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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
管理番号 1309070
審判番号 不服2014-18120  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-10 
確定日 2015-12-24 
事件の表示 特願2012-535270「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日国際公開、WO2012/173205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年6月14日(パリ条約による優先権主張2011年6月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月3日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成25年12月9日付けで手続補正がなされたが、平成26年6月6日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成26年9月10日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後当審において、平成27年7月21日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成27年9月28日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成27年9月28日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
なお、A.?D.については、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成A」、・・・、「構成D」という。)

「A.画像内の複数の局所領域における画素ごとの標準偏差または疑似標準偏差をそれぞれノイズインデックスとして計算する計算部と、
B.前記計算されたノイズインデックスと当該ノイズインデックスの度数との対応を表すヒストグラムを作成する作成部と、
C.前記作成されたヒストグラムに基づいて前記画像に関するノイズインデックスを推定し、前記ヒストグラムの対象から前記画像の背景領域を示す画素を除去する推定部
D.とを有することを特徴とする画像処理装置。」

3.刊行物1発明
当審の拒絶理由に引用された、特開2003-319261号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「ノイズ低減方法」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はデジタル医療画像(digital medical images)の画像処理(image processing)に関する。特に本発明は医療画像内のノイズを低減(reducing)する方法に関する。」

イ.「【0029】該デジタル信号表現は画像処理モジュール(image-processing module)(7)に印加されるが、該モジュールは読み出しデバイスに組み込まれるか別ユニットとして提供されることが出来る。該画像処理モジュールでは該デジタル信号表現は種々の処理に供せられるが、その中には多解像度コントラスト強調(multi-resolution contrast enhancement)、ノイズ低減そしてグラデーション処理(gradation processing)がある。
【0030】最後に該処理されたデジタル画像表現は、可視画像が発生されるハードコピー記録デバイス(6)又はデイスプレーモニター(5)の様な出力装置に印加される。該可視画像は診断実施用に放射線専門医(radiologist)により使用される。(後略)」

ウ.「【0031】全体の画像チェーンを図解するブロック線図が図2で図解される。
【0032】該画像チェーンは下記で列挙された過程を含む。該過程の各々は下記で広範に説明される。
【0033】予備的過程では、該光励起リン光体スクリーン上に記録された放射の線量(radiation dose)の平方根に比例した画素値を作るために、画像のデジタル信号表現は平方根関数による変換に供せられる。該結果の画像はデジタル原画像(rawdigital image)と呼ばれる。
(中略)
【0037】最初の処理過程では、該デジタル原画像は、多解像度変換(multi-resolutiontransform)に依り、連続スケール(successive scales)での少なくとも2つの細部画像(detail images)と、1つの残余画像(residual image)と{更に、多スケール表現(multiscale representation)と引用される}、に分解される。
【0038】該多スケール表現及び/又は該デジタル原画像から、ノイズレベル、利得係数(gain factor)、局所的コントラスト対ノイズ比(シーエヌアール)見積の様な多数の値が導出される。これらの値は下記過程で使用される。
(中略)
【0046】最後に、該復元された画像はグラデーション処理に供され、該画素値はハード又はソフトコピー再生デバイス用駆動値に変換される。」

エ.「【0053】1例では、連続して粗くなる解像度レベルでの該細部画像が、下記過程のk回の繰り返しの各々の結果として得られる:
a)現在の繰り返しに対応する近似画像にローパスフイルターをかけることにより次のより粗いレベルの近似画像を計算し、結果を空間的周波数バンド幅での減少に比例して副次標本採取(subsampling)するが、しかしながら最初の繰り返しのコースでは元の画像を前記ローパスフイルターへの入力として使用する;
b)現在の繰り返しに対応する近似画像と、(a)の方法{method sub (a)}に依り計算される次ぎにより粗い解像度レベルでの近似画像と、の間の画素式の差(pixelwise difference)として細部画像を計算するが、両画像は後者の画像の適切な内挿によりレジスターに持ち込まれ;そこでは該残余画像は最後の繰り返しにより作られる近似画像に等しい。」

オ.「【0060】(前略)
2.ノイズレベルの見積
1実施例では、該画像のノイスレベルが、予め決められたスケールでの該デジタル原画像の多スケール表現の単一層を基礎として見積もられる。その層でのノイズの相対的寄与はより大きいスケールの層でよりも大きいのでスケールゼロが好ましく、従ってノイズレベルの見積は、エッジ、スポットそしてテクスチャ(textures)の様な画像細部の存在には少ししか影響されない。
【0061】ノイズレベルを見積もる最初の過程では、予め決められたスケールで、すなわち最も精細なスケールで局所的標準偏差(local standard deviation)を表す画像が計算される。
【0062】予め規定されたスケールでの局所的標準偏差の画像は多スケール表現の対応する層から導かれる。指定された層の画素値はそのスケールでの局所的平均グレイ値の、次ぎにより大きいスケールでのその対応値に対する、偏差を表す。指定された層の各画素で、現在の画素付近に中心を有するNケの画素値aiの正方形窓が取られ、現在の画素位置での局所的標準偏差sdevが、該2乗化された画素値の窓平均の平方根を取ることにより計算される:
【0063】
【数1】(略)
【0064】結果の画像から局所的標準偏差のヒストグラム(histogram)が導かれる。
【0065】該画像のヒストグラムは予め規定された数のビン(bins)から成る配列(array)である。各ビンは、全画素値範囲が全ての次のビン(all subsequent bins)によりカバーされる様な仕方で、特定の画素値間隔(specific pixel value interval)又は1つの画素値に付随される。該ヒストグラムの計算後各ビンは、該ビンに付随される間隔内に画素値を有する画像内の画素の絶対数又は相対数を表す。該ヒストグラムは次の様に計算される。最初に、全てのビンはセロカウント(zero count)に設定される。次ぎに各画像画素について、どの予め規定された間隔に該画素値が属するかが決定され、そして対応するビンは1だけインクレメントされる。
【0066】局所的標準偏差のヒストグラムは、実際のグレイ値範囲(actual grey valuerange)の副範囲(subrange)内にグレイ値を有する画素に制限される。これは、局所的標準偏差の画像の各画素について、もし該グレイ値画像内の対応する画素が指定された副範囲内にある場合、その場合のみ、対応するヒストグラムビンがインクレメントされることを意味する。もしrmin及びrmaxが該デジタル画像のそれぞれ最小及び最大グレイ値であるならば、この副範囲は:[rmin+マージン/(rmax-rmin)、rmax-マージン/(rmax-rmin)]と規定される。典型的にはマージン(margin)は3%である。該局所的標準偏差のヒストグラムを後者の副範囲内にグレイ値を有する画素に制限することにより、誤った露光設定又は他の画像アーテイフアクト(image artefacts)のために飽和した画像領域の画素による該ヒストグラムの散乱(cluttering)を避ける。
【0067】該局所的標準偏差のヒストグラムは該ノイズレベルに概略中心を有する非常に顕著なピークを備える。該ノイズレベルはこのピークの中心として規定される。代わりに、それは、該ヒストグラムが最大値である点、又は該ヒストグラムの支配的ピークに制限された中央値に対応する局所的標準偏差値として規定されることも出来る。(後略)」

このような事項を踏まえ、上記ア.?オ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(a)刊行物1には、上記ア.及びイ.に記載があるように、デジタル信号表現に、多解像度コントラスト強調、ノイズ低減、グラデーション処理を行って、出力装置に印加するデジタル医療画像の画像処理モジュールについての記載がある。
そして、上記ウ.及び図2のブロック線図の記載から、デジタル信号表現を出力画像にする際の処理として、ノイズレベル、利得係数、局所的コントラスト対ノイズ比見積の様な多数の見積の値を導出する処理が含まれている。
そうすると、刊行物1には、デジタル信号表現を出力画像にする際に、ノイズレベルの見積の値を導出する処理を含むデジタル医療画像の画像処理モジュールについての記載があるといえる。

(b)上記エ.の記載から、刊行物1のデジタル医療画像の画像処理モジュールは、近似画像にローパスフィルターをかけることにより粗いレベルの近似画像を計算するものである。
ここで、元の画像をローパスフィルターへの入力とする場合、刊行物1のデジタル医療画像の画像処理モジュールは、元の画像をローパスフィルターに入力することにより粗いレベルの近似画像を計算するものである。
また、上記エ.、オ.の段落【0060】?【0063】の記載から、刊行物1のデジタル医療画像の画像処理モジュールは、ノイズレベルの見積りのために、最も精細なスケールでの局所的平均グレイ値の、粗いレベルの近似画像でのその対応値に対する偏差を表す画素値を求め、各画素で、現在の画素付近に中心を有するNケの画素値の正方形窓を取り、2乗化された画素値の窓平均の平方根を取ることにより局所的標準偏差を計算するものである。
ここで、最も精細なスケールは、元の画像のことであるといえ、元の画像の局所的平均グレイ値は、平均されない元の画像の画素のグレイ値そのものであるといえる。
また、粗いレベルの近似画像は、元の画像をローパスフィルターに入力することにより計算された画像である。
そうすると、刊行物1のデジタル医療画像の画像処理モジュールは、ノイズレベルの見積りのために、元の画像のグレイ値と、元の画像をローパスフィルターに入力することにより計算された画像のその対応値に対する偏差を表す画素値を求め、各画素で、現在の画素付近に中心を有するNケの画素値の正方形窓を取り、2乗化された画素値の窓平均の平方根を取ることにより局所的標準偏差を計算するものである。

(c)上記オ.の段落【0064】?【0065】の記載から、刊行物1のデジタル医療画像の画像処理モジュールは、局所的標準偏差のヒストグラムを導くものであり、該ヒストグラムの各ビンは、該ビンに付随される間隔内に偏差を表す画素値を有する画像内の画素の絶対数を表すものである。
ここで、「該ビンに付随される間隔内に偏差を表す画素値を有する」の偏差を表す画素値は、ヒストグラムが局所的標準偏差のヒストグラムであることから、画素における局所的標準偏差を指すものである。
すなわち、刊行物1のデジタル医療画像の画像処理モジュールは、ヒストグラムの各ビンが、該ビンに付随される間隔内に局所的標準偏差を有する画像内の画素の絶対数を表す局所的標準偏差のヒストグラムを導くものである。

(d)上記オ.の段落【0060】、【0067】の記載から、刊行物1のデジタル医療画像の画像処理モジュールは、局所的標準偏差のヒストグラムのピークの中心を画像のノイズレベルとして規定するものである。

そうすると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されている。
なお、a.?d.については、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」、・・・、「構成d」という。)

「a.ノイズレベルの見積りのために、元の画像のグレイ値と、元の画像をローパスフィルターに入力することにより計算された画像のその対応値に対する偏差を表す画素値を求め、各画素で、現在の画素付近に中心を有するNケの画素値の正方形窓を取り、2乗化された画素値の窓平均の平方根を取ることにより局所的標準偏差を計算し、
b.ヒストグラムの各ビンが、該ビンに付随される間隔内に局所的標準偏差を有する画像内の画素の絶対数を表す局所的標準偏差のヒストグラムを導き、
c.局所的標準偏差のヒストグラムのピークの中心を画像のノイズレベルとして規定する
d.ことを特徴とするデジタル医療画像の画像処理モジュール。」

4.本願発明と刊行物1発明との対比と一致点・相違点の認定

ア.対比
本願発明と刊行物1発明を対比する。

(ア-1)構成Aについて
本願明細書の段落【0024】?【0027】及び図2をみるに、本願発明の「疑似標準偏差」は、『原画像の局所ごとに平滑化された平滑化画像を構成する複数の画素各々に対して原画像上の同位置にある画素との間の差を計算し、それぞれを2乗し、更に局所ごとに平滑化処理を行ったものの平方根を計算したもの』である。

刊行物1発明の構成aの「元の画像をローパスフィルターに入力することにより計算された画像」について、ローパスフィルターは、3×3や5×5のように領域を決めて平滑化していくものであるから、刊行物1発明の構成aの「元の画像をローパスフィルターに入力することにより計算された画像」は、元の画像を領域ごとに平滑化した画像であるといえる。
そうすると、「元の画像のグレイ値と、元の画像をローパスフィルターに入力することにより計算された画像のその対応値に対する偏差を表す画素値を求め」ることは、元の画像と元の画像を領域ごとに平滑化した画像の同位置画素のグレイ値の差分を求めることであるといえる。
また、「現在の画素付近に中心を有するNケの画素値の正方形窓を取り、2乗化された画素値の窓平均の平方根を取ること」に関して、正方形窓による窓平均を求めることは、領域ごとに平滑化しているものといえるので、「現在の画素付近に中心を有するNケの画素値の正方形窓を取り、2乗化された画素値の窓平均の平方根を取ること」は、元の画像と元の画像を領域ごとに平滑化した画像の同位置画素のグレイ値の差分を2乗したものを、領域ごとに平滑化して、平方根を求めたものといえる。
そうすると、刊行物1発明の構成aの「局所的標準偏差」は、『元の画像と元の画像を領域ごとに平滑化した画像の同位置画素のグレイ値の差分を求め、各画素で、該差分を2乗したものを、領域ごとに平滑化して、平方根を計算したもの』といえる。
そして、刊行物1発明の『元の画像と元の画像を領域ごとに平滑化した画像の同位置画素のグレイ値の差分を求め』ることは、本願の『原画像の局所ごとに平滑化された平滑化画像を構成する複数の画素各々に対して原画像上の同位置にある画素との間の差を計算』することに相当し、刊行物1発明の『各画素で、該差分を2乗したものを、領域ごとに平滑化して、平方根を計算したもの』は、本願の『それぞれを2乗し、更に局所ごとに平滑化処理を行ったものの平方根を計算したもの』に相当し、刊行物1発明の「局所的標準偏差」は、領域ごとに計算しているので、刊行物1発明の「元の画像のグレイ値と、元の画像をローパスフィルターに入力することにより計算された画像のその対応値に対する偏差を表す画素値を求め、各画素で、現在の画素付近に中心を有するNケの画素値の正方形窓を取り、2乗化された画素値の窓平均の平方根を取ることにより局所的標準偏差」は、本願発明の「画像内の複数の局所領域における画素ごとの標準偏差または疑似標準偏差」における「画像内の複数の局所領域における画素ごとの疑似標準偏差」に相当する。

そして、刊行物1発明の「局所的標準偏差」は「ノイズレベルの見積りのために」「計算」されるものであり、構成cの「局所的標準偏差のヒストグラムのピークの中心を画像のノイズレベルとして規定する」ことを考慮すると、「局所的標準偏差」を画像のノイズレベルを見積もるための値として計算するものであるといえ、画像のノイズレベルを見積もるための値とは、画像のノイズレベルを判断するために用いられる指標といえるから、本願発明の「ノイズインデックス」に対応するので、刊行物1発明の「局所的標準偏差(を画像のノイズレベルを見積もるための値として)計算」することは、本願発明の「疑似標準偏差を・・・ノイズインデックスとして計算する」ことに相当する。
さらに、刊行物1発明は「局所的標準偏差を計算」することから、刊行物1発明の「画像処理モジュール」は、そのような計算をする計算部を有するものである。
したがって、刊行物1発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

(ア-2)構成Bについて
刊行物1発明の構成bの「ヒストグラムの各ビンが、該ビンに付随される間隔内に局所的標準偏差を有する画像内の画素の絶対数を表す局所的標準偏差のヒストグラム」は、局所的標準偏差と、各局所的標準偏差である画素の絶対数の対応を表すものであり、上記(ア-1)で検討したように、刊行物1発明の「局所的標準偏差」は、本願発明の「ノイズインデックス」に相当するので、刊行物1発明の「ヒストグラムの各ビンが、該ビンに付随される間隔内に局所的標準偏差を有する画像内の画素の絶対数を表す局所的標準偏差のヒストグラム」は本願発明の「前記計算されたノイズインデックスと当該ノイズインデックスの度数との対応を表すヒストグラム」に相当する。
また、刊行物1発明の画像処理モジュールは、「ヒストグラムを導」くものであるから、ヒストグラムを作成する作成部を有するものといえるので、刊行物1発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する。

(ア-3)構成Cについて
刊行物1発明の構成cは、ヒストグラムに基づいて画像のノイズレベルを推定するものといえ、刊行物1発明の画像処理モジュールは、画像のノイズレベルを推定するものであるから、画像のノイズレベルを推定する推定部を有するものといえる。
本願明細書の段落【0030】には、「最も一般的なまたは頻繁に発生する擬似標準偏差(PSD)の値が、画像全体または信号全体の実質的に真のノイズレベルを表す単一のノイズインデックスとして選択される。」と記載されていることから、本願発明における「画像に関するノイズインデックス」は、画像全体のノイズレベルのことであり、刊行物1発明の「画像のノイズレベル」は、本願発明の「画像に関するノイズインデックス」に対応するので、刊行物1発明の構成cと本願発明の構成Cは、「前記作成されたヒストグラムに基づいて前記画像に関するノイズインデックスを推定」する「推定部」を有するという点で共通する。
しかし、刊行物1発明の「推定部」は、本願発明のように、「前記ヒストグラムの対象から前記画像の背景領域を示す画素を除去する」ものではない点で、本願発明の「推定部」と相違する。

(ア-4)構成Dについて
刊行物1発明の構成dの「画像処理モジュール」は、画像処理を行う装置の内部で、画像処理を行う装置における画像処理を行う部分のことであるから、「(・・・計算部と、・・・作成部と、・・・推定部)とを有することを特徴とする画像処理モジュール」は、「(・・・計算部と、・・・作成部と、・・・推定部)とを有することを特徴とする画像処理装置」であるといえる。
したがって、刊行物1発明の構成dは、本願発明の構成Dに対応する。

イ.一致点・相違点
したがって、本願発明と刊行物1発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「画像内の複数の局所領域における画素ごとの標準偏差または疑似標準偏差をそれぞれノイズインデックスとして計算する計算部と、
前記計算されたノイズインデックスと当該ノイズインデックスの度数との対応を表すヒストグラムを作成する作成部と、
前記作成されたヒストグラムに基づいて前記画像に関するノイズインデックスを推定する推定部
とを有することを特徴とする画像処理装置。」

(相違点)
推定部に関して、本願発明は、「前記ヒストグラムの対象から前記画像の背景領域を示す画素を除去する」のに対し、刊行物1発明では、そのような構成を有していない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
当審の拒絶理由に引用された特開2007-260292号公報(以下、「刊行物2」という。)に記載されている(段落【0019】等)ように、医用画像のノイズ指標を算出する際に関心領域内で行うことは周知の技術であり、関心のない領域は背景領域として除去しているものといえる。
そうすると、刊行物1発明において、上記周知の技術を適用して、背景領域を示す画素を除去することは、容易に想到し得るものであり、その際に、どの時点で除去を行うかは、適宜であるから、本願発明のように、推定部で除去するようにすることは当業者が適宜なし得るものである。


よって、相違点については、格別のものではなく、本願発明に関する作用・効果も、その容易想到である構成から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2に記載されたような周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-23 
結審通知日 2015-10-27 
審決日 2015-11-09 
出願番号 特願2012-535270(P2012-535270)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐田 宏史▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 小池 正彦
渡辺 努
発明の名称 画像処理装置  
代理人 野河 信久  
代理人 野河 信久  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 河野 直樹  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 堀内 美保子  
代理人 岡田 貴志  
代理人 河野 直樹  
代理人 井関 守三  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井上 正  
代理人 砂川 克  
代理人 峰 隆司  
代理人 井上 正  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 佐藤 立志  

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