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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C10L
管理番号 1309127
審判番号 不服2014-8565  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-08 
確定日 2015-12-25 
事件の表示 特願2011-526215「触媒接触脱酸素及び縮合酸素化炭化水素を主成分とする液体燃料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月11日国際公開、WO2010/028206、平成24年 6月 7日国内公表、特表2012-512916〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年9月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年9月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成25年 6月 7日付け 拒絶理由通知
平成25年12月11日 意見書・手続補正書
平成26年 1月 6日付け 拒絶査定
平成26年 5月 8日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成26年 5月15日付け 手続補正指令
平成26年 6月 3日 手続補正書(審判請求理由補充書)
平成26年 6月24日付け 前置審査移管
平成26年 7月11日付け 前置報告書

第2 本願に係る発明について
本願に係る発明は、平成26年 5月 8日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるものである。
「水性液相及び/又は蒸気相中に水と、C_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を準備する段階と;
H_(2)を準備する段階と;
前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化炭化水素を脱酸素触媒の存在下に脱酸素温度及び脱酸素圧力にてH_(2)と接触反応させ、C_(1+)O_(1-3)炭化水素を含む酸素化物を反応流中に生成する段階と;
前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化物を縮合触媒の存在下に縮合温度及び縮合圧力にて接触反応させ、C_(4+)化合物を生成する段階を含む方法により製造される水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分の蒸留留分を含有する液体燃料組成物であって、
水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を有する前記成分が成分の炭素14濃度から計算した場合に100年未満であり、
前記C_(4+)化合物がC_(4+)アルコール、C_(4+)ケトン、C_(4+)アルカン、C_(4+)アルケン、C_(5+)シクロアルカン、C_(5+)シクロアルケン、アリール、縮合アリール、及びその混合物から構成される群から選択されるメンバーを含み、
前記液体燃料組成物が、
最終沸点が150?220℃の範囲、15℃における密度が700?890kg/m^(3)の範囲、硫黄含量が最大5mg/kg、酸素含量が最大3.5重量%、RONが80?110の範囲、およびMONが70?100の範囲を有する成分を有する、水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を有する成分を含む、
15℃?70℃の範囲の初期沸点(IP123)と、最大230℃の最終沸点(IP123)と、85?110の範囲のRON(ASTM D2699)と、75?100の範囲のMON(ASTM D2700)を有するガソリン組成物;130℃?230℃の範囲の初期沸点(IP123)と、最大410℃の最終沸点(IP123)と、35?120の範囲のセタン価(ASTM D613)を有するディーゼル燃料組成物;及び初期沸点が120?215℃の範囲、最終沸点が220?320℃の範囲、15℃における密度が700?890kg/m^(3)の範囲、硫黄含量が最大0.1重量%、総芳香族含量が最大30体積%、氷点が-40℃以下、煙点が少なくとも18mm、-20℃における粘度が1?10cStの範囲、および比エネルギー含量が40?47MJ/kgの範囲を有する水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を有する成分を含む、
80?150℃の範囲の初期沸点と、200?320℃の範囲の最終沸点と、0.8?10mm^(2)/sの範囲の-20℃における粘度(ASTM D445)を有するケロシン組成物から選択される前記液体燃料組成物であって、
更に1種以上の燃料添加剤を含有する前記液体燃料組成物。」

第3 原審の拒絶査定の概要
原審において、平成25年 6月 7日付け拒絶理由通知書で概略以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由
・・(中略)・・
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。

・請求項1?10
・特願2009-552922号(国際公開第2008/109877号)
(備考)
上記外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下先願明細書等という。)には、水性液相及び/又は蒸気相中に水と、C_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を準備する段階と;H_(2)を準備する段階と;前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化炭化水素を脱酸素触媒の存在下に脱酸素温度及び脱酸素圧力にてH_(2)と接触反応させ、C_(1+)O_(1-3)炭化水素を含む酸素化物を反応流中に生成する段階と;前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化物を縮合触媒の存在下に縮合温度及び縮合圧力にて接触反応させ、C_(4+)化合物を生成する段階を含む方法により製造される水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分の蒸留留分を含有する液体燃料組成物であって、前記C_(4+)化合物がC_(4+)アルコール、C_(4+)ケトン、C_(4+)アルカン、C_(4+)アルケン、C_(5+)シクロアルカン、C_(5+)シクロアルケン、アリール、縮合アリール、及びその混合物から構成される群から選択されるメンバーを含む液体燃料組成物及びその製造方法が記載されている。
そして、先願明細書等には、液体燃料組成物を、ガソリン、ディーゼル燃料又はジェット燃料に用いることが記載されており、ガソリン、ディーゼル燃料又はジェット燃料として、本願発明で特定される性状を有するガソリン組成物、ディーゼル燃料組成物又はケロシン組成物は周知である。
また、先願明細書等には、水溶性酸素化炭化水素がバイオマス由来であることも記載されており、誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分が成分の炭素14濃度から計算した場合に100年未満であるといえる。
さらに、液体燃料組成物が燃料添加剤を含有することも周知である。
そうすると、本願の請求項1?10に係る発明と、先願明細書等に記載された発明とは実質的に同一である。

<拒絶査定>
「この出願については、平成25年 6月 7日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
…また、出願人は、意見書において「本意見書と同日付けで提出した手続補正書により、本願発明が引用文献(特願2009-552922号(国際公開第2008/109877号))と全く相違するものであることが明らかになった。」と主張している。
しかしながら、特願2009-552922号の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面には、上記拒絶理由通知書に記載したとおり、水溶性酸素化炭化水素がバイオマス由来であることも記載されているから、誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分が成分の炭素14濃度から計算した場合に100年未満であるといえ、ガソリン、ディーゼル燃料又はジェット燃料として、本願発明で特定される性状を有するガソリン組成物、ディーゼル燃料組成物又はケロシン組成物は周知である。
したがって、本願の請求項1?15に係る発明は、…特願2009-552922号の国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と実質的に同一である。」

第4 当審の判断

引用出願:特願2009-552922号(国際公開第2008/109877号)
(原審における「引用文献(特願2009-552922号(国際公開第2008/109877号))」。以下「先願」といい、外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面を「先願明細書等」という。)

1.先願明細書等に記載された事項
先願明細書等には、以下の事項が記載されている。(なお、『』内は、国際公開第2008/109877号の翻訳文であるとされる特表2010-535703号公報(以下、「参考文献」という。)に基いた訳文を記載する。)。

(a-1)
「 CLAIMS
We Claim:
1. A method of making a C_( 4+) compound comprising:
providing water and a water soluble oxygenated hydrocarbon comprising a C_(1 +)O_( 1+ )hydrocarbon in an aqueous liquid phase and/or a vapor phase,
providing H _(2) ,
catalytically reacting in the liquid and/or vapor phase the oxygenated hydrocarbon with the H _(2) in the presence of a deoxygenation catalyst at a deoxygenation temperature and deoxygenation pressure to produce an oxygenate comprising a C_(1 +)O_(1-3) hydrocarbon in a reaction stream, and
catalytically reacting in the liquid and/or vapor phase the oxygenate in the presence of a condensation catalyst at a condensation temperature and condensation pressure to produce the C_(4+) compound,
wherein the C_(4+) compound comprises a member selected from the group consisting of C_(4+) alcohol, C_(4+) ketone, C_(4+) alkane, C_(4+) alkene, C_(5+) cycloalkane, C_(5+) cycloalkene, aryl, fused aryl, and a mixture thereof.」
『C_(4+)化合物を作製する方法であって:
水及びC_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を、水性液相及び/又は気相中に提供すること、
H_(2)を提供すること、
脱酸素化触媒の存在下、脱酸素化温度及び脱酸素化圧力にて、該酸素化炭化水素を液相及び/又は気相中で該H_(2)と触媒反応させることで反応流中にC_(1+)O_(1‐3)炭化水素を含む酸素化物を生成させること、並びに、
縮合触媒の存在下、縮合温度及び縮合圧力にて、該酸素化物を液相及び/又は気相中で触媒反応させることで前記C_(4+)化合物を生成させること、
を含み、
ここで、前記C_(4+)化合物は、C_(4+)アルコール、C_(4+)ケトン、C_(4+)アルカン、C_(4+)アルケン、C_(5+)シクロアルカン、C_(5+)シクロアルケン、アリール、縮合アリール、及びこれらの混合物から成る群より選択されるメンバーを含む、方法。』(参考文献の【特許請求の範囲】【請求項1】参照)

(b-1)
「[00189] The present invention relates to methods, reactor systems and catalysts for producing hydrocarbons, ketones and alcohols from biomass-derived oxygenated hydrocarbons, such as sugars, sugar alcohols, cellulosics, lignocelluloses, hemicelluloses, saccharides and the like. The hydrocarbons and mono-oxygenated hydrocarbons produced are useful in fuel products, such as synthetic gasoline, diesel fuel and/or jet fuels, and as industrial chemicals.
[00190] The present invention is directed to methods, reactor systems and catalysts for producing C_(4+) alkanes, C_( 4+) alkenes, C_( 5+) cycloalkanes, C_(5+) cycloalkenes, aryls, fused aryls, C_(4+) alcohols, C_(4+) ketones, and mixtures thereof (collectively referred to herein as "C_(4+) compounds"), from oxygenated hydrocarbons. The C_(4+) hydrocarbons have from 4 to 30 carbon atoms and may be branched or straight chained alkanes or alkenes, or unsubstituted, mono-substituted or multi-substituted aromatics (aryls) or cycloalkanes. The C_(4+) alcohols and C_(4+) ketones may be cyclic, branched or straight chained, and have from 4 to 30 carbon atoms. Lighter fractions, primarily C_(4)-C_(9) , may be separated for gasoline use. Moderate fractions, such as C_(7)-C_(14), maybe separated for jet fuel, while heavier fractions, i.e., C_(12) -C_(24) , may be separated for diesel use. The heaviest fractions may be used as lubricants or cracked to produce additional gasoline and/or diesel fractions. The C_(4+) compounds may also find use as industrial chemicals, such as xylene, whether as an intermediate or an end product.」
『本発明は、糖、糖アルコール、セルロース化合物、リグノセルロース、ヘミセルロース、及びサッカライド等のバイオマス由来酸素化炭化水素から炭化水素、ケトン、及びアルコールを作製するための方法、反応器系、及び触媒に関する。作製された炭化水素及びモノ酸素化(mono‐oxygenated)炭化水素は、合成ガソリン、ディーゼル燃料、及び/又はジェット燃料等の燃料製品に、並びに工業化学物質として有用である。
本発明は、C_(4+)アルカン、C_(4+)アルケン、C_(5+)シクロアルカン、C_(5+)シクロアルケン、アリール、縮合アリール、C_(4+)アルコール、C_(4+)ケトン、及びこれらの混合物(本明細書において、まとめて「C_(4+)化合物」と称する)を、酸素化炭化水素から作製するための方法、反応器系、及び触媒に関する。C_(4+)炭化水素は、4乃至30個の炭素原子を有し、及び分岐鎖状若しくは直鎖状のアルカン又はアルケンであってよく、又は、無置換、一置換、若しくは多置換の芳香族(アリール)又はシクロアルカンであってもよい。C_(4+)アルコール及びC_(4+)ケトンは、環状、分岐鎖状、若しくは直鎖状であってよく、及び4乃至30個の炭素原子を有する。主にC_(4)‐C_(9)であるより軽い画分は分離してガソリンに使用することができる。C_(7)‐C_(14)等の中間画分は分離してジェット燃料とすることができ、一方より重い画分、すなわちC_(12)‐C_(24)は、分離してディーゼルに使用することができる。最も重い画分は潤滑剤として用いることができ、又は熱分解してさらなるガソリン及び/若しくはディーゼル画分を作製することができる。C_(4+)化合物は、中間体としてであれ最終生成物としてであれ、キシレン等の工業化学物質としても有用であり得る。』(参考文献の【0171】及び【0172】参照)

(c-1)
「 Oxygenated Hydrocarbons.

[00210] In one embodiment, the oxygenates are derived from the catalytic reforming of oxygenated hydrocarbons. The oxygenated hydrocarbons may be any water-soluble oxygenated hydrocarbon having one or more carbon atoms and at least one oxygen atom (referred to herein as C_(1+)O_(1+) hydrocarbons). Preferably, the oxygenated hydrocarbon has 2 to 12 carbon atoms (C_(1-12)O_(1-11)H hydrocarbon), and more preferably 2 to 6 carbon atoms (C_(1-6)O_(1-6) hydrocarbon). The oxygenated hydrocarbon may also have an oxygen-to-carbon ratio ranging from 0.5:1 to 1.5:1, including ratios of 0.75:1.0, 1.0:1.0, 1.25:1.0, 1.5:1.0, and other ratios between. In one example, the oxygenated hydrocarbon has an oxygen-to-carbon ratio of 1 : 1. Nonlimiting examples of preferred water-soluble oxygenated hydrocarbons include monosaccharides, disaccharides, polysaccharides, sugar, sugar alcohols, alditols, ethanediol, ethanedione, acetic acid, propanol, propanediol, propionic acid, glycerol, glyceraldehyde, dihydroxyacetone, lactic acid, pyruvic acid, malonic acid, butanediols, butanoic acid, aldotetroses, tautaric acid, aldopentoses, aldohexoses, ketotetroses, ketopentoses, ketohexoses, alditols, hemicelluloses, cellulosic derivatives, lignocellulosic derivatives, starches, polyols and the like. Preferably, the oxygenated hydrocarbon includes sugar, sugar alcohols, saccharides and other polyhydric alcohols. More preferably, the oxygenated hydrocarbon is a sugar, such as glucose, fructose, sucrose, maltose, lactose, mannose or xylose, or a sugar alcohol, such as arabitol, erythritol, glycerol, isomalt, lactitol, malitol, mannitol, sorbitol, xylitol, ribitol, or glycol.」
『酸素化炭化水素
一つの態様では、酸素化物は、酸素化炭化水素の接触改質から誘導される。酸素化炭化水素は、1若しくは2個以上の炭素原子及び少なくとも1個の酸素原子を有するいずれの水溶性酸素化炭化水素であってもよい(本明細書においてC_(1+)O_(1+)炭化水素と称する)。好ましくは、酸素化炭化水素は2乃至12個の炭素原子を有し(C_(1‐12)O_(1‐11)炭化水素)、より好ましくは2乃至6個の炭素原子を有する(C_(1‐6)O_(1‐6)炭化水素)。酸素化炭化水素は、さらに酸素対炭素比が0.5:1乃至1.5:1の範囲であってよく、0.75:1.0、1.0:1.0、1.25:1.0、1.5:1.0の比、及びこれらの間のその他の比を含む。一つの例では、酸素化炭化水素は1:1の酸素対炭素比を有する。好ましい水溶性酸素化炭化水素の限定されない例としては、単糖、二糖、多糖、糖、糖アルコール、アルジトール、エタンジオール、エタンジオン、酢酸、プロパノール、プロパンジオール、プロピオン酸、グリセロール、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、ブタンジオール、ブタン酸、アルドテトロース、酒石酸、アルドペントース、アルドヘキソース、ケトテトロース、ケトペントース、ケトヘキソース、アルジトール、ヘミセルロース、セルロース系誘導体、リグノセルロース系誘導体、デンプン、及びポリオール等が挙げられる。好ましくは、酸素化炭化水素は、糖、糖アルコール、サッカライド、及びその他の多価アルコールを含む。より好ましくは、酸素化炭化水素は、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンノース、若しくはキシロース等の糖、又はアラビトール、エリスリトール、グリセロール、イソマルト、ラクチトール、マリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、若しくはグリコール等の糖アルコールである。』(参考文献の【0193】参照)

2.検討

ア 先願明細書等に記載された発明
上記先願明細書等には、「C_(4+)化合物を作製する方法であって:
水及びC_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を、水性液相及び/又は気相中に提供すること、
H_(2)を提供すること、
脱酸素化触媒の存在下、脱酸素化温度及び脱酸素化圧力にて、該酸素化炭化水素を液相及び/又は気相中で該H_(2)と触媒反応させることで反応流中にC_(1+)O_(1‐3)炭化水素を含む酸素化物を生成させること、並びに、
縮合触媒の存在下、縮合温度及び縮合圧力にて、該酸素化物を液相及び/又は気相中で触媒反応させることで前記C_(4+)化合物を生成させること、
を含み、
ここで、前記C_(4+)化合物は、C_(4+)アルコール、C_(4+)ケトン、C_(4+)アルカン、C_(4+)アルケン、C_(5+)シクロアルカン、C_(5+)シクロアルケン、アリール、縮合アリール、及びこれらの混合物から成る群より選択されるメンバーを含む、方法。」(摘示(a-1)参照)が記載され、また前記摘示(a-1)のC_(4+)化合物として、「C_(4+)炭化水素は、4乃至30個の炭素原子を有し、及び分岐鎖状若しくは直鎖状のアルカン又はアルケンであってよく、又は、無置換、一置換、若しくは多置換の芳香族(アリール)又はシクロアルカンであってもよい。C_(4+)アルコール及びC_(4+)ケトンは、環状、分岐鎖状、若しくは直鎖状であってよく、及び4乃至30個の炭素原子を有する。主にC_(4)‐C_(9)であるより軽い画分は分離してガソリンに使用することができる。C_(7)‐C_(14)等の中間画分は分離してジェット燃料とすることができ、一方より重い画分、すなわちC_(12)‐C_(24)は、分離してディーゼルに使用することができる。最も重い画分は潤滑剤として用いることができ、又は熱分解してさらなるガソリン及び/若しくはディーゼル画分を作製することができる。」(摘示(b-1)参照)ことが記載され、前記摘示(b-1)の「ガソリン」、「ディーゼル」、「ディーゼル画分」及び「ジェット燃料」は「液体燃料組成物」といえる。

してみると、上記先願明細書等には、上記(a-1)及び(b-1)の記載事項からみて、
「水及びC_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を、水性液相及び/又は気相中に提供すること、
H_(2)を提供すること、
脱酸素化触媒の存在下、脱酸素化温度及び脱酸素化圧力にて、該酸素化炭化水素を液相及び/又は気相中で該H_(2)と触媒反応させることで反応流中にC_(1+)O_(1‐3)炭化水素を含む酸素化物を生成させること、並びに、
縮合触媒の存在下、縮合温度及び縮合圧力にて、該酸素化物を液相及び/又は気相中で触媒反応させることで前記C_(4+)化合物を生成させること、
を含む方法により製造される液体燃料組成物であって、
前記C_(4+)化合物がC_(4+)アルコール、C_(4+)ケトン、C_(4+)アルカン、C_(4+)アルケン、C_(5+)シクロアルカン、C_(5+)シクロアルケン、アリール、縮合アリール、及びその混合物から構成される群から選択されるメンバーを含み、
前記液体燃料組成物が、
主にC_(4)‐C_(9)であるより軽い画分は分離してガソリンに使用することができ、C_(7)‐C_(14)等の中間画分は分離してジェット燃料とすることができ、一方より重い画分、すなわちC_(12)‐C_(24)は、分離してディーゼルに使用することができ、最も重い画分は潤滑剤として用いることができ、又は熱分解してさらなるガソリン及び/若しくはディーゼル画分を作製することができる、
前記液体燃料組成物。」
に係る発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

イ 対比・検討
(ア)対比
本願発明と先願発明とを対比すると、
a 先願発明の「液体燃料組成物」は「水及びC_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を、水性液相及び/又は気相中に提供すること、H_(2)を提供すること、…該酸素化物を液相及び/又は気相中で触媒反応させることで前記C_(4+)化合物を生成させること、を含む方法により製造される」「もの」であるから、本願発明でいう「水性液相及び/又は蒸気相中に水と、C_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を準備する段階と;H_(2)を準備する段階と;前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化炭化水素を脱酸素触媒の存在下に脱酸素温度及び脱酸素圧力にてH_(2)と接触反応させ、C_(1+)O_(1-3)炭化水素を含む酸素化物を反応流中に生成する段階と;前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化物を縮合触媒の存在下に縮合温度及び縮合圧力にて接触反応させ、C_(4+)化合物を生成する段階を含む方法により製造される水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分を含むもの」といえ、さらに該「成分を含むもの」は、「主にC_(4)‐C_(9)であるより軽い画分は分離してガソリンに使用することができ、C_(7)‐C_(14)等の中間画分は分離してジェット燃料とすることができ、一方より重い画分、すなわちC_(12)‐C_(24)は、分離してディーゼルに使用することができ、最も重い画分は潤滑剤として用いることができ、又は熱分解してさらなるガソリン及び/若しくはディーゼル画分を作製することができる」「もの」であるから、本願発明でいう「該成分の蒸留留分を含有するもの」といえることから、先願発明の「液体燃料組成物」は「水性液相及び/又は蒸気相中に水と、…C_(4+)化合物を生成する段階を含む方法により製造される水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分の蒸留留分を含有する」ものといえるので、本願発明の「液体燃料組成物」とは、「水性液相及び/又は蒸気相中に水と、C_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を準備する段階と;H_(2)を準備する段階と;前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化炭化水素を脱酸素触媒の存在下に脱酸素温度及び脱酸素圧力にてH_(2)と接触反応させ、C_(1+)O_(1-3)炭化水素を含む酸素化物を反応流中に生成する段階と;前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化物を縮合触媒の存在下に縮合温度及び縮合圧力にて接触反応させ、C_(4+)化合物を生成する段階を含む方法により製造される水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分の蒸留留分を含有する」「もの」という点で一致する(審決注:下線は審決において付した。以下同じ。)。
b 先願発明の「ガソリン」、「『ディーゼル』,『ディーゼル画分』」及び「ジェット燃料」は、それぞれ、本願発明の「ガソリン組成物」、「ディーゼル燃料組成物」及び「ジェット燃料組成物」に相当するといえる。
c ジェット燃料組成物がケロシン組成物であることは当業者に自明である(例えば、特表2001-500561号公報「ジェット燃料(ケロシン)参照」(4頁6?7行)。

d してみれば、本願発明と先願発明とは、
「水性液相及び/又は蒸気相中に水と、C_(1+)O_(1+)炭化水素を含む水溶性酸素化炭化水素を準備する段階と;
H_(2)を準備する段階と;
前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化炭化水素を脱酸素触媒の存在下に脱酸素温度及び脱酸素圧力にてH_(2)と接触反応させ、C_(1+)O_(1-3)炭化水素を含む酸素化物を反応流中に生成する段階と;
前記液相及び/又は蒸気相中で前記酸素化物を縮合触媒の存在下に縮合温度及び縮合圧力にて接触反応させ、C_(4+)化合物を生成する段階を含む方法により製造される水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分の蒸留留分を含有する液体燃料組成物であって、
前記C_(4+)化合物がC_(4+)アルコール、C_(4+)ケトン、C_(4+)アルカン、C_(4+)アルケン、C_(5+)シクロアルカン、C_(5+)シクロアルケン、アリール、縮合アリール、及びその混合物から構成される群から選択されるメンバーを含み、
前記液体燃料組成物が、
ガソリン組成物;ディーゼル燃料組成物;及びケロシン組成物から選択される前記液体燃料組成物。」
の点で一致し、下記の3点で一応相違する。

相違点1:本願発明では、「水溶性酸素化炭化水素から誘導される少なくとも1種のC_(4+)化合物を有する成分が成分の炭素14濃度から計算した場合に100年未満であ」るのに対して、先願発明では、C_(4+)化合物を含む成分の年代につき特定されていない点。

相違点2:本願発明では、ディーゼル燃料組成物が、「130℃?230℃の範囲の初期沸点(IP123)と、最大410℃の最終沸点(IP123)と、35?120の範囲のセタン価(ASTM D613)を有する」のに対して、先願発明では、そのようなものであるか明らかでない点。

相違点3:本願発明では、液体燃料組成物が、「更に1種以上の燃料添加剤を含有する」のに対して、先願発明では、燃料添加剤の含有につき特定されていない点。

(イ)各相違点に係る検討

a 相違点1について
先願明細書の「本発明は、糖、糖アルコール、セルロース化合物、リグノセルロース、ヘミセルロース、及びサッカライド等のバイオマス由来酸素化炭化水素から炭化水素、ケトン、及びアルコールを作製するための方法、反応器系、及び触媒に関する。作製された炭化水素及びモノ酸素化(mono‐oxygenated)炭化水素は、合成ガソリン、ディーゼル燃料、及び/又はジェット燃料等の燃料製品に、並びに工業化学物質として有用である。」(摘示(b-1))なる記載からみて、先願発明の「水溶性酸素化炭化水素」はバイオマス由来の炭素材料であるところ、本願明細書の「【0140】水溶性酸素化炭化水素から誘導可能な少なくとも1種のC_(4+)化合物を含む成分はバイオマスから誘導されることが好適であるため、成分又はその留分の年代は成分の炭素14濃度から計算した場合に100年未満、好ましくは40年未満、より好ましくは20年未満である。」との記載からみて、先願発明の「水溶性酸素化炭化水素」と本願発明の「水溶性酸素化炭化水素」とはバイオマス由来の炭素材料である点で一致するから、先願発明の組成物における「C_(4+)化合物を含む成分」であっても、「成分の炭素14濃度から計算した場合に100年未満であ」るといえる。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。

b 相違点2について
一般に、ディーゼル燃料組成物が、130℃?230℃の範囲の初期沸点(IP123)と、最大410℃の最終沸点(IP123)と、35?120の範囲のセタン価(ASTM D613)を有することは当業者に自明の規格である(例えば、特表2008-525555号公報【0024】、特表2007-504316号公報【0053】参照)から、先願発明の「ディーゼル燃料組成物」は「130℃?230℃の範囲の初期沸点(IP123)と、最大410℃の最終沸点(IP123)と、35?120の範囲のセタン価(ASTM D613)を有する」ものといえ、この点で、両者の間に実質的な差異はない。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点であるとはいえない。

c 相違点3について
液体燃料組成物において、1種以上の燃料添加剤を含有することは当業者に自明である(例えば、上記特表2007-504316号公報特に【請求項9】及び【請求項10】、特表2003-528973号公報特に【請求項32】?【請求項34】参照)。
したがって、上記相違点3は、実質的な相違点であるとはいえないか、単なる発明の構成上の微差に過ぎない。

d 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、先願発明と実質的に同一であるものと認められる。

e この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもない。

(ウ)小括
以上のとおり、本願発明は、上記先願発明と実質的に同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではないから、その余につき検討するまでもなく、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-30 
結審通知日 2015-07-31 
審決日 2015-08-17 
出願番号 特願2011-526215(P2011-526215)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 橋本 栄和
菅野 芳男
発明の名称 触媒接触脱酸素及び縮合酸素化炭化水素を主成分とする液体燃料組成物  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 沖本 一暁  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 沖本 一暁  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  

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