおさら,顔料を含有してもよいものであり,このような観点からみても,引用発明において,「前記青色着色層が染料色素を含有し,前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含有するカラーフィルタ」の構成を採用することは,当然のことといえる。

したがって,引用発明において,相違点2に係る構成を採用することは,引用例1の記載及び引用発明が示唆する事項にすぎないものである。

(5) 効果について
本願発明の効果に関して,本件出願の発明の詳細な説明の段落【0017】,【0032】及び【0033】には,以下のとおり記載されている。
「【0017】
この発明によれば,所定のパターンで設けられた少なくとも赤色着色層,緑色着色層及び青色着色層のうち,少なくとも青色着色層を覆う透明な酸素バリア膜を設けるとともに,その青色着色層が染料色素を含有するので,カラーフィルタに紫外線や可視光が入射した場合にそうした光によって活性酸素がたとえ生じた場合であっても,その活性酸素が青色着色層に到達するのを酸素バリア膜が防ぐ。その結果,青色発光層に含まれる染料色素の活性酸素による褪色を防ぐことができるので,顔料色素よりも透過性に優れる染料色素の劣化を抑制することができ,耐光性に優れた長寿命のカラーフィルタを提供できる。」
「【0032】
本発明のカラーフィルタによれば,カラーフィルタに紫外線や可視光が入射した場合にそうした光によって活性酸素がたとえ生じた場合であっても,その活性酸素が青色着色層に到達するのを酸素バリア膜が防ぐので,少なくとも青色発光層に含まれる染料色素の活性酸素による褪色を防ぐことができ,その結果,顔料色素よりも透過性に優れる染料色素の劣化を抑制することができ,耐光性に優れた長寿命のカラーフィルタを提供できる。さらに,紫外線吸収能を有する保護膜が設けられている場合には,紫外線に基づいた染料色素の劣化が抑制され,透過性に優れる染料色素の劣化をより一層抑制することができる。その結果,染料色素の褪色を長期間抑制することができ,耐光性を向上させることができる。
【0033】
特に青色光の透過性がよく青色着色層の耐光性に優れた本発明のカラーフィルタを色純度に優れる3色塗り分け方式の有機EL発光体と組み合わせて有機ELディスプレイを構成すれば,有機ELディスプレイの安定した色調を長期間保持できるので,長寿命化を実現できる。さらに,本発明のカラーフィルタの特徴を有する限り,カラーフィルタをCCM方式のカラーフィルタとして対応する有機EL発光体と組み合わせれば,前記同様,有機ELディスプレイの安定した色調を長期間保持でき,長寿命化を実現できる。」
しかしながら,段落【0017】に記載の効果及び段落【0032】の第一文に記載の効果は,当業者が,前記(4)アで述べた創意工夫を行うに際し,当業者が,期待する効果に過ぎない。
また,前記(4)イで述べたとおり,有機EL発光体として3色塗り分け方式のものを採用することは,引用発明の延長線上にある設計的事項にすぎないから,段落【0033】の第一文に記載の効果も,当業者が,前記(4)アで述べた創意工夫を行うに際し,当業者が期待する効果に過ぎない。
段落【0032】の第二文及び第三文,並びに,段落【0033】の第二文に記載の効果は,本願発明の構成に対応しない効果である。

なお,上記段落【0017】に記載の効果,段落【0032】の第一文に記載の効果及び【0033】の第一文に記載の効果は,いずれも,本願発明の「前記各着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う酸素バリア膜が設けられている」の構成に対応する効果であるところ,特許請求の範囲には,「前記各着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う酸素バリア膜が設けられている」に加えて,「該酸素バリア膜が,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜,粘着剤を有する酸素バリアフィルムを貼り合わせてなる酸素バリア膜,透明無機材料からなる酸素バリア膜又は無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜であり」と記載されている。
しかしながら,発明の詳細な説明には,「透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜」,「粘着剤を有する酸素バリアフィルムを貼り合わせてなる酸素バリア膜」,「透明無機材料からなる酸素バリア膜」又は「無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜」によって奏される特徴的な効果は記載されていない。むしろ,段落【0057】及び【0060】には,それぞれ,「酸素バリア膜4の形態としては,図1に示すように,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜4Aであってもよいし,図2に示すように,粘着剤4b2を有する酸素バリアフィルム4b1からなる酸素バリア膜4Bであってもよい。なお,こうした酸素バリア膜4は,図4に示すように,着色層3上に平坦化膜7を設け,その平坦化膜7上に設けたものであってもよい。」及び「また,透明無機材料からなる酸素バリア膜4であってもよい。透明無機材料としては,例えば,多孔質の,酸化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化チタン,カーボン,マイカ,クレイ,カオリン,炭酸カルシウム等が挙げられる。こうした酸素バリア膜4は,PVD法やCVD法等の成膜手段で成膜することができる。また,これらの透明無機材料を配合した樹脂フィルムを用いて酸素バリア膜4を構成してもよい。」と記載されている。
したがって,特許請求の範囲の「該酸素バリア膜が,透明樹脂を塗布形成してなる酸素バリア膜,粘着剤を有する酸素バリアフィルムを貼り合わせてなる酸素バリア膜,透明無機材料からなる酸素バリア膜又は無機材料を配合した樹脂フィルムを用いた酸素バリア膜であり」の記載は,単に「前記各着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う酸素バリア膜が設けられている」ための手段を列挙したに過ぎず,本願発明の効果は,「前記各着色層のうち少なくとも青色着色層を覆う酸素バリア膜が設けられている」の構成が奏する効果にとどまるものである。
なお,審判請求人は,意見書において,「本願請求項1の「塗布形成してなる」,「貼り合わせてなる」,「配合した」は,「単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない場合」に該当するものと思料します。」と主張しているところである。

(6) 審判請求人の主張について
審判請求人は,意見書において,概略,(A)段落【0005】は,単にカラーフィルターとしては,顔料分散法で作製されたものを用いるのが主流であることを示しているに過ぎず,また,(B)段落【0007】は,青色顔料を用いる場合には,微分散が必要であることを示しているに過ぎないから,(C)「引用発明のカラーフィルタを,『前記青色着色層が染料色素を含有し,前記赤色着色層及び前記緑色着色層が顔料色素を含有する』ものとすることは,当然である」との結論を導き出すことはできない旨,主張する。

しかしながら,前記(4)イで述べたとおりである。

審判請求人は,意見書において,「青色フィルターの耐光性を向上させることが有機ELディスプレイの長寿命化につながることについては,引用発明には全く示唆されていません。」と主張する。
しかしながら,染料色素を含有するカラーフィルターにおいて,とりわけ耐光性を向上させることが求められることは技術常識であるから,審判請求人が主張する事項は,青色着色層に染料色素を使用する引用発明が示唆する事項にすぎない。

4 小括
本件出願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において,頒布された引用例1?5に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 まとめ
以上のとおりであるから,他の請求項及び他の理由について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-26 
結審通知日 2015-10-27 
審決日 2015-11-10 
出願番号 特願2009-84336(P2009-84336)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G02B)
P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 素川 慎司  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 樋口 信宏
本田 博幸
発明の名称 有機ELディスプレイ  
代理人 吉村 俊一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ